以下、図面を参照して、本発明に係るエンジン始動制御装置及びエンジン始動方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本実施形態のエンジン始動制御装置としての機能を含むエンジン制御システム1の概略構成を示すブロック図である。エンジン制御システム1は、自動二輪等に搭載されたエンジン20の回転数を制御するためのシステムである。本実施形態におけるエンジン20は、3つの気筒(第1気筒21、第2気筒22及び第3気筒23)を有するレシプロエンジンである。このようなエンジン20は、気筒ごとに、燃料を噴射するインジェクタと、燃料を含む混合気に着火するためのイグニッションコイルとを備えている。なお、以下の説明において、必要に応じて、第1気筒21に設置されたインジェクタ及びイグニッションコイルを第1インジェクタ21a及び第1イグニッションコイル21bと称し、第2気筒22に設置されたインジェクタ及びイグニッションコイルを第2インジェクタ22a及び第2イグニッションコイル22bと称し、第3気筒23に設置されたインジェクタ及びイグニッションコイルを第3インジェクタ23a及び第3イグニッションコイル23bと称する。また、第1インジェクタ21a、第2インジェクタ22a及び第3インジェクタ23aは、例えば各気筒の燃焼室に接続されるポートに配置されており、第1イグニッションコイル21b、第2イグニッションコイル22b及び第3イグニッションコイル23bは各気筒の燃焼室に配置されている。
なお、第1気筒21、第2気筒22及び第3気筒23は、それぞれが気筒内に空気を取り込む吸気行程と、空気を圧縮する圧縮行程と、空気と燃料とを燃焼させる爆発行程と、燃焼ガスを気筒から排気する排気行程とを順に行う。各気筒における同一行程は、異なるクランク角で開始される。例えば、第1気筒21の吸気行程と、第2気筒22の吸気行程と、第3気筒23の吸気行程とは、時系列的に異なるタイミング(すなわち異なるクランク角)で開始される。
また、エンジン20に対しては、温度センサ24とクランク角センサ25とが設置されている。温度センサ24は、エンジン20の冷却水の温度を計測し、この計測結果を示す信号を出力する。クランク角センサ25は、エンジン20のクランクシャフトに固定されると共にクランクシャフトと共に回転されるロータの歯の通過を示すパルス信号を出力する。このようなパルス信号のパルス間隔は、エンジン20の回転数を示す。つまり、クランク角センサ25は、エンジン20の回転数を含む信号を出力する。
また、本実施形態において、ロータは、等間隔で周方向に配列された複数歯を有しているが、周方向の1箇所に欠歯領域(歯が設けられていない領域)を有している。この欠歯領域は、クランクシャフトが、第1気筒21が吸気行程の初期段階となるクランク角である場合に、クランク角センサ25の計測範囲に位置するように配置されている。つまり、クランク角センサ25から出力されるパルス信号では、第1気筒21が吸気行程の初期段階となるクランク角となったときに、略等間隔のパルスが欠損することになる。このクランク角センサ25から出力されるパルス信号においてパルスが欠損するクランク角を、本実施形態においては基準角としている。
本実施形態のエンジン制御システム1は、図1に示すように、スロットルバルブ2と、バルブ駆動モータ3と、セルモータ4と、リレー5と、スタータスイッチ6と、イグニッションスイッチ7と、バッテリ8と、エンジン始動制御装置9とを備えている。
スロットルバルブ2は、エンジン20の吸気量を調整するためのバルブである。このスロットルバルブ2は、姿勢変更可能な円板状の弁体を備えており、弁体の流れ方向に対する傾斜角度を変更することによって、空気の通過量(すなわちエンジン20の吸気量)を調整する。バルブ駆動モータ3は、例えば3相ブラシレスモータであり、出力軸が不図示の減速機を介してスロットルバルブ2の弁体と結合されている。このバルブ駆動モータ3は、エンジン始動制御装置9の後述するスロットルバルブコントローラ9bから入力される3相駆動信号に応じて回転される。
