JP2006131672A - プラスチック基材用下塗塗料組成物及びその塗装方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】バインダー樹脂、脂肪族アルコール、及び脂肪族エーテルからなる群から選択される2種以上の有機溶剤、及び水を含み、かつ、乳化剤を実質的に含まないことを特徴とするプラスチック基材用下塗塗料組成物、及びプラスチック基材に上記下塗塗料組成物を塗装した下塗塗膜表面に光輝性顔料を配合した水系塗料を塗装する塗装方法。
【選択図】 なし
Description
プラスチック基材に対して塗装される塗料のバインダーとしては、その基材の種類等により様々な樹脂が利用されている。これまで、有機溶剤系の塗料を用いられることが多かった。しかしながら、近年、有機溶剤に関する環境問題がクローズアップされ、水系塗料が強く望まれている。
このような背景の下で、プラスチック基材に塗装する塗料として、各種バインダー樹脂の水分散物を使用した塗料が検討されてきた。この内、プラスチック基材の下塗用の水系塗料組成物に関する技術はいくつか知られている(例えば、特許文献1〜2)。
また、これら乳化剤を配合した塗料を塗装して得られた塗膜の上から、光輝性顔料を配合した水系塗料を塗装すると、下層に含まれる乳化剤の影響により、塗り重ねた塗料が濡れすぎてしまうため、塗り重ねた塗料が塗膜の上で移動して、その動きに追随して塗料中で光輝性顔料が移動することにより、その配向が変化し、整然とした配列が妨げられ、均一な光輝性を呈する意匠の実現が困難となり、塗り重ね性が低下する問題が生じる。
一方、乳化剤を用いずに調製されたバインダー樹脂の水系塗料も存在するが、このような乳化剤を含まない水系塗料をプラスチック基材に塗装すると、今度は、プラスチック基材との濡れ性が悪く、均一で平滑な塗膜を得ることが困難となる問題が生じる。
即ち、本発明は、以下の発明に関する。
1.バインダー樹脂、脂肪族アルコール及び脂肪族エーテルからなる群から選択される2種以上の有機溶剤、及び水を含み、かつ乳化剤を実質的に含まないことを特徴とするプラスチック基材用下塗塗料組成物、及び
2.上記1項に記載の下塗塗料組成物をプラスチック基材表面に塗装し、次いで、形成された下塗塗膜の水との接触角が70〜140°になった時点で、該下塗塗膜表面に、光輝性顔料を配合した水系塗料を塗装する、プラスチック基材の塗装方法、
に関するものである。
本発明の下塗塗料組成物は、バインダー樹脂、有機溶剤及び水からなり、必要に応じて、顔料や、導電性顔料、添加剤等を配合してもよい。
本発明の下塗塗料組成物は、実質的に乳化剤を含有しない。乳化剤が配合されていると、乳化剤の影響により、乾燥した塗膜の耐水性が低下し、実用上、耐久性のある塗膜を得ることが困難となる。
上記バインダー樹脂は、エポキシ樹脂や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、又はこれらのオリゴマー等から選択される、1種又は2種以上の組み合わせ、又はこれらと硬化剤や、硬化促進剤、光重合開始剤等との組み合わせである。バインダー樹脂は、塗装基材であるプラスチックの種類や目的等に応じて、適宜選択することが可能である。例えば、ポリオレフィン基材に対しては、ポリオレフィン又は塩素化ポリオレフィンが使用され、ABS樹脂基材に対してはウレタン樹脂が使用されることで、付着性の良好な下塗塗料組成物を得ることができるため好ましい。上記バインダー樹脂は、あらかじめ水に分散又は溶解されている状態で提供されているものを使用することが可能である。これら樹脂の水分散物等については、実質的に乳化剤が含まれていないものを選択する。これら実質的に乳化剤を含まない水分散物としては、例えば、特開平6−179852号公報、特開平6−207139号公報、特開2000−53775号公報、特開2003−119677号公報、特開2004−18659号公報等の実施例において開示されているものを好適に使用することができ、より好適には質量平均分子量10000〜100000であり、塩素化度が樹脂に対して10〜30質量%の塩素化ポリオレフィン樹脂であるが、これらに限定されるものではなく、上記に掲げるものと同程度の性能を有しているものであればいずれも使用可能である。
上記有機溶剤は、脂肪族アルコール及び脂肪族エーテルからなる群から選択される2種以上の有機溶剤を使用する。脂肪族アルコール及び脂肪族エーテル以外の有機溶剤を用いた場合には、本発明の下塗塗料組成物に含まれる水との相溶性が悪く、下塗塗料組成物の貯蔵安定性や、下塗塗料組成物の成膜性を低下させる傾向にある。
