以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の実施形態に係るエンジン自動停止制御装置を示す。このエンジン自動停止制御装置は、シリンダヘッド10及びシリンダブロック11を有するエンジン1と、このエンジン1及び後述のインバータ55(図3参照)を制御するコントローラ2とを備えている。
本実施形態では、エンジン1は、直列4気筒火花点火式エンジンである。エンジン1には、4つの気筒12A〜12Dが設けられるとともに、各気筒12A〜12Dの内部には、クランク軸3に連結されたピストン13が嵌挿され、これにより、各気筒12A〜12Dの内部で、ピストン13の上方に燃焼室14が形成されている。
ここで、一般的に、4サイクル多気筒エンジンにおいては、各気筒が所定の位相差をもって吸気、圧縮、膨張、排気の各行程からなる燃焼サイクルを行うようになっており、本実施形態の直列4気筒エンジンの場合、気筒列方向一端側から1番気筒12A、2番気筒12B、3番気筒12C、4番気筒12Dと呼ぶと、1番気筒12A、3番気筒12C、4番気筒12D、2番気筒12Bの順にクランク角で180度ずつの位相差をもって燃焼が行われるようになっている。そして、エンジン1の駆動に伴う出力トルクは、図3に示すように、エンジン1のクランク軸3に連結された不図示のトルクコンバータ及び自動変速機51を介して、エンジン1が搭載された車両の駆動輪52に伝達されることになる。
上記各気筒12A〜12Dのそれぞれの燃焼室14の天井部には、該燃焼室14内の混合気に点火して燃焼させるための点火プラグ15が設けられていて、それらの各点火プラグ15先端の電極が上記燃焼室14を臨むように配置されている。また、上記各気筒12A〜12Dの燃焼室14の天井部側方には、該燃焼室14内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁16が設けられている。この燃料噴射弁16は、不図示のニードル弁及びソレノイドを内蔵し、上記コントローラ2からのパルス信号の入力によりそのパルス幅に対応する時間だけ開弁駆動されて、その駆動時間に応じた量の燃料を各気筒12A〜12Dの燃焼室14内に直接、噴射するように構成されている。そして、その燃料の噴射方向が上記点火プラグ15の電極付近に向かうように調整されている。
また、上記各気筒12A〜12Dの燃焼室14の天井部には、該燃焼室14に向かって開口する吸気ポート17及び排気ポート18が設けられており、これらのポート17,18に吸気弁19及び排気弁20がそれぞれ配設されている。これら吸気弁19及び排気弁20は、図示省略のカムシャフト等を有する動弁機構により駆動され、上述のとおり、各気筒12A〜12Dが所定の位相差をもって燃焼サイクルを行うように、該各気筒12A〜12D毎の吸・排気弁19,20の開閉タイミングが設定されている。
上記吸気ポート17及び排気ポート18には、吸気通路21及び排気通路22がそれぞれ接続されており、図2に示すように、吸気ポート17に近い吸気通路21の下流側は、各気筒12A〜12D毎に独立の分岐吸気通路21aとされ、この各分岐吸気通路21aの上流端がそれぞれサージタンク21bに連通している。このサージタンク21bよりも上流の吸気通路21は、各気筒12A〜12Dに共通の共通吸気通路21cであり、この共通吸気通路21cには、アクチュエータ24により駆動されて、通路断面積を調節して吸気流を絞るスロットル弁23が配設されている。吸気通路21におけるスロットル弁23の上流側には、吸気量を検出するためのエアフローセンサ25が配設され、下流側には吸気圧力(負圧)を検出する吸気圧センサ26(図1参照)が配設されている。
上記エンジン1のクランク軸3には、タイミングベルト29を介してモータジェネレータ(MG)28が連結されている。このモータジェネレータ28は、3相交流モータジェネレータであって、エンジン1により駆動されて発電する発電機であるとともに、エンジン1を始動させる始動モータとしての役割も有している。但し、本実施形態では、後述の如く、基本的に、モータジェネレータ28の駆動力を借りることなく、エンジン1を自力で始動させることが可能である。
モータジェネレータ28は、コントローラ2により、インバータ55(図3参照)を介して制御される。インバータ55は、上記車両に搭載された電源56と接続されており、モータジェネレータ28がエンジン1を始動する際には、電源56から電力がモータジェネレータ28に供給される。本実施形態では、電源56は、12V系の鉛バッテリであるが、これには限られない。
