(第1の実施の形態)
図1には、本発明の第1の実施の形態に係るモータリトラクタとしてのウエビングベルト巻取装置10の全体構成の概略が正面断面図によって示されている。以下、説明の便宜上、本ウエビングベルト巻取装置10が運転席に対応して車両に取り付けられている例を挙げて説明する。
この図に示されるように、ウエビングベルト巻取装置10はフレーム12を備えている。フレーム12は略板状の背板14を備えており、この背板14がボルト等の図示しない締結手段によって車体に固定されることで、本ウエビングベルト巻取装置10が車体に取り付けられる構成となっている。背板14の幅方向両端からは一対の脚板16、18が互いに平行に延出されており、これらの脚板16、18間にダイカスト等によって製作された巻取軸としてのスプール20が回転可能に配置されている。
スプール20は略円筒形状のスプール本体22と、このスプール本体22の両端部に略円盤形状にそれぞれ形成された一対のフランジ部24、26とによって構成されており、全体としては鼓形状をなしている。
スプール本体22(スプール20のフランジ部24、26間)には、長尺帯状に形成されたウエビングベルト28の基端部が固定されており、スプール20をその軸周り一方へ回転させると、ウエビングベルト28がその基端側からスプール本体22の外周部に層状に巻き取られる。また、ウエビングベルト28をその先端側から引っ張れば、スプール本体22の外周部に巻き取られたウエビングベルト28が引き出され、これに伴い、ウエビングベルト28を巻き取る際の回転方向(以下、この方向を便宜上「巻取方向」と称する)とは反対にスプール20が回転する(以下、ウエビングベルト28を引き出す際のスプール20の回転方向を便宜上「引出方向」と称する)。
フランジ部24のフランジ部26とは反対側でスプール20の一端側は、脚板16に形成された円孔30を略同軸的に貫通してフレーム12の外部に突出している。脚板16側のフレーム12の外側には、ケース32が配置されている。ケース32は、スプール20の軸方向に沿って脚板16と対向して配置されて脚板16に固定されている。また、ケース32は全体的に脚板16側へ向けて開口しており、円孔30を貫通したスプール20の一端側はケース32の内側に入り込み、ケース32によって回転自在に軸支されている。
さらに、ケース32の内部には渦巻きばね34が配置されている。渦巻きばね34は渦巻き方向外側の端部がケース32に係止されており、渦巻き方向内側の端部がスプール20に係止されている。渦巻きばね34は特別に負荷をかけない中立状態からスプール20を引出方向へ回転させると、巻取方向の付勢力が生じてスプール20を巻取方向へ付勢する。この場合に、渦巻きばね34は、スプール20によって巻き取られたウエビングベルト28の巻取量が増加するに従ってスプール20によってウエビングベルト28を巻き取る巻取力が次第に低下するような付勢力でスプール20を巻取方向へ付勢する。従って、基本的には、スプール20からウエビングベルト28を引き出すためにこのウエビングベルト28に付与した引っ張り力を解除すると、渦巻きばね34の付勢力がスプール20を巻取方向へ回転させ、スプール20にウエビングベルト28を巻き取らせる構造になっている。さらに、このような渦巻きばね34の巻取方向の付勢力に起因したウエビングベルト28の巻取力は、ウエビングベルト28の装着状態で乗員非圧迫性に対応した強さとなるように設定されている。
一方、フランジ部26のフランジ部24とは反対側でスプール20の他端側は、脚板18に形成された内歯のラチェット孔36を略同軸的に貫通してフレーム12の外部に突出している。脚板18側のフレーム12の外側には、ロック機構38が配置されている。ロック機構38はケース40を備えている。ケース40はスプール20の軸方向に沿って脚板18と対向して配置されて脚板18に固定されている。
ケース40の内側には、ロック機構38を構成するラチェットギヤ42がスプール20に対して同軸的で且つ相対回転可能に収容されている。ラチェットギヤ42は、軸方向脚板18とは反対側が開口した浅底円筒状とされており、その外周部にはラチェット歯が形成されている。
ラチェットギヤ42の内側には、ロックベース44が収容されている。ロックベース44はスプール20に対して同軸的で且つ一体的に設けられており、従って、スプール20の回転によりスプール20と一体的に回転する。ロックベース44には図示しない圧縮コイルスプリング等の付勢手段が設けられている。この付勢手段は、一部が上述したラチェットギヤ42に係合しており、ロックベース44が回転すると、ロックベース44と共に回転して、その回転方向に沿った付勢力をラチェットギヤ42に付与する。このため、ラチェットギヤ42は、本来スプール20に対して相対回転可能であるが、スプール20と一体にロックベース44が回転することで付勢手段から付与される付勢力により、ラチェットギヤ42がスプール20の回転に追従して回転する構成となっている。
一方、上述したラチェット孔36の内側では、ロックベース44にロックプレート46が支持されている。ロックプレート46は、ロックベース44に支持された状態でラチェット孔36の内歯に対し接離移動可能とされている。また、ロックプレート46は、上述したラチェットギヤ42に係合しており、ラチェットギヤ42がロックベース44に対して上述した巻取方向へ相対回転した場合に、この回転に連動してラチェット孔36の内歯に接近してラチェット孔36の内歯に噛み合う構成となっている。
また、ラチェットギヤ42の半径方向下方には、センサフレーム48が配置されている。センサフレーム48は、所定の曲率で湾曲して上方へ向けて開口した図示しない載置部を有しており、この載置部にセンサボール50が載置されている。さらに、センサボール50の上方には係合板52が設けられている。係合板52は、上下に回動可能にセンサフレーム48に取り付けられており、センサボール50が上述した載置部上を転動して上方へ変位した際には、センサボール50に下方から押圧されて回動する。また、係合板52には係合爪54が形成されている。係合爪54は、その先端がラチェットギヤ42のラチェット歯に対向しており、係合板52が上方へ回動すると係合爪54がラチェットギヤ42のラチェット歯に噛み合い、ラチェットギヤ42の回転を規制する構成となっている。
一方、スプール20の下方で脚板16と脚板18との間には、モータ60が配置されている。モータ60の出力軸62にはギヤ64が同軸的且つ一体的に設けられている。
ギヤ64の半径方向上方には、ギヤ64よりも大径のギヤ66が配置されている。ギヤ66は脚板16、18間に設けられた支持板68と脚板16とによりスプール20と平行な軸周りに回転自在に軸支された状態で、ギヤ64に噛み合っている。また、ギヤ66の軸方向側方にはギヤ66よりも小径のギヤ70がギヤ66に対して同軸的且つ一体的に設けられている。
さらに、ギヤ70の半径方向上側側方には、クラッチ72が設けられている。クラッチ72は、リング状に形成された外歯のギヤ74を備えている。ギヤ74はスプール20に対して同軸的で且つ相対回転可能に設けられており、その軸方向両端は図示しない円盤状部材により閉止されている。また、ギヤ74の内側には、筒状のアダプタ76がスプール20に対して同軸的に設けられている。アダプタ76は、スプール20に同軸的且つ一体的に設けられていると共に、ギヤ74の両端を閉止する円盤状部材を貫通した状態で、円盤状部材、ひいてはギヤ74をスプール20周りに回転可能に軸支している。
