JP2006121990A - リン脂質含有油脂及びリン脂質含有油脂を利用した油脂加工食品 - Google Patents

リン脂質含有油脂及びリン脂質含有油脂を利用した油脂加工食品 Download PDF

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Abstract

【課題】粗原油に含まれるリン脂質を残したまま風味等が良好な食用油脂を得ること及びその油脂を利用した機能性油脂や油脂加工食品を提供すること。
【解決手段】(1)粗原油に対して、脱ガム処理を施さずに、減圧下で脱気・脱水処理による精製手段を施したことを特徴とするリン脂質含有油脂、(2)減圧下で実施される脱気・脱水処理による精製手段が、水蒸気蒸留装置を用いて、40〜140℃の温度に加熱後、発泡抑制可能な減圧速度で5000Pa以下まで減圧するものであり、該脱気・脱水処理に引き続いて、同処理圧以下の減圧下で、水蒸気の吹き込みを行う水蒸気蒸留による脱臭処理を行うことを特徴とする上記1記載のリン脂質含有油脂、(3)減圧下で実施される脱気・脱水処理による精製手段が、薄膜真空乾燥処理である上記1記載のリン脂質含有油脂。
【選択図】なし

Description

本発明は、粗原油中の天然のリン脂質がそのまま存在することを特徴とする、食用油脂の製造方法とその利用法に関するものである。
従来から、マーガリン、クリーム、マヨネーズやドレッシング、チョコレートなどの油脂加工製品や炒め油やかけ油などの機能性油脂においては、乳化安定性や剥離性など色々な機能を付与することを目的に、レシチンをはじめ様々な乳化剤が添加されている。
マーガリン、ショ−トニング、ファットスプレッドなどにはウイービング(水滴分離の現象)やスパッタリング(パチパチはねる現象)を防止するためや、乳化安定性、口どけ、呈味性、展延性を向上させるためレシチンやモノグリセライド等の乳化剤を添加し、製造している。
例えば、マーガリン製造時にレシチンとモノグリセライドを併用し、水滴分離防止効果を上げる方法(特許文献1)、ファットスプレット製造時にレシチンとポリグリセリン脂肪酸エステルを用い、乳化安定性、風味を向上させる方法(特許文献2)、マーガリン等の油脂又は油脂組成物の溝孔を施すことを特徴とする折り込み用油脂組成物(特許文献3)等がある。
また、炒め時に素材をフライパンに付かなくするような炒め物用油、炊飯時の釜離れを良好にする炊飯用油等、乳化剤の機能を利用した機能性油脂が開発され、レシチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド等の乳化剤を精製された油に添加し、製造している。
従来の機能性油脂としては、例えば、植物性液状油に、該液状油に対して1〜5重量%のレシチンと0.05〜2重量%のソルビタン脂肪酸エステルを添加することを特徴とする鉄板焼き用油の製造法(特許文献4)、液状食用油脂に対して炭素数6〜10の中鎖脂肪酸トリグリセリドを1重量部よりも多く、10重量部よりも少ない量を混合せしめて成る調理用油脂組成物(特許文献5)、食用油脂に対してレシチンとレシチンを除く食品用界面活性剤を1種或いは2種以上を添加、溶解することを特徴とする炊飯油(特許文献6)、食用油脂に対してレシチンとレシチンを除く食品用界面活性剤を1種或いは2種以上とアスコルビン酸の脂肪酸エステルを添加、溶解することを特徴とする炊飯用油(特許文献7)等がある。
米国特許第2402690号明細書 特開昭63−279750号公報 特開2001−45970号公報 特開昭54−50008号公報 特開昭63−91039号公報 特開平3−175937号公報 特許第2709741号明細書
上記方法で用いられるレシチンは、食品添加物公定書で「油糧種子又は動物原料から得られたもので、その主成分は、リン脂質である。」と定義され、油糧種子や卵黄から得られる。レシチンは乳化剤として利用されているが、その乳化性はリン脂質の組成に由来する。
リン脂質には、血中コレステロール低下作用や脂肪肝予防の効果が期待されることが知られている(非特許文献1)。
Fragrance Journal No.43(Vol.8.No.4)1980 p57-60
油糧種子から得られるレシチンは、食用油脂の製造工程で油糧原料から圧搾した油、もしくはヘキサンなどの有機溶剤で抽出し、溶剤を除去して得た油(以下これらを「粗原油」と総称する)を原料にして、精製工程である脱ガム工程にて、温水又は温水と共に0.05〜0.1%程度の有機酸(クエン酸、酢酸、シュウ酸、蟻酸など)や無機酸(リン酸、硫酸、塩酸、硝酸など)を加えてリン脂質を含むガム質を水和、析出させ、遠心分離等により回収されるガム質を乾燥して製造される。この際、ガム質は、高粘度であり、ハンドリングが悪いため、乾燥時には脂肪酸や油を加えて粘度を調整するなどの工夫が行われている。例えば、代表的な大豆の粗原油では、一般的にリン脂質として約2%程度含まれている。
粗原油は、色も濃く、臭いも悪いので、精製する必要がある。このための精製法としては、一般的には、脱ガム処理(リン脂質の除去)、脱酸処理(遊離脂肪酸の除去)、脱色処理(色素成分の除去)、脱臭処理(有臭成分の除去)等が採用される。
粗原油中には、リン脂質が含まれていることから、これを食品添加物であるレシチンの代用として利用する可能性が考えられるが、臭いが非常に強いなど独特の風味を有するために、機能性油脂や油脂加工食品へ利用を行っても品質良好なものを得ることは出来なかった。
