JP2005190699A - 巻線および製造方法、回転電機 - Google Patents

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Abstract

【課題】より改善された巻線、その製造方法およびこの巻線を用いたより改善された回転電機を提供する。
【解決手段】耐インバータサージ巻線の絶縁皮膜50はポリアミドイミド層30が、ポリアミドイミドのみからなり、無機化合物の板状のフィラであるモンモリロナイトをその中に含まないポリアミドイミド単成分層32と、ポリアミドイミド層中に、有機化されたクレイであるモンモリロナイトが均一に分散させられているナノ複合材料層34から構成されている。ポリアミドイミド単成分層32にナノ複合材料層34が挟まれるようにして被覆された挟み被覆構造を数層繰り返し、所望の厚さのナノ複合材料層34を含んだポリアミドイミド層30を被覆する耐インバータサージ巻線、その製造方法が提供され、これを用いた回転電機が提供される。
【選択図】図1B

Description

本発明は導線に絶縁皮膜が被覆されている巻線およびこの巻線の製造方法、この巻線を用いた回転電機に関する。
導線を被覆する絶縁皮膜などの絶縁性を向上させる技術が報告されている。インバータ方式で制御するモータに用いられる巻線においては、過大な電圧となるインバータサージが巻線に課されることになる。このとき、巻線間に十分な絶縁性を確保できないと、部分放電によって絶縁層の劣化が促進され、ついには絶縁破壊に至ってしまうことになる。
絶縁皮膜に関する背景技術としては次のものがある。無機充填物を絶縁皮膜中に分散させる技術や集成マイカや人造マイカのテープで巻いた巻線やシリカ等の無機微粒子を絶縁皮膜中に微少に分散させて、部分放電開始電位の向上を図ったものがある。日立電線社製の耐サージ電線のKMKED(登録商標)はナノオーダでシリカ微粒子を特定材質の絶縁皮膜中に分散させる技術により製造されている。
下記特許文献1には、導線を被覆する絶縁皮膜がフィラとしてのシート構造の無機化合物の層間に有機化合物を挿入したナノ複合材料層である電力ケーブルが報告されている。また、有機化合物との相容性を付与するようにフィラとしての無機化合物を薬剤で処理し、この無機化合物層間に有機化合物を挿入する絶縁皮膜の製造方法が報告されている。無機化合物層間に有機化合物が挿入されると、層状の無機化合物が劈開し、ナノ複合材料が形成され、さらに無機化合物は複合材料中に均一に分散し、その粒子の大きさがナノオーダとなるナノ複合材料層が構成されることが開示されている。無機化合物が挿入される有機化合物がポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、フィラとしての無機化合物がモンモリロナイト等の粘土(クレイ)、無機化合物と有機化合物の相容化剤が第4アンモニウム塩であることなどが記載されている。
下記特許文献2には、電線用のワニスによってナノ複合材料層の絶縁皮膜が形成された巻線が報告されている。このワニスはポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエステル(PE)、ポリエステルイミド(PEI)などの樹脂から選ばれた有機化合物と、この樹脂中にテトラエトキシシラン(TEOS)などのアルコキシシランを含有するコポリマおよびそのコポリマに充填されたクレイ(粘土)、ナノコンポジットクレイなどの無機充填材が分散されたものであることが開示されている。無機充填材の粒子表面上に電荷が蓄電されることで、層全体に電位を均一に広げ、絶縁層に生じる部分放電を緩和することが開示されている。
また、下記特許文献3には、金属化合物で架橋されたクレイ及び有機化合物を含むナノ複合材料層で被覆されたケーブルが開示されている。下記特許文献4には、ポリアミド樹脂に層間イオンがオニウムイオンで置換されたモンモリロナイトなどを原料とする層状珪酸塩を均一に分散したポリアミド複合材料およびその製造方法が開示されている。
特表2002−538591号公報 特開2002−206060号公報 特開2002−53316号公報 特公平7−47644号公報
