JP2002029850A - 窒化ケイ素焼結体とその製造方法 - Google Patents

窒化ケイ素焼結体とその製造方法

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JP2002029850A
JP2002029850A JP2000216018A JP2000216018A JP2002029850A JP 2002029850 A JP2002029850 A JP 2002029850A JP 2000216018 A JP2000216018 A JP 2000216018A JP 2000216018 A JP2000216018 A JP 2000216018A JP 2002029850 A JP2002029850 A JP 2002029850A
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JP2000216018A
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Hiroshi Yokota
博 横田
Hideyuki Emoto
秀幸 江本
Masahiro Ibukiyama
正浩 伊吹山
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Denka Co Ltd
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Denki Kagaku Kogyo KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高熱伝導性と優れた機械的特性とを併せ持つ窒
化ケイ素焼結体を提供する 【解決手段】Si34粉末にY及びLn族元素からなる
群より選ばれる一種以上の酸化物を添加してなる原料粉
末を、成形し、焼結するSi34焼結体の製造方法であ
って、前記Si34粉末がAlを300ppm以下、O
を1.5質量%以下含有し、α化率が70%以下であ
り、得られるSi34焼結体中の2μm以上の短軸径を
有するSi34粒子がO、Al、Ca、Feを合計で1
500ppm以下含有し、しかも2μm未満の短軸径を
有するSi34粒子がO、Al、Ca、Feを合計で3
000ppm以下含有するように、 Si34粒子を成
長させながら焼結するSi34焼結体の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体搭載用基板
をはじめ、自動車、機械などの幅広い分野で使用される
各種構造部品の素材として利用でき、強度、破壊靭性等
の機械的特性に優れた窒化ケイ素焼結体及びそれを用い
た窒化ケイ素回路基板に関する。
【0002】
【従来の技術】窒化ケイ素焼結体は、常温及び高温で化
学的に安定な材料であり、優れた機械的特性を有するの
で、自動車用エンジン部材、摺動部材等として適した材
料である。また、高い絶縁性を利用して、電気絶縁材と
しても使用されている。
【0003】しかし、窒化ケイ素は共有結合性の強い物
質であり、優れた高温特性を有する反面、難焼結性の物
質であるため、Y23等の酸化物を焼結助剤として添加
し、焼結性を高めて緻密化させた窒化ケイ素焼結体とし
て提供されている。そのため、焼結助剤及び原料である
窒化ケイ素中に含まれるSiO2が窒化ケイ素焼結体中
において、粒界相を形成し、窒化ケイ素焼結体の機械的
特性や熱的特性に影響を及ぼしている。
【0004】従来の窒化ケイ素焼結体は、窒化ケイ素粉
末に焼結助剤を添加し、成形した後、得られた成形体を
1600〜2200℃の高温度で所定時間焼成して得ら
れ、実用途に適用するに際しては前記焼結体を所望の形
状に研削加工している。
【0005】一方、半導体素子搭載用の回路基板として
は、電気絶縁性に加えて、優れた放熱特性が要求される
ために高熱伝導率が必要となる。
【0006】近年、回路基板を自動車あるいは高速電気
鉄道用途として用いるために小型化、半導体素子の高集
積化等が進みに従い、これらの回路基板における絶縁材
料の放熱特性アップが望まれてきている。このような材
料としてはBeOを添加した炭化ケイ素(SiC)や窒
化アルミニウム(AlN)等が開発されている。しかし
ながら、SiCやAlNは熱伝導率は高いが、強度や破
壊靭性と言った機械的特性が低いため、耐熱サイクル特
性や取り扱い時の強度等に問題がある。
【0007】窒化ケイ素焼結体は、強度や破壊靭性等の
機械的特性に優れるため、構造材料への適用が進んでい
る材料ではあるが、SiCやAlNに比べて熱伝導率が
低いため、高い放熱特性が要求される電気絶縁性基板へ
の適用は十分には進んでいなかった。窒化ケイ素焼結体
が低熱伝導率を示す理由は、緻密化をさせるために添加
した焼結助剤の一部が窒化ケイ素粒子内に固溶し、粒子
内でフォノン散乱を起こすために熱拡散率を小さくして
しまうためと言われている。一般的な焼結助剤であるY
23とAl23を添加した焼結体では、熱伝導率は20
W/mK程度であり、前記熱伝導率の値はAlNやSi
Cの100〜270W/mKに比較すると非常に低熱伝
導率である。
【0008】窒化ケイ素粒子内にAl及び酸素が存在す
ると局部的にサイアロンを形成し、このサイアロンの熱
伝導率が低いために、Al系の焼結助剤を用いた窒化ケ
イ素焼結体の熱伝導率は低くなってしまう。窒化ケイ素
は電気絶縁材料であるため、室温付近での熱伝達は主に
フォノンによって起こるが、フォノンは空孔、転移、点
欠陥などの結晶格子の乱れや、粒界相、気孔等により散
乱されるので、窒化ケイ素の熱伝導率も窒化ケイ素粒子
の結晶学的純度や焼結助剤の種類、焼結体密度などの影