セルモータ4は、バッテリ8から供給される直流電力によって回転動力を生成する直流モータであり、エンジン20のクランクシャフトに接続されている。このセルモータ4は、リレー5及びイグニッションスイッチ7を介してバッテリ8と接続されており、イグニッションスイッチ7がオン状態で、さらにリレー5が通電可能とされた場合に、バッテリ8と電気的に接続される。このようなセルモータ4は、バッテリ8と接続された場合に、バッテリ8から供給される直流電力を回転動力に変換してエンジン20のクランクシャフトに伝達することにより、いわゆるクランキングを行う。
リレー5は、セルモータ4とイグニッションスイッチ7との間に配置されており、スタータスイッチ6が押下されている間、イグニッションスイッチ7を介してバッテリ8とセルモータ4とを電気的に接続する。スタータスイッチ6は、例えば自動二輪車のハンドル部分に設置されており、乗員により押下されている間、リレー5を通電可能とするスイッチである。イグニッションスイッチ7は、例えば不図示のキーを挿入しかつ回動させることによって接続されるスイッチである。このイグニッションスイッチ7がオン状態となることによって、バッテリ8の電力がエンジン始動制御装置9の後述のECU9a及びスロットルバルブコントローラ9bに供給される。また、イグニッションスイッチ7がオン状態となることによって、リレー5を介してセルモータ4にバッテリ8の電力を供給可能な状態となる。バッテリ8は、イグニッションスイッチ7を介してエンジン始動制御装置9に接続されている。また、バッテリ8は、イグニッションスイッチ7及びリレー5を介してセルモータ4に接続されている。
エンジン始動制御装置9は、ECU(Engine Control Unit)9aと、ECU9aの制御の下にバッテリ電力から3相駆動信号を生成してバルブ駆動モータ3に供給するスロットルバルブコントローラ9bとを備えている。ECU9aは、エンジン20の運転状態を統括的に制御するものであり、演算処理を行うMPU(Micro-processing unit)や各種データやプログラム等を記憶するメモリ等を備えている。
このようなECU9aは、例えば、温度センサ24やクランク角センサ25等からの入力に基づいて、スロットルバルブ2の開度を算出し、算出したスロットルバルブ2の開度を示す制御信号をスロットルバルブコントローラ9bに入力する。また、ECU9aは、温度センサ24やクランク角センサ25等からの入力に基づいて、第1インジェクタ21a 第1イグニッションコイル21b 第2インジェクタ22a 第2イグニッションコイル22b 第3インジェクタ23a 第3イグニッションコイル23bの制御も行う。なお、ECU9aは、エンジン始動制御のみならず、始動後におけるエンジン20の動作の制御も行う。
また、ECU9aは、エンジン20を停止状態から始動する制御(エンジン始動制御)において、スロットルバルブ2の開度を制御する。本実施形態においてECU9aは、エンジン始動制御にて、クランキング開始前のバッテリ電圧に応じてスロットルバルブ2を始動目標開度とするタイミングを設定する。この始動目標開度は、エンジン20の回転数がアイドリングにおける目標回転数に早期に安定するように設定された開度であり、実験やシミュレーションによって予め求められた上でメモリに記憶されている。なお、始動目標開度は、始動前のエンジン20の温度(冷却水の温度)によって変更することが好ましい。このため、本実施形態においては、冷却水の温度と始動目標開度との関係を示すテーブル(目標開度テーブル)がECU9aのメモリに記憶されている。
また、ECU9aは、エンジン20がアイドリング可能となるスロットルバルブ2の最小開度(制御ゼロ開度)を記憶している。なお、この制御ゼロ開度は、アイドリングが可能な程度にエンジン20が吸気可能な開度であり、スロットルバルブ2が機械的に全閉となる開度とは異なる。このような制御ゼロ開度は、エンジン20の制御上においてゼロとされる開度であり、実験やシミュレーションによって予め求められた上でメモリに記憶されている。すなわち、制御ゼロ開度をゼロとして、スロットルバルブ2の開度の目標値や検出値が定められる。
