JP4408766B2

JP4408766B2 - Ｉｃタグ付き車輪用軸受装置

Info

Publication number: JP4408766B2
Application number: JP2004222911A
Authority: JP
Inventors: 晃鳥居; 孝誌小池; 智海石河
Original assignee: NTN Corp
Current assignee: NTN Corp
Priority date: 2004-07-30
Filing date: 2004-07-30
Publication date: 2010-02-03
Anticipated expiration: 2024-07-30
Also published as: JP2006038189A

Description

この発明は、非接触通信により交信が可能なＩＣタグを取付けたＩＣタグ付き車輪用軸受装置に関する。

非接触で交信が可能なＲＦＩＤ技術を用いたＩＣタグは、小型化が進み、物流関係で広く使用されてきている。また、近年、トレーサビリティの要求、つまり考慮の対象となっているものの履歴、適用、または所在を追跡できることの要求が高くなってきており、歯車やその他各種の機械部品において、ＩＣタグを取付け、ＩＤコードやこれに関連付けた各種の情報を記憶させて管理することが提案されている（例えば特許文献１）。

車輪用軸受装置は、自動車の足周り部品であるため、安全確保等のため、識別情報や履歴情報を、使用後にも定期点検時や自動車の故障時等において知りたいことが多くある。車輪用軸受装置において、識別情報の管理は、各部の刻印と、軸受メーカーや自動車メーカーによるコンピュータ管理，帳簿管理等で行われている。

また、従来、車輪用軸受装置において、第４世代型のものでは、ハブ輪と等速自在継手とを一体化し、これらハブ輪と等速自在継手とに複列の軌道面における各列の軌道面を形成している。第４世代型の車輪用軸受装置では、等速自在継手外輪のステム部を拡径させて軸受に予圧を与えている。第３世代型の車輪用軸受装置は、ハブ輪の一端に内輪を嵌合させ、これらハブ輪および内輪に各列の軌道面を形成したものであるが、ハブ輪の端部の加締によって前記内輪をハブ輪に軸方向に固定し、予圧を与えるようにしたものがある。この予圧付与により、適正な軸受剛性を確保すると共に、回転抵抗の低減を図っている。予圧量は、軸受性能に大きく影響するため、製造時に厳しく管理されている。

一方、車輪用軸受装置において、回転センサや変位センサ等の各種センサを設け、自動車の走行姿勢制御等に用いることが提案されている（例えば特許文献２）。
特開２００２−０４９９００号公報特開２００１−０２１５７７号公報

車輪用軸受装置において、定期点検やその他の必要時の点検を行う場合に、軸受の製造番号がわかれば、その軸受についての各種の情報を調べることができる。また、車輪用軸受装置に刻印されている製造番号、あるいは製造年、製造場所の情報からも軸受についての各種の情報を調べることができる
しかし、車輪用軸受装置に刻印等で付された製造番号や製造年，製造場所等の情報は、ナックル等から分解してみないとわからない。そのため、分解および再組立に時間かかかる。

また、車輪用軸受装置は、上記のように予圧を与えるが、使用する間に予圧が低下することがある。予圧抜けは、負荷圏の狭まりによる面圧の上昇を招き、軸受寿命の低下に繋がる。上記の加締によって予圧を与える形式の車輪用軸受装置では、製造時には予圧が厳しく管理されるが、その後の予圧の管理がなされていない。定期点検等において、予圧を測定する場合に、軸受製造時の初期予圧設定量が分かれば、予圧管理が容易であるが、定期点検等で初期予圧設定量を調べることは、製造元に問い合わせることが必要であり、煩雑な作業となる。

車輪用軸受装置において、上記のように各種のセンサを設けたものは、自動車の走行姿勢制御等の高機能化につながるが、実際の適用にあたって、センサには感度の違い等がある。そのため、走行姿勢制御等の制御機能を良好に動作させるには、手間のかかる調整作業が必要な場合である。

特許文献１に示されるＩＣタグを取付ける提案例は、一般的な機械部品を対象としたものであり、取付対象として各種の機械部品が例示されているが、車輪用軸受装置についての開示はない。

この発明の目的は、加締により予圧を付与した車輪用軸受装置において、その軸受についての情報を容易に確認することができるＩＣタグ付き車輪用軸受装置を提供することである。特に、予圧量または軸受隙間の確認が容易に行えるようにすることである。
この発明の他の目的は、ＩＣタグの効果的な利用により、荷重センサを有する車輪用軸受装置において、その荷重センサの検出信号から車両の適正な制御が行えるように設定する処置の容易化を図ることである。