エンジン1には、クランク軸3の回転角を検出する2つのクランク角センサ31が設けられており、一方のクランク角センサ31からの信号に基づいてエンジン回転速度を求めるとともに、それら2つのクランク角センサ31から出力される互いに位相のずれたクランク角信号によって、クランク軸3の回転方向及び回転角度位置を検出するようになっている。クランク角センサ31は、エンジン1の回転速度を検出するエンジン回転速度検出を構成することになる。
また、本エンジン自動停止制御装置においては、上記カムシャフトの特定の回転位置を検出して気筒識別信号として出力するカム角センサ32と、エンジン1の冷却水温度を検出する水温センサ33と、上記車両の乗員(ドライバ)のアクセル操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセル開度センサ34と、上記乗員がブレーキ操作を行ったこと(ブレーキペダルを踏み込んでいること)を検出するブレーキセンサ35と、自動変速機51の油温を検出する油温センサ36と、上記トルクコンバータのタービン回転速度を検出するタービン回転速度センサ37と、電源56の電圧を検出する電圧センサ38と、モータジェネレータ28のロータ28a(図5参照)の回転角度位置及び回転速度を検出するロータ回転角センサ39(ロータ回転速度検出手段)と、上記車両の車速を検出する車速センサ40とが設けられている。各センサ25,26,31〜40から出力される各検出信号がコントローラ2に入力されるようになっている。
コントローラ2は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている。
そして、コントローラ2は、上記各センサ25,26,31〜40からの検出信号を受け、燃料噴射弁16に対して燃料噴射量及びその噴射時期を制御するための制御信号を出力するとともに、点火プラグ15の点火装置27に対して点火時期を制御するための制御信号を出力し、さらに、スロットル弁23のアクチュエータ24に対してスロットル開度を制御するための制御信号を出力する。また、後に詳述するが、コントローラ2は、所定のエンジン自動停止条件が成立したときにおいて、各気筒12A〜12Dへの燃料供給を停止した後(燃料カットした後)、インバータ35(後述のスイッチング素子63〜66)を制御してモータジェネレータ28を制御しながら、エンジン1を自動的に停止させる。
上記所定のエンジン自動停止条件は、本実施形態では、車速センサ40により検出された車速が所定車速(例えば10km/h程度)以下であり、かつ、ブレーキセンサ35によりブレーキ操作がなされていることが検出されるという条件である。尚、上記所定のエンジン自動停止条件は、これに限らず、例えば、車速センサ40により検出された車速が0であり、かつ、ブレーキセンサ35によりブレーキ操作がなされていることが検出されるという条件であってもよい。
コントローラ2は、エンジン1の自動停止後に、上記乗員のアクセル操作等により所定のエンジン再始動条件が成立したときには、エンジン1を自動的に再始動させるようになっている。
ここで、エンジン1は、その再始動に際し、基本的には、モータジェネレータ28の駆動力を借りることなく、自力で始動することが可能にされている。すなわち、まず、エンジン1の停止時に圧縮行程にある気筒(停止時圧縮行程気筒)で最初の燃焼を行わせて、その停止時圧縮行程気筒のピストン13を押し下げることにより、クランク軸3を少しだけ逆転させ、これにより、エンジン1の停止時に膨張行程にある気筒(停止時膨張行程気筒)のピストン13を上昇させて、この停止時膨張行程気筒内の混合気を圧縮する。そして、そのようにして圧縮されて温度及び圧力の高くなった停止時膨張行程気筒内の混合気に点火して、燃焼させることにより、クランク軸3に正転方向のトルクを与えて、エンジン1を始動するようにしている(いわゆる逆転燃焼始動)。
そのようにエンジン1を自力で再始動させるためには、停止時膨張行程気筒の混合気を燃焼させることにより得られる燃焼エネルギーを十分に確保して、クランク軸3に出来る限り大きな正転方向のトルクを与え、これにより、続いて圧縮上死点を迎える気筒が、その圧縮反力(圧縮圧力)に打ち勝って圧縮上死点を越えるようにしなければならない。したがって、エンジン1の確実な始動のためには上記停止時膨張行程気筒内において燃焼のための空気量を十分に確保しておく必要がある。
