JP2006169070A - 酸素製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 病院等の使用現場で医薬品用酸素などの高濃度酸素ガスを製造することができる酸素製造装置を提供すること。
【解決手段】 吸着筒7内の温度を350℃に保ち、3分間大気を流通させる。これにより、酸素は吸着剤粉末の結晶内に取り込まれる。次に、3分間の大気の流通後、第1バルブ3を閉じ、ポンプ11により吸着筒7内の排気を行う。次に、排気を行った後に、第2バルブ13を閉じる。これにより、吸着筒7内は3.039×10-2MPa程度にて気密された状態となる。次に、吸着筒7内の温度を650℃に昇温する。これにより、吸着剤の結晶内に取り込まれていた酸素が放出される。次に、第3バルブ15を開き、ポンプ11を作動させて、吸着筒7内に(吸着剤からの放出により)満たされた酸素を製品タンク17内に充填する。以後、同様な操作を繰り返すことにより、製品タンク17内に、濃度99.5%以上の高濃度酸素ガスを蓄積する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば高濃度の酸素を患者等に供給することができる酸素製造装置に関するものである。
従来より、高濃度の酸素を製造する方法としては、(1)深冷分留法(液化分留法)、(2)ゼオライト吸着剤を使用した圧力掃引吸着(PSA)法、(3)カーボンモレキュラーシーブを使用した圧力掃引吸着(PSA)法などが知られている。
(1)このうち、液化分留法は、大量に酸素を製造することに適した方法であり、現在の酸素製造方法の主流であるが、装置の規模が大きく使用現場で酸素を製造する装置としては不適切である。そのため、医療施設向けの医療品酸素は、高圧ボンベ又は液化酸素の状態で病院に搬送されている。しかし、ボンベによる輸送は、運搬される酸素量に対してボンベ重量が大きく、輸送コストが高くなってしまう。また、液化酸素輸送にはタンクローリ等の特別な搬送手段が必要になり、遠隔地、離島などの病院への搬送にはコスト高となり、不向きである。更に、自発的気化のために、使用状態とは無関係に、蓄えられている酸素が減少するという問題がある。しかも、これらの2つの方法は、地震等の災害時に、道路交通網が寸断された場合には、酸素の供給が困難になるという問題がある。
(2)また、ゼオライト吸着剤を使用した圧力掃引吸着(PSA)法は、比較的小さな装置で酸素を製造できるので、使用現場での酸素製造に適している。また、酸素製造に必要とされる電源さえ確保できれば、即座に酸素製造が可能になるという利点がある。しかしながら、この方法で製造される酸素の濃度は、高々95%に留まり、医薬品酸素に要求される99.5%以上の濃度の酸素を供給できないという問題があった。
(3)更に、このゼオライト吸着剤を使用した圧力掃引吸着(PSA)法による問題点を克服するために、カーボンモレキュラーシーブを使用した圧力掃引吸着(PSA)法が提案されているが、この方法の場合には、カーボンモレキュラーシーブの吸着特性の酸素選択性が十分でないという問題があった。この対策として、ゼオライト吸着剤を用いたPSA法で95%程度に酸素濃度を高めたガスに対して、更にカーボンモレキュラーシーブを使用した濃度を高める方法が考えられるが、その場合には、システムが複雑化するという問題がある。しかも、ゼオライト吸着剤の劣化によって、長期間使用した場合には、濃度を維持できないという問題もあり、普及していない。
また、近年では、上述した物質とは異なる酸素の吸着や放出が可能な物質(例えばコバルト酸ストロンチウム等)を用いて、酸素富化の研究が行われている(非特許文献1、2参照)。
2000年 電気化学会 秋季大会講演要旨集 P144 Journal of Materials Science Letters 21(5):407-409、March 1、2002 "Temperature-swing based oxygen enrichment by using perovskite-type oxides"
しかしながら、前記(1)深冷分留法(液化分留法)、(2)ゼオライト吸着剤を使用したPSA法、(3)カーボンモレキュラーシーブを使用したPSA法は、上述した様に、例えば病院等の使用現場で医薬品用酸素などの高濃度の酸素(高濃度酸素ガス)を製造する技術として不十分であり、また、コバルト酸ストロンチウム等の新たな物質を使用した技術は、その検討が始まったばかりで、技術内容の検討等が必ずしも十分ではない。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、病院等の使用現場で医薬品用酸素などの酸素高濃縮ガスを製造することができる酸素製造装置を提供することにある。