この発明のＩＣタグ付き車輪用軸受装置は、内周に複列の軌道面を有する外方部材と、前記軌道面に対向する軌道面を外周に有する内方部材と、両列の軌道面間に介在した複列の転動体とを有し、前記内方部材が、車輪取付用のフランジを有するハブ輪と、このハブ輪に結合された別部材とでなり、前記ハブ輪および前記別部材に前記各列の軌道面が形成され、前記別部材が前記ハブ輪に加締により結合されてこの加締により軸受の予圧が付与された車輪用軸受装置において、この車輪用軸受装置に非接触で交信が可能なＩＣタグを取付けたことを特徴とする。
この構成によると、車輪用軸受装置にＩＣタグを取付けたので、車輪用軸受装置の識別情報や製造情報を記録したり、さらにＩＣタグに製造履歴情報を記録ことも可能になる。ＩＣタグには非接触更新型のものを用いるため、適宜のＩＣタグリーダを用いることにより、車両から車輪用軸受装置を取り外すことなく、記録情報を読み出すことができる。そのため、定期点検時やその他の必要時に、車輪用軸受装置について知りたい情報を容易に知ることができる。特に、この発明は、内方部材がハブ輪と別部材とでなり、加締によって予圧が与えられた形式の車輪用軸受装置において、上記ＩＣタグを取付けたため、組立時に加締によって軸受に付与される予圧関連情報をＩＣタグに容易に書き込んでおき、その予圧関連情報を必要に応じてＩＣタグから容易に読み出すことができる。したがって、定期点検等において、予圧抜け等を管理することで、軸受寿命の向上等を図ることができる。

前記別部材が、等速自在継手の一方と継手部材となる外輪であり、この外輪の有する中空軸状のステム部を前記内方部材に設けられた中央孔に挿通し、前記ステム部を拡径することにより前記ハブ輪と前記別部材との結合のための加締を行ったものである。

この発明において、前記別部材が、前記ハブ輪のインボード側端の外周に形成された内輪嵌合部に嵌合する内輪であり、前記ハブ輪の前記内輪よりもインボード側に突出した部分を外径側に加締めた加締部により、前記ハブ輪と前記別部材との結合のための加締を行ったものであっても良い。

これら別部材が等速自在継手の外輪や、軸受内輪である場合に、前記ＩＣタグに、前記加締の後の軸受隙間および予圧量の少なくとも一方を記憶させても良い。
軸受組立時の軸受隙間や予圧量等をＩＣタグに記憶させておくことで、定期点検時等における測定値を、軸受組立時の軸受隙間や予圧量と比較することができ、予圧管理が容易に行える。また出荷前の検査等において、軸受組立時の軸受隙間や予圧量を比較したり、確認することができる。

この発明において、前記外方部材と前記内方部材との間の軸受空間の両端をそれぞれ密封する一対のシールを設け、これらシールのうち、インボード側のシールに前記ＩＣタグを取付けても良い。
インボード側のシールにＩＣタグを取付けることにより、ＩＣタグに対する読み出しや書き込みが容易に行える。また、シールにＩＣタグを取付ける場合、外方部材や内方部材に取付ける場合に比べて取付が容易に行える。

前記インボード側のシールが、外方部材の端面または外径面に位置するゴムまたは合成樹脂の部分を有するものとし、この部分に前記ＩＣタグを取付けても良い。
一般的なＩＣタグは、金属表面に取付ける場合、電波吸収の処置を施す必要があるが、シールのゴムまたは合成樹脂の部分を利用してＩＣタグを取付けることで、電波吸収の処置を不要とでき、あるいは軽減できる。また、ゴムまたは合成樹脂の成形時にＩＣタグを埋め込み状態に取付けることもでき、これにより生産性の向上が図れる。

前記別部材が、等速自在継手の一方と継手部材となる外輪である場合に、前記外方部材に両列の軌道面間に位置して軸受空間内に突出する複合センサ部を設け、この複合センサ部は、前記内方部材の外周に設けられたエンコーダを検出する回転センサと、前記内方部材の外周に設けられた被検出部に対するアキシアル方向の変位を検出する変位センサとを有し、前記複合センサ部にメモリまたは前記ＩＣタグを組み込む。
この構成の場合、回転センサで車輪の回転を検出でき、変位センサで車輪にかかる荷重を検出できる。前記変位センサを利用し、ハブ輪へ別部材を加締める前の変位センサと被検出部との軸方向隙間をメモリまたはＩＣタグに記憶させておき、加締後に変位センサで検出した変位から前記軸方向隙間の減少量を求め、この減少量から軸受に付与した予圧量を求めることができる。また、前記軸受内部隙間の減少量に、予め記憶していた加締前の軸受内部隙間を加えることにより、最終的な製品の軸受内部隙間を求めることができる。求められた軸受内部隙間および予圧量のいずれか一方、あるいは両方を、前記ＩＣタグに書き込むことができる。前記メモりを設ける場合は、ＩＣタグを車輪用軸受装置のどこかに設けておき、前記軸受内部隙間および予圧量のいずれか一方、あるいは両方をそのＩＣタグに書き込んでおく。

