JP2006115712A - 改良した好気性微生物及び嫌気性微生物の複合大量培養法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 EMを構成する性質の異なる各種微生物の複合大量培養において、培養生産される各微生物の菌数を増大する。
【解決手段】 ブリックス糖度70〜80%を有し、ショ糖30〜70g/100g、カルシウム0.6〜2.0g/100g、マグネシウム200〜400mg/100g、カリウム1.2〜3.0g/100g、リン20〜40mg/100g、ナトリウム15〜30mg/100g、鉄9〜20mg/100gの組成を有する糖蜜を使用する
【選択図】 なし
【解決手段】 ブリックス糖度70〜80%を有し、ショ糖30〜70g/100g、カルシウム0.6〜2.0g/100g、マグネシウム200〜400mg/100g、カリウム1.2〜3.0g/100g、リン20〜40mg/100g、ナトリウム15〜30mg/100g、鉄9〜20mg/100gの組成を有する糖蜜を使用する
【選択図】 なし
Description
本発明は、好気性微生物及び嫌気性微生物を複合して含有する混合液を大量培養する方法の改良に係る。
現在、農業、畜産等の各種の分野において、「EM」と称される有効微生物群が広く使用されている。使用目的として、例えば、農業の分野では、土壌改良、病害虫抑制、堆肥の調製等、畜産の分野では、飼料、脱臭、畜産廃棄物の浄化、あるいは、環境の分野では、下水及び汚水の処理、水の浄化、生ごみの処理、家庭内の除臭等が知られている。
このようなEMは、細菌、酵母、糸状菌等を含み、好気性及び嫌気性の特性の異なる各種微生物の複合混合物である。
従来、EM製品の製造に当たっては、EMを構成する微生物の性質が異なるため、大量培養法が利用されるものの、個々の微生物を、各微生物に好適な培養条件下において別個に培養し、最終的に、それらを混合してEM製品としていた。
その後、発明者らは、好気性微生物及び嫌気性微生物で構成されるEMの培養タンクでの大量培養に当たり、培養条件を適切に制御することにより、好気性微生物及び嫌気性微生物を、同時に、大量に培養できる方法を開発した。
この方法は、好気性微生物及び嫌気性微生物の複合混合液を大量培養する方法であって、培養タンクに除菌した水を満たし、滅菌した糖密を0.05〜0.2%(容量)の割合で添加して培養液を調製し、該培養液を有機酸でpH2.8〜3.5に調整した後、好気性微生物及び嫌気性微生物を複合して含有する混合液を種菌として前記培養液に対して1/50〜1/200の容量比で添加し、有機酸によりpHを2.8〜3.5に維持しながら25〜30℃で培養することを特徴としている。(特許文献1)
特許第2747972号公報
上記の好気性微生物及び嫌気性微生物の複合大量培養法では、培養液の調製に当たり、糖蜜が使用されている。入手可能な市販の糖蜜は、一般的に、表1に示す組成を有している。
表1
従来使用されていた糖蜜の一般的組成
ブリックス糖度 70〜80%(平均 76.0%)
ショ糖 15〜30g/100g(平均23g/100g)
カルシウム 400〜800mg/100g(平均 580mg/100g)
マグネシウム 200〜300mg/100g(平均 220mg/100g)
カリウム 1.2〜2.3g/100g(平均1.5g/100g)
リン 30〜40mg/100g(平均35mg/100g)
ナトリウム 80〜130mg/100g(平均 110mg/100g)
鉄 9〜12mg/100g(平均10mg/100g)
従来使用されていた糖蜜の一般的組成
ブリックス糖度 70〜80%(平均 76.0%)
ショ糖 15〜30g/100g(平均23g/100g)
カルシウム 400〜800mg/100g(平均 580mg/100g)
マグネシウム 200〜300mg/100g(平均 220mg/100g)
カリウム 1.2〜2.3g/100g(平均1.5g/100g)
リン 30〜40mg/100g(平均35mg/100g)
ナトリウム 80〜130mg/100g(平均 110mg/100g)
鉄 9〜12mg/100g(平均10mg/100g)
発明者らは、使用する糖蜜の組成を変更すること、特に、含有されるショ糖の量を約2〜3倍に、かつカルシウムの量を約1.5〜2.5倍に増量すると共に、ナトリウムの量を約1/4〜1/6に減量することによって、実質的に先の特許第2747972号の発明と同様に操作する場合に、得られる培養物において、EMを構成する各種微生物の量が顕著に増大されるとの知見を得た。
