近年の情報化社会において無線通信はますます重要性を高めている。従来の無線通信では無指向性アンテナが用いられる場合が多いが、同一エリア内で多くの無線通信が使われるようになると、他の無線による電波は所望する電波にとってノイズ源となり、S/Nを低下させて所望する電波の伝送誤り率を増加させる原因となっていた。また、通信品質を保つためには、より高出力で送信する必要があるが、高出力での送信は消費電力を増加させる一因になっていた。
近年、環境問題が重要視され、電波も有限な資源と見なす電波エコロジが提唱されており、電波の周波数や電力を効率良く使用するための指向性制御アンテナが注目されている。指向性制御アンテナを用いると同一エリア内で電波を空間的に分離でき、エリア内での通信容量を飛躍的に向上できるという利点がある。
また、指向性制御アンテナは、ビームの最大放射角方向で無指向性アンテナより利得が大きいため、受信側に用いると受信電力が大きくなりS/Nが改善される。また、干渉波にヌル点を向けると、干渉波の受信強度を小さくでき、同様にS/Nを改善できる。その結果伝送誤り率を向上できる。
一方、指向性制御アンテナを送信側に用いた場合は、最大放射角方向で利得が大きいため、同じ情報を送るためには送信電力が少なくて済み、消費電力の低減が期待できる。
また、通常の伝搬環境はマルチパスフェージング環境であり、フェージングを抑制するためダイバシチー受信が行われる場合があるが、マルチパスフェージングを根本的に解決する方法は伝搬路を最小にすることであり、その点からも指向性制御アンテナは重要である。
指向性アンテナとしては、携帯電話の基地局においてセクタアンテナにより通信路を空間的に分離する方法が従来から採用されている。
しかしながら、セクタアンテナは、ビーム幅を絞ったアンテナを複数本準備し異なる方向へ個々のアンテナを向ける必要があり、アンテナが大型化して携帯端末や無線LANへの導入は困難である。
また、指向性アンテナとしては八木・宇田アンテナが広く知られている。八木・宇田アンテナとは、ダイポールアンテナの前後にダイポールアンテナよりも電気長の短い導波器と、ダイポールアンテナよりも電気長の長い反射器を置いて指向性を付与するものである。
八木・宇田アンテナの原理を2次元の指向性制御アンテナに用いた例としては特開2001−36337号公報(特許文献1)に開示されたものがある。
特許文献1においては、図26に示すように、給電素子100の回りに複数の無給電素子101を配置し、この無給電素子101にキャパシタ102と地板103と導通するスイッチ回路104を並列に設け、該スイッチ回路104を選択的に導通ないし遮断することによって無給電素子を導波器ないし反射器として作用させて指向性を制御するようにしている。
特許文献1に開示されたものは、導波器や反射器を共通化できるためアンテナの占有面積を小さくすることは可能であるが、給電素子100や無給電素子101にモノポールアンテナを用いるためアンテナが立体的になり、携帯端末や無線LAN端末にはやはり採用できない。
指向性を制御する他の方法としては、特開平6−112727号公報(特許文献2)に開示されたものがある。特許文献2に開示された指向性制御構成を図27(a)に、その放射パターンを図27(b)(c)に示す。
特許文献2においては、図27(a)に示すように、誘電体110の裏面に地板111を設け、誘電体110の表面には外周部が地板111と短絡した円環放射導体112を設け、さらに円環放射導体112の内部には地板111と短絡するダイオード113を配置している。
この構成によれば、ダイオード113のON/OFF制御により2つの励振モード(TM110モード(図27(b))とTM210モード(図27(c)))を選択でき、TM110モードとTM210モードを同じ周波数にすると2つの放射パターンの切替えが可能となる。
しかしながら、特許文献2の場合、選択できる放射パターンは2つに限定され、きめ細かい指向性制御は不可能であり、限定的な用途にしか使えない。
また、フェーズドアレイアンテナやアダプティブアレイアンテナのように複数のアンテナからの放射パターンを合成して指向性を制御する方法も提案されている。
しかしながら、フェーズドアレイアンテナではアンテナの数だけ移相器とフロントエンド回路が必要で、移相器を制御する演算回路も必要であることから無線モジュールが複雑化・大型化し、現状ではレーダーとして利用されているに過ぎず、携帯端末や無線LANへの導入は困難である。また、移相器の挿入ロスによって送受信の電力が低下する欠点もある。
一方、アダプティブアンテナは、ベクトル合成するための演算回路およびベクトル合成をベースバンドで行なう場合はアンテナの数だけベースバンド回路やフロントエンド回路が必要であり、またベクトル合成をフロントエンドで行なう場合はアンテナの数だけフロントエンド回路が必要であり、したがって無線モジュールの複雑化・大型化は避けられない。
しかしながら、空間ビーム形成によって信号を合成するエスパアンテナが提案されている。エスパアンテナはベクトル合成するための演算回路は必要であるが、ベースバンド回路とフロントエンド回路が1個で良いことから大きな期待を集めている。
エスパアンテナの従来例としては、例えば特開2001−24431号公報(特許文献3),特開2002−16427号公報(特許文献4)などが知られている。例えば特許文献3には、図28に示すように、接地導体120上に、モノポールアンテナからなる給電素子121(A0)と、その回りに複数の可変リアクタンスを装荷した無給電素子122(A1〜A6)とを配置し、無給電素子122のリアクタンスを変えることで指向性を制御するようにしたものが開示されている。
しかしながら、この場合、給電素子121の回りに多くの無給電素子122を配置する必要があり、アンテナの小型化にも限界がある。また、モノポールアンテナを用いるためアンテナが立体化し、携帯端末や無線LAN端末への採用は難しい。さらにエスパアンテナでは指向性を制御するアルゴリズムが複雑であると言われており、ベクトル加算の回路の簡略化にもある程度限界があると思われる。
