JP2006136168A - モータ用コイルの製造方法及びモータ用コイル - Google Patents

モータ用コイルの製造方法及びモータ用コイル Download PDF

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Kazutaka Tatematsu
和高 立松
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健司 原田
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Abstract

【課題】 耐熱性樹脂と無機材料からなる耐熱性の絶縁材料であって無機材料の含有率が高いものにより被覆され、かつ従来は得ることが困難であった形状を有するコイルを、容易に製造することができるモータ用コイルの製造方法、およびこの方法により製造されるモータ用コイルを提供する。
【解決手段】 固形分14重量%以下のポリイミド樹脂の有機溶剤溶液中に、シリカ又はアルミナの無機粉末を、該ポリイミド樹脂量の30〜300重量%分散し、得られた分散液を導体上に塗布した後、該有機溶剤を除去して絶縁被覆を形成する工程を有することを特徴とするモータ用コイルの製造方法、及び導体を所定のコイル形状に加工し、該加工後の導体上に絶縁被覆を形成することを特徴とするモータ用コイルの製造方法、並びにこれらの方法により製造されるモータ用コイル。
【選択図】 図1

Description

本発明は、モータ用コイルの製造方法および該方法により製造されるモータ用コイルに関する。特に、ハイブリッド電気自動車の駆動用モータなど、小型化かつ高出力化が求められるモータに好適に使用されるモータ用コイルの製造方法、および該方法により製造されるモータ用コイルに関するものである。
自動車搭載用モータ、特に電気自動車やハイブリッド電気自動車の駆動用モータとしては、小型で高出力のモータが求められている。小型でありながら高出力を得るため、モータ用コイルへの電流密度は高いことが好ましい。しかし、コイルへの電流密度を上げるとコイルの発熱が大きくなり、高熱によりコイルを被覆する絶縁材料が劣化するなどの問題が生じやすくなる。
そこで絶縁材料としては耐熱性の優れたポリイミド樹脂が広く用いられている。ポリイミド樹脂を絶縁材料としたポリイミド線は、耐熱寿命が250℃程度であり、モータコイル用巻線として広く使用されている。しかし近年、ハイブリッド電気自動車の駆動用モータなどについて、より小型化かつ高出力化が要求されおり、この要求を、モータ用コイルへの電流密度を上げて達成するためには従来のポリイミド線では不十分であり、より高い耐熱性を有する絶縁材料で被覆されたモータ用コイルが求められるようになった。
耐熱性のより高い絶縁材料として、シリカやアルミナなどの無機材料をポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂に含有させた絶縁材料が知られている。例えば、特開平10−199337号公報には、ポリイミド樹脂にシリカ、アルミナなどのフィラーを含有させた絶縁材料で被覆された絶縁電線が開示されており(段落0007、段落0012)、このような絶縁材料により300℃以上の耐熱性が得られると言われている。
特開平10−199337号公報記載の絶縁被覆材料は、固形分15重量%以上のポリイミド樹脂の有機溶剤溶液中に、シリカやアルミナ等の無機粉末を分散させて作られる(段落0015)。耐熱性を向上させるためには無機粉末量が多い方が好ましい。しかし、無機粉末量がポリイミド樹脂に対して、30重量%近くになると、又は30重量%を超えると、分散液粘度が急激に上昇し、良好な分散が得られない。その結果、実際には、脆く導体からの剥離強度も低く、絶縁性能上も不十分であり、実用性の不十分な絶縁被覆材料しか得られていなかった。