独特の風味を低減させるためには、粗原油中の不純物を脱色処理、脱臭処理等の精製により除去する必要がある。しかしながら、リン脂質を残したままの粗原油に対して、油脂の精製で行われている高温、高真空(100〜1000Pa程度)の脱臭処理を行うと、油中のリン脂質、溶存している気体、水分などの影響により、処理直後に激しい発泡が起こり、真空系への油が流入するため、このような方法は工業的には行われていない。この現象は、特にリン脂質を0.1%以上含んだ油を脱臭処理する場合に顕著である。
以上のように、通常は、先ず、粗原油から脱ガム処理によりリン脂質を除去した後に、脱色、脱臭等の精製処理を行っており、脱ガム処理を行わず、リン脂質を残したままで粗原油を精製して、食用に適する油脂を製造することは出来なかった。
本発明の課題は、粗原油に含まれるリン脂質を残したまま風味等が良好な食用油脂を得ること及びその油脂を利用した機能性油脂や油脂加工食品を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねたところ、粗原油に対して特定の精製手段を採用すると、粗原油中にリン脂質が存在しても、生起するはずの発泡が生起せずに、粗原油中のリン脂質を残したまま風味等が良好な食用油脂が得られることを知り、更に研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明から構成されるものである。
1 粗原油に対して、脱ガム処理を施さずに、減圧下で脱気・脱水処理による精製手段を施したことを特徴とするリン脂質含有油脂。
2 減圧下で実施される脱気・脱水処理による精製手段が、水蒸気蒸留装置を用いて、40〜140℃の温度に加熱後、発泡抑制可能な減圧速度で5000Pa以下まで減圧するものであり、該脱気・脱水処理に引き続いて、同処理圧以下の減圧下で、水蒸気の吹き込みを行う水蒸気蒸留による脱臭処理を行うことを特徴とする上記1記載のリン脂質含有油脂。
3 精製手段として、更に吸着処理を施した上記2記載のリン脂質含有油脂。
4 減圧下で実施される脱気・脱水処理による精製手段が、薄膜真空乾燥処理である上記1記載のリン脂質含有油脂。
5 薄膜真空乾燥処理が、20〜140℃で行われるものである上記4記載のリン脂質含有油脂。
6 薄膜真空乾燥処理が、処理前に水を添加するものである上記4又は5記載のリン脂質含有油脂。
7 精製手段として、更に吸着処理及び/又は脱臭処理を施した上記1又は4〜6の何れかに記載のリン脂質含有油脂。
8 吸着処理が、シリカゲル、活性炭、活性白土、イオン交換樹脂の何れか一種類以上からなる吸着剤を0.01〜5重量%添加して行われる上記3又は7記載のリン脂質含有油脂。
9 脱臭処理が、20〜140℃で水蒸気蒸留を行うことを特徴とする上記7記載のリン脂質含有油脂。
10 上記1〜9の何れかに記載のリン脂質含有油脂を含有することを特徴とする機能性油脂。
11 上記1〜9の何れかに記載のリン脂質含有油脂を用いて製造された油脂加工食品。
本発明のリン脂質含有油脂は、粗原油に対して、脱ガム処理を施さずに、薄膜真空乾燥処理等の減圧下での脱気・脱水処理による精製手段を施すことにより、初めて得ることができた画期的な食用油脂である。
本発明のリン脂質含有油脂は、風味、色相、乳化性、剥離性などに優れた特性を有するので、特に、マーガリン、クリーム、マヨネーズやドレッシングなどの油脂加工食品、炒め油、炊飯油やかけ油などの機能性油脂等において、極めて使用価値が高い天然油脂である。
本発明は、以下の知見に基づいてなされたものである。
(1)リン脂質を残したままの粗原油に対して、油の精製で行われている高温、高真空の脱臭処理等を行うと、油中のリン脂質、溶存している気体、水分などの影響により、処理直後に激しい発泡が起こり、真空系へ油が流入するため、粗原油中にリン脂質を残したまま、脱臭処理を行うようなことは行われていない。
(2)従って、先ず、粗原油から脱ガム処理によりリン脂質を除去した後に、脱臭精製処理を行っており、特に、リン脂質を0.1%以上含んだ油を脱臭処理すると発泡が顕著であるので、このような油に対しては、脱ガム処理によるリン脂質の除去が不可欠であった。
(3)ところが、従来の高温、高真空の脱臭精製処理に代えて、薄膜真空乾燥処理等の脱気・脱水処理を採用すると、粗原油中のリン脂質を分離せず、そのまま存在していても、従来のように、発泡は生起せず、粗原油中のリン脂質がそのまま存在するところの、リン脂質を含有する高品質の食用油脂が得られることをつきとめた。
何れにしても、従来では、いったん、粗原油から脱ガム処理によりリン脂質を分離して得られた精製油脂に、分離調製されたレシチン等の乳化剤を添加して、マーガリン、クリーム、マヨネーズ、ドレッシング等の油脂加工食品や、炒め油、炊飯油、かけ油等の機能性油脂を製造していたが、本発明では、このような不経済で面倒な換作を行わなくても、従来のマーガリン、クリーム、マヨネーズ、ドレッシング等の油脂加工食品や、炒め油、炊飯油、かけ油等の機能性油脂に遜色のないものを得ることが出来るので、その経済的な効果は非常に大きい。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のリン脂質含有油脂は、粗原油に対して、脱ガム処理を施さずに、薄膜真空乾燥処理等の脱気・脱水処理による精製手段を必須とし、必要により、その他の精製手段を施すことにより得ることができる。