また、特開平10−154911号公報(特許文献5),特許第3294155号公報(特許文献6)には、可変リアクタンスの代わりに可変インピーダンスを用いたものがある。例えば特許文献5には、図29に示すように、接地導体130上に、給電素子131とその周りに複数の無給電素子132を配置し、無給電素子132をスイッチによって地板と短絡して無給電素子のインピーダンス負荷133を高インピーダンス/低インピーダンスで切替えて指向性を制御する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献5および特許文献6に提案された方法も、多くの無給電素子132が必要であり、かつモノポールアンテナを用いるためアンテナが立体化するため、携帯端末や無線LAN端末へは不向きである。
また、平面アンテナを用いて指向性を制御する方法としては、『Electronically Steering Yagi-Uda Microstrip Patch Antenna array(1995年IEEE Antenna and Propagation Society International Symposium,p1870)』(非特許文献1)、『Electronic beam steering using switched parasitic patch elements(Electronics Letters,vol.33,No.1,p7-8,1997年)』(非特許文献2)、『ビーム成形用マイクロストリップアレーアンテナ(2002年電子情報通信学会総合大会,講演番号B-1-234)』(非特許文献3)、『X字型配列マイクロストリップアレーアンテナによる2次元ビーム成形(2003年電子情報通信学会総合大会,講演番号B-1-248)』(非特許文献4)等に開示された方法がある。
非特許文献1に開示されたものは、図30に示すように、マイクロストリップアンテナを用い、反射器を共通して八木・宇田アンテナを4方向で構成し、給電素子を切替えることで4方向の指向性制御を実現している。
また、非特許文献2に開示されたものは、図31に示すように、マイクロストリップアンテナをE面方向で配列し、中心の素子を給電素子、両端の素子を無給電素子とし、無給電素子は励振方向と直交する方向では中央でかつ励振方向では端部に地板と短絡する短絡スイッチを設けている。両端の無給電素子の一方を地板と短絡させることで反射器として機能させ、E面方向で指向性を切替える。
非特許文献3のビーム成形用マイクロストリップアレーアンテナでは、図32に示すように、マイクロストリップアンテナからなる給電素子(F−MSA)の両端に可変リアクタンスが装荷された無給電素子(P−MSA)を配置し、無給電素子のリアクタンスを変化させH面で指向性制御を行なっている。
なお、可変リアクタンス回路を装荷する位置は給電素子の給電点と同じ位置、つまり励振方向と直交する方向では中心で、かつ励振方向では無給電素子の入力インピーダンスが給電線の特性インピーダンスと等しい(通常は50Ω)位置にしている。X字型配列マイクロストリップアレーアンテナは前記の効果を利用したものであり、給電素子の回り4方向に可変リアクタンス回路を装荷した無給電素子を配置し、2次元での指向性制御を実現している。
上記の例はマイクロストリップアンテナを用いているため、特許文献1のアンテナ,特許文献3および特許文献4のエスパアンテナ,特許文献5や特許文献6のアンテナと異なり低背化されているためアンテナの小型化には有利である。
しかしながら、非特許文献1は4個の給電素子を切替えるためのスイッチが必要であり、フロントエンド回路が複雑になる。また、指向性は4方向に限定され、指向性の可変範囲は広くない。非特許文献2はE面のみで指向性制御が可能であり、指向性の可変範囲は狭い。
一方、X字型配列マイクロストリップアレーアンテナは、XY方向の2次元で指向性制御が可能である。しかしながら、可変リアクタンス回路は可変キャパシタと線路を直列接続した回路から構成され、非特許文献1や非特許文献2のようにスイッチを設ける場合と比較して制御系が複雑になってしまう。
なお、上記の指向性制御アンテナは全て1周波に対応しており、多周波に対しての記述はない。
また現在、携帯電話ではPDC(Personal Digital Celluler),FOMA,CDMA2000,PHS(Personal Handyphone System)等の第2世代の携帯電話、無線LANではIEEE802.11a,802.11b,802.11gやBluetooth等、ITS(Intelligent Transport Systems)ではGPS(Global Positioning System),VICS(Vehicle Information Communication System),ETC(Electronic Toll Collection System)等の無線規格に対応して複数の周波数が用いられており、将来も複数の周波数が並存する環境が続くと予想されている。そのため、1個の装置で複数の無線規格に対応できるマルチバンド無線システムが注目されている。
しかし、従来の無線通信では単一周波数のアンテナが用いられていたため、複数の周波数に対応する無線装置では単一周波数のアンテナを複数設ける必要があり、大型化してしまうという問題があった。
また、無線装置表面で電波を良好に送受信できる領域は限られており、全てのアンテナを良好な電波環境に設置するには限界があった。そこで近年では1個のアンテナで複数の周波数に対応できる多周波(マルチバンド)対応アンテナが注目されている。
マルチバンド対応アンテナの従来例としては、1つはアンテナに複数の周波数に対応した放射素子を持たせる構造がある。例えば、共振長の異なる複数の放射素子を用いた構造としては、『多層板構成の3周波共振アンテナの設計と実測結果(電子情報通信学会技術報告,AP2002-141,p41〜46,2003年)』(非特許文献5)、『Multifrequency Microstrip Patch Antenna Using Multiple Stacked Elements (IEEE Microwave and Wireless Components Letters, vol.13, No.3, p123-124,2003年) 』(非特許文献6)、『2周波共用マイクロストリップアンテナ構成法の一検討(2003年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会,講演番号B-1-161)』(非特許文献7)等に開示されている。
