JP2006143793A - 二軸配向フィルムおよび電気絶縁用フィルム - Google Patents

二軸配向フィルムおよび電気絶縁用フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】 低オリゴマー性、熱寸法安定性を有した二軸配向フィルムであって、耐熱性、耐加水分解性および加工特性に優れた電気絶縁用フィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエステル(a)とポリアリーレンスルフィド(b)から主として構成されるフィルムであって、環状三量体の含有量が0.1〜0.7重量%であることを特徴とする二軸配向フィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明の二軸配向フィルムは、低オリゴマー性、寸法安定性、耐熱性および耐加水分解性に優れ、詳しくは電気絶縁用に好適な加工特性を有した二軸配向フィルムおよび電気絶縁用フィルムに関する。
ポリエステルフィルムは優れた機械特性、熱特性、電気特性、表面特性、また耐熱性などの性質を利用して、磁気記録媒体用、電気絶縁用、コンデンサー用、包装用、各種工業材料用など種々の用途に用いられている。これら用途の高品質化の中で、例えば、加熱加工処理などを必要とする用途では表面析出成分(例えば、フィルム中のオリゴマーなど)による工程汚れや析出成分が原因となり品質低下に繋がるなどの問題が生じている。さらに、近年、開発が行われている冷媒などを使用する電動カーエアコンのモーター絶縁用フィルムなどの場合、連続使用温度向上に伴い、特に耐熱性・耐加水分解性の向上、さらには冷媒によって抽出される成分(例えば、フィルム中のオリゴマー等)の低減化に対する要求が益々強くなってきている。しかしエチレンテレフタレート単体からなるポリエステルフィルムは、耐熱性、耐加水分解性が十分でなく、その使用温度に耐えられないのが現状である。また優れた耐熱性、機械特性および電気的特性を有するポリエチレンナフタレートフィルムをモーター絶縁用途等に適用する場合、スロットやウェッジの形に成形してモーターに挿入したり、コイル成形して使用されるが、その際に割れが発生しやすく、加工収率が低くなるという問題があるため、加工特性の改良が望まれていた。
一方、ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略す)は優れた耐熱性、耐加水分解性、バリア性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性などエンジニアリングプラスチックとしては好適な性質を有しており、電気絶縁用、コンデンサー用など各種工業材料用として使用されている。しかし、PPSフィルムは、ナイロンやポリエステルなどの他のフィルムに比べ靭性が低く、電気絶縁用途等に適用する場合、スロットやウェッジの形に成形してモーターに挿入したり、コイル成形して使用されるが、その際に割れが発生しやすく、加工収率が低くなるという問題があるため、加工特性の改良が望まれていた。またPPSフィルムはPETフィルムなどと比較すると高価であるため、それを許容できる用途は多いとはいえないのが現状である。
上記問題を克服するため、例えば特許文献1では、ポリエステルとポリフェニレンスルフィドとのブレンドフィルムが開示されている。同文献は経済性に優れるPPSフィルムを提供することを目的とするが、本発明のPPSが備えているような優れた特性を有し、かつ靱性を向上させ、オリゴマーを低減させるといった技術思想について開示されていない。
また、特許文献2ではPPS樹脂とポリエチレンテレフタレートを主たるポリエステル樹脂を含んでなるPPSフィルムにおいて、PPS樹脂の使用量を低減しても、PPSフィルムの有する強度などを有しながら、靱性に優れるPPSフィルムが提案されている。しかしながら同文献のPPSフィルムは靱性の向上が十分ではなく、またオリゴマー低減には更なる改良が求められている。
特開平7−88954号公報 特開2004−231909号公報
本発明は、低オリゴマー性、熱寸法安定性を有した二軸配向フィルムであって、耐熱性、耐加水分解性および加工特性に優れた二軸配向フィルムおよび電気絶縁用フィルムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、ポリエステル(a)とポリアリーレンスルフィド(b)とを含み、環状三量体の含有量がフィルム全重量に対し0.1〜0.7重量%である二軸配向フィルムを特徴とする。
また、本発明の二軸配向フィルムは、
(1)ポリアリーレンスルフィド(b)がポリフェニレンスルフィドであり、このポリフェニレンスルフィドの含有量がフィルム全重量に対し1〜50重量%であること、
(2)ポリエステル(a)がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびこれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエステルであること、
(3)加熱条件を150℃、30分間としたときの長手方向の熱収縮率が4%未満であること、
(4)環状三量体の含有量が0.1〜0.6重量%である上記二軸配向フィルムを用いた電気絶縁用フィルムであること、
を、それぞれ好ましい態様として含んでいる。
本発明によれば、優れた低オリゴマー性、熱寸法安定性を有した二軸配向フィルムであって、耐熱性、耐加水分解性および加工特性に優れた電気絶縁用フィルムを提供することができ、その工業的価値は極めて高い。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明でいうポリエステル(a)とは、ジオールとジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体の縮重合により得られるポリマーを少なくとも80重量%含有するポリマーである。ジカルボン酸とは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸あるいはそのエステル形成性誘導体などで代表されるものであり、また、エステル形成性誘導体とは、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、フタル酸ジメチルなどである。一方、ジオールとは、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどで代表されるものである。ポリエステルの具体的としては、例えば、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを挙げることができる。勿論、これらのポリエステルは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよく、コポリマーの場合、共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分、ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などのヒドロキシカルボン酸成分を含有していても良い。