しかしながら、このようなナノ複合物を樹脂中に分散させたナノ複合材料層を単層の絶縁皮膜として用いた単層絶縁皮膜巻線において、より部分放電を抑制するには、ナノ複合材料層を厚くし、ナノ複合材料層による迷路効果を増強する必要がある。ところが、ナノ複合材料層を厚くするとナノ複合材料層に微細なクラックが入りやすくなる。このクラックは、樹状の絶縁破壊経路(トリー)へとつながってしまう。
このクラックはエナメル等の分散媒の樹脂と、クレイ等のフィラとなるナノ複合物との機械強度の相違によるものである。この両者の機械強度の相違により、分散媒の樹脂とフィラのナノ複合物との界面に内部応力が残留し、この残留応力によってクラックが入りやすくなる。
また、ナノ複合材料層を厚く形成するには、樹脂のみの樹脂層に比べ、何回も塗工工程と焼き付け工程を繰り返し、ナノ複合材料層から構成される複数の層状構造とする必要がある。樹脂の粘度や表面張力等により一度に塗工して、焼き付けして形成できる皮膜の厚さが限られているからである。通常は一度に3μm〜4μmの皮膜形成が限度である。よって、例えば30μm程度の皮膜形成をするには、この8回から10回程度の皮膜形成工程の繰り返しが必要となる。このような複数のナノ複合材料層の多数の層状構造は、各層が均質になるとは限らず、分散媒の樹脂とフィラのナノ複合物との界面に生じる内部応力の発生を助長する。
特に、単層絶縁皮膜巻線を耐インバータサージ巻線として用いたときは上記問題がさらに大きくなる。すなわち、直線状の単層絶縁皮膜巻線を巻線として加工するときに、巻線
に加えられる伸長や折り曲げ応力によって、樹脂層が引き延ばされ、樹脂とナノ複合物の界面にクラックが生じやすくなる。
本発明は上記課題等に鑑みてなされたものであり、より改善された巻線、その製造方法およびこの巻線を用いたより改善された回転電機を提供することをその目的とする。
本発明の巻線は、導線に樹脂を主成分とする絶縁皮膜が被覆されている巻線であって、前記絶縁被膜は、無機化合物のフィラが樹脂中にナノオーダのサイズで分散したナノ複合材料層と、樹脂中に前記無機化合物のフィラを含まず、樹脂を主成分とする樹脂層とを含むことを特徴とする。
上記巻線は、前記絶縁皮膜が、前記ナノ複合材料層と前記樹脂層が交互に重ねられていると好適である。
本発明の巻線の製造方法は、導線に樹脂を主成分とする絶縁皮膜が被覆されている巻線の製造方法であって、有機化処理した無機化合物のフィラを樹脂溶液中に添加し、前記樹脂溶液中にナノオーダサイズで分散させてフィラ分散液を作製するフィラ分散液作製工程と、前記フィラ分散液を前記巻線表面に塗工し、焼き付けしてナノ複合材料層を形成するナノ複合層形成工程と、前記無機化合物のフィラを含まず、樹脂を主成分とする樹脂溶液を前記巻線に塗工し、焼き付けして、樹脂層を形成する樹脂層形成工程とを含むことを特徴とする。
上記巻線の製造方法は、前記ナノ複合層形成工程と前記樹脂層形成工程とを交互に行うと好適である。
本発明は上記巻線が用いられる回転電機であることを特徴とする。
本発明により、より改善された巻線、その製造方法およびこの巻線を用いたより改善された回転電機を提供できる。
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
「耐インバータサージ巻線」
図1Aは本実施形態に係る耐インバータサージ巻線100の断面図である。導線である銅線10の表皮にはポリアミドイミド層30と銅線10を被覆させるためのベースコートとして、ポリエステルイミドエナメル線用塗料を用いたポリエステルイミド層20が被覆されている。ポリエステルイミド層20の表面にはポリアミドイミドエナメル線用塗料を用いたポリアミドイミド層30が被覆されている。ポリエステルイミド層20とポリアミドイミド層30とから耐インバータサージ巻線100の絶縁皮膜50は構成されている。