しかしながら、上記のアンテナは、複数のアンテナを1箇所に配置した構造であり、無線装置表面で電波を良好に送受信できる領域は限られているため所望の電波全てを良好に送受信するのは困難であった。
また、1つの放射素子に複数の共振長を持たせた構造も提案されている。例えば、『変形シルピンスキー型マイクロストリップアンテナの放射特性に関する一検討(2003年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会,講演番号B-1-162)』(非特許文献8)、『2周波スロットボウタイアンテナ(2003年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会,講演番号B-1-176)』(非特許文献9)等の文献がある。
しかしながら、変形シルピンスキー型マイクロストリップアンテナでは、3つのバンドで放射パターンが異なり、同一エリアにおいて3周波を同じ条件で送受信できないという課題があった。また2周波スロットボウタイアンテナは、構造上3周波程度までしか対応できないと思われる。
そこで、アンテナの共振長をスイッチで切替える方法が多数提案されている。例えば、特開2000−236209号公報(特許文献7),特開2002−261533号公報(特許文献8),特開2003−124730号公報(特許文献9),米国特許(USP)第6198438号(特許文献10),『GTRI Prototype Reconfigurable Aperture Design(2002年IEEE Antenna and Propagation Society International Symposium Digest,p473〜476)』(非特許文献10),『The GTRI Prototype Reconfigurable Aperture Antenna(2003年IEEE Antenna and Propagation Society International Symposium Digest,p683〜686)』(非特許文献11)等がある。
特許文献7では、図33に示すように、金属片201をPINダイオード202で接続してダイポールアンテナを構成している。PINダイオード202にバイアスを印加してPINダイオード202の導通/遮断を切替えて共振長を変化させる。
そのため、1個の周波数に対してのみ共振し、所望以外の周波数の電波に対しては利得を小さくできるので、信号のS/N低下を抑制できる。特許文献7に用いられるダイポールアンテナは平衡電流で励振する必要がある。
しかしながら、RF回路に用いられる線路はマイクロストリップ線路やコプレナー線路等の不平衡電流を用いる場合が多く、平衡電流が必要な場合はアンテナと線路の間にバランを設けなければならない。
一般に、バランは帯域が狭いため複数の周波数には対応できず、1個の周波数に対して1個ずつバランが必要となる。そのためマルチバンドに対応するためには、ダイポールアンテナの給電点近傍にマルチバンドの数だけバランを配置する必要があり、バランの設置面積でマルチバンドの数が制限されてしまう。よって特許文献7はデュアルバンド等の周波数帯の少ない場合は使えるが、周波数帯の多いマルチバンドには対応できないと思われる。
特許文献8では、図34に示すように、アンテナ素子パターン218に1個の給電点(給電パターン)219と複数の接地点(接地パターン)220a,220b,220c,220dを設け、これらの接地点220a,220b,220c,220dをそれぞれスイッチSW221a,SW221b,SW221c,SW221dで切替えて共振長を変化させるものである。211はアンテナ部、212は配線基板、213はグランドパターン、214はRFモジュールである。
しかしながら、特許文献8ではスイッチで短絡点を切替えるため、各周波数でアンテナの入力インピーダンスが変化してしまう。よって整合の取れる範囲内でしか接地点を動かすことができず、マルチバンドで可変しうる周波数範囲を大きくできないと思われる。
実際に特許文献8で開示された可変周波数帯は1.55〜2.2GHzであり、中心周波数1.8GHzに対して30%と小さい。よって携帯電話等の比較的近接した周波数帯を用いる場合は対応可能であるが、無線LANのように2.4GHz帯と5.2GHz帯を用いる場合は対応できないと予想される。
特許文献9では、図35(a)及び(b)に示すように、第1の放射素子320,第2の放射素子330,第3の放射素子340の3つの放射素子が切替え可能な給電点と短絡点を共有しており、スイッチSW360,SW362によって給電点と短絡点を切替えることで4つの周波数帯を実現している。同図において、300はアンテナ構造、305は短絡平面、310はサブアンテナ構造、322は第1の端部、324は給電ライン、332は第2の端部、334は間隔、342は第3の端部、350は給電ライン、370と372は無線周波数モジュール、A1,A2は開口である。
しかしながら、特許文献9では3つの放射素子320,330,340を同一平面に配置する必要があり、無線装置表面で電波を良好に送受信できる領域は限られていることから、4つの電波全てを良好に送受信するのは困難である。
特許文献10では、図36に示すように、マトリックス状に配置された要素素子400が各々MEMSスイッチ420で接続される構造となっている。
全てのMEMSスイッチ420をOFF(遮断状態)にした場合は個々の要素素子の1辺が共振長となり、高周波に対応する。一方、全てのMEMSスイッチをON(導通状態)にした場合は個々の要素素子は接続されて全体が1個の矩形の放射素子となり、低周波で共振する。