すなわち、図4(a)及び(b)に示すように、停止時膨張行程気筒及び停止時圧縮行程気筒では、それぞれ位相が180°CAだけずれているため、各ピストン13が互いに逆方向に作動する。そして、停止時膨張行程気筒のピストン13が行程中央よりも下死点(BDC)側に位置していれば、停止時膨張行程気筒の空気量が多くなって十分な燃焼エネルギーが得られる。しかし、上記停止時膨張行程気筒のピストン13が極端に下死点側に位置した状態となると、停止時圧縮行程気筒のピストン13が極端に上死点(TDC)側に位置した状態となり、このため、停止時圧縮行程気筒内の空気量が少なくなり過ぎてクランク軸3を逆転させるための燃焼エネルギーが十分に得られなくなる。
これに対し、停止時膨張行程気筒のピストン13が以下のような停止位置に停止していれば、クランク軸3を逆転させるための燃焼エネルギーが得られるとともに、上記停止時膨張行程気筒内に多くの空気量を確保することができる。すなわち、上記停止位置は、上記停止時膨張行程気筒の行程中央、つまり圧縮上死点後のクランク角が90°を挟む所定範囲R(図4(b)参照)内の位置、例えば圧縮上死点後のクランク角が60°〜120°となる範囲内の位置である。エンジン1の停止の際に、停止時膨張行程気筒のピストン13を上記停止位置に停止させることで、上記初回の燃焼によりクランク軸3を少しだけ逆転させ得る程度の燃焼エネルギーが得られ、しかも、クランク軸3を正転させるための燃焼エネルギーを十分に発生させることができ、この結果、エンジン1を自力で再始動させることが可能になる。
尚、エンジン1の自動停止の際に上記のような制御を行っても、種々の要因により、停止時膨張行程気筒のピストン13が上記停止位置に停止しない場合があり、その場合には、燃焼始動によるエンジン1の再始動を行わずに、モータジェネレータ28による始動を行う。
コントローラ2は、上記所定のエンジン自動停止条件が成立したときに、停止時膨張行程気筒のピストン13を所定の停止位置に停止させる停止制御動作を実行する。上記所定の停止位置は、本実施形態では、上記のようにエンジン1の再始動に適した上記所定範囲R内の位置である。上記停止制御動作は、後に詳述するが、エンジン1への燃料供給(燃料噴射)の停止後において、クランク角センサ31により検出されたエンジン回転速度に応じて、エンジン1の負荷トルクとなる、モータジェネレータ28に発生する発電トルク及び制動トルクの大きさを制御する動作である。
図5は、電源56、インバータ55(後述のスイッチング素子63〜66)及びモータジェネレータ28(後述のロータコイル28c及びステータコイル28d)の接続関係を示す回路図である。モータジェネレータ28は、ロータ28aとステータ28bと有している。ロータ28aには、磁界を発生させるためのロータコイル28c(フィールドコイル)が巻かれている。ロータコイル28cの両端は、スイッチング素子63を介してそれぞれ電源ライン61及び接地ライン62に接続されている。また、ロータコイル28cの両端は、スイッチング素子64を介して互いに接続されている。スイッチング素子63,64は、インバータ55内に設けられたスイッチング素子であって、本実施形態では、MOSFETで構成されている。尚、スイッチング素子63,64は、これに限らず、他のスイッチング素子(例えばIGBT等)で構成してもよい(後述のスイッチング素子65,66も同様)。
上記スイッチング素子63,64のON/OFFがコントローラ2によりそれぞれ制御される。本実施形態では、スイッチング素子64は、基本的にはOFFとされる。以下の説明では、スイッチング素子64はOFFであるとする。2つのスイッチング素子63がONとされたときには、ロータコイル28cに界磁電流が流れて磁界が発生する。一方、2つのスイッチング素子63のうち少なくとも一方がOFFとされたときには、ロータコイル28cへの界磁電流が停止する。少なくとも一方のスイッチング素子63のON及びOFFのデューティ比を変更することで、界磁電流(磁界)の大きさを変更することができる。
