JP2006180211A - 高周波モジュール及びそれを用いた通信機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】高周波モジュールを構成する部品の小型化、集積化を図り、高周波モジュール全体を小型化する。
【解決手段】アンテナ端子に直接又は分波回路を通して接続され、送信系と受信系とを切り替える送信用及び受信用デュプレクサ3a,4a,3b,4bと、受信用デュプレクサの入力側に挿入される整合回路と、送信用デュプレクサに接続され、所定の送信通過帯域の送信信号を増幅する高周波電力増幅回路とを誘電体層を積層してなる誘電体基板23の表面に実装あるいは内部に内装してなり、整合回路3c,4cや、高周波フィルタ9,10のコンデンサ28,29、分波回路2のハイパスフィルタやローパスフィルタを誘電体基板23内部に内装してなる高周波モジュールにおいて、誘電体基板23を結晶相として少なくともディオプサイド結晶相を含有し、14〜16GHz帯域におけるQ値が1000以上の磁器によって形成する。
【選択図】図12

Description

本発明は、高周波電力増幅回路、高周波フィルタ、高周波分波回路などを一体構成した高周波モジュール、及びその高周波モジュールを搭載した携帯電話機などの通信機器に関するものである。
近年、携帯電話機の普及が進みつつあり、携帯電話機の機能、サービスの向上が図られている。このような携帯電話機では各送受信系の構成に必要な高周波信号処理回路を基板に搭載している。
従来の、高周波信号処理回路の一般的構成では、アンテナから入力された受信信号とアンテナに給電する送信信号とを切り替えるための送信用及び受信用デュプレクサが設けられている。
アンテナから入ってきた無線信号は、受信用デュプレクサの前段に設けられた整合回路を通って受信用デュプレクサに入力され、ここで受信信号が選択的に通過される。受信信号は、低雑音増幅器で増幅され、信号処理回路に供給される。
一方、送信信号は、所定の送信通過帯域内の送信信号を通過させる高周波フィルタを通ってノイズを落とされ、高周波電力増幅回路に伝えられる。高周波電力増幅回路は、この送信信号を電力増幅し、前記送信用デュプレクサに供給する。
従来、前記送信用及び受信用デュプレクサ、整合回路、高周波電力増幅回路、高周波フィルタなどがそれぞれ個別部品として製造され、基板の上面にディスクリートに搭載されている。
特開2002−171137号公報
それぞれ個別の専用部品を用いて基板に搭載すると、機器の大型化、高コスト化を招来することとなる。そこで、小型化可能な回路部分は、可及的に小型化するようにして、機器の小型軽量化、低コスト化を有利に展開することが求められている。
しかしながら、上記要求に対応して、誘電体基板の内部に種々の受動回路を内装しても、十分な特性を得ることができず、結果的には、各種チップ部品を基板の表面に実装する場合でしか良好な特性が得られず、小型化を図るにしても限界があった。
従って、本発明は、誘電体基板内に、デュプレクサの整合回路や高周波フィルタの構成部品であるインダクタやコンデンサなどを内装しても特性が劣化することがなく、全体を小型化することができる高周波モジュール及びそれを搭載した通信機器を提供することを目的とする。
本発明の高周波モジュールは、アンテナ端子に直接又は分波回路を通して接続され、送信系と受信系とを切り替える送信用及び受信用デュプレクサと、受信用デュプレクサの入力側に挿入される整合回路と、送信用デュプレクサに接続され、所定の送信通過帯域の送信信号を増幅する高周波電力増幅回路とを誘電体層を積層してなる誘電体基板の表面に実装あるいは内部に内装してなり、前記整合回路を構成する受動素子を、前記誘電体基板内部の誘電体層に内装してなる高周波モジュールにおいて、前記誘電体基板が、結晶相として少なくともディオプサイド結晶相を含有し、14〜16GHz帯域におけるQ値が1000以上の磁器からなることを特徴とするものである。
また、本発明によれば、前記磁器が、さらにアルミナ結晶相を有することによって、高Q化を図ることができる。さらに、熱膨張係数が8×10−6/℃以上であることによって、誘電体磁器の熱膨張係数を一般にマザーボードに用いられるガラス−エポキシ樹脂複合プリント配線基板の熱膨張係数に近づけることができるために、半田バンプによって接続されるBGAやLGAなどの端子構造を有する配線基板に熱衝撃が加わった場合でも接続信頼性を高めることができる。