図1Bは、耐インバータサージ巻線100の表面部分である絶縁皮膜50の部分(図1のaの部分)を主として拡大した拡大断面図である。ポリアミドイミド層30は、複数の絶縁皮膜層から構成されている。この複数の絶縁皮膜層は2種類の絶縁皮膜層に分類される。ポリアミドイミドを主成分とし、無機化合物の板状のフィラであるモンモリロナイトをその中に含まないポリアミドイミド単成分層32と、ポリアミドイミド層中に、有機化されたクレイであるモンモリロナイトがナノオーダで均一に分散させられているナノ複合材料層34である。ナノ複合材料層34は、ポリアミドイミド前駆体にε−カプロラクタム等で有機化処理(炭素数6以上の有機オニウムイオンで処理すればよい)したモンモリロナイトを均一に分散させ、これを専用溶媒で希釈して導体に塗工し、焼き付けして形成される層である。均一に分散させる際には、有機化処理によりクレイの板間距離を拡大し、ポリアミド樹脂と反応性と親和性の高いアミド結合骨格を導入する。モンモリロナイトはエナメル皮膜主成分であるポリアミドイミド樹脂の硬化過程で、表面張力の関係から、皮膜の厚み方向に鉛直に層状に分散し、配列してナノオーダのモンモリロナイト粒子の分散が起こる。ポリアミドイミド層30は、ポリアミドイミド単成分層32がポリエステルイミド層20の表面に被覆される。ポリアミドイミド単成分層32が表面被覆された後、ナノ複合材料層34が、その表面に被覆される。ナノ複合材料層34は、ナノ複合材料を1層ずつ、計2層を形成してなされる2層構造を有している。ナノ複合材料層34の表面には、ポリアミドイミド単成分層32が、さらに被覆される。このポリアミドイミド単成分層32は、さらに、2層構造を有するナノ複合材料層34によって被覆される。このようにポリアミドイミド単成分層32にナノ複合材料層34が挟まれるようにして被覆された挟み被覆構造が数層繰り返して被覆されている。最表面には、ポリアミドイミド単成分層32が被覆される。このようにして、所望の厚さのナノ複合材料層34を含んだポリアミドイミド層30が被覆形成されている。
このような耐インバータサージ巻線100は有機化したモンモリロナイトを樹脂中に分散させたナノ複合材料層34を絶縁皮膜50内で厚くできる。ナノ複合材料層34が厚くなることで、迷路効果を増強し、部分放電に対しての絶縁皮膜50の耐性を増強させることができる。また、厚くしてもポリアミドイミド単成分層32による挟み被覆構造によって、クラックが生じるといった機械特性の劣化を防止できる。よって、耐インバータサージ巻線として用い、インバータ用の巻線として曲げ加工するときに、巻線に加えられる伸長や折り曲げ応力にも耐えられる耐インバータサージ巻線を提供できる。
また、絶縁皮膜50は図1Cの構成とすることもできる。図1Cは、耐インバータサージ巻線100の表面部分である絶縁皮膜50の部分(図1のaの部分)を主として拡大した拡大断面図である。図1Cでは銅線10の表面に被覆されるポリエステルイミド層20中にも有機化したクレイ(モンモリロナイト)を分散させ、迷路効果の向上による耐部分放電特性を向上させている。また、ポリアミドイミド単成分層32にナノ複合材料層36が挟まれるようにして被覆された挟み被覆構造を繰り返して絶縁皮膜50が形成されることは、図1Bと同様であるが、ナノ複合材料層36は図1Bのナノ複合材料層34のように2層構造を有しておらず、単層である。すなわち、ナノ複合材料層36とポリアミド単成分層32が単層ずつ交互に積層被覆される。このようにナノ複合材料層36が単層であり、ポリアミドイミド層32による挟み被覆構造によって、クラックが生じるといった機械特性の劣化等をより防止できる。
このような耐インバータサージ巻線100であれば、十分な耐インバータサージ特性と可とう性等を併せ持ち、モータ、ジェネレータ、モータ・ジェネレータ等の回転電機のコイル等として用いるとより改善された回転電機を提供できる。特に分布巻のHVモータへの適用がより容易となる。
「耐インバータサージ巻線の製造方法」
