JP2006144691A - エンジン用制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジンの温度が上昇したときにスロットルを絞ってもエンジンの軸出力が高い状態に維持される現象が生じたり、エンジンが異常音を発生したりするのを防ぐ。
【解決手段】デトネーション検出手段20が出力するデトネーション検出信号のレベルが判定レベル設定手段27から与えられる判定レベル以上になったときに混合気の空燃比をリッチ化するエンリッチ制御手段30と、エンリッチ制御手段により空燃比を限界までリッチ化してもデトネーション検出信号が判定レベル以上であるときにエンジンの点火動作を間欠的に停止させるように点火装置21を制御するデトネーション抑制用点火制御手段31とを設けた。判定レベル設定手段27は、スロットルバルブ開度が設定開度未満のときに判定レベルを小さい値に切り換えるように構成される。
【選択図】 図3

Description

本発明は、エンジンのデトネーションを抑制する制御を行うエンジン用制御装置に関するものである。
ガソリンエンジンにおいては、点火時期に点火プラグで火花が生じると、点火プラグの近傍の燃料が燃焼を開始し、その燃焼の火炎が燃焼室内を伝搬することにより燃焼が進行して膨張行程が行われる。しかしながら、膨張行程において燃焼室内が局部的に高温の状態になると、火炎の伝搬による燃焼が行われる前に燃料が自然発火する現象が生じる。この現象はデトネーション(異常燃焼)と呼ばれ、燃焼室内の温度を局部的に異常上昇させる。
特に、クランク軸が1回転する間に1燃焼サイクルが行われる2サイクルエンジンにおいては、ピストンやシリンダに対する熱負荷が大きく、点火プラグの先端のアース電極部分等の温度が局部的に高くなり易いため、デトネーションが発生し易い。デトネーションが発生している状態を放置すると、ピストンやシリンダの一部の温度が異常上昇してシリンダーを構成する金属の一部が溶融し、ピストンが焼き付くことがある。そのため、エンジンにおいてデトネーションが発生した場合には速やかにそれを検知して、その発生を抑制するための措置を講じる必要がある。
そこで特許文献1や特許文献2に示されているように、2サイクルエンジンで発生するデトネーションを抑制するための制御方法及び制御装置が多く提案されている。デトネーションを抑制する制御を行う従来のエンジン用制御装置では、デトネーションの発生を検出するセンサを設けて、該センサがデトネーションの発生を検出したときに、混合気の空燃比をリッチ化するエンリッチ制御及びエンジンの点火時期を遅角させる点火時期遅角制御の一方または双方を行うようにしている。
エンジンにおいてデトネーションが発生したときに、混合気の空燃比をリッチ化するエンリッチ制御及び(または)エンジンの点火時期を遅角させる点火時期遅角制御を行うと、燃焼室内の温度を下げることができるため、デトネーションを抑制することができる。
従来のこの種の制御装置では、ピストンの焼き付きを防止することを目的としてデトネーションを抑制するため、軽微なデトネーションの発生は許容するようにしていた。その理由は、デトネーションが発生してもそれが軽微であれば、ピストンの焼き付きは起こらないこと、及び軽微なデトネーションが発生する状態では、かえって燃焼効率が向上して、エンジンの軸出力が高くなることにある。
特開平6−108955号公報 特開2002−357174号公報
上記のように、デトネーションを抑制する制御を行う従来のエンジン用制御装置では、エンジンの出力の向上を図るために、軽微なデトネーションの発生を許容していたが、エンジンの温度がかなり高い状態では、運転者がスロットルを絞り、機関の出力を低下させようと操作した場合にも、軽微なデトネーションが発生することがある。このような状態が生じると、スロットルを絞った状態でも、エンジンの出力が高い状態に維持されるため、スロットル操作により、エンジンの出力を運転者が望む出力まで低下させる調整を行うことができなくなる。
車両を駆動するエンジンにおいて、スロットルを絞っても軸出力を低下させることができない状態は、運転者の意図に反する状態である。このような状態が突然生じると、場合によっては、運転者が車両をコントロールすることができなくなるおそれがあり、好ましくない。