ここで、特許文献10では線路の特性インピーダンス(通常は50Ωを用いる)と整合するため、高周波の給電点405(個々の要素素子毎に設けられる)と低周波の給電点410(全体で一個設けられる)を異なる点を用いる。そのためマトリックス状に配置されたアレイアンテナに配置できる給電点の数によって対応できるマルチバンドの数が限定される欠点がある。
また、また給電点を切替えるスイッチが必要になることから、アンテナの構造が複雑化してしまう。さらに、MEMSスイッチ420上には給電点を設けることが困難といった欠点もある。
図36の例では、1個の要素素子で共振させる高周波給電点405と3×3アレイ全体で共振させる低周波給電点410は要素素子(放射素子400)上に配置できるが、2×2アレイを共振させたい場合はMEMSスイッチ上に給電点が来るため、たとえ3×3アレイを使っても2周波のみにしか対応できない。
さらに、MEMSスイッチで接続される導体幅は隣接した要素素子の幅よりも小さいため、全てのMEMSスイッチをONにして1個の矩形の放射素子を形成した場合、放射素子の内部には大きな空隙が生じる。その結果放射素子を流れる電流は空隙によって制限され、帯域幅が減少し、通信に必要な帯域幅を確保することが困難になる問題も発生する。
なお、上記の非特許文献8〜9、特許文献7〜10には、指向性制御について何らの記載がない。
非特許文献10、11に記載されたGTRI Prototype Aperture Antennaは、図37に示すように、基板500上にマトリックス状に配置された要素素子501が各々FETスイッチ502で接続され、平衡電流によって1箇所の給電点503で励振される構造となっている。GTRI Prototype Aperture AntennaはFETスイッチ502のON/OFFの組み合わせによって放射素子の形状を変化させ、周波数と指向性を切替えることができる。
但し、FETスイッチ502のON/OFFを遺伝的アルゴリズムを用いて選択するため演算回路が複雑になる。また給電点503が1箇所であり、放射素子の入力インピーダンスを給電線の特性インピーダンスに合わせる必要があり、放射素子の形状の自由度が小さく、可変できる周波数範囲が制限される可能性が高い。
実際に上記の非特許文献で報告された可変周波数範囲は1〜2GHz程度であり、約±50%の帯域幅に対応できる程度であった。また平衡電流で励振することからRF回路に広く用いられているマイクロストリップ線路やコプレナー線路に接続するためにはバランが必要となる。よってバランの設置面積によってもマルチバンドの数が制限される問題もある。
また、特開2000−156606号公報(特許文献11)では、ITS環境に特化した多周波指向性制御アンテナが提案されている。特許文献11には指向性制御を実現する方法としてRFフロントエンド回路に移相器を設けたフェイズドアレイアンテナが記載されているが、1個のフェイズドアレイアンテナを多周波化する方法は全く記載されておらず、指向性制御と多周波化を同時に実現するためにはファイズドアレイアンテナを必要なバンドの数だけ準備する必要があり、コストが高く無線LAN等では現実的ではないと思われる。
以上のように指向性制御と多周波対応の両方が実現できるアンテナの提案は少なく、上記文献に開示されている両方の機能を持つGTRI Prototype Aperture Antennaや特許文献11に開示されたものにおいても、 性能・コストの点で問題がある。
なお、本出願人は、テーパードスロットアンテナに関して、特許出願を行っている。例えば、特開平10−13141号公報(特許文献12),特開平10−13143号公報(特許文献13),特開平10−173432号公報(特許文献14),特開平11−163626号公報(特許文献15)等がある。
テーパードスロットアンテナは指向性の高い円形の放射パターンを得ることができるが、アンテナ単体では指向性を制御することはできない。
特開2001−36337号公報
特開平6−112727号公報
特開2001−24431号公報
特開2002−16427号公報
特開平10−154911号公報
特開2002−325012号公報
特開2000−236209号公報
特開2002−261533号公報
特開2003−124730号公報
米国特許(USP)第6198438号
特開2000−156606号公報
特開平10−13141号公報
特開平10−13143号公報
特開平10−173432号公報
特開平11−163626号公報
1995年IEEE Antenna and Propagation Society International Symposium,p1870(Electronically Steering Yagi-Uda Microstrip Patch Antenna array)
Electronics Letters,vol.33,No.1,p7-8,1997年(Electronic beam steering using switched parasitic patch elements)
2002年電子情報通信学会総合大会,講演番号B-1-234(ビーム成形用マイクロストリップアレーアンテナ)
2003年電子情報通信学会総合大会,講演番号B-1-248 (X字型配列マイクロストリップアレーアンテナによる2次元ビーム成形)
電子情報通信学会技術報告,AP2002-141,p41〜46,2003年(多層板構成の3周波共振アンテナの設計と実測結果)
IEEE Microwave and Wireless Components Letters, vol.13, No.3, p123-124,2003年(Multifrequency Microstrip Patch Antenna Using Multiple Stacked Elements )
2003年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会,講演番号B-1-161(2周波共用マイクロストリップアンテナ構成法の一検討)
