JP2006151827A - ポリフィリン化合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高純度のポリフィリン化合物を高収率で製造する。
【解決手段】ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体を還元して2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を含む反応生成物から2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を精製した後に、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を脱水環化し、次いで、酸化させることによりポルフィリン化合物を製造する方法。ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体の還元工程で生成する2−ヒドロキシメチルピロール誘導体に含まれる副生成物の2−メチルピロール誘導体を除去することにより、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の脱水環化でポリフィリノーゲン誘導体を選択する際の選択性を上げ、これにより最終生成物のポリフィリン化合物の収率を上げることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポルフィリン化合物の製造方法に関するものである。詳しくは高純度のテトラビシクロポルフィリン化合物を効率良く製造する方法に関する。
本発明で製造されるポルフィリン化合物は、結晶状態で電気伝導や光起電力等の半導体特性を示すので、トランジスタ、発光ダイオード、太陽電池等の電気、光機能素子に応用することができ、特に有機トランジスタには好適に用いることができる。
従来、ポルフィリン化合物の製造方法の一つに、ピロールのアルコール誘導体である2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を酸触媒により脱水環化して4量体とした後、酸化によりポルフィリン化合物とする方法がある。例えば、非特許文献1には、テトラビシクロポルフィリン化合物を製造するにあたり、ピロール−2−カルボン酸エチルエステル誘導体を水素化リチウムアルミニウムで還元し、生成した2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を酸処理により環化し、それを酸化してテトラビシクロポルフィリン化合物を製造する方法が報告されている。
Heterocycles,2000,52,399
しかしながら、非特許文献1に記載される方法では、得られたテトラビシクロポルフィリンの純度が低いために、生成物の精製に多大な負担が掛かり、また、収率も著しく低いことから、工業的な製造を行う上で効率的な方法とは言えない。
本発明は、上記従来の問題点を解決し、ポリフィリン化合物を高収率かつ高純度で製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、かかる事情に鑑み、鋭意検討した結果、ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体を還元、脱水環化および酸化してテトラビシクロポルフィリンを得る一連の反応において、特定の中間生成物の精製、単離操作を行うことによりテトラビシクロポルフィリンの収率が格段に向上すること、即ち、
(i)ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体を還元して2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を得る際に副生成物として2−メチルピロール誘導体が生成すること、
(ii)2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を脱水環化してポルフィリノーゲン誘導体を得る際に、前工程の副生成物である該2−メチルピロール誘導体がポルフィリノーゲン誘導体の選択性を低下させること、
(iii)従って、ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体を還元して得られる粗2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を精製して、粗2−ヒドロキシメチルピロール誘導体中の2−メチルピロール誘導体を除去した後、脱水環化に供することにより、ポルフィリノーゲン誘導体を高収率、高選択率で得ることができ、これを酸化することにより、テトラビシクロポルフィリンを高収率で得ることができること、
を見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の第1の要旨は、ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体を還元して2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を含む反応生成物を得る還元工程と、該反応生成物を精製して精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を得る精製工程と、該精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を脱水環化し、次いで、酸化してポルフィリン化合物を得る脱水環化・酸化工程とを具備することを特徴とするポリフィリン化合物の製造方法に存する。
本発明の第2の要旨は、上記のポルフィリン化合物の製造方法において、ポルフィリン化合物が下記一般式(I)で表されるポリフィリン化合物であって、ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体が下記一般式(II)で表されるピロール−2−カルボン酸エステル誘導体であって、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体が下記一般式(III)で表される2−ヒドロキシメチルピロール誘導体であることを特徴とするポルフィリン化合物の製造方法に存する。
Figure 2006151827
(一般式(I)中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して1価の有機基を表すが、これらは互いに結合して環を形成していても良い。)