響を受ける。窒化ケイ素の熱伝導率の理論的予測値は、
その結晶構造から280W/mK程度であると推測され
ているが、実際に窒化ケイ素の単結晶を合成して実用用
途に適用することは難しく、一般には前記の高い熱伝導
率の値にはほど遠い熱伝導率しか有していない焼結体が
用いられている。
【0009】つまり、窒化ケイ素の焼結は、窒化ケイ素
原料粉末が焼結助剤と窒化ケイ素原料粉末中に含まれる
SiO2成分とから構成される液相に溶解・析出しなが
ら進むので、得られる窒化ケイ素焼結体中の個々の窒化
ケイ素粒子は、単結晶に近く、比較的高熱伝導率が期待
されるが、実際の窒化ケイ素焼結体においては、前述し
た粒界相や窒化ケイ素粒子内への結晶学的純度の影響の
方が大きく、通常の製造条件によるならば、理論熱伝導
率の1〜2割程度の熱伝導率しか得られていないのが現
状である。
【0010】窒化ケイ素焼結体の高熱伝導化について
は、日本セラミックス協会学術論文誌1989年97巻
1月号56〜62頁に記載されている通りに、Alを含
む焼結助剤を用いず、Y23のみを添加してHIP(熱
間等方圧)焼結することにより、熱伝導率が70W/m
Kの焼結体を得ている。
【0011】また、特開平4−175268号公報や特
開平4−219371号公報に記載されている通りに、
焼結体中のAl、酸素含有量を低下させ、Ti、Zr、
Hf等の金属を添加し、場合によってはY23を焼結助
剤として添加することにより、熱伝導率40W/mK以
上の焼結体を得る方法が知られている。
【0012】更に、日本セラミックス協会学術論文誌1
996年104巻1月号49〜53頁には、焼結助剤と
して少量のY23及びNd23を用い、2200℃と非
常に高い温度で4時間HIP焼結することにより、熱伝
導率が122W/mKの窒化ケイ素焼結体を得ている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】上記した通りに、従来
から電気絶縁性高熱伝導セラミックスとして知られてい
るSiC、BeO、AlNは、熱伝導率が100W/m
K以上と高く放熱特性には優れているものの、強度、破
壊靭性等の機械的特性が低いため、回路基板等として用
いる場合に、実装工程において半導体素子をネジ締めで
固定する際にセラミックス基板の割れ等の破損を生じた
り、半導体素子の作動に伴う繰り返し熱サイクルを受け
て、金属回路層との接合部付近のセラミックス基板にク
ラックが発生し易く、その結果、耐熱サイクル特性及び
信頼性が比いと言う問題があった。
【0014】また、従来公知の窒化ケイ素焼結体は、強
度、破壊靭性等の機械的特性には優れていても、熱伝導
率に関しては、上記の通りにSiC、AlN、BeOセ
ラミックスに比べて低いこと、更には、高熱伝導率を有
したものを得ようとすると、Al等の不純物が少ない高
純度の窒化ケイ素原料粉末を用いて、高温でHIP焼結
等の特殊な焼結法を用いなければならず、得られる焼結
体が非常に高価になってしまい、半導体用回路基板等の
電子材料用途にはほとんど実用化されていないのが現実
である。
【0015】本発明は、上記の事情に鑑みてなされたも
のであり、高熱伝導性を強度や破壊靭性などの優れた機
械的特性を損なうことなく実現することによって、放熱
特性及び信頼性に優れる半導体回路基板やバルブ等の自
動車部品の素材として好適な窒化ケイ素焼結体を安価に
提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者は、本発明の目
的を達成するために、窒化ケイ素焼結体を得るための原
料粉末の粉体特性、焼結助剤の組成、量、更には焼結条
件等に関して鋭意検討した結果、特定の窒化ケイ素粉末
を原料とし、得られる窒化ケイ素焼結体中の結晶組織を
特定な構造となるようにするときに、従来よりも高熱伝
導性を示し、強度や破壊靭性などの優れた機械的特性を
損なうことなく実現する窒化ケイ素焼結体を得ることが
できるという知見を得て、本発明を完成するに至ったも
のである。
【0017】即ち、本発明は、窒化ケイ素粉末にイット
リウム及びランタノイド族元素からなる群より選ばれる
一種以上の酸化物を添加してなる原料粉末を、成形し、
焼結する窒化ケイ素焼結体の製造方法であって、前記窒
化ケイ素粉末がアルミニウムを300ppm以下、酸素
を1.5質量%以下含有し、α化率が70%以下であ
り、得られる窒化ケイ素焼結体中の2μm以上の短軸径
を有する窒化ケイ素粒子が酸素、アルミニウム、カルシ
ウム、鉄を合計で1500ppm以下含有し、しかも2
μm未満の短軸径を有する窒化ケイ素粒子が酸素、アル
ミニウム、カルシウム、鉄を合計で3000ppm以下
含有するように、窒化ケイ素粒子を成長させながら焼結
することを特徴とする窒化ケイ素焼結体の製造方法であ
り、好ましくは、比表面積6〜8.5m2/gの窒化ケ
イ素粉末と比表面積14〜20m2/gの窒化ケイ素粉
末とを混合して得られる、比表面積計算値が12〜16
2/gの窒化ケイ素粉末を用いることを特徴とする前
記の窒化ケイ素焼結体の製造方法であり、更に好ましく
は、9.8MPa以下の窒化加圧雰囲気中で、温度18
00〜1950℃の範囲で8時間以上の条件下で焼結す
ることを特徴とする前記の窒化ケイ素焼結体の製造方法
である。
【0018】また、本発明は、短軸径が2μm以上であ
り、酸素、アルミニウム、カルシウム、鉄の合計の含有
量が1500ppm以下である窒化ケイ素粒子と、2μ
m未満の短軸径を有し、酸素、アルミニウム、カルシウ
ム、鉄の合計の含有量が3000ppm以下である窒化
ケイ素粒子とを含有することを特徴とする窒化ケイ素焼
結体であり、好ましくは、短軸径が2μm以上の窒化ケ
イ素粒子が、窒化ケイ素焼結体全体に対して40〜60
面積%であり、しかも短軸径が2μm以上の窒化ケイ素