またスロットルバルブが閉じられた状態でデトネーションが発生すると、ゴロゴロという異常燃焼音(ラトルサウンド)が発生するため、運転者及び周囲の人に不快感を与えるという問題があった。
本発明の目的は、エンジンの温度が上昇したときにスロットルを絞ってもエンジンの軸出力が高い状態に維持されたり、スロットルを絞った状態でエンジンから異常音が発生したりするのを防ぐことができるようにしたエンジン用制御装置を提供することにある。
本発明は、燃料供給装置により燃料が供給され、点火装置により点火されるエンジンの燃料供給装置及び点火装置を制御するエンジン用制御装置を対象とする。
本発明においては、エンジンのスロットルバルブの開度を検出するスロットルセンサと、エンジンでデトネーションが発生したときに該デトネーションの強度に応じてレベルが変化するデトネーション検出信号を出力するデトネーション検出手段と、エンジンで抑制の必要があるデトネーションが発生しているか否かを判定するためにデトネーション検出信号のレベルと比較される判定レベルを与える判定レベル設定手段と、デトネーション検出信号のレベルが判定レベル以上であるときにデトネーションを抑制するためにエンジンに供給される混合気の空燃比をリッチ側に変化させるように燃料供給装置を制御するエンリッチ制御手段と、エンリッチ制御手段により空燃比を限界までリッチ化してもデトネーション検出信号が判定レベル以上であるときにデトネーションを抑制するためにエンジンの点火動作を間欠的に停止させるように点火装置を制御するデトネーション抑制用点火制御手段とが設けられる。
そして本発明においては、上記判定レベル設定手段が、スロットルセンサにより検出されたスロットルバルブ開度が設定開度未満のときに判定レベルを第1の値とし、スロットルセンサにより検出されたスロットルバルブ開度が設定開度以上であるときに判定レベルを第1の値よりも大きい第2の値とするように構成される。
上記のように、スロットルバルブの開度が設定値未満になたときに、抑制の必要があるデトネーションが発生しているか否かを判定するためにデトネーション検出信号のレベルと比較される判定レベルを小さい値に切り換えるようにすると、スロットルバルブが絞られたときに、軽微なデトネーションを抑制の必要があるデトネーションとして検出して、デトネーションを抑制するための制御、即ち、混合気の空燃比のリッチ化及び(または)点火時期の遅角若しくは点火動作の間欠的な停止(点火火花の間引き)を行わせて、デトネーションを抑制することができる。
従って、エンジンの温度が上昇して、スロットルを絞ってもデトネーションが発生する状態が生じたときに、直ちにデトネーションを抑止して、スロットルを絞ってもエンジンの出力が高い状態に維持されるといった異常な状態が生じたり、スロットルを絞った際にエンジンから異常音が発生したりするのを防ぐことができる。
本発明の好ましい態様では、上記燃料供給装置が、駆動されている間にエンジンに供給する燃料を噴射するインジェクタと該インジェクタに燃料を与える燃料ポンプとを備えた燃料噴射装置により構成される。この場合、エンリッチ制御手段は、インジェクタの駆動時間を正規の時間よりも延ばすことにより空燃比をリッチ側に変化させるように構成される。
上記のように、燃料供給装置が、駆動されている間にエンジンに供給する燃料を噴射するインジェクタと該インジェクタに燃料を与える燃料ポンプとを備えた燃料噴射装置により構成される場合、エンリッチ制御手段は、燃料ポンプからインジェクタに与える燃料の圧力を高めることにより空燃比をリッチ側に変化させるように構成することもできる。
本発明の他の好ましい態様では、上記燃料供給装置が、駆動されている間にエンジンに供給する燃料を噴射する主インジェクタ及び補助インジェクタと、両インジェクタに燃料を与える燃料ポンプとを備えていて、定常時には主インジェクタを駆動することによりエンジンに燃料を供給するように構成される。この場合、エンリッチ制御手段は、主インジェクタ及び補助インジェクタの双方から燃料を噴射させることにより空燃比をリッチ側に変化させるように構成される。
本発明の他の態様では、燃料供給装置が、燃料の供給量を増加させるエンリッチ機構を備えたキャブレターにより構成される。この場合エンリッチ制御手段は、キャブレターのエンリッチ機構を制御することにより、空燃比をリッチ側に変化させるように構成される。