2003年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会,講演番号B-1-162(変形シルピンスキー型マイクロストリップアンテナの放射特性に関する一検討)
2003年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会,講演番号B-1-176(2周波スロットボウタイアンテナ)
2002年IEEE Antenna and Propagation Society International Symposium Digest,p473〜476(GTRI Prototype Reconfigurable Aperture Design)
2003年IEEE Antenna and Propagation Society International Symposium Digest,p683〜686(The GTRI Prototype Reconfigurable Aperture Antenna)
以下、本発明の実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
<実施例1>
本発明に係る指向性制御マイクロストリップアンテナの一実施例(実施例1)を説明する。
図1は、本発明の実施例1を説明するための図である。同図(a)は上面図、同図(b)は断面図を示している。
本実施例の指向性制御マイクロストリップアンテナは、図1(a)および(b)に示すように、誘電体10と、該誘電体10の下面に設けられた地板15と、前記誘電体10の上面に設けられた5GHzに対応した共振長を持つ矩形の給電素子11と、該給電素子11を取り囲みマトリックス状に配置された給電素子11とほぼ同じ共振長を有する8個の第1の矩形の無給電素子12と有し、また隣接した第1の無給電素子同士は第1のスイッチ13によって選択的に接続または遮断される構造をしている。14は同軸線を介して高周波信号を供給する給電点である。
本実施例における指向性制御マイクロストリップアンテナの構成を詳細に記述すると、比誘電率2.6のテフロン(登録商標)ガラスファイバー基板からなる誘電体10の下面にCu層からなる地板15が形成されている。
誘電体10の上面にはCu層からなる矩形の給電素子11と、給電素子11を取り囲んで第1の矩形の無給電素子12がピッチ0.3λo(λo:自由空間での共振周波数の波長)で8個配置されている。
給電素子11の大きさはY方向でL,X方向でWとなっており、誘電体10の裏面から同軸線によって給電素子11の給電点14に高周波信号が供給されると、給電素子11にはY方向の辺をλ/2(λ:誘電体中での共振周波数の波長)とする定在波を生じY方向の直線偏波を放射する。つまりLを共振長とする基本モードで給電素子11は励振される。
8個の第1の無給電素子12の大きさもY方向でL,X方向でWとなっており、給電素子11と外形は同じである。給電素子11が基本モードで励振された場合、第1の無給電素子12は給電素子11との素子間相互結合によってY方向の電流が励起される。本実施例では第1の無給電素子12のY方向の長さがL、つまり給電素子11の励振方向の長さと等しいため、第1の無給電素子12は給電素子11と同じ共振長を持つことになる。
また、隣接した第1の無給電素子12相互間にはPINダイオードからなる第1のスイッチ13が設けられており、該第1のスイッチ13がON状態では隣接した第1の無給電素子相互間は接続され、第1のスイッチ13がOFF状態では隣接した第1の無給電素子相互間は遮断された状態となる。なお、第1のスイッチ13のON/OFFは図示されていないバイアスラインによって個別に選択できるようになっている。
次に、本発明の指向性制御の一実施例を説明する。
図2−Aおよび図2−Bは、本発明の指向性制御の一実施例を説明するための図である。
図2−A(a)において、領域A(点線内)は点線内にある2個の第1のスイッチ13をON状態にして3個の第1の無給電素子12を接続状態にした領域を示している。その他の第1のスイッチ13はOFF状態であり、領域Aの外側にある5個の第1の無給電素子12は隣接した第1の無給電素子12と遮断されている。
ここで給電素子11が基本モードで励振された場合、第1の無給電素子12は給電素子11との素子間相互結合によってY方向の電流が励起される。領域Aの外側にある5個の第1の無給電素子12はY方向の長さが給電素子11の共振長と同じであるため、第1の無給電素子12にもλ/2の基本モードが生じる。
なお、第1の無給電素子12と給電素子11は0.3λoで配置されているため、領域Aの外側にある5個の第1の無給電素子12の電圧は給電素子11よりも位相が遅れ、これら5個の第1の無給電素子12は導波器として作用する。
一方、領域Aでは第1のスイッチ13がON状態になって3個の第1の無給電素子12が接続されているため、Y方向の長さはほぼ3Lとなり、Y方向の辺を3λ/2とする高次モードが発生する。厳密には第1のスイッチ13の長さによって接続された第1の無給電素子12のY方向の長さは3Lにならないが、チップ部品のPINダイオードの長さは1〜2mm程度であり、第1の無給電素子12のY方向の長さLに対して十分小さいので、接続された第1の無給電素子12にはλ3/2の高次モードが発生すると見なして問題ない。
ここでH面(水平)の指向性を考えると、給電素子11に対してY方向で対称に配置された2個の第1の無給電素子12(図中、給電素子11の上下にある2つの第1の無給電素子)は影響を与えないので、図2−A(a)の基本モードで共振する3個の第1の無給電素子12(図中、給電素子11の右にある3個の第1の無給電素子)と給電素子11と領域Aの接続された第1の無給電素子12(図中、給電素子11の左にある接続された3個の第1の無給電素子)を考えれば良い。前記基本モードで共振する3個の第1の無給電素子(図中、給電素子11の右にある3個の第1の無給電素子)は導波器となり、放射パターンを天頂から+X側に傾ける作用をする(図2−A(b)参照)。