一方、ステータ28bには、U相、V相及びW相の3つのステータコイル28dが中性点にて共通接続された状態で巻かれている。そして、インバータ55には、3つの相アームが電源ライン61及び接地ライン62間に並列に設けられている。これら各相アームは、直列接続された2つのスイッチング素子65でそれぞれ構成されている。上記ステータ28bに巻かれた各相のステータコイル28dが、上記各相アームの2つのスイッチング素子65の中間点にそれぞれ接続されている。
コントローラ2は、ロータ回転角センサ39によるロータ28aの回転角度位置に応じて、各スイッチング素子65のON/OFFをそれぞれ制御することで、モータジェネレータ28を、エンジン1を駆動する駆動トルクが発生する駆動状態にすることができる。これにより、停止中のエンジン1を始動することができる。上記スイッチング素子63のON及びOFFのデューティ比の変更により、上記駆動トルクの大きさを変更することができる。
また、コントローラ2は、モータジェネレータ28がエンジン1により駆動されているとき、ロータ回転角センサ39によるロータ28aの回転角度位置に応じて、各スイッチング素子65のON/OFFをそれぞれ制御することで、エンジン1の負荷トルクとなる発電トルクが発生する発電状態にすることができる。上記発電状態では、モータジェネレータ28に発生する発電電流が、直流に整流されて電源ライン61に流れて、上記界磁電流としてロータコイル28cに流れるとともに、電源56にも流れて発電電力が電源56に充電される。但し、モータジェネレータ28による発電電圧が、電源56の電圧よりも低くなると、モータジェネレータ28に発生する発電電流を電源ライン61に流すことができなくなるので、モータジェネレータ28を上記発電状態にすることはできなくなる。
さらに、コントローラ2は、モータジェネレータ28がエンジン1により駆動されているとき、各相アームの電源ライン61側のスイッチング素子65をOFFにしかつ接地ライン62側のスイッチング素子65をONにすることで、エンジン1の負荷トルクとなる制動トルクが発生する短絡制動状態にすることも可能である。上記デューティ比の変更により、上記制動トルクの大きさも変更することができる。上記短絡制動状態では、モータジェネレータ28に発生する制動電流が、接地ライン62(グランド)に流れる。これにより、モータジェネレータ28を上記発電状態にすることができない状況下にあっても、上記制動トルクによりエンジン1に負荷をかけることができる。
本実施形態では、U相のステータコイル28dとV相のステータコイル28dとの間、及び、V相のステータコイル28dとW相のステーコイル28dとの間に、コントローラ2によりON/OFFが制御されるスイッチング素子66がそれぞれ配設されている。これら2つのスイッチング素子66は、モータジェネレータ28が上記発電状態にあるときに、モータジェネレータ28を2相短絡制動状態と3相短絡制動状態とに切換え可能な切換手段を構成している。すなわち、コントローラ2により両方のスイッチング素子66がONにされることで、3相短絡制動状態となり、いずれか一方のスイッチング素子66がONにされかつ他方のスイッチング素子66がOFFにされることで、2相短絡制動状態となる。2つのスイッチング素子66は、モータジェネレータ28が上記駆動状態又は上記短絡制動状態にあるときには、OFFにされる。上記デューティ比の変更に加えて、2つのスイッチング素子66による2相短絡制動状態と3相短絡制動状態との切換えによって、上記制動トルクの大きさを木目細かく変更することが可能になる。尚、モータジェネレータ28の2相短絡制動状態と3相短絡制動状態との切換えは必ずしも必要ではなく、2つのスイッチング素子66がなくてもよい。
また、2つのスイッチング素子66がない場合に、コントローラ2により各相アームの接地ライン62側の3つのスイッチング素子65を全てONにすることで3相短絡制動状態とし、接地ライン62側の3つのスイッチング素子65のうちの2つをONにしかつ他の1つをOFFにすることで2相短絡制動状態とすることも可能である。
本実施形態では、スイッチング素子65が、モータジェネレータ28(発電機)を上記発電状態と上記短絡制動状態とに切換え可能なスイッチ手段を構成し、スイッチング素子63が、上記制動トルクの大きさを変更可能な制動トルク変更手段、及び、上記発電トルクの大きさを変更可能な発電トルク変更手段を構成し、コントローラ2(特に後述のスイッチング素子制御部2c)が、上記スイッチ手段、上記制動トルク変更手段、及び、上記発電トルク変更手段の作動を制御する制御手段を構成することになる。
