しかしながら、上記特許文献1に記載された先行技術による場合、エプロンサイドメンバの変形の起点となる領域は、車両前後方向に見た断面視において、ビード部によって局部的に補強されているにすぎない。このため、エプロンサイドメンバが折れ変形するときの変形の軸線が車両上下方向に対して傾くことが考えられ、エプロンサイドメンバの変形ストロークを安定して確保するという点においては改善の余地がある。また、車種によっては、エプロンサイドメンバの変形の起点を車両側面視でエンジンマウントブラケットの上側壁部すなわちエンジンを支持する壁部の下方側に設定する構成が好ましい場合があるが、上記先行技術では、このような構成に対応することが困難となる。
本発明は上記事実を考慮し、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、フロントサイドメンバの変形ストロークを安定して確保することができると共に、フロントサイドメンバの変形の起点を車両側面視でパワーユニットを支持する壁部の下方側に設定することができる車両前部構造を得ることが目的である。
請求項1に記載の本発明に係る車両前部構造は、車両前後方向に延在し、車両幅方向内側に配置された内側側壁部を含んで構成され、車両前後方向に見て閉断面形状を成す閉断面構造とされたフロントサイドメンバと、パワーユニットを前記フロントサイドメンバに取り付けるパワーユニット支持部の一部を構成しかつ車両前後方向に対向して配置された複数の壁部のうち最も車両前後方向一方側に配置され、車両幅方向外側の周縁部が第1接合部で前記内側側壁部に接合された第1壁部と、前記パワーユニット支持部の一部を構成しかつ前記第1壁部と車両前後方向に隣り合って配置され、車両下方側の端部が当該第1壁部の車両下方側の端部よりも車両下方側に配置されると共に、車両幅方向外側の周縁部が第2接合部で前記内側側壁部に接合された第2壁部と、前記内側側壁部における前記第1接合部の車両前後方向他方側でかつ車両下方側に配置されると共に前記第2接合部よりも車両前後方向一方側に配置され、当該内側側壁部における当該第1接合部よりも車両前後方向一方側の部分よりも剛性が低く設定されかつ車両上下方向に延在する低剛性部と、を有している。
請求項1に記載の本発明によれば、フロントサイドメンバが車両前後方向に延在すると共に、車両前後方向に見て閉断面形状を成す閉断面構造とされている。このため、車両前方側から衝突荷重が入力されると当該フロントサイドメンバがその長手方向に潰れ変形し、当該衝突荷重が吸収される。
また、フロントサイドメンバには、パワーユニット支持部を介してパワーユニットが取り付けられており、当該パワーユニット支持部は、当該パワーユニットが支持された上側壁部と車両前後方向に対向して配置された複数の壁部とを含んで構成されている。そして、上記複数の壁部のうち最も車両前後方向一方側に配置された第1壁部は、その車両幅方向外側の周縁部が、フロントサイドメンバの一部を構成する車両幅方向内側に配置された内側側壁部に第1接合部で接合されている。また、第1壁部と車両前後方向に隣り合って配置された第2壁部は、その車両幅方向外側の周縁部が、フロントサイドメンバの内側側壁部に第2接合部で接合されている。このため、パワーユニット支持部は、フロントサイドメンバの補強部材として機能し、当該フロントサイドメンバにおける当該パワーユニット支持部が設けられた部分の剛性が向上する。その結果、フロントサイドメンバは、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、第1接合部の近傍を起点として折れ変形する。
ところで、フロントサイドメンバの潰れ変形によって車両前方側からの衝突荷重を効率的に吸収するには、フロントサイドメンバの変形ストロークを安定して確保することが有効である。そして、フロントサイドメンバの変形ストロークを安定して確保するためには、フロントサイドメンバが折れ変形するときの変形の軸線が車両上下方向となることが好ましい。また、車種によっては、フロントサイドメンバの変形の起点を車両側面視でパワーユニット支持部の上側壁部の下方側に設定する構成が好ましい場合がある。
ここで、本発明では、第2壁部の車両下方側の端部が第1壁部の車両下方側の端部よりも車両下方側に配置されている。このため、フロントサイドメンバの内側側壁部における第2接合部の周辺部分が第2壁部で補強されて剛性が高くなっている。
一方、フロントサイドメンバの内側側壁部における第2接合部よりも車両前後方向一方側には、低剛性部が配置されている。この低剛性部は、第1接合部に対しては、車両前後方向他方側でかつ車両下方側に配置されている。また、低剛性部は、フロントサイドメンバの内側側壁部における第1接合部よりも車両前後方向一方側の部分よりも剛性が低く設定されると共に車両上下方向に延在している。このため、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、フロントサイドメンバは、低剛性部を起点として変形すると共に、当該フロントサイドメンバが折れ変形するときの変形の軸線が車両上下方向となる。しかも、車両側面視において、低剛性部はパワーユニット支持部における上側壁部の下方側に配置された状態となっている。このため、フロントサイドメンバの変形の起点が車両側面視でパワーユニット支持部の上側壁部の下方側に設定される。
請求項2に記載の本発明に係る車両前部構造は、請求項1に記載の発明において、前記内側側壁部と一体に形成されて車両幅方向内側に向けて膨出したビード部をさらに備え、当該ビード部の車両前後方向他方側の端部が車両上下方向に沿って延在すると共に前記第1接合部の車両前後方向他方側でかつ車両下方側に配置されており、前記低剛性部は、前記内側側壁部における前記ビード部の車両前後方向他方側の端部と前記第2接合部との間の部分に設けられている。