以上のように、本発明によれば、スロットルバルブの開度が設定値未満になたときに、抑制の必要があるデトネーションが発生しているか否かを判定するためにデトネーション検出信号のレベルと比較される判定レベルを小さい値に切り換えるようにしたので、スロットルバルブが絞られたときに、軽微なデトネーションを抑制の必要があるデトネーションとして検出して、混合気の空燃比のリッチ化及び(または)点火時期の遅角若しくは点火動作の間欠的な停止(点火火花の間引き)を行わせて、デトネーションを抑制することができる。
従って本発明によれば、エンジンの温度が上昇して、スロットルを絞ってもデトネーションが発生する状態が生じたときに直ちにデトネーションを抑止して、スロットルを絞ってもエンジンの出力が高い状態に維持されるといった異常な状態が生じたり、スロットルを絞った際にエンジンから異常音が発生したりするのを防ぐことができる。
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施形態のハードウェアの構成を示している。同図において、1は2サイクルエンジンで、エンジン1には、インジェクタ2と、点火コイル3と、スロットルバルブの開度を検出するスロットルセンサ4と、クランク角センサ5と、デトネーションセンサ6とが取り付けられている。
インジェクタ2は、エンジン1の吸気管内または燃焼室内に燃料を噴射するように取り付けられていて、駆動されたときにそのバルブを開いて内燃機関に供給する燃料を噴射する。インジェクタには図示しない燃料ポンプから燃料が供給されている。インジェクタに与えられる燃料の圧力は圧力レギュレータにより一定に保たれるため、インジェクタから噴射される燃料の量は、インジェクタを駆動する時間により管理される。インジェクタを駆動する時間は、無効噴射時間(インジェクタの駆動を開始してから燃料の噴射が開始されるまでの時間)とインジェクタの弁が開いて実際に燃料を噴射する時間とにより決められる。
点火コイルは、後記する点火回路と共に点火装置を構成するもので、一次コイルと二次コイルとからなり、二次コイルがエンジンのシリンダヘッドに取り付けられた点火プラグに接続されている。
スロットルセンサ4は、エンジンのスロットルバルブの操作軸に取り付けられてたポテンショメータなどからなっていて、エンジンのスロットルバルブの開度に比例した電圧信号を発生する。
クランク角センサ5は、エンジンのクランク軸に取り付けられたロータと、エンジンのケースなどに取り付けられた信号発電子とからなっていて、ロータに設けられた突起または凹部からなるリラクタの回転方向の前端側のエッジ及び後端側のエッジをそれぞれ検出して、極性が異なる第1及び第2のパルス信号を発生する。クランク角センサが発生する第1のパルス信号または第2のパルス信号が、内燃機関の点火時期の計測を開始する基準クランク角位置、及びインジェクタの駆動時間の計測を開始する基準クランク角位置として用いられる。
デトネーションセンサ6は、エンジンのシリンダに取り付けられて、エンジンの燃焼室からシリンダに伝わる振動の情報を含む電気信号を発生するノッキングセンサ、または点火プラグの取り付け用座部と点火プラグ取付け孔の周辺部との間に挿入されて、エンジンの燃焼圧の情報を含む電気信号を発生する座形燃焼圧センサ(GPSセンサ)からなっている。デトネーションが発生したときには、デトネーションセンサの出力に含まれる特定の周波数帯域の信号成分が増大するため、デトネーションセンサの出力に信号処理を施して特定の周波数帯域の信号成分を取り出すことにより、発生しているデトネーションの強度に比例したデトネーション検出信号を得ることができる。
図1において、10は、電子式制御装置(ECU)で、マイクロコンピュータ11と、インジェクタ駆動回路12と、点火回路13と、波形整形回路14と、A/D変換回路15と、デトネーション検出回路16とを備えている。
インジェクタ駆動回路12は、マイクロコンピュータ11から噴射指令Sjが与えられたときにインジェクタ2に駆動電圧を与える回路で、この回路は、噴射指令信号Sjが与えられている間オン状態になって図示しない電源回路からインジェクタ2に駆動電圧を与えるスイッチ回路からなっている。噴射指令信号Sjは無効噴射時間と実噴射時間との和に相当する信号幅を有する矩形波状の信号である。
