JP2006159068A - 缶本体の内面塗装方法および缶本体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 缶本体の内面に、製造コストの増大を抑制しつつ耐加工性に優れ、かつ耐食性に優れる塗膜を形成することができる。
【解決手段】 開口部を有する上部13にネックイン加工が施されて、大径の胴部14の缶軸方向上端に連設されるとともに上方へ向かうに従い漸次縮径された肩部31と、該肩部31の上端に連設されるとともに上方へ延在した口金部34とが形成され、該口金部34に、ねじ成形加工が施されて雄ねじ部32が形成される缶本体10の内面に、塗料を塗布する缶本体10の内面塗装方法であって、前記上部13における少なくとも雄ねじ部32の形成予定部の内面に、耐加工性に優れ、かつ耐食性に優れた第1塗料を塗布する第1塗布工程と、缶本体10の底部11を有する下部12のうち、少なくとも胴部14の内面に、塗れ性または塗装性に優れ、かつ耐食性に優れた第2塗料を塗布する第2塗布工程とを有する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、缶軸方向上部に各種成形加工が施されてボトル缶に成形される缶本体の内面に、塗料を塗布する缶本体の内面塗装方法および缶本体に関するものである。
周知のように、飲料等が充填されて販売される容器として、大径の胴部と、該胴部の缶軸方向上端に連設されるとともに、上方へ向かうに従い漸次縮径された肩部と、該肩部の上端に連設されるとともに、上方へ延在した小径の口金部とを備えるボトル缶が多く採用されている。この種のボトル缶は一般に、前記口金部の缶軸方向中央部に雄ねじ部が形成されるとともに、缶軸方向上端部(開口端部)に径方向外方へ折り返されたカール部が形成され、キャップの内面に備えられたライナーが前記カール部に密接することにより、該ボトル缶の内部が密封された状態で、前記雄ねじ部にキャップが螺着される構成とされている。そして、このようなボトル缶の内面には、例えば下記特許文献1に示されるように、充填される内容物に対して耐腐食性を具備させるための塗膜が形成されている。なお、この塗膜は、ボトル缶の製造コストの低減を図るために、ボトル缶の内面にその全域に亙って薄く均等な厚さで形成されることが望ましい。
以上のように構成されたボトル缶は、金属板にDI加工を施して有底筒状の缶本体を形成した後に、該缶本体の内面に塗料を塗布し、これを乾燥、硬化させて前記塗膜を形成し、その後、該缶本体の開口部を有する上部にネックイン加工、ねじ成形加工、およびカール部形成加工等の各種成形加工が施されることにより形成される。
ところが、これらの成形加工のうち、特にねじ成形加工は、前記口金部の缶軸方向中央部が大きく変形することとなるので、前記塗膜がひび割れたり、剥れたりするおそれがある。この場合、内容物を充填した際にその亀裂から内容物が塗膜内に侵入して、ボトル缶の金属面に内容物が接触することがあり、特に充填する内容物が炭酸飲料や電解質含有飲料であると、それらに含まれる炭酸イオンや塩素イオンなどの腐食性成分により金属製のボトル缶が腐食するおそれがある。
そのため従来から、缶本体の内面にその全域に亙って、下記特許文献2および3に示されるような、耐加工性に優れ、かつ耐腐食性に優れる塗料を塗布して塗膜を形成することがなされていた。
特開2003−191926号公報 特許第3392238号公報 特許第3504635号公報
ところが、前述の耐加工性に優れ、かつ耐腐食性に優れる塗料は、高粘度で塗れ性または塗装性が悪いという性状をも併せ持つため、該塗料を缶本体の内面の全域に亙って薄く均等な厚さで塗布することが困難であるという問題があった。すなわち、この塗料を薄く均等な厚さで缶本体の内面の全域に塗布しようとすると、缶本体の内面(金属面)のうち、前記塗料が塗布されず、該缶本体の金属面が露出する部分が生ずるおそれがあった。
ここで、有底筒状とされた缶本体の内面への塗料の塗布は、その開口部から内面に向けて塗料を噴霧することにより行われるので、缶本体内面において、前記開口部から離れた底部を有する缶本体下部は、特に前記金属面の露出が発生し易いこととなる。
このような金属面の一部露出を防ぐには、前記塗料の塗布量を多くせざるを得ず、この場合、前記塗料が一般に高価であることと相俟って、形成するボトル缶の製造コストが増大するという問題があった。