前記のように複合センサを設ける場合に、前記内方部材の外周に、円筒状部およびこの円筒状部の一端から外径側へ延びるフランジ部を有する断面Ｌ字型の被検出部構成部品を設け、この被検出部構成部品は、前記内方部材における前記ハブ輪の部分に前記フランジ部がインボード側に位置するように圧入して取付けても良い。この場合に、前記被検出部構成部品の前記円筒状部の外周に前記エンコーダとなる磁気エンコーダを設ける。
前記被検出部構成部品は、ハブ輪に圧入させる代わりに、等速自在継手の外輪に圧入しても良い。
このように断面Ｌ字型の被検出部構成部品を設けると、変位センサによる軸受内部隙間の検出が容易に行える。

この発明における他のＩＣタグ付き車輪用軸受装置は、内周に複列の軌道面を有する外方部材と、前記軌道面に対向する軌道面を外周に有する内方部材と、両列の軌道面間に介在した複列の転動体とを有し、前記内方部材が、車輪取付用のフランジを有するハブ輪と、このハブ輪に結合された別部材とでなり、前記ハブ輪および前記別部材に前記各列の軌道面が形成され、前記別部材が前記ハブ輪に加締により結合されてこの加締により軸受の予圧が付与された車輪用軸受装置において、この車輪用軸受装置に非接触で交信が可能なＩＣタグを取付け、内方部材の外方部材に対する回転を検出する回転センサ、および車輪用軸受装置に作用する荷重を検出する荷重センサとを有する複合センサ部を設け、この複合センサ部にＩＣタグを組み込み、この組み込まれたＩＣタグに、前記荷重センサの感度の情報を記憶させたことを特徴とする。

この発明のＩＣタグ付き車輪用軸受装置は、加締により予圧を付与した車輪用軸受装置に非接触更新型のＩＣタグを取付けたものであり、前記別部材が、等速自在継手の一方と継手部材となる外輪であり、この外輪の有する中空軸状のステム部を前記内方部材に設けられた中央孔に挿通し、前記ステム部を拡径することにより前記ハブ輪と前記別部材との結合のための加締を行ったものであり、前記外方部材に両列の軌道面間に位置して軸受空間内に突出する複合センサ部を設け、この複合センサ部は、前記内方部材の外周に設けられたエンコーダを検出する回転センサと、前記内方部材の外周に設けられた被検出部に対するアキシアル方向の変位を検出する変位センサとを有し、前記複合センサ部にメモリまたは前記ＩＣタグを組み込んだため、その軸受についての情報をＩＣタグに記録しておいて、非接触で読み出し、点検等に利用することができる。特に、予圧量や軸受隙間をＩＣタグに記録しておくことで、軸受の予圧管理が容易にかつ適切に行え、軸受寿命の向上を図ることができる。

この発明の第１の参考提案例を図１ないし図５と共に説明する。図１は、この実施形態に係るＩＣタグ付き車輪用軸受装置の断面図を示す。この車輪用軸受装置は複列のアンギュラ玉軸受形式のものであって第４世代型に分類されるものである。なお、この明細書において、車両に取付けた状態で車両の車幅方向外側寄りとなる側をアウトボード側と言い、車両の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。図１では、左側がアウトボード側、右側がインボード側となる。
この車輪用軸受装置は、内周に複列の軌道面１ａを有する外方部材１と、これら各軌道面１ａに対向する軌道面２ａを有する内方部材２と、これら外方部材１および内方部材２の軌道面１ａ，２ａ間に介在した複列の転動体５とで構成される。各列の軌道面１ａ，２ａは断面円弧状とされ、接触角が互いに背面合わせとなるように形成されている。各列の転動体５はボールからなり、各列毎に保持器６により保持されている。外方部材１と内方部材２との間に形成される環状空間の両端は、接触シール７，８によりそれぞれ密封されている。

外方部材１は固定側の部材となるものであって、ナックル（図示せず）に固定するための車体取付用フランジ１ｂを外周に有し、全体が一体の部材とされている。前記車体取付フランジ１ｂは、車体（図示せず）に設置されたナックルに周方向複数箇所のボルト（図示せず）で締結される。
内方部材２は回転側の部材となるものであって、アウトボード側端に車輪取付用フランジ３ａを有するハブ輪３と、このハブ輪３に結合された別部材である等速自在継手１３の一方の継手部材となる外輪１３ａとからなる。外方部材１の軌道面１ａに対向する複列の軌道面２ａのうちの各列の軌道面２ａが、ハブ輪３および等速自在継手外輪１３ａのそれぞれに設けられている。等速自在継手外輪１３ａは中空軸状のステム部１４を有し、このステム部１４をハブ輪３に設けられた中央孔９に挿通し、ステム部１４を拡径することにより、ハブ輪３と等速自在継手外輪１３ａとの結合のための加締が行われる。また、この加締により軸受の予圧が付与されている。

