JP2006193483A - パラジウム触媒が充填されたフローリアクターを用いるカップリング反応 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 パラジウム触媒の存在下でカップリング反応を行う方法であって、固体のパラジウム触媒を充填した流通式マイクロリアクターを用いることを特徴とする方法。
【選択図】図1
Description
非特許文献2には、活性炭に担持した固体のパラジウム触媒を用い、回分式反応器にてブロモベンゼンとアクリル酸メチルのMizoroki-Heckカップリング反応を実施した結果が報告されている。しかしながら、反応温度160℃、反応時間12時間での目的生成物の収率はわずか36%である。このように、固体のパラジウム触媒を回分式反応器で用いても、溶液中の反応基質と固体触媒との接触効率が足りず、収率が低いという問題があった。
例えば、非特許文献3には、基質が流通するマイクロリアクターの流路表面に、パラジウム金属を担持させて、カップリング反応を行う方法が報告されている。しかしながら、パラジウム金属が流路に担持されているので、パラジウム金属が触媒活性を失った場合には、パラジウム担持流路を有するマイクロリアクターを交換しなければならないという問題がある。また、この方法では、触媒は、粒子の形状ではない。
非特許文献4には、触媒がイオン交換樹脂に固定化されている粒子を充填したマイクロフローリアクター中で、カップリング反応を行う方法が報告されている。しかしながら、この方法には、生成物の収率が低い、および触媒の固定化が煩雑であるという欠点がある。
非特許文献5には、イオン交換樹脂を流路に充填した後、パラジウム触媒をイオン交換樹脂表面に固定し、これを触媒とするカップリング反応が報告されている。しかしながら、パラジウム触媒を固定化する操作が必要である上に、生成物の収率が低いという問題がある。
本発明は、流通式マイクロリアクターにおいて、パラジウム触媒の存在下で第1基質および第2基質からカップリング反応生成物を製造する方法であって、
固体粒子のパラジウム触媒がマイクロリアクターに充填されている方法にも関する。
さらに、本発明は、固体粒子のパラジウム触媒を充填した流通式マイクロリアクターにも関する。
本発明によれば、激しい物理的撹拌などを用いずに、反応基質と固体触媒との接触を改善できる。
回分式反応器に比較して、高い安全性で、高温および高圧の反応条件を使用できる。
さらに、本発明によれば、パラジウム触媒の分離工程に必要なエネルギーやコストが省略できる。
本発明においては、固体パラジウム触媒をマイクロリアクターの壁面に固着していないため、触媒の交換が簡単に行える。また、激しい物理的撹拌による固体触媒の粉砕も生じないため、反応後の触媒回収も容易に行える。回収後の触媒を再生し、再び反応に使用することも可能である。
反応管の長さ(粒状パラジウム触媒が充填されている部分の長さ)の下限は、1cm、例えば5cm、特に10cm、特別には15cmであり、マイクロリアクターの長さの上限は、500cm、例えば200cm、特に100cm、特別には50cmである。
反応管は、種々の材質からできていてよい。材質の例は、
樹脂(例えば、フッ素樹脂(例示すれば、ポリテトラフルオロエチレン、テフゼル(登録商標、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体))、ピーク(PEEK)樹脂、ポリフェニルスルフォン)、
金属(ステンレス、チタニウム、ハステロイ(登録商標))、
酸化物(例えば、フューズドシリカなどの無機酸化物)である。
パラジウム触媒は、通常の公知の方法に従って、例えば、担体を金属化合物の溶液に浸漬することによって調製できる。
パラジウム触媒としては、市販品を使用することができる。パラジウム触媒の市販品の例は、N.E.Chemcat(株)から入手できるAER型、BNA型、STD型、Degussaから入手できるE105CA/W型、E10N/D型、E101R/D型である。本発明には、容易に得られるパラジウム触媒市販品を用いることができるという利点がある。
第1基質と第2基質とのカップリング反応によって、カップリング反応生成物が得られる。第1基質は、パラジウムに対して酸化的付加を行いうる化合物であり、第2基質は、脱離する基を有する化合物である。
第1基質、第2基質および反応生成物が次式のとおりであることが好ましい。
R−X +A−R’ → R−R’
(1)R−X + H2C=CH−R” → R−HC=CH−R”
(Mizoroki-Heckカップリング反応)
(2)R−X + HC≡C−R” → R−C≡C−R”
(Sonogashiraカップリング反応)
(3)R−X + A1−R” → R−R”
(Suzuki-Miyauraカップリング反応およびStilleクロスカップリング反応)
Suzuki-Miyauraカップリング反応は、次のような反応であることが好ましい。
R−X + A1−HC=CH2 → R−HC=CH2
RおよびR”の例は、不飽和または飽和の脂肪族基(炭素数:例えば、1〜20)、芳香族基(炭素数:例えば、6〜40)、芳香脂肪族基(炭素数:例えば、7〜40)である。RおよびR”は、構成原子(例えば、環構成原子)として酸素および/または窒素を有していてもよい。脂肪族基、芳香族基および芳香脂肪族基は、置換基で置換されていても置換されていなくてもどちらでもよい。置換基の例は、ヒドロキシル基、オキシアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、ハロゲン原子、イミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基、スルフィノ基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基又は シリル基である。置換基の炭素数は、一般に、0〜40である。RおよびR”の具体例は、アルキル基(炭素数:例えば、1〜20)、アリール基(炭素数:例えば、6〜40)、アルケニル基(炭素数:例えば、2〜20)、アルキニル基(炭素数:例えば、2〜20)である。