Figure 2006151827
(一般式(II)中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、一般式(I)におけると同義である。Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
Figure 2006151827
(一般式(III)中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、一般式(I)におけると同義である。)
また、本発明者らはこのようなポリフィリン化合物の製造方法において、単離した2−ヒドロキシメチルピロール誘導体に含まれる特定の不純物が一定の濃度以下であるとポリフィリン化合物を収率良く得られることを見出した。
即ち、本発明の第3の要旨は、上記のポリフィリン化合物の製造方法において、精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の2−メチルピロール誘導体の含有量が2モル%以下であることを特徴とするポリフィリン化合物の製造方法、に存する。
また、本発明者らは、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体が存在する、還元から脱水環化の過程において、従来の方法では2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の自己変質が著しく、これによりその純度が低下し、その結果としてポルフィリン化合物の収率が低くなること、従って、このような自己変質を抑制する条件下で脱水環化を行うことが好ましいことを見出した。
即ち、本発明の第4の要旨は、上記のポリフィリン化合物の製造方法において、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の脱水環化を酸素存在下で行うことを特徴とするポリフィリン化合物の製造方法、に存する。
また、本発明の第5の要旨は、上記のポリフィリン化合物の製造方法において、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の脱水環化を遮光下で行うことを特徴とするポリフィリン化合物の製造方法、に存する。
本発明のポリフィリン化合物の製造方法によれば、簡便な方法により、高純度のテトラビシクロポルフィリン等のポリフィリン化合物を効率的かつ経済的に製造することができる。
以下、本発明のポリフィリン化合物の製造方法の実施の形態を更に詳細に説明する。
なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
本発明においては、
(A)ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体を還元し、得られた反応生成物から2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を精製した後に、
(B)該精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を脱水環化し、次いで、
(C)酸化させることによりポルフィリン化合物を製造する。
以下に本発明に好ましい反応基質を用いた反応工程図を示す。
Figure 2006151827
(一般式(I)〜(III)中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、1価の有機基を表すが、これらは互いに結合して環を形成していても良い。Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
以下、本発明を工程毎に順を追って詳述する。
工程(A):ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体を還元して2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を含む反応生成物を得、得られた反応生成物から副生成物を分離して2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を精製する。
(1)反応基質
ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体としては、特に限定されるものではないが、ピロール−2−カルボン酸エステルのピロール環の3位および4位に置換基を有するものが好ましく、特に3位および4位の置換基が結合して環を形成しているものが好ましい。
中でも、下記一般式(II)で表される化合物が好ましい。
Figure 2006151827
(一般式(II)中、R〜Rはそれぞれ独立して1価の有機基を示し、互いに結合して環状構造を形成しても良い。Rは炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
上記R〜Rの1価の有機基としては、反応時に悪影響を与えない基であれば特に限定されない。この1価の有機基の分子量は通常500以下であり、好ましくは300以下であって、通常1以上である。好ましい基として具体的には、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;ニトロソ基;シアノ基;イソシアノ基;シアナト基;イソシアナト基;チオシアナト基;イソチオシアナト基;メルカプト基;ヒドロキシ基;ホルミル基;スルホン酸基;カルボキシル基;置換されていても良いアルキル基;置換されていても良いシクロアルキル基;置換されていても良いアルケニル基;置換されていても良いシクロアルケニル基;置換されていても良いアリール基;置換されていても良い複素環基;置換されていても良いアルコキシ基;置換されていても良いアルケニルオキシ基;置換されていても良いアリールオキシ基;置換されていても良いアルキルチオ基;−COQで表されるアシル基;−OCOQで表されるアシルオキシ基;−NQで表されるアミノ基;−COOQで表されるカルボン酸エステル基;−CONQで表されるカルバモイル基;−SOQで表されるスルフィニル基;−SOで表されるスルホニル基;−SOで表されるスルホン酸エステル基;−SONQで表されるスルファモイル基等が挙げられる。
