JP2006124412A - ラジカル重合開始剤および歯科用硬化性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 硬化反応時や硬化後の着色が少なく、かつ機械的性質が良好な硬化体を与えるピリミジントリオン系重合開始剤において、硬化時間の調整を容易にし、義歯床裏装材用などの重合開始剤として使用できるようにする。
【解決手段】 1−シクロヘキシル−5−メチルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−エチルピリミジントリオン等の下記式(1)で示されるピリミジントリオン誘導体、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド等の有機塩素塩化合物、およびN,N’−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデンエチレンジアミナト銅(II)下記式(2)で示される第二銅錯体化合物からなる重合開始剤とする。
Figure 2006124412

(上記式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基等を、R〜R、R及びR10は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を、R、R、R、R11は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基等を示す)
【選択図】 なし

Description

本発明は、ラジカル重合開始剤および該重合開始剤組成物を用いた歯科用硬化性組成物に関する。
(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル存在下で重合が可能な単量体、有機過酸化物及び第三級アミン化合物からなる組成物は、それらが室温から口腔内の温度で速やかに重合して硬化体が生じる性質を利用して、義歯床裏装材、歯科用セメント、コンポジットレジン、歯冠用レジン等の歯科材料として広く応用されている。
例えば義歯床裏装用材料は、長期間の使用により患者の口蓋に適合しなくなった義歯を改床し、再度使用できる状態に修正するための材料であり、室温から口腔内の温度で重合硬化するペーストを義歯床に盛付け、直接患者の口腔に挿入、口腔粘膜面との適合を図った後、口腔内で保持したまま重合硬化させて修正を行う材料である。従来、このような裏装材としては、一般にポリメチルメタアクリレート、ポリエチルメタアクリレートおよびメチルメタアクリレートとエチルメタアクリレートの共重合体等の粉末状合成樹脂と有機過酸化物を混合した粉末状成分と、メチルメタアクリレート等のラジカル重合性化合物等の単量体と第三級アミン化合物を混合した液体状成分とに分包された粉−液二成分系材料が用いられている。
このような二成分系材料を混合した際、上記液体状成分が粉末状成分と接触することにより短時間でその一部を溶解するとともに、合成樹脂粉末中に浸透して膨潤させる。このため、混合物の粘度を適度に調節することができ、臨床上の操作を容易にすることができる利点を有する。また、重合開始剤の構成成分である過酸化ベンゾイルと芳香族第3級アミンが混合されることによって、室温から口腔内における温度で容易にラジカルが発生し、混合から所定の時間が経過した後、重合硬化が進行する。このような利点から、上記裏装法用の材料としてラジカル重合性の単量体と過酸化ベンゾイル−芳香族第3級アミン化合物からなる化学重合開始剤の組み合わせが広く使われている。
しかしながら、過酸化ベンゾイル−芳香族第3級アミン化合物系の重合開始剤は、両者が反応した際に生成する副生成物に由来する硬化時の変色、さらに硬化体を長期使用した場合、芳香族第3級アミン化合物の酸化に由来する硬化体の経時的変色等の欠点があった。
過酸化ベンゾイル−第3級アミン化合物系以外の化学重合開始剤として、ピリミジントリオン誘導体、アセチルアセトン銅等の銅化合物および有機塩素塩化合物からなる化学重合開始剤(以下、ピリミジントリオン系重合開始剤という)が知られている。このようなピリミジントリオン系重合開始剤は、ラジカル重合性単量体が重合する際の変色が少なく、また硬化後の経時的変色も少ないことが知られており、歯科用即時重合レジンに応用されている。
また、ピリミジントリオン系重合開始剤を配合する硬化性組成物に、更に芳香族第3級アミン化合物を配合して、硬化性を改良したものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
これらピリミジントリオン系重合開始剤は、粉末状成分と液体状成分からなる硬化性組成物の重合開始剤として知られており、保存安定性や硬化性を考慮して、樹脂粉末を主成分とする粉末状成分にピリミジントリオン誘導体と銅化合物を、ラジカル重合性単量体を主成分とする液体状成分に有機塩素塩化合物と、必要に応じて第3級アミン化合物を配合することが行われている。
上記、ピリミジントリオン系重合開始剤は非常に重合活性が高く、該重合開始剤が配合された硬化性組成物は室温において1〜3分程度で硬化が起こる。即時重合レジンは、破損した義歯の補修やテンポラリークラウンの作製等、主として口腔外において迅速に硬化が必要な場合に使用されている。このような特性は即時重合レジン等の高活性が要求される製品においては有効であるが、義歯床裏装用材料用途においては6〜15分程度の硬化時間が要求されるため、硬化時間を遅延させる必要がある。
