JP2006168707A - 高速鉄道車両の排障板 - Google Patents

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Abstract

【課題】軌道上に存在する障害物との衝突時に、その障害物との接触圧を高くすることによって障害物を左右に切断し、正面衝突時に生じる反力を小さくする。
【解決手段】車両前頭部に設けられレールUL,UR上に存在する障害物を跳ね飛ばす排障板1の後方に複数の板バネ3A〜3Cから構成される緩衝板3を配置する。排障板1を車体に固定する。排障板1の排障部1Aは、鉛直方向に延びる面板部1AL,1ARで構成し、排障板1の前端中央部分は、平面視で前方に向かって鋭角をなす山形形状に形成し、鉛直稜線1aを有する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、高速鉄道車両において、走行中にレール上の障害物を排除する高速鉄道車両の排障板に関するものである。
従来より、鉄道車両の排障装置は、排障板、排障板吊り具、緩衝板、緩衝板支持部材などから構成されることは知られている(例えば特許文献1参照)。
このうち、排障板は、板材(平板)を馬蹄形状に曲げた構造であり、軌道上から障害物を排除する際に、車体下に障害物を巻き込むことを防ぐために、一般に、下辺部が上辺部より外方に突出するように「すくい角」が設けられている。そして、排障板は、下辺部が車体外表面に露出するように排障板の上辺部が排障板吊り具を介して車体に取り付けられることによって、車体に支持されている。
前記緩衝板は、馬蹄形状に湾曲した複数の板バネを隙間を空けて車両前後方向において重ね合わせ、それぞれの両端部においてスペーサを介して結合し、板バネ・アッセンブリとして構成されている。板バネは、内側(後側)に位置することになるものほど先端湾曲部分の曲率半径が小さくなっている。そして、最も内側の板バネを緩衝板支持部材で支持することによって、車体に取り付けられている。
特開2001−55141号公報(0002及び図8〜図10)
しかしながら、上述した従来の排障装置は、次のような課題がある。
(i)従来の排障板が左右中央部分で障害物と衝突した場合には、湾曲形状の中央部分が、障害物との衝突荷重をそのまま受け止めることになるため、障害物から受ける荷重が大きく、反力が大きくなる。
(ii)排障板にはすくい角が設けられているので、重量がある障害物と衝突して排障板が大きく変形するような場合には、排障板に下向きの荷重が作用し、排障板の先端部が垂れ下がる傾向となる。そのため、排障板の垂れ下がり量が大きいと、排障板が建築限界を侵し、地上構造物と接触することになり、鉄道車両の走行に支障を来すおそれがある。
そこで、発明者は、排障板を工夫することで、衝突時に、軌道上に存在する障害物との接触部分の接触圧を高くして障害物を左右に切断することができれば、正面衝突時に生じる反力を小さくすることできることに着想し、本発明をなすに至った。
請求項1の発明は、車両前頭部に排障板が設けられ、この排障板にて軌道上に存在する障害物を跳ね飛ばす高速鉄道車両の排障板において、前記排障板は、平面視で左右の側面が前方に向かって鋭角をなすように形成され、車両左右方向の中央部分に、前記障害物を切断する切り刃として機能する鉛直稜線を有することを特徴とする。ここで、排障板は、車両左右方向の中央部分に位置する鉛直稜線を有すればよく、下辺部が上辺部より外方に突出するように「すくい角」を有する形状であっても、そのような「すくい角」がない形状であってもよい。「すくい角」がない形状であっても、排障板全体にわたって「すくい角」をなくす必要はない。例えば、「すくい角」を有する形状の排障板の先端に平板を取り付け、鉛直稜線を有する構成とすることも可能である。
このようにすれば、排障板は、平面視で左右の外側面が前方に向かって鋭角をなすように形成され、車両左右方向の中央部分に、前記障害物を切断する切り刃として機能する鉛直稜線を有するので、衝突時に、軌道上に存在する障害物を排障板の鉛直稜線(切り刃)によって切断することが可能となる。鉛直稜線が切り刃として機能して、障害物を左右に切断することができるので、正面衝突時に生じる反力を小さくすることができる。