本発明の場合、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、これらの共重合体又は変成体が好ましく、中でもエチレンテレフタレート単位を少なくとも70モル%以上含有するポリマーが本発明の効果発現の観点から特に好ましい。この場合、酸成分はテレフタル酸が主成分であるが、少量の他のジカルボン酸成分を共重合成分として加えてもよく、また、グリコール成分はエチレングリコールを主成分とするが、他のグリコール成分を共重合成分として加えてもよい。
テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、例えばナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4、4’−ジフェニルジカルボン酸、3、3’−ジフェニルジカルボン酸、などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、1、3−アダマンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸をあげることができる。また、エチレングリコール以外のグリコール成分としては、例えば、クロルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、4、4’−ジヒドロキシビフェニル、4、4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4、4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4、4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、p−キシレングリコールなどの芳香族ジオール、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1、4−シクロヘキサンジメタノールなど、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族、脂環式ジオールをあげることができる。また、さらに酸成分、グリコール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2、6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の目的を損なわない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
本発明で使用するポリエステル(a)原料の固有粘度は、ポリアリーレンスルフィドとの溶融混練性、製膜性、溶融押出時のポリマー分解等の観点、フィルムの耐熱性、耐加水分解性の観点から、好ましくは0.70〜2.0dl/g、より好ましくは0.8〜1.5dl/gである。
本発明で使用するポリエステル(a)原料は、リン化合物に対する金属化合物の割合(M/P)が0.7以上、1.5以下であることが、フィルム成形加工時にオリゴマーの再生を抑止し、本発明で開示するフィルムを得る上で好ましい。ここで、Mはポリエステル中に含有される金属元素量(ppm:重量基準)から換算した金属元素のモル数であり、通常、アルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素を対象とする。一方、Pはポリエステル中に含有されるリン元素量(ppm:重量基準)から換算したリン元素のモル数である。すなわち(M/P)は次式により算出される。(M/P)={([アルカリ金属元素のモル数]/2)+[アルカリ土類金属元素のモル数]}/[リン元素のモル数]。ポリエステル原料のより好ましいM/Pは0.75以上、1.3以下である。
以下に、ポリエステル原料を得る具体例を示すが、本発明はこれらの説明に制約を受けないことは無論である。
ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール等のグリコール成分とを、エステル化あるいはエステル交換触媒の存在下、加熱溶解して常法によりエステル化もしくはエステル交換反応するエステル化もしくはエステル交換反応の終了後、M/Pが前記した好ましい範囲になるように金属化合物及び/又はリン化合物を添加し、次いで常法により昇温、減圧にして重縮合反応し、固有粘度が0.5dl/g程度のポリエステルを得る。得られたポリエステルをチップ状で、減圧下もしくは常圧下、あるいは窒素雰囲気下で適当な条件を選んで加熱することによって固相重合する。固相重合温度、および固相重合時間の条件は、ポリエステルに添加する金属化合物の種類および量、リン化合物の種類および量、固有粘度などにより適宜変更することができる。本発明では、あらかじめ180℃以下の温度で予備結晶化させた後、190〜250℃で1torr程度の減圧下、10〜40時間固相重合するのが好ましい。また、重縮合反応における重合触媒としては、種々の化合物を適宜使用することができる。例えば、エステル交換反応触媒としては、酢酸リチウム、酢酸カルシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどに代表されるアルカリ金属、アルカリ土類金属化合物、酢酸マンガン、酢酸コバルト、あるいはこれらの水和物があげられる。また、重合触媒としては、3酸化2アンチモン等のアンチモン系、2酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系、チタンアルコキシドなどの各種チタン系、アルミニウム系化合物、あるいはこれらの複合酸化物などが挙げられる。また、安定剤としては、種々のリン化合物を使用することができ、例えばリン酸、亜リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸ジフェニルホスホネートなどがあげられる。