粒子の面積平均径が5μm以上10μm以下であること
を特徴とする前記の窒化ケイ素焼結体であり、更に好ま
しくは、短軸径が2μm未満である窒化ケイ素粒子が、
窒化ケイ素焼結体全体に対して40〜60面積%であ
り、しかも短軸径が2μm未満の窒化ケイ素粒子の面積
平均径が1μm以上であることを特徴とする請求項4又
は請求項5記載の窒化ケイ素焼結体である。
【0019】また、本発明の好ましい実施態様として、
熱伝導率が90W/mK以上、三点曲げ強度が400M
Pa以上、又は、窒化ケイ素84〜93.5質量%、イ
ットリウム及びランタノイド族元素からなる群から選ば
れる1種以上が酸化物換算して4〜15質量%、マグネ
シウムが酸化物換算して0.2〜1質量%含有すること
を特徴とする前記の窒化ケイ素焼結体を含む。
【0020】加えて、本発明は、前記の窒化ケイ素焼結
体を用いてなることを特徴とする窒化ケイ素回路基板で
ある。
【0021】
【発明の実施の形態】窒化ケイ素焼結体は、柱状のβ型
窒化ケイ素粒子が複雑に絡み合った焼結体微細組織を呈
しており、この組織が強度、破壊靭性などの機械的特性
に大きく寄与している。また、焼結体中の気孔は、欠陥
として作用し強度特性に影響を及ぼす。従って、窒化ケ
イ素焼結体においては、これらの欠陥をも含めた焼結体
組織を最適化することが、強度、破壊靭性等の機械的特
性に優れた焼結体を得るために重要である。
【0022】しかし、一方で、窒化ケイ素焼結体中の窒
化ケイ素粒子が相接して形成される二粒子界面の厚みは
1nm程度であり、室温におけるフォノン平均自由工程
の1/3程度以下である。このことから、窒化ケイ素焼
結体の熱伝導率に寄与する割合については、粒界相より
も窒化ケイ素粒子内の方が大きいと考えられる。従っ
て、窒化ケイ素焼結体の熱伝導率を高くするには、窒化
ケイ素粒子の結晶学的純度を上げることが重要であると
考えられる。
【0023】本発明者は、更に、前記考えに基づき次の
ように推察した。即ち、窒化ケイ素焼結体中の結晶学的
純度を上げるために、高純度な窒化ケイ素原料粉末を用
いて、かつ焼結時に形成される液相中に溶け込んだ窒化
ケイ素が、最初から存在する成長核となるべき窒化ケイ
素粒子上に再析出することに窒化ケイ素粒子が成長する
ので、前記再析出過程における液相の組成や粒成長とと
もに、窒化ケイ素の熱伝導率を下げると思われる酸素や
金属不純物を粒界に吐き出しながら窒化ケイ素粒子の純
化が行われる。従って、高熱伝導率を達成するために
は、窒化ケイ素粒子の成長程度、前記窒化ケイ素粒子を
囲む粒界相或いは小さな窒化ケイ素粒子といった結晶組
織を制御するとともに、熱伝導率に影響を与える不純物
の分布状況をも制御することが重要である。
【0024】本発明は、本発明者は前記考えに立ち、い
ろいろ実験的検討を重ねた結果に基づきなされたもので
ある。即ち、本発明は、窒化ケイ素粉末にイットリウム
及びランタノイド族元素からなる群より選ばれる一種以
上の酸化物を添加してなる原料粉末を、成形し、焼結す
る窒化ケイ素焼結体の製造方法であって、前記窒化ケイ
素粉末がアルミニウムを300ppm以下、酸素を1.
5質量%以下含有し、α化率が70%以下であり、得ら
れる窒化ケイ素焼結体中の2μm以上の短軸径を有する
窒化ケイ素粒子が酸素、アルミニウム、カルシウム、鉄
を合計で1500ppm以下含有し、しかも2μm未満
の短軸径を有する窒化ケイ素粒子が酸素、アルミニウ
ム、カルシウム、鉄を合計で3000ppm以下含有す
るように、窒化ケイ素粒子を成長させながら焼結するこ
とを特徴とする窒化ケイ素焼結体の製造方法である。
【0025】窒化ケイ素の焼結助剤に関しては、Al2
3に例示される窒化ケイ素と固溶する焼結助剤を用い
て得られる従来公知の窒化ケイ素焼結体は、窒化ケイ素
粒子内に前記アルミナ等の焼結助剤が固溶した部分が点
欠陥として存在するために、室温付近においてはフォノ
ン散乱を起こし、熱伝導率を低下させる。これに対して
本発明においては、窒化ケイ素と固溶しないイットリウ
ム(Y)及びランタノイド族元素からなる群から選ばれ
る1種以上の酸化物を含有するものである。更に、前記
のなかで、イットリウムとイッテルビウム(Yb)、ユ
ーロビウム(Er)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミ
ウム(Ho)などのイオン半径の小さい元素が好まし
い。
【0026】本発明に用いる窒化ケイ素粉末は、 Al
を300ppm以下、酸素を1質量%以下含有し、α化
率が70%以下である。その理由は、原料粉末中に含有
する金属不純物の中で、Alは焼結時におけるの溶解−
再析出の中で粒界へ吐き出されることなく窒化ケイ素粒
子中に固溶したまま存在するので、焼結助剤にアルミナ
を用いなくても焼結助剤と同様の熱伝導率低下を起こ
す。その影響の程度については、本発明者の検討に基づ
けば、Alが100ppm増加すると窒化ケイ素焼結体
の熱伝導率を約3W/mK低下させる。窒化ケイ素焼結
体が130W/mK以上の高熱伝導率を有するようにす
るためには、原料粉末中のAl含有量を150ppm以
下に抑えることが好ましい。
【0027】加えて、窒化ケイ素原料粉末中に含有する
酸素量は通常SiO2として存在し、焼結時の液相を構
成する酸化物である。この原料粉末時の酸素量が少なす
ぎると緻密化せず気孔が残存して熱伝導率が低下し、多
すぎると液相形成時に窒化ケイ素粒子内に酸素が多量に
固溶して熱伝導率低下を起こす。また、窒化ケイ素原料
粉末中に酸素が多い場合、液相中のSiO2濃度が高く
なり粒成長を抑制する効果がある。すなわち、一旦固溶
したAl以外の金属不純物や酸素を粒界に吐き出す駆動
力が低減して、窒化ケイ素粒内の純化作用を阻害する。