(1)請求項1の発明は、温度を変化させることにより、酸素欠陥を持つ酸化物の酸素欠陥量を変化させ、その酸素欠陥量の変化に応じて放出された酸素を収集することにより、大気から高濃度酸素ガスを製造することを特徴とする。
本発明では、酸素欠陥を持つ酸化物の周囲の大気の温度、従って酸化物の温度を変化させる(温度掃引する)。この酸化物は、温度が変化すると酸素欠陥量が変化するので、温度が変化すると、周囲の大気から酸素を吸着したり酸化物から酸素を放出したりする。よって、温度を変化させることによって、酸化物に吸着させた酸素を放出させ、その放出された酸素を収集することにより、大気から高い濃度の酸素を製造することができる。
これにより、従来のゼオライト吸着剤では困難であった99.5%以上の濃度の高濃度酸素ガスを、簡易なシステムで容易に製造することができる。
また、本発明では、従来の液化分留法の様な大型の装置や酸素ボンベ等が不要であり、しかもゼオライト吸着剤の様な劣化も少ないという効果がある。
更に、本発明では、酸素製造装置を駆動する電力があれば、遠隔地や離島或いは災害等で道路交通網が寸断された場合であっても、病院等の使用現場で、医薬品用酸素などの酸素高濃縮ガスを容易に製造することができるという顕著な効果を奏する。
(2)請求項2の発明は、前記酸化物を収容した容器内の温度を、所定の低温度に設定することにより、前記酸化物に酸素を吸着させ、前記容器内の温度を、前記低温度を上回る所定の高温度に設定することにより、前記酸化物に吸着した酸素を放出させることを特徴とする。
本発明では、酸化物は低温度(例えば200〜400℃)で酸素を吸着し、その低温度より高い高温度(例えば500〜800℃)で酸素を放出するので、酸化物を収容する容器(例えば吸着筒)内の温度を低温から高温に変化させることにより、酸素の吸着や放出を行うことができる。つまり、簡易な温度制御で容易に高い濃度の酸素を製造することができる。
(3)請求項3の発明は、圧力を変化させることにより、酸素欠陥を持つ酸化物の酸素欠陥量を変化させ、その酸素欠陥量の変化に応じて放出された酸素を収集することにより、大気から高濃度酸素を製造することを特徴とする。
本発明では、酸素欠陥を持つ酸化物の周囲の大気の圧力を変化させる(圧力掃引する)。この酸化物は、圧力が変化すると酸素欠陥量が変化するので、圧力が変化すると周囲の大気から酸素を吸着したり酸化物から酸素を放出したりする。よって、圧力を変化させることにより、酸化物に吸着させた酸素を放出させ、その放出された酸素を収集することにより、大気から高い濃度の酸素を製造することができる。
これにより、前記請求項1の発明と同様に、従来のゼオライト吸着剤では困難であった99.5%以上の濃度の高濃度酸素ガスを、簡易なシステムで容易に製造することができる。また、液化分留法の様な大型の装置や酸素ボンベ等が不要であり、しかもゼオライト吸着剤の様な劣化も少ないという効果がある。更に、酸素製造装置を駆動する電力があれば、遠隔地や離島或いは災害等で道路交通網が寸断された場合であっても、病院等の使用現場で、医薬品用酸素などの高濃度酸素ガスを容易に製造することができるという顕著な効果を奏する。
(4)請求項4の発明は、前記酸化物を収容した容器内の圧力を、所定の高圧力に設定することにより、前記酸化物に酸素を吸着させ、前記容器内の圧力を、前記高圧力を下回る所定の低圧力に設定することにより、前記酸化物に吸着した酸素を放出させることを特徴とする。
本発明では、酸化物は高圧力(例えば2.026×10-1MPa〜1.013MPa)で酸素を吸着し、その高圧力より低い低圧力(例えば1.013×10-2MPa〜1.013×10-1MPa)で酸素を放出するので、酸化物を収容する容器(例えば吸着筒)内の圧力を高圧力から低圧力に変化させることにより、酸素の吸着や放出を行うことができる。つまり、簡易な圧力制御で容易に高い濃度の酸素を製造することができる。
(5)請求項5の発明は、温度と圧力とを同時に変化させることにより、酸素欠陥を持つ酸化物の酸素欠陥量を変化させ、その酸素欠陥量の変化に応じて放出された酸素を収集することにより、大気から高濃度酸素を製造することを特徴とする。