本発明の二軸配向フィルムにおけるポリエステル(a)の含有量はフィルム全重量に対し50〜99重量%であることが好ましく、より好ましくは60〜95重量%、さらに好ましくは70〜90重量%である。ポリエステル(a)の含有量が50重量%未満の場合、本発明の効果である加工特性を得られにくくなる傾向がある。一方、ポリエステル(a)の含有量が99重量%を超える場合、寸法安定性、耐熱性および耐加水分解性が劣る傾向がある。
本発明の二軸配向フィルムにおけるポリアリーレンスルフィド(b)の含有量は、熱寸法安定性、耐熱性および耐加水分解性の観点から、二軸配向フィルムの全重量に対して1〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは8〜30重量%である。ポリアリーレンスルフィド(b)の含有量が1重量%未満の場合、熱寸法安定性、耐熱性、耐加水分解性が劣る場合があり、一方、ポリアリーレンスルフィド(b)の含有量が50重量%を超える場合、本発明の効果である加工特性を損なう傾向があり、また、コストの観点からも不利である。
本発明でいうポリアリーレンスルフィド(b)とは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とするホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては、下記式(A)から式(K)などで表される単位などが例示されるが、なかでも(A)が特に好ましい。
Figure 2006143793
(ただし、式中のR1、R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基およびハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一であっても異なっていてもよい)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記式(L)から式(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−単位に対して、0〜5モル%の範囲であることが好ましく、1モル%以下の範囲であることがより好ましい。
Figure 2006143793
また、本発明におけるポリアリーレンスルフィド樹脂は、上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物であっても良い。
これらポリアリーレンスルフィド樹脂の代表例としては、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、ポリフェニレンスルフィドが特に好ましい。
本発明でいうポリフェニレンスルフィド(以下PPSという)とは、下記構造式で示されるフェニレンスルフィド単位を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む樹脂である。かかるフェニレンスルフィド成分が80モル%未満では、ポリマーの結晶性や熱転移温度などが低く、PPSの特徴である耐熱性、寸法安定性などを損なうことがある。
Figure 2006143793
上記PPS樹脂において、繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満であれば、共重合可能な他のスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満の繰り返し単位としては、例えば、3官能単位、エーテル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基などの置換基を有するアリール単位、ビフェニル単位、ターフェニレン単位、ビニレン単位およびカーボネート単位などが例として挙げられ、具体例として、下記の構造単位を挙げることができる。これらのうち一つまたは二つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム型またはブロック型のいずれの共重合方法であってもよい。
Figure 2006143793
PPS樹脂およびPPS樹脂組成物の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、温度315℃で剪断速度1,000(1/sec)のもとで、50〜5,000Pa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは100〜2,000Pa・sの範囲である。
本発明でいうPPSは種々の方法、例えば、特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、あるいは、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きい重合体を得る方法などによって製造することができる。
本発明において、得られたPPS樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水および酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネートおよび官能基ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など、種々の処理を施した上で使用することも可能である。
次に、PPS樹脂の製造法を例示するが、本発明では特にこれに限定されない。例えば、硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で、高温高圧下で反応させる。必要に応じて、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることも可能である。重合度調整剤として苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し230〜280℃で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸塩などの水溶液中で30〜100℃、10〜60分攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃で数回洗浄、乾燥してPPS粉末を得る。この粉末ポリマーを酸素分圧10トール以下、好ましくは5トール以下でNMPにて洗浄後、30〜80℃のイオン交換水で数回洗浄し、5トール以下の減圧下で乾燥する。かくして得られたポリマーは、実質的に線状のPPSポリマーであり、しかも該PPS樹脂の溶融結晶化温度Tmcは160〜190℃の範囲にあるので、安定した延伸製膜が可能になる。もちろん必要に応じて、他の高分子化合物や酸化珪素、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、マイカ、タルクおよびカオリンなどの無機や有機化合物や熱分解防止剤、熱安定剤および酸化防止剤などを添加してもよい。