耐インバータサージ巻線100の具体的な製造方法を説明する。図2には、耐インバータサージ巻線100を製造する縦型連続焼付け装置200が示される。この縦型連続焼付け装置200は導線に絶縁皮膜を形成する際に一般的に用いられているものを用いればよい。銅線10を装置200の下位位置より上昇させ、ワニス溜集合体60の塗工に該当するワニス溜の下、焼き付け炉70の順に経過させて焼き付け炉70の上位位置に至らせる。銅線10は全面の塗工、焼き付け等のため常時回転させられている。上位位置に至った銅線10を再び当初の下位位置に戻らせ、次に塗工に該当するワニス溜の位置に再びワニス溜集合体60、焼き付け炉70の順に経過させて焼き付け炉70の上位位置に至らせ、下位位置に直接戻す。絶縁皮膜50が完成するまでこの上位位置と下位位置の相互移動を繰り返す。このようして銅線10は、絶縁皮膜を形成する各組成のワニス溶液を溜めたワニス溜1ないし9の集合体60によって、各組成の樹脂溶液が塗工される。塗工された銅線10は、焼き付け炉70によって焼き付けされる。全ての組成の樹脂溶液、すなわち、ワニス溜集合体60の全ての成分溶液が銅線10に塗工され、焼き付けされて、耐インバータサージ巻線100が製造される。ワニス溜集合体60はワニス溜1〜9の構成または数量の設計変更が可能である。図1Bの絶縁皮膜50を製造する方法を用いて具体的に説明する。図1Bの絶縁皮膜50を製造するにはワニス溜集合体60を構成するワニス溜1〜9を以下のように構成する。なお、PEI液とはポリエステルイミドエナメル線塗料用の樹脂のみからなる塗工液のことであり、PAI液とはポリアミドイミドエナメル線塗料用の樹脂のみからなる塗工液のことである。PAI(クレイ)液とは、クレイであるモンモリロナイトを有機化してポリアミドイミド樹脂中にナノオーダで均一に分散させた塗工液のことである。
ワニス溜1:PEI液、 ワニス溜2:PEI液
ワニス溜3:PAI液、 ワニス溜4:PAI(クレイ)液
ワニス溜5:PAI(クレイ)液、ワニス溜6:PAI液
ワニス溜7:PAI(クレイ)液、ワニス溜8:PAI(クレイ)液
ワニス溜9:PAI液
下位位置にある銅線10はワニス溜1が塗工される位置まで上昇させられる。当該位置まで上昇後、ワニス溜1のワニス塗工口であるオリフィスを通してワニス溜1のPEI液が銅線10に塗布される。PEI液を塗布された銅線10は、さらに上昇し、焼き付け炉70でPEI液が銅線10に焼き付けされる。このPEI液が焼き付けされたポリエステルイミド層が第1層となる。第1層を被覆させられた銅線10は、再び下位位置に直接的に戻され、第1層が形成された位置にワニス溜2のPEI液が塗工できる位置まで銅線10は進められる。銅線10はワニス溜2が塗工される位置まで上昇させられる。当該位置まで上昇後、ワニス溜2のワニス塗工口であるオリフィスを通してワニス溜2のPEI液が銅線10に塗布される。ここでワニス溜2のオリフィス口径はワニス溜1のオリフィス口径よりも大きな口径が必要となる。同程度の厚さの層を銅線10の表面に形成するには、第1層が形成されている分、塗工必要量が多くなるからである。以降、オリフィス口径は塗工に用いられるワニス溜の番号が増加するほど、同じ理由から、大きな口径が必要となる。ワニス溜2のPEI液を塗布された銅線10は、さらに上昇し、焼き付け炉70でワニス溜2のPEI液が銅線10に焼き付けされる。このワニス溜2のPEI液が焼き付けされたポリエステルイミド層が第2層となる。この第1層のポリエステルイミド層と第2層のポリエステルイミド層を併せた2層が図1Bのポリエステルイミド層20である。第2層を被覆させられ、ポリエステルイミド層20を形成させられた銅線10は、再び下位位置に直接的に戻され、次にポリアミドイミド層30を形成する工程へ進められる。第2層が形成された位置にワニス溜3のPAI液が塗工できる位置まで銅線10は進められる。第1層、第2層と同様にワニス溜3のPAI液が塗工され、焼き付けされてポリアミドイミド単成分層32が被覆形成される。これら第1層、第2層、第3層と同様にして、ワニス溜4、ワニス溜5に溜められたPAI(クレイ)液からナノ複合材料が2層形成され、2層構造であるナノ複合材料層34が形成される。ナノ複合材料層34が第5層までの構造により形成された後、同様の工程でPAI液を溜められたワニス溜6により、第6層であるポリアミドイミド単成分層32が被覆形成される。同様の工程により第6層の表面に第7層、第8層からなる2層構造であるナノ複合材料層34が形成される。最後に最表面層として、ポリアミドイミド単成分層32である第9層が形成される。このようにして絶縁皮膜50は形成され、耐インバータサージ巻線100は完成する。形成される各層の各々の膜厚は3μm〜4μmである。しかしながら、9層を積層被覆させることで、27μm〜36μmという巻線として十分な膜厚の絶縁皮膜50を得ることができる。