ギヤ74の内側には、例えば、遠心力で揺動するパウル等の連結部材が収容されている。連結部材は、例えば、上記の円盤状部材に支持されており、ギヤ74と共に回転可能であると共に、遠心力で揺動することで、アダプタ76の外周部に係合してギヤ74とアダプタ76とを機械的に連結し、巻取方向と対応する方向に回転するギヤ74の回転力をアダプタ76、ひいてはスプール20に伝えることができる構造となっている。またさらに、この場合において、連結部材は、引出方向と対応する方向に回転するスプール20、アダプタ76の回転力をギア74に伝えることができる構造となっている。
すなわち、上記のクラッチ72は、ギヤ74とアダプタ76との連結状態では、ギヤ74側(モータ60の出力軸62側)の巻取方向と対応する方向の回転をスプール20に伝えることができるだけでなく、スプール20の引出方向と対応する方向の回転をギヤ74へ伝えることもできる構造となっている。
また、ギヤ74の内側の連結部材がギヤ74と共に巻取方向と対応する方向に対して反対方向に回転すると、この連結部材とアダプタ76の外周部との係合が解除され、クラッチ72は解除状態になる。
一方、制御手段はドライバ82とECU86とから構成されている。図1に示されるように、上述したモータ60は、ドライバ82を介して車両に搭載されたバッテリー84に電気的に接続されており、バッテリー84からの電流がドライバ82を介してモータ60に流れることで、モータ60は駆動力で出力軸62を正方向(巻取方向と対応する方向)へ回転(正転)又は逆方向へ回転(逆転)させる構成となっている。ドライバ82は、マイコン、メモリ、タイマ等を含んで構成されたECU86に接続されており、更に、ECU86は回転角センサ(本実施の形態では、磁気センサ)88に接続されている。
回転角センサ88は、スプール20のフランジ部26近傍に配置されている。このフランジ部26では、磁石90が、フランジ部26の回転軸位置から偏心させてこのフランジ部26に設けられている。すなわち、スプール20が巻取方向に回転した場合に、スプール本体22と一体的にフランジ部26も回転し、フランジ部26の回転に伴って磁石90が回転角センサ88の近傍を繰り返し通過する。この磁石90が回転角センサ88の近傍を通過すると、磁石90によって生じる磁気を回転角センサ88が検知して電気的な信号(以下、この信号を便宜上「検知信号」と称する)をECU86に出力する。
ECU86では、回転角センサ88から出力されたこの検知信号に基づいてスプール20の回転数が検出され、さらにこの回転数からウエビングベルト28の巻取量が検出される。このウエビングベルト28の巻取量に基づいて、ECU86からは、ドライバ82へモータ60の駆動を制御するための制御信号が出力され、この制御信号に基づいてドライバ82が作動してモータ60の駆動が制御される。
以上説明したようなECU86には、ウエビングベルト28の図示しないタングプレートが図示しないバックルと連結しているか否かを検知するバックルスイッチ92が接続されている。このバックルスイッチ92は、ウエビングベルト28が乗員から装着解除された状態(乗員が降車した状態又は降車する準備状態)であるか否かを検出する。バックルスイッチ92は、ウエビングベルト28のタングプレートがバックルと連結している際にはスイッチのオン状態を示すHレベルの信号をECU86に出力し、このタングプレートがバックルから解除されている際にはスイッチのオフ状態を示すLレベルの信号をECU86に出力する。ECU86は、バックルスイッチ92から出力された信号がLレベルの信号である時をウエビングベルト28の格納時であると判断する。
このようなECU86は、ウエビングベルトを格納する際であって、ウエビングベルト28のタングプレートがバックルから解除されたこと(乗員からウエビングベルト28が取り外されたこと)が検出された時点でモータ60を正方向へ回転(正転)させ、ウエビングベルト28が全格納されたことが検出された時点でこのモータ60の回転(正転)を停止するようにドライバ82に制御信号を出力する。このウエビングベルト28が全格納された状態は、例えば、スプール20の回転数がウエビングベルト28を全格納した際の巻取量に対応して予め設定された所定回数になったことを検出すること等でECU86により判断される。
またさらに、モータ60を正回転させている際にモータ60が所謂ロック状態になると、モータ60には通常の作動電流よりも大きなロック電流が流れるが、ECU86が、このロック電流を検出した場合には、モータ60の正転を停止させしかもクラッチ72が解除状態となる所定量だけモータ60を逆回転させるように、ドライバ82に制御信号を出力する。
また、このようなECU86には、ドアロック状態検出センサ94が接続されている。ECU86とドアロック状態検出センサ94とは、共に乗員乗降状態検出手段を構成しており、ドアロック状態検出センサ94が車両のドアロックのオン状態を検出したか否かに基づいて、ECU86は、上記ドアロックがオン状態であるのか、それともオフ状態であるのかを判断する。ここで、ドアロックは、カードキーの離反時あるいはメカキーの施錠操作時にオン状態(乗員が降車した状態又は降車する準備状態)とされ、カードキーの接近時あるいはメカキーの開錠操作時にオフ状態(乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態)とされる。
上記ドアロックのオン状態が検出された際には、ECU86によってロック電流が検出されない限り、ECU86及びドライバ82は、協働して、ウエビングベルト28が全格納されるまでモータ60を正転させるようになっており、ウエビングベルト28の全格納後にはクラッチ72の連結状態が保たれたままモータ60の回転を停止させるようになっている。一方、上記ドアロックのオフ状態が検出された際、すなわち上記ドアロックがオン状態からオフ状態に切り換えられた際には、ECU86及びドライバ82は、協働して、クラッチ72を解除状態にしてスプール20が回転可能な状態となるように、モータ60を所定量だけ逆転させるようになっている。
またさらに、ECU86には、イグニッションスイッチ96が接続されている。車両のドアロックがオン状態である際にECU86がイグニッションスイッチ96のオン状態(乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態)を検出したときには、ECU86及びドライバ82は、協働して、クラッチ72を解除状態にしてスプール20が回転可能となるように、モータ60を所定量だけ回転させるようになっている。
また、ECU86には、ハンドル98が接続されており、ECU86は、ハンドル98が操作されたこと(乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態)を検出する。
またさらに、ECU86には、アクセルペダルやブレーキペダルを含んで構成されたペダル100にも接続されており、ECU86は、乗員によってペダル100が踏み込まれたこと(乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態)を検出する。
このように、ECU86は、ドアロックのオフ状態、イグニッションスイッチ96のオン状態、ハンドル98が操作されること、ペダル100が踏み込まれることの少なくとも1つを検出することで、乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であることを検出するようになっている。
このようなECU86は、乗員が乗車した状態又は車両に乗車する準備状態と、乗員が降車した状態又は降車する準備状態とをフラグの値(FLG)で判別するようになっており、乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態をFLG=0に対応付けし、降車した状態又は降車する準備状態をFLG=1に対応付けし、ECU86内部のメモリに記憶する。