本発明は、前記請求項1の発明と請求項2の発明とを組み合わせたものであり、酸素欠陥を持つ酸化物の周囲の大気の温度及び圧力を変化させる。この酸化物は、温度及び圧力が変化すると酸素欠陥量が変化するので、温度及び圧力が変化すると周囲の大気から酸素を吸着したり酸化物から酸素を放出したりする。よって、温度及び圧力を変化させることにより、酸化物に吸着させた酸素を放出させ、その放出された酸素を収集することにより、大気から高い濃度の酸素を製造することができる。
(6)請求項6の発明は、前記酸化物を収容した容器内の温度を所定の低温度に設定するとともに、前記容器内圧力を所定の高圧力に設定することにより、前記酸化物に酸素を吸着させ、前記容器内の温度を前記低温度を上回る所定の高温度に設定するとともに、前記容器内の圧力を前記高圧力を下回る所定の低圧力に設定することにより、前記酸化物に吸着した酸素を放出させることを特徴とする。
本発明は、前記請求項1の発明と請求項2の発明とを組み合わせたものであるので、請求項1の発明及び請求項2の発明単独よりも、一層顕著な効果を奏する。
(7)請求項7の発明は、前記酸素欠陥をもつ酸化物が、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物であることを特徴とする。
本発明は、上述した酸素濃縮に用いる酸素欠陥をもつ好適な酸化物を例示したものである。
ここで、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物とは、一般にABO3-δで表される構成を有する。尚、Aは希土類或いはアルカリ土類元素又はその複合系、Bは遷移金属1種又は2種以上、δは酸素欠損量である。
(8)請求項8の発明は、前記ペロブスカイト構造を有する複合酸化物が、LaxBa(1-x)CoO3-δ (0.1<x<0.5)、LaxSr(1-x)CoO3-δ (0.1<x<0.5)、SrCoxFe(1-x)3-δ (0.1<x<0.9)、SrNixFe(1-x)3-δ (0.1<x<0.9)、SrCoxNi(1-x)3-δ (0.1<x<0.9)、YBa2Cu37-δのいずれかであることを特徴とする。
本発明は、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物を例示したものである。
(9)請求項9の発明は、前記酸化物が充填された容器内の圧力を減圧することにより、前記吸着筒内の雑ガスを排除することを特徴とする。
本発明では、酸化物が充填された容器内の圧力を減圧することにより、吸着筒内の雑ガス(酸素以外のガス)を排除する(パージする)ので、容器内には雑ガスが殆ど無くなる。尚、雑ガスをパージすることにより、結果的に残余の酸素もパージされる。
よって、その後、酸化物から酸素を放出させて収集する際に、収集した高濃度酸素ガス中に雑ガスが殆ど含まれない。そのため、製造された高濃度酸素ガスの純度が高く、製造効率も良いという利点がある。
(10)請求項10の発明は、前記酸素製造装置にて製造された高濃度酸素ガスを、前記酸化物が充填された容器内に供給することにより、該容器内の雑ガスを排除することを特徴とする。
本発明では、酸素製造装置にて製造された高濃度酸素ガス(製品ガス)を、酸化物が充填された容器内に供給することにより、容器内の雑ガス(酸素以外のガス)を排除する(パージする)ので容器内には雑ガスが殆ど無くなる。尚、雑ガスをパージすることにより、結果的に残余の酸素もパージされる。
よって、その後、酸化物から酸素を放出させて収集する際に、収集した高濃度酸素ガス中に雑ガスが殆ど含まれない。そのため、製造された高濃度酸素ガスの純度が高く、製造効率も良いという利点がある。
(11)請求項11の発明は、前記酸化物を充填した容器を備えたことを特徴とする。
本発明の酸素製造装置は、酸化物を充填した容器を備えたものであることを例示したものである。
(12)請求項12の発明は、前記酸化物を充填した容器を複数備え、前記容器における酸素の吸着及び放出の動作を、各容器筒毎に異なるタイミングで実施することを特徴とする。
本発明では、酸化物を充填した容器を複数備え、その容器における酸素の吸着及び放出の動作を、各容器毎に異なるタイミングで実施するので、酸素製造のムラが少ないという効果がある。つまり、容器が1個の場合には、酸素を吸着する動作の場合には酸素の放出はできないが、複数の容器を用いて、各容器内の処理の動作をずらすことにより、吸着及び放出の動作による酸素製造の変動を低減することができる。
(13)請求項13の発明は、前記酸化物を粉末の状態で用いることを特徴とする。