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、缶本体の内面に、製造コストの増大を抑制しつつ耐加工性に優れ、かつ耐食性に優れる塗膜を形成することができる缶本体の内面塗装方法および缶本体を提供することを目的とする。
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の缶本体の内面塗装方法は、開口部を有する上部にネックイン加工が施されて、大径の胴部の缶軸方向上端に連設されるとともに上方へ向かうに従い漸次縮径された肩部と、該肩部の上端に連設されるとともに上方へ延在した口金部とが形成され、該口金部に、ねじ成形加工が施されて雄ねじ部が形成される缶本体の内面に、塗料を塗布する缶本体の内面塗装方法であって、前記上部における少なくとも前記雄ねじ部の形成予定部の内面に、耐加工性に優れ、かつ耐食性に優れた第1塗料を塗布する第1塗布工程と、当該缶本体の底部を有する下部のうち少なくとも前記胴部の内面に、塗れ性または塗装性に優れ、かつ耐食性に優れた第2塗料を塗布する第2塗布工程とを有することを特徴とする。
また、本発明の缶本体は、開口部を有する上部にネックイン加工が施されて、大径の胴部の缶軸方向上端に連設されるとともに上方へ向かうに従い漸次縮径された肩部と、該肩部の上端に連設されるとともに上方へ延在した口金部とが形成され、該口金部にねじ成形加工が施されて、雄ねじ部が形成される缶本体であって、請求項1から5のいずれかに記載の缶本体の内面塗装方法により、前記第1塗料および前記第2塗料が塗布された後に、これらの塗料を乾燥、硬化して形成された塗膜を有することを特徴とする。
本発明によれば、ねじ成形加工を始めとする各種成形加工(ネックイン加工、カール部形成加工等)が施される缶本体上部において、少なくとも前記雄ねじ部の形成予定部の内面に前記第1塗料を塗布するので、前記成型加工時に、缶本体上部が大きく変形することによって、前記第1塗料からなる塗膜に過大な負荷が作用した場合においても、該塗膜を缶本体の変形に追従させること、すなわち耐加工性を具備させることが可能になり、この塗膜にひび割れや剥離等が発生することを防ぐことができる。
しかも、前記第1塗料が、耐加工性に優れる反面、高粘度で塗れ性または塗装性の悪い性状を有していても、これを塗布する部分が、缶本体の開口端から近い若しくは含む部分、すなわち開口部を有する缶本体上部における少なくとも前記雄ねじ部の形成予定部の内面に限定される一方、前記開口端から離れた部分、つまり当該缶本体の底部を有する下部のうち少なくとも前記胴部の内面は、塗れ性または塗装性に優れ、かつ耐食性に優れる前記第2塗料が塗布されるので、缶本体の内面の全域に亙って、該缶本体の金属面を露出させることなく薄く均等な厚さで塗料を塗布することが可能になる。
以上により、製造コストを増大させることなく、缶本体の内面に耐加工性に優れ、かつ耐食性に優れた塗膜を形成することが可能になる。
ここで、前記第2塗布工程は、前記第1塗布工程を経た後に、前記第1塗料を被覆するように当該缶本体の内面の全域に亙って前記第2塗料を塗布してもよい。
この場合、缶本体の内面において、第2塗料を塗布する領域を位置決めする工数を抑えることが可能になり、容易かつ確実に内面塗装を行うことが可能になる。
また、前記第1塗布工程は、前記上部の内面のうち、当該缶本体の開口端から少なくとも前記雄ねじ部の形成予定部にかけた領域に、前記第1塗料を塗布して塗装膜を形成し、前記第2塗布工程は、前記第1塗布工程を経た後に、前記第1塗料の塗装膜の缶軸方向下端に連なるように前記第2塗料を塗布して塗装膜を形成してもよい。
さらに、前記第2塗布工程は、当該缶本体の底部から少なくとも胴部にかけた領域の内面に、前記第2塗料を塗布して塗装膜を形成し、前記第1塗布工程は、前記第2塗布工程を経た後に、前記第2塗料の塗装膜の缶軸方向上端に連なるように、前記第1塗料を塗布してもよい。
これらの場合、前記第1塗料と第2塗料とが連なるように缶本体の内面に塗布されることとなるので、缶本体の内面における塗料の総塗布量を最小限とすることが可能になり、製造コストの増大を確実に抑えることができる。なお、第1塗料の塗装膜と第2塗料の塗装膜との境界部分は、これらの両塗料が混在した塗装膜としてもよい。