点火回路13は、マイクロコンピュータ11から点火指令信号Siが与えられたときに点火コイル3の一次電流に急激な変化を生じさせるように点火コイルの一次電流を制御して、点火コイルの二次コイルに点火用の高電圧を誘起させる回路で、この回路としては、コンデンサ放電式の回路や、電流遮断式の回路など、公知の回路を用いることができる。
波形整形回路14は、クランク角センサ5が出力するパルス信号をマイクロコンピュータが認識し得る信号に変換してマイクロコンピュータの所定のポートに入力する。
A/D変換回路15は、スロットルセンサ4が出力するスロットル開度検出信号をデジタル信号に変換してマイクロコンピュータの所定のポートに入力する。
デトネーション検出回路16は、例えばデトネーションセンサ6の出力を入力として、デトネーション発生時に増大する周波数帯域の信号成分のみを通過させる帯域フィルタからなっていて、デトネーション検出信号Vdをマイクロコンピュータ11の所定のポートに入力する。
マイクロコンピュータ11は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、エンジンを運転するために必要な各種の手段を構成する。本実施形態において、マイクロコンピュータ11により構成される手段を含むエンジン用制御装置の全体的な構成例を図3に示した。
図3において、20は、デトネーションセンサ6とデトネーション検出回路16とにより構成されるデトネーション検出手段であり、この検出手段は、デトネーションの強度に相応したレベルの電圧信号からなるデトネーション検出信号を出力する。また22はインジェクタ2と該インジェクタに燃料を供給する燃料ポンプとインジェクタを駆動するインジェクタ駆動回路12とにより構成される燃料供給装置、23はエンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段、24は抑制する必要があるデトネーションが発生していないエンジンの定常運転時において、回転速度検出手段23により検出された回転速度に対してエンジンを最適の点火時期に点火するように点火装置21を制御する定常時点火制御手段で、この点火制御手段は、点火時期演算手段24Aと、点火指令発生手段24Bとにより構成される。
また図3において25は、抑制する必要があるデトネーションが発生していないエンジンの定常運転時に各種の制御条件に対して混合気の空燃比を最適な値に保つように燃料供給装置22を制御する定常時燃料噴射制御手段で、この制御手段は、吸入空気量推定手段25Aと、噴射時間演算手段25Bと、噴射指令発生手段25Cとにより構成される。
更に図3において26は、スロットルセンサ4により検出されたスロットルバルブ開度が設定開度未満であるか否かを判定するスロットル開度判定手段、27は、エンジンで抑制する必要があるデトネーションが発生しているか否かを判定するためにデトネーション検出信号と比較される判定レベルを、スロットル開度判定手段26による判定結果に応じて設定する判定レベル設定手段、28は、デトネーション検出信号を判定レベル設定手段27により設定された判定レベルと比較する比較判定手段である。
また29は、比較判定手段28によりデトネーション検出信号のレベルが判定レベルを超えていると判定されたとき(デトネーションが発生していると判定されたとき)に現在の混合気の空燃比がリッチ側の限界にあるか否かを判定するエンリッチ限界検出手段、30は、エンリッチ限界検出手段29により空燃比がリッチ側の限界にないと判定されたときに燃料の噴射時間を延長することにより空燃比をリッチ側に変化させるように燃料供給装置を制御するエンリッチ制御手段、31は、エンリッチ制御手段30により空燃比を限界までリッチ化してもデトネーション検出信号が判定レベル以上であるときにデトネーションを抑制するためにエンジンの点火動作を間欠的に停止させるように点火装置を制御するデトネーション抑制用点火制御手段である。
更に詳細に説明すると、マイクロコンピュータ11は、クランク角センサ5がパルス信号を発生する時間間隔(クランク軸が一定の角度回転するのに要した時間)からエンジンの回転速度を演算する処理を行うことにより回転速度検出手段23を構成する。