このうち、置換されていても良いアルキル基;置換されていても良いシクロアルキル基;置換されていても良いアルケニル基;置換されていても良いシクロアルケニル基;置換されていても良いアリール基;置換されていても良い複素環基;置換されていても良いアルコキシ基;置換されていても良いアルケニルオキシ基;置換されていても良いアリールオキシ基;置換されていても良いアルキルチオ基;−COQで表されるアシル基;−OCOQで表されるアシルオキシ基;−NQで表されるアミノ基;−COOQで表されるカルボン酸エステル基;−CONQで表されるカルバモイル基;−SOQで表されるスルフィニル基;−SOで表されるスルホニル基;−SOで表されるスルホン酸エステル基;−SONQで表されるスルファモイル基としては、炭素数18以下、好ましくは12以下ものが挙げられる。
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−へプチル基等の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられる。
上記シクロアルキル基としてはシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の環状アルキル基が挙げられる。
上記アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の直鎖又は分岐のアルケニル基が挙げられる。
上記シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基が挙げられる。
上記アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられる。
上記複素環基としては、2−チエニル基、2−ピリジル基、4−ピペリジル基、モルホリノ基等の異項原子を1〜3個有する複素環基が挙げられる。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の直鎖または分岐のアルコキシ基が挙げられる。
上記アルケニルオキシ基としてはプロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、ペンテニルオキシ基等の直鎖または分岐のアルケニルオキシ基が挙げられる。
上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基又はナフチルオキシ基が挙げられる。
上記アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基等の直鎖または分岐のアルキルチオ基が挙げられる。
上記アシル基、アシルオキシ基、カルボン酸エステル基、スルフィニル基、スルホニル基及びスルホン酸エステル基におけるQとしては、置換されていても良い炭化水素基又は置換されていても良い複素環基が挙げられる。
上記アミノ基におけるQ及びQとしては、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、炭化水素基、複素環基、−COQで表されるアシル基、−COOQで表されるカルボン酸エステル基又は−SOで表されるスルホニル基が挙げられる。
上記カルバモイル基又はスルファモイル基における、Q及びQとしては、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基又は複素環基が挙げられる。
上記アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基及び炭化水素基は、反応において悪影響を与えない範囲で任意に置換されていても良く、その具体例としては、上述のR〜Rの具体例として記述したような基が挙げられる。
また、R〜Rは、互いに一体となって、プロピレン基、ブチレン基等となり、それぞれがピロール環と縮合環を形成する脂肪族炭化水素基となっていても良く、または形成された縮合環がベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族炭素環となっていても良く、更にヘテロ原子により置換されてピロール環、ピリジン環等の複素環基を形成していても良く、このうち好ましくは、脂肪族炭素環である。
〜Rで好ましいのは、それぞれ独立して、水素、互いに結合して環を形成していても良い、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基であり、特に好ましくは水素原子である。
は、炭素数1〜12のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等であり、これらのうち、分岐鎖のあるアルキル基が好ましく、2級以上のアルキル基がより好ましい。
(2)反応方法
ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体を還元剤で還元して、2−ヒドロキシピロール誘導体を製造する。
<還元剤>
還元剤としては、カルボン酸エステルをヒドロキシ基に還元できるものであれば特に限定されないが、通常、金属水素化物であり、好ましくは金属水素錯化物であり、金属水素錯化者の中でもリチウム水素化アルミニウムが特に好ましい。
還元剤の使用量は、ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体に対する還元剤のヒドリドの量として、通常2モル以上、好ましくは3モル以上であって、通常20モル倍以下、好ましくは10モル倍以下、より好ましくは6モル倍以下である。この還元剤の使用量が2モル倍未満の場合、反応が不十分であり、また、20モル倍を超えるのは、主として経済的な見地から好ましくない。
<溶媒>
反応は、通常溶媒の存在下に還元剤とピロール−2−カルボン酸エステル誘導体とを反応させることにより行われる。
かかる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、トリグライム、t−ブチルメチルエーテル、1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒などが挙げられる。このうち、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が好ましい。
溶媒は、ピロールカルボン酸エステル誘導体に対して、1重量倍以上、好ましくは2重量倍以上程度、通常50重量倍以下、好ましくは20重量倍以下程度使用される。
<反応条件>
反応温度は、通常−30℃以上、好ましくは−20℃以上、通常50℃以下、好ましくは20℃以下であり、この温度範囲のなかでも0℃以下が好ましい。反応温度が低すぎると反応が不完全になり、また、高すぎると副生成物として2−メチルピロール誘導体が生成しやすいため、好ましくない。