従って、本発明の目的は、培養タンクに除菌した水を満たし、滅菌した糖密を0.05〜0.2%(容量)の割合で添加して培養液を調製し、該培養液を有機酸でpH2.8〜3.5に調整した後、好気性微生物及び嫌気性微生物を複合して含有する混合液を種菌として前記培養液に対して1/50〜1/200の容量比で添加し、有機酸によりpHを2.8〜3.5に維持しながら25〜35℃で培養する好気性微生物及び嫌気性微生物の複合大量培養法において、糖蜜として、ブリックス糖度70〜80%を有し、ショ糖30〜70g/100g、カルシウム0.6〜2.0g/100g、マグネシウム200〜400mg/100g、カリウム1.2〜3.0g/100g、リン20〜40mg/100g、ナトリウム15〜30mg/100g、鉄9〜20mg/100gの組成を有する糖蜜を使用することを特徴とする好気性微生物及び嫌気性微生物の複合大量培養法を提供することにある。
本発明の他の目的は、使用する糖蜜が、ブリックス糖度約78%を有し、ショ糖約52g/100g、カルシウム約1.0g/100g、マグネシウム約270mg/100g、カリウム約2.1g/100g、リン約26mg/100g、ナトリウム約23mg/100g、鉄約15mg/100gでなる組成を有する「メラッソ」と称されるブラジル産の糖蜜である好気性微生物及び嫌気性微生物の複合大量培養法を提供することにある。
EMを構成する性質の異なる各種微生物の複合大量培養に当たり、特別の組成を有する糖蜜を使用することによって、培養生産される各微生物の菌数を顕著に(少なくとも約10倍)増大できる。
培養に当たっては培養タンクを使用し、除菌した水を該培養タンクに満たす。水は塩素を含有していないことが必要であり、地下水、精製水等を使用できる。また、培養タンクには水が充満されており、培養は多量の空気等の存在しない嫌気的条件下で行われることになる。
培養タンク内の水に、滅菌した糖密を0.05〜0.2%(容量)、好ましくは0.09〜0.11%(容量)の割合で添加して培養液を調製する。
糖蜜として、一般的に商業的に入手可できる糖蜜と比較して、ショ糖の量を約2〜3倍に、かつカルシウムの量を約1.5〜2.5倍に増量すると共に、ナトリウムの量を約1/4〜1/6に減量した糖蜜を使用する。一般的に使用できる糖蜜は、下記の表2に示す組成を有する。
表2
組成
ブリックス糖度 70〜80%(好ましくは、76〜79%)
ショ糖 30〜70g/100g(好ましくは、45〜60g/100g)
カルシウム 0.6〜2.0g/100g(好ましくは、0.8〜1.2g/100g)
マグネシウム 200〜400mg/100g(好ましくは、240〜300mg/100g)
カリウム 1.2〜3.0g/100g(好ましくは、1.8〜2.2g/100g)
リン 20〜40mg/100g(好ましくは、22〜28mg/100g)
ナトリウム 15〜30mg/100g(好ましくは、20〜28mg/100g)
鉄 9〜20mg/100g(好ましくは、11〜18mg/100g)
組成
ブリックス糖度 70〜80%(好ましくは、76〜79%)
ショ糖 30〜70g/100g(好ましくは、45〜60g/100g)
カルシウム 0.6〜2.0g/100g(好ましくは、0.8〜1.2g/100g)
マグネシウム 200〜400mg/100g(好ましくは、240〜300mg/100g)
カリウム 1.2〜3.0g/100g(好ましくは、1.8〜2.2g/100g)
リン 20〜40mg/100g(好ましくは、22〜28mg/100g)
ナトリウム 15〜30mg/100g(好ましくは、20〜28mg/100g)
鉄 9〜20mg/100g(好ましくは、11〜18mg/100g)
本発明の好適な1具体的によれば、本発明における糖蜜として、ブラジル産の「メラッソ」と称される糖蜜の使用が好ましい。このブラジル産糖蜜「メラッソ」は、次の組成:ブリックス糖度約78%;ショ糖約52g/100g;カルシウム約1.0g/100g;マグネシウム約270mg/100g;カリウム約2.1g/100g;リン約26mg/100g;ナトリウム約23mg/100g;鉄約15mg/100gを有する。
次に、有機酸を使用して培養液のpHを2.8〜3.5、好ましくは3.0〜3.3に調整する。この場合、使用できる有機酸としては、乳酸、クエン酸、酢酸等があり、好ましくは乳酸を使用する。