ピリミジントリオン系重合開始剤の硬化活性をコントロールする手段として重合禁止剤を添加して硬化時間を遅延させる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この場合には硬化遅延の効果が低いために、大量の重合禁止剤の添加が必要となり、得られた硬化体を口腔内部で使用した場合、硬化体からの溶出成分が多くなる問題があった。また、この場合には、重合禁止剤が重合時間遅延のために使い尽くされて消失した場合には重合反応が一気に進行するため硬化時の発熱は低減されず、口腔内部で硬化を行なう義歯床裏装用材料に使用するには問題があった。
また、ピリミジントリオン系重合開始剤において硬化遅延させる技術としては、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを添加する手法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。この場合、硬化時間が3分45秒から5分50秒の間で硬化時間が制御されているが、義歯床裏装用材料の場合、口腔内部で口蓋との形状を合わせる筋形成のための時間や、ペースト余剰分を取り除くためのトリミングの時間が必要となるため、硬化時間は6分〜15分程度である必要がある。2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの添加によって義歯裏装用材料に適した硬化時間を合わせた場合には、重合反応の反応率が不十分となり、得られた硬化体中の残留モノマー量が増加したり、硬度や曲げ強度等の機械的物性が低下したりする等の問題があった。
以上のように、ピリミジントリオン系重合開始剤は優れた重合開始剤であるが、義歯床裏装材等の比較的長い操作余裕時間が要求される用途においては未だ改良の余地があった。
特開平6−219919号公報 特開平9−67222号公報 特開平11−71220号公報
従って本発明は、ピリミジントリオン系重合開始剤の優れた特性を損なうことなく、義歯床裏装材等の比較的長い操作余裕時間が要求される用途に対しても適用可能な技術の提供を目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ピリミジントリオン誘導体、有機塩素塩化合物および銅化合物からなるピリミジントリオン系重合開始剤において、用いるピリミジントリオン誘導体及び銅化合物として各々特定のものを採用することにより上記課題を解決できることを見出し本発明を完成した。
すなわち本発明は、下記一般式(1)
Figure 2006124412
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数3〜8のシクロアルキル基である)で示されるピリミジントリオン誘導体、有機塩素塩化合物、および下記一般式(2)
Figure 2006124412
(式中、R〜R、RおよびR10は各々独立に水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を示し、R、R、R、R11は各々独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のアルキルオキシ基である)で示される第二銅錯体化合物からなるラジカル重合開始剤である。
本発明によれば、従来のピリミジントリオン系重合開始剤と同様の硬化体硬度や曲げ強度、耐変色性を維持しながら、従来技術では不可能であったような長い操作余裕時間を得ることが可能となる。従って本発明の重合開始剤を用いた硬化性組成物は、義歯床裏装材として極めて有用である。
本発明のラジカル重合開始剤は、特定構造のピリミジントリオン誘導体、有機塩素塩化合物および特定構造の第二銅錯体化合物から構成される。以下、これら各成分について詳細に説明する。
本発明において用いられるピリミジントリオン誘導体は、下記一般式(1)、
Figure 2006124412
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数3〜8のシクロアルキル基である)で示される構造を有するピリミジントリオン誘導体である。上記式(1)で示されるピリミジントリオン誘導体以外のピリミジントリオン誘導体では、融点が低いため粉剤に配合した際、保存中に粉がブロッキングして計量が困難となったり、粉液混和の際に混和ムラが生じたりといった問題が生じる。
上記式においてRは炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数3〜8のシクロアルキル基である。炭素数1〜8のアルキル基を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。また炭素数3〜8のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基等が例示される。