本発明は、使用する酸化物の好ましい状態を例示したものである。
(14)請求項14の発明は、前記酸素製造装置にて製造された高濃度酸素ガスの酸素濃度が、99.6体積%以上であることを特徴とする。
本発明は、酸素製造装置で製造できる高濃度酸素ガス(製品ガス)の酸素濃度を例示したものである。
次に、本発明の最良の形態の例(実施例)について説明する。
本実施例では、空気中から酸素を吸着する酸素吸着剤(以下吸着剤と記す)を用いて酸素を99.5%以上の高濃度に濃縮し、この酸素高濃縮ガス(高濃度酸素ガス:製品ガス)を患者に対して供給する医療用酸素製造装置(以下酸素製造装置と記す)を例に挙げる。
本実施例の酸素製造装置は、温度の掃引により酸素の濃縮を行うものである。すなわち、後述する様に、吸着剤を収容した吸着筒内の温度を、所定の低温度に設定することにより、吸着剤に酸素を吸着させ、また、吸着筒内の温度を、前記低温度を上回る所定の高温度に設定することにより、吸着剤に吸着した酸素を放出させる装置である。
a)まず、本実施例の酸素製造装置の構成について説明する。
図1に示す様に、本実施例の酸素製造装置1は、大気の供給される上流側より、流路を開閉する第1バルブ3、吸着筒7に流入する大気の熱交換を行う第1熱交換器5、吸着剤を充填した吸着筒7、吸着筒7から流出するガスの熱交換を行う第2熱交換器9、吸着筒7からガスを排出するためのポンプ11、ポンプ11から外界に到る流路を開閉する第2バルブ13、ポンプ11から製品タンクに到る流路を開閉する第3バルブ15、高濃度酸素ガスを貯蔵する製品タンク17、製品タンク17内の酸素濃度を検出する酸素モニタ(酸素センサ)19を備えている。
このうち、前記第1〜第3バルブ3、13、15は、後述する電子制御装置21(図 参照)により制御されて各ガス流路を開閉する電磁弁である。
前記第1熱交換器5は、外界から吸着筒7内に吸入される大気を例えば200℃に予熱するためのものであり、第2熱交換器9は、吸着筒7から流出する高温度のガスによりポンプ11が損傷することを防止するために、ガスの温度を例えば70℃に低下させるためのものである。
前記吸着筒7は、断熱材からなる断熱容器23内に収容されており、断熱容器23の内周面側には、吸着筒7の外周面側を覆うようにヒータ25が配置されている。また、断熱容器23には、断熱容器23内の温度を測定するために熱電対27が配置されている。そして、熱電対27によって測定された温度に基づいて、温度コントローラ29によってヒータ25が制御され、それによって、断熱容器23内の温度、従って、吸着筒7内の温度が調節される。
また、図2に示す様に、酸素製造装置1の動作を制御する電子制御装置21は、マイクロコンピュータを主要部とする制御装置であり、周知のCPU31、ROM33、RAM35、入出力部37を備えている。
前記入出力部37には、酸素モニタ19、第1〜第3バルブ3、13、15、第1、第2熱交換器5、9、温度コントローラ29、ポンプ11が接続されている。
b)次に、前記吸着剤の特性及びその製造方法について説明する。
・本実施例では、吸着剤として、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物であるLa0.3Sr0.7CoO3-δの粉末を用いる。
このペロブスカイト構造を有するLa0.3Sr0.7CoO3-δは、酸素欠陥δを有しており、このδの値は温度依存性を持つ。つまり、温度を上昇させるとδが大きくなって、結晶内の酸素が吐き出され、逆に、温度を低下させるとδが小さくなって、酸素が結晶内に選択的に取り込まれる。
従って、本実施例では、この様な性質を有するLa0.3Sr0.7CoO3-δ粉末を吸着筒7に充填し、後に詳述する様にして、吸着筒7内の温度を制御することにより、酸素濃度99.5%以上の酸素高濃度ガスを製造する。
・前記La0.3Sr0.7CoO3-δ粉末は、下記の手順で製造することができる。
具体的には、まず、La0.3Sr0.7CoO3-δ粉末が、500g合成されるように、酸化ランタン、酸化ストロンチウム、酸化コバルトを所定量(例えば酸化ランタン:116.41g、炭酸ストロンチウム:246.16g、酸化コバルト:191.19g)秤量し、湿式ボールミル混合を行う。
次に、この混合粉末を、電気炉内で850℃にて5時間仮焼した後に、乳鉢にて混合後、更に1000℃にて5時間仮焼する。
この仮焼成粉末を、80メッシュのふるいに通し、本実施例の吸着剤粉末、即ちペロブスカイト構造を有するLa0.3Sr0.7CoO3-δの粉末を得る。