さらにまた、前記第1塗料は、アクリル樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)を重量比(A)/(B)=12/88〜35/65の範囲で共重合して形成されるエポキシアクリル共重合体(イ)[ただし、前記アクリル樹脂(A)は、メタクリル酸30〜60重量%、スチレン35〜70重量%、および任意に含有し得る共重合性モノマー0〜20重量%から構成され;前記エポキシ樹脂(B)は、フェノキシ樹脂が5〜45重量%含有されている];および前記エポキシアクリル共重合体(イ)100重量部に対して1〜7重量部のフェノール樹脂(ロ)からなる樹脂組成物、または、
ポリ塩化ビニルを30〜60重量%、フェノール樹脂を3〜10重量%、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂の共重合体を30重量%以上含有する樹脂組成物、または、
アクリル樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)とが質量比(A)/(B)=12/88〜35/65の範囲で結合したエポキシアクリル共重合体および水性溶媒を含有する樹脂組成物であって、アクリル樹脂(A)が、メタクリル酸単位(a)を20〜60質量%、スチレン単位(b)を35〜70質量%、重合物のガラス転移温度(Tg)が−40℃以下である低Tg重合体形成単量体単位(c)を1〜10質量%含み、エポキシ樹脂(B)が、フェノキシ樹脂(ii)を5〜45質量%含む樹脂組成物とされ、
前記第2塗料は、前記第1塗料が含有するエポキシ樹脂よりも分子量が高いエポキシ樹脂を有するエポキシ−アクリル系樹脂とされていることが望ましい。
この場合、製造コストを増大させることなく、缶本体の内面に耐加工性に優れ、かつ耐食性に優れた塗膜を形成することを確実に実現することができる。
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の第1実施形態として示した缶本体の内面塗装方法の工程図を示すものである。
まず、内面塗装を行う缶本体10について説明する。
図1に示す缶本体10は、缶軸方向中央部に雄ねじ部32が形成されるとともに、缶軸方向上端部が径方向外方へ折り返されて形成されたカール部33を備える口金部34に、図示されないキャップが被着されるボトル缶30を形成するためのものであって、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板に絞り加工、およびしごき加工が施されて有底筒状に形成されている。
この缶本体10は、その内面に後述する塗膜が形成された後に、開口部を有する缶軸方向上部13に、ネックイン加工、ねじ成形加工、およびカール部形成加工等の各種成形加工が施されることによって、図1の二点鎖線に示されるようなボトル缶30に形成される。具体的には、大径の胴部14と、該胴部14の缶軸方向上端に連設されるとともに、上方へ向かうに従い漸次径さ縮れた肩部31と、該肩部31の上端に連設されるとともに、上方へ延在した小径の口金部34とを備えるボトル缶30に形成される。以上の構成において、図示されないキャップの内面に備えられたライナーがカール部33に密接することにより、該ボトル缶30の内部が密封された状態で、雄ねじ部32にキャップが螺着されるようになっている。
ここで、缶本体10の缶軸方向上部(以下、「缶本体上部」という)13とは、形成するボトル缶30における肩部31の形成予定部の缶軸方向下端から缶本体10の開口端(缶軸方向上端)までの部分をいい、該缶本体上部13は、肩部31の形成予定部と、雄ねじ部32の形成予定部と、カール部33の形成予定部とからなる概略構成とされている。一方、缶本体10の缶軸方向下部(以下、「缶本体下部」という)12とは、胴部14の缶軸方向上端(肩部31の形成予定部の下端)から底部11にかけた領域をいう。
以上により、本実施形態の缶本体10は、缶本体上部13と缶本体下部12とで大別されるようになっている。
次に、缶本体10の内面に塗料を塗布する内面塗装装置の概略構成について説明する。
この装置は、缶本体10をその開口部が開放された状態で保持する図示されない保持テーブルと、該保持テーブルに保持された缶本体10の前記開口部からその内面に向けて塗料を噴霧する塗料噴霧手段21とを備えている。前記保持テーブルは、回転軸線回りに回転可能に支持されており、保持された缶本体10が缶軸回りに回転移動できるようになっている。
