JP2006182570A - 耐食性部材およびその製造方法並びに半導体・液晶製造装置用部材 - Google Patents

耐食性部材およびその製造方法並びに半導体・液晶製造装置用部材 Download PDF

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Abstract

【課題】アルミナ結晶またはイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)結晶を主結晶とする焼結体において、YAG粒子の粒成長や偏析により機械的特性が低下しやすく、耐食性を向上できなかった。
【解決手段】耐食性部材を、金属元素としてAlをAl換算で70〜98質量%、YをY換算で2〜30質量%含有し、アルミナ結晶またはイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)結晶を主結晶とする焼結体から形成し、前記YAG結晶の数の70%以上が、前記アルミナ結晶に接しているものとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐食性部材およびその製造方法並びに半導体・液晶製造装置用部材に関する。特に、本発明の耐食性部材は、半導体・液晶製造装置に用いる腐食性ガスまたはそのプラズマに対する高い耐食性が求められる部材、例えば、チャンバー、マイクロ波導入窓、シャワーヘッド、フォーカスリング、シールドリング等に用いると好適なものである。
近年、例えば、半導体・液晶製造の際のエッチングや成膜などの各工程において、プラズマを利用して被処理物への処理を施す技術が盛んに使用されている。この工程には、反応性の高いフッ素系、塩素系等のハロゲン元素を含む腐食性ガスが多用されている。従って、半導体・液晶製造装置に用いられる腐食性ガスやそのプラズマに接触する部材には高い耐食性が要求されており、このような耐食性部材には、アルミナ焼結体などのセラミックスが用いられてきた。
最近では、アルミナ焼結体よりも耐食性の優れたセラミックスとして、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)焼結体が注目されている。しかしながら、YAG焼結体はアルミナ焼結体よりも耐食性に優れているものの、一般的に破壊靱性などの機械的特性がアルミナ焼結体よりもかなり劣っているため、機械的特性が要求される耐食性部材には適用が困難であった。このため、機械的特性がYAGよりも優れ、かつアルミナよりも耐食性が優れた、アルミナとYAGの結晶からなる焼結体が耐食性部材として注目されてきている。
例えば、焼結体をハロゲン元素が含まれた腐食性ガスやそのプラズマに接触する部材等に適用した技術が特許文献1〜4に開示されている。
特許文献1には、主成分であるAlの平均結晶粒径が10〜40μm、このAlに含有されるYAGの平均結晶粒径が0.1〜1μmであり、含有されるYAGの結晶粒子数が10μm×10μmの範囲の面積中に20個以上である耐プラズマ性アルミナ焼結体が記載されている。この焼結体は、Alが100重量%に対して、外掛けで、Y化合物がY換算で1〜10重量%、Mg化合物がMgO換算で0.01〜0.1重量%である原料を用い、成形した後に、1600℃までの昇温速度を10〜100℃/時間とし、1600〜1850℃の温度にて、還元性雰囲気で焼成することにより製造されている。ここでY化合物としては、塩化イットリウム、酢酸イットリウム、硝酸イットリウムなど、Mg化合物としては、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウムを用いるのが好ましく、これら化合物を用いることにより、アルミナ組成内への分散性がよくなり、Alが選択的に腐食されるのを防ぐことが可能となり、機械的特性を劣化させることなく、耐プラズマ性を向上させることができると記載されている。
特許文献2には、アルミナを50〜97重量%、YAGを3〜50重量%含有する焼結体であって、該焼結体中における上記アルミナの平均結晶粒子径が2〜10μm、YAGの平均結晶粒子径が1.5〜5μmで、かつYAGの平均結晶粒子径に対するアルミナの平均結晶粒子径の比が1より大きく、7より小さい高強度アルミナ質焼結体が記載されている。この焼結体は、アルミナ純度が95%以上、平均粒子径が1〜15μm、BET比表面積が1〜4m/gのアルミナ粉末と、平均粒子径0.6〜1.2μm、BET比表面積2〜5m/gのYAG粉末とを、アルミナ粉末50〜97重量%、YAG粉末3〜50重量%の範囲で混合し、有機バインダーを添加混合、造粒、成形、焼成することにより製造されている。
特許文献3には、YAG粒子を0.5〜12重量%含有し、残部が実質的にアルミナからなり、YAG粒子の平均結晶粒子径が0.05〜1.5μm、アルミナの平均結晶粒子径が0.5〜5.0μmで、YAG粒子が焼結体の粒界及びアルミナ粒子内の双方に分散している高強度、高硬度アルミナ焼結体が記載されている。このセラミックスは、水溶性のアルミニウム塩とイットリウム塩とを水に溶解した溶液を作製し、この溶液にアルミナ粉末を添加してアンモニアで中和反応させることによりAl−Y系水酸化物とアルミナからなる混合粉体を得た後、この混合粉体を300〜1000℃で仮焼きすることによりYAG粒子を分散させたアルミナ粉体を作製し、得られたアルミナ粉体を造粒、成形、焼成することにより製造されている。
特許文献4には、多結晶α−Alと多結晶YAGとが微細なレベルで均質に海島構造を形成し、多結晶α−Alが海を、多結晶YAGが島を、それぞれ形成し、コロニ−が存在せず、大気中1500℃での三点曲げ強度が500MPa以上であるセラミックス複合材料が記載されている。
そして、特許文献4の複合材料の製造方法としては、所望する成分比率のセラミックス複合材料を生成する割合のα−Al粉末及びY粉末を乾式混合法や湿式混合法で混合し、混合粉末を調製する。次に、この混合粉末を公知の溶解炉、例えばア−ク溶解炉を用いて溶解する温度、例えば1800〜2500℃に加熱して溶解する。引き続き、上記の溶解物をそのままルツボに仕込み、一方向に凝固させることにより得られる。
特開2002−37660号公報 特開2002−255634号公報 特開平11−335159号公報 特開平8−81257号公報
しかし、近年、半導体チップの小型化、回路等の細密度化に対応して、半導体・液晶製造装置のエッチングや成膜工程で腐食やパーティクル等の発生をさらに抑制できる高い耐食性の部材の要求が強くなっているため、従来の耐食性部材の耐食性レベルではこの要求を満足することができなくなってきている。例えばLSIに用いるシリコン半導体を製造する過程で、Siウエハにパーティクルが付着すると配線が断線するため、パターン幅が微細である程、シリコン半導体の製造でウエハに付着するパーティクルの粒径を縮小する必要がある。特に、ウエハ処理工程においてウエハに付着するパーティクルは半導体の不良の主原因となる。従来の耐食性部材は、腐食性雰囲気、特にハロゲン元素を含む腐食性ガスのプラズマ中で使用すると、表面が腐食されて亀裂や大きなパーティクルが発生する問題や、機械的強度が低いため割れたり、クラックが入ったりする問題が発生するため、微細化が進んだ半導体の製造工程に用いることができなくなっている。
そのため前述したように、アルミナ焼結体よりも耐食性が優れ、YAG焼結体の機械的特性を補ったアルミナ−YAG系焼結体が注目されてきているが、耐食性や機械的特性の点ではなお不十分であった。
従来のアルミナ−YAG系焼結体の耐食性や機械的特性が不十分であったのは、アルミナ−YAG系焼結体中のYAG結晶が凝集や偏析を起こすからと考えられている。本発明者らはアルミナ−YAG系焼結体において、従来のアルミナ−YAG系焼結体に含まれるYAG結晶が凝集や偏析を起こすことによって、アルミナ結晶に接するYAG結晶の割合が70%未満となり、その結果、耐食性や機械的特性が悪くなることを知見した。そして、特許文献1〜4のセラミックスを調べた結果、次のようなことがわかった。
