JP2006125391A - 内接ギヤ型ポンプのロータ構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】 内接ギヤ型ポンプのロータ構造において、歯間空間の中央部付近で発生するキャビテーションの発生を防止すること。
【解決手段】 円筒状空間であるロータ室15を形成するボデー10とカバー20とから構成されるハウジングと、ロータ室15内に回転自在に配設された内歯41を有するドリブンロータ40と、内歯41と係合する外歯51を有しドリブンロータ40内に回転自在に配設されると共にドリブンロータ40と係合する外歯51の間で拡大および縮小を繰り返し流体を吸込・吐出する複数の歯間空間Rを形成するドライブロータ50と、ロータ室15に連通する吸込ポート12および吐出ポート13とを備えたポンプ100において、ドライブロータ50の側面には、吸込ポート12に連通可能であると共に、歯間空間Rに連通可能であって、外歯51間の歯底部51Bに径方向に延びる溝55が形成されている。
【選択図】 図2
【解決手段】 円筒状空間であるロータ室15を形成するボデー10とカバー20とから構成されるハウジングと、ロータ室15内に回転自在に配設された内歯41を有するドリブンロータ40と、内歯41と係合する外歯51を有しドリブンロータ40内に回転自在に配設されると共にドリブンロータ40と係合する外歯51の間で拡大および縮小を繰り返し流体を吸込・吐出する複数の歯間空間Rを形成するドライブロータ50と、ロータ室15に連通する吸込ポート12および吐出ポート13とを備えたポンプ100において、ドライブロータ50の側面には、吸込ポート12に連通可能であると共に、歯間空間Rに連通可能であって、外歯51間の歯底部51Bに径方向に延びる溝55が形成されている。
【選択図】 図2
Description
本発明は、内接ギヤ型ポンプのロータ構造に関し、特に、キャビテーションを防止する内接ギヤ型ポンプのロータ構造に関するものである。
一般に、自動車用オイルポンプなどに広く使われている内接ギヤ型オイルポンプは、高回転で使用されて流体の吸込流速が増大した場合、流体の粘性抵抗によって吸込が追いつかなくなり、吸込経路内(吸込ポート、及びロータ歯間空間において、キャビテーションを誘発する。キャビテーションの発生は、ポンプ容積効率の低下、異音の発生及びエロージョンによるポンプ内部の侵食などの様々な弊害を引き起こす。
この問題に対して、吸入ポートと吐出ポートの間を閉め切る閉切部を、入口面積最大の歯間空間よりも1つ回転方向前方にある歯間空間の位置に設けるなどのように、ポート形状の工夫によって対策したものがある(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このような構造は、吸込ポート内で発生するキャビテーションに対してのみ有効であり、ロータ歯間空間で発生するキャビテーションに対しては効果がない。
一方、ドライブロータ側面に歯間空間に連通する溝あるいは面取りなどを設けて、隣接する歯間空間を連通させて急激な圧力変動を緩和し、キャビテーションを防止するものがある(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この内接ギヤ型ポンプのロータ構造は、発生するキャビテーション量をある程度期待できるものの、根本的なキャビテーション発生要因である吸入流速過大に対しては効果がない。このため、大きな効果は、得られない。
また、ドライブロータ又はドリブンロータの側面に回転方向に開口する溝を設けたものがある(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、このロータ構造は、ロータ室の側壁とドライブロータ又はドリブンロータの側面との間隙に流体を導入することで、ロータとロータ室の間の接触抵抗を低減することを狙ったものであり、ロータ歯間空間でのキャビテーション発生防止に対しては、有効な効果が得られない。
特開昭64−83874号公報
特開平9−296716号公報
特開平6−117379号公報
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、内接ギヤ型ポンプのロータ構造において、ロータ歯間空間で発生するキャビテーションの発生を防止することを技術的課題とする。
上記の課題を解決するために請求項1の発明において講じた技術的手段は、円筒状空間を形成するハウジングと、前記円筒状空間内に回転自在に配設された内歯を有するドリブンロータと、前記内歯と係合する外歯を有し前記ドリブンロータ内に回転自在に配設されると共に前記ドリブンロータと係合する歯間において拡大および縮小を繰り返し流体を吸込・吐出する複数の歯間空間を形成するドライブロータと、前記円筒状空間に連通する吸込ポートおよび吐出ポートとを備えた内接ギヤ型ポンプのロータ構造において、前記ドライブロータの側面には、前記吸込ポートに連通可能であると共に、前記歯間空間に連通可能であって、前記外歯間の歯底部に径方向に延びる溝が形成されていることである。