副生物の2−メチルピロール誘導体は、2−ヒドロキシメチルピロールが更に還元された化合物であり、後述するとおり、2−メチルピロール誘導体が存在すると2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の脱水環化の際の選択性が低下する。
また、2−ヒドロキシピロール誘導体は光の照射により著しく変質するため、2−ヒドロキシピロール誘導体が存在する全ての操作、即ち、ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体の還元から、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の脱水環化の操作を遮光下で行うのが好ましい。
<反応混合物の処理>
反応終了後、反応混合物を処理して反応生成物と還元剤とを加水分解して還元剤由来物質を除去することにより、目的生成物である2−ヒドロキシピロール誘導体を得る。このとき、反応混合物から還元剤由来物質を除去した後、必要に応じて、蒸発乾固することで固体が得られる。この固体には目的物である2−ヒドロキシメチルピロール誘導体及び副生物である2−メチルピロール誘導体が含まれている。
加水分解は通常、反応混合物と所定量の水、好ましくは水およびアルカリとを混合させることにより行う。加水分解時にアルカリを用いる場合には、系内をpH6〜8に維持しながら添加するのが好ましい。用いるアルカリは特に限定されないが、アルカリ金属化合物が好ましく、中でも水酸化ナトリウムが好ましい。
また、反応混合物中に余剰の還元剤が残っている場合には、反応混合物に酢酸エチル等のエステルや、塩化アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、水等を添加して不活性化しても良い。
還元剤由来物質の除去方法は特に限定されないが、例えば濾過または抽出により行うことができる。
(3)反応生成物
上述の如く、反応混合物から還元剤由来物質を除去することにより、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を含む反応生成物が得られる。
ここで、前記一般式(II)で表されるピロール−2−カルボン酸エステル誘導体の還元で得られる2−ヒドロキシメチルピロール誘導体は、下記一般式(III)で表される化合物である。
Figure 2006151827
(一般式(III)中、R〜Rは、一般式(II)におけると同義である。)
得られた反応生成物は、副生成物である2−メチルピロール誘導体が含まれている。
通常、この2−メチルピロール誘導体含有量は、反応条件によっても異なるが、後述の精製前の2−ヒドロキシメチルピロール誘導体中の含有量で3〜20モル%程度である。以下において、反応混合物から還元剤由来物質を除去して得られた2−メチルピロール誘導体を含む2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を「粗2−ヒドロキシメチルピロール誘導体」と称し、この粗2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を後述の方法で精製して得られた2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を「精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体」と称す。
(4)精製
粗2−ヒドロキシメチルピロール誘導体には副生物として2−メチルピロール誘導体が含まれるが、本発明においては2−メチルピロール誘導体の含有量の少ない精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を得ることが重要である。即ち、前述の通り、2−メチルピロール誘導体は2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の脱水環化でポルフィリノーゲン誘導体を製造する際の選択性を下げるため、脱水環化に供する2−ヒドロキシメチルピロール誘導体は2−メチルピロール誘導体の含有量が少ないものであることが好ましい。
本発明では、粗2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を精製2−メチルピロール誘導体の含有量が通常2モル%以下、好ましくは1モル%以下、より好ましくは0.5モル%以下、更に好ましくは0.1モル%以下になるように精製して精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を得る。なお、この精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体中の2−メチルピロール誘導体の含有量の下限は、特に制限されず、脱水環化の選択性向上効果と精製に係るコストの面から通常0.001モル%程度である。
2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の精製方法は特に限定されず、例えば、晶析、懸濁洗浄、カラム精製等を用いることができるが、好ましい精製方法としては晶析、懸濁洗浄が挙げられる。これらの精製手段は、2以上を組み合わせて行っても良い。
晶析に使用される溶媒としては、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体と実質的に反応せず、かつ溶解し、2−メチルピロール誘導体との溶解度の差が十分に大きい溶媒であれば特に制限はない。例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、石油エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、トリグライム、t−ブチルメチルエーテル、1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶媒、クロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、及びニトロエタン、プロピオンニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。例えば、トルエンとヘキサン、トルエンとヘプタン、トルエンと石油エーテル、トルエンとジイソプロピルエーテル、酢酸エチルとヘキサン、酢酸エチルとヘプタン等の混合溶媒を使用しても良い。