従って、実際の製造上問題のない焼結性を得るには窒化
ケイ素原料粉末中酸素量として0.5質量%が下限とし
て好ましく、酸素固溶低減及び粒内純化作用を活発化さ
せるための上限として1.0質量%以下である必要があ
る。
【0028】窒化ケイ素原料粉末のα化率については、
α化率が70%以上であると緻密化阻害が生じ、焼結体
中に気孔が残存し熱伝導率が低下する。90W/mK以
上の高熱伝導率窒化ケイ素焼結体を作製するには相対密
度として98〜100%が必要となる。従って、このよ
うなほぼ理論密度に達するような焼結体密度を得るに
は、窒化ケイ素原料粉のα化率を70%以下にする必要
がある。α化率が70%以上の窒化ケイ素原料を窒化ケ
イ素と固溶しないイットリウム及び/又はランタノイド
族元素の1種以上の酸化物を含有する焼結助剤系を用い
て焼結する場合、SiO2を助剤として1質量%以上添
加すると比較的容易に緻密化するが、この場合は液相中
のSiO2濃度が高くなり熱伝導率が低下するので90
W/mK以上の高熱伝導率は得られない。
【0029】本発明に用いる原料の窒化ケイ素粉末につ
いて、前記限定の他、比表面積が12〜16m2/gで
あるとき、本発明の目的を一層達成しやすいことから、
好ましい。更に、前記比表面積に関して、2種以上の窒
化ケイ素粉末を混合した場合においては、比表面積計算
値で代表することができる。例えば、後述の実施例で示
す如く、比表面積が6〜8.5m2/gの窒化ケイ素粉
末と比表面積が14〜20m2/gの窒化ケイ素粉末を
適宜配合し本発明の原料の窒化ケイ素粉末として用いる
ことができ、いろいろな原料を選択できる特徴を有して
いる。
【0030】また、本発明の製造方法は、2μm以上の
短軸径を有する窒化ケイ素粒子の酸素、Al、Ca、F
eの合計の含有量が1500ppm以下、しかも2μm
未満の短軸径を有する窒化ケイ素粒子が酸素、アルミニ
ウム、カルシウム、鉄を合計で3000ppm以下含有
するように、窒化ケイ素粒子を成長させながら焼結する
ことを特徴としている。そして、前記構成要件を有する
窒化ケイ素焼結体は、後述の通りに、高熱伝導率、高強
度、高靱性を併せ持った、回路基板に用いて好適な特性
を有する。
【0031】本発明のより具体的な実施態様として、
9.8MPa以下の窒素加圧雰囲気中で、1800〜1
950℃の温度範囲で8時間以上保持して焼結させ、窒
化ケイ素焼結体を作製する。1800℃未満の焼結温度
では緻密過不足が発生し、2000℃以上の焼結温度で
は、粒成長が進みすぎ得られる焼結体の強度などの機械
的特性が低下する。焼結温度に関しては、好ましくは1
800〜1900℃である。焼結時間については、8時
間未満では窒化ケイ素粒子の粒成長が十分でなく、純化
作用が十分でない。また、焼結時の雰囲気については、
本発明の焼結温度において、窒化ケイ素の分解を抑える
ために窒素加圧雰囲気で行なう必要がある。窒素加圧の
上限圧力は9.8MPa以下であり、好ましくは1MP
a以下で行われれば、HIP等の特殊な焼成装置を必要
とし、得られる焼結体のコストを安くすることができ
る。
【0032】本発明の窒化ケイ素焼結体の微細組織は、
窒化ケイ素粒子として短軸径2μm未満の微細な粒子と
それ以上の粗大粒子とに分類することができる。短軸径
2μm未満の微細粒子は、純化作用が十分には行われて
いないため、窒化ケイ素原料粉末中の金属不純物や酸素
が多く含有されており、窒化ケイ素焼結体の中では粒界
とともにフォノンを散乱し、熱伝導率を低下させる部分
と考えられる。短軸径2μm以上の粗大粒子は、粒成長
が進んでいるため短軸径2μm未満の微細粒子に比べて
純度の高い窒化ケイ素粒子となっている。
【0033】窒化ケイ素焼結体の熱伝導率を、例えば回
路基板として適用可能となると考えられる90W/mK
以上の熱伝導率を発現させるには、この粗大粒子中の酸
素、Al、Ca、Feの含有量の合計が1500ppm
以下になるようにし、しかも短軸径2μm未満の微細粒
子についても酸素、Al、Ca、Feの含有量の合計が
3000ppm以下になるように窒化ケイ素粒子を成長
させながら焼結する必要がある。
【0034】本発明の窒化ケイ素焼結体は、粒径2μm
以上の粗大窒化ケイ素粒子、2μm未満の微細窒化ケイ
素粒子及び粒界相より構成され、焼結体全体の熱伝導率
はマクセル−オイッケンの熱伝導率複合則より焼結体を
構成する各成分の熱伝導率の値により左右されていて、
粗大窒化ケイ素粒子の純度が高いばかりでなく、微細窒
化ケイ素粒子の純度も同時に高く制御されていて、焼結
体全体の熱伝導率が高められたものである。そして、こ
れを達成するべく、前述の通りに、本発明においては、
特定の焼結助剤を用い、原料に用いる窒化ケイ素粉末を
適度な比表面積になるように成長核となる窒化ケイ素粗
粉と成長核上に溶解再析出し、かつ焼結性を向上させる
ために窒化ケイ素微粉を適量粒度配合し、適当な焼結条
件を採用することで焼結体の微細組織を制御したもので
ある。
【0035】窒化ケイ素焼結体中の不純物量測定方法に
関しては、窒化ケイ素焼結体を瑪瑙乳鉢で解砕した後、
60メッシュ篩通しを行ない、Journal of
the American Ceramic Soci
ety論文誌1994年7月号1857〜1862頁に
記載の方法で粒界相を溶解させた後、湿式分級あるいは
遠心分級で短軸径2μmを境界に微細粒子と粗大粒子と
に分類する。その抽出された窒化ケイ素粒子の酸素分析
に付いてはLECO社製のO/N同時分析計(TC−4
36)にて定量し、他の金属不純物に付いてはICP分
析法で定量化することができる。また、本発明で使用す
る窒化ケイ素原料粉の比表面積を測定する方法は、BE
T1点法によって測定できる。