また、障害物の強度が高い場合は、衝突時に排障板が変形することになるが、排障板先端が、切り刃として機能する鉛直稜線とされているので、障害物と衝突したときに、排障板先端が下方に垂れ下がるのが防止される。つまり、排障板の先端部分が、下辺部が上辺部に比べて前方に突出している場合(いわゆるすくい角がある場合)には、下辺部が上辺部よりも先に障害物に接触し、変形により排障板先端が下方に垂れ下がる事態が生ずるが、請求項1の発明ではこのような事態が回避される。
本発明は、以上のように、排障板は、平面視で左右の外側面が前方に向かって鋭角をなすように形成し、車両左右方向の中央部分に、前記障害物を切断する切り刃として機能する鉛直稜線を有する構成としているので、衝突時に、障害物を左右に切断し、正面衝突時に生じる反力を小さくすることができる。
以下、この発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
図1は本発明に係る高速鉄道車両の排障装置を示す中央断面図、図2は同平面図、図3は同正面図、図4〜図6はそれぞれ排障板の側面図、平面図及び正面図である。
図1〜図3に示すように、車両の前頭部には、走行中にレールUL,UR上に存在する障害物を排除する排障板1が設けられている。この排障板1は、平面視で前方に向かって鋭角な山形形状となるように構成されている。つまり、排障板1は、それの左右¥面が鋭角をなすように形成されている。そして、排障板1は、空力騒音低減を考慮して成形されたフェアリング4にて覆われている。
排障板1は、図4〜図6に示すように、鉛直方向に延び外方に突出するように板材を湾曲した2つの面板部、すなわち左側に位置する左側面板部1ALと右側に位置する右側面板部1ARの前端縁を溶接により接合され、それらの接合状態で平面視で前方に向かって鋭角な山形形状を形成している。このように接合された面板部1AL,1ARの前端縁が、車両左右方向の中央部分に位置する鉛直稜線1aを形成している。この鉛直稜線aが、軌道上に存在する障害物を切断する切り刃として機能する。
排障板1の前側部分によって障害物を先端で切除する排障部1Aが構成され、この排障部1Aは、排障板1が車体台枠13に取り付けられた状態では、外側面が鉛直方向に延びている。これにより、排障板1の先端部(排障部1Aにおける車両左右方向の中央部分)に、左右の面板部1AL,1AR(外側面)の前端縁の交線としての鉛直稜線1aが形成される。
左右の面板部1AL,1ARは、それぞれ、車両左右方向の中央部分から、左右のレールUL,URの外方まで左右対称に後方に向かって延び、後側部分の上側には、車体台枠13への取付けのための左右取付部1BL,1BRが設けられている。これにより、排障板1は、後側部分(左右取付部1BL,1BR)において車体(車体台枠13)に支持される。
左右の面板部1AL,1ARは、それらの接合部分(鉛直稜線1a)から間隔が広がるように徐々に外側方に延びると共に、左右方向に延びる連結板1Acにて相互に連結され、この連結板1Acの後方に、後述する緩衝板3を構成する複数の板バネ3A〜3Cが位置するようになっている。
排障板1の左右取付部1BL,1BRが、複数の排障板吊り金具11L,11Rを介して、上部支持部材12L,12Rに固定されている。この上部支持部材12L,12Rが、車体台枠13に取り付けられている。これにより、排障板1全体が、排障板吊り金具11L,11Rおよび上部支持部材12L,12Rを有する排障板支持装置14L,14Rを介して、車体台枠13に吊り下げ状態で取り付けられる。
排障部1Aの前側部分の下辺部には、図3に示すように、排障部1Aに対し水平方向外方に突出するように中空楔形状のリップ部2L,2Rが溶接により設けられている。このリップ部2L,2Rは、軌道上に障害物が存在する場合に、その障害物を上にのせて、レールUL,URの外方まで案内する機能を有する。
このリップ部2L,2Rは、排障板1に取り付けられた状態で、右側のリップ部2Rについて示す図7及び図8に示すように、前側部分が断面三角形状の閉断面構造を、後側部分が断面四角形状の閉断面構造をそれぞれ形成する。よって、リップ部2Rは、前後において中空断面形状が異なっている。また、リップ部2L,2Rの高さ(上下方向の長さ)は、後側になるほど高くなっている。なお、リップ部2L,2Rの後端部は閉塞されている。