マイクロコンピュータ11はまた、点火時期演算用マップを用いて、回転速度検出手段23により検出された回転速度に対してエンジンの点火時期を演算する。点火時期は、クランク角センサ5が基準信号として用いる所定のパルス信号を発生するクランク角位置(基準クランク角位置)から点火時期に相当するクランク角位置(点火位置)までクランク軸が回転する間にマイクロコンピュータ内に設けられた点火タイマに計測させる時間の形で演算される。このようにして点火時期を演算する過程により点火時期演算手段24Aが構成される。
マイクロコンピュータ11は、クランク角センサ5が基準クランク角信号を発生したときに点火タイマに既に演算されている点火時期の計測を開始させ、点火タイマが点火時期の計測を完了したときに点火指令信号Siを発生する。このようにして点火指令信号を発生させる過程により、点火指令発生手段24Bが構成され、点火時期演算手段24Aと、点火指令発生手段24Bとにより、デトネーションが発生していないエンジンの定常運転時の点火時期を制御する定常時点火制御手段24が構成される。
マイクロコンピュータ11はまた、回転速度検出手段23により検出された回転速度と、スロットルセンサ4により検出されたスロットル開度とからエンジンの吸入空気量を推定する吸入空気量推定手段25Aと、推定された吸入空気量に対して所定の空燃比を得るために必要な基本噴射時間を演算し、この基本噴射時間に、図示しない大気圧センサにより検出された大気圧、図示しない温度センサにより検出されたエンジンの冷却水温度、吸気温度などの各種の制御条件に対してそれぞれ求めた補正係数を乗じることにより、実際の燃料噴射時間を演算する噴射時間演算手段25Bと、噴射時間演算手段25Bにより演算された噴射時間の間インジェクタから燃料を噴射させるように噴射指令信号Sjを発生する噴射指令発生手段25Cとを構成する。噴射指令発生手段25Cは、噴射時間演算手段25Bにより演算された噴射時間に無効噴射時間を加えた時間をインジェクタの駆動時間として、基準クランク角信号が発生したときに噴射タイマに該駆動時間の計測を開始させると共に、噴射指令信号Sjを発生させてインジェクタ2に駆動電圧を与え、噴射タイマが駆動時間の計測を完了したときに噴射指令信号Sjを消滅させる。上記吸入空気量推定手段25Aと、噴射時間演算手段25Bと、噴射指令発生手段25Cとにより、定常時燃料噴射制御手段25が構成される。
マイクロコンピュータ11はまた、スロットルセンサ4により検出されたスロットルバルブ開度(スロットル開度)が設定開度未満であるか否かを判定して、スロットル開度が設定開度未満のときに判定レベルを第1の値とし、スロットルバルブ開度が設定開度以上であるときに判定レベルを第1の値よりも大きい第2の値とする。上記のように、スロットルセンサ4により検出されたスロットル開度が設定開度未満であるか否かを判定する過程によりスロットル開度判定手段26が構成され、スロットル開度が設定開度未満のときに判定レベルを第1の値とし、スロットルバルブ開度が設定開度以上であるときに判定レベルを第1の値よりも大きい第2の値とするように判定レベルを設定する過程により判定レベル設定手段27が構成される。
マイクロコンピュータ11はまた、デトネーション検出回路16から得られるデトネーション検出信号のレベルを判定レベル設定手段27により設定された判定レベルと比較して、デトネーション検出信号のレベルが判定レベルよりも大きいときに抑制する必要があるデトネーションが発生していると判定して、現在の空燃比がリッチ側の限界に達しているか否かを判定する。この判定は、例えば、吸入空気量推定手段15Aにより推定されている吸入空気量と、噴射時間演算手段により演算された噴射時間とから行う。デトネーション検出信号のレベルを判定レベル設定手段27により設定された判定レベルと比較する過程により比較判定手段28が構成され、現在の空燃比がリッチ側の限界に達しているか否かを判定する過程によりエンリッチ限界検出手段29が構成される。
マイクロコンピュータ11は、比較判定手段28によりデトネーション検出信号のレベルが判定レベル以上であると判定され、かつエンリッチ限界検出手段29により、空燃比がリッチ側の限界に達していないと判定されたときに、エンジンに供給される混合気の空燃比をリッチ側に変化させてデトネーションを抑制するために、噴射時間演算手段25Cにより演算された噴射時間を予め定めた時間だけ延長する。このように噴射時間を延長する過程によりエンリッチ制御手段30が構成される。