c)次に、前記酸素製造装置1にて行われる酸素濃縮の手順について、図3のフローチャートに基づいて説明する。
(1) まず、第1バルブ3と第2バルブ13とを開くとともに、第3バルブ15を閉める(ステップ(以下Sと記す)100)。この状態で、ポンプ11を稼働させる(S110)。これにより、大気を第1バルブ3、第1熱交換器5を介して吸着筒7内に導入するとともに、吸着筒7から、第2熱交換器9、ポンプ11、第2バルブ13を介して外界に排出する。つまり、吸着筒7内に大気を流通させる。
尚、このとき、第1、第2熱交換器5、9は、作動させておくので、吸着筒7内には、第1熱交換器5により、約200℃に予熱された大気が流入し、ポンプ11側には、約70℃に冷却された大気が排出される。
(2) 次に、温度コントローラ29により、断熱容器23内、従って吸着筒7内の温度を、前記所定の低温度である350℃に保つ制御を行う(S120)。
(3) そして、前記350℃の温度を保った状態で、3分間大気を流通させる。これにより、大気中の酸素は吸着剤粉末の結晶内に取り込まれる。従って、吸着筒7から流出するガスは、酸素の多くが吸着により除去されているので、残余の窒素等の雑ガス成分が多いガス(排出ガス)となる。
尚、大気は吸着筒7に流入する前に第1熱交換器5により、約200℃に加温されているので、大気が吸着筒7内に導入されても、吸着筒7内の温度が過度に低下することはない。また、第2熱交換器9により吸着筒7から流出する排ガスの温度が、約70℃に低減されているので、ポンプ11の熱による損傷を防止できる。
(4) 次に、前記3分間の大気の流通後(S130)、第1バルブ3を閉じ(S140)、ポンプ11により吸着筒7内の排気を行う。例えば、吸着筒7内の圧力が3.039×10-2MPa程度となるまで排気を行う。これにより、吸着筒7内に残留する雑ガスが外界に排出される。
(5) 次に、前記排気が完了した場合には(S150)、ポンプ11を停止するとともに、第2バルブ13を閉じる(S160)。これにより、吸着筒7内は3.039×10-2MPa程度にて気密された状態となる。
(6) 次に、温度コントローラ29により、吸着筒7内の温度を、前記所定の高温度である650℃に昇温し(S170)、その状態を例えば3分間保つ。これにより、吸着剤の結晶内に取り込まれていた酸素が放出される。
(7) 次に、前記酸素の放出が完了した場合には(S180)、第3バルブ15を開くとともに、ポンプ11を作動させる(S190)。これにより、吸着筒7内に(吸着剤からの放出により)満たされた酸素を製品タンク17内に充填する。
(8) 次に、前記酸素の充填が完了した場合には(S200)、ポンプ11を停止する(S210)。尚、酸素モニタ19により、製品タンク17内の酸素濃度を測定する。
以後、同様な操作を繰り返すことにより、製品タンク17内に、濃度99.5%以上の高濃度酸素ガスを蓄積することができる。尚、前記S150、S180、S200の判定は、センサより各状態に達したことを判定しても良いが、実験により求めた作動時間により判定を行うことができる。
d)この様に、本実施例の酸素製造装置1では、吸着筒7にペロブスカイト構造を有するLa0.3Sr0.7CoO3-δの粉末を充填し、吸着筒7内の温度を350℃から650℃に変化させて(掃引して)、吸着剤に吸着させた酸素を脱離させる。これにより、従来のゼオライト吸着剤では困難であった99.5%以上の濃度の高濃度酸素ガスを、簡易なシステムで容易に製造することができる。
また、本実施例では、従来の液化分留法の様な大型の装置や酸素ボンベ等が不要であり、しかもゼオライト吸着剤の様な劣化も少ない。しかも、酸素製造装置1を駆動する電力があれば、遠隔地や離島或いは災害等で道路交通網が寸断された場合であっても、病院等の使用現場で、医薬品用酸素などの高濃度酸素ガスを容易に製造することができるという顕著な効果を奏する。
次に、実施例2の酸素製造装置について説明するが、前記実施例1と同様な内容については省略する。
本実施例の酸素製造装置は、圧力の掃引により酸素の濃縮を行うものである。すなわち、後述する様に、吸着剤を収容した吸着筒内の圧力を、所定の高圧力に設定することにより、吸着剤に酸素を吸着させ、また、吸着筒内の圧力を、前記高圧力を下回る所定の低圧力に設定することにより、吸着剤に吸着した酸素を放出させる装置である。
a)まず、本実施例の酸素製造装置の構成について説明する。