リップ部2Rは、ほぼ水平方向に延びる下側部材2RAと、その下側部材2RAの上側に位置し外縁が下側部材2RAに溶接により接合される上側部材2RBとで構成され、それらの内側縁部が排障板1の外側面1bに溶接により接合されている。また、下側部材2RAと上側部材2RBとの接合部分(溶接部分)を保護するために、下側部材2RAの外周縁には突条部2RAaが形成され、その突条部2RAaの内側に上側部材2RBの外側縁2RBaが接合されるようになっている。つまり、上側部材2RBと下側部材2RAとの溶接部分が、障害物に直接にぶつかり、それにより破断するのを回避するようになっている。なお、リップ部2L,2Rは、排障板1のほぼ1/4程度の板厚とされている。
排障板1の後側に、鋼製の板バネ3A,3B,3C,3D(3DL,3DR)を重ねた板バネアッセンブリとしての緩衝板3が配設されている。つまり、緩衝板3は、複数の板バネ3A〜3Dを隙間を空けて車両前後方向において重ね合わせ、それぞれの両端部においてスペーサ5を介して結合し、一組の板バネ・アッセンブリとして構成されている。ただし、前側の3枚の板バネ3A〜3Cは馬蹄形状に湾曲した形状であるが、最も後側に位置する板バネ3Dは中央部分が切除され、2つの部分3DL,3DRとされている。
緩衝板3の板バネ3A〜3Cは走行方向前方に凸ではあるが、後方に位置する板バネほど曲率半径が大きくなるように構成され、走行方向の最も前側の板バネ3Aの前側に、排障板1の連結板1Acが一定の間隙を存して配置されている。この緩衝板3は、排障板1の変形で吸収しきれなかった衝突エネルギーを吸収するものである。
最も前側に位置する板バネ3Aの前側部分は、図1に示すように、ほぼ上半分(上側部分の一部)が、それの上側に位置する面板部1AL,1ARに対応して切除され、その切除部分3Aa(図1参照)の上側に、鉛直稜線1aを有する先端部分に連続する面板部1AR(又は1AL)の上部が位置するようになっている。これにより、板バネ3Aと面板部1AL,1ARとが無理なく配置される。
また、緩衝板3(最も後側に位置する板バネ3Dの2つの部分3DL,3DR)の後端部は、車体左右方向に延びる閉断面構造の下部支持部材21に連結されている。この下部支持部材21の両端部は、それぞれ鉛直方向に配置される左右支持部材22L,22Rの下端部に連結され、左右支持部材22L,22Rの上端部は、車体台枠13(車体)に締結固定されている。また、下部支持部材21の後側は、後方にかつ斜め上方に向かって延びる左右の傾斜支持部材23L,23Rを介して車体台枠13に連結されている。このようにして、緩衝板3の後端部を支持する支持装置24が、支持部材21,22L,22R,23L,23Rによって構成されている。
この支持装置24の側方位置で、前述したように、排障板1の左右取付部1BL,1BRは、排障板支持装置14L,14R(排障板吊り金具11L,11Rおよび上部支持部材12L,12R)を介して、車体台枠13に支持されている。
このように構成すれば、排障板1の排障部1Aは、平面視で左右の外側面が前方に向かって鋭角をなすように構成され、車両左右方向の中央部分に鉛直稜線1a(接合された左右の面板部1AL,1ARの前端縁)を有するので、障害物との衝突時に、排障板1の鉛直稜線1aが切り刃として機能し、障害物を左右に切断することができる。よって、正面衝突時に生じる反力を小さくすることができる。
また、排障板1の排障部1Aを、鉛直方向に延びる左右の面板部1AL,1ARの前端縁を溶接することにより構成しているため、排障板1がいわゆるすくい角がない単純な形状になり、排障板1の製作が簡単になる。
なお、障害物の強度が高く左右に切断できない場合に、排障板1が圧壊して衝突エネルギーを吸収するだけでなく、排障板1の後方に位置する緩衝板3の変形によっても衝突エネルギーを吸収する。
また、排障板1の前頭部の下辺部にリップ部2L,2Rを設け、このリップ部2L,2Rが、障害物をレールUL,UR上から排除する際に障害物を案内する役割を発揮するため、障害物をスムーズに側方に、軌道外まで跳ね飛ばすことが可能となる。その結果、障害物の巻き込みや、障害物とレールUL,URとの衝突による軌道(レール)の破壊を防ぎ、車両の脱線を防止することができる。
続いて、前述した装置の衝突性能についての解析結果について説明する。なお、排障板の先端部の形状を、鋭角形状とした本発明装置(以下本発明例という)と、湾曲形状とした従来装置(以下従来例という)とをモデル化したものを図9(a)(b)にそれぞれ示す。