またさらに、ECU86では、前述のタイマによって、フラグの値が0の場合であってモータ60が停止されてから経過した時間が計測されるようになっている。フラグの値が0の場合であってモータ60が停止されてから予め設定された所定期間内にバックルスイッチ92がオン状態とならないときには、ECU86及びドライバ82は、協働してモータ60を正転させるようになっている。
以下に、本発明の第1の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10の作用について説明する。
図2には、本発明の第1の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10におけるモータ60の動作を制御する処理ルーチンがフローチャートにて示されている。
まず、ECU86では、本処理ルーチンの前回終了時でのフラグの値が0であるか否か、すなわち、乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態として終了したか(FLG=0)、乗員が降車した状態又は降車する準備状態として終了したか(FLG=1)が判断される(ステップ120)。この判断が肯定されるとステップ122に移行し、否定されるとステップ144に移行する。
ステップ120での判断が肯定(本処理ルーチンの前回終了時に乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であったと判断)されると、ステップ122では、ECU86によって、バックルスイッチ92からの信号に基づいて、バックルスイッチ92がオフ状態になったか否かが判断される。この判断が肯定されると、ECU86はウエビングベルト28が乗員の身体から取り外されたと判断し、ステップ124へ移行する。なお、ステップ122での判断が否定された場合には、本処理ルーチンを終了する。
ステップ122での判断が肯定されてステップ124に移行した場合、ECU86及びドライバ82によって、モータ60が駆動される。ここでは、モータ60は正転し、クラッチ72では、ギヤ74とアダプタ76とが連結状態とされる。この結果、スプール20はウエビングベルト28の巻取方向に回転され、ウエビングベルト28は強制的に巻き取られる。このように、ウエビングベルト28の巻取りが開始されると、次のステップ126に移行する。
ステップ126では、モータ60に通常の作動電流よりも大きなロック電流が流れたか否かが判断される。すなわち、ロック電流が検出されることは、ウエビングベルト28の巻取り中に乗員が再度ウエビングベルト28を装着しようとして、ウエビングベルト28をウエビングベルト巻取装置10から引き出していることであると判断できるため、ロック電流を検出することによってウエビングベルト28の巻取り処理を継続するか否かが判断される。この判断が肯定されるとステップ138に移行し、否定されるとステップ128に移行する。
ステップ126での判断が否定されて、ステップ128に移行すると、ECU86によって、ドアロック状態検出センサ94からの検出信号に基づいて、車両のドアロックがオン状態であるか否かが判断される。この判断が肯定されるとステップ130に移行し、否定されるとステップ138に移行する。
ステップ128での判断が肯定されてステップ130に移行すると、回転角センサ88からの検知信号に基づいてスプール20の回転数がウエビングベルト28を全格納した際の巻取量に対応して予め設定された所定回転数となったか否かがECU86で判断される。ここで、ECU86は、検出されたスプール20の回転数に基づいてウエビングベルト28の巻取量を検出し、このウエビングベルト28の巻取量がウエビングベルト28を全格納した際の巻取量であるか否かを判断する。すなわち、スプール20の回転数が増加することはウエビングベルト28の巻取量が増加することであるため、スプール20の回転数が予め設定された所定回転数に達したか否かにより、ウエビングベルト28の巻取量がウエビングベルト28を全格納した際の巻取量に達したか否かが判断される。このようにスプール20の回転数を検出することでウエビングベルト28の巻取量を検出できるので、ウエビングベルト28の巻取量を検出する場合であっても、ウエビングベルト28の巻取量を直接に検出する複雑な装置を必要とせず、簡単な装置構成で容易にウエビングベルト28の巻取量を検出することができる。
このステップ130での判断が肯定された場合には、ウエビングベルト28の巻取数がウエビングベルト28を全格納した際の巻取量に達したと判断され、ステップ132に移行する。一方、このステップ130の判断が否定された場合には、ウエビングベルト28の巻取量がウエビングベルト28の全格納した際の巻取量に達していないと判断され、ウエビングベルト28の巻取りが継続され、ステップ136に移行する。
ステップ130での判断が肯定されてステップ132に移行すると、ECU86及びドライバ82によって、モータ60の駆動が停止される。ここでは、正転していたモータ60は、逆転されることなく、そのまま停止される。このため、クラッチ72では、ギヤ74とアダプタ76との連結状態が保たれる。従って、モータ60はクラッチ72を介してスプール20に連結した状態に維持される。この結果、スプール20の回転が阻止されて、巻き取られたウエビングベルト28がスプール20から引き出されることが阻止される。このため、タングプレートの自重や車両の振動等が生じても、ウエビングベルト28がウエビングベルト巻取装置10から引き出されることがない。従って、ウエビングベルト28の格納後には、ウエビングベルト巻取装置10からウエビングベルト28が引き出されてこのウエビングベルト28に弛みが生じることを阻止できる。すなわち、巻き取られたウエビングベルト28は、全格納の状態のままに保たれる。このため、例えばウエビングベルト28のタングプレートが車室内で不安定に宙吊りになることがなくなり、このウエビングベルト28の車室内の見栄えを向上させることができる。このステップ132の処理が終了すると、モータ60がクラッチ72を介してスプール20に連結した状態のままで次のステップ134に移行する。
ステップ134に移行すると、ECU86では、フラグの値が0から1に書き換えられ、乗員が降車した状態又は降車する準備状態として扱われる。このようにフラグの値が1に書き換えられると、本処理ルーチンを終了する。
一方、前述のステップ130での判断が否定されてステップ136に移行した場合には、再度ロック電流が検出されたか否かが判断される。すなわち、ここでは、バックルスイッチ92がオフ状態となった後にドアロックのオン状態が検出されたにも拘わらず、ウエビングベルト28の巻取り中に乗員が車両に乗車していてウエビングベルト28が引き出されたか否かが判断される。この判断が肯定されるとステップ138に進み、否定されるとステップ128に戻って上述した処理を繰り返す。
ステップ136での判断が肯定されてステップ138に移行すると、ECU86及びドライバ82によって、モータ60は、所定量だけ逆転される。
ここで、モータがクラッチを介してスプールに常に連結しているウエビングベルト巻取装置では、ウエビングベルトをスプールから容易に引き出すことができない。この点、本実施の形態におけるウエビングベルト巻取装置10では、ECU86及びドライバ82によって、モータ60が逆転されてクラッチ72が解除状態とされる。このようにしてクラッチ72を解除状態にした結果、スプール20は回転可能な状態になるため、このスプール20からウエビングベルト28を引き出すことが可能になる。この場合において、渦巻きばね34のみがスプール20をウエビングベルト28の巻取方向に付勢する。この渦巻きばね34の付勢力は乗員非圧迫性に対応した付勢力となっているため、この付勢力の強さは比較的弱く設定されている。従って、車両の座席に着座した乗員がウエビングベルト28を装着する際には、容易にウエビングベルト28をウエビングベルト巻取装置10から引き出してこの乗員の身体に装着することができる。