請求項2に記載の本発明によれば、フロントサイドメンバの内側側壁部と一体に車両幅方向内側に向けて膨出したビード部が形成されている。また、ビード部の車両前後方向他方側の端部は、第1接合部の車両前後方向他方側でかつ車両下方側に配置されている。このため、フロントサイドメンバの内側側壁部におけるビード部の車両前後方向他方側の端部から車両前後方向一方側には、当該ビード部が形成されている範囲において高剛性部が構成される。
さらに、ビード部の車両前後方向他方側の端部は、車両上下方向に沿って延在している。このため、フロントサイドメンバの内側側壁部におけるビード部の車両前後方向他方側の端部と第2接合部との間の部分に、ビード部を含んで構成された高剛性部よりも相対的に剛性が低い車両上下方向に延在する低剛性部が構成される。したがって、本発明では、別部材を設けることなくフロントサイドメンバに高剛性部を設定し、当該フロントサイドメンバの剛性を低くすることなく、当該フロントサイドメンバが折れ変形するときの起点となる低剛性部を設定することができる。
請求項3に記載の本発明に係る車両前部構造は、請求項2に記載の発明において、前記ビード部の車両前後方向一方側の端部は、前記第1接合部よりも車両前後方向一方側に所定の間隔を隔てて配置されている。
請求項3に記載の本発明によれば、ビード部の車両前後方向一方側の端部が第1接合部よりも車両前後方向一方側に所定の間隔を隔てて配置されており、フロントサイドメンバの内側側壁部には、ビード部によって第1接合部よりも車両前後方向一方側の範囲まで高剛性部が構成される。
ところで、フロントサイドメンバは、ビード部だけでなくパワーユニット支持部によっても補強されている。このため、ビード部の車両前後方向一方側の端部が車両前後方向において第1接合部の近傍に配置される場合には、第1接合部の車両前後方向一方側と車両前後方向他方側とで剛性が大きく変化する。その結果、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、第1接合部がフロントサイドメンバの折れ変形の起点となり、当該変形の起点が車両側面視でパワーユニット支持部の上側壁部の下方側となる確度が低くなることが考えられる。
ここで、本発明では、ビード部によってフロントサイドメンバの内側側壁部が第1接合部よりも車両前後方向一方側の範囲まで補強されているため、フロントサイドメンバの剛性が第1接合部の近傍で大きく変化することを抑制することができる。
請求項4に記載の本発明に係る車両前部構造は、請求項3に記載の発明において、前記ビード部は、当該ビード部の車両前後方向一方側を構成する一側壁部と、当該ビード部の車両前後方向他方側を構成する他側壁部とを含んで構成され、車両上下方向に見た断面視で、前記一側壁部は前記ビード部の車両前後方向一方側の端部から車両前後方向他方側でかつ車両幅方向内側に向かって傾斜すると共に、前記他側壁部は当該ビード部の車両前後方向他方側の端部から車両前後方向一方側でかつ車両幅方向内側に向かって傾斜しており、当該他側壁部の勾配の方が当該一側壁部の勾配よりも大きく設定されている。
請求項4に記載の本発明によれば、フロントサイドメンバの内側側壁部に形成されたビード部は、当該ビード部の車両前後方向一方側を構成する一側壁部と、当該ビード部の車両前後方向他方側を構成する他側壁部とを含んで構成されている。そして、一側壁部は、車両上下方向に見た断面視で、ビード部の車両前後方向一方側の端部から車両前後方向他方側でかつ車両幅方向内側に向かって傾斜している。一方、他側壁部は、車両上下方向に見た断面視で、ビード部の車両前後方向他方側の端部から車両前後方向一方側でかつ車両幅方向内側に向かって傾斜しており、当該他側壁部の勾配の方が一側壁部の勾配よりも大きく設定されている。
このため、フロントサイドメンバの内側側壁部におけるビード部が設けられた部分は、当該ビード部の車両前後方向他方側の端部を基準とすると、当該端部から一側壁部と他側壁部との境界部に向かうに従って剛性が徐々に高くなっている。一方、フロントサイドメンバの内側側壁部におけるビード部の一側壁部と他側壁部との境界部から当該ビード部の車両前後方向一方側の端部までの部分は、当該境界部から当該端部に向かうに従って剛性が徐所に低くなっている。そして、フロントサイドメンバの内側側壁部におけるビード部が設けられた部分の車両前後方向の単位長さ当たりの剛性の変化量は、他側壁部側の方が一側壁部側の方よりも大きくなっている。その結果、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、フロントサイドメンバの内側側壁部におけるビード部の車両前後方向他方側の端部が配置された箇所には応力が集中しやすくなる。一方、フロントサイドメンバの内側側壁部におけるビード部の車両前後方向一方側の端部が配置された箇所では、当該ビード部の車両前後方向他方側の端部が配置された箇所と比し、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、応力の集中が抑制される。
請求項5に記載の本発明に係る車両前部構造は、請求項1に記載の発明において、前記低剛性部は、前記内側側壁部を車両幅方向に貫通して形成された車両上下方向に延びる貫通部とされている。
請求項5に記載の本発明によれば、フロントサイドメンバの内側側壁部が車両幅方向に貫通されて貫通部が形成されており、当該貫通部によって低剛性部が構成されている。このため、フロントサイドメンバの内側側壁部における所定の範囲内で任意の位置に低剛性部を設定することができると共に、貫通部の長さや幅を調整することで当該内側壁部における低剛性部が構成された部分の剛性を調整することができる。