上記構成によれば、アンテナ端子又は分波回路の出力端子と、受信用デュプレクサの入力端子との間に、整合回路を挿入し、位相の最適化、すなわちインピーダンスマッチングを図っているが、この整合回路を構成する受動素子を、前記誘電体基板内部の誘電体層に内装している。これによって、高周波モジュール全体を小型化でき、誘電体基板の表面に、デュプレクサや高周波電力増幅回路を実装する面積が確保できる。
前記整合回路は、ストリップライン、インダクタ、コンデンサなどの受動素子から構成されるものであり、誘電体基板内部に内装、形成することができるものである。
また、前記誘電体基板には、トリプレクサのインダクタ、コンデンサの少なくとも1つを内装することも可能である。
前記高周波電力増幅回路の入力段には、通過帯域内の送信信号を通過させる高周波フィルタを備えることが好ましい。これによって、送信信号のノイズ成分を容易にカットすることができる。また、この前記高周波フィルタの一部を構成する受動素子を、前記誘電体基板内部に内装することによって、さらに小型化を図ることができる。
また、前記高周波フィルタの一部を構成する受動素子を、前記誘電体基板内部の誘電体層に内装することとすれば、高周波フィルタの実装に要する面積を小さくすることができ、高周波モジュールの小型化のために好ましい。受動素子として、例えばインダクタ、コンデンサがあげられる。
また、前記分波回路を構成する高周波フィルタが、前記誘電体基板内部の誘電体層に内装されていることが好ましい。これにより、分波回路の実装に要する面積を小さくすることができる。
本発明の通信機器によれば、上記高周波モジュールを搭載することによって、さらなる機器の小型化を図ることができる。
本発明によれば、前記誘電体基板を、結晶相として少なくともディオプサイド結晶相を含有し、14〜16GHz帯域におけるQ値が1000以上の磁器によって構成することで、誘電体基板の内部に内装される種々の回路に対する挿入損失を低減し、高い特性を維持できる。
また本発明は、上に説明した高周波モジュールを搭載した、携帯電話機などの通信機器に係るものである。
以上のように本発明によれば、特定の高いQ値を有する磁器からなる誘電体基板内にデュプレクサの整合回路や、高周波フィルタの構成部品であるインダクタやコンデンサを内装することによって、内装回路の特性を劣化させることがないことから、基板表面への部品の実装点数を削減することができ、高周波モジュール全体を小型化することができる。
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、携帯電話装置等の移動体通信機器に用いられる、CDMAデュアルバンド方式の高周波信号処理回路のブロック構成図を示す。
このCDMAデュアルバンド方式では、セルラー方式800MHz帯及びPCS方式1.9GHz帯の周波数バンドを持った2つの送受信系と、GPS(Global Positioning System)による測位機能を利用するためGPSの受信バンド1.5GHz帯を持った1つの受信系とから構成される。
図1において、1はアンテナ、2は周波数帯を分けるためのLPF,HPFを含む分波器、3aは1.9GHz帯の送信系を分離するSAWデュプレクサ、3bは同受信系を分離するSAWデュプレクサ、4aは800MHz帯の送信系を分離するSAWデュプレクサ、4bは同受信系を分離するSAWデュプレクサである。また、12は前記分波器2から取り込まれるGPS信号を通過させるためのSAWフィルタである。3c,4cは、受信信号の位相を回転させる整合回路である。
送信系では、送信信号処理回路RFIC17から出力されるセルラー送信信号は、SAWフィルタを有するBPF9でノイズが落とされ、高周波電力増幅回路7に伝えられる。送信信号処理回路RFIC17から出力されるPCS送信信号は、SAWフィルタを有するBPF10でノイズが落とされ、高周波電力増幅回路8に伝えられる。
高周波電力増幅回路7,8は、それぞれ800MHz帯,1.9GHz帯の周波数で駆動され、送信電力を増幅する。増幅された送信信号は、方向性結合器5,6を通り、前記SAWデュプレクサ4a,3aに入力される。
方向性結合器5,6は、高周波電力増幅回路7,8からの出力信号のレベルをモニタして、そのモニタ信号に基づいて高周波電力増幅回路のオートパワーコントロールする機能があり、そのモニタ出力は、検波用回路11に入力される。