一方、図2−B(a)に示すように、領域Aの接続された3つの第1の無給電素子は3λ/2の定在波が生じているので、領域Aは給電素子11の−X側に隣接した1個の第1の無給電素子(素子(1)と略す)と、素子(1)の+Y側にある素子(1)とは逆位相の1個の第1の無給電素子(素子(2)と略す)と、素子(1)の−Y側にある素子(1)とは逆位相の1個の第1の無給電素子(素子(3)と略す)と見なすことができる。
素子(1)は、給電素子11と0.3λoのピッチで配置されているため導波器となり、図2−B(b)に示すように、放射パターンを天頂から−X側に傾ける作用をするが、素子(2)および素子(3)は、素子(1)と逆位相であるため反射器となり、図2−B(c)に示すように、放射パターンを天頂から+X側に傾ける作用をする。
以上の結果、図2−B(a)に示す第1のスイッチ13のON/OFFの組み合わせでは、アンテナの放射パターンは、上記図2−A(b)と図2−B(b)および(c)に示した効果が合成され、図2−B(d)に示すように天頂から+X側に15〜25°傾いた。
また逆に、図3に示す第1のスイッチ13のON/OFFの組み合わせ(給電素子11の+X側にある3個の第1の無給電素子を接続するとともに、給電素子11の−X側にある3個の第1の無給電素子を遮断)では、放射パターンを天頂から−X側に15〜25°傾けることができた。
また、図4に示す第1のスイッチ13のON/OFFの組み合わせ(給電素子11の+X側にある3個の第1の無給電素子のうち2個の第1の無給電素子を接続し残りの第1の無給電素子を遮断し、−X側にある3個の第1の無給電素子についても+X側の第1の無給電素子と同様な接続とする)では、放射パターンを天頂から+Y方向へ傾けることができた。
さらに、給電素子11を中心にしてY軸で第1のスイッチ13のON/OFFの組み合わせをミラー反転させると放射パターンを天頂から−Y方向へ傾けることができた。
なお、図2−A〜図4は第1のスイッチ13のON/OFFの組み合わせの一実施例を示したに過ぎず、種々の組み合わせによってアンテナの放射パターンをXYの2次元で制御することができた。
以上のように本実施例の構造を採用すると、第1のスイッチをON状態とすると隣接した第1の無給電素子を接続でき、該第1のスイッチを介して接続された第1の無給電素子は給電素子11の2〜3倍の共振長を持つことができるため、2〜3次モードを選択できる。
ここで第1のスイッチ13を介して接続された第1の無給電素子を給電素子11に対して非対称に配置することによって、放射パターンを天頂から傾かせることができる。
また、第1の無給電素子は給電素子11を取り囲みマトリックス状に8個配置されているため、高次モードで励振される接続された第1の無給電素子を給電素子11に対して種々の位置に配置できるため、XYの2次元で指向性を制御できる。
また、本実施例では、第1のスイッチ13のON/OFFの組み合わせによって2次元での指向性制御を行うためX字型配列マイクロストリップアレーアンテナのような指向性を切替えるための特別な回路を必要とせず、安価に指向性制御アンテナを作製できる。
さらに、2次元での指向性制御を行うことによって所望の方向にアンテナの最大放射角を向けることができるため良好な通信が可能となる。
さらに、本実施例の給電素子11および複数の第1の無給電素子12はマイクロストリップアンテナ構造を採用しているため平面構造であり、アンテナを小型化できる。そのため携帯端末や無線LAN端末にも容易に採用できる。
なお、上記実施例では第1のスイッチ13としてPINダイオードを用いている。PINダイオードは安価なチップ部品が入手でき、かつ20GHzまでは良好に高周波信号を遮断できることから、2.4GHzや5GHzを用いた無線LANや携帯端末での指向性制御アンテナに適している。PINダイオードはダイボンダーを用いて第1の無給電素子間に表面実装によって設置すれば良いので、アンテナを容易に作製できる。
なお、上記実施例1では第1のスイッチとしてPINダイオードを用いているが、MEMSスイッチを使用することもできる。MEMSスイッチを用いた場合は100GHz程度までの高周波信号も良好に遮断でき、さらに挿入ロスも小さいことから、より高い周波数,例えばサブミリ波〜ミリ波を対象とした指向性制御アンテナを構成することができる。MEMSスイッチは別基板に作製した後、表面実装によって第1の無給電素子間に設置すれば良い。
また、MEMSスイッチは表面マイクロマシンプロセスによって第1の無給電素子間に直接形成することも可能である。さらに、誘電体がガラスやセラミック基板,Si,GaAs基板の場合はMEMSスイッチをバルクマイクロマシーンプロセスまたは表面マイクロマシンプロセスによって第1の無給電素子間に直接形成することも可能である。MEMSスイッチの具体的な一構成例については図14を用いて実施例2以降において説明する。
また、本実施例では無給電素子と給電素子のピッチを0.3λoとしたが、本発明はピッチが0.3λoに限定される必要はない。例えばピッチが0.65λoである場合は給電素子と素子間相互結合によって基本モードで励振される第1の無給電素子の電圧は給電素子よりも位相が進み、反射器として作用する。よって前記と同様に第1のスイッチのON/OFFの組み合わせによってXYの2次元で指向性制御が可能である。
本発明は給電素子と第1の無給電素子の素子間相互結合によって第1の無給電素子に電圧を励起させるためピッチは1λoよりも小さい方が望ましい。1λoよりも大きくなると素子間相互結合が小さくなって指向性の可変範囲が狭くなる。
また、本実施例では給電素子11と第1の無給電素子12の外形は同一としたが、第1の無給電素子の共振長が給電素子とほぼ同じであれば良く、給電素子と第1の無給電素子の外形は同一である必要はない。
<実施例2>
次に、本発明の指向性制御マイクロストリップアンテナに係る別の実施例(実施例2)を説明する。
図5は、本発明の実施例2を説明するための図である。同図(a)は上面図、同図(b)は断面図を示している。