マイクロコンピュータはまた、比較判定手段28によりデトネーション検出信号のレベルが判定レベル以上であると判定され、かつエンリッチ限界検出手段29により、空燃比がリッチ側の限界に達していると判定されたときに、一定の時間毎に、または所定の周期で、点火指令発生手段24Bからの点火指令信号Siの出力を停止させることにより、点火動作を間欠的に停止させる。このように、空燃比がリッチ側の限界に達していると判定されたときに、一定の時間毎に、または所定の周期で点火指令発生手段24Bからの点火指令信号Siの出力を停止させて点火動作を間欠的に停止させる過程により、デトネーション抑制用点火制御手段31が構成される。
スロットル開度判定手段26、判定レベル設定手段27、比較判定手段28、エンリッチ限界検出手段29、エンリッチ制御手段30及びデトネーション抑制用点火制御手段31を構成するために一定の時間毎にマイクロコンピュータに実行させるデトネーション制御タスクのアルゴリズムを示すフローチャートを図7に示した。
図7に示したアルゴリズムによる場合には、先ずステップ1において、現在のクランク角位置がデトネーションの検出を行うクランク角位置(デトネーション検出クランク角位置)であるか否かを判定し、その結果デトネーション検出クランク角位置でなかった場合には、以後何もしないでこのタスクを終了する。本実施形態では、エンジンのデトネーションが発生しやすいクランク角範囲に含まれる各クランク角位置、例えば、クランク軸がピストンの上死点に相応する位置から45度回転する間の各クランク角位置をデトネーション検出クランク角位置として設定しておく。
ステップ1で現在のクランク角位置がデトネーション検出クランク角位置であると判定されたときには、ステップ2に移行してデトネーション検出回路16から出力されるデトネーション検出信号のレベルを読み込み、ステップ3でスロットルセンサにより検出されたスロットル開度を読み込む。次いでステップ4でスロットル開度が予め設定した設定開度未満であるか否かを判定し、スロットル開度が設定開度未満であるときにはステップ5に進んで判定レベルを第1の値とした後、ステップ6においてデトネーション検出信号のレベルが判定レベル以上であるか否かを判定する。その結果、デトネーション検出信号のレベルが判定レベル以上であるときには、ステップ7で混合気の空燃比がリッチ側の限界であるか否かを判定し、空燃比がリッチ側の限界でない場合には、ステップ8に進んで空燃比エンリッチ化テーブルから読み出した一定の延長時間Δtだけ噴射時間を延長してこのタスクを終了する。空燃比エンリッチ化テーブルは、デトネーション検出信号のレベルが高い場合ほど延長時間Δtを長くするように、デトネーション検出信号のレベルと延長時間Δtとの間の関係を規定したテーブルで、デトネーション検出信号のレベルに対してこのテーブルを検索することにより、エンジンで発生しているデトネーションを抑止するために噴射時間に加算する延長時間Δtの適値を求めることができるようになっている。
ステップ7において、混合気の空燃比がリッチ側の限界であると判定されたときには、ステップ9に進んで点火間引きテーブルから読み出した一定の点火動作停止時間の間点火指令発生手段24Bからの点火指令信号Siの発生を停止させて、エンジンの点火動作を間欠的に停止させる(点火火花を間引く)制御を行わせてこのタスクを終了する。点火間引きテーブルは、デトネーション検出信号のレベルが高い場合ほど点火動作停止時間を長くするように、デトネーション検出信号のレベルと点火動作停止時間との間の関係を規定したテーブルで、デトネーション検出信号のレベルに対してこのテーブルを検索することにより、エンジンで発生しているデトネーションを抑止するために適した点火動作停止時間を求めることができるようになっている。
図7のステップ6で、デトネーション検出信号のレベルが判定レベル未満であると判定されたとき(抑制する必要があるデトネーションが発生していないと判定されたとき)には、エンリッチ制御及びデトネーション抑制用点火制御を禁止して、定常時の燃料噴射制御及び点火時期制御に移行させる。