特許文献1のように、アルミナ粉末と酸化イットリウム前駆体(塩化イットリウム、酢酸イットリウム、硝酸イットリウム)粉末とを混合して作製すると、焼成過程で、まず、酸化イットリウム前駆体から酸化イットリウム粒子が生成し、次いでこの酸化イットリウム粒子とアルミナ粒子が反応してYAG粒子が生成し、焼結・粒成長する。一方、酸化イットリウム粒子と反応しなかったアルミナ粒子は、YAG粒子の焼結が進んだ後で焼結・粒成長する傾向があるため、先に焼結・粒成長したYAG結晶が凝集しやすくなると考えられるからである。また、YAG結晶が偏析するのは、アルミナ粉末と酸化イットリウム前躯体の粉末とを機械的に混合、成形して作製しているため、アルミナ粉末と酸化イットリウム前躯体の粉末とが良好に混ざりにくく、その結果、アルミナ粉末中の酸化イットリウム前躯体は偏析することになり、これを用いて成形体を作製し、焼成すると、アルミナと反応して生成するYAG結晶が、セラミックス中に偏析することとなるのである。このようなYAG結晶の凝集、偏析が起こると、YAG結晶がアルミナ結晶に接することなくYAG結晶にのみ接している割合が増加するため、焼結体に含まれるYAG結晶のうちアルミナ結晶に接しているものの割合が低下し、この割合が70%未満となりやすかった。この割合はYAG結晶の凝集や偏析が著しく発生している程低下していた。
また、特許文献2のようにアルミナ粉末とYAG粉末とを混合して作製したセラミックスも、同様にYAG結晶の凝集や偏析が起こり、アルミナ結晶に接するYAG結晶の割合が70%未満となり易いといえる。
さらに、特許文献3のセラミックスでは、焼成中にまずAl−Y系水酸化物の大部分が、YAG粒子、またはYAG粒子全体がアルミナに包含された粒子となる。この生成したYAG粒子の焼結・粒成長が進行した後、アルミナ粒子と、YAG粒子全体がアルミナに包含された粒子とが共に焼結・粒成長すると考えられる。その結果、YAG結晶は、異常粒成長して偏析したり、アルミナ結晶の粒内に包含されて存在したりしやすいので、YAG結晶のうちアルミナ結晶に接しているものの割合が低下し、この割合が70%未満となる恐れがあった。特に、Al−Y系水酸化物が微細な粒子で構成されている場合、アルミナ結晶の焼結・粒成長の前にYAG粒子の焼結・粒成長が起こりやすいので、YAG結晶が特に凝集しやすく、この割合が70%未満となっていた。また、特許文献3のセラミックスは、アルミナ結晶の粒内にYAG結晶があるため熱伝導率が小さく、熱衝撃などの熱応力が加わった際に亀裂が生じたり、割れたりし易いという問題もあった。
また、特許文献4のセラミックスは、一般的な焼結法ではなく、α−Al粉末とY粉末の混合粉末を溶解し、一方向に急激に凝固する方法により製造されているので、YAG結晶とアルミナ結晶が共に、凝固方向に針状や棒状に伸び巨大な結晶、すなわちセラミックス全体に渡って偏析した結晶が形成されているとともに、セラミックス中の部位によってYAGの含有割合が異なることとなっていた。このため、YAG結晶のうちアルミナ結晶に接しているものの割合が70%未満となる恐れがあった。また、この割合が平均で70%以上の場合でも、全ての結晶がアルミナ結晶またはYAG結晶からなる部位がセラミックス中に部分的に存在していた。
したがって、特許文献1〜4のセラミックスはいずれも、例えばハロゲン元素を含む腐食性ガスのプラズマ中での耐食性がアルミナ結晶に比べ良好であるYAG結晶が凝集や偏析していることから、十分な耐食性を得られないという問題を有するとともに、アルミナ結晶に比べて破壊靱性の小さいYAG結晶が凝集したり、偏析したりしているので、セラミックスに機械的応力が印加された際、凝集や偏析したYAG結晶からマイクロクラックの進展が進み、その結果、セラミックスの破壊靱性が小さくなって、機械的強度が低下するという問題があった。また、特許文献4のセラミックスは針状や棒状のアルミナ結晶が、その長手方向で数十μm以上の長さとなって形成されているため、耐食性部材として用いた場合、このアルミナ結晶が大きく腐食されるという問題があった。
ここで、凝集とは多くのYAG結晶が集まって互いに接している状態、偏析とはYAG結晶が焼結体中の一部に部分的に多く集まっている状態を言い、凝集と偏析が同時に起こっている場合もある。
以上のことから、本発明は耐食性と機械的特性が共に優れた耐食性部材を提供することを目的とする。
また、その製造方法を提供することを目的とするとともに、本発明の耐食性部材を用いた半導体・液晶製造装置用部材をも提供することを目的とする。
したがって、本発明の耐食性部材は、金属元素としてAlをAl換算で70〜98質量%、YをY換算で2〜30質量%含有し、アルミナ結晶またはイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)結晶を主結晶とする焼結体からなる耐食性部材であって、前記YAG結晶の数の70%以上が、前記アルミナ結晶に接していることを特徴とする。
さらに、本発明の耐食性部材は前記YAG結晶が、前記アルミナ結晶の数の75%以上に接していることを特徴とする。
また、本発明の耐食性部材は少なくとも前記アルミナ結晶と接するYAG結晶の平均粒径が0.5〜8μmであることを特徴とする。
また、本発明の耐食性部材は前記アルミナ結晶の平均粒径が1〜9μmであることを特徴とする。
また、本発明の耐食性部材は炭素の含有量が100質量ppm以下であることを特徴とする。
また、本発明の耐食性部材はMgをMgO換算で0.05〜1質量%含有することを特徴とする。
そして、本発明の耐食性部材の製造方法は多孔質アルミナ粒子の細孔にY3+イオンを含む溶液を浸透、熱処理して、前記細孔にY化合物が浸透した複合粒子を含む原料粉体を作製し、前記原料粉体を成形、焼成して焼結体からなる耐食性部材を作製することを特徴とする。
加えて、本発明の半導体・液晶製造装置用部材は前記耐食性部材を用いたことを特徴とする。
金属元素としてAlをAl換算で70〜98質量%、YをY換算で2〜30質量%含有し、アルミナ結晶またはイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)結晶を主結晶とする焼結体からなる耐食性部材であって、前記YAG結晶の数の70%以上が、前記アルミナ結晶に接する耐食性部材とすることにより、アルミナよりも優れた耐食性を備え、従来のアルミナ−YAG系焼結体よりも、機械的特性に優れかつ腐食性雰囲気に曝された場合にパーティクルが発生しにくい耐食性部材とすることができる
前記YAG結晶が前記アルミナ結晶の数の75%以上に接しているものとすることにより、さらに耐食性が向上する。
前記アルミナ結晶に接するYAG結晶の平均粒径を0.5〜8μmとすることにより、耐食性部材に機械的応力が加わってマイクロクラックが生じた場合、アルミナ結晶にYAG結晶が接していることからマイクロクラックの進展を抑制することができるので、さらに機械的特性が向上する。
前記アルミナ結晶の平均粒径を1〜9μmとすることにより、耐食性の向上を確実なものとし、機械的強度をさらに向上させた耐食性部材を得ることができる。
また、炭素の含有量を100質量ppm以下とすることにより、耐食性をより向上させることができる。
また、MgをMgO換算で0.05〜1質量%含有させることにより、アルミナ結晶の異常粒成長を抑制できるので、耐食性と機械的特性がさらに向上した耐食性部材とすることができる。
多孔質アルミナ粒子の細孔にY3+イオンを含む溶液を浸透、熱処理して、前記細孔にY化合物が浸透した複合粒子を含む原料粉体を作製し、前記原料粉体を成形、焼成して焼結体からなる耐食性部材を作製する耐食性部材の製造方法によって、アルミナ結晶に接するYAG結晶の生成に寄与する割合が増加し、その結果より優れた耐食性部材を製造することができる。
本発明の耐食性部材によって半導体・液晶装置用部材を構成すれば、製造装置中でハロゲン元素を含む腐食性ガスまたはそのプラズマに曝されても、優れた耐食性を有し、部品交換の頻度を少なくできるために、製造コストを抑えることが可能となる。
以下に本発明について詳述する。
図1は、本発明の耐食性部材を構成する焼結体のアルミナ結晶とYAG結晶の配置を示す模式図である。
本発明の耐食性部材18は、金属元素としてAlをAl換算で70〜98質量%、YをY換算で2〜30質量%含有し、結晶を主結晶とする焼結体からなり、アルミナ結晶12またはイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG=YAl12 以下、YAGと称す)結晶14(図1で白く表した結晶)を主結晶とし、YAG結晶14の数の70%以上が、アルミナ結晶12に接するYAG結晶16(図1で白く表した結晶のうち、アルミナ結晶12に接する結晶)を有することを特徴とするものである。