一方受信系は、SAWデュプレクサ4b,3bで分離された受信信号を増幅する低雑音増幅器LNA14,13と、受信信号からノイズを除去する高周波フィルタ16,15とを備えている。高周波フィルタ16,15を通った受信信号は、受信信号処理回路RFIC18に伝えられ信号処理される。また、前記GPS用SAWフィルタ12で分離されたGPS信号は、受信信号処理回路RFIC18で信号処理される。
前記デュプレクサの構成は限定されないが、好ましくは、36°Yカット−X伝搬のLiTaO結晶、64°Yカット−X伝搬のLiNbO結晶、45°Xカット−Z伝搬のLiB結晶などからなる基板上に、櫛歯状のIDT(Inter Digital Transducer)電極が形成されたものである。
前記高周波電力増幅回路の構成も限定されないが、好ましくは、高周波信号を増幅する機能を持ち、小型化、高効率化を図るためにGaAsHBT(ガリウム砒素ヘテロジャンクションバイポーラトランジスタ)構造、又はP−HEMT構造のGaAsトランジスタやシリコン若しくはゲルマニウムトランジスタを含む半導体素子で形成されている。
以上のような構成の高周波信号処理回路を含む移動体通信機器においては、各部に対する小型化、軽量化の要求が大きく、これらの要求を考慮して、高周波信号処理回路は、所望の特性が達成できる単位でモジュール化されている。
すなわち、図1で太い実線22で示したように、分波器2、SAWデュプレクサ3a,3b,4a,4b、高周波電力増幅回路7,8、方向性結合器5,6などを含む分波系回路及び送信系回路が、1つの基板に形成された1つの高周波モジュール22を形成している。
なお、高周波モジュール22を、800MHz帯の高周波モジュールと、1.9GHz帯の2つの高周波モジュールに分けるという実装方法も可能である。さらに低雑音増幅器LNA13,14と受信用高周波フィルタ15,16を含んだモジュールを追加して形成してもよい。
以下、800MHz帯と、1.9GHz帯の2つの周波数帯を含む1つの高周波モジュール22に基づいて説明する。
図2に、高周波モジュール22の平面図を示し、図3(a)にその断面図を示す。高周波モジュール22は、同一寸法形状の9層の誘電体層が積層された誘電体基板構造を有している。40は最下層に設けられたグランド層である。
誘電体基板23の表層には、各種のパターン、各種チップ部品のほか、BPF9,10、GPS用のSAWフィルタ12、検波用回路11、SAWデュプレクサ3a,4a,3b,4b、及び高周波電力増幅回路7,8の一部を構成する電力増幅用半導体素子24,25などが搭載され、これらは半田などで誘電体層上の導体パターンに接合されている。
電力増幅用半導体素子24,25は、誘電体基板23上の導体パターンとワイヤーボンディングで接続されている。電力増幅用半導体素子24,25の周囲には、同じく高周波電力増幅回路7,8の一部を構成する電力増幅用整合回路26,27がチップ部品や導体パターンで形成されている。
なお、電力増幅用半導体素子24,25、電力増幅用整合回路26,27などは、誘電体基板の裏面に搭載するようにしてもよい。
誘電体基板23の内部には、整合回路3c,4cと、方向性結合器5,6とが内装され、さらに電力増幅用半導体素子24,25とBPF9,10との間にDCカット用結合コンデンサ28、BPF9,10と接地との間にコンデンサ29が内装されている。
構造的にいえば、これらの内部素子を構成する、分布定数線路、結合線路、分布型コンデンサ、抵抗などの導体パターンが誘電体層中に、それぞれ形成されている。例えば図3(b)は、方向性結合器5,6の結合線路を示す誘電体基板23内部の斜視図であり、結合線路は2枚の相重なる誘電体層23a,23b上にそれぞれ形成されている。
そして、各誘電体層には複数の層にわたって、回路を縦に接続するため必要なビアホール導体が縦方向に形成されている。特に、図3(a)における50は、電力増幅用半導体素子24,25で発生する熱を逃がすため設けられた、誘電体層を上下に貫通するサーマルビアである。
かかる誘電体基板23としては、例えば、ガラスエポキシ樹脂などの有機系誘電体基板に対して、銅箔などの導体によって導体パターンを形成し、積層して熱硬化させたもの、又は、セラミック材料などの無機系誘電体層に種々の導体パターンを形成し、これらを積層後同時に焼成したものが用いられる。