本発明に使用される上記ピリミジントリオン誘導体を具体的に例示すると、1−シクロヘキシル−5−メチルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−エチルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−n−プロピルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−iso−プロピルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−n−ブチルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−iso−ブチルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−sec−ブチルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−tert−ブチルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−ヘキシルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−オクチルピリミジントリオン、1,5−シクロヘキシルピリミジントリオン等が挙げられる。
ピリミジントリオン誘導体はポリメチルメタアクリレート粉末やポリエチルメタアクリレート粉末等の樹脂粉末に配合されることが多いため、該ピリミジントリオンの融点が高い方が粉末の融着を防止しやすい。このような理由から、上述したピリミジントリオン誘導体のうち、特に1−シクロヘキシル−5−メチルピリミジントリオンあるいは1−シクロヘキシル−5−エチルピリミジントリオンを使用するのが好ましい。また必要に応じて複数種のピリミジントリオン誘導体を併用することも可能である。
本発明の重合開始剤における第二の成分は有機塩素化合物である。当該有機塩素塩化合物は、溶液中で塩素イオン(Cl)を形成させる化合物であれば特に限定されず公知の化合物が使用できるが、重合性単量体への溶解性の点から、第3級アミンの塩酸塩又は第4級アンモニウムクロライドが好ましい。このような有機塩素塩化合物としては、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジイソブチルアミンハイドロクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、トリエチルアミンハイドロクロライド、トリメチルアミンハイドロクロライド、ジメチルアミンハイドロクロライド、ジエチルアミンハイドロクロライド、メチルアミンハイドロクロライド、エチルアミンハイドロクロライド、イソブチルアミンハイドロクロライド、トリエタノールアミンハイドロクロライド、β−フェニルエチルアミンハイドロクロライド、アセチルコリンクロライド、2−クロロトリメチルアミンハイドロクロライド、(2−クロロエチル)トリエチルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して使用することもできる。
本発明の重合開始剤における第三の成分は、下記一般式(2)、
Figure 2006124412
(式中、R〜R、RおよびR10は各々独立に水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を示し、R、R、R、R11は各々独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のアルキルオキシ基である)で示される第二銅錯体化合物である。該化合物は銅源として必要である。
上記式(2)で示される以外の銅源、例えば、ビス(アセチルアセトナト)銅、酢酸第二銅、オレイン酸銅などでは、重合禁止剤や硬化遅延剤を配合しても硬化時間(操作余裕時間)を変化させることがほとんどできず、また重合開始剤の配合量を少なくしても、義歯床裏装材として必要な程度の硬化時間とすることができない。
上記式(2)においてR〜R、RおよびR10は各々独立に水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を示す。該炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
上記式(2)において、R、R、R、R11は各々独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のアルキルオキシ基である。当該アルキル基としては、R〜R、RおよびR10として例示したものと同様の炭素数1〜12の基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。炭素数1〜20のアルキルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、デシルオキシ基等が例示される。