インボード側の接触シール７は、図２に拡大断面図で示すように、スリンガ１５と、これに対向するシール要素８Ａとでなる。スリンガ１５は、円筒部１５ａと立板部１５ｂとでなる断面Ｌ字状のリング部材であり、内方部材２の外径面、詳しくは等速自在継手外輪１３ａの外径面に嵌合している。シール要素８Ａは、芯金１６とこの芯金１６に固着された弾性部材１７とでなる。芯金１６は、円筒部１６ａと立板部１６ｂとでなり、スリンガ１５に対向して外方部材１の内径面に嵌合している。弾性部材１７はゴムまたは合成樹脂からなり、その一部として軸受空間の内外に位置する３枚のシールリップ１７ａ〜１７ｃを有している。前記シールリップ１７ａ〜１７ｃは、先端が内方部材２とスリンガ１５に接触するように形成されている。

この弾性部材１７に、芯金円筒部１５ａの端部から径方向に延びて外方部材１の端面に接する外径延長部１７ｄを設け、この外径延長部１７ｄに、非接触交信型のＩＣタグ１０が埋込み状態に設けている。
なお、同図の例のスリンガ１５は、回転センサの被検出部となる磁気エンコーダ１５ｃを設けたものを示しており、磁気エンコーダ１５ｃに対向して磁界センサ（図示せず）が外方部材１に取付けられる。スリンガ１５は、磁気エンコーダ１５ｃを有しないものであっても良い。

インボード側の接触シール８は、この他に、図３のように構成されたものであっても良い。このシール８は、図２における芯金１６の円筒部１６ａを、図３のように図２の場合と軸方向逆向きに延長させて外方部材１の外径面に嵌合させたものである。このシール８における弾性部材１７の前記芯金円筒部１６ａの外周を覆う部分１７ｅに、ＩＣタグ１０を埋込み状態に設けても良い。この場合には、接触シール８の全体が、内外の部材２，１の間に形成される環状空間から露出するので、弾性部材１７に、スリンガ立板部１５ｂの先端に近接する軸方向延長部１７ｆを形成して、接触シール８のシール性能を確保するのが好ましい。

これら図２，図３の例のように、インボード側の接触シール８にＩＣタグ１０を取付けることにより、ＩＣタグ１０に対する電波等による非接触交信が容易に行える。

図４は、前記ＩＣタグ１０とタグリーダ／ライタ２２の概略を示す。ＩＣタグ１０は、非接触で交信して情報の記録および読取りが可能なものであり、同図のようにＩＣチップ（集積回路のチップ）２０と、アンテナ２１とで構成される。このＩＣタグ１０に対する情報の書込みおよび読出しは、タグリーダ／ライタ２２によって行われる。ＩＣタグリーダ／ライタ２２は、ＩＣタグ１０に対向させるアンテナ２３を有している。ＩＣタグ１０への情報の書込みの場合は、データベース１１により、端末１２を介して行っても良い。ＩＣタグ１０のＩＣチップ２０とアンテナ２１は、例えば樹脂（図示せず）で一体に包装される。ＩＣタグは種々の形式，形状，大きさのものがあり、短冊状や板状の物のほか、例えば１mm未満の大きさの角状や球状のものなどがある。また、対象物に直接に印刷等で形成されるＩＣタグもある。記憶容量も種々異なるものがあるが、用途や取付対象の大きさ，種類等に応じて適宜選択すれば良い。

ＩＣタグ１０としては、例えばＲＦＩＤ（無線周波数認識：Radio Frequency Identification）技術を応用したＲＦＩＤタグが利用できる。ＲＦＩＤ形式のＩＣタグは、伝送方式として静電結合、電磁結合、電磁誘導、マイクロ波、光などを用いる形式のものがあり、このうちいずれの形式のものを用いても良い。例えば電磁誘導形式のもの、またはマイクロ波のものが用いられる。

図５はＩＣタグ１０の具体的回路例を示す。このＩＣタグ１０のＩＣチップ２０は、中央処理装置（ＣＰＵ）２４、メモリ２５、送受信回路２６、および電源回路２７を有しており、電源回路２７はアンテナ２１から電源を得るものとされている。メモリ２５は、情報の記憶に電源が不要なものが用いられる。

上記構成の車輪用軸受装置によると、その組込み時に、内方部材２のハブ輪３への等速自在継手外輪１３ａの結合において、加締により軸受に付与される予圧量を、ＩＣタグ１０に容易に書き込むことができる。また、その予圧量の情報は、必要に応じてＩＣタグ１０から容易に読み出すことができる。この参考提案例では、図２や図３のように、インボード側の接触シール８の弾性部材１７における外方部材端面や外径面側に露出する部分１７ｄ，１７ｅにＩＣタグ１０を埋め込んでいるので、ＩＣタグ１０への上記情報の書込みや読出しにおいて、交信を確実に行うことができる。

なお、この参考提案例において、車輪用軸受装置に作用する荷重を検出する荷重センサ（図示せず）を別に設け、この荷重センサの感度の情報を前記ＩＣタグ１０に記憶させるようにしても良い。この場合、ＩＣタグ１０に記憶させた荷重センサの感度情報を読み出して自動車のＥＣＵ側に書き込むことにより、その感度情報を走行時の荷重検出処理において利用することができる。