塗料噴霧手段21は、第1〜第3塗料噴霧手段22〜24を備え、第1塗料噴霧手段22は、缶本体10の底部11から胴部14の下部にかけた領域の内面に塗料を噴霧し、第2塗料噴霧手段23は、缶本体10の内面の全領域に亙って、すなわち底部11からカール部33の形成予定部にかけた領域の内面に塗料を噴霧し、第3塗料噴霧手段24は、前記缶本体上部13のうち、カール部33の形成予定部を除く少なくとも雄ねじ部32の形成予定部における内面に塗料を噴霧するようになっている。また、第1、第3塗料噴霧手段22、24による塗料の噴霧は同一のステーション上でなされ、第2塗料噴霧手段23による塗料の噴霧は他のステーション上でなされるようになっている。すなわち、当該内面塗装装置において、第1、第3塗料噴霧手段22、24は同一位置に配設され、第2塗料噴霧手段23は、これらの噴霧手段22、24とは異なる位置に配設されている。
ここで、第1、第2塗料噴霧手段22、23は、同一の種類または性状を有する塗料を噴霧するようになっており、また第3塗料噴霧手段24はこれとは異なる種類または性状を有する塗料を噴霧するようになっている。具体的には、第1〜第3塗料噴霧手段22〜24により噴霧される塗料(以下、第1、第2塗料噴霧手段22、23により噴霧される塗料を「第2塗料」といい、第3塗料噴霧手段24により噴霧される塗料を「第1塗料」という)は、全て耐食性に優れる性状を有しているが、第1塗料は第2塗料を比べて耐加工性に優れるという性状を特に有し、第2塗料は第1塗料と比べて塗れ性または塗装性に優れるという性状を特に有している。耐加工性に優れる性状とは、塗料を缶本体10の内面に塗布した後、これを乾燥、硬化した塗膜の状態において、該塗膜が缶本体10の変形挙動に追従することができ、この変形によってひび割れ等が発生することを防止できることを意味している。また、塗れ性または塗装性に優れる性状とは、缶本体10の内面に、未塗布部分を生じさせることなく、薄く均等に塗料を塗布することができることを意味している。
なお、これらの第1、第2塗料はともに、水を主成分とする親水性溶媒中に溶解または分散させて均質とされている。
本実施形態の前記第1塗料としては、
(1)アクリル樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)を重量比(A)/(B)=12/88〜35/65の範囲で共重合して形成されるエポキシアクリル共重合体(イ)[ただし、前記アクリル樹脂(A)は、メタクリル酸30〜60重量%、スチレン35〜70重量%、および任意に含有し得る共重合性モノマー0〜20重量%から構成され;前記エポキシ樹脂(B)は、フェノキシ樹脂が5〜45重量%含有されている];および前記エポキシアクリル共重合体(イ)100重量部に対して1〜7重量部のフェノール樹脂(ロ)からなる樹脂組成物、または、
(2)ポリ塩化ビニルを30〜60重量%、フェノール樹脂を3〜10重量%、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂の共重合体を30重量%以上含有する樹脂組成物、または、
(3)アクリル樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)とが質量比(A)/(B)=12/88〜35/65の範囲で結合したエポキシアクリル共重合体および水性溶媒を含有する樹脂組成物であって、アクリル樹脂(A)が、メタクリル酸単位(a)を20〜60質量%、スチレン単位(b)を35〜70質量%、重合物のガラス転移温度(Tg)が−40℃以下である低Tg重合体形成単量体単位(c)を1〜10質量%含み、エポキシ樹脂(B)が、フェノキシ樹脂(ii)を5〜45質量%含む樹脂組成物等が採用される。
一方、前記第2塗料としては、前記第1塗料が含有するエポキシ樹脂よりも分子量が高いエポキシ樹脂を有するエポキシ−アクリル系樹脂が採用され、例えば、ポリ塩化ビニルペースト30〜60重量%、塩化ビニル/酢酸ビニル/プロピオン酸若しくはマレイン酸共重合体30〜70重量%、エポキシ樹脂1〜12重量%およびフェノール樹脂1〜10重量%の組成を有する樹脂組成物等が採用される。
以上のように構成された内面塗装装置により缶本体10の内面に塗料を塗布する方法について説明する。