コントローラ2による上記停止制御動作は、エンジン1への燃料供給の停止後において、ロータ回転角センサ39により検出されたロータ回転速度が第1所定回転速度以上であるときには、モータジェネレータ28を上記発電状態にするとともに、クランク角センサ31により検出されたエンジン回転速度に応じて上記発電トルクの大きさを制御し、上記ロータ回転速度が上記第1所定回転速度よりも低いときには、モータジェネレータ28を上記短絡制動状態にするとともに、上記エンジン回転速度に応じて上記制動トルクの大きさを制御する動作である。
すなわち、基本的に、ロータ回転速度が高いとき(つまりエンジン1の停止過程期間の前半)には、発電トルクが制動トルクよりも大きく、ロータ回転速度が低いとき(つまりエンジン1の停止過程期間の後半)には、制動トルクが発電トルクよりも大きくなる。そこで、ロータ回転速度が上記第1所定回転速度以上であるときには、モータジェネレータ28を上記発電状態にして、上記エンジン回転速度に応じて上記発電トルクの大きさを制御し(発電負荷制御を実行し)、ロータ回転速度が上記第1所定回転速度よりも低いときには、モータジェネレータ28を上記短絡制動状態にして、エンジン回転速度に応じて上記制動トルクの大きさを制御する(短絡制動制御を実行する)。これにより、エンジン1の負荷トルクの制御がし易くなり、停止時膨張行程気筒のピストン13を上記所定の停止位置に停止させることをより確実なものとすることができる。
図6は、モータジェネレータ28のロータ28aの回転速度(以下、ロータ回転速度という)と、電源56(ここでは、キャパシタを使用)の電圧が12Vであるときの最大発電トルク(破線参照)、電源56(キャパシタ)の電圧が15Vであるときの最大発電トルク(一点鎖線参照)、及び、最大制動トルク(実線参照)との関係を示す。
上記のようにモータジェネレータ28による発電電圧が、電源56の電圧よりも低くなると、モータジェネレータ28を上記発電状態にすることができなくなるので、電源56の電圧と同じになる発電電圧に相当するロータ回転速度(発電可能最小ロータ回転速度)よりも低いロータ回転速度では、発電トルクは0になる。
一方、制動トルクは、ロータ回転速度に関係なく発生し、特に上記発電可能最小ロータ回転速度よりも低いロータ回転速度で、大きい制動トルクが得られる。但し、上記発電可能最小ロータ回転速度よりも高いロータ回転速度では、或るロータ回転速度で制動トルクと発電トルクとの大小関係が逆転する。その逆転するロータ回転速度(電源56の電圧が大きくなるほど高くなる)ないしその付近を、上記第1所定回転速度にする。そして、上記第1所定回転速度は、電圧センサ38により検出された電源56の電圧に応じて変更する。尚、上記第1所定回転速度を、上記発電可能最小ロータ回転速度ないしその付近に設定することも可能である。この場合も、上記第1所定回転速度を上記電源56の電圧に応じて変更する。
コントローラ2には、エンジン1への燃料供給の停止後に、吸気圧センサ26、クランク角センサ31、水温センサ33、油温センサ36、及び、タービン回転速度センサ37からの検出信号を受けて、クランク角センサ31によるエンジン回転速度に応じて、エンジン1の目標負荷トルクを算出する目標負荷トルク算出部2aと、電圧センサ38による電源56の電圧と、ロータ回転角センサ39によるロータ回転速度とに基づいて、発電負荷制御を実行するか、又は、短絡制動制御を実行するかを判断する制御判断部2bと、上記目標負荷トルクと、制御判断部2bによる判断結果と、ロータ回転角センサ39によるロータ回転速度及びロータ28aの回転角度位置とに基づいて、スイッチング素子63のON及びOFFのデューティ比を演算しかつスイッチング素子63〜66のON/OFFタイミングを決定して制御信号を出力するスイッチング素子制御部2cとが設けられている。
上記スイッチング素子制御部2cは、制御判断部2bにより発電負荷制御を実行すると判断された場合には、発電負荷制御を実行する、つまり、モータジェネレータ28が発電状態になるようにスイッチング素子65,66を制御するとともに、発電トルクが上記目標負荷トルクになるように上記デューティ比を演算して該デューティ比でもってスイッチング素子63を制御する(界磁電流制御を実行する)。また、スイッチング素子制御部2cは、制御判断部2bにより短絡制動制御を実行すると判断された場合には、短絡制動制御を実行する、つまり、モータジェネレータ28が短絡制動状態になるようにスイッチング素子65,66を制御するとともに、制動トルクが上記目標負荷トルクになるように上記デューティ比を演算して該デューティ比でもってスイッチング素子63を制御する(界磁電流制御を実行する)。