そこで、本油脂を得るための、粗原油、薄膜真空乾燥処理等の脱気・脱水処理による精製手段や本油脂の用途等について、説明する。
(1)粗原油
粗原油は、油糧原料から圧搾した油、もしくは溶剤抽出して得られる油であり、これらを単独もしくは併用した方法が利用されている。
圧搾は、通常、エクスペラーと称する圧搾機により種子、果肉、胚芽等の原料に機械的圧力を加えて油を搾り取る方法である。通常大豆や菜種ではリン脂質含量が約0.1〜1.5%の粗原油が得られる。
溶剤抽出は、通常、ヘキサンなどの有機溶剤により抽出し、溶剤を除去して油を得る方法である。通常大豆や菜種ではリン脂質含量が約1.5〜3.0%の粗原油が得られる。
油糧原料としては、動物性や植物性のものがあるが、植物性のものとしては、大豆、菜種、亜麻仁、ヒマワリ、紅花、綿実、胡麻、アーモンド、米糠、トウモロコシ、パーム、ピーナツ等が挙げられる。
(2)脱気・脱水処理
脱気・脱水処理は、以下の水蒸気蒸留装置又は薄膜真空乾燥装置を用いる方法などによって行われる。
本発明の減圧下の脱気・脱水処理を採用するならば、粗原油中にリン脂質が存在しても、発泡の発生は少なくなり、粗原油の脱ガム処理なしの、直接精製処理による、リン脂質を含有する食用油脂を得ることができる。
1)水蒸気蒸留装置を用いる方法
リン脂質を含む粗原油を精製するに当たり、水蒸気蒸留装置を用いて、通常の減圧下での水蒸気の吹込み処理を行うと、極めて激しい発泡を生じ、脱気・脱水処理は不可能である。しかし、水蒸気の吹込みを行わずに、加熱後、発泡が生起しない減圧速度で、5000Pa以下に減圧するという手段を用いると、発泡の発生は少なく、目的とする脱気・脱水処理を行うことが可能となる。そして、このような減圧下の脱気・脱水処理では、脱臭効果は期待できないが、該処理に引き続いて、1000Pa以下の減圧下で水蒸気蒸留処理を行えば、脱臭精製が可能となる。
本発明の水蒸気蒸留装置を用いる脱気・脱水処理は、40〜140℃、好ましくは60〜120℃の処理温度に加熱した後、発泡が防止可能な減圧速度である、1000〜5000Pa/分の減圧速度でもって、5000Pa以下まで減圧を行うのがよい。
脱気・脱水処理の処理温度が150℃以上であると、リン脂質が重合して褐色化し、更に乳化機能も低下してしまう。また、真空度が5000Paより高いと、脱気・脱水処理が不十分となり、水蒸気の吹き込みを開始した際に、著しい発泡を生じてしまう。
発泡抑制手段として、更に、減圧下で発泡した泡を物理的に破壊する方法を組み合せてもよい。発泡した泡を物理的に破壊する方法としては、水蒸気蒸留装置内に、発生した泡が接触し得る場所に設置された固定式又は駆動式の中空構造物による泡の消泡作用を利用する方法などがある。駆動式の中空構造物としては、例えば、回転羽根式の消泡装置等が挙げられる。
2)薄膜乾燥処理装置を用いる方法
本発明の薄膜真空乾燥装置を用いる方法を採用すると、発泡性の強い、リン脂質を含む粗原油においても、発泡が生起しないため、粗原油の脱ガム処理なしの、直接精製処理が可能になり、リン脂質を含有する食用油脂を得ることができる。
薄膜真空乾燥装置は、流下型、かきとり型、遠心型などがあるが、発泡性の強い液体を高真空で脱気・脱水処理が行えるものであるならば、その種類は問わない。
例えば、Thin Film Evavorator(Luwa社製)、Wiped Film Evavorator(同社製)、エバポール((株)大川原製作所製)などを用いることができる。
本操作によると、リン脂質を残存したまま、油中の水分、溶存する気体を除去することが可能である。
薄膜真空乾燥処理の真空度は、15000Pa以下、好ましくは1500Pa以下がよく、処理温度は、20〜140℃で行うのがよい。リン脂質を多く含む油脂を加熱処理する際は、真空下においても、150℃以上であると、リン脂質が重合して褐色化し、更に乳化機能も低下するので、望ましくない。
本発明では、脱気・脱水処理のみでも、油脂の脱臭を行うことと同様な効果を得ることができるが、該処理前に油に、水を添加して処理すると好結果が得られる。これは、脱臭処理と同様な水蒸気蒸留効果が得られるためと考えられる。水の添加量は、脱気・脱水処理工程で充分除去できる量で、油に対して0.1〜5重量%を添加して処理するのがよい。
(3)その他の精製法
より高品質な製品を得たい場合には、吸着処理や脱臭処理等を併用すればよい。
1)吸着処理
吸着処理は、リン脂質を含有する粗原油を、そのまま吸着剤で処理することにより行うことができる。
吸着剤としては、活性白土、活性炭、シリカゲル、イオン交換樹脂などが使用可能であるが、好ましくはシリカゲルが良い。
本処理方法は油脂の脱色と同様に行っても良いが、この際、強い真空状態にすると発泡が起こるため、10000Pa〜常圧で行うのが好ましい。
吸着剤の添加量は、油に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%添加するのがよい。吸着剤量が少ないと、風味改善効果が弱く、また多いと、吸着剤由来の風味が油脂に残留し、リン脂質を損失するとともに、ろ過等による吸着剤の除去が困難となる。
また、吸着処理温度は20〜140℃、処理時間は1〜60分で行うのが良い。
2)脱臭処理
本発明の脱気・脱水処理後、油脂の精製工程で行われている、脱臭処理を行うのが良い。