PPS樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気や酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素やアルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。加熱処理温度は、通常170〜280℃が選択され、より好ましくは200〜270℃であり、また、加熱処理時間は、通常0.5〜100時間が選択され、より好ましくは2〜50時間であるが、この両者を制御することにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置であってもよいが、効率よくしかも均一に処理するためには、回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いることが好ましい。
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法を例示することができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置でもよいが、効率よく、しかもより均一に処理するためには回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いることが好ましい。
本発明で用いられるPPS樹脂は、脱イオン処理を施されたPPS樹脂であることが好ましい。脱イオン処理の具体的方法としては、酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理、および有機溶剤洗浄処理などを例示することができ、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
PPS樹脂の有機溶剤洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、有機溶剤としては、PPS樹脂を分解する作用などを有していないものであれば特に制限はなく、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒の中で、N−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムが特に好ましく用いられる。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度について特に制限はなく、常温〜300℃の範囲の任意の温度を選択することができる。洗浄温度が高くなるほど、洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の温度で十分効果が得られる。また、有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
PPS樹脂の熱水洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱し攪拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の方が多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
PPS樹脂の酸水溶液洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。用いられる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸やジクロロ酢酸などのハロゲン置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸やクロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸やサリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸およびフマル酸などのジカルボンン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸および珪酸などの無機酸性化合物などが挙げられる。中でも酢酸と塩酸が好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また、洗浄に用いられる水は、酸処理によりPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。酸水溶液洗浄処理を施すと、PPS樹脂の酸末端成分が増加して、ポリエステルやポリイミドなどと混合する場合に分散混合性が高まり、混成樹脂の熱寸法安定性、耐熱性、耐湿熱性などを向上させる効果が得られる。
また、本発明ではポリエステルとポリアリーレンスルフィドの混合において、必要に応じて、相溶化剤を配合することも上記2成分樹脂の相溶性の向上に有効である。この相溶化剤の例として、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基およびウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコシキシランなどの有機シラン化合物、エチレンやプロピレンなどのα−オレフィンとアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸やクロレン酸などのα、β−不飽和カルボン酸、これらのエステル、無水物、ハロゲン化物、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよび亜鉛などとの塩などの誘導体から選ばれた少なくとも1種の化合物とのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体などの変性ポリオレフィン類、α−オレフィンおよびα、β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合体などのエポキシ基含有オレフィン系共重合体および多官能エポキシ化合物などが挙げられ、これら2種以上同時に使用することもできる。特に好適な相溶化剤として、α−オレフィンおよびα、β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とする変性オレフィンを挙げることができ、中でも、α−オレフィンの最も好ましい例は、エチレンである。また、α、β−不飽和酸のグリシジルエステルは下記一般式