上記式(2)で示される第二銅錯体化合物を具体的に例示すると、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)−1,2−プロピレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)−1,2−ブチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)−1,2−ペンタンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)−1,2−ヘキサンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)−2,3−ブチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)−3,4−ヘキサンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)−2,3−ペンタンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)−1,2−ジメチル−1,2−プロピレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)−1,1,2−トリメチル−1,2−プロピレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−エチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−プロピル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−ブチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソペンチリデン)エチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソヘキシリデン)エチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−エチル−3−オキソペンチリデン)エチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−プロピル−3−オキソヘキシリデン)エチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−2−メチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−2−エチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メトキシ−3−オキソブチリデン)エチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−エトキシ−3−オキソブチリデン)エチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソ−3−メトキシプロピリデン)エチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソ−3−エトキシプロピリデン)エチレンジアミナト銅(II)等が挙げられる。これら第二銅錯体化合物は単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
上記第二銅錯体化合物のうち、入手の容易さやラジカル重合性単量体への溶解性の観点から、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミナト銅(II)、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)−1,2−プロピレンジアミナト銅(II)および、N,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)−1,2−ブチレンジアミナト銅(II)が好適に用いられる。
本発明の上記三成分からなる重合開始剤の配合比は特に限定されるものではないが、ピリミジントリオン誘導体1モルに対して、有機塩素塩化合物が0.001〜0.2モル(より好ましくは0.005〜0.1モル)、第二銅錯体化合物が0.00001〜0.03モル(より好ましくは0.0001〜0.02モル)の範囲とすることが好ましい。ここで第二銅錯体化合物の配合量を少なくすることにより、最終的な硬化体物性にほとんど影響を与えることなく、硬化時間を長くすることができる。
また本発明の重合開始剤は後述するようなラジカル重合性単量体を重合させるために用いるものである。該単量体に対する重合開始剤の添加量は特に限定されるものではなく、必要な硬化挙動や硬化体物性に応じて適宜決定すればよいが、好ましくは重合性単量体100質量部に対して、ピリミジントリオン誘導体の配合量が0.05〜15質量部の範囲で用いられる。より好ましくは、0.1〜10質量部の範囲で用いるのがよい。ピリミジントリオン誘導体の配合量が15質量部程度までは、その添加量が多いほど重合反応の進行度が高く、良好な硬化体物性が得られる一方で、少ないほど硬化体の着色や変色が少ない。また有機塩素塩化合物および第二銅錯体化合物の配合量は上記、ピリミジントリオン誘導体に対する配合比率の範囲内で各々適宜選択して用いればよい。
上記のように、本発明の重合開始剤はラジカル重合性単量体に配合して、これを重合・硬化させるために用いる。当該ラジカル重合性単量体としては、ラジカルによって重合するものであれば特に制限されず公知のものが使用される。このようなラジカル重合性単量体としては、重合性の良さなどから(メタ)アクリレート系の単量体が主に用いられている。当該(メタ)アクリレート系の重合性単量体を具体的に例示すると下記(1)〜(4)に示すものが挙げられる。
(1)単官能ラジカル重合性単量体