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る車両前部構造は、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、フロントサイドメンバの変形ストロークを安定して確保することができると共に、フロントサイドメンバの変形の起点を車両側面視でパワーユニットを支持する壁部の下方側に設定することができるという優れた効果を有する。
請求項2に記載の本発明に係る車両前部構造は、フロントサイドメンバの重量増加の抑制とフロントサイドメンバの剛性の維持との両立を図りつつ、フロントサイドメンバの変形ストロークを安定して確保することができるという優れた効果を有する。
請求項3に記載の本発明に係る車両前部構造は、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、フロントサイドメンバの折れ変形の起点が車両側面視でパワーユニット支持部の上側壁部の下方側となる確度を高くすることができるという優れた効果を有する。
請求項4に記載の本発明に係る車両前部構造は、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、フロントサイドメンバが低剛性部を起点に変形する確度を高くすることができるという優れた効果を有する。
請求項5に記載の本発明に係る車両前部構造は、フロントサイドメンバに簡易な加工を施すことで、当該フロントサイドメンバに車両前方側からの衝突荷重の入力時における折れ変形の起点を設定することができるという優れた効果を有する。
<第1実施形態>
以下、図1〜図7を用いて、本発明の第1実施形態に係る車両前部構造ついて説明する。なお、各図に適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
まず、図4及び図5を用いて、本発明の第1実施形態に係る車両前部構造が適用された車両10の車体12の一部を構成する車体前部14の概略構成について説明する。なお、本実施形態では、車体前部14は基本的に左右対称の構成とされているため、車体前部14の車両幅方向左側の部分の構成を中心に説明していくこととする。
車体前部14は、車体12の骨格を構成する左右一対のフロントサイドメンバ16、フロントサイドメンバ16に取り付けられたクラッシュボックス18及びクラッシュボックス18に架け渡されたバンパリインフォースメント20を含んで構成されている。
フロントサイドメンバ16は、図2にも示されるように、全体では車両前後方向に延在しており、車両前後方向に見て矩形枠状の閉断面を成す閉断面構造とされている。このフロントサイドメンバ16は、その車両前方側の部分を構成しかつ車両前後方向に直線的に延在する前部16Aと、当該前部16Aの車両後方側に形成されると共に車両前方上側から車両後方下側に向って傾斜したキック部16Bとを含んで構成されている。
また、フロントサイドメンバ16は、その車両幅方向内側の部分を構成するフロントサイドメンバインナ22と、その車両幅方向外側の部分を構成するフロントサイドメンバアウタ24とを含んで構成されている。フロントサイドメンバインナ22は、上側フランジ部22A、上壁部22B、内側側壁部22C、下壁部22D及び下側フランジ部22Eを含んで、車両前後方向に見た断面視で、車両幅方向外側に開口した略ハット状に構成されている。
より詳しくは、上側フランジ部22Aは、板厚方向を車両幅方向とされて配置されると共に、車両上下方向の幅が一定とされて車両前後方向に延在する板状とされている。この上側フランジ部22Aの車両下方側の周縁部からは、板厚方向を車両上下方向とされた上壁部22Bが車両幅方向内側に延出されている。また、上壁部22Bの車両幅方向内側の周縁部からは、板厚方向を車両幅方向とされると共にフロントサイドメンバインナ22を構成する壁部のうち最も車両幅方向内側に配置された内側側壁部22Cが、車両下方側に延出されている。さらに、内側側壁部22Cの車両下方側の周縁部からは、板厚方向を車両上下方向とされた下壁部22Dが車両幅方向外側に延出されている。そして、下壁部22Dの車両幅方向内側の周縁部からは、板厚方向を車両幅方向とされると共に車両上下方向の幅が一定とされて車両前後方向に延在する板状の下側フランジ部22Eが車両下方側に延出されている。
一方、フロントサイドメンバアウタ24は、上側フランジ部24A、外側側壁部24B、下壁部24C及び下側フランジ部24Dを含んで、車両前後方向に見た断面視で、略N字状に構成されている。このフロントサイドメンバアウタ24は、その主な部分が板厚方向を車両幅方向とされて配置された外側側壁部24Bで構成されており、当該外側側壁部24Bの車両上方側の周縁部がそのまま車両上方側に延長されて上側フランジ部24Aが構成されている。また、外側側壁部24Bの車両下方側の周縁部からは、板厚方向を車両上下方向とされた下壁部24Cが車両幅方向内側に延出されている。そして、下壁部24Cの車両幅方向内側の周縁部からは、板厚方向を車両幅方向とされた下側フランジ部24Dが車両下方側に延出されている。
上記のように構成されたフロントサイドメンバアウタ24及びフロントサイドメンバインナ22は、上側フランジ部22Aと上側フランジ部24Aとが、下側フランジ部22Eと下側フランジ部24Dとがそれぞれスポット溶接等の接合手段で接合されている。そして、フロントサイドメンバ16の先端部16Cには、クラッシュボックス18が配置されている。