上記発電負荷制御及び短絡制動制御の具体例を、図7に基づいて説明する。本実施形態では、上記所定のエンジン自動停止条件が成立した時点で、まず、エンジン回転速度を、エンジン1を自動停止させないときの通常のアイドル回転速度(例えば650rpm)よりも少し高い第2所定回転速度(例えば810rpm)に設定して安定させ、その第2所定回転速度でエンジン回転速度が安定した時点で、エンジン1への燃料供給を停止し、その後、エンジン回転速度が低下していく過程で、上記発電負荷制御及び短絡制動制御が実行されることになる。エンジン回転速度が低下するに伴って、モータジェネレータ28のロータ回転速度も低下していくことになる。尚、エンジン回転速度が、上記アイドル回転速度にあって安定しているときに、エンジン1への燃料供給を停止するようにしてもよい。
本実施形態では、エンジン回転速度が所定の低下状態で低下するように、すなわち、図7の「エンジン回転速度」の欄に描いているハッチングの範囲内で低下するように、上記発電負荷制御及び短絡制動制御を実行する。上記所定の低下状態は、予め行った実験結果(後に詳細に説明する)に基づいて決定したものであり、エンジン回転速度が上記所定の低下状態で低下すれば、停止時膨張行程気筒のピストン13を上記所定の停止位置に停止させることができる。
エンジン1への燃料供給の停止後におけるエンジン回転速度を、上記のように低下させるために、クランク角センサ31により検出されるクランク角が、予め設定された設定角度になった時点(本実施形態では、エンジン1の各気筒12A〜12Dのピストン13が圧縮上死点を通過する時点(以下、TDCの時点という))で、クランク角センサ31によりエンジン回転速度を検出し、このときのエンジン回転速度が、当該TDCの時点の目標回転速度(当該TDCの時点での上記ハッチングの範囲の最大回転速度)よりも高い場合には、モータジェネレータ28を上記発電状態又は上記短絡制動状態にして、発電トルク又は制動トルクによりエンジン1に負荷をかける。ロータ回転角センサ39により検出されたロータ回転速度が上記第1所定回転速度N1以上であれば、上記発電負荷制御を実行し、上記ロータ回転速度が上記第1所定回転速度N1よりも低ければ、上記短絡制動制御を実行することになる。上記発電トルク及び制動トルクの大きさは、上記エンジン回転速度の、上記目標回転速度からの乖離が大きいほど、大きくする。
また、上記TDCの時点でのエンジン回転速度が、当該TDCの時点の目標回転速度(当該TDCの時点での上記ハッチングの範囲の最大回転速度)以下である場合には、発電負荷制御時の発電トルクを0にし、短絡制動制御時の制動トルクを0にする。
図7の例では、1番目のTDCの時点で、エンジン回転速度が目標回転速度よりも高くなっており、ロータ回転速度が上記第1所定回転速度N1以上であるので、発電トルクによりエンジン1に負荷をかける。また、2番目のTDCの時点で、エンジン回転速度が目標回転速度以下になったので、発電トルクを0にする。さらに、3番目のTDCの時点で、エンジン回転速度が目標回転速度よりも高くなっており、ロータ回転速度が上記第1所定回転速度N1よりも低いので、制動トルクによりエンジン1に負荷をかける。この3番目のTDCの時点での上記乖離は、1番目のTDCの時点での上記乖離よりも小さいので、上記制動トルクの大きさは上記発電トルクよりも小さい。また、4番目のTDCの時点で、エンジン回転速度が目標回転速度以下になったので、制動トルクを0にする。
図8は、上記実験結果を示すものである。すなわち、エンジン回転速度が上記第2所定回転速度となって安定した時点でエンジン1への燃料供給を停止し、その後、慣性により回転するエンジン1の各気筒12A〜12Dのピストン13が圧縮上死点を通過する際のエンジン回転速度(以下、上死点回転速度という)を計測するとともに、エンジン1の停止時点における停止時膨張行程気筒のピストン位置を調べ、このピストン位置を縦軸にとり、上記上死点回転速度を横軸にとって、両者の関係をグラフ化したものが図8である。上記作業を繰り返して、エンジン1の停止過程期間における上記上死点回転速度と、停止時膨張行程気筒のピストン停止位置との相関関係を示す分布図が得られる。