図６および図７はこの発明の実施形態を示す。この実施形態のＩＣタグ付き車輪用軸受装置は、図１〜図５に示した第１の参考提案例において、図６（Ａ）のように、外方部材１に、その両列の軌道面１ａ間に位置して軸受空間内に突出する複合センサ部２８を設けている。この複合センサ部２８にＩＣタグ１０またはメモリ２５Ａを組み込んでいる。複合センサ部２８にＩＣタグ１０とは別のメモリ２５Ａを組み込む場合は、図１〜図５と共に説明したようにＩＣタグ１０をシール８にＩＣタグを取付けるか、または車輪用軸受装置における他の何処かにＩＣタグ１０を取付ける。

複合センサ部２８は、図６（Ｂ）に拡大して示すように、内方部材２の外周に設けられたエンコーダ３０を検出する回転センサ３１と、内方部材２の外周に設けられた被検出部２９ｂに対するアキシアル方向の変位を検出する変位センサ３２とを有する。これら回転センサ３１、変位センサ３２、およびＩＣタグ１０またはメモリ２５Ａを一緒に樹脂モールドすることで、複合センサ部２８が構成されている。

内方部材２の外周には、円筒状部２９ａおよびこの円筒状部２９ａの一端から外径側へ延びるフランジ部２９ｂを有する断面Ｌ字形の環状部材からなる被検出部構成部品２９が設けられる。この被検出部構成部品２９は、そのフランジ部２９ｂがインボード側に位置するように、円筒状部２９ａを内方部材２におけるハブ輪３の外周に圧入して取付けられる。被検出部構成部品２９のフランジ部２９ｂが前記変位センサ３２の被検出部とされる。被検出部構成部品２９の円筒状部２９ａの外周には、前記回転センサ３１の被検出部であるエンコーダ３０として磁気エンコーダが設けられ、このエンコーダ３０に対して径方向に対面するように回転センサ３１が配置される。前記磁気エンコーダは、円周方向に磁極Ｎ，Ｓを所定間隔で交互に並べた多極磁石からなる。

変位センサ３２は、例えばヨークにコイルを巻回したリラクタンス型とされ、前記被検出部構成部品２９のフランジ部（被検出部）２９ｂとの軸方向隙間の変化を検出する。回転センサ３１は、ホール素子や磁気抵抗素子などの磁性体センサからなり、内方部材２と一体に回転する前記エンコーダ３０の磁気変化を検出する。

図７は、前記複合センサ部２８のＩＣタグ１０を設けた場合の概略回路構成を示すブロック図である。回転センサ３１の検出信号や、変位センサ３２の検出信号は、それぞれＡ／Ｄ変換器３３でディジタル信号に変換されてＩＣタグ１０の中央演算装置（ＣＰＵ）２４に入力される。この場合、ＩＣタグ１０には外部入力端子を有するものが用いられ、その外部入力端子にＡ／Ｄ変換器３３の出力が入力される。なおＩＣタグ１０を設けずに、独立したＣＰＵ２４Ａ、メモリ２５Ａ、および送受信回路２６Ａを設けても良い。

この実施形態の車輪用軸受装置では、ハブ輪３へ等速自在継手外輪１３ａを加締める前の変位センサ３２と被検出部構成部品２９のフランジ部（被検出部）２９ｂとの軸方向隙間（軸受内部隙間）をメモリ２５ＡまたはＩＣタグ１０に記憶させておき、加締後に変位センサ３２で検出した変位から前記軸受内部隙間の減少量を求め、この減少量から軸受に付与した予圧量を求める。また、前記軸受内部隙間の減少量に、予め記憶していた加締前の軸受内部隙間を加えて、最終的な製品の軸受内部隙間を求める。求められた軸受内部隙間および予圧量は、複合センサ部２８のＩＣタグ１０、または他の箇所に取付けたＩＣタグ１０に記憶させる。
変位センサ３２の出力は、自動車のＥＣＵ等に設けられた走行姿勢制御手段（図示せず）等に入力され、走行姿勢の制御に利用される。この場合に、変位センサ３２の感度の情報をＩＣタグ１０に記憶させておくことで、変位センサ３２の感度情報を自動車のＥＣＵに転送し、変位センサ３２の出力を適切な値に補正して前記姿勢制御等を精度良く行うことができる。

なお、この実施形態では、被検出部構成部品２９を内方部材２のハブ輪３に圧入して設けた場合を示したが、これに限らず、内方部材２の別部材である等速自在継手外輪１３ａに圧入して設けても良い。この場合にも、変位センサ３２と被検出部構成部品２９のフランジ部（被検出部）２９ｂとの軸方向隙間の変位から軸受内部隙間および予圧量を求めてＩＣタグ１０に記憶できる。