クラッシュボックス18は、車両前後方向を長手方向とされた筒状の衝撃吸収部18Aと、当該衝撃吸収部18Aの車両後方側の端部から車両上下方向及び車両幅方向に沿って延設された取付部18Bとが、アルミニウム合金の押し出し材で一体に形成されている。そして、クラッシュボックス18の取付部18Bは、ボルト等の締結部材によって、フロントサイドメンバ16の先端部16Cに固定されている。
一方、クラッシュボックス18の先端部18Cには、バンパリインフォースメント20が配置されている。このバンパリインフォースメント20は、その長手方向を車両幅方向とされて配置されると共に、縦断面視で矩形枠状の閉断面構造とされたアルミニウム合金の押し出し材によって構成されている。換言すれば、バンパリインフォースメント20は、中空の角パイプ状とされている。また、バンパリインフォースメント20は、平面視で車両幅方向の中央部が、車両前方側に凸となるように湾曲された構成とされており、換言すれば、車両前方側に凸となる弓状を成している。なお、バンパリインフォースメント20の車両前方側には、図示しないフロントバンパカバーが配置されている。
一方、一対のフロントサイドメンバ16間には、パワーユニットルーム26が構成されており、当該パワーユニットルーム26内には、図示しないエンジンやトランスミッションを含んで構成されたパワーユニットが配置されている。そして、パワーユニットは、パワーユニットマウント28を介してフロントサイドメンバ16に取り付けられている。
ここで、本実施形態では、パワーユニット支持部としてのマウントブラケット30、32を含んでパワーユニットマウント28が構成されており、当該パワーユニットマウント28の構成、特にマウントブラケット32の構成に第1の特徴がある。また、フロントサイドメンバ16におけるマウントブラケット32が取り付けられた箇所の近傍にビード部34が設けられている点に第2の特徴がある。以下、本実施形態の要部を構成するパワーユニットマウント28及びビード部34の構成について詳細に説明する。
まず、パワーユニットマウント28の構成について説明する。図4に示されるように、パワーユニットマウント28は、マウントブラケット30と当該マウントブラケット30の車両後方側に間隔をあけて配置されたマウントブラケット32とを含んで構成されている。また、マウントブラケット30及びマウントブラケット32には、図示しないパワーユニットマウント本体部が配置されている。このパワーユニットマウント本体部は、マウントブラケット30とマウントブラケット32とを連結する鋼材で構成された連結部と、円柱状のゴム材で構成されると共にパワーユニットが搭載される支持部とを含んで構成されている。そして、パワーユニットマウント本体部は、図示しないボルト等の締結部材によってマウントブラケット30及びマウントブラケット32に固定されている。
マウントブラケット30は、プレス加工された3つの鋼製の部材、すなわちブラケット本体部36、補強部38及び内壁部40で主に構成されている。ブラケット本体部36は、車両幅方向外側に配置された外側壁部36A、当該外側壁部36Aから車両幅方向内側に延出された上側壁部36B、前側壁部36C及び後側壁部36Dを含んで構成されている。これらのうち外側壁部36Aは、板厚方向を車両幅方向とされて配置されると共に、フロントサイドメンバアウタ24の上側フランジ部24Aに接合されている。
また、上側壁部36Bは、車両上下方向に見て矩形状に構成されると共に板厚方向を車両上下方向とされて配置されている。そして、上側壁部36Bの車両前方側の周縁部には前側壁部36Cが設けられており、当該上側壁部36Bの車後後方側の周縁部には後側壁部36Dが設けられている。なお、上側壁部36Bには、その中央部に車両幅方向に間隔をあけて2つの挿通部42が形成されており、当該挿通部42を用いてパワーユニットマウント本体部が取り付けられている。
前側壁部36Cは、上側壁部36Bの車両前方側の周縁部から車両下方側に延出されており、車両前後方向に見て矩形状に構成されると共に板厚方向を車両前後方向とされて配置されている。この前側壁部36Cは、外側壁部36Aよりも車両下方側の部分がフロントサイドメンバインナ22の上壁部22B及び内側側壁部22Cに沿うように形成されている。そして、前側壁部36Cにおけるフロントサイドメンバインナ22の上壁部22Bに沿う部分は、後述するように、フランジ部36Eで当該上壁部22Bに固定されている。また、前側壁部36Cにおけるフロントサイドメンバインナ22の内側側壁部22Cに沿う車両幅方向外側の周縁部は、溶接等による接合部44で当該内側側壁部22Cに接合されている。
一方、後側壁部36Dは、上側壁部36Bの車両後方側の周縁部から車両下方側に延出されており、車両前後方向に見て矩形状に構成されると共に板厚方向を車両前後方向とされて配置されている。この後側壁部36Dは、上述した前側壁部36Cと同様の構成とされており、その上壁部22Bに沿う部分は、フランジ部36Eで当該上壁部22Bに固定されている。また、後側壁部36Dにおけるフロントサイドメンバインナ22の内側側壁部22Cに沿う車両幅方向外側の周縁部は、溶接等による接合部46で当該内側側壁部22Cに接合されている。上記のように構成されたブラケット本体部36における上側壁部36B、前側壁部36C及び後側壁部36Dは、車両幅方向に見て、車両下方側が開放されたU字状を成している。なお、前側壁部36Cの車両上下方向の長さは、後側壁部36Dのものと同じか後側壁部36Dのものよりも僅かに短く設定されている。