ウエビングベルト28を装着する際には、ウエビングベルト巻取装置10からウエビングベルト28を引き出して、車両の座席に着座した乗員にこのウエビングベルト28が装着される。この状態では、ウエビングベルト28を基端側から巻き取るスプール20は、渦巻きばね34によってウエビングベルト28の巻取方向に付勢されるので、乗員に装着されたウエビングベルト28に弛みが生じた場合であっても、渦巻きばね34の付勢力に起因するウエビングベルト28の巻取力でこの弛みは取り除かれる。またここで、ウエビングベルト28の巻取力は乗員非圧迫性に対応した強さとなっているので、乗員の身体をウエビングベルト28で圧迫することがない。
このように、ステップ138では、クラッチ72が解除状態とされる。このため、乗員が装着していたウエビングベルト28のタングプレートを一旦バックルから引き抜いてしまった直後でも、再度ウエビングベルト28のタングプレートを上記のバックルに係合させて、乗員の身体にウエビングベルト28を装着させるような状況に対応することができる。以上説明したようなステップ138の処理が終了すると、ステップ140に移行する。
ステップ140では、ECU86及びドライバ82によって、モータ60の駆動が停止される。モータ60の駆動が停止されると、ステップ142に移行する。
ステップ142では、ECU86のタイマのカウント値に基づいて、ECU86では、モータ60の駆動が停止されてから上記予め設定された所定期間内にバックルスイッチ92がオン状態とされたか否かが判断される。すなわち、ここでは、モータ60の駆動が停止されてから所定期間内にウエビングベルト28のタングプレートがバックルに挿入されて係合したか否かを判断する。この所定期間内にタングプレートがバックルに挿入されて係合した場合(肯定判断)には、乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であるとして扱い、フラグの値を変更せずに本処理ルーチンを終了する。一方、この所定期間内にタングプレートがバックルに挿入されず係合しなかった場合(否定判断)には、ステップ124に戻って上述した処理を繰り返す。
また一方、前述のステップ120での判断が否定(FLG=1、すなわち、本処理ルーチンの前回終了時に乗員が降車した状態又は降車する準備状態であったと判断)されてステップ144に移行すると、ドアロックがオフ状態であるか否かが判断される。すなわち、ここでは、乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であるか否かが判断される。この判断が肯定されるとステップ146に移行し、否定されるとステップ152に移行する。
ステップ144での判断が否定されてステップ152に移行すると、ECU86では、イグニッションスイッチ96がオン状態とされたか否かが判断される。この判断が肯定された場合、ECU86は、ドアロックをオフ状態とせずに乗員が降車した状態又は降車する準備状態であると判断していたが、実際には乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であったとして上記判断を修正する。このように上記判断を修正すると、ステップ146に移行する。一方、イグニッションスイッチ96がオフ状態である場合(否定判断)には、ステップ154に移行する。
ステップ152での判断が否定されてステップ154に移行すると、ECU86では、ハンドル98が操作されたか否かが判断される。ここでもハンドル98の操作が検出された場合には、ECU86は、前述のステップ152で肯定判断がなされた場合と同様に、乗員が降車した状態又は降車する準備状態であるとしていた判断を、実際には乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であったとして修正する。このように上記判断を修正すると、ステップ146に移行する。一方、ハンドル98の操作が検出されない場合には、ステップ156に移行する。
ステップ154での判断が否定されてステップ156に移行すると、ペダル100が操作されたか否かが判断される。ここでもペダル100の踏込みが検出された場合には、ECU86は、前述ステップ152、154で肯定判断がなされた場合と同様に、乗員が降車した状態又は降車する準備状態であるとしていた判断を、実際には乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であったとして修正する。このように上記判断を修正すると、ステップ146に移行する。一方、ペダル100の踏込みが検出されない場合(否定判断)には、乗員が降車した状態又は降車する準備状態であるとして扱い、フラグの値(FLG=1)を変更せずに本処理ルーチンを終了する。
一方、前述のステップ144、152、154、156の何れかのステップで肯定判断がなされてステップ146に移行した場合には、前述のステップ138での処理と同様に、ECU86及びドライバ82によって、モータ60は、所定量だけ逆転されて、クラッチ72が解除状態とされる。この結果、ステップ138で述べたように、乗員は、ウエビングベルト28を引き出して、自らの身体に装着することができる。このステップ140で乗員がウエビングベルト28を装着した場合には、前述のように、ウエビングベルト28の巻取力は乗員非圧迫性に対応した強さとなっているので、乗員の身体をウエビングベルト28で圧迫することがない。
このようにクラッチ72が解除状態とされると、ステップ148に移行し、ECU86及びドライバ82によって、モータ60の駆動が停止される。モータ60の駆動が停止されると、ステップ150に移行する。
ステップ150に移行すると、ECU86では、フラグの値が1から0に書き換えられ、乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であるとして扱われる。このようにフラグの値が0に書き換えられると、本処理ルーチンを終了する。
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10は、ウエビングベルト28の装着時には乗員の身体を圧迫せず、かつ、ウエビングベルト28の格納後にはこのウエビングベルト28の車室内の見栄えを向上させることができる。
また、ウエビング巻取装置10は、前述の如く、ドアロックのオフ状態、イグニッションスイッチ96のオン状態、ハンドル98が操作されること、ペダル100が踏み込まれることを検出することで乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であることを検出し、この場合には、クラッチ72の解除動作を実行する。従って、乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態である場合に、的確なタイミングでクラッチ72を解除することができる。