なお、本実施形態においては、クランク角センサ25によってクランキング開始から最初のロータの欠歯(初回欠歯)が検出された後に、エンジン20の各気筒に対して燃料が供給される。つまり、本実施形態においては、クランキング開始から初回欠歯が検出される前は、セルモータ4からの動力のみでエンジン20が回転される。このような状態では、いずれかの気筒が吸気行程である場合やいずれの気筒も圧縮行程にない場合にエンジン回転数が上昇し、いずれかの気筒が圧縮行程にある場合にエンジン回転数が低下する。つまり、クランキング開始から初回欠歯が検出される前は、エンジン20の回転数が大きく変動する。このようなクランキング中のエンジン回転数の低下は、圧縮行程における気筒内に存在する空気の圧縮抵抗が1つの要因となるものである。また、エンジンフリクションも、クランキング中のエンジン回転数の低下の1つの要因となる。
ここで、セルモータ4のトルクが十分でなく小さい場合には、セルモータ4のトルクが十分に大きい場合と比較して、クランキング中のエンジン回転数の低下幅が大きくなる。つまり、セルモータ4のトルクの違いによって、クランキング中のエンジン回転数の最小値は、大きく変動する。一方で、クランキング中のエンジン回転数の最大値は、例えばいずれの気筒も圧縮行程にない状態であることから、セルモータ4のトルクの違いによって、大きく変動しない。このため、クランキング中のエンジン回転数の最大値とクランキング中のエンジン回転数の最小値との差分は、セルモータ4のトルクによって変化し、セルモータ4のトルクが相対的に大きい場合には小さくなり、セルモータ4のトルクが相対的に小さい場合には大きくなる。
そこで、本実施形態において、ECU9aは、初回欠歯が検出されるまでの間において、クランク角センサ25から出力されるパルス信号(クランク角センサ出力信号)のパルス時間間隔の最大値(以下、最大パルス時間間隔Tmax)を記憶する。また、ECU9aは、クランキング開始から最初にクランク角センサ25によってロータの欠歯が検出されるまでの間において、クランク角センサ25から出力されるパルス信号のパルス時間間隔の最小値(以下、最小パルス時間間隔Tmin)を記憶する。さらに、ECU9aは、最大パルス時間間隔Tmaxと最小パルス時間間隔Tminとの差分ΔTを求め、この差分ΔTに基づいてスロットルバルブを上記始動目標開度とするタイミングを変更する。
より具体的には、ECU9aは、差分ΔTと比較するための基準パルス時間間隔T1を記憶している。この基準パルス時間間隔T1は、初回欠歯が検出されるまでの間において、上記の差分ΔTがこの値以上である場合に、セルモータ4において最小限のトルクしか発生できないことを示す閾値である。ここで、「セルモータ4において最小限のトルクしか発生できない」とは、スロットルバルブ2が制御ゼロ開度でないとクランクシャフトを回動させることができないことを意味する。つまり、上記の差分ΔTが基準パルス時間間隔T1以上である場合には、スロットルバルブ2が制御ゼロ開度でないとクランクシャフトを回動させることができない恐れがある。
このように本実施形態においてECU9aは、最大パルス時間間隔Tmaxと最小パルス時間間隔Tminとの差分ΔTに基づいてスロットルバルブを上記始動目標開度とするタイミングを変更する。例えば、ECU9aは、差分ΔTが基準パルス時間間隔T1よりも小さい場合には、スロットルバルブ2を始動目標開度とするタイミングを、差分ΔTと基準パルス時間間隔T1との比較の直後とする。また、例えば、ECU9aは、差分ΔTが基準パルス時間間隔T1以上である場合には、スロットルバルブ2を始動目標開度とするタイミングを完爆(混合気への着火)後とする。つまり、ECU9aは、差分ΔTが大きいほど、スロットルバルブ2を始動目標開度とするタイミングを遅らせる。
なお、クランキング開始直後は、慣性によりエンジン回転数が極めて低い。このため、最大パルス時間間隔Tmaxの取得は、エンジン回転数がある程度上昇してからの方が好ましい。このため、本実施形態においてECU9aは、クランキング開始から一定の期間をマスキング期間として、差分ΔTを算出するための最大パルス時間間隔Tmax及び最小パルス時間間隔Tminの取得を行わないようにしている。つまり、本実施形態においては、クランキング開始から一定期間のマスキング期間が設けられている。このマスキング期間は、例えば所定期間が経過すること、あるいは、クランキング開始からエンジン回転数が所定の回転数まで上昇することによって解除される。