培養液のpHを調整した後、種菌として好気性微生物及び嫌気性微生物の複合混合液を培養液に対して1/50〜1/200の容量比で添加する。この段階において、有機酸によって培養系のpHを2.8〜3.5、好ましくは3.0〜3.3に調整する。
ついで、25〜35℃、好ましくは27〜32℃において、有機酸によってpHを2.8〜3.5に維持しながら7〜20日間静置培養する。
培養中は、好気性菌が培養液の表面上に凝集するため、培養液を均一化させる程度の撹拌を行う。
培養開始から7〜20日間で各微生物の細胞数はほぼ最大数に達するが、さらに1カ月程度の熟成期間を置くようにしてもよい。
本発明の他の具体例によれば、上記の操作法による培養を1次培養とし、この1次培養終了後、得られた培養液を使用して、1次培養の操作法と同様に、タンクを事前に除菌した後、ショ糖及びカルシウムを増大し、ナトリウムを低減した糖蜜を添加した除菌水と共に、1次培養液をほぼ1:1の容量比でタンクに充填し、有機酸にてpHを2.8〜3.5に調製し、25〜35℃において、14日以上静置培養する。ただし、その間、1日1回2〜3分間程度の撹拌を行なう。
このように、2段階で培養を行うことによって、より安定的かつ大量に培養するできるとの利点が達成される。
次に、実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明はこれに限定されない。
容積200リットルの培養タンクに、除菌フィルターを通過させた地下水196リットルを導入した。次に、オートクレーブにおいて121℃で20分間滅菌処理した市販の糖密「メラッソ」0.6リットルを添加し(水に対する糖密の容量百分率0.3%)、均一になるまで混合して培養液を調製した。
使用した糖蜜「メラッソ」は、ブリックス糖度78.0%を有し、ショ糖52.0g/100g、カルシウム1.0g/100g、マグネシウム268mg/100g、カリウム2.06g/100g、リン22.9mg/100g、ナトリウム22.9mg/100g,鉄14.9mg/100gの組成を有する。
ついで、得られた培養液のpHを45%乳酸水溶液によって3.05〜3.15に調整した。
このようにして得られた培養液に、一般細菌、乳酸菌及び酵母を含む複合混合液3リットルを添加し、全体を均一に撹拌した後、乳酸によってpHを3.05〜3.15に再度調整し、30℃において14日間静置培養を行った。この間、1日に1回、2〜3分間、培養系を均一化させるために撹拌を行った。
得られた培養系に含まれる各種の菌の数を計測した。結果を表3に示す。
表3
微生物の種類 微生物の数(個/ml)
一般細菌 6.2×106
乳酸菌(嫌気性菌) 1.7×107
酵母(好気性菌) 7.0×105
微生物の種類 微生物の数(個/ml)
一般細菌 6.2×106
乳酸菌(嫌気性菌) 1.7×107
酵母(好気性菌) 7.0×105
実施例1で得られた培養系12リットルを1次培養液として使用し、2段階による培養を行った。
容積500リットルの培養タンクに除菌フィルターを通過させた地下水486.5リットルを導入した。
次に、実施例1と同じ組成を有する滅菌したブラジル産糖蜜「メラッソ」1.5リットルを添加し(水に対する糖密の容量百分率0.3%)、均一になるまで混合して培養液を調製した。
次に、実施例1と同じ組成を有する滅菌したブラジル産糖蜜「メラッソ」1.5リットルを添加し(水に対する糖密の容量百分率0.3%)、均一になるまで混合して培養液を調製した。
ついで、得られた培養液のpHを45%乳酸水溶液によって3.05〜3.15に調整した。
このようにして得られた培養液に、上記1次培養系12リットルを添加し、全体を均一に撹拌した後、乳酸によってpHを3.05〜3.15に再度調整し、30℃において14日間静置培養を行った。この間、1日に1回、2〜3分間、培養系を均一化させるために撹拌を行った。
得られた培養系に含まれる各種の菌の数を計測した。結果を表4に示す。
表4
微生物の種類 微生物の数(個/ml)
一般細菌 5.6×106
乳酸菌(嫌気性菌) 4.8×107
酵母(好気性菌) 9.4×105
微生物の種類 微生物の数(個/ml)
一般細菌 5.6×106
乳酸菌(嫌気性菌) 4.8×107
酵母(好気性菌) 9.4×105
次に、本発明と、特許第2747972号に開示された発明とを比較するため、特許第2747972号に記載の発明において使用されている市販の一般的な糖蜜を使用して培養を行った。
糖蜜として、ブリックス糖度76.0%を有し、ショ糖23g/100g、カルシウム580mg/100g、マグネシウム220mg/100g、カリウム1.5g/100g、リン30mg/100g、ナトリウム107mg/100g、鉄10mg/100gを有するものを使用した。