なお、本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10は、ドアロックの状態に基づいて、ECU86及びドライバ82がモータ60の回転を制御してクラッチ72の連結状態と解除状態とを切り換えるようにしたが、本発明はこれに限らない。例えば、ドアロック状態検出センサ96を設ける代わりにドア開閉センサ(例えば、カーテシランプ)を設け、このドア開閉センサによって検出された車両のドアの開閉状態に基づいて、ECU86及びドライバ82がモータ60の回転を制御してクラッチ72の連結状態と解除状態とを切り換えるようにしてもよい。この場合、ドアが閉じられた状態を検出したときにはクラッチ72を連結状態にし、ドアが開けられた状態を検出したときにはクラッチ72を解除状態にするようにすればよい。
また例えば、ドアロック状態検出センサ96を設けるだけでなくさらに着座センサを設け、ドアロック状態検出センサ96とこの着座センサとによる検出結果に基づいて、ECU86及びドライバ82がモータ60の回転を制御してクラッチ72の連結状態と解除状態と切り換えるようにしてもよい。この場合、着座センサがオン状態であるときには、ドアロックがオン状態であるかオフ状態であるかに拘わらず、ウエビングベルト28の巻取り動作を実行せずにクラッチ72を解除状態とするようにすればよい。
また、本実施の形態では、本ウエビングベルト巻取装置10は、運転席に対応して車両に取り付けられたものとしたが、これに限らず、助手席に対応して車両に取り付けられてもよい。この場合、イグニッションスイッチ96、ハンドル98、及びペダル100を省略すると共に着座センサを助手席に設けた構成とし、ドアロック状態検出センサ94とこの着座センサとによる検出結果に基づいて、ECU86及びドライバ82がモータ60の回転を制御してクラッチ72の連結状態と解除状態と切り換えるようにし、ドアロック時であっても乗員がシートに着座しているときには、ウエビングベルト28の巻取り動作を実行せずにクラッチ72を解除状態とするようにすればよい。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置10について説明する。本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置10は、前述の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10において、ECU86にドアロック状態検出センサ94、イグニッションスイッチ96、ハンドル98、及びペダル100を接続する代わりに、ECU86にカーテシスイッチ106を接続したものである(図3参照)。なお、本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置10のうち前述の第1の実施の形態と同一構成の箇所には、同一符号を付してその説明を省略する。
カーテシスイッチ106は、ドアが開けられたときにドア開放信号を出力する。ECU86は、カーテシスイッチ106から出力されたドア開放信号を受けることによってドアが開けられたことを検出する。この場合においてクラッチ72が連結状態であるときには、ECU86は、乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であることを検出する。このECU86は、クラッチ72が連結状態である場合にドア開放信号を入力すると、クラッチ72を解除状態にするために、モータ60を所定量だけ逆転させるようになっている。
以下に、本発明の第2の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10の作用について説明する。
図4には、本発明の第2の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10におけるモータ60の動作を制御する処理ルーチンがフローチャートにて示されている。
まず、ECU86では、本処理ルーチンの前回終了時でのフラグの値が1であるか否か、すなわち、クラッチ72が解除状態のまま前回の処理が終了したか(FLG=1)、連結状態のまま前回の処理が終了したか(FLG=0)が判断される(ステップ300)。この判断が肯定されるとステップ302に移行し、否定されるとステップ320に移行する。
ステップ300での判断が肯定(本処理ルーチンの前回終了時にクラッチ72が解除状態であったと判断)されると、ステップ302では、ECU86によって、バックルスイッチ92からの信号に基づいて、バックルスイッチ92がオフ状態になったか否かが判断される。この判断が肯定されると、ECU86はウエビングベルト28が乗員の身体から取り外されたと判断し、ステップ304へ移行する。なお、ステップ302での判断が否定された場合には、本処理ルーチンを終了する。
ステップ302での判断が肯定されてステップ304に移行した場合、ECU86及びドライバ82によって、モータ60が駆動される。ここでは、モータ60は正転し、クラッチ72では、ギヤ74とアダプタ76とが連結状態とされる。この結果、スプール20はウエビングベルト28の巻取方向に回転され、ウエビングベルト28は強制的に巻き取られる。このように、ウエビングベルト28の巻取りが開始されると、次のステップ306に移行する。
ステップ306に移行すると、回転角センサ88からの検知信号に基づいてスプール20の回転数がウエビングベルト28を全格納した際の巻取量に対応して予め設定された所定回転数となったか否かがECU86で判断される。ここで、ECU86は、検出されたスプール20の回転数に基づいてウエビングベルト28の巻取量を検出し、このウエビングベルト28の巻取量がウエビングベルト28を全格納した際の巻取量であるか否かを判断する。すなわち、スプール20の回転数が増加することはウエビングベルト28の巻取量が増加することであるため、スプール20の回転数が予め設定された所定回転数に達したか否かにより、ウエビングベルト28の巻取量がウエビングベルト28を全格納した際の巻取量に達したか否かが判断される。このようにスプール20の回転数を検出することでウエビングベルト28の巻取量を検出できるので、ウエビングベルト28の巻取量を検出する場合であっても、ウエビングベルト28の巻取量を直接に検出する複雑な装置を必要とせず、簡単な装置構成で容易にウエビングベルト28の巻取量を検出することができる。
このステップ306での判断が肯定された場合には、ウエビングベルト28の巻取数がウエビングベルト28を全格納した際の巻取量に達したと判断され、ステップ308に移行する。一方、このステップ306の判断が否定された場合には、ウエビングベルト28の巻取量がウエビングベルト28の全格納した際の巻取量に達していないと判断され、ウエビングベルト28の巻取りが継続され、ステップ312に移行する。
ステップ306での判断が肯定されてステップ308に移行すると、ECU86及びドライバ82によって、モータ60の駆動が停止される。ここでは、正転していたモータ60は、逆転されることなく、そのまま停止される。このため、クラッチ72では、ギヤ74とアダプタ76との連結状態が保たれる。従って、モータ60はクラッチ72を介してスプール20に連結した状態に維持される。この結果、スプール20の回転が阻止されて、巻き取られたウエビングベルト28がスプール20から引き出されることが阻止される。このため、タングプレートの自重や車両の振動等が生じても、ウエビングベルト28がウエビングベルト巻取装置10から引き出されることがない。従って、ウエビングベルト28の格納後には、ウエビングベルト巻取装置10からウエビングベルト28が引き出されてこのウエビングベルト28に弛みが生じることを阻止できる。すなわち、巻き取られたウエビングベルト28は、全格納の状態のままに保たれる。このため、例えばウエビングベルト28のタングプレートが車室内で不安定に宙吊りになることがなくなり、このウエビングベルト28の車室内の見栄えを向上させることができる。このステップ308の処理が終了すると、モータ60がクラッチ72を介してスプール20に連結した状態のままで次のステップ310に移行する。