その場合、脱気・脱水処理工程と脱臭工程は真空状態を保ったまま、連続で行う必要がある。これは、真空を開放すると、油脂中に気体が溶け込み、発泡の原因となるからである。
脱臭処理は、油脂の脱臭で利用される脱臭装置が使用できる。通常では、100〜1000Pa 程度の減圧下で水蒸気を吹き込み(通常、油の量に対して約2〜3重量%)、揮発性有臭成分を除去する。温度は、20〜140℃、好ましくは80〜130℃が良い。また、時間は、脱臭温度に到達してから5〜180分、好ましくは30〜90分が良い。
なお、脱気・脱水処理として、水蒸気蒸留装置内で発泡を抑制する手段により実施され
る処理を採用した場合は、脱気・脱水処理に引き続き、水蒸気の吹き込みを開始して、水蒸気蒸留による精製処理が実施されるため、別途脱臭処理を組み合せる必要はない。
(4)用途
本発明のリン脂質含有油脂は、風味良好であって、リン脂質も粗原油中の80%以上が残留し、充分な物理的機能を有しているため、機能性油脂や油脂加工食品用の油脂原料として、最適である。
例えば、本油脂は、炒め物用や炊飯用等に使用する機能性油脂として、またマーガリン、クリーム、ドレッシング、マヨネーズ等の油脂加工食品用の油脂原料等として、多用途に使用可能である。
(1)リン脂質を含む油は、発泡性を有するため、従来では、いったん、粗原油から脱ガム処理によりリン脂質を分離した後、精製処理を行って精製油脂を得、該精製油脂に、レシチン等の乳化剤を添加して、機能性油脂や油脂加工食品を製造していたが、本発明では、このような不経済で面倒な操作を行わなくても、従来の機能性油脂や油脂加工食品に遜色のないものを得ることが出来るので、その経済的な効果は非常に大である。
(2)本発明のリン脂質含有油脂は、風味、色相、乳化性、剥離性等に優れた特性を有するので、炒め物用や炊飯用、麺等のほぐし用等の機能性油脂に利用でき、またマーガリン、クリーム、ドレッシング、マヨネーズなどの油脂加工食品用の油脂原料などとして、その使用価値が極めて高い。
以下、実施例等を挙げて本発明を更に詳細に鋭明するが、本発明はこれらのものに限定されない。なお、「%」は、特に断らない限り、「重量%」を意味する。
(1)油脂の製造
(実施例1)
大豆粗原油(溶剤抽出物:リン脂質含量2.4%)を水蒸気蒸留装置内で100℃に加熱後、1500Pa/分の減圧速度で1000Pa まで減圧を行い、10分間の脱気・脱水処理を行い、油脂中の水分および溶存気体を除去した。次いで、水蒸気の吹き込み(蒸気吹き込み量2.0重量%)を開始して、1時間水蒸気蒸留による脱臭処理を行い、目的とするリン脂質含有油脂(リン脂質含量2.3%)を得た。
(実施例2)
実施例1において、水蒸気蒸留装置内での脱気・脱水処理前に、大豆粗原油に1重量%のシリカゲル(サイロピュート303:富士シリシア化学(株)製)を投入し、80℃、15000Pa 、15分間の吸着処理を行う以外は、実施例1と同様に行って、目的とするリン脂質含有油脂(リン脂質含量2.1%)を得た。
(実施例3)
大豆粗原油(溶剤抽出物:リン脂質含量2.4%)に、最終品温が100℃になるようエバポール((株)大川原製作所製)を用いた薄膜真空乾燥機による脱気・脱水処理を行い、油脂中の水分および溶存気体を除去し、目的とするリン脂質含有油脂(リン脂質含量2.3%)を得た。
(実施例4)
実施例3のおいて、薄膜真空乾燥機による脱気・脱水処理を、1重量%の蒸留水を添加した後に行う以外は、実施例3と同様に行って、目的とするリン脂質含有油脂(リン脂質含量2.3%)を得た。
(実施例5)
実施例3において、薄膜真空乾燥機による脱気・脱水処理を行う前に、大豆粗原油に、1重量%のシリカゲル(サイロピュート303:富士シリシア化学(株)製)を投入し、80℃、15000Pa 、15分間の吸着処理を行う以外は、実施例3と同様に行って、目的とするリン脂質含有油脂(リン脂質含量2.1%)を得た。
(実施例6)
実施例3において、薄膜真空乾燥機による脱気・脱水処理を行う前に、大豆粗原油に、1重量%のシリカゲルを投入し、80℃、15000Pa 、15分間の吸着処理の後、ろ過を行ってシリカゲルを除去し、次いで、1重量%の蒸留水を添加する処理を行う以外は、実施例3と同様に行って、目的とするリン脂質含有油脂(リン脂質含量2.1%)を得た。
(実施例7)
実施例3において、薄膜真空乾燥機による脱気・脱水処理を行った後、100℃、400Pa 、60分間の脱臭処理(蒸気吹き込み量2.0重量%)を行う以外は、実施例3と同様に行って、目的とするリン脂質含有油脂(リン脂質含量2.3%)を得た。
(実施例8)
大豆粗原油(溶剤抽出物:リン脂質含量2.4%)に、1重量%の蒸留水を添加した後、最終品温が100℃になるよう薄膜真空乾燥機による脱気・脱水処理を行い、油脂中の水分および溶存気体を除去した。次いで、100℃、400Pa 、60分間の脱臭処理(蒸気吹き込み量2.0重量%)を行い、目的とするリン脂質含有油脂(リン脂質含量2.3%)を得た。
(実施例9)
大豆粗原油(溶剤抽出物:リン脂質食量2.4%)に、1重量%のシリカゲル(サイロピュート303:富士シリシア化学(株)製)を投入し、80℃、15000Pa 、15分間の吸着処理の後、ろ過を行ってシリカゲルを除去した。次に、最終品温が100℃になるよう薄膜真空乾燥機による脱気・脱水処理を行い、油脂中の水分および溶存気体を除去した。次いで、100℃、400Pa 、60分間の脱臭処理(蒸気吹き込み量2.0重量%)を行い、目的とするリン脂質含有油脂(リン脂質含量2.1%)を得た。