晶析精製に使用される溶媒の量は、粗2−ヒドロキシメチルピロール誘導体に対して、通常1重量倍以上、好ましくは2重量倍以上程度で、通常50重量倍以下、好ましくは20重量倍以下程度使用される。晶析精製は、通常−20℃以上、好ましくは−10℃以上で、通常110℃以下、好ましくは60℃以下で行う。晶析は、所望の純度の精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体が得られるまで繰り返し行っても良い。
懸濁洗浄に使用される溶媒としては、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体と実質的に反応せず、難溶性であり、かつ、2−メチルピロール誘導体を充分に溶解する溶媒であれば特に制限はなく、例えばテトラヒドロフラン(THF)/ヘキサン混合溶媒などが用いられる。
懸濁洗浄に使用される溶媒の量は、粗2−ヒドロキシメチルピロール誘導体に対して、1重量倍以上、好ましくは2重量倍以上程度、通常50重量倍以下、好ましくは20重量倍以下程度である。
懸濁洗浄を行う時間は特に限定されないが、通常1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、最も好ましくは1時間以上であって、通常24時間以下、好ましくは12時間以下、より好ましくは6時間以下である。懸濁洗浄は、通常−20℃以上、好ましくは−10℃以上で、通常110℃以下、好ましくは60℃以下で行う。懸濁洗浄は所望の純度の精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体が得られるまで繰り返しても良い。
また、上記晶析と懸濁洗浄とを適宜組み合わせて行っても良い。
工程(B):2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の脱水環化によるポルフィリノーゲン誘導体の製造
本工程(B)においては、工程(A)で得られた精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体、好ましくは前記一般式(III)で表される精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を脱水環化させることによりポルフィリノーゲン誘導体、好ましくは下記一般式(IV)で表されるポルフィリノーゲン誘導体を製造する。
Figure 2006151827
(一般式(IV)中、R〜Rは、一般式(II)におけると同義である。)
精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の脱水環化は、通常、酸触媒の存在下、液相で行う(以下「酸処理」と称す場合がある。)。反応形式は特に限定されず、回分反応でも連続反応でも良いが、通常、回分反応で行う。
<反応装置>
反応装置は特に限定されないが、反応系を攪拌する場合には、反応容器に邪魔板のあるものや効率的に攪拌のできる攪拌翼(アンカー翼、傾斜パドル翼、平パドル翼、ファドラー翼、マックスブレンド翼(住友重機械工業株式会社)、フルゾーン翼(神鋼パンテック株式会社)、ヘリカルリボン翼、ブ ルマージン翼、スーパミックス翼(佐竹化学機械工業製)、A310翼(LIGHTNIN製)、A320翼(LIGHTNIN製)、インターミグ翼(エカート製)等)を用いることができる。
<酸触媒>
酸触媒は、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を脱水環化できる酸触媒であれば特に限定されないが、反応系に分散しやすい酸を用いるのが好ましい。反応系に分散しやすい酸とは、反応系内に溶解又は微分散する酸であり、例えば反応系内で溶解又は微分散する固体、液体又は気体の酸を用いる。
反応系内に溶解又は微分散する固体酸としては、無機酸でも有機酸でも良く、具体的にはAlCl、AsF等のルイス酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の置換されていても良い脂肪族カルボン酸;安息香酸、トルイル酸、フタル酸、トリメリト酸等の置換されていても良い芳香族カルボン酸;置換されていても良い脂肪族スルホン酸;ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等の置換されていても良い芳香族スルホン酸等が挙げられる。
反応系内に溶解又は微分散する液体酸としては、無機酸でも有機酸でも良く、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ酸、BF、TiCl,SnCl等の無機酸や、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、トリフルオロ酢酸等の置換されていても良い脂肪族カルボン酸;置換されていても良い芳香族カルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の置換されていても良い脂肪族スルホン酸;置換されていても良い芳香族スルホン酸が挙げられる。
反応系に溶解又は微分散する気体酸としては、無機酸でも有機酸でも良く、具体的には塩化水素、フッ化水素、臭化水素等のハロゲン化水素ガスが挙げられる。
これらの酸は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。上記酸として好ましいのは、液体酸である。
反応系内に酸を微分散させるにあたっては固体酸を粒径1mm以下、更に好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下に微粒子化したり、該固体酸又は液体酸の存在下必要に応じて界面活性剤を用いて攪拌することにより微分散することができる。気体酸を用いる場合には、気体酸を反応液に接触させたり、吹き込んだりすれば良い。
酸触媒の使用量は、精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体に対し、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上で、好ましくは50モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
<溶媒>