Figure 2006143793
(式中Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す)
で示される化合物であり、具体的には、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルおよびエタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。特に、メタクリル酸グリシジルが好ましく用いられる。α、β−不飽和酸のグリシジルエステルの共重合量は1〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは3〜40重量%である。
相溶化剤である上記の変性ポリオレフィンには、その効果を損なわない範囲内で、共重合可能な他の不飽和モノマー、例えば、ビニルエーテル類、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチル、エチルおよびプロピルなどのアクリル酸およびメタクリル酸のエステル類、アクリロニトリルおよびスチレンなどを共重合することもできる。かかる変性ポリオレフィン樹脂を用いるときに好適な配合量としては、本発明の二軸配向フィルムの全重量(100重量%)に対して、変性ポリオレフィン樹脂を0.01〜10重量%配合することが好ましく、さらに好ましくは0.05〜5重量%である。
本発明の二軸配向フィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、脂肪酸エステルおよびワックスなどの有機滑剤など他の成分が添加されてもよい。また、フィルム表面に易滑性や耐磨耗性や耐スクラッチ性等を付与するために無機粒子や有機粒子などを添加することもできる。そのような添加物としては、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナおよびジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン等を構成成分とする有機粒子、ポリエステルやポリフェニレンスルフィドの重合反応時に添加する触媒等によって析出する、いわゆる内部粒子や、界面活性剤などが挙げられる。
本発明のフィルムでは、環状三量体の含有量がフィルム全重量に対し0.1〜0.7重量%であることが重要である。ここで、環状三量体とは、フィルムを構成するポリエステルのオリゴマー成分として含まれる環状三量体であり、その含有量は液体クロマトグラフにより測定できる。環状三量体の含有量が0.7重量%を超える場合、その用途によっては加工工程中に析出されたオリゴマーによりロール汚れなどの問題やフィルム品質の欠点に繋がる傾向にある。また電気絶縁用フィルムとして用いる場合は、環状三量体の含有量がフィルム全重量に対し0.1〜0.6重量%であることが重要である。0.6重量%を超える場合、電動カーエアコンのモーターなど、冷媒で浸漬された状態で使用される場合に、冷媒によってフィルムから抽出された物が析出するなどの問題が生じ易いので電気絶縁用には適していない。一方、環状三量体の含有量を0.1重量%未満とすることは工業的に極めて難しいので、実用上は0.1重量%以上でも構わない。電気絶縁用に使用する際、冷媒によってフィルム中から抽出される環状三量体の量は、使用温度が高いほど多くなるので、高温で使用される用途では、特に環状三量体が関与する問題が大きい。そこで、本発明のフィルム中における環状三量体の含有量は、0.1〜0.55重量%が好ましく、0.1〜0.5重量%が特に好ましい。
本発明の二軸配向フィルムの固有粘度は、特に限定されないが、0.65〜1.5dl/gの範囲にあることが好ましい。固有粘度は、フィルムの生産性および本発明で目的とする耐熱性、耐加水分解性および加工特性を達成する観点から0.7〜1.0dl/gがより好ましい。
本発明の二軸配向フィルムの破断伸度は加工特性の観点から長手方向、幅方向ともに70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。上限は特に限定されないが150%程度である。破断伸度が150%を超える場合、耐熱性、耐湿熱性が悪化する傾向がある。一方、破断伸度が70%未満の場合、フィルムの靱性が不足し、本発明の効果である加工特性が得られ難くなる。破断伸度を本発明の好ましい範囲内とするには、例えば、含有量については、ポリアリーレンスルフィド(b)の含有量を二軸配向フィルムの全重量に対して1〜50重量%とすることが好ましい。また製膜工程においては、フィルムを90〜170℃の延伸温度、2〜5倍の倍率、好ましくは2.5〜4.5倍の倍率で一段階もしくは二段階以上の多段階で長手方向(縦方向)に延伸し、更に該フィルムをクリップで把持してテンターに導き、90〜180℃の延伸温度、2〜6倍の倍率で、好ましくは2.5〜5.5倍の倍率で幅方向(横方向)に延伸するとよい。延伸後の熱処理は210〜235℃で行うことが好ましい。熱処理後の冷却工程では、弛緩処理を行うことが好ましく、縦、横各々0.1〜7%の割合で弛緩処理することがフィルム品質を実現する上で好適である。
本発明の二軸配向フィルムは寸法安定性の観点から、加熱条件を150℃、30分間としたときの長手方向の熱収縮率が4%未満であることが好ましく、より好ましくは3.5%未満、さらに好ましくは3%未満である。長手方向の熱収縮率が4%以上である場合、熱処理加工を必要とする用途では熱履歴による形態変化が顕著となり、本発明の効果である寸法安定性が得られ難くなる。熱収縮率を本発明の好ましい範囲内とするには、例えば、含有量については、ポリアリーレンスルフィド(b)の含有量を二軸配向フィルムの全重量に対して1〜50重量%とすることが好ましい。また製膜工程における延伸後の熱処理を210〜235℃ですることが好ましい。熱処理後の冷却工程では、弛緩処理を行うことが好ましく、縦、横各々0.1〜7%の割合で弛緩処理することがフィルム品質を実現する上で好適である。