本実施例のアンテナは、誘電体10と、該誘電体10の下面に設けた地板15と、誘電体10の上面に設けた20GHzに対応した矩形の給電素子11と、該給電素子11を取り囲みマトリックス状に配置された前記給電素子11とほぼ同じ共振長の8個の矩形の第1の無給電素子12とを有し、かつ隣接した第1の無給電素子間は、第1のスイッチ13によって選択的に接続または遮断される構造を有している。さらに、8個の第1の無給電素子12のうち6個には地板15と短絡する第2のスイッチ16が設けられている。14は高周波信号18を供給する給電点である。
アンテナの構成をさらに詳細に記述すると、比誘電率3.9の石英基板からなる誘電体10の下面にCu層からなる地板15が形成されており、誘電体10の上面にはCu層からなる矩形の給電素子11と、該給電素子11を取り囲んで第1の矩形の無給電素子12がピッチ0.3λo(λo:自由空間での共振周波数の波長)で8個配置されている。
給電素子11の大きさはY方向でL,X方向でWとなっており、誘電体10の裏面からビアホール17を介して給電点14に高周波信号18が供給されると、給電素子11はLを共振長とする基本モードで励振される。
第1の無給電素子12の大きさもY方向でL,X方向でWとなっており、給電素子11と同じ共振長を持つ。
また、隣接した第1の無給電素子12の間にはMEMSスイッチからなる第1のスイッチ13が設けられている。
図14は、MEMSスイッチ(第1のスイッチ)13の具体的な一構成例を示す図である。
第1のスイッチ13は、同図に示すように、上部電極31,下部電極32,上部電極31に接続されたヒンジ33,バイアスライン(図示せず)から構成され、上部電極31は隣接する第1の無給電素子12の対向する辺とほぼ同じ長さを持ち、ヒンジ33によって可動できる。
第1のスイッチ13の動作を、図14を参照して詳細に述べると、第1のスイッチ13の上部電極31に図示しないバイアスラインからバイアスが印加されると上部電極31と下部電極32間に静電引力が生じ、上部電極31が下方に動いて第1の無給電素子12と接触する。
ここで、上部電極31は第1の無給電素子12の対抗する辺とほぼ同じ長さであるため、第1のスイッチ13は第1の無給電素子の辺のほぼ全面で導通する。その結果、第1のスイッチ13と隣接する第1の無給電素子12は対向する辺のほぼ全面で接続されることになる。
一方、上部電極31のバイアスを遮断すると上部電極31と下部電極32の間の静電引力が無くなり、上部電極31はヒンジ33の剛性によって上方へ動き、第1の無給電素子12と遮断される。ここで上部電極31は第1の無給電素子12の対向する辺とほぼ同じ長さであるため、第1のスイッチ13は隣接する第1の無給電素子12の対向する辺のほぼ全面で遮断されることになる。なお、第1のスイッチ13のON/OFFは図示されていないバイアスラインによって個別に選択できるようになっている。
また、6個の第1の無給電素子12に設けられた地板15と短絡する第2のスイッチ16はPINダイオードからなり、第2のスイッチ16がON状態では第1の無給電素子12は地板15と短絡し、第2のスイッチ16がOFF状態では第1の無給電素子12は地板15から開放される構造となっている。なお、6個の第1の無給電子素子12に各々接続された6個の第2のスイッチ16は図示されていないバイアスラインによって個別にON/OFF状態が個別に選択できる。
次に、実施例2における指向性の制御について説明する。
図6は、本実施例の指向性制御の一例を説明するための図である。
同図において、領域A(点線内)は点線内にある2個の第1のスイッチ13(13aと記す)をON状態にして3個の第1の無給電素子12を接続状態にした領域を示している。その他の第1のスイッチ13(13bと記す)はOFF状態であり、領域Aの外側にある5個の第1の無給電素子12は隣接した第1の無給電素子12と遮断されている。
また、地板15と短絡する6個の第2のスイッチ16のうち領域Aにある3個の第1の無給電素子12に設けられた第2のスイッチ16(16bと記す)は全てOFF状態になっており、接続された第1の無給電素子12は地板15から開放されている。
また、領域Aの外側にある第1の無給電素子12うち給電素子11の+X側にある3個の第1の無給電素子に設けられた第2のスイッチ16(16aと記す)は全てON状態となっており、給電素子11の+X側にある3個の第1の無給電素子12を地板15と短絡させている。
給電素子11が基本モードで励振された場合、領域Aの外側にある5個の第1の無給電素子12は給電素子11との素子間相互結合によってY方向の電流が励起される。第1の無給電素子12の共振長は給電素子11と同じであるため第1の無給電素子12にもλ/2の基本モードが生じる。
しかしながら、給電素子11の+X側にある3個の第1の無給電素子12は第2のスイッチ16aによって地板15と短絡しているため第1の無給電素子12に励起される電圧は著しく低下して、放射パターンへの影響は小さくなる。
H面(水平)の指向性では給電素子11に対してY方向で対称に配置された2個の第1の無給電素子12は影響を与えないので給電素子11の+X側にある3個の第1の無給電素子12と給電素子11と領域Aの接続された第1の無給電素子12を考えれば良いが、本実施例では給電素子11の+X側にある3個の第1の無給電素子12は地板15と短絡されて放射パターンへの影響が小さいので、給電素子11と領域Aの接続された第1の無給電素子12のみを考えれば良い。
ここで、領域A内では第1のスイッチ13aがON状態になって3個の第1の無給電素子12が接続されているため、Y方向の辺を3λ/2とする高次モードが発生し、実施例1と同様に放射パターンを天頂から+X方向へ傾かせる作用をする。その結果、図6に示す第1のスイッチ12,第2のスイッチ13のON/OFFの組み合わせではアンテナの放射パターンは天頂から+X側に10〜15°傾けることができた。
また、第2のスイッチ16を全てOFF状態にすると、アンテナの放射パターンは天頂から+X側に20〜30°傾いた。また、実施例1の図3,図4に示すような構成においても、第1の無給電素子12に地板15と短絡する第2のスイッチ16を設け、該第2のスイッチ16のON/OFFを制御することによって放射パターンの仰角を変化させることができた。