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、プロピオンオキシエチル(メタ)アクリレート、ブタノンオキシエチル(メタ)アクリレート;1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,6H−デカフルオロヘキシルメタクリレート及び1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート等の含フッ素(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(2)二官能ラジカル重合性単量体
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、2,2−ビス(メタクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(3−メタクリロキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジプロポキシフェニルプロパン、2−(4−メタクリロキシエトキシフェニル)−2−(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)−2−(4−メタクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロキシジプロポキシフェニル−2−(4−メタクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシイソプロポキシフェニルプロパン、及びこれらのアクリレート等が挙げられる。
(3)三官能ラジカル重合性単量体
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(4)四官能ラジカル重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
本発明においては、このようなラジカル重合性単量体は単独で用いてもよく、また2種類以上のラジカル重合性単量体を併用してもよい。さらに、ラジカル重合性を有する官能基数が異なる複数種の組み合わせも自由に選択しうる。
本発明の重合開始剤は前述のように硬化時間の調整、特に硬化時間の延長が容易であり、また硬化時あるいは硬化後の変色が少ないという特色を有するため、上記ラジカル重合性単量体に配合して得られる硬化性組成物は、歯科用として極めて有用である(以下、本発明の歯科用硬化性組成物と称す)。さらに歯科用途のなかでも、比較的長い硬化時間を要求される義歯床裏装用材料として特に有用である。
本発明の歯科用硬化性組成物を義歯床裏装用材料として用いる場合には、単官能ラジカル重合性単量体と二官能ラジカル重合性単量体とを組み合わせて用いるのが好適であり、アセトアセトキシエチルメタアクリレート、プロピオンオキシエチルメタアクリレート等の単官能ラジカル重合性単量体と、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート等の二官能ラジカル重合性単量体の中からそれぞれ1種類ずつ選び、20/80〜80/20の質量比で組み合わせたものがより好適である。
さらに本発明の歯科用硬化性組成物を義歯床裏装用材料として用いる場合には、操作性、経済性、保存安定性等の点から、上記したような(メタ)アクリレート系重合性単量体を主成分とする液材と、粉末、特に樹脂粉末を主成分とする粉材に分割して保存し、使用時に所定量の液材と粉材とを混合する形態を採用することが好ましい。このとき、本発明の重合開始剤を液材又は粉材のいずれか一方に全て配合すると保存安定性に問題を生じる場合が多いため、適宜、液材と粉材とに振り分けて配合するとよい。良好な保存安定性、溶解性等を考慮すると、有機塩素塩化合物を液材に、ピリミジントリオン誘導体および第二銅錯体化合物を粉材に配合することが好ましい。
上記樹脂粉末は、上記(メタ)アクリレート系重合性単量体に膨潤や溶解するものであれば何等制限なく使用される。具体的に例示すると、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、メタアクリル酸メチル−メタアクリル酸エチル共重合体、メタアクリル酸メチル−メタアクリル酸ブチル共重合体、メタアクリル酸エチル−メタアクリル酸ブチル共重合体、架橋型ポリメタアクリル酸メチル、架橋型ポリメタアクリル酸エチル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体体等があり、これら1種または2種以上の混合物として用いることができる。
なお、上記樹脂粉末の分子量は特に制限されないが、非架橋の樹脂である場合には、5000〜1000000の範囲のものが好ましい。また、上記樹脂粉末が共重合体である場合には、その共重合比は特に制限されない。
上記樹脂粉末の形状は特に制限されず、通常の粉砕により得られるような不定形粒子であってもよく、また、球状もしくは略球状の粒子であってもよい。一般的には、粒径0.01〜200ミクロンの粉末が好適に使用される。
上記樹脂粉末の配合量は、操作性および硬化体強度の観点から、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して50〜400質量部、好ましくは100〜200質量部の中から選択される。