続いて、図2のタイミグチャート、図3のフローチャートを参照して、本実施形態のエンジン制御システム1によるエンジン始動方法について説明する。なお、図2は、クランク角センサ25の出力信号(クランク角センサ出力)と、各インジェクタ(第1インジェクタ21a、第2インジェクタ22a及び第3インジェクタ23a)における燃料の噴射タイミングと、各イグニッションコイル(第1イグニッションコイル21b、第2イグニッションコイル22b及び第3イグニッションコイル23b)による点火タイミングと、スロットルバルブ2の開度と、イグニッションスイッチ7のオンオフ状態と、スタータスイッチ6のオンオフ状態とを示すタイミングチャートである。図3は、エンジン始動時のECU9aの処理フローを示すフローチャートである。
乗員によってイグニッションスイッチ7がオン状態とされると、バッテリ8とエンジン始動制御装置9とが通電され、ECU9a及びスロットルバルブコントローラ9bにバッテリ8より給電される。ECU9aは、バッテリ8より給電されることで起動されると、図3に示すように、エンジン20が停止中であるか否かの判断を行う(ステップS1)。ここでは、ECU9aは、クランク角センサ25から入力される信号に基づいて、エンジン20が停止中であるか否かの判断を行う。
そして、ECU9aは、エンジン20が停止中ではあると判定した場合には、スロットルバルブ2の開度を制御ゼロ開度にすることを示す制御信号を出力する(ステップS2) 。このようにECU9aから出力された制御ゼロ開度とすることを示す制御信号は、スロットルバルブコントローラ9bに入力される。スロットルバルブコントローラ9bは、スロットルバルブ2の開度を制御ゼロ開度とするための駆動信号をバッテリ8の電力から生成し、バルブ駆動モータ3に供給する。この結果、図2に示すように、スロットルバルブ2の開度が制御ゼロ開度TH0となる。
続いて、ECU9aは、クランキングが開始されるまで待機する(ステップS3)。乗員によってスタータスイッチ6がオン状態とされると、バッテリ8からセルモータ4に電力が供給され、セルモータ4によってエンジン20のクランクシャフトが回転されるクランキングが開始される。クランキングが開始され、セルモータ4によってエンジン20のクランクシャフトが回転されると、クランク角センサ25からパルス信号がECU9aに入力される。クランク角センサ25から入力されるパルス信号により、クランキングが開始されたか否かの判断を行う。
なお、ステップS1においてエンジン20が停止中でないと判断された場合、及び、ステップS7においてクランキング中でないと判断された場合には、ECU9aは、エンジン20の始動制御を終了する。
ECU9aは、ステップS3においてクランキングが開始されたと判断した場合には、マスキング期間が経過するまで待機する(ステップS4)。マスキング期間が経過すると、ECU9aは、最小パルス時間間隔Tminの取得(ステップS5)と、最大パルス時間間隔Tmaxの取得(ステップS6)とを行う。図2に示すように、初回欠歯までのエンジン回転数(パルス時間間隔)は大きく変動する。このため、ECU9aは、マスキング期間経過後において、初回欠歯が検出されたと判断する(ステップS7)まで、繰り返し最小パルス時間間隔Tminと最大パルス時間間隔Tmaxとを取得する。なお、ECU9aは、2回目以降に取得した最小パルス時間間隔Tminが現在記憶している最小パルス時間間隔Tminよりも小さい場合には、最小パルス時間間隔Tminを更新して記憶する。また、ECU9aは、2回目以降に取得した最大パルス時間間隔Tmaxが現在記憶している最大パルス時間間隔Tmaxよりも大きい場合には、最大パルス時間間隔Tmaxを更新して記憶する。