(実施例10)
大豆粗原油(溶剤抽出物:リン脂質含量2.4%)に、1重量%のシリカゲル(サイロピュート303:富士シリシア化学(株)製)を投入し、80℃、15000Pa 、15分間の吸着処理の後、ろ過を行ってシリカゲルを除去した。これに、1重量%の蒸留水を添加した後、最終品温が100℃になるよう薄膜真空乾燥機による脱気・脱水処理を行い、油脂中の水分および溶存気体を除去した。次いで、連続的に100℃、400Pa 、60分間の脱臭処理(蒸気吹き込み量2.0重量%)を行い、目的とするリン脂質含有油脂(リン脂質含量2.1%)を得た。
(実施例11)
大豆粗原油(圧搾物:リン脂質0.6%)に、1重量%のシリカゲル(サイロピュート303:富士シリシア化学(株)製)を投入し、80℃、15000Pa 、15分間の吸着処理の後、ろ過を行ってシリカゲルを除去した。これに、1重量%の蒸留水を添加した後、最終品温が100℃になるよう薄膜真空乾燥機による脱気・脱水処理を行い、油脂中の水分および溶存気体を除去した。次いで、連続的に100℃、400Pa 、60分間の脱臭処理(蒸気吹き込み量2.0重量%)を行い、目的とするリン脂質含有油脂(リン脂質含量0.6%)を得た。
(比較例1)
通常の精製工程を経て製造した精製大豆油(昭和大豆サラダ油(リン脂質含量0%):昭和産業(株)製)。
(比較例2)
比較例1の精製大豆油に、実施例10の油脂中に存在するリン脂質と同量のレシチン(昭和レシチン:昭和産業(株)製)を添加した油脂(リン脂質含量2.1%)。
(比較例3)
大豆粗原油(溶剤抽出:リン脂質含量2.4%)に、実施例2、5等で行った吸着処理のみを行った油脂(リン脂質含量2.1%)。
(比較例4)
大豆粗原油(溶剤抽出:リン脂質含量2.4%)に、実施例7等で行った脱臭処理のみを行ったが、発泡のため、脱臭処理は不可能であった。
(比較例5)
大豆粗原油(溶剤抽出:リン脂質含量2.4%)。
(2)油脂製品の風味
実施例1〜11及び比較例1〜5の油脂製品の風味について、試験した。
(評価基準)
10段階評価で行い、4以上を可食範囲とした。
試験結果は、表1に示す。
Figure 2006121990
上記の試験で、特に、風味の良いものについて(実施例2、10、比較例1、2)、蛍光灯照射下に40時間放置した後、風味を比較した。又、過酸化物価(POV)を測定し、酸化安定性を比較した。
試験結果は、表2に示す。
Figure 2006121990
(3)油脂製品の乳化性、炒め性、炊飯性
実施例1〜11及び比較例1〜5の油脂製品の乳化性、炒め性、炊飯性等を確認するため、以下の乳化試験、炒め試験、炊飯試験を行った。
<乳化試験>
実施例及び比較例の油脂の乳化性を確認するため、油脂:水=7:3で混合し、一定時間よく攪拌した後、30分間静置し、乳化状態を観察した。
<炒め試験>
実施例及び比較例の油脂の炒め調理時の剥離機能について評価するため、冷凍炒飯に対して1%の油脂を添加して、調理した際のフライパンへの米飯付着状態を観察した。
<炊飯試験>
実施例及び比較例の油脂の炊飯調理時の機能について評価するため、生米に対して1%の油脂を添加して、炊飯した際の水への分散性および米飯の釜離れ、へら切れについて、以下の基準によって観察した。
(評価基準)
◎:良好
○:やや良好
△:やや悪い
×:悪い
実施例1〜11及び比較例1〜5の試験結果を、無添加の場合とともに、表3に示す。
Figure 2006121990
表1〜3の結果から、以下のことが解る。
1)リン脂質を含んだままの粗原油に対し、従来の脱臭処理を行った場合、発泡が生起し、該処理は不可能となる。
2)該粗原油に対して、水蒸気蒸留装置を用いて、先ず、加熱後、制御された減圧速度による減圧下で脱気・脱水処理し、次いで、水蒸気の吹き込みを行う水蒸気蒸留による精製処理を実施すると、発泡の発生が少なく、従来の脱臭処理と同様の処理が行える。
3)薄膜真空乾燥装置による脱気・脱水処理の場合、発泡が生起せず、従来の脱臭処理も行うことができる。
4)粗原油に水を添加した後、薄膜真空乾燥装置による脱気・脱水処理を行うと、より一層精製効果が向上する。
5)本発明の脱気・脱水処理を行えば、特に、従来のような吸着処理や脱臭処理を行わなくても、本処理だけで、実用上、問題のない品質のものが得られる。
6)本発明の脱気・脱水処理に加え、更に、吸着処理や脱臭処理を行えば、より一層高品質のものが得られるが、特に、吸着処理及び脱臭処理を併用すると、従来の精製油にレシチンを添加した油脂より、風味安定性、酸化安定性に優れる、高品質な製品を得ることが出来る。
7)本発明で得られた高い品質は、劣化し難い特性を有する。
(4)薄膜真空乾燥装置による脱気・脱水処理条件
1)温度
薄膜真空乾燥装置による脱気・脱水処理の温度の影響を調べるために、以下の試験を行った。
薄膜真空乾燥装置による脱気・脱水処理の最終品温が100℃である実施例3に対し、20℃、50℃としたものを、それぞれ、実施例12、13とし、また、150℃としたものを比較例6とし、各例の油脂の風味と色相について、以下の評価基準により調べた(以下の表5も同じ)。
(評価基準)
◎◎:良好
◎:やや良好
○:普通
△:やや劣悪
×:劣悪
試験結果は、実施例3の油脂を基準として、表4に示す。
Figure 2006121990