これにより、アルミナ焼結体よりも優れた耐食性を備え、従来のアルミナ−YAG系焼結体よりも、機械的特性に優れかつ腐食性雰囲気に曝された場合にパーティクルが発生しにくい耐食性部材18とすることができる。
すなわち、YAG結晶14の数の70%以上が、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16を有していることから、YAG結晶の凝集や偏析を抑制でき、その結果、アルミナ焼結体よりも優れた耐食性を備え、従来のアルミナ−YAG系焼結体よりも、機械的特性に優れかつ腐食性雰囲気に曝された場合にパーティクルが発生しにくい耐食性部材18とすることができる。
本発明の耐食性部材18が耐食性に優れている理由は次のように考えられる。耐食性部材18は、アルミナ結晶12とYAG結晶16の境界付近において、YAG結晶16に接しているアルミナ結晶12に含まれるAl原子およびO(酸素)原子がYAG結晶16に含まれるAl原子およびO(酸素)原子を兼ねて配置されている割合が多いので、YAG結晶16とアルミナ結晶12の境界付近の結晶格子の不整合により発生するアルミナ結晶12の内部応力を小さくすることができ、その結果、YAG結晶16に接しているアルミナ結晶12の内部応力を小さくすることができると考えられる。このように内部応力が小さいと、アルミナ結晶12の格子欠陥が少なくなるので、YAG結晶16に接しているアルミナ結晶12の腐食が抑制されると考えられる。このような特徴を有することができるのは、本発明の耐食性部材18が後述のように、多孔質アルミナ粒子の細孔にY3+イオンを含む溶液を浸透、熱処理して、前記細孔にY化合物が浸透した複合粒子を含む原料を作製し、前記原料を成形、焼成して作製されていることに起因する。
つまり、焼結体をハロゲン元素が含まれた腐食性ガス又はそのプラズマ、高温高圧の水蒸気、金属ナトリウムなどの腐食種を含む腐食性雰囲気中に暴露した場合、アルミナ結晶の結晶格子にAl、O(酸素)の欠損や配列の乱れ、YAG結晶の結晶格子にAl、Y、Oの欠損や配列の乱れなどの格子欠陥があると、これら格子欠陥に位置したり接したりする原子は電気的、結晶構造的に不安定となるため、腐食種はこの格子欠陥のある結晶格子の原子を選択的にエッチング(系外へ除去されること)しやすくなり、このエッチングが連鎖的に起こることによってアルミナ−YAG系焼結体表面がエッチングされてパーティクルが発生する。しかしながら、前述のようにアルミナ結晶12の内部応力が小さいと、前記格子欠陥を少なくすることができるので、エッチングされにくい耐食性部材18とすることができる。特に、アルミナ結晶12はYAG結晶14、16に比べてエッチングされやすいので、アルミナ結晶12のエッチングを抑制した本発明の耐食性部材18は、パーティクルの発生を少なくすることができる。
そして、YAG結晶16が接したアルミナ結晶12の内部応力は、次のようなX線回折による応力測定の原理を用いて確認することができる。
先ず、X線回折による応力測定の原理では、多結晶体からなる試料に内部応力がなければ、ブラッグの回折条件を満足する回折X線は円錐状の方向に反射され、このとき入射X線の反対側に垂直に写真フィルムを置けば、デバイ環と呼ばれる円形の回折像が得られる。逆に、試料に内部応力が存在すると、X線の入射角度を変えた場合、デバイ環のプロフィルが変化する。即ち、内部応力が存在すると、多結晶体を構成している結晶の格子面間隔が変化し、回折X線のブラッグ角θは応力のない状態の反射位置から移動するとともにその幅(例えば半値幅)が広がる。このブラッグ角θ等の変化を精度よくとらえて内部応力を知る方法がX線回折による応力測定の原理である。
なお、本発明の耐食性部材18に含まれるアルミナ結晶12の内部応力を測定するには、マイクロメーターオーダー以下の範囲にかかる応力を測定することが必要となる。このような応力測定は例えば次のように行うことができる。アルミナ結晶12をX線回折法により測定する場合、アルミナ結晶12の回折X線の軌跡をイメージングプレート(X線照射によりプレート内にエネルギーが蓄えられ、このエネルギーがレーザー照射によって光に変換されて、この光を画像化することができるプレート)を用いて得られる画像を、電算機を援用して画像処理して画像処理像を作成する。次いで、デバイ・シェラー法を用いて、得られた画像処理像からブラッグ角θを求め、これにより内部応力を計算する。
ここで、イメージングプレートの代わりに、蛍光板とCCD(電荷結合素子:charge-coupled device)を組み合わせたものとし、回折X線をリアルタイムで画像処理して電算機に取り込む方法により、内部応力を測定することもできる。
一方、本発明の耐食性部材18が機械的特性に優れるのは、一般に、アルミナ結晶はYAG結晶よりも破壊靱性が高いので、焼結体が機械的応力を受けた場合、主に、YAG結晶の端部、特にアルミナ結晶に接している部分を起点とするマイクロクラックが発生しやすく、このマイクロクラックが進展してアルミナ−YAG系焼結体に亀裂が生じたり、割れたりする。本発明の耐食性部材18は、機械的応力がかかったとしても、アルミナ結晶12とYAG結晶16の境界付近において、アルミナ結晶12に含まれるAl原子およびO(酸素)原子がYAG結晶16に含まれるAl原子およびO(酸素)原子を兼ねて配置されている割合が多いので、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の端部からマイクロクラックが発生、進展しにくいと考えられる。このため、耐食性部材18に機械的応力がかかったとしても、マイクロクラックの亀裂や割れを生じさせるようなYAG結晶14中のマイクロクラックの進展を抑制することができるので、耐食性部材18は機械的特性に優れていると考えられる。
ここで、前記主結晶とは、耐食性部材の任意断面の面積比率を100%とした場合、主結晶となる成分の面積比率が少なくとも50%以上ある結晶であり、主結晶としてはアルミナ結晶またはYAG結晶が選ばれる。
また、本発明の耐食性部材18において、金属元素としてAlをAl換算で70〜98質量%、YをY換算で2〜30質量%の範囲で含有させるのは、アルミナ結晶12に接するYAG結晶16の数を多くするためである。この範囲外であると、アルミナ結晶12に接するYAG結晶16の数が、耐食性部材18に含まれるYAG結晶14の数の70%未満となる恐れがある。アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の割合を70%以上とするのは、アルミナ結晶12の内部応力を減少させ、格子欠陥を減少させて腐食を防止するためと、アルミナ結晶12とYAG結晶16の境界付近において、アルミナ結晶12に含まれるAl原子およびO(酸素)原子がYAG結晶16に含まれるAl原子およびO(酸素)原子を兼ねて配置されている割合が多いこととから、マイクロクラックの進展が阻止されて機械特性を向上させるためであり、YAG結晶14の数のうちアルミナ結晶12に接している割合が70%未満であると、耐食性と機械的特性を向上させることができないからである。
なお、YAG結晶14の数のうち、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合は、YおよびAlの含有量、YのうちYAGの生成に寄与する割合、YAG結晶16の耐食性部材18中での分散状態、アルミナ結晶12およびYAG結晶16の結晶粒径分布によって変化する。本発明においては、AlをAl換算で70〜98質量%、YをY換算で2〜30質量%含有する組成とした上で、後述する本発明の耐食性部材の製造方法によって、YのうちYAGの生成に寄与する割合を実質的に100%とし、アルミナ結晶12およびYAG結晶16の結晶粒径分布を制御し、YAG結晶16を耐食性部材18中に良好に分散させることにより、YAG結晶14の数のうち、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合を70%以上に制御することができる。