本発明の歯科用硬化性組成物を義歯床裏装用材料として用いる場合には、上記液材に配合される(メタ)アクリレート系重合性単量体、有機塩素塩化合物、粉材に配合される樹脂粉末、ピリミジントリオン誘導体、第二銅錯体化合物に加えて、義歯床裏装用材料に配合される成分として公知の他の成分を配合してもよい。
ブチルヒドロキシトルエン、メトキシハイドロキノン等の重合禁止剤や、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等のα−メチルスチレンダイマー類を添加することにより、硬化時間をさらに調整(遅延)させることが可能である。さらに重合禁止剤を液材に添加しておけば保存安定性も向上させることができる。これらは配合量が多いほど硬化時間を長くするが、あまりに多量に配合すると、硬化しなくなったり、硬化体の機械的強度を低下させる場合がある。重合禁止剤を配合する場合のその配合量は、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して0.0005〜5質量部程度が好ましく、0.001〜3質量部程度がより好ましく、0.005〜1質量部程度が特に好ましい。またα−メチルスチレンダイマー類を配合する場合の配合量は、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲とすることが好ましく、0.01〜1質量部の範囲とすることがより好ましい。
本発明の歯科用硬化性組成物にはさらに、光で重合を開始する公知の重合開始剤を併用することもできる。この場合には、化学重合および光重合によって硬化する、いわゆるデュアルキュアタイプの硬化性組成物となり、有用である。光で重合を開始する開始剤の代表的なものを例示すれば、カンファーキノン、ベンジル−α−ナフチル−アセトナフテン、ナフトキノン等のα−ジケトン類、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ペンタノン等のα−アミノアセトフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体等が挙げられる。
上記の光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。これらの光重合開始剤を使用する場合の添加量は、組成物の光安定性および重合性の観点から(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲であるのが好ましい。
粉材に対して、上記樹脂粉末に加えてさらに、無機粉末や有機/無機複合粉末を配合することも可能である。
その他、4−メトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−(2−ベンゾトリアゾール)−p−クレゾール等の紫外線吸収剤、色素、顔料、および香料等のその他の成分を添加することができる。
上記液材と粉材からなる包装形態を採用する場合、これら液材と粉材各々の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の粉−液型の硬化性組成物の製造方法に準じて行えばよい。即ち、各々所定量の配合成分を計り取り、均一の性状になるまで混合すればよい。製造した液材、粉材は各々容器に保存しておき、使用直前に所定量を取り出し、歯科用の混和棒やヘラにより混ぜ合わせて用いればよい。
本発明の重合開始剤を配合した硬化性組成物は、上記義歯床裏装用材料に限らず、義歯床材、歯科用セメント、歯科用ボンディング材、歯科用コンポジットレジン等として使用できる。この場合には、本発明の重合開始剤以外の配合成分は、これら用途において公知の成分を必要に応じて所定量配合すればよい。さらに歯科用に限らず、他の硬化性組成物、例えば、工業用接着材、シーリング剤等に用いることも可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例で使用した化合物とその略称を以下の表1に示す。
Figure 2006124412
製造例1,2
本実施例で用いたピリミジントリオン誘導体(CMB及びCEB)は以下の方法で製造した。即ち、1−シクロヘキシル−5−メチルピリミジントリオン(CMB)は、クロヘキシル尿素10g(0.07モル)、メチルマロン酸ジエチル13.1g(0.07モル)、ナトリウムエトキシド4.8g(0.07モル)、エタノール100mlを仕込み、還流温度で5時間反応させた。反応後、反応液を水500mlに加え、塩酸で酸性にした。析出した油状物をジエチルエーテル抽出、硫酸マグネシウム乾燥、ろ過後、溶剤を留去した。得られた固体をメタノールにより再結晶することによりCMB8.0gを得た。
1−シクロヘキシル−5−エチルピリミジントリオン(CEB)は、チルマロン酸ジエチルの代わりにエチルマロン酸ジエチルを用いたこと以外はCMBと同様に合成した。メタノールにて再結晶後、CEB8.2gを得た。
CMB、CEBともに、H−NMRおよびマススペクトルにより同定を行い、目的化合物が合成されていることを確認した。
製造例3
本実施例で用いたN,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミナト銅(II)は新実験化学講座8 無機化合物の合成III(丸善)に従い製造した。即ち、アセチルアセトン200g(2mol)に無水エチレンジアミン60g(1mol)をゆっくりと加えた。加え終わってから冷却すると淡黄色の物質に変化した。これを水で2回再結晶し、減圧乾燥した。
