JP2006153111A - 車輪用軸受装置 - Google Patents

Abstract

【課題】工場を出荷した車輪用軸受装置の追跡（トレース）を容易に行うことができる軸受装置を提供する。
【解決手段】外輪部材３と、この外輪部材３に対して径方向内側で同心に配設される内輪部材５と、前記外輪部材３と内輪部材５との間に設けられる転動体６とを備え、前記外輪部材３と内輪部材５とで形成される環状空間１０の軸方向両端部にシール部１１、１２が配設された車輪用軸受装置。前記シール部１１、１２のうち少なくとも一方は、外輪部材３の内周面又は内輪部材５の外周面のいずれかに嵌合された芯金２０と、この芯金２０の表面に固着された、弾性体からなるシール体２１とを有している。前記シール体２１が固着される芯金２０の表面にＩＣチップ２２が配設されており、このＩＣチップ２２が前記シール体２１で被覆されている。
【選択図】図１

Description

本発明は車輪用軸受装置（以下、単に軸受装置ともいう）に関する。

車輪用軸受装置は、車輪を車体に回転自在に支持するのに用いられているが、この軸受装置には、製品を識別するために、工場を出荷する段階で製造年月日やサイズが刻印されるか、又はレーザでマーキングされている。

ところで、種々の理由により、軸受装置が完成された後、倉庫に在庫として保管されているときや、流通段階、又は最終製品に組み付けられ市場に出た場合等において、軸受装置を検査又は交換する必要が生じた場合、当該軸受装置のシリアルＮｏ．やロットＮｏ．及び数量を特定することが重要となってくるが、現状にあっては、前述したように、製造年月日やサイズの情報しか製品に付されておらず、前記特定に時間がかかる惧れがあることも予想される。
また同一Ｎｏ．のロットであっても、その製品を構成する部品の製作時期が異なっていたりして、設計上の許容範囲内ではあるものの、多少のばらつきがある場合も予想される。
さらに、製品の製造履歴（測定データを含む）の情報が系統的に管理されていないような場合、品質管理に多大な工数を必要とすることが予想される。
このようなことは、例えば１つの製品に対して、前記製造履歴等の情報を記載したシートを作成することで、ある程度改善されるものの、かかる「１品１葉」方式の管理は、煩雑であり、また設備も大がかりとなるため現実的ではない。
なお、ここでのシリアルＮｏ．とは、各製品１個毎に付与された異なる番号であり、ロットＮｏ．とは、所定の期間に所定の工場で製造された複数個の製品の一群に付与された番号である。軸受装置の場合、シリアルＮｏ．が付与される場合もあるが、ロットＮｏ．のみの場合もある。

本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、工場を出荷した製品の追跡（トレース）を容易に行うことができ、検査や交換の必要が生じた場合等において、該当する製品のロットＮｏ．やシリアルＮｏ．及び数量を簡単に特定することができ、さらには品質管理を少ない工数で迅速且つ容易に行うことができる軸受装置を提供することを目的としている。

本発明の軸受装置は、外輪部材と、この外輪部材に対して径方向内側で同心に配設される内輪部材と、前記外輪部材と内輪部材との間に設けられる転動体とを備え、前記外輪部材と内輪部材とで形成される環状空間の軸方向両端部にシール部が配設された車輪用軸受装置であって、
前記両シール部のうち少なくとも一方は、外輪部材の内周面又は内輪部材の外周面のいずれかに嵌合された芯金と、この芯金の表面に固着された、弾性体からなるシール体とを有しており、且つ前記シール体が固着される芯金の表面にＩＣチップが配設され、このＩＣチップが前記シール体で被覆されていることを特徴としている。

本発明の軸受装置では当該軸受装置の軸方向両端部に配設されるシール部の少なくとも一方にＩＣチップが設けられており、このＩＣチップには、製造年月日、製造工場、シリアルＮｏ．やロットＮｏ．、製造履歴等の各種情報を記憶させることができる。そして、このようなＩＣチップは、軸受装置の端部に設けられているので、例えば当該軸受装置が車に搭載されている状況においても、軸受装置を分解して取り出す必要はなく、タイヤをはずす等の比較的簡単な作業により前記ＩＣチップに記憶されているデータ（情報）を読み取ることができる。また、ＩＣチップが破損されていない限り、仮に製品である軸受装置が破損された状態であっても、前記データ（情報）を読み取ることができる。したがって、使用されている軸受装置の製造年月日、シリアルＮｏ．等を容易に特定することができる。また、逆に使用されている軸受装置が含まれる製品のロットＮｏ．及びそのロットＮｏ．の数量を簡単に特定することができる。また、軸受装置の製造履歴を直接ＩＣチップから読み取るか、又はシリアルＮｏ．を介して軸受メーカのデータベースから入手することができるので、品質管理を容易に且つ迅速に行うことができる。
さらに、ＩＣチップはシール部の内部、すなわちシール体で被覆した状態で芯金表面に取り付けられているので、泥水がかかったり、泥があたる等して、当該ＩＣチップが破損するのが防止される。