また、前側壁部36Cの車両下方側の周縁部における車両幅方向外側の部分からは車両前方側に、後側壁部36Dの車両下方側の周縁部における車両幅方向外側の部分からは車両後方側に、それぞれフランジ部36Eが延出されている。そして、これらのフランジ部36Eは、フロントサイドメンバインナ22の上側壁部36Bに面接触された状態で接合されている。
補強部38は、上側壁部36B、前側壁部36C及び後側壁部36Dで構成された部分の内周側に沿って接合されて、これらを補強する図示しない補強壁部と、当該補強壁部の車両下方側の周縁部にそれぞれ設けられたフランジ部38Aとを含んで構成されている。そして、フランジ部38Aは、フロントサイドメンバインナ22の上壁部22Bに面接触された状態で接合されている。
内壁部40は、車両幅方向に見て、長手方向を車両上下方向とされた矩形の板状に構成されると共に、その車両下方側を除く周縁部が、ブラケット本体部36の内周側に接合されている。また、内壁部40は、ブラケット本体部36に接合された状態において、所定長さフロントサイドメンバインナ22の上壁部22Bよりも車両上方側に配置されており、この部分には、円形の貫通部48が形成されている。なお、以下では、内壁部40におけるフロントサイドメンバインナ22の上壁部22Bよりも車両上方側に位置する部分を「上部40A」と称することとする。なお、内壁部40の車両下方側の周縁部は、フロントサイドメンバインナ22の内側側壁部22Cに接合されている。
一方、マウントブラケット32は、図1にも示されるように、基本的には上述したマウントブラケット30と同様の構成とされており、ブラケット本体部50、補強部52及び第3壁部としての内壁部54を含んで構成されている。ブラケット本体部50は、ブラケット本体部36と同様に、外側壁部50A、上側壁部50B、第2壁部としての前側壁部50C及び第1壁部としての後側壁部50Dを含んで構成されているものの、前側壁部50Cと後側壁部50Dとの車両上下方向の長さの相関関係が異なっている。
具体的には、ブラケット本体部50では、前側壁部50Cの車両上下方向の長さの方が後側壁部50Dのものよりも長く設定されており、前側壁部50Cの車両下方側の端部50C1が後側壁部50Dの車両下方側の端部50D1よりも車両下方側に配置されている。なお、前側壁部50Cの端部50C1は、フロントサイドメンバインナ22の内側側壁部22Cの車両下方側の周縁部の近傍に配置されており、後側壁部50Dの端部50D1は、当該内側側壁部22Cの車両上方側の周縁部の近傍に配置されている。
また、前側壁部50Cにおけるフロントサイドメンバインナ22の内側側壁部22Cに沿う車両幅方向外側の周縁部は、溶接等による第2接合部としての接合部56で当該内側側壁部22Cに接合されている。一方、後側壁部50Dの内側側壁部22Cに沿う車両幅方向外側の周縁部は、溶接等による第1接合部としての接合部58で当該内側側壁部22Cに接合されている。なお、ブラケット本体部36と同様に、前側壁部50C及び後側壁部50Dにはそれぞれフランジ部50Eが設けられており、上側壁部50Bには2つの挿通部60が形成されている。
補強部52は、そのフランジ部52Aの形状が補強部38のフランジ部38Aの形状と異なっており、当該フランジ部52Aは、車両上下方向に見て、車両幅方向外側から車両幅方向内側に向かうに従って縮幅された台形状に構成されている。なお、フランジ部52Aは、その車両幅方向外側の部分がフロントサイドメンバインナ22の上壁部22Bに面接触された状態で接合されている。一方、フランジ部52Aの車両幅方向内側の部分は、フロントサイドメンバインナ22の内側側壁部22Cよりも車両幅方向内側に張り出している。
内壁部54は、板厚方向を車両幅方向とされた板状に構成されると共に、その車両下方側を除く周縁部が、ブラケットブラケット本体部50の内周側に接合されている。この内壁部54は、フロントサイドメンバインナ22の上壁部22Bよりも車両上方側に配置された上部54A、当該上部54Aから車両下方側に延出された第1延出部54B及び同じく上部54Aから車両下方側に延出された第2延出部54Cを含んで構成されている。第1延出部54Bは、上部54Aの車両前方側の部分に設けられており、その車両前後方向の幅が上部54Aの車両前後方向の幅の3分の1程度とされると共に、その車両下方側の端部54B1が前側壁部50Cの端部50C1と一致している。また、第2延出部54Cは、上部54Aの車両後方側の部分に設けられており、その車両前後方向の幅が上部54Aの車両前後方向の幅の3分の1程度とされると共に、その車両下方側の端部54C1が後側壁部50Dの端部50D1と一致している。なお、第1延出部54Bと第2延出部54Cとの間は、車両上方側に凸となる矩形状に凹んでいる。
そして、内壁部54の車両下方側の周縁部は溶接等による接合部62でフロントサイドメンバインナ22の内側側壁部22Cに接合されている。なお、この接合部62のうち第1延出部54Bの車両後方側を構成する車両上下方向に延びる周縁部を接合している第3接合部としての接合部62Aは、接合部58よりも車両前方側でかつ接合部56よりも車両後方側に配置された状態となっている。
一方、フロントサイドメンバインナ22の内側側壁部22Cに設けられたビード部34は、図2及び図3にも示されるように、当該内側側壁部22Cと一体にかつ当該内側側壁部22Cから車両幅方向内側に膨出されて形成されている。より詳しくは、ビード部34は、車両幅方向内側から見て、四角形状、より詳しくは、車両後方側から車両前方側に向かうに従って僅かに縮幅された台形状を成している。