脂肪族エーテルとしては、例えば、次式(I)又は(II)の不飽和脂肪族エーテルが好適に挙げられる。
又は次式(III)の飽和脂肪族エーテル
(ここで、R1は、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はアルコキシ基である。R4は、水素又は炭素数1〜3のアルキル基、アルケニル基又はアルコキシ基である。R2 、R3 、R5 、R6 、R7及びR8は、水素、又はアルキル基である。例えばqは、1〜5の整数である。)脂肪族エーテルとしては、具体的には、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、
但し、有機溶剤は、脂肪族アルコール又は脂肪族エーテルであれば、これらに限定されるものではない。又、必要に応じて2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレートや、プロピレングリコールジアセテート等の溶剤を併用することも可能である。
本発明の下塗塗料組成物においては、乳化剤が実質的に含まれていないため、プラスチック基材に対しての濡れ性が低下するが、上記の2種以上の有機溶剤を組み合わせて使用するため、本発明の下塗塗料組成物の濡れ性を改善することが可能となる。
なお、有機溶剤を1種のみ用いた場合では、基材との濡れ性、及び下塗塗料組成物から得られる塗膜に、特に光輝性顔料含有上塗塗料を塗り重ねると、その光輝性顔料に由来する光輝性が不均一に現われ、意匠性の劣ったプラスチック基材用の塗膜が生じるため好ましくない。
有機溶剤の組み合わせは、塗装基材や、下塗塗料組成物の上から塗り重ねる上塗塗料の種類により、実験等に基づいて当業者であれば、適宜選択することが可能である。例えば、ポリオレフィンや、ABS等を基材とするときは、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルとプロピレングリコール−n−ブチルエーテルの組み合わせ、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルとトリプロピレングリコール−n−ブチルエーテルの組み合わせ、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルとプロピレングリコールメチルエーテルの組み合わせを好適に用いることができる。
これらの顔料は、要求性能に基づいて例えば、下塗塗料組成物全体に対して0〜40質量%、好ましくは、1〜30質量%で、配合されることが適当である。この範囲内で、塗膜に対して求められる性能に応じて、適宜変化させることが可能である。
上記導電性粉体は、静電塗装をする場合には、導電性粉体の種類にもよるが、導電性カーボンブラックであれば、本発明の下塗塗料組成物中に、例えば、3〜10質量%配合することが好ましい。3質量%未満では、下塗塗膜に導電性を持たせることが困難となり、静電塗装における塗り重ね性が低下する傾向がある。また、10質量%を超えて配合すると、塗料の粘度が高くなり塗装作業性が低下する傾向にある。
本発明の下塗塗料組成物を塗装する基材としては、従来から通常樹脂成型物に用いられている樹脂からなる基材を好適に塗装することができる。これらの樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンや、ポリプロピレン、ABS、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、更には、これらのアロイ材等が代表的なものとして挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の下塗塗料組成物を塗装する際の塗装方法としては、従来から塗料を塗装する際に用いられる各種手法により塗装することが可能である。具体的には、エアスプレー塗装や、静電スプレー塗装、エアレススプレー塗装、刷毛塗り、ローラー塗装、流し塗り、ディッピング、フローコーター、ロールコーター等の公知の方法により、塗装することが可能である。
本発明の下塗塗料組成物は、プラスチック基材に対して好適に用いることができるものであるが、プラスチック基材に意匠性を施すことを目的として塗装を行う際には、下塗塗膜の上からさらに塗料(以下、上塗塗料という)を塗装することが可能である。
上塗塗料は、溶剤系や、無溶剤系、水系を問わず塗装することが可能であるが、本発明である下塗塗料組成物の上から塗り重ねる塗料としては、水系が好ましい。
上塗塗料に配合されるバインダーとしての樹脂は、塗料にて通常使用されている樹脂のいずれも使用することが可能であり、その目的に応じて使い分けることが可能である。