【0036】本発明の窒化ケイ素焼結体は、短軸径が2
μm以上であり、酸素、アルミニウム、カルシウム、鉄
の合計の含有量が1500ppm以下である窒化ケイ素
粒子と、2μm未満の短軸径を有し、酸素、アルミニウ
ム、カルシウム、鉄の合計の含有量が3000ppm以
下である窒化ケイ素粒子とを含有することを特徴とす
る。不純物の合計量が前記範囲外の場合には、90W/
mK以上の高熱伝導率を有する窒化ケイ素焼結体を得る
ことが難しい。短軸径が2μm以上であり、酸素、アル
ミニウム、カルシウム、鉄の合計の含有量が1000p
pm以下である窒化ケイ素粒子と、2μm未満の短軸径
を有し、酸素、アルミニウム、カルシウム、鉄の合計の
含有量が2000ppm以下である窒化ケイ素粒子とを
含有する場合には、120W/mK以上の高熱伝導率を
有する窒化ケイ素焼結体を得ることができ、一層好まし
い。
【0037】本発明の窒化ケイ素焼結体においては、前
記短軸径が2μm以上の窒化ケイ素粒子が、窒化ケイ素
焼結体全体に対して40面積%以上60面積%以下であ
り、しかも短軸径が2μm以上の窒化ケイ素粒子の面積
平均径が5μm以上10μm以下であることを特徴とす
る。前記の通り、窒化ケイ素は粒成長とともに窒化ケイ
素粒内の不純物を粒界に吐き出す関係上、ある程度の粒
成長が必要である。短軸径が2μm以上の窒化ケイ素粒
子が、窒化ケイ素焼結体全体に対して40面積%未満で
あれば、粒内純化作用が不充分で十分な高熱伝導率が得
にくい。また、短軸径が2μm以上の窒化ケイ素粒子
が、窒化ケイ素焼結体全体に対して60面積%以上存在
すると粒成長した粒子同士が立体衝突し、その衝突部分
に欠陥を発生させ、熱伝導率の低下を起こす場合が有
り、また同時に強度低下が大きくなり、実用上問題とな
る場合がある。
【0038】また、短軸径が2μm以上の窒化ケイ素粒
子の面積平均径が5μm以下では窒化ケイ素粒子の純化
作用が不十分で90W/mK以上の熱伝導率を得るのは
難しい。一方、短軸径が2μm以上の窒化ケイ素粒子の
面積平均径が10μm以上では、窒化ケイ素粒子の純化
は既にそれまでの過程で純化が十分に起こっており、む
しろ、面積平均径を10μmよりも大きくすることは焼
結体に応力がかかったときの破壊元になり、放熱基板や
エンジン部品として用いる場合の機械的特性が不充分と
なり、高い信頼性を要求される用途に用いることができ
なくなることがある。
【0039】本発明の窒化ケイ素焼結体においては、前
記短軸径が2μm未満である窒化ケイ素粒子が、窒化ケ
イ素焼結体全体に対して40〜60面積%であり、しか
も短軸径が2μm未満の窒化ケイ素粒子の面積平均径が
1μm以上であることを特徴とする。前記の通り、焼結
体全体の熱伝導率を高くするためには、粗大窒化ケイ素
粒子の純度を高めるだけでなく、微細窒化ケイ素粒子の
純度も同時に高める必要がある。微細粒子も粗大粒子と
同様に粒成長により純化作用を受け粒成長によって高純
度化する。
【0040】本発明者の検討の結果に依れば、前記純化
作用は短軸径1μm未満の範囲で顕著に起こり、短軸径
2μm未満の微細窒化ケイ素粒子の面積平均径を1μm
以上とすることで微細窒化ケイ素粒子の酸素、Al、C
a、Feの含有量の合計を3000ppm以内に抑える
ことが出来る。粗大窒化ケイ素粒子を極端に粒成長させ
なくても90W/mK以上の高熱伝導率を発現しなが
ら、放熱基板やエンジン部品として用いる場合の機械的
特性が充分であり、高い信頼性を要求される用途に用い
ることができる。
【0041】窒化ケイ素焼結体の微細組織評価に関して
は、窒化ケイ素焼結体を研削加工し、更にダイアモンド
砥粒で鏡面研磨した後、酸素を8%含有するCF4ガス
中でRFプラズマエッチングを行ない、得られた試料を
走査型顕微鏡(SEM)を用いて350倍の倍率で観察
を行なう。微細組織の定量評価に関しては、得られたS
EM写真を用いて、画像解析装置によって窒化ケイ素粒
子と粒界とを二値化し、窒化ケイ素粒子のみ存在面積を
得て、短軸径2μm以上の粒子1000個以上について
観察総面積に対する存在割合を面積%で算出する。ま
た、短軸径2μm以上の面積平均径については、粒子径
の面積50%に相当する粒子径を面積平均径とする。短
軸径2μm未満の窒化ケイ素粒子に関しては、得られた
試料を走査型顕微鏡(SEM)を用いて2000倍の倍
率で観察を行ない、粗大粒子と同様に画像解析装置によ
って窒化ケイ素粒子と粒界とを二値化し、窒化ケイ素粒
子のみ存在面積を得て、短軸径2μm未満の粒子100
0個以上について観察総面積に対する存在割合を面積%
で算出する。また、短軸径2μm未満の面積平均径につ
いては、粒子径の面積50%に相当する粒子径を面積平
均径とする。
【0042】窒化ケイ素焼結体の熱伝導率について、9
0W/mK未満では、放熱用基板として十分な放熱特性
が得られず、その用途が限定されるが、本発明の窒化ケ
イ素焼結体は90W/mK以上の熱伝導率を有し、いろ
いろな用途に限定を受けること無く、幅広く用いること
ができる。
【0043】また、本発明の窒化ケイ素焼結体の三点曲
げ強度は400MPa以上であることを特徴とする。3
点曲げ強度が400MPaよりも低い場合、金属回路を
作製した後のチップ搭載工程におけるねじ止めで、割れ
てしまい不良率を上げてしまうので好ましくない。ま
た、チップ搭載後のモジュールが繰り返し熱サイクルに
よってセラミックスと金属間に生じる熱応力によってセ
ラミックスにクラックを生じ、モジュールの信頼性を著
しく低下させる場合がある。
【0044】本発明の窒化ケイ素焼結体は、窒化ケイ素
84〜93.5質量%、イットリウム及びランタノイド
族元素からなる群から選ばれる1種以上が酸化物換算し
て4〜15質量%、マグネシウムが酸化物換算して0.