まず、缶本体10をその開口部が開放された状態で前記保持テーブルに保持し、その後、このテーブルを、前記缶本体10の開口部が第1、第3塗料噴霧手段22、24のノズル孔と対向する位置に移動させる。そして、前記保持テーブルを、缶本体10が缶軸回りに回転するように駆動した状態で、図1(a)に示すように、第1塗料噴霧手段22により、缶本体10の底部11から胴部14の下部にかけた領域の内面に前記第2塗料を約60mg噴霧するとともに、第3塗料噴霧手段24により、前記缶本体上部13のうち、カール部33の形成予定部を除く少なくとも雄ねじ部32の形成予定部における内面に前記第1塗料を約30mg噴霧する(第1塗布工程)。
次に、これらの第1、第2塗料が未だ硬化していない状態で、前記保持テーブルを、缶本体10の開口部が第2塗料噴霧手段23のノズル孔と対向する位置に移動させる。そして、前記第1塗布工程と同様に前記保持テーブルを駆動した状態で、図1(b)に示すように、第2塗料塗布手段23により、缶本体10の内面の全領域に亙って、すなわち底部11からカール部33の形成予定部にかけた領域の内面に、前記第1、第3塗料噴霧手段22、24により塗布した前記第2塗料および第1塗料を被覆するように、均等に前記第2塗料を約160mg噴霧する(第2塗布工程)。
なお、前記第1、第2塗料の塗布量は、内容量410mml用のボトル缶30を形成するための缶本体10(内径66mm、高さ160mm)で適用できるものであり、その総量は約250mgとなる。
そして、前記第1、第2塗料を乾燥、硬化させて、図2に示すように、缶本体10の内面のうち、雄ねじ部32の形成予定部に第1塗料からなる第1塗膜35が形成されるとともに、該第1塗膜35を被覆するように、当該缶本体10の内面の全域に亙って均等な厚さで前記第2塗料からなる第2塗膜36が形成される。その後、この缶本体10の缶軸方向上部13に、ネックイン加工、ねじ成形加工、およびカール部形成加工等を順次を施して前記ボトル缶30を形成する。
ここで、前記ネックイン加工等を施す前の缶本体10における前記第1、第2塗膜35、36の膜厚分布を測定した。結果を図3に示す。この図から明らかなように、缶本体10の開口端部としての、カール部33の形成予定部における膜厚は約55mg/dmとされ、雄ねじ部32の形成予定部における膜厚は約80mg/dmとされ、また肩部31の形成予定部における膜厚は約50mg/dm〜約70mg/dmとされ、胴部14における膜厚は約40〜約50mg/dmとされていることが確認された。すなわち、カール部33の形成予定部における内面に、雄ねじ部32の形成予定部における内面よりも薄く塗料を塗布したことによって、その膜厚を、カール部33の形成予定部の方が、雄ねじ部32の形成予定部よりも薄く形成できることが確認された。また、カール部33の形成予定部に形成された塗膜の厚さは、胴部14に形成された塗膜の厚さ以上とされることが確認された。
以上説明したように本実施形態による缶本体の内面塗装方法によれば、ねじ成形加工を始めとする各種成形加工(ネックイン加工、カール部形成加工等)が施される缶本体上部13において、少なくとも雄ねじ部32の形成予定部の内面に前記第1塗料を塗布するので、前記成型加工時に、缶本体上部13が大きく変形することによって、前記第1塗料からなる第1塗膜35に過大な負荷が作用した場合においても、該塗膜35を缶本体10の変形に追従させること、すなわち耐加工性を具備させることが可能になり、この塗膜35にひび割れや剥離等が発生することを防ぐことができる。
しかも、前記第1塗料が、このように耐加工性に優れる反面、高粘度で塗れ性または塗装性の悪い性状を有していても、これを塗布する部分が、缶本体の開口端から近い若しくは含む部分、すなわち開口部を有する缶本体上部13における少なくとも雄ねじ部32の形成予定部の内面に限定される一方、前記開口端から離れた部分、つまり当該缶本体10の下部12における少なくとも胴部14の内面は、塗れ性または塗装性に優れ、かつ耐食性に優れる前記第2塗料が塗布されるので、缶本体10の内面の全域に亙って、該缶本体10の金属面を露出させることなく薄く均等な厚さで塗料を塗布することが可能になる。
以上により、製造コストを増大させることなく、缶本体10の内面に耐加工性に優れ、かつ耐食性に優れた塗膜35、36を形成することが可能になる。