またステップ4において、スロットル開度が設定開度以上であると判定されたときには、ステップ11に進んで判定値を前記第1の値よりも大きい第2の値とし、ステップ12でデトネーション検出信号のレベルを判定レベルと比較する。その結果、デトネーション検出信号のレベルが判定レベル以上であると判定されたときには、ステップ13に移行してエンリッチ制御及びデトネーション抑制用点火制御を許可して通常の(スロットルバルブが開かれている状態での)デトネーション抑制制御を行わせる。ステップ12でデトネーション検出信号のレベルが判定レベル以上でない(未満である)と判定されたときには、ステップ14に進んで抑制する必要がないデトネーションが発生していない状態での定常時の点火制御及び燃料噴射制御に移行させる。
図7に示したアルゴリズムによる場合には、ステップ4によりスロットル開度判定手段26が構成され、ステップ5及び11により判定レベル設定手段27が構成される。またステップ6及び12により、比較判定手段28が構成され、ステップ7によりエンリッチ限界検出手段29が構成される。またステップ8によりエンリッチ制御手段30が構成され、ステップ9によりデトネーション抑制用点火制御手段31が構成される。
上記の実施形態では、インジェクタの駆動時間を正規の時間よりも延ばすことにより空燃比をリッチ側に変化させるようにエンリッチ制御手段30が構成されているが、エンリッチ制御手段の構成は上記の例に限定されない。
即ち、図2に示したように、エンジン1に燃料を供給する燃料供給装置の燃料供給量を調節する手段をエンリッチ手段40として、このエンリッチ手段をマイクロコンピュータからの指令により駆動回路41を通して駆動し得るようにしておき、混合気の空燃比をリッチ側に変化させる際に、エンリッチ手段40を駆動して燃料供給量を増加させるようにしてもよい。
例えば、図4に示したように、燃料供給装置が、駆動されている間にエンジン1に供給する燃料を噴射するインジェクタ2と、インジェクタ2に燃料を与える燃料ポンプ42と、燃料ポンプ42からインジェクタ2に与えられる燃料の圧力を調整する圧力調整器43とを備えている場合には、駆動回路41によりアクチュエータ44を駆動することによって圧力調整器43の調整圧力を変化させ得るようにしておいて、圧力調整器43の調整圧力を制御することにより、燃料ポンプからインジェクタに与える燃料の圧力を高めて空燃比をリッチ側に変化させるようにエンリッチ制御手段30を構成することができる。
また図5に示すように、駆動されている間にエンジンに供給する燃料を噴射する主インジェクタ2A及び補助インジェクタ2Bと、主インジェクタ2A及び補助インジェクタ2Bをそれぞれ駆動する主インジェクタ駆動回路12A及び補助インジェクタ駆動回路12Bと、両インジェクタに燃料を与える燃料ポンプ(図示せず。)とを備えて、定常時には主インジェクタ2Aを駆動することによりエンジン1に燃料を供給する燃料噴射装置により燃料供給装置を構成して、主インジェクタ2A及び補助インジェクタ2Bの双方から燃料を噴射させることにより空燃比をリッチ側に変化させるようにエンリッチ制御手段30を構成しても良い。
更に図6に示したように、燃料の供給量を増加させるエンリッチ機構を備えたキャブレター45により燃料供給装置22を構成し、キャブレターのエンリッチ機構と、このエンリッチ機構を操作するアクチュエータ42´とをエンリッチ手段40として、駆動回路41を通してアクチュエータ42´を駆動してエンリッチ機構を操作することにより燃料供給量を増量する制御を行わせるようにエンリッチ制御手段30を構成しても良い。
上記の説明では、エンジンの気筒数について特に触れなかったが、本発明はエンジンの気筒数の如何に関わりなく適用することができる。
本発明の第1の実施形態のハードウェアの構成を示したブロック図である。 本発明の第2の実施形態のハードウェアの構成を示したブロック図である。 本発明の第1及び第2の実施形態の、マイクロコンピュータにより構成される手段を含む全体的な構成を示したブロック図である。 本発明の第1の実施形態で用いる燃料供給装置及びエンリッチ制御手段の一構成例を示したブロック図である。 本発明の第1の実施形態で用いる燃料供給装置及びエンリッチ制御手段の他の構成例を示したブロック図である。 本発明の第2の実施形態で用いる燃料供給装置及びエンリッチ制御手段の更に他の構成例を示したブロック図である。 本発明の第1及び第2の実施形態においてデトネーション制御を行わせるためにマイクロコンピュータに実行させるプログラムの要部のアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