2〜1質量%含有することが好ましい。イットリウム及
びランタノイド族元素の酸化物、並びにマグネシウムの
酸化物は、いずれも窒化ケイ素とは固溶しないので、焼
結助剤として用いるとき、得られる窒化ケイ素焼結体の
高熱伝導率化へ寄与する。
【0045】イットリウム及びランタノイド族元素合計
が酸化物換算して4質量%未満では、液相総量が少なく
なくなるため、焼結体の緻密化不足を招きやすい。ま
た、15質量%以上の添加量では粒界相量が多くなりす
ぎて粒界相でのフォノン散乱の影響が窒化ケイ素粒内で
のフォノン散乱に比べて無視できなくなり、熱伝導率低
下を招く場合がある。一方、マグネシウムの酸化物を添
加する理由は、窒化ケイ素の粒度配合を行ったときの焼
結性低下を防ぐためであるが、マグネシウムの酸化物添
加量は、0.2質量%未満では焼結性向上への寄与がな
い。また、添加量が酸化物換算で1質量%以上では、粒
界相量が多くなりすぎて粒界相でのフォノン散乱の影響
が窒化ケイ素粒内でのフォノン散乱に比べて無視できな
くなり、熱伝導率低下を招く場合がある。
【0046】また、本発明の窒化ケイ素焼結体は、高熱
伝導性、電気絶縁性及び機械的特性が要求される回路基
板等に用いることができる。例えば、パワーモジュール
用の回路基板等では、従来回路基板に求められていた電
気絶縁性に加え、高い熱伝達性能と機械的特性が要求さ
れてきている。本発明の窒化ケイ素回路基板は、ベース
となる窒化ケイ素焼結体の強度、破壊靭性などの機械的
特性が優れているため、ヒートサイクル等の繰り返し熱
応力や基板自身に対する曲げ応力に対し、高い信頼性を
有することができる。また、窒化ケイ素自体、高い絶縁
抵抗を有するため、厳しい使用条件で用いられる回路基
板に適している。更に、本発明の窒化ケイ素焼結体を用
いた窒化ケイ素回路基板は、一般的なセラミックス回路
基板であるアルミナ回路基板に比べ、機械的特性に優れ
るだけでなく、高熱伝導率が要求される回路基板の用途
に適している。
【0047】このような回路基板の製造方法としては、
板状の窒化ケイ素焼結体又は研削加工等により板状に加
工した窒化ケイ素焼結体を金属板と接合した後、エッチ
ング等の手法によって回路を形成して製造することがで
きる。窒化ケイ素焼結体と金属板との接合方法に関して
は、例えば、窒化ケイ素焼結体と金属板とを不活性ガス
又は真空雰囲気中で加熱し、焼結体と金属板を直接接合
する方法(直接接合法)やTi、Zr等の活性金属と低
融点合金を作るAg、Cu等の金属を混合又は合金とし
たろう材を窒化ケイ素焼結体と金属板との間に介在させ
て不活性ガス又は真空雰囲気中で加熱圧着する方法(活
性金属法)を利用して製造できる。
【0048】
【実施例】以下、実施例と比較例をあげて、更に本発明
を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるもので
はない。
【0049】〔実施例1〜25、比較例1〜12〕表1
に示す粉体特性の異なる窒化ケイ素原料粉末A〜Nに、
表2と表3に示す組成の酸化物を添加し、更にメタノー
ルを添加して湿式ボールミルで1時間混合を行なった。
次にこれらの混合粉末をろ過、乾燥後、20MPaの成
形圧で金型成形した後、200MPaの成形圧でCIP
成形して、5mm×30mm×50mmの成形体を得
た。得られた成形体は、窒化ホウ素(BN)製の坩堝に
充填し、カーボンヒーターの電気炉で表2に示す窒素ガ
ス圧力、焼成温度、焼成時間で焼成し、焼結体を作製し
た。また、上記操作で得たいろいろな焼結体の密度をア
ルキメデス法で測定し、その結果を表4、表5に示し
た。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】ここで、窒化ケイ素粉末の比表面積計算値
は、次の通りに算出した。比表面積a(m2/g)の窒化
ケイ素粉末の窒化ケイ素添加量に占める質量比をA、比
表面積b(m2/g)の窒化ケイ素粉末の窒化ケイ素添加
量に占める質量比を(1−A)とすると,両者の窒化ケ
イ素粉末を混合して使用した場合の比表面積計算値は下
記の通りとした。 混合粉の比表面積値(m2/g)=A×a+(1−A)×
【0054】次に、前記の焼結体を#200のダイアモ
ンドホイールで平面研削し、20mm×20mm×3m
mの形状に加工した。実施例1、5、14〜19、及び
比較例5〜7、10〜12について、これらの加工体を
用いX線回折により結晶相の同定を行なった。X線回折
の結果を表4、表5に示した。
【0055】また、前記の焼結体を研削加工し、熱伝導
率測定用の10mmφ×3mmの円盤及びJIS R1
601に準じた強度試験体を作製し、室温の熱伝導率と
室温の3点曲げ強さを評価した。尚熱伝導率は、レーザ
ーフラッシュ法(JIS R1611に準拠)により熱
拡散率と比熱容量を測定し、焼結体密度、熱拡散率及び
比熱容量の積によって熱伝導率とした。
【0056】また、鏡面研削した焼結体を8%の酸素を
含有するCF4ガス雰囲気中でRF80Wの出力で8分