ここで、本実施形態では、前記第2塗布工程は、前記第1塗布工程を経た後に、前記第1塗料を被覆するように当該缶本体10の内面の全域に亙って前記第2塗料を塗布するので、缶本体10の内面において、第2塗料を塗布する領域を位置決めする工数の増大を抑えることが可能になり、容易かつ確実に内面塗装を行うことが可能になる。
また、図3に示すように、カール部33の形成予定部における内面に、雄ねじ部32の形成予定部における内面よりも薄く塗膜が形成されることとなるので、この缶本体10に基づいて形成されたボトル缶30の上端部における外周面および上端面、すなわちキャップのライナーと密接する塗膜(以下、「カール部の塗膜」という)の厚さを最小限とすることが可能になる。したがって、前記カール部の塗膜の、缶軸回りに回転移動するような変形に対する剛性を高めることが可能になる。これにより、前記ライナーと前記カール部の塗膜とが密接している状態から、キャップ若しくはボトル缶30に対して他方を缶軸回りに回転させた際、つまりキャップ付ボトル缶を開栓する際に、前記カール部の塗膜が、ライナーのボトル缶30に対する回転移動に追従するように変形することを防ぐことが可能になる。以上により、キャップ付ボトル缶を開栓する際に、ライナーを前記カール部の塗膜表面を滑らせることが可能になり、キャップ付ボトル缶に良好な開栓性を具備させることができる。
次に、この発明の第2実施形態について、前記第1実施形態と同様の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ図4および図5に従い説明する。
前述した第1実施形態で示した内面塗装装置を用いて、前記第1塗布工程で、第3塗料塗布手段24により、缶本体上部13の内面のうち、当該缶本体10の開口端から少なくとも雄ねじ部32の形成予定部にかけた領域に、前記第1塗料を塗布して塗装膜を形成する。その後、前記第2塗布工程で、第2塗料塗布手段23により、前記第1塗料の塗装膜の缶軸方向下端に連なるように前記第2塗料を塗布して塗装膜を形成する。そして、前記各塗装膜を乾燥、硬化して、図5に示すように、前記第1塗料からなる第1塗膜37、および該第1塗膜37の下端に連なる第2塗料からなる第2塗膜38を形成する。
本実施形態では、前記第1塗料と第2塗料とが連なるように缶本体の内面に塗布されることとなるので、缶本体10の内面における塗料の総塗布量を最小限とすることが可能になり、製造コストの増大を確実に抑えることができる。なお、第1塗料の塗装膜と第2塗料の塗装膜との境界部分は、これらの両塗料が混在された塗装膜としてもよい。
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、前記第1塗布工程で使用する第1塗料噴霧手段22と第3塗料噴霧手段24とを各別に設けた構成を示したが、例えば同一の本体にノズル孔が2つ設けられた構成を採用してもよい。
また、前記第2実施形態では、第1塗布工程と第2塗布工程とをこの順に経た方法を示したが、これとは逆に、第2塗布工程を経た後に第1塗布工程を経るようにしてもよい。すなわち、前記第2塗布工程は、当該缶本体10の底部11から少なくとも胴部14にかけた領域の内面に、前記第2塗料を塗布して塗装膜を形成し、前記第1塗布工程は、前記第2塗布工程を経た後に、前記第2塗料の塗装膜の缶軸方向上端に連なるように、前記第1塗料を塗布するようにしてもよい。
さらに、前記第1塗料を塗布する部分は、前記実施形態に限らず、缶本体上部13の内面のうち、少なくとも雄ねじ部32の形成予定部を含めれば、カール部33の形成予定部または/および肩部31の形成予定部であってもよい。
缶本体の内面に、製造コストの増大を抑制しつつ耐加工性に優れ、かつ耐食性に優れる塗膜を形成することができる。
本発明に係る第1実施形態において、缶本体の内面塗装方法を示す工程図である。 図1に示す缶本体の内面塗装方法を行って得られた缶本体の一部拡大断面図である。 図1に示す缶本体の内面塗装方法を行って得られた塗膜の膜厚分布を示す図である。 本発明に係る第2実施形態において、缶本体の内面塗装方法を示す工程図である。 図4に示す缶本体の内面塗装方法を行って得られた缶本体の一部拡大断面図である。
符号の説明
10 缶本体
11 底部
12 下部
13 上部
14 胴部
31 肩部
32 雄ねじ部
34 口金部
35、37 第1塗膜
36、38 第2塗膜

Claims (6)