特に、セラミック材料を用いれば、セラミック誘電体の比誘電率は通常7から25と、樹脂基板に比べて高いので、誘電体層を薄くでき、誘電体層に内装された回路の素子のサイズを小さくでき、素子間距離も狭くすることができる。
次に、整合回路3c,4cの具体的な回路例と、その誘電体基板内構造を説明する。
図4(a)は、受信用のSAWデュプレクサ4b,3bの前段に挿入されるストリップライン31を示す。このようなストリップライン31で受信信号の位相を所定角回転させる。
図4(b)は、ストリップライン31が形成された誘電体層を、誘電体層ごとに分解して示す分解斜視図である。分波器2につながる端子P1、及び低雑音増幅器LNA13又は14につながる端子P2が、最下の誘電体層に設けられ、これらの端子がビアホール(図に黒丸点で示す)によって上の誘電体層につながっていく。途中の誘電体層33には、ストリップライン31を形成し一端が端子P1とつながるミアンダ状の導体パターンが配置されている。この導体パターンの他端は、ビアホールによって一層上に上がり、湾曲して、最上の誘電体層のSAWデュプレクサ4b,3bの端子に接続される。前記端子P2は、誘電体層を貫通してSAWデュプレクサ4b,3bの他の端子に接続される。40aは接地用ラインである。
また、図5(a)は、コンデンサ35,36を直列に挿入し、インダクタとしてのストリップライン37を接地との間に並列に挿入したT型のLC回路を示す。このようなLC回路で位相角を最適化することができる。
図5(b)は、コンデンサ35,36及びストリップライン37が形成された誘電体層を、誘電体層ごとに分解して示す分解斜視図である。分波器2につながる端子P1、及び低雑音増幅器LNA13又は14につながる端子P2が、最下の誘電体層に設けられ、これらの端子がビアホール(図に黒丸点で示す)によって上の誘電体層につながっていく。途中の誘電体層32には、ストリップライン37を形成し一端が接地されたミアンダ状の導体パターンが配置されている。この導体パターンの他端は、ビアホールによって一層上の誘電体層33に上がり、コンデンサ35を形成する一方導体につながる。さらに一層上の誘電体層34には、コンデンサ35を形成する他方導体が形成されている。これらの一方導体と他方導体が、誘電体層34を介して容量を形成する。この他方導体は、下層からビアホール導体を通して前記端子P1とつながるとともに、さらに、SAWデュプレクサ3a,4aの端子ともつながっている。
また、誘電体層33には、コンデンサ36を形成する一方導体が形成されている。この一方導体36は、前記一方導体35と接続している。一方導体36の上には、誘電体層34を介してコンデンサ36を形成する他方導体が形成されている。これらの一方導体と他方導体とで、誘電体層34を介してコンデンサ36の容量を形成する。コンデンサ35の他方導体は、ビアホール導体を通してSAWデュプレクサ4b,3bの端子に接続される。また、SAWデュプレクサ4b,3bの他の端子は、前記端子P2とつながっている。
また図6(a)は、接地と並列に接続したインダクタ38のみで整合をとった回路を示す。図6(b)は、ストリップライン38が形成された誘電体層を、誘電体層ごとに分解して示す分解斜視図である。分波器2につながる端子P1、及び低雑音増幅器LNA13又は14につながる端子P2が、最下の誘電体層に設けられ、これらの端子がビアホール(図に黒丸点で示す)によって上の誘電体層につながっていく。途中の誘電体層33には、ストリップライン38を形成し一端が接地されたスパイラル状の導体パターンが配置されている。この導体パターンはスパイラル状に湾曲して、ビアホールによって上の誘電体層34に上がり、さらに湾曲して端子P1及び最上の誘電体層のSAWデュプレクサ4a,3aに接続される。一方、前記端子P2は、誘電体層を貫通してSAWデュプレクサ4b,3bの他の端子に接続される。
図7は、SAWデュプレクサ3a,4a,3b,4bを誘電体基板23に直接フリップチップ実装する状態を示す斜視図である。図7でSAWデュプレクサ3a,4a,3b,4bのチップを"41"と表示している。SAWチップ41の表面にはIDT電極42が形成され、入力と出力のパターン43と、SAWチップ41の表面を気密封止する電極44が形成されている。一方誘電体基板23にはSAWチップ41と対向して、入出力のパッド45と気密封止するための電極46が形成されている。