溶媒は、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体が溶解するものであって、反応に悪影響を与えないものを適宜選択すれば良く、また、前記酸との組み合わせによっても適宜選択できるが、その具体例としてはクロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;トルエン、ベンゼン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類;ピリジン、キノリン等の含窒素有機溶媒類;あるいはエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類の溶媒等の1種又は2種以上が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、ハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類、エーテル類、アミド類であり、更に好ましくは、ハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、アミド類である。
溶媒の使用量は精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体に対し、10重量倍以上、より好ましくは20重量倍以上、好ましくは200重量倍以下、より好ましくは100重量倍以下である。
<反応条件>
反応温度は通常−20℃以上、好ましくは−10℃以上であり、通常60℃以下、好ましくは30℃以下である。
圧力は特に限定されず、減圧下でも常圧でも加圧下でも良い。通常0.1kPa以上、好ましくは1kPa以上、より好ましくは10MPa以上であって、通常20MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下である。反応系を高圧にする場合には、通常0.11MPa以上にすることが好ましく、より好ましくは0.2MPa以上に加圧した酸素あるいは空気等の酸素を含む気体を接触させることが望ましい。
反応時間は、通常1分以上、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上であって、通常3日以内、好ましくは2日以内、より好ましくは1日以内である。反応は、原料である2−ヒドロキシメチルピロール誘導体及び目的物であるポルフィリノーゲン誘導体をクロマトグラフィー等でモニターして、十分に原料が消失してポルフィリノーゲン誘導体が生成したことを確認することで最適な時間を設定すれば良い。
反応の雰囲気は特には限定されないが、分子状酸素存在下で反応を行うと反応収率が高いため好ましい。分子状酸素存在下で反応行う方法は特に限定されないが、例えば、反応系に酸素あるいは酸素を含む気体をバブリングする;反応系の表面積を大きし、酸素との接触面積を増やす(反応液の体積Vについて、反応液の表面積Sを体積Vで除した値が0.5cm−1以上となるような反応容器を用いる等);反応系を強攪拌する、又は攪拌して空気との接触面積を増やす又は系中に空気の泡を取り込ませバブリングするのと同様の状態とする;反応系を高圧にし、表面から取り込まれる酸素の量を増やす;反応系内で酸素ガスを発生させる物質や酸素ガスを吸着する物質を系内に共存させる等の方法が挙げられる。このうち好ましくは、反応系に酸素あるいは酸素を含む気体をバブリングする;反応系を強攪拌する、又は攪拌する;もしくは、反応系を高圧にする方法であり、更に好ましくは、反応系に酸素あるいは酸素を含む気体をバブリングする;もしくは、反応系を強攪拌する、又は攪拌する方法である。
反応系に酸素あるいは酸素を含む気体をバブリングする方法としては、特に限定はないが、例えば反応系中にガラス等の不活性な管を入れ、そこから酸素あるいは酸素を含む気体を吹き込みバブリングを行うことが挙げられる。吹き込み口は複数でも構わない。また、細かい気泡でバブリングしても構わない。酸素の流量は反応系の大きさにもよるが、反応系1Lに対して、5mL/分以上が好ましく、更に好ましくは50mL/分以上、特に好ましくは100mL/分以上である。また、10L/分以下が好ましく、更に好ましくは5L/分以下、特に好ましくは1L/分以下である。
本発明において、反応系内に酸素を十分作用させて、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の酸処理を行うためには、酸処理を行う前の反応系に酸素を作用させても良いし、酸処理中に反応系内に酸素を作用させても構わない。好ましくは、酸処理を行う反応系に酸素を作用させる方法で、より好ましくは、酸処理を行う前の反応系に酸素を作用させ、更に引き続いて酸処理中にも反応系内に酸素を作用させる方法である。
また、酸処理の方法としては、酸を含む溶液に酸素を十分作用させ、その後2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を添加しても良いし;2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を含む溶液に酸素を十分作用させ、その後酸を添加しても良いし;溶媒に酸素を十分作用させた後に、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体と酸を添加しても構わない。これらのうち好ましいのは、酸を含む溶液に酸素を十分作用させ、その後2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を添加する方法である。
また、反応は、遮光下で行うことが、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の自己変質を防止して反応収率を向上させる点で好ましい。反応を遮光下で行うためには、例えば、反応器を金属等の遮光材で覆う方法、窓のない反応器を使用する方法などが挙げられる。
工程(C):ポルフィリノーゲン誘導体を酸化させることによりポルフィリン化合物を得る
本工程(C)は工程(B)に引き続いて行うことも、工程(B)で得られたポルフィリノーゲン誘導体を分離・精製した後に行うこともできるが、通常は工程(B)に引き続き、工程(B)を経た反応混合物と酸化剤とを接触させることにより行われる。
工程(B)で得られたポルフィリノーゲン誘導体、好ましくは前記一般式(IV)で表されるポルフィリノーゲン誘導体を酸化させることにより、ポルフィリン誘導体、好ましくは下記一般式(I)で表されるポルフィリン誘導体を得る。
Figure 2006151827
(一般式(I)中、R〜Rは、一般式(II)におけると同義である。)
工程(C)において、酸化は公知の方法に準じて行えば良い。
例えば、前述の酸処理工程(B)で、原料の2−ヒドロキシメチルピロール誘導体が消失し、ポルフィリノーゲン誘導体が十分に生成したところで、酸化剤を添加してポルフィリノーゲン誘導体をポルフィリン化合物に変換することにより実施される。