述のように合成した配位子のアセトン溶液に、配位子1モルに対して1.2モルの水酸化銅(II)を加えて3時間還流した。反応溶液が熱い間に濾過して未反応の水酸化銅(II)を除去後、濾液に水を加えて目的化合物の粗結晶を得た。粗結晶はアセトンで再結晶精製した。
製造したN,N‘−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミナト銅(II)は融点により同定を行い目的化合物が合成されていることを確認した。
物性の評価は以下の方法により行った。
(I)硬化時間の測定
測定用の試料、測定器具、装置等は予め23℃±1℃の恒温室に10時間以上置いたものを使用した。粉剤1.0gに対して液剤0.5gの割合でラバーカップ中において混和してペーストを得た。20×20×12mmのブロック中央に6mmφの貫通した穴のあいたポリテトラフルオロエチレン製のモールドに上記ペーストを填入し、1mmφの熱伝対を填入したペーストの中央に差込み、温度を測定した。硬化時間は粉液の混和開始から最高温度に到達するまでの時間とした。
(II)硬化性の評価(硬度)
組成物の硬化性は、粉4gに対し、液2gの割合で混合したペーストを20×20×2mmの窪みのあるポリテトラフルオロエチレン製モールドへ流し込み、空気に接した面をポリエチレンシートで圧接して37℃で1時間硬化させた。得られた硬化体をモールドから取り出し、37℃の蒸留水中で24時間吸水させた。得られた硬化体のうち、硬度が計測できるほどの硬さに硬化したサンプルに関しては、松沢精機製微小硬度計で100gf、20秒荷重印加の条件でヌープ硬度を測定した。硬度が測定できるほど硬化しなかったサンプルあるいは全く硬化しなかったものに関しては×印で表記した。
(III)変色試験
硬化性の評価方法と同様にして試験片を作製した。これを80℃水中に30日間保存し、その保存後の硬化体の色調を以下に示す5段階で評価した(目視)。
Figure 2006124412
実施例1
AAEM(60質量部)、ND(40質量部)、DLDMACl(0.07質量部)およびBHT(0.02質量部)からなる液材と、EMA(200質量部)、CMB(1.3質量部)およびCu(acacen)を0.001〜0.017質量部の範囲で変化させて配合した粉材を製造し、粉液の質量比率(P/L)が2.0となる割合で混合して硬化時間、硬化体の物性を評価した。結果を表3にまとめた。
この場合の重合開始剤成分のモル比率はCMB:DLDMACl:Cu(acacen)=1:0.031:0.0006〜0.01の範囲である。Cu(acacen)の配合量に応じて硬化時間が変化することから、Cu(acacen)の配合量を調整することで所望の硬化時間に制御できることがわかった。また、本実施例におけるCu(acacen)の配合量の範囲において得られた硬化体は、義歯床裏装材に適した硬度を有していた。また、硬化体の変色試験の結果も良好で、いずれの硬化体においても変色は認められなかった。
実施例2
CMBの代わりにCEBを用いたこと以外は、実施例1と同様の評価を行なった。この場合の重合開始剤成分のモル比率はCEB:DLDMACl:Cu(acacen)=1:0.031:0.0006〜0.01の範囲である。評価結果を表3にまとめた。この場合も義歯床裏装材として有効な硬化時間の範囲に任意に調整ができ、硬化体硬度、変色試験の結果も良好であった。
実施例3
粉材に配合するCu(acacen)の量を0.017質量部に固定し、BHTの配合量を0.02〜0.8質量部の範囲で変化させて配合した液材を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行った。配合したBHT量と、それぞれの結果を併せて表3に示す。この場合の重合開始剤成分のモル比率はCMB:DLDMACl:Cu(acacen)=1:0.031:0.0012である。結果を表3にまとめた。重合禁止剤であるBHTの配合量を変えることによって硬化時間が変化することから、BHTの配合量を調整することにより硬化時間を制御できることがわかった。また、硬化体硬度、変色試験の結果も良好であった。
実施例4
粉材に配合するCu(acacen)の量を0.004質量部に固定し、液材に配合するノフマーを0〜0.027質量部の範囲で変化させた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。配合したノフマー量と、それぞれの結果を併せて表3に示す。
Figure 2006124412
比較例1
Cu(acacen)の代わりにCu(acac)を用いたこと以外は実施例1と同様な評価を行なった。この場合の重合開始剤成分のモル比率はCMB:DLDMACl:Cu(acac)=1:0.031:0.0003〜0.01の範囲である。結果を表4にまとめて示した。
Cu(acac)配合量が0.0005質量部の場合には必要な硬化活性が得られず、硬度の評価が可能な硬化体が得られなかった。また、配合量が0.008質量部以上の場合には硬化の活性が高すぎ、硬化体中に夥しい量の気泡が残留し、硬度測定できる硬化体は得られなかった。このように、Cu(acac)の配合可能な範囲は狭く、義歯床裏装材に必要な硬化時間帯での硬化時間制御はできなかった。