誘電体基板23のこれらのパターンに半田のバンプを形成し、SAWチップ41を熱圧着して封止することで、従来のパッケージ品と同等の信頼性特性が得られる。上記半田バンプは、誘電体基板23に半田を印刷し、必要チップ部品を実装し、リフローして形成することができる。この場合、誘電体基板23の電極には、半田濡れ性の点から、たとえばNi下地の金メッキを施しておくとよい。
その後、電力増幅用半導体素子24,25を実装しワイヤーボンドで接続し、全体をエポキシ樹脂等で封止し、高周波モジュールが出来あがる。
また、図8のように電力増幅用半導体素子24,25をワイヤーボンディングでなく、フリップチップ構造にすることもできる。49は、電力増幅用半導体素子24,25のバンプ電極である。50aは、誘電体基板23の表面に設けられた接合電極であり、この一部が前述したサーマルビア50につながる。
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではない。例えば、図2、3では、誘電体基板23に整合回路3c,4cと方向性結合器5,6、及びコンデンサ28,29を内装している例で説明したが、2つ以上のバンドを扱うモジュールの場合、分波器2の少なくとも一部を内装することもできる。
すなわち図9に示すように、分波器2を構成するLPF,HPFを、誘電体基板23に内装してもよい。これにより、モジュール全体として小型化が実現可能となる。
さらに、SAWデュプレクサ3a,4a,3b,4bを構成する複数のチップを、誘電体基板23の内部に縦に配置することにより、さらなる小型化を図ることもできる。
図10では誘電体基板23の表面に凹部51を設け、SAWチップ41aを格納し、その上にさらに他のSAWチップ41bを上述のフリップチップで実装する。これにより、モジュールの面積を大幅に削減することができる。特にSAWデュプレクサ3a,4a,3b,4bは、送信側のエレメント3a,4aが耐電力構造のため受信側のエレメント3b,4bより大型になるため、このように実装配置することでモジュールの面積を有効に利用できる。
図11は、誘電体基板23の裏面側に凹部52を設け、SAWチップ41aを格納しモジュールを小型化するものである。
このように、表面または裏面に凹部51,52を形成し、SAWエレメントの約半数を格納することで、高周波モジュールの小型化が実現できる。その他、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
本発明によれば、上記の高周波モジュールにおける誘電体基板23を、結晶相として少なくともディオプサイド結晶相を含有し、14〜16GHz帯域におけるQ値が1000以上の磁器によって形成することを特徴とするものである。
すなわち、ディオプサイド型結晶は、高周波においてQ値が大きく、言い換えれば、誘電損失が小さく、高強度であり、また耐候性に優れるという理由から好適に用いられる。
また、磁器のQ値を1000以上としたのは、図12に示すように、Q値と挿入損失との関係を示した図から明らかなように、回路設計を行う場合の誘電体基板内部に内装される各素子の挿入損失の基準値を0.85dBm以下とし、この挿入損失が0.85dBm以下となるためのQ値が1000以上であることによる。特に、このQ値が1100以上とすることによって、挿入損失を0.83dBm以下とすることができる。さらにこのQ値が1200以上とすることによって、挿入損失を0.81dBm以下とすることができる。
また、かかる磁器中には、さらにアルミナ結晶相を有することによって、誘電体磁器の機械的強度の向上および誘電特性調整に効果的である。
また,ディオプサイド型結晶は、a軸が9.738Å以上、b軸が8.892Å以上、c軸が5.275Å以上、β角が106.39°以上であることが望ましい。かかる定比組成の結晶構造に近づくことで、マイクロ波帯で1000以上のQ値を容易に達成できる。高Q値という観点から、ディオプサイド型結晶のa軸は9.738Å以上、b軸は8.894Å以上、c軸が5.275Å以上、β角が106.40°以上であることが好ましい。
また、結晶化度が90%以上となるような温度域で焼成することでQ値は1000以上、曲げ強度は250MPa以上とすることができる。
さらに、前記磁器の熱膨張係数が8×10−6/℃以上、特に9×10−6/℃以上であることによって、半田バンプによって接続されるBGAやLGAなどの端子構造を有する配線基板に熱衝撃が加わった場合でも接続信頼性を高めることができる。