ステップ310に移行すると、ECU86では、フラグの値が1から0に書き換えられ、クラッチ72が連結状態であるとして扱われる。このようにフラグの値が0に書き換えられると、本処理ルーチンを終了する。
一方、前述のステップ306での判断が否定されてステップ312に移行した場合には、ロック電流が検出されたか否かが判断される。すなわち、ここでは、バックルスイッチ92がオフ状態となった後にウエビングベルト28の巻取り処理が実行されているにも拘わらず、ウエビングベルト28の巻取り中に乗員が車両に乗車していてウエビングベルト28が引き出されたか否かが判断される。この判断が肯定されるとステップ314に進み、否定されるとステップ306に戻って上述した処理を繰り返す。
ステップ312での判断が肯定されてステップ314に移行すると、ECU86及びドライバ82によって、モータ60は、所定量だけ逆転される。
ここで、モータがクラッチを介してスプールに常に連結しているウエビングベルト巻取装置では、ウエビングベルトをスプールから容易に引き出すことができない。この点、本実施の形態におけるウエビングベルト巻取装置10では、ECU86及びドライバ82によって、モータ60が逆転されてクラッチ72が解除状態とされる。このようにしてクラッチ72を解除状態にした結果、スプール20は回転可能な状態になるため、このスプール20からウエビングベルト28を引き出すことが可能になる。この場合において、渦巻きばね34のみがスプール20をウエビングベルト28の巻取方向に付勢する。この渦巻きばね34の付勢力は乗員非圧迫性に対応した付勢力となっているため、この付勢力の強さは比較的弱く設定されている。従って、車両の座席に着座した乗員がウエビングベルト28を装着する際には、容易にウエビングベルト28をウエビングベルト巻取装置10から引き出してこの乗員の身体に装着することができる。
ウエビングベルト28を装着する際には、ウエビングベルト巻取装置10からウエビングベルト28を引き出して、車両の座席に着座した乗員にこのウエビングベルト28が装着される。この状態では、ウエビングベルト28を基端側から巻き取るスプール20は、渦巻きばね34によってウエビングベルト28の巻取方向に付勢されるので、乗員に装着されたウエビングベルト28に弛みが生じた場合であっても、渦巻きばね34の付勢力に起因するウエビングベルト28の巻取力でこの弛みは取り除かれる。またここで、ウエビングベルト28の巻取力は乗員非圧迫性に対応した強さとなっているので、乗員の身体をウエビングベルト28で圧迫することがない。
このように、ステップ314では、クラッチ72が解除状態とされる。このため、乗員が装着していたウエビングベルト28のタングプレートを一旦バックルから引き抜いてしまった直後でも、再度ウエビングベルト28のタングプレートを上記のバックルに係合させて、乗員の身体にウエビングベルト28を装着させるような状況に対応することができる。以上説明したようなステップ314の処理が終了すると、ステップ316に移行する。
ステップ316では、ECU86及びドライバ82によって、モータ60の駆動が停止される。モータ60の駆動が停止されると、ステップ318に移行する。
ステップ318では、ECU86のタイマのカウント値に基づいて、ECU86では、モータ60の駆動が停止されてから上記予め設定された所定期間内にバックルスイッチ92がオン状態とされたか否かが判断される。すなわち、ここでは、モータ60の駆動が停止されてから所定期間内にウエビングベルト28のタングプレートがバックルに挿入されて係合したか否かを判断する。この所定期間内にタングプレートがバックルに挿入されて係合した場合(肯定判断)には、車両に乗員が乗車しているものとして扱い、フラグの値を変更せずに本処理ルーチンを終了する。一方、この所定期間内にタングプレートがバックルに挿入されず係合しなかった場合(否定判断)には、ステップ304に戻って上述した処理を繰り返す。
また一方、前述のステップ300での判断が否定(FLG=0、すなわち、本処理ルーチンの前回終了時にクラッチ72が連結状態であったと判断)されてステップ320に移行すると、ECU86では、カーテシスイッチ106からドア開放信号が入力されたか否かが判断される。すなわち、ここでは、乗員が乗車したか否かが判断される。この判断が肯定されるとステップ322に移行し、否定されると本処理ルーチンを終了する。
ステップ320での判断が肯定されてステップ322に移行すると、前述のステップ314での処理と同様に、ECU86及びドライバ82によって、モータ60は、所定量だけ逆転されて、クラッチ72が解除状態とされる。この結果、ステップ314で述べたように、乗員は、ウエビングベルト28を引き出して、自らの身体に装着することができる。このステップ314で乗員がウエビングベルト28を装着した場合には、前述のように、ウエビングベルト28の巻取力は乗員非圧迫性に対応した強さとなっているので、乗員の身体をウエビングベルト28で圧迫することがない。
このようにクラッチ72が解除状態とされると、ステップ324に移行し、ECU86及びドライバ82によって、モータ60の駆動が停止される。モータ60の駆動が停止されると、ステップ326に移行する。
ステップ326に移行すると、ECU86では、フラグの値が0から1に書き換えられ、クラッチ72が解除状態であるとして扱われる。このようにフラグの値が1に書き換えられると、本処理ルーチンを終了する。
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10は、ウエビングベルト28の装着時には乗員の身体を圧迫せず、かつ、ウエビングベルト28の格納後にはこのウエビングベルト28の車室内の見栄えを向上させることができる。
また、ウエビング巻取装置10は、前述の如く、クラッチ72の連結状態においてドアが開放されることを検出することで乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であることを検出し、この場合には、クラッチ72の解除動作を実行する。従って、乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態である場合に、的確なタイミングでクラッチ72を解除することができる。
なお、本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置10は、クラッチの連結状態においてドアが開放されることを検出することで乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であることを検出したが、本発明はこれに限らない。例えば、本実施の形態に係るウエビング巻取装置10は、前述の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10と組み合わせて、ドアロックのオフ状態、イグニッションスイッチ96のオン状態、ハンドル98が操作されること、ペダル100が踏み込まれること、及びクラッチ72の連結状態においてドアが開放されることの少なくとも1つを検出することで乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であることを検出するようにし、乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であることを検出した場合に、クラッチ72の解除動作を実行するようにしてもよい。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係るウエビング巻取装置10について説明する。本実施の形態に係るウエビング巻取装置10は、前述の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10において、ECU86にドアロック状態検出センサ94、イグニッションスイッチ96、ハンドル98、及びペダル100を接続する代わりに、ECU86に車両側ドアロックスイッチ102と車外側ドアロックスイッチ104とをそれぞれ接続したものである(図5参照)。なお、本発明の第3の実施の形態に係るウエビング巻取装置10のうち前述の第1の実施の形態と同一構成の箇所には、同一符号を付してその説明を省略する。