図８は、この発明のさらに他の参考提案例を示す。この参考提案例は第３世代型の車輪用軸受装置に適用した例であり、図８（Ａ）に示すように、内方部材２が、ハブ輪３と、このハブ輪３のインボード側の端部外径面に嵌合した別体部材である内輪４とからなる。ハブ輪３には等速自在継手外輪１３ａが連結されている。内方部材２のハブ輪３は、ハブ輪３のインボード側端部に設けられた加締部３ｂにより、ハブ輪３に対して軸方向に締め付け固定される。また、等速自在継手外輪１３ａのハブ輪３への連結は、ワッシャ４１およびスペーサ４２を介してボルト４３を等速自在継手外輪１３ａのステム部１４の中央に設けられたねじ孔１４ａに螺合させることにより行っている。すなわち、前記ワッシャ４１がハブ輪３の中央孔９の段面９ａに当接するように配置されると共に、中央孔９には前記ワッシャ４１とステム部１４とで挟まれるようにスペーサ４２が配置される。前記ワッシャ４１およびスペーサ４２に挿通されるボルト４３をステム部１４のねじ孔１４ａに螺合させることで、ハブ輪３の前記加締部３ｂと等速自在継手外輪１３ａの段面１３ａａとの間に軸方向隙間が確保される。これにより、軸受に軸方向の荷重が加わったときに、内方部材２と等速自在継手外輪１３ａとの間の相対回転が阻害されないようにされている。ハブ輪３の中央孔９に対して、等速自在継手外輪１３ａのステム部１４はスプライン嵌合される。

この参考提案例では、図８（Ａ）の一部を拡大して示す図８（Ｂ）のように、歯付きリング３５と磁気センサ３６の組み合わせからなる荷重センサ３４を設けている。歯付きリング３５は、内輪３のインボード側端部の外径面に圧入された第１のリング３７と、等速自在継手外輪１３ａの外径面に圧入され前記第１のリング３７と軸方向に近接して対向する第２のリング３８とでなる。これら両リング３７，３８は同じ外径とされ、それらの互いに向き合う端部には、図８（Ｃ）に平面図で示すように、周方向に一定間隔で並ぶ複数の凹凸部３７ａ，３８ａが形成されている。これら両凹凸部３７ａ，３８ａは位相が同相にならないように設定されている。また、磁気センサ３６は、前記両リング３７，３８に跨がる位置にこれら両リング３７，３８に対して径方向に対向して配置される第１の磁気センサ３６Ａと、この磁気センサ３６Ａと軸方向に隣接して第２のリング３８の凹凸部３８ａから外れた部分に対して径方向に対向して配置される第２の磁気センサ３６Ｂとからなる。これら両磁気センサ３６Ａ，３６Ｂは外方部材１の内周に取付けられる。これら磁気センサ３６Ａ，３６Ｂは、ヨークにコイルを巻回してなるリラクタンス型とされている。

インボード側の接触シール８は、図３におけるスリンガ１５を省略したものであり、そのシールリップ１７ａ〜１７ｃを、等速自在継手外輪１３ａの外周に設けた段差面１３ａｂに摺接させることにより、インボード側のシール性が確保されている。この接触シール８における弾性部材１７のインボード側に向く側面にＩＣタグ１０が埋め込まれている。このＩＣタグ１０に、前記加締により軸受に付与される予圧量と、荷重センサ３４の感度の情報とが記憶される。

この参考提案例では、車輪に前後方向の荷重が作用すると、歯付きリング３５の両凹凸部３７ａ，３８ａの位相が変化することで磁気抵抗が変化するので、荷重の変化に応じた電圧が第１の磁気センサ３６Ａのコイル巻線から得られる。
これに対して、パルサング３５における第２のリング３８の凹凸部３８ａ以外の部分に対向する第２の磁気センサ３６Ｂのコイル巻線からは、荷重の変化に応じた電圧の変化は得られず、その出力は、温度補償用として機能する。これら両コイル巻線の電圧差から軸受に作用する荷重が精度良く得られる。
前記のようにＩＣタグ１０に記憶された荷重センサ３４の感度は、自動車のＥＣＵに転送することで、ＥＣＵにおける荷重センサ３４の出力を適切な値に補正し、走行姿勢制御手段（図示せず）を設けた場合等に、その制御を精度良く行うことができる。

図９は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態のＩＣタグ付き車輪用軸受装置は、図８に示す実施形態において、歯付きリング３５と磁気センサ３６とからなる荷重センサ３６に代えて、回転センサ部４５と荷重センサ部４６とで複合センサ部４４が構成されている。回転センサ部４５は一対の磁気エンコーダ４７Ａ，４７Ｂと、これら磁気エンコーダ４７Ａ，４７Ｂに対して軸方向に対向して配置される一対のセンサ４８Ａ，４８Ｂとでなる２つの回転センサ４９Ａ，４９Ｂを有する。すなわち、内方部材２の端部外周に取付けられる磁気エンコーダ４７Ａと、この磁気エンコーダ４７Ａに対向して外方部材１の端部に取付けられるセンサ４８Ａとで第１の回転センサ４９Ａが構成され、等速自在継手外輪１３ａの外周に取付けられる磁気エンコーダ４７Ｂと、この磁気エンコーダ４７Ｂに対向して外方部材１の端部に取付けられるセンサ４８Ｂとで第２の回転センサ４９Ｂが構成される。