例えば、この絶縁被覆材料は可撓性が低く、加工時にクラックが生じやすく絶縁性能が損なわれやすいなどの問題がある。特に、無機粉末の含有率の高い絶縁材料はこの傾向が大きい。その結果、この絶縁材料により被覆された導体は、曲率の大きな曲げなどを行うことができず、コイルへの加工が困難であり、使用できる範囲、特に適用されるコイルの形状は限られたものであった。一方、加工性を向上するために無機材料の含有率を低くすると高い耐熱性は得られない。そこで、無機材料の含有率が高く耐熱性の優れた絶縁材料により被覆されながら、従来は、クラックの発生や絶縁性能の低下などにより、得ることが困難であった形状を有するコイルを、容易に製造する方法の開発が望まれていた。
特開平10−199337号公報(段落0007、段落0012、段落0015)
本発明は、耐熱性樹脂と無機材料からなる耐熱性の絶縁材料であって無機材料の含有率が高いものにより被覆され、かつ従来は得ることが困難であった形状を有するコイルを製造することができるモータ用コイルの製造方法、およびこの方法により製造されるモータ用コイルを提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、ポリイミド樹脂の有機溶剤溶液中にシリカやアルミナ等の無機粉末を分散させる際に、該樹脂溶液の固形分が14重量%以下であれば、無機粉末量を、ポリイミド樹脂に対して30重量%以上としても、粘度の急激な上昇は起こらず、該ポリイミド樹脂の溶液中に無機粉末が良好に分散した塗布液が得られることを見出した。そして、この塗布液を用いて絶縁被覆を形成することにより、優れた耐熱性とともに種々の形状を有するモータ用コイル、例えば従来は得ることが困難であった形状を有するコイルが容易に製造できることを見出し、本発明を完成した。
本発明者は又、コイル用の導体を所定のコイル形状に加工した後に、ポリイミド樹脂と無機材料(無機粉末)からなり、該無機粉末の含有率が所定の範囲内の組成物の層(絶縁被覆)を該導体上に形成する方法により、種々の形状のモータ用コイルが容易に製造できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、固形分14重量%以下のポリイミド樹脂の有機溶剤溶液中に、シリカ又はアルミナの無機粉末を、該ポリイミド樹脂量の30〜300重量%分散し、得られた分散液を導体上に塗布した後、該有機溶剤を除去して絶縁被覆を形成する工程を有することを特徴とするモータ用コイルの製造方法である(請求項1)。
ここでポリイミド樹脂の有機溶剤溶液とは、ポリイミド樹脂又はその前駆体を有機溶剤に溶解した溶液であり、有機溶剤としてはポリイミド樹脂を溶解するものであれば特に限定されない。本発明では、この有機溶剤溶液として固形分14重量%以下のものが用いられる。固形分が14重量%を越えると、無機粉末量がポリイミド樹脂に対して30重量%以上の場合、粘度の急激な上昇が生じ、良好な分散が得られず、その結果実用上充分な剥離強度や絶縁性能が得られない等の問題が生じる。固形分は、好ましくは、12.5重量%以下である。
無機粉末の含有量は、ポリイミド樹脂量の30〜300重量%の範囲である。含有量が30重量%未満であると、従来のポリイミド樹脂などにより構成される絶縁材料に比べて特に優れた耐熱性が得らにくい。一方、300重量%を越えると、無機粉末をポリイミド樹脂に分散する際に、例え溶液中の固形分が14重量%以下であっても、粘度の急激な上昇の問題が生じ、又得られた絶縁被覆材料を被覆したモータ用コイルの加工時にクラックなどを生じやすくなり好ましくない。無機粉末の含有量は、好ましくは、ポリイミド樹脂量の30〜100重量%、より好ましくは、ポリイミド樹脂量の30〜50重量%の範囲である。
本発明に用いられるポリイミド樹脂は、耐熱性樹脂であり、20000時間連続使用温度(耐熱寿命)250℃程度の耐熱性を有するものである。熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミドのいずれも用いることができる。
本発明で用いられるシリカ又はアルミナの無機粉末とは、シリカ又はアルミナを主成分とする微細粉末であり、ポリイミド樹脂よりも耐熱性が優れたものであり、20000時間連続使用温度(耐熱寿命)300〜600℃程度を有する。又、熱伝導率の高いものが好ましく、中でも体積固有抵抗(室温)が10の12乗Ω・cm以上であるシリカやアルミナなどが好ましく用いられる。