符号の説明
1 エンジン
2 インジェクタ
3 点火コイル
4 スロットルセンサ
5 クランク角センサ
6 デトネーションセンサ
10 ECU
11 マイクロコンピュータ
12 インジェクタ駆動回路
13 点火回路
20 デトネーション検出手段
21 点火装置
22 燃料供給装置
26 スロットル開度判定手段
27 判定レベル設定手段
28 比較判定手段
29 エンリッチ限界検出手段
30 エンリッチ制御手段
31 デトネーション抑制用点火制御手段

Claims (5)

  1. 燃料供給装置により燃料が供給され、点火装置により点火されるエンジンを制御するエンジン用制御装置であって、
    前記エンジンのスロットルバルブの開度を検出するスロットルセンサと、
    前記エンジンでデトネーションが発生したときに該デトネーションの強度に応じてレベルが変化するデトネーション検出信号を出力するデトネーション検出手段と、
    前記エンジンで抑制の必要があるデトネーションが発生しているか否かを判定するために前記デトネーション検出信号のレベルと比較される判定レベルを与える判定レベル設定手段と、
    前記デトネーション検出信号のレベルが前記判定レベル以上であるときに前記デトネーションを抑制するために前記エンジンに供給される混合気の空燃比をリッチ側に変化させるように前記燃料供給装置を制御するエンリッチ制御手段と、
    前記エンリッチ制御手段により前記空燃比を限界までリッチ化しても前記デトネーション検出信号が判定レベル以上であるときに前記デトネーションを抑制するために前記エンジンの点火動作を間欠的に停止させるように前記点火装置を制御するデトネーション抑制用点火制御手段とを具備し、
    前記判定レベル設定手段は、前記スロットルセンサにより検出されたスロットルバルブ開度が設定開度未満のときに前記判定レベルを第1の値とし、前記スロットルセンサにより検出されたスロットルバルブ開度が設定開度以上であるときに前記判定レベルを前記第1の値よりも大きい第2の値とするように構成されているエンジン用制御装置。
  2. 前記燃料供給装置は、駆動されている間に前記エンジンに供給する燃料を噴射するインジェクタと該インジェクタに燃料を与える燃料ポンプとを備えた燃料噴射装置からなり、
    前記エンリッチ制御手段は、前記インジェクタの駆動時間を正規の時間よりも延ばすことにより前記空燃比をリッチ側に変化させるように構成されている請求項1に記載のエンジン用制御装置。
  3. 前記燃料供給装置は、駆動されている間に前記エンジンに供給する燃料を噴射するインジェクタと該インジェクタに燃料を与える燃料ポンプとを備えた燃料噴射装置からなり、
    前記エンリッチ制御手段は、前記燃料ポンプからインジェクタに与える燃料の圧力を高めることにより前記空燃比をリッチ側に変化させるように構成されている請求項1に記載のエンジン用制御装置。
  4. 前記燃料供給装置は、駆動されている間に前記エンジンに供給する燃料を噴射する主インジェクタ及び補助インジェクタと両インジェクタに燃料を与える燃料ポンプとを備えた燃料噴射装置からなっていて、定常時には前記主インジェクタを駆動することにより前記エンジンに燃料を供給するように構成され、
    前記エンリッチ制御手段は、前記主インジェクタから燃料を噴射させるだけでなく、前記補助インジェクタからも燃料を噴射させることにより前記空燃比をリッチ側に変化させるように構成されている請求項1に記載のエンジン用制御装置。
  5. 前記燃料供給装置は、燃料の供給量を増加させるエンリッチ機構を備えたキャブレターからなり、
    前記エンリッチ制御手段は、前記キャブレターのエンリッチ機構を制御することにより、前記空燃比をリッチ側に変化させるように構成されている請求項1に記載のエンジン用制御装置。
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