また、耐食性部材18の耐食性をさらに向上させるためには、YAG結晶14の数のうち、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合を85%以上、Yの含有量の下限をY換算で5質量%、Alの含有量の上限をAl換算で95質量%とすることがさらに好ましい。また、耐食性部材18の耐食性を特に向上させるためには、YAG結晶14の数のうち、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合を95%以上、Yの含有量の下限をY換算で9質量%、Alの含有量の上限をAl換算で91質量%とすることが特に好ましい。
また、耐食性部材18の機械的特性をさらに向上させるためには、YAG結晶14の数のうち、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合を85%以上、Yの含有量の上限をY換算で25質量%、Alの含有量の下限をAl換算で75質量%とすることがさらに好ましい。また、耐食性部材18の機械的特性を特に向上させるためには、YAG結晶14の数うち、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合を95%以上、Yの含有量の上限をY換算で20質量%、Alの含有量の下限をAl換算で80質量%とすることが特に好ましい。
また、アルミナ結晶12に接するYAG結晶16は、平均で、アルミナ結晶12の周囲の少なくとも30%以上に接していることが好ましく、さらに好ましくはアルミナ結晶12の周囲の少なくとも50%以上に接していることが好ましい。また、耐食性を向上させるためには、本発明の耐食性部材18に含まれる結晶のうち、アルミナ結晶12とYAG結晶14を併せたものの割合は95%以上であることが好ましい。好ましくは、アルミナ結晶12に接するYAG結晶16は、アルミナ結晶12の周囲を平均で50%以上囲繞して接するよう形成されていることが好ましい。
本発明の耐食性部材18に含まれるアルミナ結晶12およびYAG結晶14の結晶構造の同定は、透過型電子顕微鏡(TEM)または微少部X線回折法により行うことができるが、TEMによる測定の方が分析精度の高さから好ましい。TEMによる測定は、耐食性部材18の表面または断面を高倍率で拡大して各結晶の電子線回折像を解析し、得られた解析結果と一致するJCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)カードの回折パターンを探して同定する。JCPDSカードのNo.は、例えば、アルミナ結晶12のX線回折パターンについてはNo.46−1212、YAG結晶14についてはNo.33−40を参照することができる。YAG結晶14のうち、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合は次のように測定する。
本発明の耐食性部材18に含まれるアルミナ結晶12に接しているYAG結晶16は、アルミナ結晶12の周りに3次元的に接したものであることから、このYAG結晶16を3次元的に測定することは困難である。このため、耐食性部材18の焼肌面または断面を観察し、アルミナ結晶12の周りを2次元的に接するYAG結晶16の割合を求め、この割合を本発明の耐食性部材18に含まれるYAG結晶14のうちアルミナ結晶12に接しているYAG結晶14の割合とする。具体的には、この割合は例えば次のように測定することができる。なお、測定面は、焼肌面または断面のいずれかとする。断面を測定面とする場合は、予め断面を鏡面加工する。
先ず、アルミナ結晶12とYAG結晶14を識別する第1の識別方法について説明する。測定面を波長分散型X線マイクロアナライザーを用いて、例えば、加速電圧15kV程度、プローブ電流5×10−10A程度、倍率1000〜5000倍程度での反射電子像の写真をとる。次に、例えば、加速電圧15kV、プローブ電流1×10−8A〜1×10−7A程度の条件で、100〜300個程度の結晶を選び、結晶毎にAl、Yの各元素の特性X線の強度を求めて平均することにより、Al、Yの特性X線の強度の平均値IAl、Iを求める。IAl、Iを求める際に、測定する結晶以外の特性X線の影響をできるだけ受けないよう、プローブ電流の設定などに注意する。各結晶の特性X線の強度のうち、Alの特性X線の強度がIAlよりも小さく、かつYの特性X線の強度がIよりも大きい結晶をYAG結晶14とする。また、Alの特性X線の強度がIAlよりも大きく、Iよりも小さい結晶をアルミナ結晶12とする。特性X線の強度がこれらに該当しない結晶は接しているYAG結晶16の割合の計算から除外する。
次に、第2の識別方法について説明する。走査型電子顕微鏡(SEM)で測定面の反射電子像のうち後方散乱電子像の写真を、倍率1000〜5000倍程度で撮る。この写真に写っている結晶の大部分は、アルミナ結晶12とYAG結晶14に大別できる。すなわち、アルミナ結晶12はYAG結晶14に比べて濃い色をしており、YAG結晶14はアルミナ結晶12よりも白っぽい色をしている。このような色調の違いにより、アルミナ結晶12とYAG結晶14を識別することができる。これら第1、第2の識別方法のうち、第2の識別方法の方が、簡単でかつ精度の良い識別が可能である。
アルミナ結晶12とYAG結晶14を識別した後、YAG結晶14のうち、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合を計算すればよい。なお、粒径が0.1μm以下の結晶は、耐食性と機械的特性に及ぼす影響が小さいため、前記割合の計算の対象外とする。
そして、本発明の耐食性部材18は、さらに、YAG結晶14がアルミナ結晶12の数の75%以上に接していることが好ましい。
YAG結晶14の数のうちアルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合が70%以上であり、YAG結晶16がアルミナ結晶12の数の75%以上に接している。YAG結晶16をアルミナ結晶12の75%以上に接させることにより、次のような問題が発生する可能性を小さくすることができる。すなわち、耐食性部材18が腐食性ガス等に長時間曝され、その結果、耐食性の悪いアルミナ結晶12がYAG結晶16よりも多く腐食によりエッチングされてYAG結晶16が耐食性部材18表面から突出した表面状態となり、この状態からさらにアルミナ結晶12が腐食されて、耐食性部材18表面にあるYAG結晶16全体が露出することにより、YAG結晶16が大きなパーティクルとなって系外へ放出されるという問題である。この問題が発生する可能性を小さくすることができる理由は、次のように考えられる。YAG結晶16がアルミナ結晶12の数の75%以上に接していると、アルミナ結晶12がYAG結晶16よりも多く腐食されてYAG結晶16が僅かに突出した場合、アルミナ結晶12の周囲の少なくとも一部が、突出したYAG結晶16によって城壁のような形で囲まれたアルミナ結晶12の割合が増加するので、腐食性ガス等がアルミナ結晶12表面を流れる速度が低減してアルミナ結晶12の腐食が抑制される。その結果、YAG結晶16全体が露出されにくくなり、YAG結晶16が大きなパーティクルとなって系外へ放出されることが抑制される。このような、YAG結晶16がアルミナ結晶12の数の75%以上に接している耐食性部材18とするための製造方法は後述する。
なお、YAG結晶14のうちアルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の割合は、YおよびAlの含有量、アルミナ結晶12の耐食性部材18中での分散状態、アルミナ結晶12およびYAG結晶16の結晶粒径分布によって変化する。本発明においては、AlをAl換算で70〜98質量%、YをY換算で2〜30質量%含有する組成とした上で、後述する本発明の耐食性部材の製造方法により、YのうちYAGの生成に寄与する割合を実質的に100%とし、アルミナ結晶12およびYAG結晶16の結晶粒径分布をさらに制御し、アルミナ結晶12を耐食性部材18中に特に良好に分散させることにより、YAG結晶14の数のうち、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合を75%以上に制御することができる。
また、耐食性をさらに向上させるためには、YAG結晶14の数のうち、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合は85%以上がより好ましく、95%以上が特に好ましい。