間エッチングを行なった後、SEMにより焼結体微細組
織の観察を短軸径2μm以上の粒子においては350倍
の倍率で行ない、短軸径2μm未満の粒子については2
000倍で行った。次いで、これらのSEM写真を用い
て画像解析装置により焼結体組織の定量評価を行なっ
た。微細組織の定量評価に関しては、得られたSEM写
真を用いて、画像解析装置によって窒化ケイ素粒子と粒
界とを二値化し、窒化ケイ素粒子のみ存在面積を得て、
短軸径2μm以上及び2μm未満のそれぞれの粒子10
00個以上についてを観察総面積に対する存在割合を粗
大粒子割合と称して面積%で算出した。また、短軸径2
μm以上及び2μm未満の面積平均径については、粒子
径の面積50%に相当する粒子径を面積平均径とした。
【0057】窒化ケイ素焼結体中の不純物量測定方法に
関しては、窒化ケイ素焼結体を瑪瑙乳鉢で解砕した後、
60メッシュ篩通しを行ない、Journal of
the American Ceramic Soci
ety論文誌1994年7月号1857〜1862頁に
記載されている公知の方法で粒界相を溶解させた後、湿
式分級で短軸径2μmを境界に微細粒子と粗大粒子とに
分類した。その抽出された窒化ケイ素粒子の酸素分析に
付いてはLECO社製のO/N同時分析計(TC−43
6)にて定量し、他の金属不純物に付いてはICP分析
法で金属不純物としてAl、Ca及びFeの含有量を定
量化して、先の酸素量分析結果と併せて窒化ケイ素粒子
内の(酸素+Al+Ca+Fe)の不純物合計量を算出
した。
【0058】また、前記窒化ケイ素焼結体を研削加工に
より40mm×80mm×0.6mmの形状の平板とし
た。得られた平板の両面に活性金属含有のろう材(Ag
−Cu−Ti:80−15−5(質量比))を30μm
の厚さでスクリーン印刷し、回路側に0.3mm厚の銅
板及び裏面に0.15mm厚の銅板を搭載し、10-3
orr台の真空雰囲気下、温度850℃で30分間加熱
した。その後、冷却して複合体を得た。この複合体につ
いて、板厚0.3mmの銅板側を研磨し、パターニング
用レジストを印刷して、熱硬化後、塩化第二鉄水溶液に
浸積エッチングしてパターン形成した。更に、回路間に
残留する接合材を除くために銅板部を酸性フッ化アンモ
ニウム水溶液に浸触させた後、水洗してパターン形成し
た回路基板を作製した。
【0059】次に、前記の回路基板を−50℃と150
℃の恒温槽にてそれぞれ30分間ずつ保持しつつこれを
最高3000サイクルまで行ない、銅回路を接合した部
分におけるクラックが発生するまでのサイクル数を調べ
た。これらの結果を表4、表5に示した。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】表1、2、3、4及び5より、本発明の製
造方法に係る実施例のものは、いずれも90W/mK以
上の高熱伝導率の窒化ケイ素焼結体が得られている。特
に、実施例1〜9の通りに、窒化ケイ素粉とイットリウ
ム酸化物との組み合わせでは、三点曲げ強度が550M
Pa〜650MPaという高強度のもの得られ、更に、
表3に示すように、ヒートサイクル試験で3000回終
了後もクラック発生のない信頼性ある回路基板を提供が
出来ることが明瞭である。
【0063】更に、実施例中で、90W/mK以上の高
熱伝導率を発現し、三点曲げ強度が400〜650MP
aを示す窒化ケイ素焼結体は、短軸径2μm以上の粗大
粒子を有し、その窒化ケイ素粒子中の酸素、Al、C
a、Feの含有量合計が1500ppm以下であり、さ
らに2μm未満の短軸径を有する窒化ケイ素粒子の酸
素、Al、Ca、Feの含有量合計が3000ppm以
下であることが明かである。
【0064】加えて、実施例中で、90W/mK以上の
高熱伝導率を発現し、三点曲げ強度が400〜650M
Paを示す窒化ケイ素焼結体は、短軸径が2μm以上の
窒化ケイ素粒子が、窒化ケイ素焼結体全体に対して40
〜60面積%であり、しかも短軸径が2μm以上の窒化
ケイ素粒子の面積平均径が5μm以上10μm以下であ
り、また、短軸径が2μm未満である窒化ケイ素粒子
が、窒化ケイ素焼結体全体に対して40〜60面積%で
あり、しかも短軸径が2μm未満の窒化ケイ素粒子の面
積平均径が1μm以上である特徴を有することも明かで
ある。
【0065】これに対して、窒化ケイ素原料粉末のα化
率が70%以下の場合には、本発明の助剤系と組み合せ
ても、比較例1では、十分に緻密化せず、100W/m
K以上の高熱伝導率が得られないし、比較例2、3の場
合には、得られる窒化ケイ素焼結体中の短軸径2μm未
満の窒化ケイ素粒子の面積平均径が1μm以下となり、
十分に窒化ケイ素粒子の純化が行われず、90W/mk
未満の熱伝導率のものしか得ることができない。
【0066】更に、比較例4に示した通りに、窒化ケイ
素原料粉末中のAl含有量が多いものは、窒化ケイ素粒
子内中にAl及び酸素が不純物として残留するため、短
軸径2μm以上の粗大窒化ケイ素粒子を有していても、
その窒化ケイ素粒子中の酸素、Al、Ca、Feの含有