本発明における誘電体磁器は、少なくともSiO,CaO,MgOを含むディオプサイド型結晶を析出する結晶化ガラス粉末40〜90質量%と、Al粉末6〜60質量%と、RO/RCO/R(OH)(Rはアルカリ土類元素)の中から少なくとも1種以上の粉末を0.1〜5質量%を添加含有し、焼成することによって好適に製造される。
ここで、ディオプサイド型結晶を析出する結晶化ガラス粉末を30〜90質量%としたのは、結晶化ガラス粉末の組成をこのような範囲とすることにより、850〜1050℃の温度範囲において高密度の誘電体磁器を形成でき、AgまたはCuを主成分とする導体と同時焼成を行うことが可能となるためである。結晶化ガラス粉末量が30質量%未満の場合には、1050℃以下の温度では焼結せず、AgまたはCuを主成分とする導体と同時焼成ができなくなり、逆に、90質量%を越える場合には、機械的強度が低下するとともに、焼成途中でガラスが軟化する際に形状維持が困難となり、配線基板の寸法精度が低下するためである。よって、焼結性と高強度、高寸法精度を維持するという点で、結晶化ガラス粉末量は40〜80質量%がより望ましい。
また、ガラスからディオプサイドの他にハーディストナイト、セルシアン、コージェライト、アノーサイト、ガーナイト、ウィレマイト、スピネル、ムライト、ウォラストナイト、ランキナイトの群から選ばれる少なくとも1種が析出しても高強度化できるという理由から差し支えない。
また、ディオプサイド型結晶を析出する結晶化ガラス粉末およびAl粉末の平均粒径は、850〜1050℃の焼成においても高密度の誘電体磁器が得られるという理由からいずれも3.0μm以下が望ましく、特に、高強度化するという理由から、1.2〜3.0μmがより望ましい。
また、フィラー成分として、Al粉末を6〜60質量%としたのは、60質量%を越えると、1050℃以下では焼結できなくなるからである。一方、6質量%未満の場合は機械的強度が低下するためである。特に、焼結性の点から20〜50質量%以下が望ましい。
さらに、RO,RCO,R(OH)(Rはアルカリ土類元素)の中から少なくとも1種以上の粉末を0.1〜5質量%の割合で添加含有するとしたのは、機械的強度の低下及びバラツキを抑制しつつ、ディオプサイド結晶相の化学量論組成からのずれを補正して、結晶化を促すことによりQ値を向上させ、焼成温度による変動を抑制するためである。5質量%を越えると機械的強度が著しく劣化するからであり、一方、0.1質量%未満であるとQ値改善効果が無くなるためである。特に機械的強度を高く維持して、Q値改善を行うという観点から0.1〜1.0質量%がより望ましい。また、これら酸化物の粒径は上記効果をより発現できるように10.0μm以下であることが望ましい。
なお、上記の化合物以外であっても、例えば、Ti、Zr、Fe、Hf、Sn、Nb、Na、K、Cr、Zn、Cu、Ag、Co、Mn、V、Mo、W、Ni、Ru、Cd、3a族元素及びこれらの酸化物等のように、強度が高く維持され、同時焼成をしたときに、基板に反りや歪みが発生しない範囲であれば、0.1質量%以下含有していても差し支えない。
ここで、フィラー成分となる粉末の平均粒径は、磁器の焼結性、高強度、および共振周波数の温度係数を制御するという理由から、1〜3.5μmであることが望ましく、特に、ディオプサイド型結晶を析出する結晶化ガラス粉末やAl粉末の平均粒径に対して分散性を向上させるという理由から1.2〜3μmであることがより望ましい。
以下に、上記誘電体磁器を製造する方法について具体的に説明すると、まず、上記のディオプサイド型結晶化ガラス粉末と、上記のフィラー成分として、Al粉末、さらに添加成分としてRO,RCO,R(OH)(Rはアルカリ土類元素)の中から少なくとも1種以上の粉末を前記組成となるように秤量して、ZrOボールにより粉砕混合し、粉砕粒径が2.0μm以下の混合物を作製する。
得られた混合物は、各種の公知の成形方法、例えばプレス法、ドクターブレード法、射出成形法、テープ成形等により任意の形状に成形する。これらの方法の中で、ドクターブレード法、及びテープ成形が積層体形成のために特に好ましい。
得られた成形体は、大気中または酸素雰囲気中または窒素雰囲気等の非酸化性雰囲気において850〜1050℃で0.5〜2時間焼成することにより得られる。