また本発明の二軸配向フィルムは、単層であっても良いし、少なくとも2層以上の積層構造であっても良い。積層構造をとる場合、本発明のフィルム層を基層部として用いられても良いし、積層部として用いられてもよいが、少なくとも一方の表層は本発明のフィルム層からなることが好ましい。
本発明のフィルムの厚みは、目的に応じて適宜決定できるが、10μm以上、500μm以下であり、好ましくは、25μm以上、300μm以下である。フィルムの厚みが10μm未満では、電気絶縁性が不足し、一方、500μmを越えると、フィルムが堅くなり加工特性が不良となるので注意すべきである。
さらに本発明の二軸配向フィルムは、必要に応じて、熱処理、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工およびエッチングなどの任意の加工を行ってもよい。
次に、ポリエステル(a)としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアリーレンスルフィド(b)としてポリフェニレンスルフィド(PPS)を使用した場合を例示して、本発明の二軸配向フィルムの好ましい製造法について説明するが、本発明は、下記の製造法に限定されないことはもちろんである。
重合時添加、溶融混練時添加、あるいは高濃度マスター原料を混合する等の方法を適宜組み合わせ、また、必要に応じて所定粒子、添加剤を添加することにより、ポリエステルとポリアリーレンスルフィドを含有する樹脂組成物を準備する。この樹脂組成物を、水分率70ppm以下、好ましくは50ppm以下に乾燥した後、押出機を用いて溶融し、口金を用いてシート状に押出し、30〜100℃の冷却ロール上で冷却する。この際、使用するPETは、固相重合によって予め固有粘度を0.80dl/g〜1.5dl/gとし、ポリマー中の環状三量体の含有量を0.7重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下まで低下させておくことが好ましい。また、フィルムに成形する際の溶融押出では、ポリマーが完全に融解するまで固相と液相を分離する上で有効なバリアフライト型のスクリューを使用し、溶融時に剪断発熱を抑制して、ポリマー温度を290〜310℃の温度範囲に制御し、滞留時間5分以下で溶融成形することが本発明のフィルムを得る上で有効である。また、ポリエステルとポリアリーレンスルフィドのブレンドチップを二軸混練機を用いて作成する場合においても、前記同様の押出条件に設定し、滞留時間を可能な限り短くして、オリゴマーの再生を抑制することが肝要である。ここで、滞留時間とは、押出系の全容積を吐出量で割った値である。また、ベント孔を有する押出機を用いる場合は、前記乾燥工程を省いてもよい。
次いで、得られたシート状物を、長手方向(縦方向)に延伸した後、幅方向(横方向)に延伸、もしくは幅方向(横方向)に延伸した後、長手方向(縦方向)に延伸する逐次二軸延伸法、もしくは同時二軸延伸法によって、フィルムに二軸配向性を付与する。以下では、最も一般的に用いられる逐次二軸延伸法による具体例を示すが本発明が以下の説明に限定されないことは無論である。
まず、複数のロール群によって加熱したフィルムを90〜170℃の延伸温度、2〜5倍の倍率、好ましくは2.5〜4.5倍の倍率で一段階もしくは二段階以上の多段階で長手方向(縦方向)に延伸し、更に該フィルムをクリップで把持してテンターに導き、90〜180℃の延伸温度、2〜6倍の倍率で、好ましくは2.5〜5.5倍の倍率で幅方向(横方向)に延伸する。この際、必要に応じて更に長手方向及び/又は幅方向に110〜180℃で1.01〜2.5倍の延伸を施してもよい。延伸後の熱処理は、一般的には100〜250℃で行われるが、本発明では、210〜235℃で熱処理することが好ましい。熱処理後の冷却工程では、弛緩処理を行うことが好ましく、縦、横各々0.1〜7%の割合で弛緩処理することが好ましい。熱処理終了後、170〜230℃の温度域で、フィルムの縦および横方向について、個別又は同時に0.5%以上、7%以下の割合で弛緩処理することが本発明のフィルム品質を実現する上で好適である。また、得られたロール状のフィルムを70〜120℃で1時間〜10日間加熱処理したり、また熱固定されたフィルムを再度熱処理することもできる。また、熱固定前または熱固定後のフィルムを、キシレンやクロロホルムなどの溶媒で処理し、フィルム中の低分子化合物を抽出除去した後、再度フィルムを加熱処理することもできる。
このようにして、冷媒などによって抽出される化合物の含有量が少なく、かつ熱寸法安定性、耐熱性、耐加水分解性および加工特性に優れた二軸配向フィルムを得ることができ、このフィルムは特に電動カーエアコンのモーターなどを中心とした電気絶縁用途に好適に使用できる。
なお、こうして得られた本発明の二軸配向フィルムにおけるポリアリーレンスルフィドおよびポリエステルの含有量は、例えば下記のように測定することができる。まず、フィルムを秤量後、ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解する。ポリアリーレンスルフィドが含有される場合は不溶であるので、この不溶成分を遠心分離で分取した後、重量を測定し、元素分析、FT−IR、NMR法によりポリアリーレンスルフィドの構造と重量分率が測定できる。上澄み成分を同様に分析すれば、ポリエステル成分の重量分率と構造が特定できる。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
(1)固有粘度[η]
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から、下式で計算した値を用いた。
ηsp/C=[η]+K[η]・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶解ポリマ重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示す。
(2)ポリエステル中の含有元素の量(M/P)
Liについては原子吸光法[AA630−13型(島津製作所(製))]により測定した。その他の元素については、螢光X線法[IKF 3064型(ガイガーフレックス社製)]により測定した。これらの測定結果から、リン元素に対する金属元素のモル比(M/P)を求めた。