比較例2
Cu(acacen)の代わりにCu(acac)を用いたこと以外は実施例3と同様な評価を行なった。結果を表4にまとめて示した。この場合、重合禁止剤添加による硬化遅延効果は極めて小さく、有効な範囲で硬化時間を制御することができなかった。また、BHTを2.0質量部添加した場合には硬化が起こらなかった。即ち、Cu(acac)を触媒として用いた場合には、重合禁止剤の配合によっては、義歯床裏装材に必要な硬化時間帯での硬化時間制御はできなかった。
比較例3
Cu(acacen)の代わりにCu(acac)を用いたこと以外は実施例4と同様な評価を行なった。結果を表4にまとめて示した。この場合、MSD添加による硬化遅延効果は極めて小さく、有効な範囲で硬化時間を制御することができなかった。また、MSDを0.1質量部添加した場合には硬化が起こらなかった。Cu(acac)を触媒として用いた場合には、連鎖移動剤による義歯床裏装材に必要な硬化時間帯での硬化時間制御はできなかった。
比較例4
粉材に配合するCu(acac)の量を0.002質量部に固定し、CMBの配合量を0.4〜1.3質量部の範囲で変化させて評価を行った。他の配合成分の割合は実施例1と同様である。評価結果を表4にまとめて示した。この場合、CMBの配合量を減少させても硬化時間は変化せず、硬化体の硬度が低下する傾向がみられた。また、CMB配合量を0.4質量部とした場合には硬化が起こらなかった。このようにCMBの配合量を調整することにより硬化時間を制御することはできなかった。
比較例5
粉材に配合するCu(acac)の量を0.002質量部、CMBの配合量を1.3質量部に固定し、液材に配合するDLDMAClの量を0.02〜0.07質量部の範囲で変化させて評価を行った。他の配合成分の割合は実施例1と同様である。評価結果を表4にまとめて示した。DLDMAClの配合量を減少させても硬化時間は変化せず、硬化体の硬度が低下する傾向がみられた。また、DLDMACl配合量を0.02質量部とした場合には硬化が起こらなかった。このようにCMBの配合量を調整する方法でも硬化時間を制御することはできなかった。
Figure 2006124412
上記実施例1と比較例1とを対比させると明らかなように、本発明における前記一般式(2)で示される第二銅錯体を用いると、他の銅化合物を用いた場合よりも、その配合量を変化させたときの硬化時間の調整範囲が広く、かつ義歯床裏装用材料として好適な時間に調整することも容易である。また、実施例3と比較例2とを、及び実施例4と比較例3とを対比させると明らかなように、本発明の重合開始剤は、重合禁止剤や遅延剤(ノフマー)を配合しての硬化時間の調整も容易である。またこのような硬化時間の遅延によっても最終的に得られる硬化体の物性にはほとんど影響がない。
比較例6
AAEM(60質量部)、ND(40質量部)、PEAT(1.0質量部)およびBHT(0.02質量部)からなる液材と、EMA(200質量部)およびBPO(0.6〜1.0質量部)で配合した粉材を製造し、粉液の比率(P/L)が2.0となる割合で混合して硬化時間、硬化体の物性を評価した。結果を表4に併せて示した。BPOの配合量を変化させることにより硬化時間は制御できるものの、硬化体の変色試験において硬化体が褐色に変化した。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 2006124412
    (式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数3〜8のシクロアルキル基である)で示されるピリミジントリオン誘導体、有機塩素塩化合物、および下記一般式(2)
    Figure 2006124412
    (式中、R〜R、RおよびR10は各々独立に水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を示し、R、R、R、R11は各々独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のアルキルオキシ基である)で示される第二銅錯体化合物からなるラジカル重合開始剤。
  2. 請求項1記載のラジカル重合開始剤、およびラジカル重合性単量体を含む歯科用硬化性組成物。
  3. (A)ラジカル重合性単量体および有機塩素塩化合物を含んでなる液材と、
    (B)樹脂粉末、下記一般式(1)
    Figure 2006124412
    (式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数3〜8のシクロアルキル基である)で示されるピリミジントリオン誘導体、および下記一般式(2)
    Figure 2006124412
    (式中、R〜R、RおよびR10は各々独立に水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を示し、R、R、R、R11は各々独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のアルキルオキシ基である)で示される第二銅錯体化合物を含んでなる粉材とからなり、使用時に粉材および液材を混合して使用することを特徴とする歯科用硬化性組成物。
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