図4に示す様に、本実施例の酸素製造装置41は、大気の供給される上流側より、大気を装置内に導入する第1ポンプ43、第1ポンプ43により導入される大気の流路を開閉する第1バルブ45、吸着筒47に流入する大気の熱交換を行う第1熱交換器49、吸着剤を充填した吸着筒47、吸着筒47から流出するガスの熱交換を行う第2熱交換器51、第2熱交換器51から外界に到る流路を開閉する第3バルブ53、吸着筒47からガスを排出して製品タンク55に供給する第2ポンプ57、高濃度酸素ガスを貯蔵する製品タンク55、第2ポンプ57から製品タンク55に到る流路を開閉する第4バルブ59、製品タンク55内の酸素濃度を検出する酸素モニタ61、製品タンク55から第1熱交換器49に到る流路を開閉する第2バルブ63を備えている。
前記吸着筒47は、前記実施例1と同様に、断熱容器65内に収容されており、断熱容器65の内周面にはヒータ67が配置されている。また、断熱容器67には、熱電対69が配置され、ヒータ65及び熱電対69は温度コントローラ71に接続されている。
尚、吸着筒47には、前記実施例1と同様な吸着剤が充填されている。
b)次に、前記酸素製造装置41にて行われる酸素濃縮の手順について、図4のフローチャートに基づいて説明する。
(1) まず、温度コントローラ71により、炉内温度、従って吸着筒47内の温度を650℃に保つ制御を行う(S300)。
(2) 次に、第1バルブ45を開、第2バルブ63を閉、第3バルブ53を閉、第4バルブ59を閉に状態にする(S310)。すなわち、大気を吸着筒47に導入する流路だけを開く状態にする。
(3) この状態で、第1ポンプ43を駆動して(S320)、吸着筒47内を、前記所定の高圧力である例えば3.039×10-1MPaに加圧し、吸着剤に酸素を取り込むようにする。
尚、このとき、第1熱交換器49は、作動させておくので、吸着筒47内には、第1熱交換器49により、約200℃に予熱された大気が流入する。
(4) 次に、前記加圧が完了した場合には(S330)、第1ポンプ43を止めるとともに(S340)、第1バルブ45を閉、第2バルブ63を閉、第3バルブ53を開、第4バルブ59を閉に状態にする(S350)。すなわち、吸着筒47のガスを第3バルブ53を介して外界に排出し、吸着筒47内の圧力を1.013×10-1MPa(大気圧)まで低減した状態にする。
(5) 次に、前記減圧が完了した場合には(S360)、第1バルブ45を閉、第2バルブ63を開、第3バルブ53を開、第4バルブ59を閉に状態にする(S370)。すなわち、製品タンク55内の製品ガス(即ち前回以前の動作で製造された高濃度酸素ガス)を、上流側より吸着筒47を通して外界に排出する処理(パージ処理)を行う。これにより、吸着筒47内に残留する雑ガスを排出する。
(6) 次に、前記パージが完了した場合には(S370)、第1バルブ45を閉、第2バルブ63を閉、第3バルブ53を閉、第4バルブ59を開に状態にする(S380)。すなわち、吸着筒47から製品タンク55に到る流路のみを開くようにする。
(7) この状態で、第2ポンプ57を駆動して(S390)、吸着筒47内を、前記所定の低圧力である例えば1.013×10-2MPaに減圧するとともに、吸着剤から酸素を離脱させて、製品タンク55内に加圧して充填するようにする。
尚、このとき、第2熱交換器51は、作動させておくので、第2ポンプ57側には、約70℃に冷却されたガスが流入する。
(8) 次に、前記充填が完了した場合には(S400)、第2ポンプ57を停止するとともに、第1バルブ45を閉、第2バルブ63を閉、第3バルブ53を閉、第4バルブ59を閉に状態にする(S410)。すなわち、製品タンク55を密閉した状態とする。
以後、同様な操作を繰り返すことにより、製品タンク55内に、濃度99.5%以上の高濃度酸素ガスを蓄積することができる。尚、前記S330、S360、S370、S400の判定は、センサより各状態に達したことを判定しても良いが、実験により求めた作動時間により判定を行うことができる。
d)この様に、本実施例の酸素製造装置41では、吸着筒47にペロブスカイト構造を有するLa0.3Sr0.7CoO3-δの粉末を充填し、吸着筒47内の圧力を3.039×10-1MPaから1.013×10-2MPaに変化させて(掃引して)、吸着剤に吸着させた酸素を脱離させることにより、99.5%以上の濃度の高濃度酸素ガスを製造することができる。これにより、前記実施例1とほぼ同様な効果を奏する。