<酸化剤>
酸化剤としては、クロラニル、ジクロロジシアノベンゾキノン、N−2,4,6−トリニトロフェニル−N',N'−フェニルジヒドラジン等の有機酸化剤や、二酸化マンガン、二酸化セレン等の無機酸化剤、更には酸素等の酸化性の気体を吹き込むことも利用できる。好ましくは、クロラニル、ジクロロジシアノベンゾキノンである。
酸化剤は、反応の進行を液体クロマトグラフィー等でモニターしながら添加量を調整して添加するのが望ましいが、原料として用いた2−ヒドロキシメチルピロール誘導体に対して通常0.3倍当量以上、通常3倍当量以下、好ましくは1倍当量以下添加する。
<反応条件>
温度:酸化反応は、通常室温で行うが、副反応速度を制御する為に高温あるいは低温で反応を行うことも可能である。望ましい反応温度は、−20℃から80℃である。20℃より低いと、反応が進行せず、ポルフィリン化合物の生成量が少なくなり、80℃より高いと副反応が起こり、結果的にポルフィリン化合物の生成量が少なくなる。
圧力:特に限定されず、減圧下でも常圧でも加圧下でも良い。通常0.1kPa以上、好ましくは1kPa以上、より好ましくは10MPa以上であって、通常20MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下である。
時間:酸化に要する反応時間は、反応の進行をモニターしながら決めれば良いが、通常30分以上である。過度に長時間酸化反応を行うと、副反応で収率が低下する可能性があるので、12時間以内に反応が終了するように酸化剤の量や反応温度を調整するのが望ましい。
得られたポルフィリン化合物は必要に応じて精製することができる。具体的な精製法としては、反応溶媒を濃縮したり、貧溶媒を加えたりして目的物を取り出す方法が挙げられる。更に純度を高めるためには、クロマトグラフィー、再結晶、再沈殿等用いて、望ましい純度まで精製することができる。
<用途>
工程(C)で得られるポルフィリン化合物は結晶状態で電気伝導や光起電力等の半導体特性を示すので、トランジスタ、発光ダイオード、太陽電池等の電気、光機能素子に応用することができ、特に有機トランジスタには好適に用いることができる。
上記用途に用いられる好ましいポルフィリン化合物の具体例としては、前記一般式(I)に示されるようなものを挙げることができる。即ち、このポリフィリン化合物は、公知の方法で塗布液を調製し、これを基板等に塗布する際には、ポルフィリン化合物中に平面性の悪い構造が存在することにより、高い溶解性及び成膜性を示し、その後、塗膜を加熱することにより平面性の高い構造に変換し、良好な半導体特性を有する膜を形成する。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の本実施例において、ポルフィリノーゲン誘導体及びポルフィリン化合物の定量は、GLサイエンス社製高速液体クロマトグラフィーを用いて行った。用いたカラムは GL Sciences Inertsil ODS−3V 5μm 4.6×150mmであり、グラジエントTHF/水=30:70からTHF/水=100:0まで25分、流速0.5ml/minで流しながら、UV254nmで検出し、サンプルのクロロホルム溶液を分析した。
[実施例1]
<ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体(反応原料)の製法>
窒素雰囲気下、2−エキソ,3−エンド−ビス(フェニルスルホニル)ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン10.55g(27.2mmol)をTHF170mlに溶解させた。更にイソシアノ酢酸エチルを3.01g(27.2mmol)加え攪拌を続けた。該溶液の温度を3℃以下を保ちながら、別途、窒素雰囲気下、t−ブトキシカリウム7.31g(65.1mmol)を溶解したTHF件濁溶液を滴下した。
3℃以下を保ちながら1時間攪拌後、徐々に室温まで上昇させた。過剰分のt−ブトキシカリウムを1Mの塩酸で中和を行い、減圧留去にて濃縮した。酢酸エチルで生成物を抽出した後、減圧留去、真空乾燥により黄白色粉末を5.74g得た。得られた粉末をメタノール11mlで懸濁洗浄し、一晩0〜4℃で静置した後濾取し、真空乾燥により4,7−ジヒドロ−4,7−エタノ−2H−イソインドール−1−カルボン酸エチル(白色粉末)4.98g(22.9mmol)を得た(収率84%)。
H−NMR(CDCl,400MHz,δppm):1.36(3H,t), 1.42−1.61(4H,m), 3.87(1H,s), 4.28−4.33(2H,q), 4.37(1H,s), 6.49(2H,d), 6.50(1H,s), 8.35(1H,s)
<2−ヒドロキシメチルピロール誘導体>
窒素雰囲気下、水素化リチウムアルミニウム1.24g(32.6mmol)を氷冷下で、脱水THF58mlにゆっくりと加えて攪拌し、系内を0℃とした。なお、以後の作業は反応器をアルミ箔で覆うことにより全て遮光条件で行った。該水素化リチウムTHF溶液に対して、別途調整した、脱水THF58mlに、上記で得られた4,7−ジヒドロ−4,7−エタノ−2H−イソインドール−1−カルボン酸エチル4.55g(21.0mmol)を溶解した溶液を、系内を0℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後も同温度を保ちながら攪拌し、TLCとHPLCにより原料が消失していることを確認して反応の終点とした。
余剰の水素化リチウムアルミニウムを処理するために、反応系のpHを6〜8に維持しながら水およびアルカリを加えた。具体的には、まず水1.24mlをゆっくり滴下後、次に15重量%水酸化ナトリウム水溶液を3.72ml加え、最後に水を1.24ml加えた。この後、系内の粘度が下がるまで約1時間攪拌した。その後セライト濾過により水酸化アルミニウムを取り除き、硫酸ナトリウムで濾液を乾燥させ、溶媒を減圧留去し(この際水浴の温度は20℃以下とする)室温下で真空乾燥させたところ、3.21gの白色粉末が得られた。該粉末は(4−アザ−トリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカ−2,5,8−トリエン−3−イル)−メタノールと、そのメチル体であり、これらのモル比は97/3であった。
<精製>