シリカ又はアルミナの無機粉末は、シランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。本発明の請求項2はこの好ましい態様に該当し、前記のモータ用コイルの製造方法であって、該無機粉末が、シランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とするモータ用コイルの製造方法を提供するものである。
シランカップリング剤で表面処理することにより、ポリイミド樹脂溶液に無機粉末を分散する際の無機粉末の局所的な凝集を防ぐとともに、無機粉末とポリイミド樹脂との相溶性が向上する。従って、粘度の上昇を防ぐとの効果がより顕著になる。そして、無機粉末の含有量を増やすことが容易になり、絶縁被覆の耐熱性の向上にも寄与する。
シリカ又はアルミナの無機粉末としては、0.01〜0.05μmの中心粒子径を有するものが好ましい。このような中心粒子径を有する無機粉末を用いることにより、ポリイミド樹脂との組成物中で最密充填に近い分散状態を達成でき、樹脂溶液への分散の際に粘度の上昇を起しにくく、無機粉末の含有量を増やすことが可能となり、モータ用コイルの耐熱性をより向上させることができる。
本発明の請求項3はこの好ましい態様に該当し、前記のモータ用コイルの製造方法であって、該無機粉末が、0.01〜0.05μmの中心粒子径を有することを特徴とするモータ用コイルの製造方法を提供するものである。
本発明はその請求項4として、導体を所定のコイル形状に加工し、該加工後の導体上に、ポリイミド樹脂及びシリカ又はアルミナの無機粉末からなり、該無機粉末の含有量がポリイミド樹脂量の30〜300重量%である絶縁被覆を形成することを特徴とするモータ用コイルの製造方法を提供する。この方法によれば、絶縁被覆の形成後にコイルの形状を大きく変える加工を行う必要がないので、かとう性の低い絶縁被覆材料の場合であっても、クラックの発生や絶縁性の低下等の問題を低減できる。
前記の所定のコイル形状は、モータ内へ設置された後の形状とは通常異なる。コイルの導体上に絶縁被覆を形成するためには、ポリイミド樹脂と無機粉末などからなる組成物を該導体上に塗布する必要があるので、コイルの導体間に間隙が必要であり、一方、モータ内へ設置するときはコイル占積率を高くするためにはコイルの導体間に間隙がない方が好ましいので、通常、絶縁皮膜の形成後モータ内へコイルを設置するときに、該間隙を減少するための変形が必要である。
ただし、この変形が大きいと、クラックの発生や絶縁性能の低下等が生じ好ましくないので、所定のコイル形状としては、加工や大きな変形などを伴わず僅かな変形でもってモータ内に設置されたときの形状とすることができる形状が採用される。そこで、モータ内へ設置するときの形状と同じ巻き径を有し、コイルの導体間に絶縁被覆形成のために必要な最小の間隙があるようにした形状を採用し、絶縁被覆形成後、該間隙を0とするようにコイルを長さ方向に圧縮してモータ内へ設置する方法が通常採用される。
本発明のモータ用コイルの製造方法により製造されたモータ用コイルは、絶縁被覆中の無機粉末の含有量が大きいので優れた耐熱性を有する。このモータ用コイルはさらに、高温での使用時のポリイミド樹脂の加水分解による劣化を低下させるとの効果も奏する。すなわち、絶縁被覆に用いられるポリイミド樹脂はイミド基など親水基を持つので加水分解を受けやすく、一方、ハイブリッド電気自動車などの駆動モー夕ではATF油をその表面にかけるので、高温になると油中の水分により絶縁被覆中のポリイミド樹脂が加水分解されやすい。無機材料は、ほとんど吸水することはないので、無機粉末の含有量を大きくすることにより加水分解を低減することができる。
上記のモータ用コイルは、絶縁被覆層上に半導電層を有することが好ましい。より好ましくは、さらに、絶縁被覆と導体間にも半導電層を有する。モータの駆動電圧を上げて導体と絶縁被覆表面間が高電圧、例えば、コイルの絶縁被覆の厚みが通常(50μm以下)の場合は約600V以上になると、絶縁被覆の表面からコロナ放電が発生し、このコロナ放電により絶縁被覆の劣化が急速に進行する。絶縁被覆上に半導電層が存在すると、このコロナ放電の発生を防ぐことができるので好ましい。