YAG結晶14のうち、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合は、前述のように走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影したYAG結晶14のうち、アルミナ結晶12に接するYAG結晶16の数の割合を計算することにより求めることができる。
また、アルミナ結晶12に接するYAG結晶16の平均粒径は0.5〜8μmであることが好ましい。この理由は、耐食性部材18に機械的応力が加わってマイクロクラックが生じた場合、アルミナ結晶12に接するYAG結晶16がマイクロクラックの進展をさらに抑制することができるので、さらに機械的特性が向上するからである。YAG結晶16の平均粒径が0.5〜8μmの範囲外であると、マイクロクラックの進展を抑制する効果が少なくなるからである。また、YAG結晶16の粒径は、前記の後方散乱電子像の写真のYAG結晶16の結晶粒径を測定し、この粒径を平均して求める。なお、本発明の耐食性部材18に含まれる結晶の粒径は、測定面の写真に写っている結晶の輪郭に接する内接円と外接円の直径を平均して求めることができる。
また、YAG結晶16の平均粒径をDとするとき、YAG結晶16のうち、0.3D〜2.5Dの粒径の結晶が70体積%以上であることが好ましい。これにより、YAG結晶16の粒径分布を狭くすることができるので、YAG結晶16間の微細な気孔やYAG結晶16の異常粒成長がなくなり、その結果機械的特性をさらに向上させることができる。
YAG結晶16の平均粒径は1〜4μmとすることがさらに好ましい。
さらに、アルミナ結晶12の平均粒径は1〜9μmであることが好ましい。これは、アルミナ結晶12の平均粒径を1〜9μmとすることで、耐食性の向上をより確実なものとし、機械的強度をさらに向上させた耐食性部材18を得ることができるからである。
アルミナ結晶12の平均粒径が1μm未満であると、低温で焼結しやすいため、YAG結晶14が凝集する可能性が高くなって、アルミナ結晶12に接するYAG結晶16の割合が低下する恐れがあるからで、耐食性の点からは1μm以上であることが好ましい。また、粒径を小さくしたアルミナ粉末を用いなければならないため、製造コストの面からも1μm以上であることが好ましい。一方、アルミナ結晶12の平均粒径が9μmを超えると、耐食性部材18中に微細な気孔が多数存在することになり、その結果、機械的強度をさらに向上させることができなくなるからで、アルミナ結晶12の平均粒径はこの点で9μm以下であることが好ましい。さらには、アルミナ結晶12の平均粒径は、2〜7μmとすることがより好ましい。
また、アルミナ結晶12の平均粒径をDとするとき、アルミナ結晶12のうち、0.3D〜2.5Dの粒径の結晶が70体積%以上であることが好ましい。これにより、アルミナ結晶12の粒径分布を狭くすることができるので、アルミナ結晶12間の微細な気孔やアルミナ結晶12の異常粒成長がなくなり、その結果機械的特性をさらに向上させることができる。
また、本発明の耐食性部材18は、炭素の含有量が100質量ppm以下であることが好ましい。耐食性部材18に炭素が存在すると、この炭素が遊離炭素となって腐食の原因となったり、結晶格子間あるいは結晶格子内に固溶する炭素が多くなって結晶格子が歪み、これによって格子欠陥が低減できなくなったりして腐食の原因となる可能性があるからで、耐食性部材18中の炭素はできる限り少ない方がよい。このことにより、耐食性部材18中の炭素の含有量は100ppm以下が好ましい。炭素の含有量が100質量ppmを越えると、前記遊離炭素が多くなったり、前記結晶格子の歪みによる格子欠陥を低減させることができなかったりするため耐食性をより向上させることができなくなる。さらに、炭素の含有量は60ppm以下とすることがより好ましい。
また、本発明の耐食性部材18は、MgをMgO換算で0.05〜1質量%含有することが好ましい。この理由は、これによってアルミナ結晶12の異常粒成長が抑制されて耐食性がさらに向上し、破壊靱性などの機械的特性がさらに向上した耐食性部材とすることができるからである。Mgの含有量がMgO換算で0.05質量%未満の場合は、アルミナ結晶12が焼成条件によっては異常粒成長する恐れがあるので耐食性をさらに向上させることができなくなるからである。また、Mgの含有量がMgO換算で1質量%を超えるとアルミナ結晶12とYAG結晶16の粒界に、MgOとAlが反応してスピネル(MgO・Al)が過剰に形成されるため、破壊靱性などの機械的特性をさらに向上させることができなくなるからである。したがって、Mgの含有量はMgO換算で0.1〜0.5質量%とすることが好ましい。
またさらには、本発明の耐食性部材18が含有する不可避不純物(Mgを除く)の比率を1000質量ppm以下とすることで、耐食性部材18内に析出する不可避不純物が抑制されるので、この不可避不純物がパーティクルとなって、飛散するのを防止することができる。
また、耐食性部材18は、気孔率が2%以下であることが好ましい。この理由は、ハロゲン元素が含まれた腐食性ガス又はそのプラズマに耐食性部材18が曝される面に存在する開気孔を抑えることができ、ここから発生するパーティクルの発生量を抑制することができるからであり、前記気孔率が2%を超えると前記耐食性をより向上させることが難しくなるからである。気孔率は0.3%以下であることがより好ましい。
さらに、本発明の耐食性部材18は熱伝導率が15W/m・K以上であることが好ましい。この理由は、これによって効率的に熱を放熱することができるので、例えばハロゲン元素を含むプラズマに曝されて耐食性部材に熱が加わった場合でも、この熱によって発生する熱応力を小さくすることができるからである。その結果、このような熱応力が発生しても亀裂や割れの発生が抑制された耐食性部材18とすることができる。熱伝導率が15W/m・K未満であると、この熱応力による耐食性部材18の亀裂や割れの発生を十分に抑制することができなくなる。熱伝導率は20W/m・K以上であることがより好ましい。
次に、本発明の耐食性部材の製造方法について説明する。
本発明の耐食性部材の製造方法は、多孔質アルミナ粒子の細孔にY3+イオンを含む溶液を浸透、熱処理して、前記細孔にY化合物が浸透した複合粒子を含む原料粉体を作製し、前記原料粉体を成形、焼成して焼結体からなる耐食性部材を製造するものである。
この製造方法により、YAG結晶16に接しているアルミナ結晶12の内部応力が小さくなるので、アルミナ結晶12の格子欠陥を少なくすることができ、その結果、YAG結晶16が接しているアルミナ結晶12の腐食が抑制され、パーティクルが発生しにくい耐食性部材18を製造することができる。また、本発明の耐食性部材18の製造方法によりYAG結晶14の70%以上をアルミナ結晶12に接させることができるので、YAG結晶14の凝集や偏在が抑制され、その結果、従来の焼結体よりも機械的特性に優れた耐食性部材18を製造することができる。
また、本発明の耐食性部材の製造方法によれば、多孔質アルミナ粒子の細孔にY化合物が浸透した複合粒子がYAG結晶14の核となってYAG結晶14の焼結・粒成長が行われる。これにより、第1に、耐食性部材18に含まれるYのほとんど全てがYAG結晶14の生成に寄与すること、第2に、複合粒子から生成するYAG結晶14が耐食性部材18中で非常に良好な分散状態を保ったままYAG結晶14の焼結・粒成長が進行すること、第3に、アルミナ結晶12とYAG結晶16が互いに粒成長を抑制し合ったまま、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合を増やすことができるよう、アルミナ結晶12とYAG結晶16の両者の結晶粒径分布が最適化されること、これらの3つが可能となり、その結果、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合を70%以上とすることができる。
本発明の耐食性部材18の製造方法によって耐食性と機械的特性に優れた耐食性部材18が製造できる理由を、具体的な本発明の耐食性部材の製造方法と共に次に説明する。
まず、多孔質アルミナ粒子前駆体を、例えば、次のような方法(Journal of the Ceramic Society of Japan, 112 [7] 409-411 (2004)に記載された方法:アルギン酸ゲルテンプレート中の固定化酵素を利用して多孔質アルミナ粒子前駆体であるAl(OH)球状粒子を合成する方法)により作製する。