前記ＩＣチップは、車両アウタ側端部のシール部の芯金表面に配設するのが好ましい。車両インナ側端部のシール部にＩＣチップを配設すると、前記シール部の近傍にパルサーリングを配設し、このパルサーリングを着磁する場合に、前記ＩＣチップに悪影響が及び、当該ＩＣチップに記憶されている内容が正確に読み取れなくなる可能性があるが、車両アウタ側端部のシール部には、このような影響がなく、ＩＣチップの機能を損なうことがない。

本発明の車輪用軸受装置によれば、工場を出荷した製品の追跡（トレース）を容易に行うことができ、検査や交換を行う必要が生じた場合等において、当該車輪用軸受装置を含む製品のロットＮｏ．及び数量を簡単に特定することができ、さらには品質管理を容易且つ迅速に行うことができる。また、ＩＣチップがシール部のシール体で被覆されているので、泥水等によって当該ＩＣチップが破損するのが防止される。

以下、添付図面を参照しつつ、本発明の軸受装置の実施の形態を詳細に説明する。
図１は、本発明の一実施の形態に係る軸受装置を示しており、この軸受装置は、車両における従動輪側の車輪用軸受装置である。前記軸受装置は、車体取付フランジ１を介して車体側に固定されるとともに、その内周面に複列の外輪軌道面２を有する外輪部材３と、この外輪部材３の内径側において当該外輪部材３と同心に配置されるとともに、その外周面に複列の内輪軌道面４を有する内輪部材５と、前記外輪部材３及び内輪部材５の各軌道面２、４間に転動自在に介装された複列の転動体であるボール６とを備えている。前記内輪部材５は、内軸７と、この内軸７の車両インナ側（図１において左側）端部外径に嵌合された別体の内輪構成部材８とで構成されている。内輪部材５は、複列のボール６を介して、前記外輪部材３に回転自在に支持されている。

前記複列のボール６のうち、一方の列のボール６ａは、内軸７の車両アウタ側（図１において右側）の外周面を内輪軌道面４ａとし、他方の列のボール６ｂは、前記内輪構成部材８の外周面を内輪軌道面４ｂとしている。各列のボール６ａ、６ｂは、保持器９によって円周方向に等間隔で保持されている。また、前記外輪部材３の内周面と、内軸７及び内輪構成部材８からなる内輪部材５の外周面との間には、両部材間の環状の軸受空間１０を車両アウタ側及び車両インナ側でそれぞれ密封するためのシール部１１、１２が設けられている。

前記内軸７の車両アウタ側端面には、車輪が取り付けられるインロウ部７ａが形成され、このインロウ部７ａの中央部には凹部１３が形成され、また内軸７の車両アウタ側の外周面には径方向外向きに拡径されたハブフランジ１４が形成されている。そして、前記ハブフランジ１４に複数形成されたボルト孔１４ａに圧入されたハブボルト１５を介してブレーキディスクロータ及び車輪（図示せず）が当該ハブフランジ１４に取り付けられる。

前記外輪部材３の車両インナ側端部の内周面には有底短円筒状のカバー１６が嵌め込まれており、このカバー１６には、車輪の回転速度検出用のセンサ１７を取り付けるためのセンサ取付孔１８が形成されている。そして、内輪構成部材８の車両インナ側端部の外周面に設けられ、当該内輪構成部材８とともに回転するパルサーリング１９の磁性体を前記センサ１７が検知することで車輪の回転速度が検出されるようになっている。

本発明の特徴は、前記外輪部材と内輪部材とで形成される環状空間の軸方向両端部に配設されたシール部の少なくとも一方にＩＣチップが設けられていることであり、本実施の形態では、車両アウタ側端部のシール部１１にＩＣチップが設けられている。より詳細には、前記シール部１１は、外輪部材３の内周面に嵌合された芯金２０と、この芯金２０の表面に固着されており、ゴム又は合成樹脂等の弾性体からなるシール体２１とを有しており、このシール体２１が固着される芯金２０の表面にＩＣチップ２２が配設されている。換言すれば、前記ＩＣチップ２２はシール体２１により被覆されており、前記芯金２０表面の所定箇所にＩＣチップ２２を接着剤等により取り付けた後、ゴム材によりシールを形成することで、当該ＩＣチップ２２をシール部１１内に配設することができる。こうしてＩＣチップ２２はシール部１１の内部、すなわちシール体２１で被覆した状態で芯金２０表面に取り付けられているので、泥水がかかったり、泥があたる等して、当該ＩＣチップが破損するのが防止される。