また、導体表面が粗く表面に突起を有する場合は、該突起に電界集中が起こり、コロナ放電が発生しやすくなる。絶縁被覆と導体間に半導電層を有すると、電界集中を緩和し、コロナ放電の発生を防ぐことができるので好ましい。すなわち、コロナ放電開始電圧の上昇、絶縁被覆の劣化の低減、大幅な耐電圧特性の向上が可能となる。なお、本発明のコイルにおける絶縁被覆導体は高い耐熱性が求められるので、この半導電層にも絶縁被覆と同等以上の高い耐熱性が求められる。
本発明の請求項5および請求項6は、この好ましい態様に該当するものである。すなわち請求項5は、上記の本発明のモータ用コイルの製造方法により製造されたモータ用コイルであって、絶縁被覆上に、該絶縁被覆と同等以上の高い耐熱性を有する半導電層を有することを特徴とするモータ用コイルを提供するものであり、請求項6は、同様な高耐熱の半導電層を、さらに、絶縁被覆と導体間に有することを特徴とするモータ用コイルを提供するものである。
上記のモータ用コイルの導体としては、断面が矩形でかつ平角部が円弧状の平角状であるものが好ましい。断面を平角状とすることにより、モータのスロット内のコイル占積率を向上でき、また放熱性も向上するので好ましい。本発明の請求項7はこの好ましい態様に該当し、上記のモータ用コイルであって、導体の断面が平角状であることを特徴とするモータ用コイルを提供するものである。
この断面が平角状の導体からなるコイルにおいては、平角部も絶縁被覆が形成されていることが好ましい。平角部にも絶縁被覆が形成されることにより、該平角部を通しての導体間の放電を防ぐことができる。
本発明のモータ用コイルの製造方法により、ポリイミド樹脂と無機材料(無機粉末)からなる耐熱性の絶縁材料であって無機材料の含有率が高いものにより被覆されたモータ用コイルであって、かつ従来は、製造中のクラックの発生、絶縁性能の低下などの問題により得ることが困難であった形状を有するモータ用コイルを容易に製造することができる。
そして、この方法により製造されたモータ用コイルは、無機材料の含有率が高く耐熱性の優れた絶縁材料により被覆されているので、より高温での使用が可能であり、ポリイミド樹脂のみにより絶縁被覆された従来のコイルを用いた場合では達成困難であった、連続20000時間使用での耐熱性の250℃以上を達成することができる。従って、このモータ用コイルを使用したモータは、高い電流密度での使用が可能であるので、小型であっても高出力を達成でき、ハイブリッド電気自動車の駆動用モータなどに好ましく用いることができる。
さらに、絶縁被覆の耐加水分解性、耐コロナ性等の向上を期待することができる。
図1は、本発明のモータ用コイルの製造方法における所定のコイル形状に加工された導体の一例を示す外観図である。この例の導体は、屈曲部1と直線部2からなり、その断面は、図2または図3に示されるような平角状である。
コイル内の隣り合う導体間には間隙3が設けられている。間隙3は、ポリイミド樹脂と無機粉末からなる組成物を導体上に塗布して絶縁被覆を形成するために設けられている。絶縁被覆の形成後、モータのスロット内でのコイルの占積率を上げるため、好ましくは、コイルはその長さ方向、すなわち図1中のY軸方向に圧縮され間隙3を0としてモータ内に設置される。この場合、間隙3が大きいと、モータ内へ設置の際のコイルの変形が大きくなり絶縁被覆のクラックなどが生じやすくなる。そこで、間隙3としては、組成物の塗布に必要な最小の大きさとする。
図1の導体上には、ポリイミド樹脂やその前駆体を有機溶剤に溶解した樹脂溶液に無機粉末を分散させたものが塗布される。ポリイミド樹脂は、芳香族ジアミンと芳香族カルボン酸二無水和物を反応させることにより得られ、例えば、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)の反応により得られるPMDA系ポリイミドなどの他、ポリベンズイミダゾールや3,4,9,10−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と1,4−ジアミノベンゼン(PDA)からなるBPDA系ポリイミドなども使用できる。より具体的には、ポリイミドエナメル線用塗料として工業的に実用されているもの、デュポン社のPyre−MLや東レ社のトレニース#3000などが例示される