すなわち、アンモニウムアルギン酸塩粒子とウレアーゼを含む水溶液を準備する。この水溶液と、尿素(CO(NH)およびアルミニウム硫酸塩を含む水溶液とを混合することにより、尿素による酵素加水分解を行わせてアルギン酸塩水溶液を作製する。これにより、アルギン酸塩水溶液は、Al3+イオンを有するアルギン酸塩の架橋結合によって、直径が数mmの不透明なアルギン酸ゲル球を含むものとなる。このアルギン酸ゲル球を尿素/アルミニウム硫化物を含む水溶液中、室温で数十時間に放置すると、ウレアーゼを含むアルギン酸ゲル球中で、アルミナの前駆体として直径数mmのAl(OH)粒子が沈殿する。この反応式は式(1)、(2)で表される。
N−CO−NH + HO→2NH + CO (1)
Al3+ +3NH + 3HO→Al(OH) +3NH+ (2)
得られたAl(OH)球状粒子を空気中で熱処理してAl(OH)をアルミナに変換した後、粉砕して、その内部に細孔を有する多孔質アルミナ粒子を作製する。
次に、得られた多孔質アルミナ粒子をY3+イオンを含む溶液、例えば硝酸イットリウム水溶液に含浸してスラリーを得た後、このスラリーを真空雰囲気に曝して多孔質アルミナ粒子の細孔内にY3+イオンを含む溶液を浸透させ、Y3+イオン含有溶液−多孔質アルミナ粒子複合スラリーを作製する。ここで、前記多孔質アルミナ粒子をY3+イオンを含む溶液に含浸したスラリーを真空雰囲気に曝すのは、Y3+イオンを含む溶液を多孔質アルミナ粒子の細孔中に充分浸透させるためであり、多孔質アルミナ粒子とY3+イオンを含む溶液を混合しただけでは、多孔質アルミナ粒子の細孔中にY3+イオンを含む溶液が浸透しにくいからである。
得られたY3+イオン含有溶液−多孔質アルミナ粒子複合スラリーを凍結乾燥し、前記細孔内に入り込んだ硝酸イットリウム溶液に含まれる水分を蒸発して硝酸イットリウムを前記細孔内に形成した多孔質アルミナ粒子の粉体を作製する。
得られた粉体を、酸素を含む雰囲気、例えば空気中250〜1200℃で仮焼して、前記細孔内に形成した硝酸イットリウムを酸化イットリウムへ変換し、細孔内に硝酸イットリウムが形成された多孔質アルミナ粒子からなる原料粉体を作製する。この原料粉体中の多孔質アルミナ粒子の細孔内は、主に硝酸イットリウムと空隙で構成されるが、好ましくは、得られた原料粉体を再度Y3+イオンを含む溶液に含浸し、真空雰囲気に曝した後、凍結乾燥、加熱し、細孔内の酸化イットリウムの量を増やした原料粉体とするのがよい。
なお、得られた原料粉体中には、多孔質アルミナ粒子の細孔内に入り込んでいない酸化イットリウム粒子が含まれる場合があり、この場合の原料粉体は、多孔質アルミナの細孔内に酸化イットリウムが形成された粒子と、酸化イットリウム粒子との混合物となる。
そして、本耐食性部材に含まれる結晶をアルミナ結晶またはYAG結晶を主結晶とするためには、得られた原料粉体の組成が、AlをAl換算で70〜98質量%、YをY換算で2〜30質量%とすることが好ましい。得られた原料粉体の組成が、AlをAl換算で70〜98質量%、YをY換算で2〜30質量%の範囲から若干外れた場合には、酸化イットリウム粉末またはアルミナ粉末を原料粉体に微量混合、粉砕して混合粉体を作製することもできる。
さらに、成形性を向上させるために、有機バインダーを添加、混合することが好ましく、得られた原料粉体、または前記混合粉体を公知の成形方法、例えば粉末プレス成形法により所定形状に成形して成形体を作製する。なお、この成形によって、多孔質アルミナ粒子内の細孔の空隙が圧縮され縮小する。
次に、得られた成形体を空気中1500〜1900℃で焼成する。この際、成形体に有機バインダーが含まれている場合は、熱処理による脱脂を行うことによって脱脂体を作製する。
得られた成形体または脱脂体の焼成中に、多孔質アルミナ粒子の細孔内に形成された酸化イットリウムは、多孔質アルミナ粒子の一部と反応してYAG粒子となり、さらにこのYAG粒子が焼結する。このYAG粒子の焼結は元々あった多孔質アルミナ粒子の各細孔に相当する部分で行われるため、YAG粒子は粒成長が抑制されて微細な結晶となり、かつ耐食性部材全体に渡って非常に良好な分散状態を保ったまま存在させることができる。
さらに耐食性部材の焼結が進むと、アルミナ粒子は微細なYAG結晶14に接して焼結・粒成長した結晶となり、その結果、アルミナ結晶12とYAG結晶16の境界付近では、互いの結晶の格子が良好に整合することとなる。これにより、アルミナ結晶12とYAG結晶16の境界付近において、YAG結晶16に接しているアルミナ結晶12に含まれるAl原子およびO(酸素)原子がYAG結晶16に含まれるAl原子およびO(酸素)原子を兼ねて配置されている割合が多くなると考えられる。また、このように格子が良好に整合した状態で焼結が終了するので、前記境界付近に作用するアルミナ結晶12の内部応力が小さい焼結体が得られる。したがって、YAG結晶16が接したアルミナ結晶12の耐食性が向上し、パーティクルの発生が少なく耐食性に優れた耐食性部材18を製造することができる。また、本発明の耐食性部材の製造方法によって、耐食性部材18全体に渡って非常に良好な分散状態を保ったまま存在するYAG結晶14の70%以上を、内部応力の小さいアルミナ結晶12に接して存在させることができるので、機械的応力などが耐食性部材18に印加されてYAG結晶16にマイクロクラックが生じた場合でも、このマイクロクラックがアルミナ結晶12に進展してアルミナ結晶12にクラックを生じさせることを抑制できるので、機械的特性に優れた耐食性部材18を製造することができる。
次に、より好ましい本耐食性部材の製造方法を説明する。
まず、前記Y3+イオンを含む水溶液中のY3+イオン濃度を、この水溶液1L当たりY(NO換算で0.2M以上となるように高く制御することにより、前記細孔中に生成するY化合物の量を増加させることができるので、YAG結晶14がアルミナ結晶12の数の75%以上に接している耐食性部材18を製造することができる。このようにして製造された耐食性部材18は、より耐食性が向上したものとなる。
また、本発明の耐食性部材の製造方法において、さらに、前記水溶液中のY3+イオン濃度を高く制御することにより、前記複合粒子から生成するYAG結晶の核の数が増加し、かつこの核が良好な分散状態を保ったまま焼結・粒成長してYAG結晶14となって、アルミナ結晶12に接するYAG結晶16の数を増加させることができる。その結果、YAG結晶14の数のうち、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合を75%以上に制御することができる。
さらに、前記細孔内に形成した硝酸イットリウムを酸化イットリウムへ変換するときの仮焼温度を300〜1000℃とすることにより、アルミナ結晶12に接するYAG結晶16の平均粒径を0.5〜8μmである耐食性部材18を製造することができる。このようにして製造された耐食性部材18は、機械的特性がより向上したものとなる。
またさらに、前記多孔質アルミナ粒子の平均粒径を0.3〜7μmとすることにより、アルミナ結晶の平均粒径を1〜9μmに制御でき、その結果さらに耐食性に優れた耐食性部材18を製造することができる。
また、前記脱脂体の炭素量を300質量ppm以下とすることにより、耐食性部材18の炭素の含有量を100質量ppm以下に制御することができ、その結果、耐食性がさらに向上した耐食性部材18を製造することができる。
さらに、前記原料粉体または前記混合粉体にMgOを0.05〜1質量%となるように添加することにより、MgをMgOで0.05〜1質量%含有する耐食性部材18を製造することができ、このように製造された耐食性部材18は耐食性がさらに向上し、かつ破壊靱性などの機械的特性がさらに向上したものとなる。
またさらに、前記成形体の相対密度を50%以上とし、成形体の焼成収縮完了後の焼成温度保持を1〜20時間に制御することにより、気孔率が2%以下である耐食性部材18を製造することができる。このように製造された耐食性部材18は、ハロゲン元素が含まれた腐食性ガス又はそのプラズマに曝された面に存在する開気孔内から発生するパーティクルの発生量を抑制することができる。