図1Cに示される絶縁皮膜50は、ワニス溜1〜9の構成を以下のように構成すること
により、銅線10の表面に被覆形成される。なお、PEI(クレイ)液とは、クレイであるモンモリロナイトを有機化してポリエステルイミド樹脂中にナノオーダで均一に分散させた塗工液のことである。
ワニス溜1:PEI液、ワニス溜2:PEI(クレイ)液
ワニス溜3:PAI液、ワニス溜4:PAI(クレイ)液
ワニス溜5:PAI液、ワニス溜6:PAI(クレイ)液
ワニス溜7:PAI液、ワニス溜8:PAI(クレイ)液
ワニス溜9:PAI液
無機フィラを有機化する有機化処理剤としては、1級〜4級のアンモニウムイオンやホスホニウムイオンのうち、炭素数が6以上のものが層間拡大効果が大きく望ましく好適である。また、ナノ複合材料層においては、有機化処理の際にクレイの相間に、クレイを分散する皮膜材質と相容性の高い官能基を導入するとより好適である。ナノ複合材料層の分散媒がポリアミドイミドの場合、ポリアミドイミドエナメル線用塗料(ポリアミドイミド前駆体)やポリイミド前駆体のポリアミド酸など、アミド基やイミド基を有するものが好適である。前駆体に直接分散できない場合には、エナメル塗膜液と有機化処理剤双方に相容性の高い、膨潤剤をもってクレイの相互間に所定の官能基の導入を行ってもよい。
フィラとなる無機化合物は、例えばモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノンライト、およびマイカ等をとることもできる。
分散媒となる樹脂、樹脂のみとなる樹脂層としてはポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステルイミドなどを採用すると巻線の耐熱性を向上できる。
本実施形態に係る耐インバータサージ巻線を用いて、従来の耐インバータサージ巻線との比較試験を行った。比較試験の対象は、耐インバータサージ巻線の(1)可とう性、(2)耐サージ寿命の2点である。比較例、実施例とも上述の実施形態の縦型焼き付け装置200を用い、ワニス溜1〜9を用いたワニス溜集合体60で製造した巻線である。以下に共通条件を示す。
巻線の導線:導体径φ0.9mmの電気用軟銅線(JIS C 3102に準拠)
ポリエステルイミド樹脂:トリスー(ヒドロキシルイソシアヌレート)変性ポリエステルイミドエナメル線用塗料
ポリアミドイミド樹脂:滑性ポリアミドイミド塗料
有機化クレイ:モンモリロナイトをオクタデシルアミンにより有機化し、ε−カプロラクタムで膨潤度を向上させた後、精製、乾燥させ、有機化クレイを得た。
「実施例1」
実施例1の耐サージ線を製造するワニス溜集合体60の構成は以下の通りである。なお、実施例1のPAI(クレイ)液は、上記有機化クレイを、上記ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、有機化クレイを25重量部、分散させたものである。実施例1の耐サージ巻線の絶縁皮膜の断面図は図1Bと同じである。表1に各層の構成を示した。
ワニス溜1:PEI液、 ワニス溜2:PEI液
ワニス溜3:PAI液、 ワニス溜4:PAI(クレイ)液
ワニス溜5:PAI(クレイ)液、ワニス溜6:PAI液
ワニス溜7:PAI(クレイ)液、ワニス溜8:PAI(クレイ)液
ワニス溜9:PAI液
「実施例2」
実施例2の耐サージ巻線を製造するワニス溜集合体60の構成は以下の通りである。なお、実施例1のPAI(クレイ)液は、上記有機化クレイを、上記ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、有機化クレイを50重量部、分散させたものである。PEI(クレイ)液:上記有機化クレイを、上記ポリエステルイミド樹脂100重量部に対して、有機化クレイを25重量部、分散させたものである。実施例2の耐サージ巻線の絶縁皮膜の断面図は図1Cと同じである。表1に各層の構成を示した。
ワニス溜1:PEI液、ワニス溜2:PEI(クレイ)液
ワニス溜3:PAI液、ワニス溜4:PAI(クレイ)液
ワニス溜5:PAI液、ワニス溜6:PAI(クレイ)液
ワニス溜7:PAI液、ワニス溜8:PAI(クレイ)液