上記で得られた粉末にTHF3.3ml及びヘキサン33mlを加え、粒形が均等になるまで室温で攪拌後、氷冷下で4時間攪拌して濾取し、真空乾燥したところ薄い桃色粉末の(4−アザ−トリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカ−2,5,8−トリエン−3−イル)−メタノール、2.89g(16.5mmol)を得た(収率78%、純度99.9モル%、メチル体の含有量0.1モル%)。
H−NMR(CDCl,400MHz,δppm):1.50−1.59(4H,m), 3.81−3.85(2H,m), 4.60(2H,s), 6.43(1H,s), 6.48−6.51(2H,m), 7.65(1H,s)
<ポルフィリン化合物の製造>
遮光した1Lジャケット式セパラブルフラスコに精製した(4−アザ−トリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカ−2,5,8−トリエン−3−イル)−メタノール2.01g(11.4mmol)、およびクロロホルム(安定剤アミレン)450mlを加え攪拌を開始した。1Mの塩酸を1.48ml加えた。LCにて原料の消失、及び前駆体であるポルフィリノーゲンが選択的に生成していることを確認した後、クロラニル0.97g(3.9mmol)を加えた。1時間半後、ポルフィリノーゲンが一部残存していることがLCにて判明したため、更にクロラニル0.097g(0.39mmol)を加え1時間攪拌した。LCにて目的のポリフィリン化合物の収率が78%であることを確認した。
[比較例1]
遮光した50mlナスフラスコに、実施例1で得られた、未精製の(4−アザ−トリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカ−2,5,8−トリエン−3−イル)−メタノール151mg(メチル体を3モル%含む)をクロロホルム18.8mlに加え室温で攪拌した。1Mの塩酸114μlを加えLCにて原料が消失したことを確認後クロラニル73mg(0.29mmol)加えた。LCにて目的のポリフィリン化合物の収率を解析すると、51%であった。
実施例1と比較例1の結果より、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を精製することでポリフィリン化合物の収率が上がることが明らかである。
[実施例2]
<ポリフィリン化合物の製造>
実施例1のポリフィリン化合物の製造工程において、精製した(4−アザ−トリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカ−2,5,8−トリエン−3−イル)−メタノールをクロロホルムに溶解した後、塩酸を加える前に系中に空気(80〜90ml/min)を通じた以外は実施例1と同様に反応を行ったところ、ポルフィリン化合物の収率は89%となった。
<ポルフィリンの精製>
上記で得られた粗ポリフィリン化合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を100ml加え洗浄した。水層をクロロホルム200mlで再度抽出し、得られた有機層を合わせて飽和食塩水100mlで洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、真空乾燥により残留物2.84gを得た。この残留物をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製後、メタノールで懸濁洗浄することにより精製ポリフィリン化合物1.20g(1.93mmol)を得た(収率68%)。

Claims (5)

  1. ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体を還元して2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を含む反応生成物を得る還元工程と、
    該反応生成物を精製して精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を得る精製工程と、
    該精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を脱水環化し、次いで、酸化してポルフィリン化合物を得る脱水環化・酸化工程と
    を具備することを特徴とするポリフィリン化合物の製造方法。
  2. 請求項1において、ポルフィリン化合物が下記一般式(I)で表されるポリフィリン類であって、ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体が下記一般式(II)で表されるピロール−2−カルボン酸エステル誘導体であって、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体が下記一般式(III)で表される2−ヒドロキシメチルピロール誘導体であることを特徴とするポルフィリン化合物の製造方法。
    Figure 2006151827
    (一般式(I)中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して1価の有機基を表すが、これらは互いに結合して環を形成していても良い。)
    Figure 2006151827
    (一般式(II)中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、一般式(I)におけると同義である。Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
    Figure 2006151827
    (一般式(III)中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、一般式(I)におけると同義である。)
  3. 請求項1又は2において、精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の2−メチルピロール誘導体の含有量が2モル%以下であることを特徴とするポリフィリン化合物の製造方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の脱水環化を酸素存在下で行うことを特徴とするポリフィリン化合物の製造方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の脱水環化を遮光下で行うことを特徴とするポリフィリン化合物の製造方法。
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