第１の回転センサ４９Ａの構成部品である磁気エンコーダ４７Ａは、断面がＬ字状の環状の芯金のフランジ部のインボード側を向く面に多極磁石を設けたものとされている。この磁気エンコーダ４７Ａはインボード側の接触シール８を兼ねる。
また、第１の回転センサ４９Ａの他の構成部品であるセンサ４８Ａは、磁気エンコーダ４７Ａの磁界を検出する磁気センサであり、センサ取付部材５０を介して外方部材１に取付けられる。このセンサ４８Ａは例えばコイルを内蔵した磁気ヨークからなるアニューラ型とされ、センサ取付部材５０内にモールドされている。このように構成された回転センサ４９Ａでは、内方部材２と共に磁気エンコーダ４７Ａが回転すると、磁気エンコーダ４７Ａとセンサ４８Ａとの相対回転により、センサ４８Ａのコイルに回転数に比例した周波数の電圧が誘導され、これが回転信号としてセンサ４８Ａから出力される。

第２の回転センサ４９Ｂの構成部品である磁気エンコーダ４７Ｂは、断面Ｌ状の環状の芯金のフランジ部のアウトボード側に向く面に多極磁石を設けたものとされている。この磁気エンコーダ４７Ｂは、その芯金の円筒部を等速自在継手外輪１３ａの外周に圧入することにより、等速自在継手外輪１３ａに取付けられている。
第２の回転センサ４９Ｂの他の構成部品であるセンサ４８Ｂは、磁気エンコーダ４７Ｂの磁界を検出する磁気センサであり、センサ取付部材５０を介して外方部材１に取付けられる。このセンサ４８Ｂもアニユーラ型であり、前記センサ取付部材５０内に他のセンサ４８Ａと軸方向に背面合わせとなるように重ねた状態でモールドされている。

荷重センサ部４６は一対の変位センサ５１と被検出部５２とからなり、一対の変位センサ５１はヨークにコイル巻線を巻回して構成され、センサ取付部材５０の円周方向の上下に分けて配置される。変位センサ５１も、センサ取付部材５０内にモールドされて、前記各センサ４８Ａ，４８Ｂと共に一体に取扱可能な一つのセンサユニットとされている。センサ取付部材５０内にはＩＣタグ１０が埋め込まれている。変位センサ部４６の被検出部５２は、前記第１の回転センサ４９Ａの磁気エンコーダ４７Ａの芯金における円筒部の延長部分からなる。

この実施形態の車輪用軸受装置では、回転センサ部４５の２つの回転センサ４９Ａ，４９Ｂにより、車輪に作用する前後方向の荷重を検出できる。すなわち、車輪に前後方向のトルクが作用したとき、内方部材２と等速自在継手外輪１３ａとに相対回転が生じ、第１の回転センサ４９Ａの検出信号と、第２の回転センサ４９Ｂの検出信号との間に位相差が生じる。この位相差から車輪に作用する前後方向の荷重を検出することができる。また、２つの回転センサ４９Ａ，４９Ｂの検出信号は車輪の回転信号であるため、そのうちの１つをＡＢＳ（アンチロックブレーキシステム）用の回転速度信号として利用することができる。
また、車輪から軸受に曲げモーメントが作用したとき、内方部材２と一体の磁気エンコーダ４７Ａの芯金の円筒部延長部分からなる被検出部５２が変位するので、この変位を荷重センサ部４６の上下一対の変位センサ５１が曲げモーメントとして検出することができる。

この発明の第１の参考提案例にかかるＩＣタグ付き車輪用軸受装置の断面図である。同車輪用軸受装置におけるインボード側の接触シールの部分拡大断面図である。同車輪用軸受装置におけるインボード側の接触シールの他の構成例を示す部分拡大断面図である。同車輪用軸受装置に用いるＩＣタグとタグリーダ／ライタとの関係を示すブロック図である。ＩＣタグの概略構成を示す回路ブロック図である。（Ａ）はこの発明の実施形態にかかるＩＣタグ付き車輪用軸受装置の断面図、（Ｂ）は同車輪用軸受装置の部分拡大断面図である。同車輪用軸受装置における複合センサ部の回路構成を示す回路ブロック図である。（Ａ）はこの発明の他の参考提案例にかかるＩＣタグ付き車輪用軸受装置の断面図、（Ｂ）は同車輪用軸受装置の部分拡大断面図、（Ｃ）は同車輪用軸受装置における歯付きリングの部分拡大平面図である。この発明の他の実施形態にかかるＩＣタグ付き車輪用軸受装置の断面図である。