上記の課題を解決するために請求項2の発明において講じた技術的手段は、前記ハウジングの前記吸込ポートの輪郭形状の少なくとも一部が、前記溝の内周端と略同一径であることである。
上記の課題を解決するために請求項3の発明において講じた技術的手段は、前記溝は前記ドライブロータの軸線を含む断面において、径外方に向かって傾斜する形状に形成されていることである。
上記の課題を解決するために請求項4の発明において講じた技術的手段は、前記溝は前記ドライブロータの軸線を含む断面においてL型であることである。
請求項1の発明によれば、ドライブロータの側面には、吸込ポートに連通可能であると共に、歯間空間に連通可能であって、外歯間の歯底部に径方向に延びる溝が形成されていることにより、歯間空間のロータ側面方向への開口面積を拡大することができ、その結果、歯間空間への流体の吸入流速を低減できる。また、溝を通して歯間空間に流入する流体を遠心力で付勢し、歯間空間の中で最も負圧が発生し易い空間の略中央(歯底部付近)に流体を直接流入させることができる。
請求項2の発明によれば、ハウジングの吸込ポートの輪郭形状の少なくとも一部が、溝の内周端と略同一径であることにより、吸込ポートから溝を通して歯間空間に流入する流体の流量を多くすることができる。
請求項3の発明によれば、溝はドライブロータの軸線を含む断面において、径外方に向かって傾斜する形状に形成されていることにより、流体は円滑に歯間空間へ流入することができる。
請求項4の発明によれば、溝はドライブロータの軸線を含む断面においてL型であることにより、ドライブロータで一般的に採用される製造工法である金属焼結時に溝部の成形が容易となる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、ポンプ(内接ギヤ型ポンプ)100の裏面図である。ポンプ100は、主に、ボデー10、図示しないカバー、ドリブンロータ40及びドライブロータ50及びドライブロータ50の中心に嵌合し、ドライブロータ50を駆動するシャフト110から構成されている。ボデー10、カバー20とによってハウジングを構成し、ハウジングには、円筒状空間であるロータ室15が形成されている。ロータ室15には、シャフト110が挿入されるドライブロータ50と、ドライブロータ50に対し所定量偏心して係合するドリブンロータ40が収容されている。ドライブロータ50及びドリブンロータ40は、それぞれの外歯51及び内歯41が噛合して係合している。
シャフト110の回転駆動力によって、ドライブロータ50が回転される。ドリブンロータ40は、ドリブンロータ40との係合により回転される。ドリブンロータ40及びドライブロータ50の回転により、流体を吸込ポート12を介して吸込通路12aから吸込み、吐出ポート13を介して吐出通路13aへ吐出する。
図2は、内歯41を有するドリブンロータ40と、内歯41と係合する外歯51を有するドライブロータ50の係合状態を示す斜視図である。図3は、ドリブンロータ40の隣接する内歯41が、それぞれドライブロータ50に接触して形成される歯間空間Rの1つを示す拡大図である。
歯間空間Rは、図1及び図2に示すように、ドリブンロータ40及びドライブロータ50の回転に伴って、吸込ポート12を回転方向に移動する時、歯間空間Rの容積は徐々に拡大し、吸込ポート12と吐出ポート13との間に設けられた閉切位置Dで最大容積となる。次に、閉切位置Dから、ドリブンロータ40及びドライブロータ50の回転に伴って、吐出ポート13に沿って回転方向に移動する時、歯間空間Rの容積は徐々に縮小する。このように、ポンプ100は、ドリブンロータ40及びドライブロータ50の回転に伴い、歯間空間Rは、その容積を拡大・縮小し、吸込ポート12及び吐出ポート13を介して流体の吸込と吐出を行う。
図2乃至図7に示すように、ドライブロータ50は、その側面に、隣接する外歯51間に溝55が形成されたロータ構造となっている。溝55は、隣接する外歯51間の歯底部51Bに開口し連通している。溝55は、図4に示すように径方向に延びると共に、図5に示すように、ドライブロータ50の軸線を含む断面において、径外方に向かって傾斜する形状に形成されている。この形状により、溝55を通して流れる流体には遠心力が作用すると共に、溝55を円滑に流動する。また、この形状により、歯間空間Rの最も負圧が発生し易い歯間空間Rの略中央に流体を流入することができる。尚、図5、6に示すように、溝55は、ドライブロータ50の回転軸に垂直な平面に対称に形成されており、裏表なくポンプ100に組付けることができる。