(3)環状3量体の含有量
フィルム100mgをオルソクロロフェノール1mlに溶解し、不溶成分を遠心分離で分取した後、、可溶成分について高速液体クロマトグラフ[LC−10A(島津製作所(製))]により測定し、フィルムの全重量に対する割合(重量%)で示した。
(4)破断伸度
フィルム長手方向に、長さ200mm、幅10mmの短冊状のサンプルを切り出して用いた。JIS K−7127に規定された方法に従って、引っ張り試験器を用いて25℃、65%RHにて破断伸度を測定した。初期引っ張りチャック間距離は100mmとし、引っ張り速度は300m/分とした。測定はサンプルを変更して20回行いその破断伸度の平均値を求めた。
(5)熱寸法安定性(熱収縮率)
JIS C−2318に規定された方法にしたがって測定した。試料幅10mm、試料長200mmのサンプルをギアオーブンにより150℃、30分間の条件下で熱処理し、試料長の変化から、下記式により熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=[(熱処理前の長さ−熱処理後の長さ)/熱処理前の長さ]×100
(6)耐熱性(破断伸度の半減時間)
フィルム長手方向に、長さ200mm、幅10mmの短冊状のサンプルを切り出して用いた。JIS K−7127に規定された方法に従って、引っ張り試験器を用いて25℃、65%RHにて破断伸度を測定した。初期引っ張りチャック間距離は100mmとし、引っ張り速度は300m/分とした。測定はサンプルを変更して20回行いその破断伸度の平均値(X)を求めた。また、フィルム長手方向に、長さ200mm、幅10mmの短冊状のサンプルを、ギアオーブンにいれ、180℃の雰囲気下で放置した後、自然冷却し、このサンプルについて前記と同条件での引っ張り試験を20回行い、その破断伸度の平均値(Y)を求めた。得られた破断伸度の平均値(X)、(Y)から伸度保持率を次式で求めた。
伸度保持率(%)=(Y/X)×100
伸度保持率が50%以下となるまでの熱処理時間を破断伸度の半減時間とした。
(7)耐加水分解性(破断伸度の半減時間)
フィルム長手方向に、長さ200mm、幅10mmの短冊状のサンプルを切り出して用いた。JIS K−7127に規定された方法に従って、引っ張り試験器を用いて25℃、65%RHにて破断伸度を測定した。初期引っ張りチャック間距離は100mmとし、引っ張り速度は300m/分とした。測定はサンプルを変更して20回行い、 その破断伸度の平均値(X)を求めた。また、フィルム長手方向に、長さ200mm、幅10mmの短冊状のサンプルを、高度加速寿命試験器(タバイエスペック(株)製プレッシャークッカーTPC−211型)を用いて2kg/cmの加圧下、140℃、80%RHの雰囲気下で放置した後、自然冷却し、このサンプルについて前記と同条件での引っ張り試験を20回行い、その破断伸度の平均値(Y)を求めた。得られた破断伸度の平均値(X)、(Y)から伸度保持率を次式で求めた。伸度保持率が50%以下となるまでの処理時間を破断伸度の半減時間とした。
伸度保持率(%)=(Y/X)×100
伸度保持率が50%以下となるまでの熱処理時間を破断伸度の半減時間とした。
(8)フィルム厚み
アンリツ(株)製電子マイクロメータ(K−312A型)を用いて、針圧30gにてフィルム厚みを測定した。
(9)加工特性
フィルム長手方向に40mm、幅方向に20mmとなるようにフィルムを切り出し、ついで幅方向に平行に両端部を各5mmずつ折り返してモーター挿入用サンプルを作成した。このサンプルをモーター回転子部分に挿入し、エナメル線を巻き込んだ。その後エナメル線部分をプレスしてエナメル線部分の成型を行ない、この時にフィルムサンプルの割れの発生を評価した。10個のフィルムサンプルについて測定し、以下の基準で判断した。○と△が合格である。
○:全く割れが発生しない
△:1個または2個のサンプルが割れる。
×:3個以上のサンプルが割れる。
以下に本発明の具体的な実施例を比較例と比較しながら説明する。
[実施例1]
ジメチルテレフタレートとエチレングリコールの混合物に、ジメチルテレフタレートに対して、酢酸カルシウム0.09重量%と三酸化アンチモン0.03重量%とを添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行った。次いで、得られたエステル交換反応生成物に、原料であるジメチルテレフタレートに対して、酢酸リチウム0.15重量%とリン酸トリメチル0.21重量%とを添加した後、重合反応槽に移行し、次いで加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重合し、固有粘度0.54dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)を得た。得られたPETポリマーを回転型真空重合装置を用いて、1mmHg以下の減圧下、225℃の温度で35時間加熱処理し、固有粘度0.85dl/gのPETポリマを得た。該PETに含まれる元素量を分析した結果、Ca=200(ppm)、Li=100(ppm)、P=350(ppm)であり、M/P=1.0であった。また、環状三量体の含有量は0.27重量%であった。
ここで得た固有粘度0.85dl/gのPET50重量部と東レ(株)製の線状PPS樹脂(“トレリナ”(登録商標)M2088、ガラス転移温度92℃、融点283℃)50重量部とを、300℃に加熱されたベント方式の二軸混練機に投入し、滞留時間2分でPET/PPSが50/50(重量比)のブレンドチップを作成した。
次いで、ここで得たブレンドチップ20重量部と上記の固有粘度0.85dl/gのPETチップ80重量部を混合し、水分量30ppm以下に乾燥した後、バイアフライト型の低剪断タイプのスクリューを備えた120mmの単軸押出機に投入して、ポリマー温度を300℃にコントロールし、滞留時間3分で溶融、混練した後、シート状に押出し、20℃の冷却ロール上で冷却した。該シートを長手方向に95℃で3.4倍、100℃で幅方向に3.8倍延伸を行った後、210℃に制御された温度ゾーンで熱処理を施し、その後、幅方向に170℃で3%弛緩処理を行った後、室温まで冷却して巻取り、厚さ100μmの二軸配向フィルムを得た。原料および製膜条件を表1に示す。また、ここで得られたフィルムの特性を表2に示す。本実施例で得られたフィルムは、低オリゴマー性で加工特性、寸法安定性、耐熱性および耐加水分解性にも優れたフィルムであった。