また、前記原料粉体の組成を、AlをAl換算で70〜98質量%、YをY換算で2〜30質量%とし、Mgを除く不可避不純物の含有量を1000質量ppmに制御する製造方法とすることで、熱伝導率が15W/m・K以上である耐食性部材18を製造することができる。また、この製造方法により、大きな熱応力がかかっても亀裂や割れの発生を抑制することができる耐食性部材18を製造することができる。
本発明の耐食性部材18は、ハロゲン元素を含む腐食性ガスまたはそのプラズマに対する耐食性に優れているため、半導体・液晶製造装置用部材に用いるとハロゲン元素を含む腐食性ガスまたはそのプラズマに暴露されても、減肉したり、亀裂等が入ったりせずに長時間使用することができる。また、本発明の耐食性部材18は、ハロゲン元素を含む腐食性ガスまたはそのプラズマに対して高い耐食性が要求される半導体製造装置に使用される耐プラズマ部材として好適に使用されるものである。
また、半導体・液晶製造装置用部材の部品交換等の頻度を少なくできるために、製造コストを抑えることが可能となる。特に、本発明の耐食性部材18は、半導体・液晶製造装置用部材のうち半導体製造装置用耐食性リングとして好適である。
ハロゲン元素を含む腐食性ガスとしては、SF、CF、CHF、ClF、NF、C、HF等のフッ素系ガス、Cl、HCl、BCl、CCl等の塩素系ガス、Br、HBr、BBr等の臭素系ガスなどがあり、これらの腐食性ガスが使用される1〜10Paの圧力雰囲気下でマイクロ波等の高周波が導入されると、これらのガスがプラズマ化され半導体製造装置用の各部材に接触することとなる。また、ドライエッチングにより行われるエッチング効果を高めるために上述のような腐食性ガスとともに、Ar等の不活性ガスを導入してプラズマを発生させる方法もある。また、腐食性ガスによりエッチング可能な材料としては、酸化膜系材料(th−SiO、PSG、BPSG、HTO、P−SiO、P−TEOS、SOG等)、窒化膜系材料(P−SiN、LP−SiN等)、シリコン系 材料(Si、Poly−Si、a−Si、WSi、MoSi、TiSi等)、金属系材料(Al、Al合金、Ti、TiN、TiW、W、Cu、Pt、Au等)がある。
本発明の耐食性部材18を用いたエッチング装置の断面の模式図を図2に示す。1はチャンバーを、2はクランプリングまたはフォーカスリングを、3は下部電極を、4はウエハを、5は誘導コイルを示す。図2の装置では、チャンバー1の中にハロゲン元素を含む腐食性ガスを注入し、チャンバー1の周りに巻かれている誘導コイル5に高周波電力を印加して、ハロゲン元素を含むガスをプラズマ化する。また、下部電極3にも高周波電力を与え、バイアスを発生させ、クランプリング2で固定されたウエハ4に所望のエッチング加工を行う。本装置にて発生したプラズマはチャンバー1や、ウエハ4を固定しているクランプリング2に接触するために、これらの部品は特に腐食を受けやすい。そこでチャンバー1やクランプリング2を本発明の耐食性部材18で形成することによって、優れた耐食性を示し、また熱衝撃や熱応力による割れ等も防止することが可能となる。
また、本発明の耐食性部材18は、チャンバーおよびクランプリング、マイクロ波導入窓、ノズル、シャワーヘッド、フォーカスリング、シールドリング等をはじめとする半導体・液晶製造装置(エッチャーやCVD等)の中でも特に腐食性ガスまたはそのプラズマに対して高い耐食性を求められる部材に適用できるものである。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更は何等差し支えない。
アンモニウムアルギン酸塩粒子2質量%とウレアーゼ0.01質量%を含む水溶液を準備した。この水溶液と、尿素(CO(NH)4質量%、Al(SO換算で3質量%のアルミニウム硫酸塩を含む水溶液とを混合することにより、尿素による酵素加水分解を行わせてアルギン酸塩水溶液を作製した。これにより、アルギン酸塩水溶液は、Al3+イオンを有するアルギン酸塩の架橋結合によって、直径が1〜3mm程度の不透明なアルギン酸ゲル球となった。このアルギン酸ゲル球を尿素/アルミニウム硫化物を含む水溶液中、室温で数十時間に放置すると、ウレアーゼを含むアルギン酸ゲル球中で、アルミナの前駆体として直径数mmのAl(OH)粒子が沈殿した。
沈殿したAl(OH)粒子を洗浄、乾燥し、さらに空気中800℃で熱処理してAl(OH)をAlにした後、ボールミルにより乾式粉砕して多孔質アルミナ粒子を作製した。得られた多孔質アルミナ粒子をY(NO・6HO(硝酸イットリウム六水和物)水溶液に含浸、混合してスラリーとした。このスラリーを真空雰囲気に曝し、引き続き凍結乾燥した。凍結乾燥した粉体を空気中で仮焼して、原料粉体Aを作製した。得られた原料粉体Aの組成がAlをAl換算で70〜98質量%、YをY換算で2〜30質量%となるよう調整するため、必要に応じて原料粉体Aに酸化イットリウム粉末を混合し、さらに、酸化マグネシウム(MgO)を添加、混合して混合粉体Bを作製した。この混合粉体Bの100重量部に対して有機バインダーとしてポリビニルアルコールを3重量部添加、混合した。得られた有機バインダーを含む混合粉体Cを、粉末プレス成形法により50×50×5mmの形状に成形して、相対密度が50%以上の成形体を複数作製した。
得られた成形体を空気中で脱脂後、空気中1500〜1900℃で焼成し、本発明の試料である耐食性部材を作製した。
なお、Y(NO水溶液の濃度、仮焼温度、多孔質アルミナ粒子の平均粒径、成形圧(成形体の相対密度)、焼成時の最高温度での保持時間を表1に示すように変更した。また、脱脂温度を変更して脱脂体の炭素量を制御した。また、原料粉体に含まれる不可避不純物(Mgを除く)の含有量を1000質量ppm以下に制御した。
得られた本発明の試料を加工し、試料中に含まれる個々の結晶の結晶構造を、透過型電子顕微鏡(TEM)により行った。その結果、いずれの試料においても、試料中の結晶のほとんどがJCPDSカードNo.46−1212のα−アルミナまたはNo.33−40のYAGからなり、No.21−1152のMgAl(スピネル)を微量含むなることがわかった。また、試料の表面を株式会社リガク製X線回折装置RINT2000/PCシリーズを用いて、試料表面をCuKα線を用いたX線回折法により測定すると、JCPDSカードNo.46−1212のα−アルミナ、No.33−40のYAGのX線回折ピークが明確に表れた。
さらに、本発明の試料の特徴・特性を次のように測定した。
(主結晶の特定)
焼肌面の走査型電子顕微鏡(SEM)による反射電子像のうち、後方散乱電子像の写真を倍率1000〜5000倍で撮った。この結晶写真には、白色の結晶と、灰色〜黒色の結晶とが写っていた。X線回折によりこの2種類の結晶の結晶構造を調べた結果、白色の結晶はYAG、灰色〜黒色の結晶はα−アルミナであることがわかった。結晶写真の面積(気孔を除く)を100%とし、YAG結晶14、アルミナ結晶12がそれぞれ占める面積の割合を求め、この割合をYAG結晶14、アルミナ結晶12それぞれの割合とし、この割合が50%以上である結晶(アルミナ結晶12またはYAG結晶14)を主結晶と特定した。
(YAG結晶16の含有割合R
結晶写真を用いて、YAG結晶14のうち、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の数の割合を計算し、この割合をYAG結晶16の含有割合Rとした。ここで、粒径が0.1μm以下の結晶は、YAG結晶16の割合の計算の対象外とした。
(アルミナ結晶12のうち、YAG結晶16が接しているアルミナ結晶12の数の割合R
SEM写真を用いて、アルミナ結晶12のうち、YAG結晶16が接しているアルミナ結晶12の個数の割合Rを求めた。
(アルミナ結晶12に接するYAG結晶16の平均粒径PSYAG
結晶写真に写っているYAG結晶14のうち、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16について、YAG結晶16の輪郭に接する外接円と内接円を描き、両者の直径を平均することにより個々のYAG結晶16の結晶粒径を求め、それらを平均することによってアルミナ結晶12に接するYAG結晶16の平均粒径PSYAGを計算した。
(アルミナ結晶12の平均粒径PSAl
結晶写真に写っている個々のアルミナ結晶12について、同様に外接円と内接円を描き、両者の直径を平均することにより、個々のアルミナ結晶12の結晶粒径を求め、それらを平均することによってアルミナ結晶12の平均粒径PSAlを計算した。