このような図9(a)(b)に示す装置を備える鉄道車両(先頭車両)が、軌道上の重量1tonのコンクリートブロックに、時速300kmでもって衝突した場合について、反力値(拘束反力値)の変化を時間の経過と共に図10に示す。尚、この反力値は、排障板の取付座や緩衝板の取付部位などの固定部位での反力値(計算値)である。
図7より、排障板の前頭部が鋭角形状である本発明例の方が、排障板の前頭部が湾曲形状である従来例よりも最大反力値は大幅に低減しており、ほぼ1/2程度となっていることがわかる。本発明例での反力値の最初のピーク値は、排障板にコンクリートブロックが衝突したときで、二番目のピーク値は、排障板が後退して緩衝板によって荷重が受け止められるようになったときであると考えられる。
また、そのときの変形の状態(シミレーション解析の結果)を図11及び図12に示す。図11及び図12において、それぞれ(a)は図9(a)の装置を、(b)は図9(b)の装置を備える鉄道車両を用いている。各図は、それぞれ、衝突時からの経過時間Tがそれぞれ0sec,0.004999sec,0.0099996sec,0.014999sec,0.019999secであるときの状態を示すものである。
本発明例の場合には、図11(b)及び図12(b)に示すように、衝突時には、排障板の鉛直稜線が切り刃的な機能を発揮するので、コンクリートブロックが左右に切断され、切断されたブロック片が左右に排障されることがわかる。一方、従来例の場合には、図11(a)及び図12(a)に示すように、コンクリートブロックは排障板によって切断されることなく、排障板がコンクリートブロックからの荷重を直に受け止めて、コンクリートブロックによって排障板が破壊される状態が継続される。
さらに、強度の高い障害物を想定した場合に、図13(a)(b)に示す装置を備える鉄道車両について、時速300km/hで縦壁(剛壁)に正面衝突させた時の圧縮破壊変形の様子を、図14(a)(b)に示す。なお、図14(a)(b)において、それぞれ、衝突前、先頭部圧縮破壊量167mm、先頭部圧縮破壊量333mm、先頭部圧縮破壊量500mmの場合を示す。
排障板にすくい角が設けられ先端部の稜線が傾いている場合には、車両前頭部の圧縮変形が進行すると、排障板の先頭部が大きく垂れ下がるように変形するが、排障板先端が鉛直稜線で構成される本発明例の場合は、垂れ下がり量が少なくなることが確認される。
本発明に係る高速鉄道車両の排障装置を示す中央断面図である。 同平面図である。 同正面図である。 排障板を示す側面図である。 同平面図である。 同正面図である。 図2のVI−VI線における断面図である。 図2のV−V線における断面図である。 高速鉄道車両の排障装置をモデル化したものを示し、(a)は従来装置の模式図,(b)は本発明装置の模式図である。 衝突時における反力値の変化を、時間の経過と共に示す図である。 (a)(b)はそれぞれ従来装置及び本発明装置を採用した鉄道車両が、軌道上のコンクリートブロック(1ton)を、時速300km/hで、走行中に跳ね飛ばした場合のシミレーション解析の結果を示す模式図である。 (a)(b)はそれぞれ従来装置及び本発明装置を採用した鉄道車両が、軌道上のコンクリートブロック(1ton)を、時速300km/hで、走行中に跳ね飛ばした場合のシミレーション解析の結果を示す模式図である。 高速鉄道車両の排障装置をモデル化したものを示し、(a)は従来装置の模式図,(b)は本発明装置の模式図である。 (a)(b)はそれぞれ従来装置及び本発明装置を採用した鉄道車両が、時速300km/hで、壁に正面衝突した場合のシミレーション解析の結果を示す模式図である。
符号の説明
1 排障板
1a 鉛直稜線
1A 排障部
1AL,1AR 面板部
UL,UR レール

Claims (1)

  1. 車両前頭部に排障板が設けられ、この排障板にて軌道上に存在する障害物を跳ね飛ばす高速鉄道車両の排障板において、
    前記排障板は、平面視で左右の側面が前方に向かって鋭角をなすように形成され、車両左右方向の中央部分に、前記障害物を切断する切り刃として機能する鉛直稜線を有することを特徴とする高速鉄道車両の排障板。
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