車外側ドアロックスイッチ102は、車両の外側に設けられている。このドアロックスイッチ102は、所謂メカキーでドアがロックされた場合に車外側ロック信号を出力する。ECU86は、車外側ドアロックスイッチ102から出力された車外側ロック信号を受けることによって乗員が所謂メカキーでドアをロックしたこと(乗員が降車した状態又は降車する準備状態)を検出する。一方、ECU86は、車外側ロック信号を受けていないときには、メカキーでドアがロックされていないこと(乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態)を検出する。
また、車内側ドアロックスイッチ104は、車室内のドアロックでドアがロックされた場合に車内側ロック信号を出力する。ECU86は、車内側ドアロックスイッチ104から出力された車内側ロック信号を受けることによって乗員が車室内側でドアをロックしたこと(乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態)を検出する。一方、ECU86は、車内側ロック信号を受けていないときには、乗員が車室内側でドアをロックしていないこと(乗員が降車した状態又は降車する準備状態)を検出する。
これらの車外側ロック信号及び車内側ロック信号に基づいて、ドライバ82及びECU86は、モータ60を駆動させるようになっており、ECU86が車内側ロック信号を入力している場合には、車外側ロック信号を入力しているか否かに拘わらず、クラッチ72が解除状態となるようにモータ60を所定量逆転させるようになっている。
以下に、本発明の第3の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10の作用について説明する。
図6には、本発明の第3の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10におけるモータ60の動作を制御する処理ルーチンがフローチャートにて示されている。
まず、ECU86では、本処理ルーチンの前回終了時でのフラグの値が1であるか否か、すなわち、クラッチ72が解除状態のまま前回の処理が終了したか(FLG=1)、連結状態のまま前回の処理が終了したか(FLG=0)が判断される(ステップ200)。この判断が肯定されるとステップ202に移行し、否定されるとステップ224に移行する。
ステップ200での判断が肯定(本処理ルーチンの前回終了時にクラッチ72が解除状態であったと判断)されると、ステップ202では、ECU86によって、バックルスイッチ92からの信号に基づいて、バックルスイッチ92がオフ状態になったか否かが判断される。この判断が肯定されると、ECU86はウエビングベルト28が乗員の身体から取り外されたと判断し、ステップ204へ移行する。なお、ステップ202での判断が否定された場合には、本処理ルーチンを終了する。
ステップ202での判断が肯定されてステップ204に移行した場合、ECU86では、車外側ドアロックスイッチ102から車外側ロック信号を入力したか否かが判断される。すなわち、車外側ロック信号を入力することは乗員が所謂メカキーによって車外からドアをロックすることであるため、車外側ロック信号を入力した際には、乗員が降車した状態又は降車する準備状態であると判断する。このステップ204での判断が肯定されるとステップ208に移行し、否定されるとステップ206に移行する。
ステップ204での判断が否定されてステップ206に移行した場合、ECU86では、車内側ドアロックスイッチ104から車内側ロック信号を入力したか否かが判断される。すなわち、車内側ロック信号を入力することは乗員が車室内でドアをロックすることであるため、車内側ロック信号を入力した際には、乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であると判断する。このステップ206での判断が肯定されると本処理ルーチンを終了する。すなわち、車内側からドアがロックされた場合には、ウエビングベルト28の巻取り動作及びクラッチ72の連結状態維持動作が実行されない。このため、乗員はスプール20からウエビングベルト28を容易に引き出すことができる。また、ステップ202での判断が否定されたときには、ステップ222に移行する。
一方、ステップ204での判断が肯定されてステップ208に移行した場合、ECU86及びドライバ82によって、モータ60が駆動される。ここでは、モータ60は正転し、クラッチ72では、ギヤ74とアダプタ76とが連結状態とされる。この結果、スプール20はウエビングベルト28の巻取方向に回転され、ウエビングベルト28は強制的に巻き取られる。このように、ウエビングベルト28の巻取りが開始されると、次のステップ210に移行する。
ステップ210に移行すると、回転角センサ88からの検知信号に基づいてスプール20の回転数がウエビングベルト28を全格納した際の巻取量に対応して予め設定された所定回転数となったか否かがECU86で判断される。ここで、ECU86は、検出されたスプール20の回転数に基づいてウエビングベルト28の巻取量を検出し、このウエビングベルト28の巻取量がウエビングベルト28を全格納した際の巻取量であるか否かを判断する。すなわち、スプール20の回転数が増加することはウエビングベルト28の巻取量が増加することであるため、スプール20の回転数が予め設定された所定回転数に達したか否かにより、ウエビングベルト28の巻取量がウエビングベルト28を全格納した際の巻取量に達したか否かが判断される。このようにスプール20の回転数を検出することでウエビングベルト28の巻取量を検出できるので、ウエビングベルト28の巻取量を検出する場合であっても、ウエビングベルト28の巻取量を直接に検出する複雑な装置を必要とせず、簡単な装置構成で容易にウエビングベルト28の巻取量を検出することができる。
このステップ210での判断が肯定された場合には、ウエビングベルト28の巻取数がウエビングベルト28を全格納した際の巻取量に達したと判断され、ステップ212に移行する。一方、このステップ210の判断が否定された場合には、ウエビングベルト28の巻取量がウエビングベルト28の全格納した際の巻取量に達していないと判断され、ウエビングベルト28の巻取りが継続され、ステップ216に移行する。