次に、実施例3の酸素製造装置について説明するが、前記実施例1と同様な内容については省略する。
本実施例の酸素製造装置は、温度及び圧力の掃引により酸素の濃縮を行うものである。すなわち、後述する様に、吸着剤を収容した吸着筒内の温度を、所定の低温度に設定するとともに、吸着筒内の圧力を、所定の高圧力に設定することにより、吸着剤に酸素を吸着させる。また、吸着筒内の温度を、前記低温度を上回る所定の高温度に設定するとともに、吸着筒内の圧力を、前記高圧力を下回る所定の低圧力に設定することにより、吸着剤に吸着した酸素を放出させる。
a)ここでは、本実施例の酸素製造装置にて行われる酸素濃縮の手順について、図6のフローチャートに基づいて説明する。尚、本実施例の酸素製造装置のハード構成は、前記実施例2と同様であるので、図4を用いてその説明を行う。
(1) まず、温度コントローラ71により、炉内温度、従って吸着筒47内の温度を、前記所定の低温度である350℃に保つ制御を行う(S500)。
(2) 次に、第1バルブ45を開、第2バルブ63を閉、第3バルブ53を閉、第4バルブ59を閉に状態にする(S510)。すなわち、大気を吸着筒47に導入する流路だけを開く状態にする。
(3) この状態で、第1ポンプ43を駆動して(S520)、吸着筒47内を、前記所定の高圧力である例えば3.039×10-1MPaに加圧し(S530)、吸着剤に酸素を取り込むようにする。
尚、このとき、第1熱交換器49は、作動させておくので、吸着筒47内には、第1熱交換器49により、約200℃に予熱された大気が流入する。
(4) 次に、第1ポンプ43を止めるとともに、第1バルブ45を閉、第2バルブ63を閉、第3バルブ53を開、第4バルブ59を閉に状態にする(S540)。すなわち、吸着筒47のガスを第3バルブ53を介して外界に排出し、吸着筒47内の圧力を1.013×10-1MPa(大気圧)まで低減した状態にする。
(5) 次に、前記減圧が完了した場合には(S550)、第1バルブ45を閉、第2バルブ63を開、第3バルブ53を開、第4バルブ59を閉に状態にする(S560)。すなわち、製品タンク55内の製品ガスを、上流側より吸着筒47を通して外界に排出する処理(パージ処理)を行う。これにより、吸着筒47内に残留する雑ガスを排出する。
(6) 次に、バージが完了した場合には(S570)、第1バルブ45を閉、第2バルブ63を閉、第3バルブ53を閉、第4バルブ59を開に状態にする(S580)。すなわち、吸着筒47から製品タンク55に到る流路のみを開くようにする。
(7) この状態で、温度コントローラ71により、吸着筒47内の温度を、前記所定の高温度である650℃に昇温する(S590)。それとともに、第2ポンプ57を駆動して、吸着筒47内を、前記所定の低圧力である例えば1.013×10-2MPaに減圧する(S600)。これにより、吸着剤の結晶内に取り込まれていた酸素を放出させ、その酸素を製品タンク55内に加圧して充填するようにする。
尚、このとき、第2熱交換器51は、作動させておくので、第2ポンプ57側には、約70℃に冷却されたガスが流入する。
(8) 次に、前記減圧が完了したら(S610)、第2ポンプ57を停止するとともに、第1バルブ45を閉、第2バルブ63を閉、第3バルブ53を閉、第4バルブ59を閉に状態にする(S620)。すなわち、製品タンク55を密閉した状態とする。
以後、同様な操作を繰り返すことにより、製品タンク55内に、濃度99.5%以上の高濃度酸素ガスを蓄積することができる。尚、前記S530、S550、S570、S610の判定は、センサより各状態に達したことを判定しても良いが、実験により求めた作動時間により判定を行うことができる。
b)この様に、本実施例の酸素製造装置41では、吸着筒47にペロブスカイト構造を有するLa0.3Sr0.7CoO3-δの粉末を充填し、吸着筒47内の温度を350℃〜650℃に変化させるとともに、圧力を3.039×10-1MPaから1.013×10-2MPaに変化させて、吸着剤に吸着させた酸素を脱離させることにより、99.5%以上の濃度の高濃度酸素ガスを製造することができる。
本実施例では、温度及び圧力の掃引を行うので、前記実施例1、2と同様な効果を奏するとともに、前記実施例1、2より一層効率的に高濃度酸素ガスを製造することができるという利点がある。
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば吸着筒を2以上用い、各吸着筒における酸素の吸着や放出のタイミングをずらすことにより、酸素製造の変動を小さくすることができ、常に高い濃度の酸素ガスを供給することができるという利点がある。