ステップS7で初回欠歯が検出されたと判断すると、ECU9aは、ステップS9の後に全てのインジェクタ(第1インジェクタ21a、第2インジェクタ22a及び第3インジェクタ23a)から同時に燃料を噴射する斉時噴射を行い、記憶した最大パルス時間間隔Tmaxと最小パルス時間間隔Tminとの差分ΔTを算出し(ステップS8)、さらに差分ΔTが基準パルス時間間隔T1以上であるか否かの判断を行う(ステップS9)。ECU9aは、差分ΔTが基準パルス時間間隔T1以上でないと判断すると、スロットルバルブ2の始動目標開度を設定する(ステップS10)。ここでは、ECU9aは、エンジン20の冷却水温度と始動目標開度との関係を規定した目標開度テーブルと、温度センサ24から入力される計測結果とに基づいて、始動目標開度を設定する。そして、始動目標開度が設定されると、ECU9aは、スロットルバルブ2の開度を始動目標開度にすることを示す制御信号を出力する(ステップS11)。このようにECU9aから出力された始動目標開度とすることを示す制御信号は、スロットルバルブコントローラ9bに入力される。スロットルバルブコントローラ9bは、スロットルバルブ2の開度を始動目標開度とするための駆動信号をバッテリ8の電力から生成し、バルブ駆動モータ3に供給する。この結果、スロットルバルブ2の開度が始動目標開度THMとなる。つまり、本実施形態においてECU9aは、差分ΔTが基準パルス時間間隔T1以上でない場合には、ステップS9の直後に、スロットルバルブ2の開度を始動目標開度THMとする。この結果、図2のスロットルバルブ開度(a)に示すように、初回欠歯が検出された直後にスロットルバルブ2の開度が始動目標開度THMとなる。
ECU9aは、ステップS11の後、クランク角センサ25によって2回目の欠歯が検出されるまで待機する(ステップS12)。クランク角センサ25から入力されるパルス信号にパルスの欠損がありかつこれがステップS3以降の2回目であった場合に、2回目の欠歯が検出されたと判断する。そして、ECU9aは、2回目の欠歯が検出されたと判断すると、各気筒の行程を確定する(ステップS15)。ECU9aは、例えば不図示の吸気圧センサからの入力に基づいて、各気筒の行程を確定する。そして、2回目欠歯の検出以降は、ECU9aは、エンジン回転数やアクセル開度等に基づいて、所定のタイミングで繰り返し、インジェクタから燃料を噴射及びイグニッションコイルへの給電を行う。また、エンジン20は、いずれかの気筒において完爆(混合気への着火)した後は、上述のインジェクタから燃料を噴射及びイグニッションコイルへの給電により、連続的に動作を継続する。
ECU9aは、ステップS9において差分ΔTが基準パルス時間間隔T1以上であると判断した場合には、クランク角センサ25によって2回目欠歯が検出されるまで待機する(ステップS14)。さらに、ECU9aは、いずれかの気筒にて混合気に着火された状態である完爆となるまで待機する(ステップS15)。ここでは、ECU9aは、クランク角センサ25から入力されるパルス信号のパルス間隔に基づいて完爆したか否かを判断する。
ECU9aは、ステップS15で完爆したと判断した場合には、各気筒の行程を確定し(ステップS16)、その後、スロットルバルブ2の始動目標開度THMを設定し(ステップS17)、スロットルバルブ2の開度を始動目標開度THMにすることを示す制御信号を出力する(ステップS18)。なお、ステップS16は上述のステップS13と同一の処理であり、ステップS17は上述のステップS10と同一の処理であり、ステップS18は上述のステップS11と同一の処理である。つまり、本実施形態においてECU9aは、図2のスロットルバルブ開度(b)に示すように、差分ΔTが基準パルス時間間隔T1以上である場合には、いずれかの気筒で完爆するまで、スロットルバルブコントローラ9bの開度を始動目標開度THMとするのを待つ。
なお、エンジン20の設計の際、気筒数が多いほど、全てのクランク角(360°)においていずれかの気筒を吸気行程としやすいため、スロットルバルブ2を始動目標開度とすることによって、素早く多くの空気をいずれかの気筒に供給することができる。この場合、クランキング開始直後の圧縮負けが生じる可能性のある期間を経過して直ぐに、多くの空気を気筒に供給することができ、より早期にエンジン回転数を安定させることが可能となる。