なお、ＩＣチップ２２は、車両インナ側端部のシール部１２内に配設することもできるが、車両インナ側端部のシール部１２にＩＣチップ２２を配設すると、前記シール部１２近傍のパルサーリングを着磁する場合に、当該ＩＣチップ２２に悪影響が及び、ＩＣチップ２２に記憶されている内容が正確に読み取れなくなる可能性があるので、車両アウタ側端部のシール部１１の芯金表面に配設するのが好ましい。

前記ＩＣチップ２２には、製造年月日、製造工場、シリアルＮｏ．、製造履歴等の各種情報を記憶させることができ、これにより工場を出荷した製品の追跡（トレース）を容易に行うことができる。そして、車輪用軸受装置が車両に取り付けられた後に、検査や交換をする必要が生じた場合等において、前記ＩＣチップ２２の情報を適宜のリーダを用いて読み取ることで、その車両に取り付けられている車輪用軸受装置のシリアルＮｏ．やロットＮｏ．及び同ロットＮｏ．の数量を簡単に特定することができる。これにより、車輪用軸受装置の検査又は交換（部品交換を含む）を迅速且つ正確に行うことができる。また、車輪用軸受装置の製造履歴を直接ＩＣチップから読み取るか、又は読み取ったシリアルＮｏ．又はロットＮｏ．を介して軸受メーカのデータベースから入手することができるので、品質管理を迅速且つ容易に行うことができる。しかも、前記ＩＣチップ２２は、車両アウタ側端部のシール部１１内に設けられているので、軸受装置が車に搭載されている状況においても、当該軸受装置を分解して取り出す必要はなく、タイヤをはずす等の比較的簡単な作業により前記ＩＣチップ２２に記憶されているデータ（情報）を読み取ることができる。また、ＩＣチップ２２が破損されていない限り、仮に製品である軸受装置が破損された状態であっても、前記データ（情報）を読み取ることができる。

なお、本明細書において、製造履歴とは、当該製品の製造に関するあらゆる情報を含み得るものであり、例えば構成要素（部品）情報、全体情報を例としてあげることができる。より詳細には、構成要素（部品）情報とは、軸受装置を構成する部品それぞれに関する情報であり、例えば内輪部材、外輪部材、ボール等の各設計値、実測値、製造番号、素材等の情報であり、また、かかる構成要素（部品）情報には、軸受装置に使用される潤滑油の種類や量、さらには内輪部材と外輪部材との間の環状空間をシールするシール部の素材等に関する情報も含まれる。また、全体情報とは、完成品としての軸受装置に関する情報であり、製造時の軸受幅やすきま等の各寸法データ、フランジの振れ精度、かしめ条件、音検査データ、センサ出力検査データ等の製造工程で行った各種測定のデータのことである。

このように、部品情報を含む製造履歴を容易に入手できるようにすることで、例えば同一形式の部品が複数の種類の車輪用軸受装置に使用されているような場合、この部品を含む他の機種についても迅速に点検、補修又は交換の対象とすることができる。

なお、前述した実施の形態は従動輪側の車輪用軸受装置であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、駆動輪側の軸受装置にも適用可能であることはいうまでもない。また、図示した例は、内輪回転タイプの軸受装置であるが、外輪回転タイプの軸受装置にも適用可能であり、この場合、シール部の芯金は内輪部材の外周面に嵌合される。また、転動体として円すいころを用いた形式のものにも適用できる。さらに、前述した実施の形態は、いわゆる第３世代の軸受装置に属するが、第２世代等他の世代の軸受装置にも本発明を適用することができる。

本発明の軸受装置の一実施の形態の断面説明図である。 図１に示される軸受装置における車両アウタ側端部のシール部の拡大図である。

符号の説明

３外輪部材
５内輪部材
６ボール（転動体）
７内軸
１１車両アウタ側端部のシール部
２０芯金
２１シール体
２２ＩＣチップ

Claims (2)

1. 外輪部材と、この外輪部材に対して径方向内側で同心に配設される内輪部材と、前記外輪部材と内輪部材との間に設けられる転動体とを備え、前記外輪部材と内輪部材とで形成される環状空間の軸方向両端部にシール部が配設された車輪用軸受装置であって、
   前記両シール部のうち少なくとも一方は、外輪部材の内周面又は内輪部材の外周面のいずれかに嵌合された芯金と、この芯金の表面に固着された、弾性体からなるシール体とを有しており、且つ前記シール体が固着される芯金の表面にＩＣチップが配設され、このＩＣチップが前記シール体で被覆されていることを特徴とする車輪用軸受装置。
2. 車両アウタ側端部のシール部の芯金表面にＩＣチップが配設されている請求項１に記載の車輪用軸受装置。

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