上記の表4の結果から、最終品温を高くするほど風味は良化するが 、150℃以上で は色相が悪化(褐色化)することが解る 。
2)水添加
薄膜真空乾燥装置による脱気・脱水処理前の水添加の影響を調べるために、以下の試験を行った。
薄膜真空乾燥装置による脱気・脱水処理前の蒸留水添加量が1重量%である実施例4に対し、5重量%としたものを実施例14とし、10重量%としたものを比較例7とし、各例の油脂の風味と色相について調べた。
試験結果は、実施例4の油脂を基準として、表5に示す。
Figure 2006121990

表5の結果から、水の添加により風味が良化するが、添加量が多いと脱水が困難となるため、色相が悪化(濁り)することが解る。
(5)吸着処理
1)吸着剤の種類
吸着剤の種類の影響を調べるために、以下の試験を行った。
吸着処理時の吸着剤がシリカゲルである実施例10に対し、活性炭(活性炭素:和光純薬工業(株)製)、活性白土(活性白土V2:水澤化学工業(株)製)、イオン交換樹脂(ダイヤイオンHP2MG:三菱化学(株)製)としたものを、それぞれ、実施例15〜17とし、各油脂の風味について、以下の評価基準により調べた(以下の表7〜10も同じ)。
(評価基準)
◎◎:非常に良好
◎:良好
○:普通
△:やや劣悪
×:劣悪
試験結果は、実施例10の油脂を基準として、表6に示す。
Figure 2006121990