無機粉末として使用されるシリカとしては、日本アエロジル社製のAEROSIL50、90G、130、OX50などが挙げられ、アルミナとしては、日本アエロジル社製の酸化アルミニウムCや住友化学社製のスミコランダムAA−05、AA−2、AA−10などが挙げられる。前記のように無機粉末としては、中心粒子径が0.01〜0.05μmの範囲のものが好ましい。
無機粉末の表面処理に用いられるシランカップリング剤とは、一分子中に有機官能基と加水分解基を有し、無機材料と有機樹脂を結びつける機能を有するものであるが、本発明においては、芳香環かつアミノ基を有するものが好ましく用いられる。このようなシランカップリング剤としては、信越化学製KBM−573が例示される。シランカップリング剤による表面処理の方法は特に限定されず、乾式法、湿式法、スプレー方式などの公知の方法を採用することができる。
ポリイミド樹脂やその前駆体を溶解した樹脂溶液に無機粉末を分散させたものを図1の導体上に塗布する方法は特に限定されない。例えばPMDA系ポリイミドを含有する組成物を形成するためには、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)と4,4’ジアミノジフェニルエーテル(DDE)とを反応させて得られるポリアミド酸ワニス(前駆体の溶液)に無機粉末を分散させた液(絶縁塗料)を作製し、この絶縁塗料を導体上に塗布し焼き付ければよい。焼き付けによりポリアミド酸がポリイミド化し、無機粉末を分散したポリイミド樹脂の組成物の層(絶縁被覆)が形成される。また焼き付けにより、ポリイミド樹脂やその前駆体を溶解していた有機溶剤が蒸発し除去される。なお、有機溶剤の沸点以下で有機溶剤を乾燥させた後、焼付けを行ってもよい。
他に、所定のコイル形状とした導体を絶縁塗料に浸漬した後引上げる含漬法等も用いることができる。含漬後、加熱、乾燥により、有機溶剤が除去される。本発明における絶縁被覆には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ポリイミド樹脂、無機粉末以外の第3成分を有する絶縁被覆も含まれる。
図2は、本発明のモータ用コイルの一例の断面図を表す。このコイルでは、導体4はポリイミド樹脂と無機粉末からなる絶縁被覆6で覆われており、絶縁被覆6はさらに半導電層5で覆われている。その結果、コロナ放電開始電圧が上昇し、コロナ放電による絶縁劣化が防止されている。
図3は、本発明のモータ用コイルの他の一例を表す断面図であるが、このコイルでは、さらに導体4と絶縁被覆6の間に半導電層7が設けられている。この半導電層7により、導体4上の突起への電界集中の影響が緩和され、コロナ放電による絶縁劣化が防止される。
図2、図3のいずれの例においても、平角部8は円弧を形成している。通常この円弧は、R:0.1〜0.3mmが好ましい。Rが0.1mm未満の場合は電界集中が起こりやすくなり、0.3mmを越えると導体の断面積の減少により抵抗の増加の問題が生じる。うず電流(損失)の発生の低減、絶縁被覆された導体の曲げ加工時のクラックの発生を低減するために、該断面形状の縦横比が1:4よりも扁平であることが好ましい。
通常好ましくは、絶縁被覆6の厚みは10〜50μmの範囲であり、半導電層5および半導電層7の厚みは、1〜5μmの範囲である。ただし、導体の用途によっては、この好ましい範囲は変動する。コロナ放電を充分に防止するため、半導電層5および半導電層7の体積固有抵抗値は10〜10Ω・cmの範囲が好ましい。
半導電層としては、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂にカーボンブラックや金属粉、例えばアルミニウム粉末などの導電性無機粒子を混合したものが例示される。この半導電層は、上記の絶縁被覆の形成方法と同様な方法により形成することができる。すなわち、耐熱性樹脂やその前駆体などを溶解した樹脂溶液に導電性無機粒子を分散させ、得られた液を、導体4上(半導電層7の場合)または絶縁被覆6上(半導電層5の場合)に塗布した後、加熱硬化や乾燥などをすることにより形成することができる。この方法により、絶縁被覆と半導電層間に隙間を生じさせることもなく、優れた耐熱性を有する半導電層を形成することができ、大幅な耐電圧の向上が可能になる。