量の合計は1500ppm以上になってしまい、90W
/mK以上の高熱伝導率の窒化ケイ素焼結体を得ていな
い。
【0067】
【発明の効果】本発明の窒化ケイ素焼結体の製造方法
は、特定の原料と特定の焼結助剤を用い、特定の焼結条
件を採用しているので、焼結時の窒化ケイ素粒子内部へ
の不純物固溶を極力抑え、窒化ケイ素粒子内の純度、微
細組織、結晶粒界相の組成、量などを精緻に制御された
窒化ケイ素焼結体を再現性良く、安定して提供できる特
徴がある。
【0068】本発明の窒化ケイ素焼結体は、当該焼結体
内の窒化ケイ素粒子内の純度、微細組織、結晶粒界相の
組成、量などが精緻に制御され、強度、破壊靭性等の機
械的特性に優れると共に、90W/mK以上の高い熱伝
導率を有しており、回路基板を始めとするいろいろな用
途に適用でき、産業上非常に有用である。
【0069】本発明の窒化ケイ素回路基板は、前記窒化
ケイ素焼結体を用いているので、その優れた機械的特性
と熱伝導性を反映して、信頼性が要求される輸送機器等
の用途や、パワーモジュール用回路基板等に適した回路
基板である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G001 BA08 BA09 BA32 BA71 BA73 BB08 BB09 BB32 BB71 BB73 BC52 BC54 BC55

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】窒化ケイ素粉末にイットリウム及びランタ
    ノイド族元素からなる群より選ばれる一種以上の酸化物
    を添加してなる原料粉末を、成形し、焼結する窒化ケイ
    素焼結体の製造方法であって、前記窒化ケイ素粉末がア
    ルミニウムを300ppm以下、酸素を1.5質量%以
    下含有し、α化率が70%以下であり、得られる窒化ケ
    イ素焼結体中の2μm以上の短軸径を有する窒化ケイ素
    粒子が酸素、アルミニウム、カルシウム、鉄を合計で1
    500ppm以下含有し、しかも2μm未満の短軸径を
    有する窒化ケイ素粒子が酸素、アルミニウム、カルシウ
    ム、鉄を合計で3000ppm以下含有するように、窒
    化ケイ素粒子を成長させながら焼結することを特徴とす
    る窒化ケイ素焼結体の製造方法。
  2. 【請求項2】比表面積6〜8.5m2/gの窒化ケイ素
    粉末と比表面積14〜20m2/gの窒化ケイ素粉末と
    を混合して得られる、比表面積計算値が12〜16m2
    /gの窒化ケイ素粉末を用いることを特徴とする請求項
    1記載の窒化ケイ素焼結体の製造方法。
  3. 【請求項3】9.8MPa以下の窒化加圧雰囲気中で、
    温度1800〜1950℃の範囲で8時間以上の条件下
    で焼結することを特徴とする請求項1又は請求項2記載
    の窒化ケイ素焼結体の製造方法。
  4. 【請求項4】短軸径が2μm以上であり、酸素、アルミ
    ニウム、カルシウム、鉄の合計の含有量が1500pp
    m以下である窒化ケイ素粒子と、2μm未満の短軸径を
    有し、酸素、アルミニウム、カルシウム、鉄の合計の含
    有量が3000ppm以下である窒化ケイ素粒子とを含
    有することを特徴とする窒化ケイ素焼結体。
  5. 【請求項5】短軸径が2μm以上の窒化ケイ素粒子が、
    窒化ケイ素焼結体全体に対して40〜60面積%であ
    り、しかも短軸径が2μm以上の窒化ケイ素粒子の面積
    平均径が5μm以上10μm以下であることを特徴とす
    る請求項4記載の窒化ケイ素焼結体。
  6. 【請求項6】短軸径が2μm未満である窒化ケイ素粒子
    が、窒化ケイ素焼結体全体に対して40〜60面積%で
    あり、しかも短軸径が2μm未満の窒化ケイ素粒子の面
    積平均径が1μm以上であることを特徴とする請求項4
    又は請求項5記載の窒化ケイ素焼結体。
  7. 【請求項7】熱伝導率が90W/mK以上であることを
    特徴とする請求項4、請求項5又は請求項6記載の窒化
    ケイ素焼結体。
  8. 【請求項8】三点曲げ強度が400MPa以上であるこ
    とを特徴とする請求項4、請求項5、請求項6又は請求
    項7記載の窒化ケイ素焼結体。
  9. 【請求項9】窒化ケイ素84〜93.5質量%、イット
    リウム及びランタノイド族元素からなる群から選ばれる
    1種以上が酸化物換算して4〜15質量%、マグネシウ
    ムが酸化物換算して0.2〜1質量%含有することを特
    徴とする請求項4、請求項5、請求項6、請求項7又は
    請求項8記載の窒化ケイ素焼結体。
  10. 【請求項10】請求項4、請求項5、請求項6、請求項
    7、請求項8又は請求項9記載の窒化ケイ素焼結体を用
    いてなることを特徴とする窒化ケイ素回路基板。
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