表6の結果から、吸着剤としては、シリカゲルを用いた場合に、最も好結果を得られることが解る。
2)吸着剤の使用量
吸着剤の使用量の影響を調べるために、以下の試験を行った。
吸着処理時の吸着剤添加量が1重量%(対油)である実施例10に対し、3重量%、5重量%としたものをそれぞれ実施例18、19とし、10重量%としたものを比較例8とし、各油脂製品の風味と色相を調べた。
試験結果は、表7に示す。
Figure 2006121990

表7の結果から、吸着剤の添加量は5重量%以下が好ましく、10重量%以上になると、風味に影響を与えるほか、リン脂質の残存量が減少することが解る。そればかりでなく、処理後の吸着剤除去が困難となる。
3)吸着処理の温度
吸着処理の温度の影響を調べるために、以下の試験を行った。
吸着処理時の処理温度が80℃である実施例10に対し、処理温度を20℃、120℃としたものを、それぞれ、実施例20、21とし、150℃としたものを比較例9とし、各油脂製品の風味と色相を調べた。
試験結果は、表8に示す。
Figure 2006121990

表8の結果から処理温度は20〜120℃では問題ないが、150℃以上となると、色相が悪化(褐色化)することが解る。
4)吸着処理の圧力
吸着処理の圧力の影響を調べるために、以下の試験を行った。
吸着処理時の気圧が15000Paである実施例10に対し、常圧、30000Paとしたものを、それぞれ実施例22、23とし、1500Paとしたものを比較例10とし、各油脂製品の風味と色相を調べた。
試験結果は、表9に示す。
Figure 2006121990

表9の結果から、吸着処理時の気圧が、10000〜常圧では問題ないが、5000Pa以下では、発泡のために吸着処理を行うことができないことが解る。
(6)脱臭処理
脱臭処理の影響を調べるために、以下の試験を行った。
脱臭処理時の脱臭温度が100℃である実施例10に対し、脱臭温度を20℃、50℃、80℃、120℃としたものを、それぞれ実施例24〜27とし、150℃としたものを比較例11とし、各油脂製品の風味と色相を調べた。
試験結果は、表10に示す。
Figure 2006121990

表10の結果から、脱臭温度が、20〜120℃であれば問題がなく、高いほど風味が良化するが、150℃以上で色相が悪化(褐色化)することが解る。
(7)油脂加工食品
マーガリン、ホイップクリーム、マヨネーズ、ドレッシング、チョコレートでの使用効果を調べるため、以下の試験を行った。
(実施例28、29)マーガリンの製造
下記の配合、工程でマーガリンを作成し、評価した。試験結果を表14に示す。
(配合)
Figure 2006121990

(工程)
60℃に加温した上記油脂組成物に対して、乳化タンクにおいて水相部を徐々に加え、60℃で15分間攪拌乳化を行った後、この乳化液を15℃に急冷捏和することによりマーガリンを得た。また、10℃急冷捏和を行った後、レストチューブを通し、シート成型器にてシート状折り込み用マーガリンを得た。マーガリン製造時の作業性、マーガリンの可塑性及び酸化安定性について、以下の基準により評価した。結果を表14に示す。
(製パン試験)
上記の配合、工程で得られた通常マーガリン、シート状折込マーガリンについて、下記条件の製パン試験を行い、製パン特性及び出来たパンの風味について、以下の基準により評価した。試験結果を表14に示す。
(評価基準)
◎:良好
○:やや良好
△:やや不良
×:不良
1)通常マーガリンの製パン試験
(配合)
Figure 2006121990

(工程)
上記の中種生地配合の原料をボールに入れ、低速2分、中速2分、捏上げ温度25℃で混合したものを、4時間発酵を行った(中種生地)。
続いて、本捏生地配合のマーガリン以外の原料もボールに入れ、低速2分、中速2分、高速3分混合後、マーガリンを添加し、更に低速2分、中速2分、高速3分で攪拌した。出来た生地は、20分のフロアータイム、20分のベンチタイムを取った後、湿度80%、温度45℃で60分ホイロ時間をとった後、215℃25分リールオーブンで焼成を行った。
2)シート状折り込みマーガリンの製パン試験
(生地配合)
Figure 2006121990

(工程)
上記配合の原料をボールに入れ、ビータを用い縦型ミキサーにて低速、中速にて各原料が均一に混合されるまで混捏、生地を作製した。その時の捏ね上げ温度は、25〜26℃になるように調整した。フロアータイム30分の後、−5℃の冷蔵庫に保存した。この生地を冷蔵庫から取り出して生地温度が0℃になった時点で、予め20℃に一晩温調されたシート状折り込みマーガリンを各500gロールインした。ロールインは四つ折り1回、三つ折り2回行った。5℃で一晩保存した後、シート状に延ばした生地を底辺12.5cm、高さ15cmの二等辺三角形にカットし、丸めて成型し、35℃、湿度70%のホイロにて発酵後、上火230℃、下火210℃のオーブンにて18分間焼成を行った。
Figure 2006121990

表14の通り、通常マーガリン、シート状折込マーガリンとともに、作成時に離水などの問題が生じることなく、可塑性の非常に優れた良質なマーガリンであり、酸化安定性にも優れていた。また、このマーガリンを用いて行った製パン試験においても、極めて良好な製パン特性を示し、出来たパンの風味はコクもあり良好であった。
(実施例30、31) ホイップクリームの製造
下記の配合、工程でホイップクリームを作成し、クリーム特性及び風味について、以下の基準により評価した。試験結果を表16に示す。
(評価基準)
◎:良好
○:やや良好
△:やや不良
×:不良
(配合)
Figure 2006121990