(気孔率)
アルキメデス法を用いて開気孔率、閉気孔率を求め、両者を足して気孔率を求めた。
(破壊靱性)
SEPB(single edge pre-cracked beam)法により破壊靱性値(MPa・m1/2)を測定した。
(曲げ強度)
試料からJIS R1601に準ずる試験片を切り出し、4点曲げ試験にて曲げ強度(7本平均)を測定した。
(炭素量)
炭素分析装置(堀場製作所製EMIA−511型)により炭素含有量を測定した。
(熱伝導率)
試料を加工したものを用いて、JIS R 1611に基づき、熱拡散率×密度×比熱により熱伝導率を求めた。ここで、熱拡散率はレーザフラッシュ法にて測定した値を用いた。
また、本発明の試料の耐食性を次のように評価した。
(エッチングレート比)
試料表面に鏡面加工を施した本発明の試料と、基準試料として鏡面加工を施した致密質アルミナ焼結体(純度99.9質量%)とをRIE(Reactive Ion Etching)装置にセットし、CF50sccm、Ar50sccmの混合ガス雰囲気下でプラズマ中に100時間曝し、その前後の質量減少量から、両者の1分間当たりのエッチングレートを算出し、アルミナ質焼結体のエッチングレートERに対する本発明の試料のエッチングレートERの比ER/ERを求めた。この比ER/ERが0.4以下のものを優れたものとした。
(パーティクルの発生個数)
エッチングレート比の測定後の試料を細い金属線を用いて硝子容器に入れた純水中に吊し、その状態でCleansonic製超音波洗浄機BRANSON DHA−1000にて超音波を1分間かけた。その後、硝子容器から金属線に吊した試料を取出して、純水中のパーティクルをパーティクルカウンター(リオン株式会社製KL−26)で測定した。表3のパーティクルの個数は、超音波洗浄によって純水中に放出された純水1ml当たりのパーティクル数(個/ml)をKL−26により測定し、このパーティクル数と試料表面の面積とを用いて試料表面の面積1cm当たりから放出されたパーティクルの個数(個/cm)に換算した値である。なお、パーティクルの個数は、粒径0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上のパーティクルの個数を測定し、これらの個数から粒径0.1〜0.3μmのパーティクル、0.3〜0.5μmのパーティクル、0.5μm以上のパーティクルの個数(個/cm)をそれぞれ計算した。
結果を表1〜3に示す。本発明の試料は、アルミナ結晶12またはYAG結晶14を主結晶とし、アルミナ結晶12に接しているYAG結晶16の割合が70%以上となり、エッチングレート比が0.7以下と小さく、破壊靱性が3.5MPa・m1/2と高くなった。パーティクルについては粒径0.3μm以上のものは発生せず、粒径0.1〜0.3μmのパーティクルが25個/cm以下と少なかった。また、4点曲げ強度が300MPa以上と高くなった。また、熱伝導率が15W/m・Kと高くなった。さらに、本発明の試料の中でも、次の試料は良好な各種特性を有していることがわかった。
すなわち、YAG結晶14がアルミナ結晶12の数の75%以上に接している試料No.2〜7,12〜18は、エッチングレート比ER/ERが0.65以下となり、耐食性がさらに優れていた。
また、混合粉体Bの組成が同じ試料No.5〜9を比較すると、試料No.5はER/ERが0.55、0.1〜0.3μmのパーティクルが9個/cm、破壊靱性が5MPa・m1/2、曲げ強度が490MPaと最も耐食性、機械的特性に優れていた。また、試料No.6はER/ERが0.56、0.1〜0.3μmのパーティクルが11個/cm、破壊靱性が4.9MPa・m1/2、曲げ強度が470MPaと試料No.5に次いで耐食性、機械的特性に優れていた。
また、アルミナ結晶12に接するYAG結晶16の平均粒径が0.5〜8μm、アルミナ結晶12の平均粒径が1〜9μmである試料No.2〜16,18は、破壊靱性が3.8MPa・m1/2と破壊靱性が高く優れ、4点曲げ強度が350MPa以上と優れていた。
また、MgをMgO換算で0.05〜1質量%含有する試料No.1〜17は、エッチングレート比ER/ERが0.65以下、かつ4点曲げ強度が390MPa以上とさらに優れていた。
また、炭素の含有量が100質量ppm以下である試料No.1〜7,9,10,12〜18は、エッチングレート比ER/ERが0.65以下となった。
比較例として、第1に混合粉体Bの組成を本発明の範囲外とした試料(No.19、20)を作製した。また、第2に次のような試料(No.21〜24)を作製した。平均粒径が2μmの緻密質酸化アルミニウム(Al)粉末、平均粒径が2μmの酸化イットリウム(Y)粉末を混合、粉砕して平均粒径を1〜1.5μmとした粉砕粉末を作製した。この粉砕粉末100質量部に有機バインダーとしてポリビニルアルコール3質量部を添加、湿式混合した後、スプレードライにより噴霧、乾燥、造粒して成型用粉末を作製した。得られた成型用原料を成形圧100MPaで100×100×10mmの形状に成形後、脱脂、焼成し、比較例の耐食性部材を作製した。その他の作製条件は表1、2に示す通りである。得られた第1、第2の比較例の試料を本発明の試料と同様に評価した。
結果を表1〜3に示すように、比較例の試料は、アルミナ結晶に接しているYAG結晶の割合が70%未満となり、エッチングレート比ER/ERが0.8以上(試料No.19〜24)と耐食性が悪くなった。パーティクルについては粒径0.3μm以上のものは発生しなかったが、粒径0.1〜0.3μmのパーティクルが52個/cm以上(試料No.14〜19)と多くなった。また、試料No.20,22〜24は4点曲げ強度が300MPa未満と低くなった。また、熱伝導率が15W/m・K未満(試料No.19,21,22)と低い試料があった。
なお、表1〜3の各測定値は、測定条件や測定結果をもとにして測定精度を考慮し算出した値である。
Figure 2006182570
Figure 2006182570
Figure 2006182570
本発明の耐食性部材を拡大した模式図である。 本発明の耐食性部材の応用例であるエッチング装置の模式図である。
符号の説明
1:チャンバー
2:クランプリングまたはフォーカスリング
3:下部電極
4:ウエハ
5:誘導コイル
12:アルミナ結晶
14、16:YAG結晶
18:耐食性部材

Claims (8)

  1. 金属元素としてAlをAl換算で70〜98質量%、YをY換算で2〜30質量%含有し、アルミナ結晶またはイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)結晶を主結晶とする焼結体からなる耐食性部材であって、前記YAG結晶の数の70%以上が、前記アルミナ結晶に接していることを特徴とする耐食性部材。
  2. 前記YAG結晶が、前記アルミナ結晶の数の75%以上に接していることを特徴とする請求項1に記載の耐食性部材。
  3. 少なくとも前記アルミナ結晶と接するYAG結晶の平均粒径が0.5〜8μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の耐食性部材。
  4. 前記アルミナ結晶の平均粒径が1〜9μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐食性部材。
  5. 炭素の含有量が100質量ppm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐食性部材。
  6. MgをMgO換算で0.05〜1質量%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐食性部材。
  7. 多孔質アルミナ粒子の細孔にY3+イオンを含む溶液を浸透、熱処理し、前記細孔にY化合物が浸透した複合粒子を含む原料粉体を得、該原料粉体を成形、焼成することにより耐食性部材を得ることを特徴とする耐食性部材の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の耐食性部材を用いたことを特徴とする半導体・液晶製造装置用部材。
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