図2および図3に示されるように、これらの図のモータ用コイルにおいては、その平角部8も絶縁被覆6、半導電層5、7で覆われている。その結果、隣接する導体間の放電も防止することができる。
Pyre−ML(商品名:デュポン社製ポリイミドエナメル線用塗料:ポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液、樹脂濃度15重量%)を、N−メチル−2−ピロリドンで希釈し、樹脂濃度12重量%、14重量%のポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液を作製した。このようにして得られたポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液及び希釈しないPyre−ML(樹脂濃度15重量%)のそれぞれを撹拌しながら、酸化アルミニウムC(商品名:日本アエロジル社製酸化アルミニウム)を少しずつ、所定量添加した。添加後、さらにホモジナイザーを使用して10000rpmで20分間混合し、無機粉末の分散液を得た。
このようにして得られた無機粉末の分散液の、30℃での粘度を、B型粘度計により測定した。粘度の測定値を、酸化アルミニウムCの添加量(ポリイミドに対する重量%)及び樹脂濃度との関係において、表1に示す。





Figure 2006136168

表中の粘度は、Poiseで表わされている。
表1から明らかなように、樹脂濃度15重量%では、酸化アルミニウム添加量の増加により、粘度も急激に増加し、30重量%ですでに100Poiseに達している。一方、本発明の範囲内である樹脂濃度12重量%及び14重量%の場合では、酸化アルミニウムを増加しても、粘度の急激な増加は見られず、50重量%以上でも充分酸化アルミニウム粉末の分散が可能な粘度である。
所定のコイル形状に加工された導体の一例を示す外観図である。 本発明のモータ用コイルの一例を示す断面図である。 本発明のモータ用コイルの他の例を示す断面図である。
符号の説明
1 屈曲部
2 直線部
3 間隙
4 導体
5 半導電層
6 絶縁被覆
7 半導電層
8 平角部

Claims (7)

  1. 固形分14重量%以下のポリイミド樹脂の有機溶剤溶液中に、シリカ又はアルミナの無機粉末を、該ポリイミド樹脂量の30〜300重量%分散し、得られた分散液を導体上に塗布した後、該有機溶剤を除去して絶縁被覆を形成する工程を有することを特徴とするモータ用コイルの製造方法。
  2. 該無機粉末が、シランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ用コイルの製造方法。
  3. 該無機粉末が、0.01〜0.05μmの中心粒子径を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のモータ用コイルの製造方法。
  4. 導体を所定のコイル形状に加工し、該加工後の導体上に、ポリイミド樹脂及びシリカ又はアルミナの無機粉末からなり、該無機粉末の含有量がポリイミド樹脂量の30〜300重量%である絶縁被覆を形成することを特徴とするモータ用コイルの製造方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のモータ用コイルの製造方法により製造され、絶縁被覆上に、該絶縁被覆と同等以上の耐熱性を有する半導電層を有することを特徴とするモータ用コイル。
  6. 絶縁被覆と導体間に、該絶縁被覆と同等以上の耐熱性を有する半導電層をさらに有することを特徴とする請求項5に記載のモータ用コイル。
  7. 導体の断面が平角状であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のモータ用コイル。

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