このビード部34は、その車両前方側の端部34Aが車両上下方向に延在すると共に、マウントブラケット32の接合部58よりも車両前方側でかつ車両下方側に配置されている。なお、ビード部34の端部34Aの車両前後方向の位置をより詳しく説明すると、当該端部34Aは、マウントブラケット32の第2延出部54Cの幅を車両前後方向に2等分する直線に沿って配置されている。一方、ビード部34の車両後方側の端部34Bは、車両上下方向に延在すると共に、マウントブラケット32の接合部58から車両後方側に所定の間隔を隔てて配置されている。より詳しくは、ビード部34の端部34Bは、フロントサイドメンバ16の前部16Aとキック部16Bとの境界部の近傍に位置している。
また、ビード部34は、その車両後方側を構成する一側壁部としての後壁部34Cと、その車両前方側を構成する他側壁部としての前壁部34Dとを含んで構成されている。そして、車両上下方向に見た断面視で、後壁部34Cはビード部34の端部34Bから車両前方側でかつ車両幅方向内側に向かって傾斜しており、前壁部34Dはビード部34の端部34Aから車両後方側でかつ車両幅方向内側に傾斜している。なお、ビード部34は、前壁部34Dの勾配の方が後壁部34Cの勾配よりも大きく設定されている。
ここで、本実施形態では、図1に示されるように、フロントサイドメンバ16の内側側壁部22Cにおける接合部62Aの車両前方側の部分が、前側壁部50C及び内壁部54の第1延出部54Bで補強されている。なお、以下では、この部分を「第1高剛性部64」と称する。また、内側側壁部22Cには、ビード部34が形成されている範囲において高剛性部が構成されている(以下では、この部分を「第2高剛性部66」と称する)。したがって、フロントサイドメンバ16の内側側壁部22Cにおけるビード部34の車両前方側の部分には、第1高剛性部64及び第2高剛性部66よりも相対的に剛性が低い車両上下方向に延在する低剛性部68が構成される。
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
本実施形態では、図2及び図4に示されるように、フロントサイドメンバ16が車両前後方向に延在すると共に、車両前後方向に見て閉断面形状を成す閉断面構造とされている。このため、車両前方側から衝突荷重が入力されると当該フロントサイドメンバ16がその長手方向に潰れ変形し、当該衝突荷重が吸収される。
より詳しくは、図7に示されるように、バンパリインフォースメント20に車両前方側からの衝突荷重が入力されると、当該衝突荷重は、クラッシュボックス18にも伝達される。そして、クラッシュボックス18の衝撃吸収部18Aがその軸方向に圧縮変形されると共に、車両前方側に凸となるように湾曲されたバンパリインフォースメント20が車両幅方向に延びるように変形する。その結果、フロントサイドメンバ16の車両前方側の部分Fは、車両幅方向に離間するように変位しつつ潰れ変形する。
また、フロントサイドメンバ16には、マウントブラケット30、32を介してパワーユニットが取り付けられている。これらのマウントブラケット30、32は、パワーユニットが支持された上側壁部36B、50Bと車両前後方向に対向して配置された複数の壁部とを含んで構成されている。そして、上記複数の壁部のうち最も車両後方側に配置されたマウントブラケット32の後側壁部50Dは、その車両幅方向外側の周縁部が、フロントサイドメンバ16の一部を構成する内側側壁部22Cに接合部58で接合されている。また、後側壁部50Dと車両前後方向に隣り合って配置された前側壁部50Cは、その車両幅方向外側の周縁部が、フロントサイドメンバ16の内側側壁部22Cに接合部56で接合されている。このため、マウントブラケット32は、フロントサイドメンバ16の補強部材として機能し、当該フロントサイドメンバ16におけるマウントブラケット32が設けられた部分の剛性が向上する。その結果、フロントサイドメンバ16は、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、接合部58の近傍を起点として折れ変形する。
ところで、フロントサイドメンバ16の潰れ変形によって車両前方側からの衝突荷重を効率的に吸収するには、フロントサイドメンバ16の変形ストロークを安定して確保することが有効である。そして、フロントサイドメンバ16の変形ストロークを安定して確保するためには、フロントサイドメンバ16が折れ変形するときの変形の軸線が車両上下方向となることが好ましい。また、小型車等では、フロントサイドメンバ16の変形の起点を車両側面視でマウントブラケット32の上側壁部50Bの下方側に設定する構成が好ましい場合がある。
ここで、本実施形態では、前側壁部50Cの車両下方側の端部50C1が後側壁部50Dの車両下方側の端部50D1よりも車両下方側に配置されている。このため、フロントサイドメンバ16の内側側壁部22Cにおける接合部56の周辺部分が前側壁部50Cで補強されて剛性が高くなっている。
一方、フロントサイドメンバ16の内側側壁部22Cにおける接合部56よりも車両後方側には、低剛性部68が配置されている。この低剛性部68は、接合部58に対しては、車両前方側でかつ車両下方側に配置されている。また、低剛性部68は、フロントサイドメンバ16の内側側壁部22Cにおける接合部58よりも車両後方側の部分よりも剛性が低く設定されると共に車両上下方向に延在している。このため、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、フロントサイドメンバ16は、低剛性部68を起点として変形すると共に、当該フロントサイドメンバ16が折れ変形するときの変形の軸線が車両上下方向となる。しかも、車両側面視において、低剛性部68はマウントブラケット32における上側壁部50Bの下方側に配置された状態となっている。このため、フロントサイドメンバ16の変形の起点が車両側面視でマウントブラケット32の上側壁部50Bの下方側に設定される。