ステップ210での判断が肯定されてステップ212に移行すると、ECU86及びドライバ82によって、モータ60の駆動が停止される。ここでは、正転していたモータ60は、逆転されることなく、そのまま停止される。このため、クラッチ72では、ギヤ74とアダプタ76との連結状態が保たれる。従って、モータ60はクラッチ72を介してスプール20に連結した状態に維持される。この結果、スプール20の回転が阻止されて、巻き取られたウエビングベルト28がスプール20から引き出されることが阻止される。このため、タングプレートの自重や車両の振動等が生じても、ウエビングベルト28がウエビングベルト巻取装置10から引き出されることがない。従って、ウエビングベルト28の格納後には、ウエビングベルト巻取装置10からウエビングベルト28が引き出されてこのウエビングベルト28に弛みが生じることを阻止できる。すなわち、巻き取られたウエビングベルト28は、全格納の状態のままに保たれる。このため、例えばウエビングベルト28のタングプレートが車室内で不安定に宙吊りになることがなくなり、このウエビングベルト28の車室内の見栄えを向上させることができる。このステップ212の処理が終了すると、モータ60がクラッチ72を介してスプール20に連結した状態のままで次のステップ214に移行する。
ステップ214に移行すると、ECU86では、フラグの値が1から0に書き換えられ、クラッチ72が連結状態であるとして扱われる。このようにフラグの値が0に書き換えられると、本処理ルーチンを終了する。
一方、前述のステップ210での判断が否定されてステップ216に移行した場合には、ロック電流が検出されたか否かが判断される。すなわち、ここでは、バックルスイッチ92がオフ状態となった後に車外側ドアロックスイッチ102からの車外側ロック信号が検出されたにも拘わらず、ウエビングベルト28の巻取り中に乗員が車両に乗車していてウエビングベルト28が引き出されたか否かが判断される。この判断が肯定されるとステップ218に進み、否定されるとステップ210に戻って上述した処理を繰り返す。
ステップ216での判断が肯定されてステップ218に移行すると、ECU86及びドライバ82によって、モータ60は、所定量だけ逆転される。
ここで、モータがクラッチを介してスプールに常に連結しているウエビングベルト巻取装置では、ウエビングベルトをスプールから容易に引き出すことができない。この点、本実施の形態におけるウエビングベルト巻取装置10では、ECU86及びドライバ82によって、モータ60が逆転されてクラッチ72が解除状態とされる。このようにしてクラッチ72を解除状態にした結果、スプール20は回転可能な状態になるため、このスプール20からウエビングベルト28を引き出すことが可能になる。この場合において、渦巻きばね34のみがスプール20をウエビングベルト28の巻取方向に付勢する。この渦巻きばね34の付勢力は乗員非圧迫性に対応した付勢力となっているため、この付勢力の強さは比較的弱く設定されている。従って、車両の座席に着座した乗員がウエビングベルト28を装着する際には、容易にウエビングベルト28をウエビングベルト巻取装置10から引き出してこの乗員の身体に装着することができる。
ウエビングベルト28を装着する際には、ウエビングベルト巻取装置10からウエビングベルト28を引き出して、車両の座席に着座した乗員にこのウエビングベルト28が装着される。この状態では、ウエビングベルト28を基端側から巻き取るスプール20は、渦巻きばね34によってウエビングベルト28の巻取方向に付勢されるので、乗員に装着されたウエビングベルト28に弛みが生じた場合であっても、渦巻きばね34の付勢力に起因するウエビングベルト28の巻取力でこの弛みは取り除かれる。またここで、ウエビングベルト28の巻取力は乗員非圧迫性に対応した強さとなっているので、乗員の身体をウエビングベルト28で圧迫することがない。
このように、ステップ218では、クラッチ72が解除状態とされる。このため、乗員が装着していたウエビングベルト28のタングプレートを一旦バックルから引き抜いてしまった直後でも、再度ウエビングベルト28のタングプレートを上記のバックルに係合させて、乗員の身体にウエビングベルト28を装着させるような状況に対応することができる。以上説明したようなステップ218の処理が終了すると、ステップ220に移行する。
ステップ220では、ECU86及びドライバ82によって、モータ60の駆動が停止される。モータ60の駆動が停止されると、ステップ222に移行する。
ステップ222では、ECU86のタイマのカウント値に基づいて、モータ60の駆動が停止されてから上記予め設定された所定期間内にバックルスイッチ92がオン状態とされたか否かが判断される。すなわち、ここでは、モータ60の駆動が停止されてから所定期間内にウエビングベルト28のタングプレートがバックルに挿入されて係合したか否かを判断する。この所定期間内にタングプレートがバックルに挿入されて係合した場合(肯定判断)には、車両に乗員が乗車しているものとして扱い、フラグの値を変更せずに本処理ルーチンを終了する。一方、この所定期間内にタングプレートがバックルに挿入されず係合しなかった場合(否定判断)には、ステップ208に戻って上述した処理を繰り返す。
また一方、前述のステップ200での判断が否定(FLG=0、すなわち、本処理ルーチンの前回終了時にクラッチ72が連結状態であったと判断)されてステップ224に移行すると、ECU86では、車外側ドアロックスイッチ102から車外側ロック信号が入力されたか否かが判断される。すなわち、ここでは、乗員が降車したか否かが判断される。この判断が肯定されるとステップ226に移行し、否定されるとステップ232に移行する。
ステップ224での判断が否定されてステップ232に移行すると、ECU86では、車内側ロックスイッチ104から車内側ロック信号を入力したか否かが判断される。この判断が肯定された場合、ECU86は、乗員が降車したと判断していたが、実際には上記乗員とは異なる他の乗員が降車せずに乗車していたとして上記判断を修正する。このように上記判断を修正すると、ステップ226に移行する。一方、車内側ロックスイッチ104から車内側ロック信号を入力していない場合(否定判断)には、本処理ルーチンを終了する。
一方、前述のステップ224での判断が否定された場合、あるいはステップ232で肯定判断がなされた場合には、前述のステップ218での処理と同様に、ECU86及びドライバ82によって、モータ60は、所定量だけ逆転されて、クラッチ72が解除状態とされる。すなわち、ここでは、ウエビングベルト28の巻取り動作及びクラッチ72の連結状態維持動作が実行されない。この結果、ステップ218で述べたように、乗員は、ウエビングベルト28を引き出して、自らの身体に装着することができる。このステップ218で乗員がウエビングベルト28を装着した場合には、前述のように、ウエビングベルト28の巻取力は乗員非圧迫性に対応した強さとなっているので、乗員の身体をウエビングベルト28で圧迫することがない。
このようにクラッチ72が解除状態とされると、ステップ228に移行し、ECU86及びドライバ82によって、モータ60の駆動が停止される。モータ60の駆動が停止されると、ステップ230に移行する。
ステップ230に移行すると、ECU86では、フラグの値が0から1に書き換えられ、クラッチ72が解除状態であるとして扱われる。このようにフラグの値が1に書き換えられると、本処理ルーチンを終了する。
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10は、ウエビングベルト28の装着時には乗員の身体を圧迫せず、かつ、ウエビングベルト28の格納後にはこのウエビングベルト28の車室内の見栄えを向上させることができる。
また、ウエビング巻取装置10は、前述の如く、車内側ドアロックスイッチ104がオン状態になったことを検出することで乗員が乗車した状態又は乗車する準備状態であることを検出し、この場合には、ウエビングベルト28の巻取り動作及びクラッチ72の連結維持動作を実行しない。このため、車内側でドアをロックしてもウエビングベルト28をスプール20から容易に引き出すことができる。