符号の説明

１…外方部材
１ａ…軌道面
２…内方部材
２ａ…軌道面
３…ハブ輪
３ａ…車輪取付フランジ
５…転動体
９…中央孔
１０…ＩＣタグ
１３…等速自在継手
１３ａ…等速自在継手外輪
１４…ステム部
２８…複合センサ部
２９…被検出部構成部品
２９ａ…円筒状部
２９ｂ…フランジ部（被検出部）
３０…エンコーダ
３１…回転センサ
３２…変位センサ
３４…荷重センサ
４４…荷重センサ部
４５…回転センサ部
４６…荷重センサ部

Claims

内周に複列の軌道面を有する外方部材と、前記軌道面に対向する軌道面を外周に有する内方部材と、両列の軌道面間に介在した複列の転動体とを有し、前記内方部材が、車輪取付用のフランジを有するハブ輪と、このハブ輪に結合された別部材とでなり、前記ハブ輪および前記別部材に前記各列の軌道面が形成され、前記別部材が前記ハブ輪に加締により結合されてこの加締により軸受の予圧が付与された車輪用軸受装置において、この車輪用軸受装置に非接触で交信が可能なＩＣタグを取付け、前記別部材が、等速自在継手の一方と継手部材となる外輪であり、この外輪の有する中空軸状のステム部を前記内方部材に設けられた中央孔に挿通し、前記ステム部を拡径することにより前記ハブ輪と前記別部材との結合のための加締を行ったものであり、前記外方部材に両列の軌道面間に位置して軸受空間内に突出する複合センサ部を設け、この複合センサ部は、前記内方部材の外周に設けられたエンコーダを検出する回転センサと、前記内方部材の外周に設けられた被検出部に対するアキシアル方向の変位を検出する変位センサとを有し、前記複合センサ部にメモリまたは前記ＩＣタグを組み込んだことを特徴とするＩＣタグ付き車輪用軸受装置。
請求項１において、前記内方部材の外周に、円筒状部およびこの円筒状部の一端から外径側へ延びるフランジ部を有する断面Ｌ字形の被検出部構成部品を設け、この被検出部構成部品は、前記内方部材における前記ハブ輪の部分に前記フランジ部がインボード側に位置するように圧入して取付け、前記被検出部構成部品の前記円筒状部の外周に前記エンコーダとなる磁気エンコーダを設けたＩＣタグ付き車輪用軸受装置。
請求項２において、前記被検出部構成部品を、ハブ輪に圧入させる代わりに、等速自在継手の外輪に圧入したＩＣタグ付き車輪用軸受装置。
内周に複列の軌道面を有する外方部材と、前記軌道面に対向する軌道面を外周に有する内方部材と、両列の軌道面間に介在した複列の転動体とを有し、前記内方部材が、車輪取付用のフランジを有するハブ輪と、このハブ輪に結合された別部材とでなり、前記ハブ輪および前記別部材に前記各列の軌道面が形成され、前記別部材が前記ハブ輪に加締により結合されてこの加締により軸受の予圧が付与された車輪用軸受装置において、この車輪用軸受装置に非接触で交信が可能なＩＣタグを取付け、内方部材の外方部材に対する回転を検出する回転センサ、および車輪用軸受装置に作用する荷重を検出する荷重センサとを有する複合センサ部を設け、この複合センサ部にＩＣタグを組み込み、この組み込まれたＩＣタグに、前記荷重センサの感度の情報を記憶させたことを特徴とするＩＣタグ付き車輪用軸受装置。
請求項４において、前記別部材が、等速自在継手の一方と継手部材となる外輪であり、この外輪の有する中空軸状のステム部を前記内方部材に設けられた中央孔に挿通し、前記ステム部を拡径することにより前記ハブ輪と前記別部材との結合のための加締を行ったものであるＩＣタグ付き車輪用軸受装置。
請求項４において、前記別部材が、前記ハブ輪のインボード側端の外周に形成された内輪嵌合部に嵌合する内輪であり、前記ハブ輪の前記内輪よりもインボード側に突出した部分を外径側に加締めた加締部により、前記ハブ輪と前記別部材との結合のための加締を行ったものであるＩＣタグ付き車輪用軸受装置。
請求項４ないし請求項６のいずれか１項において、前記ＩＣタグに、前記加締の後の軸受隙間および予圧量の少なくとも一方を記憶させたＩＣタグ付き車輪用軸受装置。
請求項４ないし請求項７のいずれか１項において、前記外方部材と前記内方部材との間の軸受空間の両端をそれぞれ密封する一対のシールを設け、これらシールのうち、インボード側のシールに前記ＩＣタグを取付けたＩＣタグ付き車輪用軸受装置。
請求項８において、前記インボード側のシールは、外方部材の端面または外径面に位置するゴムまたは合成樹脂の部分を有し、この部分に前記ＩＣタグを取付けたＩＣタグ付き車輪用軸受装置。