具体的には、図6(A)に示されるように、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、フロントサイドメンバ16は、低剛性部68の車両下方側の部分、すなわち低剛性部68における内側側壁部22Cと下壁部22Dとの境界部分を起点として変形していく。換言すれば、車両前方側からの衝突荷重の入力時の初期において、低剛性部68における内側側壁部22Cと下壁部22Dとの境界部分に塑性変形部X及び車両上下方向に延びる折れ線Lが発生する。さらに変形が進んでいくと、図6(B)に示されるように、塑性変形部X及び折れ線Lは、車両上方側に延びていく。そして、最終的には、図6(C)に示されるように、塑性変形部X及び折れ線Lは、内側側壁部22Cと上壁部22Bとの境界部に達する。
一方、図7(A)、図7(B)及び図7(C)は、この順に図6(A)、図6(B)及び図6(C)の状態に対応している。図7(A)に示されるように、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、フロントサイドメンバ16におけるマウントブラケット30とマウントブラケット32との間の部分Mは、低剛性部68を中心として、車両幅方向内側に回動するように変形していく。また、図7(B)に示されるように、フロントサイドメンバ16は、変形が進むにつれて、部分Mはより車両幅方向内側に回動していくものの、その長さは略維持される。そして、最終的には、図7(C)に示されるように、フロントサイドメンバ16における部分Mよりも車両後方側の部分Rが車両後方側を中心として車両幅方向外側に回動しつつその長手方向に潰れ変形していく。また、上述したフロントサイドメンバ16の車両前方側の部分Fの潰れ変形も、その長手方向に沿って進んでいくこととなる。したがって、本実施形態では、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、フロントサイドメンバ16の変形ストロークを安定して確保することができると共に、フロントサイドメンバ16の変形の起点を車両側面視でパワーユニットを支持する壁部の下方側に設定することができる。
また、本実施形態では、フロントサイドメンバ16の内側側壁部22Cと一体に車両幅方向内側に向けて膨出したビード部34が形成されている。また、ビード部34の車両前方側の端部34Aは、接合部58の車両前方側でかつ車両下方側に配置されている。このため、フロントサイドメンバ16の内側側壁部22Cにおけるビード部34の端部34Aから車両後方側には、当該ビード部34が形成されている範囲において第2高剛性部66が構成される。
さらに、ビード部34の車両前方側の端部34Aは、車両上下方向に沿って延在している。このため、フロントサイドメンバ16の内側側壁部22Cにおけるビード部34の端部34Aと接合部56との間の部分に、ビード部34を含んで構成された第2高剛性部66よりも相対的に剛性が低い車両上下方向に延在する低剛性部68が構成される。つまり、本実施形態では、別部材を設けることなくフロントサイドメンバ16に第2高剛性部66を設定し、フロントサイドメンバ16の剛性を低くすることなく、フロントサイドメンバ16が折れ変形するときの起点となる低剛性部68を設定することができる。したがって、本実施形態では、フロントサイドメンバ16の重量増加の抑制とフロントサイドメンバ16の剛性の維持との両立を図りつつ、フロントサイドメンバ16の変形ストロークを安定して確保することができる。
さらに、本実施形態では、ビード部34の車両後方側の端部34Bが接合部58よりも車両後方側に所定の間隔を隔てて配置されている。これにより、フロントサイドメンバ16の内側側壁部22Cには、ビード部34によって接合部58よりも車両後方側の範囲まで第2高剛性部66が構成される。
ところで、フロントサイドメンバ16は、ビード部34だけでなくマウントブラケット32によっても補強されている。このため、ビード部34の車両後方側の端部34Bが車両前後方向において接合部58の近傍に配置される場合には、接合部58の車両後方側と車両前方側とで剛性が大きく変化する。その結果、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、接合部58がフロントサイドメンバ16の折れ変形の起点となり、当該変形の起点が車両側面視でマウントブラケット32の上側壁部50Bの下方側となる確度が低くなることが考えられる。
ここで、本実施形態では、ビード部34によってフロントサイドメンバ16の内側側壁部22Cが接合部58よりも車両後方側の範囲まで補強されているため、フロントサイドメンバ16の剛性が接合部58の近傍で大きく変化することを抑制することができる。したがって、本実施形態では、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、フロントサイドメンバ16の折れ変形の起点が車両側面視でマウントブラケット32の上側壁部50Bの下方側となる確度を高くすることができる。
加えて、本実施形態では、フロントサイドメンバ16に形成されたビード部34は、当該ビード部34の車両後方側を構成する後壁部34Cと、当該ビード部34の車両前方側を構成する前壁部34Dとを含んで構成されている。そして、後壁部34Cは、車両上下方向に見た断面視で、ビード部34の車両後方側の端部34Bから車両前方側でかつ車両幅方向内側に向かって傾斜している。一方、前壁部34Dは、車両上下方向に見た断面視で、ビード部34の車両前方側の端部34Aから車両後方側でかつ車両幅方向内側に向かって傾斜しており、当該前壁部34Dの勾配の方が後壁部34Cの勾配よりも大きく設定されている。