以上のような本実施形態のエンジン始動制御装置9を備えるエンジン制御システム1によれば、クランキング開始からエンジンに燃料を供給する斉時噴射までの間における最大パルス時間間隔Tmaxに基づいて、スロットルバルブ2を始動目標開度THMとするタイミングを変更する。最大パルス時間間隔Tmaxは、エンジン20の気筒における圧縮負けやエンジンフリクションの影響によって変化する。したがって、本実施形態のエンジン始動制御装置9を備えるエンジン制御システム1によれば、エンジン20の気筒における圧縮負けやエンジンフリクションを考慮して、スロットルバルブ2を始動目標開度THMとするタイミングを調整することができる。よって、本実施形態のエンジン始動制御装置9を備えるエンジン制御システム1によれば、早期にエンジン回転数を安定可能としつつ、より確実にエンジン20を始動させることが可能となる。
また、本実施形態のエンジン始動制御装置9を備えるエンジン制御システム1においては、最小パルス時間間隔Tminと最大パルス時間間隔Tmaxとの差分ΔTに基づいて、スロットルバルブ2を始動目標開度THMとするタイミングを変更する。このような場合には、最小パルス時間間隔Tminの微小な変化も考慮して、スロットルバルブ2を始動目標開度THMとするタイミングを調整することができる。
また、本実施形態のエンジン始動制御装置9を備えるエンジン制御システム1においては、最大パルス時間間隔Tmaxが大きいほど(すなわち差分ΔTが大きいほど)、スロットルバルブ2を始動目標開度THMとするタイミングを遅くしている。エンジン始動時にセルモータ4が発生する必要があるトルクは、エンジン回転数の上昇に伴って減少するため、時間の経過に伴って減少する。このため、最大パルス時間間隔Tmaxが大きいほど(セルモータ4で生成できるトルクが小さいほど)、スロットルバルブ2を始動目標開度THMとするタイミングを遅くすることによって、より確実に気筒における圧縮負けを防止することができる。
また、本実施形態のエンジン始動制御装置9を備えるエンジン制御システム1においては、クランキング開始から一定期間のマスキング期間が設けられている。このため、クランキング開始直後の圧縮負け等の影響が分かり難い期間を回避して、最大パルス時間間隔Tmax及び最小パルス時間間隔Tminを取得することができる。したがって、より確実にエンジン20を始動させることが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、最小パルス時間間隔Tminと最大パルス時間間隔Tmaxとの差分ΔTに基づいて、スロットルバルブ2を始動目標開度THMとするタイミングを変更する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明においては、予め設定された閾値と最大パルス時間間隔Tmaxとの差分ΔTに基づいて、スロットルバルブ2を始動目標開度THMとするタイミングを変更するようにしても良い。このような構成を採用することによって、最小パルス時間間隔Tminを差分ΔTの算出のために取得する必要がなくなり、ECU9aの処理負担を低減させることが可能となる。
また、上記実施形態においては、最小パルス時間間隔Tminと最大パルス時間間隔Tmaxとの差分ΔTに基づいて、スロットルバルブ2を始動目標開度THMとするタイミングを変更する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、最小パルス時間間隔Tminと最大パルス時間間隔Tmaxの比率に基づいて、スロットルバルブ2を始動目標開度THMとするタイミングを変更する構成を採用することも可能である。また、予め設定された閾値と最大パルス時間間隔Tmaxの比率に基づいて、スロットルバルブ2を始動目標開度THMとするタイミングを変更する構成を採用することも可能である。
また、上記実施形態においては、エンジン20が3つの気筒(第1気筒21、第2気筒22及び第3気筒23)を備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、単気筒や3気筒以外の複数気筒のエンジンを始動するために適用することも可能である。