なお、原料粉末は、焼成により酸化物を生成する水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等の金属塩を用いても良い。また、本発明の誘電体磁器組成物中には、不可避不純物として、Zr、Fe、Hf、Sn、Nb、Na、K等が含まれることもあるが、特性及び焼結性に影響が無ければ差し支えない。
上記のように得られた誘電体磁器は、εrを7〜11の範囲で変化させることができ、磁器の3点曲げ強度を250MPa以上、広い焼成温度範囲において安定してQ値を1000以上とすることが可能となる。また、焼成温度も850〜1050℃と、AgやCuを主成分とする導体との同時焼成が可能な温度範囲に設定できる。従って、同時焼成でも反りや歪み等の発生を抑制することができる。
かかる誘電体磁器を用いて高周波モジュールを構成するには、上記原料組成物を用いて作成されたテープに対して、銀または銅を主成分とする導体ペーストを用いてスクリーン印刷法などによって所望の回路パターンを印刷塗布する。また、テープに対してレーザー、マイクロドリル、パンチングなどの手法によってビアを形成し、上記導体ペーストを充填する。それらを積層一体化した後、銀ペーストを用いた場合には、大気中で、銅ペーストを用いた場合には不活性雰囲気で焼成することによって、高周波モジュールを作成することができる。
先ず、ディオプサイド型結晶を析出する結晶化ガラス粉末として、以下の組成1,2を、また他の組成3のガラスを準備した。
ガラス組成1=SiO49質量%−CaO28質量%−MgO18質量%
−Al5質量%
ガラス組成2=SiO55質量%−CaO26質量%−MgO19質量%
ガラス組成3=SiO32質量%−BaO40質量%−Al28質量%
このガラスに対して、純度99%以上のAl及び、RO、RCO、R(OH)(Rはアルカリ土類元素)粉末を、表1に示す割合となるように秤量し、イソプロピルアルコールを媒体とし、ZrOボールを用いたボールミルにて20時間湿式混合し、粉砕粒径を2.0μm以下とした。
この混合物の曲げ強度評価用の試料として5mm×4mm×50mmmの寸法になるように100MPaの圧力でプレス成形し、表1に示す最高温度の条件で1時間焼成して、4mm×3mm×40mmの試験片を得た。この試験片について、室温において、クロスヘッド速度0.5mm/min、下部支点間距離30mmの条件で3点曲げ強度の測定を行った。
次に、この混合物を誘電特性評価用の試料として直径10mm高さ8mmの円柱状に100MPaの圧力でプレス成形し、この場合も表1に示す最高温度の条件で1時間焼成して、直径8mm、高さ6mmの円柱状の試料を得た。
誘電特性の評価は、上記の試料を用いて誘電体円柱共振器法にて周波数14〜16GHzにおける比誘電率εr、Qを測定した。また、熱膨張係数αは室温〜400℃の範囲で測定した値である。
結晶構造及び結晶化度の評価には、ディフラクトメーター法で測定した磁器粉末X線回折(XRD)パターン(2θ=10°〜80°)を、RIETAN−2000プログラムを使用して、形成されている結晶相について、リートベルト解析を行った。尚、ディオプサイド結晶構造のブラベー格子は、単斜晶(monoclinic)であり、軸長:a軸≠b軸≠c軸、軸間角α=γ=90°≠β(β:a軸とc軸間の角度)の特徴を持つ。
また、各誘電体磁器を用いて図3に示すような整合回路3c,4cと、方向性結合器5,6、さらにはDCカット用結合コンデンサ28を内装した高周波モジュールを作製した。そして、これに基づき高周波モジュールの挿入損失を測定した。
Figure 2006180211
表1の結果から明らかなように、結晶相としてディオプサイド結晶相が析出してなる試料No.1〜11,13〜17は、いずれもQ値が1000以上、磁器の3点曲げ強度が250MPa以上という優れた特性を有していた。そして、かかる磁器を用いた高周波モジュールは、いずれも挿入損失は0.85dB以下の優れた特性を示した。