  1. 開口部を有する上部にネックイン加工が施されて、大径の胴部の缶軸方向上端に連設されるとともに上方へ向かうに従い漸次縮径された肩部と、該肩部の上端に連設されるとともに上方へ延在した口金部とが形成され、
    該口金部に、ねじ成形加工が施されて雄ねじ部が形成される缶本体の内面に、塗料を塗布する缶本体の内面塗装方法であって、
    前記上部における少なくとも前記雄ねじ部の形成予定部の内面に、耐加工性に優れ、かつ耐食性に優れた第1塗料を塗布する第1塗布工程と、
    当該缶本体の底部を有する下部のうち少なくとも前記胴部の内面に、塗れ性または塗装性に優れ、かつ耐食性に優れた第2塗料を塗布する第2塗布工程とを有することを特徴とする缶本体の内面塗装方法。
  2. 請求項1記載の缶本体の内面塗装方法において、
    前記第2塗布工程は、前記第1塗布工程を経た後に、前記第1塗料を被覆するように当該缶本体の内面の全域に亙って前記第2塗料を塗布することを特徴とする缶本体の内面塗装方法。
  3. 請求項1記載の缶本体の内面塗装方法において、
    前記第1塗布工程は、前記上部の内面のうち、当該缶本体の開口端から少なくとも前記雄ねじ部の形成予定部にかけた領域に、前記第1塗料を塗布して塗装膜を形成し、
    前記第2塗布工程は、前記第1塗布工程を経た後に、前記第1塗料の塗装膜の缶軸方向下端に連なるように前記第2塗料を塗布して塗装膜を形成することを特徴とする缶本体の内面塗装方法。
  4. 請求項1記載の缶本体の内面塗装方法において、
    前記第2塗布工程は、当該缶本体の底部から少なくとも胴部にかけた領域の内面に、前記第2塗料を塗布して塗装膜を形成し、
    前記第1塗布工程は、前記第2塗布工程を経た後に、前記第2塗料の塗装膜の缶軸方向上端に連なるように、前記第1塗料を塗布することを特徴とする缶本体の内面塗装方法。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の缶本体の内面塗装方法において、
    前記第1塗料は、アクリル樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)を重量比(A)/(B)=12/88〜35/65の範囲で共重合して形成されるエポキシアクリル共重合体(イ)[ただし、前記アクリル樹脂(A)は、メタクリル酸30〜60重量%、スチレン35〜70重量%、および任意に含有し得る共重合性モノマー0〜20重量%から構成され;前記エポキシ樹脂(B)は、フェノキシ樹脂が5〜45重量%含有されている];および前記エポキシアクリル共重合体(イ)100重量部に対して1〜7重量部のフェノール樹脂(ロ)からなる樹脂組成物、または、
    ポリ塩化ビニルを30〜60重量%、フェノール樹脂を3〜10重量%、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂の共重合体を30重量%以上含有する樹脂組成物、または、
    アクリル樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)とが質量比(A)/(B)=12/88〜35/65の範囲で結合したエポキシアクリル共重合体および水性溶媒を含有する樹脂組成物であって、アクリル樹脂(A)が、メタクリル酸単位(a)を20〜60質量%、スチレン単位(b)を35〜70質量%、重合物のガラス転移温度(Tg)が−40℃以下である低Tg重合体形成単量体単位(c)を1〜10質量%含み、エポキシ樹脂(B)が、フェノキシ樹脂(ii)を5〜45質量%含む樹脂組成物とされ、
    前記第2塗料は、前記第1塗料が含有するエポキシ樹脂よりも分子量が高いエポキシ樹脂を有するエポキシ−アクリル系樹脂とされていることを特徴とする缶本体の内面塗装方法。
  6. 開口部を有する上部にネックイン加工が施されて、大径の胴部の缶軸方向上端に連設されるとともに上方へ向かうに従い漸次縮径された肩部と、該肩部の上端に連設されるとともに上方へ延在した口金部とが形成され、
    該口金部にねじ成形加工が施されて、雄ねじ部が形成される缶本体であって、
    請求項1から5のいずれかに記載の缶本体の内面塗装方法により、前記第1塗料および前記第2塗料が塗布された後に、これらの塗料を乾燥、硬化して形成された塗膜を有することを特徴とする缶本体。

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