上塗塗料に対しては、光輝性顔料が配合されているものが好ましい。光輝性顔料の具体的なものとしては、パール顔料や、アルミフレーク、雲母等が代表的なものとして挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これら光輝性顔料を配合した塗料に対しては、必ずしもその他の顔料(着色顔料、体質顔料等)が配合されている必要はない。
光輝性顔料を配合した水系上塗塗料を塗り重ねる際には、本発明の下塗塗料組成物を塗装し、該形成された下塗塗膜の水に対しての接触角が70〜140°、好ましくは80〜130°、より好ましくは90〜120°になった時点で、塗り重ねを行う。接触角が70°未満では、上塗塗料が下塗塗膜上で濡れすぎてしまうため、下塗塗膜上で動き、その動きに追随して、配合された光輝性顔料が動くことにより、光輝性顔料の配向が変化し、均一な光輝性を有する意匠性を得ることができない。また、接触角が140°を超えると、上塗塗料の下塗塗膜に対する濡れ性が低下するため、ハジキ等の塗膜不良を起こす傾向にある。尚、接触角は、使用する下塗塗料の乾燥条件(温度、時間等)との関係であらかじめ測定しておくことで知ることができる。上塗塗料の塗装膜厚は、塗装する塗料の種類、求められる性能によって、適宜変化させることが可能である。
以下に本発明を実施する一例を用いて、更に詳細な説明を行う。尚、本実施例が、本発明の範囲を何ら限定するものでないことは言うまでもない。
実施例1〜10、参考例1〜4、及び比較例1〜6
70×150mmのポリエチレン板を準備し、下記表1及び2に示す配合(単位:部)の下塗塗料組成物をエアースプレーにて、乾燥膜厚が10μmとなるように塗装し、基材に対しての濡れ性を確認した。更に、塗装した下塗塗料組成物を80℃×10分の乾燥条件にて乾燥させ、形成した下塗塗膜の上から、上塗塗料としてアルミフレークを配合した水系ポリウレタン樹脂塗料〔バイヒドロールPT241(住化バイエルウレタン社製水系ウレタン樹脂ディスパーション:OH=1.1%)100質量部に、AQ500B(旭化成工業社製アルミ顔料ペースト)6.2質量部を混合し、塗装の直前にバイヒジュール3100(住化バイエルウレタン社製ポリイソシアネート:NCO=17.2%)を7.7部混合したもの〕を、エアースプレーで乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、塗り重ね性を確認した結果を、表下欄に評価した。尚、参考例1及び2は、下塗塗膜の乾燥過程における接触角が、塗り重ね性に与える影響を確認するために行ったものであり、参考のために示したものである。
ポリエチレン板に対しての下塗塗料組成物の濡れ性を、目視により判定した。
評価:
○:ポリエチレン板全体に下塗塗料組成物が均一に広がり、ハジキやピンホール等の発生がない。
△:膜厚に若干のばらつきが生じるものの、下塗塗料組成物が均一に広がるもの。
×:ハジキ・ピンホールが発生するもの。
アルミフレークを配合した水系ポリウレタン塗料をエアースプレーで乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、80℃×10分の条件にて乾燥させた後の塗膜表面を目視で判定した。尚、上記濡れ性試験に関して、結果が良好でないものに関しては、本塗り重ね性試験は実施していない。
○:アルミの配列が均一で、良好な外観のもの。
△:アルミの配列に一部不均一な部分が生じるものの、実用上問題ない程度であるもの。
×:アルミの配列が不均一で、実用に耐えないもの。
Claims (4)
- バインダー樹脂、脂肪族アルコール及び脂肪族エーテルからなる群から選択される2種以上の有機溶剤、及び水を含み、かつ乳化剤を実質的に含まないことを特徴とするプラスチック基材用下塗塗料組成物。
- 前記有機溶剤が、前記バインダー樹脂に対して、10〜80質量%で含まれる請求項1に記載の下塗塗料組成物。
- 前記プラスチック基材が、ポリオレフィン系樹脂であり、前記バインダー樹脂が、ポリオレフィン又は塩素化ポリオレフィン樹脂である請求項1又は2に記載の下塗塗料組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載する下塗塗料組成物をプラスチック基材表面に塗装し、次いで形成された下塗塗膜の水との接触角が70〜140°になった時点で、該下塗塗膜表面に、光輝性顔料を配合した水系塗料を塗装する、
ことを特徴とするプラスチック基材の塗装方法。
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