CDMAデュアルバンド方式の高周波信号処理回路のブロック構成図である。 誘電体基板23に実装した高周波モジュール22の全体を示す平面図である。 (a)は同断面図である。(b)は、方向性結合器の結合線路を示すための誘電体基板23内部の透視斜視図である。 (a)は、受信用のSAWデュプレクサ4b,3bの前段に挿入されるストリップライン31を含む整合回路図、(b)は、ストリップライン31の構造を、誘電体層ごとに分解して示す分解斜視図である。 (a)は、コンデンサ35、36を直列に挿入し、インダクタとしてのストリップライン37を接地との間に並列に挿入したT型のLC整合回路を示す。(b)は、コンデンサ35、36及びストリップライン37の構造を、誘電体層ごとに分解して示す分解斜視図である。 (a)は、接地と並列に接続したインダクタ38のみで整合をとる整合回路を示す。(b)は、ストリップライン38の構造を、誘電体層ごとに分解して示す分解斜視図である。 SAWデュプレクサ3a,4a,3b,4bを誘電体基板23に直接フリップチップ実装する様子を示す斜視図である。 電力増幅用半導体素子24,25をフリップチップ実装する様子を示す斜視図である。 分波器2を構成するLPF,HPFを、誘電体基板23に内装した状態を示す断面図である。 誘電体基板23の表面に凹部51を設け、SAWチップ41aを格納し、その上にさらに他のSAWチップ41bをフリップチップ実装した状態を示す断面図である。 誘電体基板23の裏面側に凹部52を設け、SAWチップ41aを格納し、さらに他のSAWチップ41bをフリップチップ実装した状態を示す断面図である。 誘電体基板のQ値100〜1350のときの挿入損失特性を示す。
符号の説明
1 アンテナ
2 分波器
3a,3b デュプレクサ(PCS側)
4a,4b デュプレクサ(セルラー側)
5、6 方向性結合器(カプラ)
7、8 高周波電力増幅回路
9、10 送信用SAWフィルタ
11 検波回路
12 受信用 GPS SAWフィルタ
13、14 低雑音増幅器LNA
15、16 受信用SAW 高周波フィルタ
17 送信用RFIC
18 受信用RFIC
19 ベースバンドIC
22 高周波モジュール
23 誘電体基板
24、25 電力増幅用半導体素子
26、27 電力増幅整合回路
31 ストリップライン
32〜34 誘電体層
35、36 結合用コンデンサ
37、38 整合用インダクタ
40 グランド層
40a 接地用ライン
41 SAWチップ
42 IDT電極
43 SAW入出力電極
44 SAW気密封止電極
45 入出力電極
46 気密封止電極
49 バンプ電極
50 接合電極
51,52 凹部

Claims (9)

  1. アンテナ端子に直接又は分波回路を通して接続され、送信系と受信系とを切り替える送信用及び受信用デュプレクサと、受信用デュプレクサの入力側に挿入される整合回路と、送信用デュプレクサに接続され、所定の送信通過帯域の送信信号を増幅する高周波電力増幅回路とを誘電体層を積層してなる誘電体基板の表面に実装あるいは内部に内装してなり、前記整合回路を構成する受動素子を、前記誘電体基板内部の誘電体層に内装してなる高周波モジュールにおいて、前記誘電体基板が、結晶相として少なくともディオプサイド結晶相を含有し、14〜16GHz帯域におけるQ値が1000以上の磁器からなることを特徴とする高周波モジュール。
  2. 前記磁器が、さらにアルミナ結晶相を有することを特徴とする請求項1記載の高周波モジュール。
  3. 前記磁器の熱膨張係数が8×10−6/℃以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高周波モジュール。
  4. 前記整合回路が、誘電体基板内に形成されたストリップライン、インダクタ、コンデンサの少なくとも1つを含む請求項1乃至請求項3のいずれか記載の高周波モジュール。
  5. 前記誘電体基板に、トリプレクサのインダクタ、コンデンサの少なくとも1つを内装したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか記載の高周波モジュール。
  6. 前記高周波電力増幅回路の入力段に、通過帯域内の送信信号を通過させる高周波フィルタが備えられている請求項1記載の高周波モジュール
  7. 前記高周波フィルタの一部を構成する受動素子が、前記誘電体基板内部に内装されている請求項6記載の高周波モジュール。
  8. 前記分波回路を構成する高周波フィルタが、前記誘電体基板内部に内装されている請求項1記載の高周波モジュール。
  9. 前記請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の高周波モジュールを搭載する通信機器。
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