このため、フロントサイドメンバ16の内側側壁部22Cにおけるビード部34が設けられた部分は、ビード部34の車両前方側の端部34Aを基準とすると、端部34Aから前壁部34Dと後壁部34Cとの境界部に向かうに従って剛性が徐々に高くなっている。一方、内側側壁部22Cにおけるビード部34の前壁部34Dと後壁部34Cとの境界部からビード部34の車両後方側の端部34Bまでの部分は、当該境界部から端部34Bに向かうに従って剛性が徐所に低くなっている。そして、内側側壁部22Cにおけるビード部34が設けられた部分の車両前後方向の単位長さ当たりの剛性の変化量は、前壁部34D側の方が後壁部34C側の方よりも大きくなっている。その結果、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、内側側壁部22Cにおけるビード部34の端部34Aが配置された箇所には応力が集中しやすくなる。一方、内側側壁部22Cにおけるビード部34の端部34Bが配置された箇所では、当該ビード部34の端部34Aが配置された箇所と比し、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、応力の集中が抑制される。したがって、本実施形態では、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、フロントサイドメンバ16が低剛性部68を起点に変形する確度を高くすることができる。
<第2実施形態>
次に、図8を用いて本発明の第2実施形態に係る車両前部構造について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については、同一の番号を付してその説明を省略する。
本実施形態では、低剛性部80が貫通部82で構成されている点に特徴がある。具体的には、貫通部82は、フロントサイドメンバインナ22の内側側壁部22Cを車両幅方向に貫通して形成されており、車両上下方向に延びると共にその長手方向の両端部が円弧状とされた矩形状に構成されている。この貫通部82は、内側側壁部22Cにおける接合部62Aよりも車両後方側に配置されると共に、接合部58に対しては、車両前方側でかつ車両下方側に配置されている。
このため、車両前方側からの衝突荷重の入力時において、フロントサイドメンバ16は、貫通部82を起点として変形すると共に、当該フロントサイドメンバ16が折れ変形するときの変形の軸線が車両上下方向となる。また、車両側面視において、貫通部82はマウントブラケット32の上側壁部50Bの下方側に配置された状態となっており、フロントサイドメンバ16の変形の起点が車両側面視でマウントブラケット32の上側壁部50Bの下方側に設定される。したがって、本実施形態においてもビード部34による作用並びに効果を除き、上述した第1実施形態と同様の作用並びに効果を奏する。
また、本実施形態では、フロントサイドメンバ16の内側側壁部22Cが車両幅方向に貫通されて貫通部82が形成されており、当該貫通部82によって低剛性部80が構成されている。このため、内側側壁部22Cにおける所定の範囲内(車両前後方向において接合部58と接合部62Aとの間)で任意の位置に低剛性部80を設定することができる。また、貫通部82の長さや幅を調整することで当該内側側壁部22Cにおける低剛性部80が構成された部分の剛性を調整することができる。したがって、本実施形態では、フロントサイドメンバ16に簡易な加工を施すことで、当該フロントサイドメンバ16に車両前方側からの衝突荷重の入力時における折れ変形の起点を設定することができる。
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した第1実施形態では、ビード部34をフロントサイドメンバ16と一体に設けたが別体で構成してもよい。例えば、ビード部34と同形状のブラケットをフロントサイドメンバ16の内側側壁部22Cに接合してもよいし、矩形状のプレートを内側側壁部22Cに接合する構成としてもよい。また、ビード部34の形状も上述した構成に限らず、車両幅方向に見て車両上下方向に延びる矩形状等種々の構成を取り得る。
(2) また、上述した実施形態では、マウントブラケット30、32が別体で構成されていたが、これらのブラケットを一体にしてパワーユニット支持部を構成してもよい。
(3) さらに、上述した実施形態では、パワーユニットマウント28の車両後方側をマウントブラケット32で構成すると共に、当該マウントブラケット32の車両後方側に低剛性部を配置する構成としたが、これに限らない。例えば、パワーユニットマウント28の車両前方側をマウントブラケット32と車両前後方向に対称に構成されたブラケットで構成し、当該ブラケットの車両前方側に低剛性部を配置する構成としてもよい。
(4) 加えて、上述した実施形態では、マウントブラケット30、32が複数の部材で構成されていたが、プレス加工で一体に構成してもよい。一例を挙げると、マウントブラケット32をブラケット本体部50と内壁部54とが一体化された構成とし、一枚の鋼材からプレス加工で形成される構成としてもよい。また、マウントブラケット30をブラケット本体部36のみで構成すると共に、マウントブラケット32をブラケット本体部50のみで構成してもよい。
(5) さらに加えて、上述した実施形態では、車両幅方向両側のフロントサイドメンバ16に低剛性部が設定されていたが、車種や運転環境に応じて車両幅方向一方側のフロントサイドメンバ16に低剛性部を設定する構成も取り得る。