図8は、ドリブンロータ40及びドライブロータ50と吸込ポート12の関係を示す要部断面図である。吸込ポート12は、ボデー10及びカバー20に形成したそれぞれの凹部10a及び20aにより形成されている。吸込ポート12は、吸込通路12aに接続されている。
ポート12を形成する凹部10a及び20aの輪郭10b及び20bは、溝55の内周端55bと略同一である。これにより、吸込ポート12に対する溝55の開口面積を最大にすることができ、吸込ポート12から溝55を通して歯間空間Rに流入する流体の流量を多くすることができる。
図9は、本発明の溝を設けていないポンプ200のドリブンロータ240及びドライブロータ250と吸込みポート212の関係を示す要部断面図である。このポンプにおいては、歯間空間Rの略中央に流体を多く、且つ、円滑に流入させることができないため、ドライブロータ250の外歯間の歯底部中央付近にキャビテーション(斜線で表示)が発生し易くなっている。
次に、本実施形態の作動について以下に説明する。
ポンプ100は、シャフト110の回転駆動力によって回転されるドライブロータ50とドリブンロータ40が噛み合いながら回転する。従って、流体は、吸込通路を通して吸込まれポンプ100の吸込ポート12から吐出ポート13へと吸込・吐出されて、吐出通路13aを通して被送給部へ圧送される。
このとき、ドライブロータ50とドリブンロータ40との間に形成される歯間空間R、特に歯間空間Rの中央部には負圧が発生しようとする。しかしながら、ドライブロータ50の側面には、吸込ポート12に連通可能であって、ドライブロータ50の隣接する外歯51間の歯底部51Bに連通し、且つ、径方向に延びる溝55が形成されている。このため、歯間空間Rの開口面積を拡大することができ、また、溝55を通して歯間空間Rに流入する流体を遠心力で付勢し、歯間空間55の略中央に流体を流入させることができ、負圧を低減でき、キャビテーションの発生を防止できる。
図10及び図11に示すように、本発明を適用したポンプにおいては、ポンプ回転数が高回転においても高いポンプ容積効率を達成している。また、ドライブロータ50の側面に溝55を設けたことにより摺動抵抗及び吸入抵抗を低減でき、駆動馬力の低減を達成している。
尚、これまで溝55がドライブロータ50の軸線を含む断面において、径外方に向かって傾斜する形状に形成されている場合について述べてきたが、図12に示すようなドライブロータ50の軸線を含む断面においてL型形状の溝550で構成してもよい。その場合において、同様の作用効果が得られるばかりでなく、ドライブロータ50を製造する際、一般的に採用される製造工法である金属焼結時に、溝部の成形が容易となり、金属密度が均一になって品質が安定するという効果も得られる。
10・・・ボデー(ハウジング)
12・・・吸込ポート
13・・・吐出ポート
15・・・ロータ室(円筒状空間)
20・・・カバー(ハウジング)
40・・・ドリブンロータ
41・・・内歯
50・・・ドライブロータ
51・・・外歯
51B・・・歯底部
55、550・・・溝
100・・・ポンプ(内接ギヤ型ポンプ)
R・・・歯間空間
12・・・吸込ポート
13・・・吐出ポート
15・・・ロータ室(円筒状空間)
20・・・カバー(ハウジング)
40・・・ドリブンロータ
41・・・内歯
50・・・ドライブロータ
51・・・外歯
51B・・・歯底部
55、550・・・溝
100・・・ポンプ(内接ギヤ型ポンプ)
R・・・歯間空間
Claims (4)
- 円筒状空間を形成するハウジングと、
前記円筒状空間内に回転自在に配設された内歯を有するドリブンロータと、
前記内歯と係合する外歯を有し前記ドリブンロータ内に回転自在に配設されると共に前記ドリブンロータと係合する歯間において拡大および縮小を繰り返し流体を吸込・吐出する複数の歯間空間を形成するドライブロータと、
前記円筒状空間に連通する吸込ポートおよび吐出ポートとを備えた内接ギヤ型ポンプのロータ構造において、
前記ドライブロータの側面には、前記吸込ポートに連通可能であると共に、前記歯間空間に連通可能であって、前記外歯間の歯底部に向けて径方向に延びる溝が形成されていることを特徴とする内接ギヤ型ポンプのロータ構造。 - 前記ハウジングの前記吸込ポートの輪郭形状の少なくとも一部が、前記溝の内周端と略同一径であることを特徴とする請求項1に記載の内接ギヤ型ポンプのロータ構造。
- 前記溝は、前記ドライブロータの軸線を含む断面において、径外方に向かって傾斜する形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内接ギヤ型ポンプのロータ構造。
- 前記溝は、前記ドライブロータの軸線を含む断面においてL型であることを特徴とする請求項1に記載の内接ギヤ型ポンプのロータ構造。
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