Xは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、トリフラート、ジアゾニウム塩、またはスルホナートである。
A1は、脱離する基、例えば、−BL2(Bはホウ素原子、Lは、ヒドロキシル基、アルキル基(炭素数は例えば、1〜8))、−SnBu3(Snはスズ原子、Buはブチル基である。)、−SiEtX'2(Siはスズ原子、Etはエチル基、X'は塩素などのハロゲン原子)である。
第2基質の具体例は、
二重結合を有する化合物として、(メタ)アクリル酸メチル、スチレン、α―メチルスチレン、アクリロニトリル、α―メチルアクリロニトリル、
三重結合を有する化合物として、フェニルアセチレン、1−ヘキシン、1−ヘプチン、5−ヒドロキシペンチン、
二重結合も三重結合も有しない化合物として、9−オクチル−9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンである。
本発明において、第2基質の量は、第1基質1モルに対して、0.5〜3モル、例えば0.8〜2.0モル、特に1モルである。
カップリング反応においては、塩基が存在してもよい。塩基の具体例は、アルカリ金属塩(例えば、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム)、アミン(例えば、ピペリジン、ピリジン、トリエチルアミン)、水酸化物(例えば、水酸化カリウム)、である。塩基の量は、第1基質1当量に対して、1当量以上、例えば1.0〜10当量であってよい。
図1は、本発明で用いる反応装置の概略を示す。反応装置は、シリンジポンプ10およびマイクロリアクター20を有する。マイクロリアクター20において、粒状のパラジウム触媒(Pd/C、すなわち、炭素に担持されたパラジウム)が、Xcmの距離にわたって充填されている。
図2は、マイクロリアクター20の一部分の拡大断面図である。粒状のパラジウム触媒22がマイクロリアクター中に充填されている。基質24は矢印の方向(右方向)に流動する。
(1)マイクロリアクターの入口から基質を導入し、
(2)マイクロリアクター中で基質を触媒と接触させてカップリング反応を行って反応生成物を生成させ、
(3)反応生成物がマイクロリアクター出口から出てくる。
内径1.0mmのステンレス製チューブ(長さ:5cm、10cmまたは15cm)に、粒状パラジウム触媒を充填して、パラジウム充填マイクロリアクターを製造した。チューブの両末端のそれぞれにフィルターを装着し、チューブ内に粒状パラジウム触媒を保持した。得られたパラジウム充填マイクロリアクターを反応に用いた。
Mizoroki-Heckカップリング反応
パラジウム触媒として、Degussaから入手できるE105CA/W型(Pd量:5重量%、担体:カーボン、平均粒子寸法:20μm)を用いた。
p−ブロモニトロベンゼン(第1基質)0.505g(0.0025モル)、アクリル酸メチル(第2基質)0.253g(0.0025モル)、N−メチル−2−ピロリドン5.0mL、およびトリエチルアミン0.253g(0.0025モル)を混合し、溶液を得た。溶液をシリンジに装填した。シリンジから溶液を流速0.1mL/hでパラジウム充填マイクロリアクター(温度:140℃、長さ5cm)(マイクロリアクターには、乳鉢で微細粒にすりつぶした炭酸ナトリウム0.004g(0.000038モル)も充填されている。)に注入し、滞留時間20分で反応を行い、カップリング生成物を得た。収率は、92%であった。
薗頭カップリング反応
パラジウム触媒として、N.E.Chemcat(株)から入手できるAER型を用いた。
ヨードベンゼン(第1基質)0.51g(0.0025モル)とフェニルアセチレン(第2基質)0.306g(0.003モル)(第1基質と第2基質のモル比1:1.2)に、ピロリジン0.213g(0.003モル)およびN,N−ジメチルアセトアミド5.0mLを混合し、シリンジに装填した。シリンジから溶液を流速0.1mL/hでパラジウム充填マイクロリアクター(温度:100℃)に注入し、反応を行い、カップリング生成物を得た。以下のような収率を得た。
20 マイクロリアクター
22 粒状のパラジウム触媒
24 基質
Claims (7)
- パラジウム触媒の存在下でカップリング反応を行う方法であって、固体のパラジウム触媒を充填した流通式マイクロリアクターを用いることを特徴とする方法。
- 流通式マイクロリアクターにおいて、パラジウム触媒の存在下で第1基質および第2基質からカップリング反応生成物を製造する方法であって、
固体粒子のパラジウム触媒がマイクロリアクターに充填されている方法。 - 第1基質が、パラジウムに対して酸化的付加を行いうる化合物であり、第2基質が、脱離する基を有する化合物である請求項2に記載の方法。
- 第1基質、第2基質および反応生成物が次式:
R−X +A−R’ → R−R’
[式中,Rは、不飽和または飽和の脂肪族基、芳香族基、芳香脂肪族基、
R’は、炭素原子を有する有機基、
Xは、ハロゲン原子、トリフラート、ジアゾニウム塩、またはスルホナート、
Aは、脱離する基である。]
で示される請求項2に記載の方法。 - 第1基質が、ハロゲン含有化合物であり、ハロゲン−炭素結合を有する請求項2に記載の方法。
- 基質と反応生成物との組み合わせが、
(1)R−X + H2C=CH−R” → R−HC=CH−R”
(2)R−X + HC≡C−R” → R−C≡C−R”
または
(3)R−X + A1−R” → R−R”
[RおよびR”は、不飽和または飽和の脂肪族基、芳香族基、芳香脂肪族基、
Xは、ハロゲン原子、トリフラート、ジアゾニウム塩、またはスルホナート、
A1は、脱離する基である。]
である請求項1または2に記載の方法。 - 固体粒子のパラジウム触媒を充填した流通式マイクロリアクター。
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