ワニス溜9:PAI液
「比較例」
比較例は市販の耐サージ巻線である。この耐サージ巻線(比較例)を製造するワニス溜集合体60の構成は、以下の通りである。なお、比較例のPEI(シリカ)液は、上記ポリエステルイミド樹脂100重量部に対して、シリカをを25重量部、分散させたものである。表1に各層の構成を示した。
ワニス溜1:PEI(シリカ)液、ワニス溜2:PEI(シリカ)液
ワニス溜3:PEI(シリカ)液、ワニス溜4:PEI(シリカ)液
ワニス溜5:PEI(シリカ)液、ワニス溜6:PEI(シリカ)液
ワニス溜7:PAI液、 ワニス溜8:PAI液
ワニス溜9:PAI液
Figure 2005190699
「試験方法」
(1)可とう性試験
可とう性試験の結果を図3に示す。可とう性の評価は、JIS C 3003に準拠し、巻線を定倍巻き付けし、クラックの発生を観察して判断した。このクラックの発生数がより少ないほど可とう性が向上したと判断した。基準として比較例の可とう性を100とした。
(2)耐サージ寿命試験
耐サージ寿命試験の結果を図4に示す。耐サージ寿命試験は、実施例、比較例の巻線に伸長加工を施した後、ツイストペアにして、常温にて、模擬インバータサージを印加し、部分放電が発生し、絶縁性が低下して絶縁破壊に至る寿命を測定した。このようにすることで、無伸長に比べ引っ張り応力によるフィラ界面の密着力不足に起因したクラックが発生しやすくなり、耐サージ性の低下がわかりやすくなる。基準としては、比較例の耐サージ寿命を100とした。
「結果および評価」
(1)可とう性
実施例1、実施例2とも、比較例の巻線に比べ、クラックの発生状態が少なくなり、可とう性が向上したことがわかった。実施例1と実施例2とでは、実施例2の方がより可とう性の向上があることがわかった。
(2)耐サージ寿命
実施例1、実施例2とも、絶縁性が低下して絶縁破壊に至る寿命が長くなった。実施例1と実施例2とでは、実施例2の方がより耐サージ寿命が長くなった。
本発明の巻線は、耐インバータサージ巻線として回転電機には勿論、電気機器のコイル等一般に適用できる。本発明の回転電機は自動車(HEV、EV等)一般に適用できる。
本実施形態に係る耐インバータサージ巻線の断面図である。 本実施形態に係る耐インバータサージ巻線の一部断面図である。 本実施形態に係る耐インバータサージ巻線の一部断面図である。 本実施形態に係る縦型連続焼き付け装置を示す説明図である。 可とう性試験の結果を示すグラフである。 耐サージ寿命試験の結果を示すグラフである。
符号の説明
10 銅線、20 ポリエステルイミド層、30 ポリアミドイミド層、50 絶縁皮膜、100 耐インバータサージ巻線、200 縦型連続焼き付け装置。

Claims (5)

  1. 導線に樹脂を主成分とする絶縁皮膜が被覆されている巻線であって、
    前記絶縁被膜は、
    無機化合物のフィラが樹脂中にナノオーダサイズで分散したナノ複合材料層と、
    樹脂中に前記無機化合物のフィラを含まず、樹脂を主成分とする樹脂層とを含む巻線。
  2. 前記ナノ複合材料層と前記樹脂層が交互に重ねられている請求項1に記載の巻線。
  3. 導線に樹脂を主成分とする絶縁皮膜が被覆されている巻線の製造方法であって、
    有機化処理した無機化合物のフィラを樹脂溶液中に添加し、前記樹脂溶液中にナノオーダサイズで分散させてフィラ分散液を作製するフィラ分散液作製工程と、
    前記フィラ分散液を前記巻線表面に塗工し、焼き付けしてナノ複合材料層を形成するナノ複合層形成工程と、
    前記無機化合物のフィラを含まず、樹脂を主成分とする樹脂溶液を前記巻線に塗工し、焼き付けして、樹脂層を形成する樹脂層形成工程とを含む製造方法。
  4. 前記ナノ複合層形成工程と前記樹脂層形成工程とを交互に行う請求項3に記載の巻線の製造方法。
  5. 請求項1または2に記載の巻線が用いられる回転電機。
JP2003427256A 2003-12-24 2003-12-24 巻線および製造方法、回転電機 Pending JP2005190699A (ja)

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