図8の三角形の点は、エンジン1が停止状態となる前の3番目における上死点回転速度とピストン停止位置との関係を示すものである。この三角形の点が、3つのハッチングの範囲のうち右端のハッチングの範囲内にあれば、ピストン13の停止位置が、エンジン1の再始動に適した上記所定範囲R(圧縮上死点後の60°〜120°CA)内に入ることが分かる。
また、図8の四角形の点は、エンジン1が停止状態となる前の2番目における上死点回転速度とピストン停止位置との関係を示すものである。この四角形の点が、3つのハッチングの範囲のうち中央のハッチングの範囲内にあれば、ピストン13の停止位置が上記所定範囲R内に入ることが分かる。
さらに、図8の×の点は、エンジン1が停止状態となる直前における上死点回転速度とピストン停止位置との関係を示すものである。この×の点は、3つのハッチングの範囲のうち左端のハッチングの範囲内にあれば、ピストン13の停止位置が上記所定範囲R内に入ることが分かる。
図8の上記ハッチングの範囲を、相隣接するTDC間に亘って連続的に繋げたものが、図7の「エンジン回転速度」の欄に描いているハッチングの範囲であり、この範囲内でエンジン回転速度が低下していけば、ピストン13の停止位置が上記所定範囲Rに入ることになる。
ここで、上記コントローラ2による、エンジン1への燃料供給停止後における停止制御動作を、図9のフローチャートに基づいて説明する。
最初のステップS1で、モータジェネレータ28のロータ回転速度が上記第1所定回転速度以上であるか否かを判定し、このステップS1の判定がYESであるときには、ステップS2に進む一方、ステップS1の判定がNOであるときには、ステップS4に進む。
上記ステップS2では、TDCの時点のエンジン回転速度である上死点回転速度が、当該TDCの時点の目標回転速度よりも高いか否かを判定する。このステップS2の判定がNOであるときには、上記ステップS1に戻る一方、ステップS2の判定がYESであるときには、ステップS3に進んで、発電負荷制御を実行し、しかる後に上記ステップS1に戻る。
上記ステップS1の判定がNOであるときに進むステップS4では、エンジン回転速度が第3所定回転速度以上であるか否かを判定する。この第3所定回転速度は、エンジン回転速度が該第3所定回転速度よりも低くなったときに、エンジン1が停止したと見なすことが可能な回転速度であって、例えば60rpm〜100rpmに設定される。
上記ステップS4の判定がYESであるときには、ステップS5に進んで、TDCの時点のエンジン回転速度である上死点回転速度が、当該TDCの時点の目標回転速度よりも高いか否かを判定する。このステップS5の判定がNOであるときには、上記ステップS4に戻る一方、ステップS5の判定がYESであるときには、ステップS6に進んで、短絡制動制御を実行し、しかる後に上記ステップS4に戻る。
上記ステップS4の判定がNOであるときには、エンジン1が停止したことになり、本停止制御動作を終了する。
したがって、本実施形態では、コントローラ2が、上記所定のエンジン自動停止条件が成立したときにおけるエンジン1への燃料供給の停止後において、ロータ回転角センサ39により検出されたロータ回転速度が上記第1所定回転速度以上であるときには、モータジェネレータ28を上記発電状態にするとともに、クランク角センサ31により検出されたエンジン回転速度に応じて発電トルクの大きさを制御し(発電負荷制御を実行し)、上記ロータ回転速度が上記第1所定回転速度よりも低いときには、モータジェネレータ28を上記短絡制動状態にするとともに、上記エンジン回転速度に応じて制動トルクの大きさを制御する(短絡制動制御を実行する)という停止制御動作を実行するようにしたので、停止時膨張行程気筒のピストン13を上記所定の停止位置に正確に停止させることができる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、上記実施形態では、エンジン1により駆動されて発電する発電機として、エンジン1を始動できるようなモータジェネレータ28を用いたが、エンジン1を始動させる始動モータを別個に設けておき、モータジェネレータ28を、発電状態と短絡制動状態とに切換え可能な発電機(例えば3相交流発電機又はオルタネータ)に代えることも可能である。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。