[実施例2〜4]
ポリアリーレンスルフィド(b)の含有量を変更し、表1に示す条件で製膜した以外は実施例1と同様に製膜し、厚さ100μmの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2示す。ポリアリーレンスルフィド(b)の含有量が好ましい範囲内にある本実施例2および3は、低オリゴマー性で加工特性、寸法安定性、耐熱性および耐加水分解性に優れたフィルムであった。一方、ポリアリーレンスルフィド(b)の含有量が60重量%である本実施例4のフィルムは、低オリゴマー性、寸法安定性、耐熱性および耐加水分解性は良好であった。加工特性については若干劣っていたが使用可能なレベルであった。
[実施例5]
ジメチル−2、6−ナフタレート100重量部、エチレングリコール60重量部および酢酸マグネシウム4水和物0.09重量部を反応器にとり、約4時間をかけて230℃まで徐々に加熱昇温した。この時生成してくるメタノールを留去させ、エステル交換反応を終了した。この反応物にリン酸トリメチル0.04重量部、三酸化アンチモン0.03重量部およびエチレングリコール10重量部に分散させた平均粒子径0.3μmの酸化チタン0.3重量部を添加し、常法に従って重合し、固有粘度0.48のポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)チップを得た。このチップを200℃で30時間固相重合し、固有粘度0.75、環状三量体の含有量が0.38重量%のPENチップを得た。
ここで得られた固有粘度0.75dl/gのPEN50重量部と東レ(株)製の線状PPS樹脂(“トレリナ”(登録商標)M2088、ガラス転移温度92℃、融点283℃)50重量部とを、305℃に加熱されたベント方式の二軸混練機に投入し、滞留時間2分でPEN/PPSが50/50(重量比)のブレンドチップを作成した。
次いで、ここで得たブレンドチップ20重量部と上記の固有粘度0.75dl/gのPENチップ80重量部を混合し、水分量30ppm以下に乾燥した後、バイアフライト型の低剪断タイプのスクリューを備えた120mmの単軸押出機に投入し、ポリマー温度を300℃にコントロールし、滞留時間3分で溶融、混練した後、シート状に押出し、20℃の冷却ロール上で冷却した。該シートを長手方向を140℃で3.7倍長手方向に延伸し、さらに145℃で3.8倍幅方向に延伸した後、フィルムの幅方向に5%弛緩させながら210℃で5秒間熱固定し、その後、室温まで徐冷して巻き取った。このときのフィルム厚みは100μmであった。得られたフィルムの特性を表2に示す。本実施例で得られたフィルムは、低オリゴマー性、寸法安定性、耐熱性および耐加水分解性は良好であった。加工特性については若干劣っていたが使用可能なレベルであった。
[実施例6]
ポリアリーレンスルフィド(b)の種類を東レ(株)製の線状PPS樹脂(“トレリナ”(登録商標)M3910、ガラス転移温度90℃、融点283℃)に変更し、表1に示す条件で製膜した以外は実施例1と同様に製膜し、厚さ100μmの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2示す。本実施例で得られたフィルムは、低オリゴマー性で加工特性、寸法安定性、耐熱性および耐加水分解性に優れたフィルムであった。
[比較例1]
リン酸トリメチルの添加量を0.45重量%に変更することによりPET中のM/Pを変更し、表1に示す条件で製膜した以外は実施例1と同様に製膜して、厚さ100μmの二軸配向フィルムを得た。PET中のM/Pが好ましい範囲から外れると、オリゴマー量が増加し、本発明で目的とする、低オリゴマーおよび加工特性を両立するフィルムが得られなかった。
[比較例2]
ポリアリーレンスルフィド(b)を含有せず、表1に示す条件で製膜した以外は実施例1と同様に製膜して厚さ100μmの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。本比較例のフィルムは、ポリアリーレンスルフィド(b)を含有しておらず、オリゴマー量が増加し、本発明で目的とする、低オリゴマー性が得られなかった。
[比較例3]
ポリエステル(a)を含有せず、表1に示す条件で製膜した以外は実施例1と同様に製膜して厚さ100μmの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。本比較例で得られたフィルムは環状三量体が検出されず、低オリゴマー性を有していた。また耐熱性および耐加水分解性に優れるが、加工特性の劣ったフィルムであった。
Figure 2006143793
ここで、表中の略号を以下に示す。
PET:ポリエチレンテレフタレート
PEN:ポリエチレン−2,6−ナフタレート
PPS:ポリフェニレンスルフィド
Figure 2006143793
本発明の二軸配向フイルムは、低オリゴマー性、熱寸法安定性、耐熱性および耐加水分解性に優れ、詳しくは電気絶縁用に好適な加工特性を有した二軸配向フィルムであり、その工業的価値は極めて高い。

Claims (5)

  1. ポリエステル(a)とポリアリーレンスルフィド(b)とを含み、環状三量体の含有量がフィルム全重量に対し0.1〜0.7重量%である二軸配向フィルム。
  2. ポリアリーレンスルフィド(b)がポリフェニレンスルフィドであり、このポリフェニレンスルフィドの含有量がフィルム全重量に対し1〜50重量%である、請求項1に記載の二軸配向フィルム。
  3. ポリエステル(a)がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびこれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエステルである、請求項1または2に記載の二軸配向フィルム。
  4. 加熱条件を150℃、30分間としたときの長手方向の熱収縮率が4%未満である、請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向フィルム。
  5. 環状三量体の含有量がフィルム全重量に対し0.1〜0.6重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の二軸配向フィルムを用いてなる電気絶縁用フィルム。
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