実施例1の酸素製造装置の構成を示す説明図である。 実施例1の酸素製造装置の電子制御装置の電気的構成を示す説明図である。 実施例1の電子制御装置にて行われる処理を示すフローチャートである。 実施例2の酸素製造装置の構成を示す説明図である。 実施例2の電子制御装置にて行われる処理を示すフローチャートである。 実施例3の電子制御装置にて行われる処理を示すフローチャートである。
符号の説明
1、41…酸素製造装置
3、13、15、45、53、59、63…バルブ
5、9、49、51…熱交換器
7、47…吸着筒
11、43、57…ポンプ
17、55…製品タンク
29、71…温度コントローラ

Claims (14)

  1. 温度を変化させることにより、酸素欠陥を持つ酸化物の酸素欠陥量を変化させ、その酸素欠陥量の変化に応じて放出された酸素を収集することにより、大気から高濃度酸素ガスを製造することを特徴とする酸素製造装置。
  2. 前記酸化物を収容した容器内の温度を、所定の低温度に設定することにより、前記酸化物に酸素を吸着させ、前記容器内の温度を、前記低温度を上回る所定の高温度に設定することにより、前記酸化物に吸着した酸素を放出させることを特徴とする前記請求項1に記載の酸素製造装置。
  3. 圧力を変化させることにより、酸素欠陥を持つ酸化物の酸素欠陥量を変化させ、その酸素欠陥量の変化に応じて放出された酸素を収集することにより、大気から高濃度酸素を製造することを特徴とする酸素製造装置。
  4. 前記酸化物を収容した容器内の圧力を、所定の高圧力に設定することにより、前記酸化物に酸素を吸着させ、前記容器内の圧力を、前記高圧力を下回る所定の低圧力に設定することにより、前記酸化物に吸着した酸素を放出させることを特徴とする前記請求項3に記載の酸素製造装置。
  5. 温度と圧力とを同時に変化させることにより、酸素欠陥を持つ酸化物の酸素欠陥量を変化させ、その酸素欠陥量の変化に応じて放出された酸素を収集することにより、大気から高濃度酸素を製造することを特徴とする酸素製造装置。
  6. 前記酸化物を収容した容器内の温度を所定の低温度に設定するとともに、前記容器内圧力を所定の高圧力に設定することにより、前記酸化物に酸素を吸着させ、前記容器内の温度を前記低温度を上回る所定の高温度に設定するとともに、前記容器内の圧力を前記高圧力を下回る所定の低圧力に設定することにより、前記酸化物に吸着した酸素を放出させることを特徴とする前記請求項5に記載の酸素製造装置。
  7. 前記酸素欠陥をもつ酸化物が、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物であることを特徴とする前記請求項1〜6のいずれかに記載の酸素製造装置。
  8. 前記ペロブスカイト構造を有する複合酸化物が、LaxBa(1-x)CoO3-δ (0.1<x<0.5)、LaxSr(1-x)CoO3-δ (0.1<x<0.5)、SrCoxFe(1-x)3-δ (0.1<x<0.9)、SrNixFe(1-x)3-δ (0.1<x<0.9)、SrCoxNi(1-x)3-δ (0.1<x<0.9)、YBa2Cu37-δのいずれかであることを特徴とする前記請求項7に記載の酸素製造装置。
  9. 前記酸化物が充填された容器内の圧力を減圧することにより、前記吸着筒内の雑ガスを排除することを特徴とする前記請求項1又は2に記載の酸素製造装置。
  10. 前記酸素製造装置にて製造された高濃度酸素ガスを、前記酸化物が充填された容器内に供給することにより、該容器内の雑ガスを排除することを特徴とする前記請求項3〜6のいずれかに記載の酸素製造装置。
  11. 前記酸化物を充填した容器を備えたことを特徴とする前記請求項1〜10のいずれかに記載の酸素製造装置。
  12. 前記酸化物を充填した容器を複数備え、前記容器における酸素の吸着及び放出の動作を、各容器毎に異なるタイミングで実施することを特徴とする前記請求項11に記載の酸素製造装置。
  13. 前記酸化物を粉末の状態で用いることを特徴とする前記請求項1〜12のいずれかに記載の酸素製造装置。
  14. 前記酸素製造装置にて製造された高濃度酸素ガスの酸素濃度が、99.6体積%以上であることを特徴とする前記請求項1〜13のいずれかに記載の酸素製造装置。
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