容積1000リットルの培養タンクに除菌フィルターを通過させた地下水980リットルを導入した。次に、オートクレーブにおいて121℃で20分間滅菌処理した前記の市販の糖密2リットルを添加し(水に対する糖密の容量百分率0.2%)、均一になるまで混合して培養液を調製した。
ついで、得られた培養液のpHを45%乳酸水溶液によって3.07〜3.13に調整した。
このようにして得られた培養液に、一般細菌、乳酸菌及び酵母を含む複合混合液20リットルを添加し、全体を均一に撹拌した後、乳酸によってpHを3.07〜3.13に再度調整し、27℃において4週間静置培養を行った。この間、1日に1回、2〜3分間、培養系を均一化させるために撹拌を行った。
得られた培養系に含まれる各種の菌の数を計測した。結果を表5に示す。
表5
微生物の種類 微生物の数(個/ml)
一般細菌 1.7×105
乳酸菌(嫌気性菌) 1.5×105
酵母(好気性菌) 3.8×104
微生物の種類 微生物の数(個/ml)
一般細菌 1.7×105
乳酸菌(嫌気性菌) 1.5×105
酵母(好気性菌) 3.8×104
比較例1で得られた培養系を1次培養液として使用し、2段階による培養を行った。
容積1000リットルの培養タンクに、次に、比較例1と同じ滅菌した糖蜜2リットルを添加し(水に対する糖密の容量百分率0.2%)、均一になるまで混合して培養液を調製した。
ついで、得られた培養液のpHを45%乳酸水溶液によって3.07〜3.13に調整した。
このようにして得られた培養液に、上記1次培養系978リットルを添加し、全体を均一に撹拌した後、乳酸によってpHを3.07〜3.13に再度調整し、27℃において3週間静置培養を行った。この間、1日に1回2〜3分間、培養系を均一化させるために撹拌を行った。
得られた培養系に含まれる各種の菌の数を計測した。結果を表6に示す。
表6
微生物の種類 微生物の数(個/ml)
一般細菌 4.2×105
乳酸菌(嫌気性菌) 7.1×105
酵母(好気性菌) 3.2×104
微生物の種類 微生物の数(個/ml)
一般細菌 4.2×105
乳酸菌(嫌気性菌) 7.1×105
酵母(好気性菌) 3.2×104
本発明の方法によれば、特殊な組成を有する糖蜜、特にブラジル産の糖蜜「メラッソ」を使用することによって、好気性微生物及び嫌気性微生物の性質の異なる微生物で構成される有用微生物群を複合して大量培養できると共に、従来の一般的な糖蜜を使用する場合と比べて、多量の微生物数で培養を実施できるため、EM製品の製造の煩雑さ、コストに関して、従来技術を改良することができる。
Claims (2)
- 培養タンクに除菌した水を満たし、滅菌した糖密を0.05〜0.2%(容量)の割合で添加して培養液を調製し、該培養液を有機酸でpH2.8〜3.5に調整した後、好気性微生物及び嫌気性微生物を複合して含有する混合液を種菌として前記培養液に対して1/50〜1/200の容量比で添加し、有機酸によりpHを2.8〜3.5に維持しながら25〜35℃で培養する好気性微生物及び嫌気性微生物の複合大量培養法において、糖蜜として、ブリックス糖度70〜80%を有し、ショ糖30〜70g/100g、カルシウム0.6〜2.0g/100g、マグネシウム200〜400mg/100g、カリウム1.2〜3.0g/100g、リン20〜40mg/100g、ナトリウム15〜30mg/100g、鉄9〜20mg/100gの組成を有する糖蜜を使用することを特徴とする、好気性微生物及び嫌気性微生物の複合大量培養法。
- 使用する糖蜜が、ブリックス糖度約78%を有し、ショ糖約52g/100g、カルシウム約1.0g/100g、マグネシウム約270mg/100g、カリウム約2.1g/100g、リン約26mg/100g、ナトリウム約23mg/100g、鉄約15mg/100gでなる組成を有する「メラッソ」と称されるブラジル産の糖蜜である、請求項1記載の好気性微生物及び嫌気性微生物の複合大量培養。
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JPH07274942A (ja) * | 1994-04-08 | 1995-10-24 | Mutenka Shokuhin Hanbai Kyodo Kumiai | 好気性微生物及び嫌気性微生物の複合大量培養法 |
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