(工程)
上記配合の組成物を、65℃に保持しながら予備乳化し、この混合物をホモジナイザーに通し、1回目8MPa、2回目2MPaの圧力で均質化した後、95℃、15秒間殺菌処理を行い、さらにプレート式冷却機を用いて5℃まで冷却した後、5℃の恒温器中に24時間エージングすることによりホイップクリームを得た。
Figure 2006121990

表16の通り、得られたホイップクリームのクリーム特性は非常に良好であり、大豆レシチンを用いた場合より平均粒径(堀場製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置「LA−500」により測定)が小さくなっていたことから、保存安定性が向上することが期待される。
(実施例32、33)マヨネーズの製造
下記の配合、工程でマヨネーズ様食品を作成し、風味について以下の基準により評価した。また室温および5℃下で3ケ月保存し、風味評価及び性状観察(分離発生の有無など)も同様に行った。試験結果を表18に示す。
(評価基準)
[風味]
◎:良好
○:やや良好
△:やや不良
×:不良
[性状観察]
◎:分離など無く良好
×:分離発生し不良
(配合)
Figure 2006121990

(工程)
菜種油32部と実施例2又は10で得られたリン脂質含有油脂34部からなる油脂組成物を、水相に対して少しずつ加えながら15℃〜20℃下で攪拌し予備乳化した。次いで、コロイドミルを用いて仕上げ乳化を行い、マヨネーズ様食品を得た。
実施例2又は10で得られたリン脂質含有油脂の代わりに、比較例5の大豆粗原油を使用して、同様に製造して得られたマヨネーズ様食品を比較例16とした。
菜種油32部と実施例2又は10で得られたリン脂質含有油脂34部からなる油脂組成物の代わりに、菜種油66部と卵黄7部を使用して、同様に製造して得られたマヨネーズを参考例1とした。
Figure 2006121990

表18の通り、得られたマヨネーズ様食品は、大豆由来の良好なこく味、口当たりを有しており、室温および5℃下で3ヶ月保存したが、風味の劣化や水層油層の分離は特に認められなかった。
(実施例34、35)ドレッシングの製造
下記の配合でドレッシングを作成し、風味及び使用時の撹拌による乳化状態の安定性について、以下の基準により評価した。試験結果を表20に示す。
(評価基準)
◎:良好
○:やや良好
△:やや不良
×:不良
(配合)
Figure 2006121990
Figure 2006121990

表20の通り、得られたドレッシングは大豆由来の良好なこく味、口当たりを有していた。また、使用前に攪拌する際に、乳化状態が長く安定的に継続されるため、ドレッシングとして非常に優れた特性を有することが確認された。
(実施例36、37)チョコレートの製造
下記の配合、工程でチョコレートを作成し、作製時の作業性、製品性能及び風味について以下の基準により評価した。試験結果を表22に示す。
(評価基準)
◎:良好
○:やや良好
△:やや不良
×:不良
(配合)
Figure 2006121990

(工程)
チョコレートは常法にしたがってチョコレート生地を作成し、これをテンパリング処理してモールドへ充填し、クーリング固化した後、デモールドして板チョコレートとした。
Figure 2006121990

表22の通り、この板チョコレートの作成時の作業性、および得られた板チョコレートの製品性能、風味は、極めて良好であった。
本発明は、リン脂質の含有量が高い粗原油、例えば、大豆粗原油から高品質の機能性油脂を入手し得る。


Claims (11)

  1. 粗原油に対して、脱ガム処理を施さずに、減圧下で脱気・脱水処理による精製手段を施したことを特徴とするリン脂質含有油脂。
  2. 減圧下で実施される脱気・脱水処理による精製手段が、水蒸気蒸留装置を用いて、40〜140℃の温度に加熱後、発泡抑制可能な減圧速度で5000Pa以下まで減圧するものであり、該脱気・脱水処理に引き続いて、同処理圧以下の減圧下で、水蒸気の吹き込みを行う水蒸気蒸留による脱臭処理を行うことを特徴とする請求項1記載のリン脂質含有油脂。
  3. 精製手段として、更に吸着処理を施した請求項2記載のリン脂質含有油脂。
  4. 減圧下で実施される脱気・脱水処理による精製手段が、薄膜真空乾燥処理である請求項1記載のリン脂質含有油脂。
  5. 薄膜真空乾燥処理が、20〜140℃で行われるものである請求項4記載のリン脂質含有油脂。
  6. 薄膜真空乾燥処理が、処理前に水を添加するものである請求項4又は5記載のリン脂質含有油脂。
  7. 精製手段として、更に吸着処理及び/又は脱臭処理を施した請求項1又は4〜6の何れかに記載のリン脂質含有油脂。
  8. 吸着処理が、シリカゲル、活性炭、活性白土、イオン交換樹脂の何れか一種類以上からなる吸着剤を0.01〜5重量%添加して行われる請求項3又は7記載のリン脂質含有油脂。
  9. 脱臭処理が、20〜140℃で水蒸気蒸留を行うことを特徴とする請求項7記載のリン脂質含有油脂。
  10. 請求項1〜9の何れかに記載のリン脂質含有油脂を含有することを特徴とする機能性油脂。
  11. 請求項1〜9の何れかに記載のリン脂質含有油脂を用いて製造された油脂加工食品。


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