以上のように本実施例の構造を採用すると、第2のスイッチ16をON状態にすると第1の無給電素子12は地板15と短絡し、第1の無給電素子12を流れる電流は著しく抑制され放射パターンへの寄与は小さくなる。また、第2のスイッチ16をOFF状態にすると第1の無給電素子12は地板15と開放されるため、第1の無給電素子12を流れる電流は抑制されず放射パターンへ寄与する。
その結果、第2のスイッチ16のON/OFFを制御することによって放射パターンの仰角を変化させることが可能となる。そのため、第1のスイッチ13,第2のスイッチ16の組み合わせによって3次元での指向制御を実現できる。また、所望の方向にアンテナの最大放射角をより向けることができるようになるさらに良好な通信が可能となる。
なお、図6では第1のスイッチ13がOFF状態である第1の無給電素子12に設けられた第2のスイッチ16(図中、給電素子11の+X側の第2のスイッチ16a)をON状態にして地板15と短絡させたが、第1のスイッチ13がON状態にある接続された第1の無給電素子12に接続された第2のスイッチ(図中、給電素子11の−X側の第2のスイッチ)をON状態にして接続された第1の無給電素子12を地板15と短絡させて何ら構わない。
また、本実施例では8個の第1の無給電素子12のうち6個の無給電素子に地板15と短絡する第2のスイッチ16を設けたが、第2のスイッチは指向性制御アンテナに必要とされる仰角の制御性を考慮して数や配置を決定すれば良く、本実施例に限定される必要はない。
また、全ての第1の無給電素子12に第2のスイッチ16を設け、指向性制御に関与しない第1の無給電素子12、例えば図6では給電素子11の+Y、−Y側にある第1の無給電素子を地板15と短絡させる方法を採用しても良い。
また、本実施例では第1のスイッチ13がON状態になると第1のスイッチは隣接した第1の無給電素子12の対向する辺のほぼ全面で接続されるが、上述の実施例1では第1のスイッチ13としてチップ部品のPINダイオードを用いており、スイッチ幅は一般に1mm以下である。
そのため接続された第1の無給電素子12を流れるY方向の電流はスイッチ部で制限され、接続された第1の無給電素子12の帯域幅は低下していた。その結果アンテナ自体の帯域幅が低下する問題があった。
しかしながら、MEMSスイッチを用いた本実施例では、第1のスイッチ(MEMSスイッチ)は隣接した第1の無給電素子の対向する辺のほぼ全面で接続されるため、接続された第1の無給電素子を流れるY方向の電流はスイッチ部で制限されず、接続された第1の無給電素子の帯域幅は低下しにくい。そのためアンテナ自体の帯域幅を実施例1より改善できる。
また、本実施例では第2のスイッチ16としてPINダイオードを用いている。PINダイオードは安価なチップ部品が入手でき、かつ20GHzまでは良好に高周波信号を遮断できることから、2.4GHzや5GHzを用いた無線LANや携帯端末での指向性制御に適している。
第2のスイッチ16は誘電体10の裏面の地板15の一部を切り欠いた後、ダイボンダーを用いて切り欠き部にPINダイオードを表面実装し、PINダイオードの一端を誘電体10を貫通するビアホールを介して第1の無給電素子12に接続することによって容易に実現できる。
また、第2のスイッチ16としてはMEMSスイッチも使用することができる。MEMSスイッチは100GHz程度までの高周波信号も良好に遮断でき、さらに挿入ロスも小さいことから、より高い周波数,例えばサブミリ波〜ミリ波を対象とした指向性制御アンテナを構成することができる。
MEMSスイッチ(第2のスイッチ)は表面マイクロマシンプロセス、あるいはバルクマイクロマシーンプロセスによって地板の切り欠き部に直接形成することが可能である。また、MEMSスイッチを別基板に作製し、表面実装によって設置しても良い。
<実施例3>
次に、本発明の指向性制御マイクロストリップアンテナに係る別の実施例(実施例3)を説明する。
図7は、本発明の実施例3を説明するための図である。同図(a)は上面図、同図(b)は断面図を示している。
本実施例のアンテナは、図7に示すように、誘電体10の下面に設けた地板15と、前記誘電体10の上面に設けた20GHzに対応した矩形の給電素子11と、該給電素子11を取り囲みマトリックス状に配置された前記給電素子11とほぼ同じ共振長を有する8個の矩形の第1の無給電素子12を有し、かつ隣接した第1の無給電素子12は第1のスイッチ13によって接続または遮断されるように構成されている。
また、第1の無給電素子12の外周には給電素子11とほぼ同じ共振長を有する矩形の第2の無給電素子19が16個設けられ、かつ隣接した第1の無給電素子12と第2の無給電素子19の間、第2の無給電素子19同士の間は第3のスイッチ20によって接続または遮断される構造となっている。14は高周波信号18を供給する給電点である。
アンテナの構成を詳細に記述すると、比誘電率3.9の石英基板からなる誘電体10の下面に設けられたCu層からなる地板15と、該誘電体10の上面に設けられたCu層からなる矩形の給電素子11と、該給電素子11を取り囲んでピッチ0.3λo(λo:自由空間での共振周波数の波長)で配置された8個の矩形の第1の無給電素子12と、該第1の無給電素子12の外周にピッチ0.3λoで配置された16個の矩形の第2の無給電素子19とを有する。
給電素子11の大きさは実施例2と同様にY方向でL,X方向でWとなっており、誘電体10の裏面からビアホール17を介して給電素子11の給電点14に高周波信号18が供給されると、給電素子11はLを共振長とする基本モードで励振される。
第1の無給電素子12,第2の無給電素子19の大きさもY方向でL,X方向でWとなっており、給電素子11と同じ共振長を持つ。
また、隣接した第1の無給電素子12の間にはMEMSスイッチからなる第1のスイッチ13が設けられている。本実施例における第1のスイッチ13であるMEMSスイッチは、実施例2におけるMEMSスイッチと同様の構成および同様の機能を有する。
すなわち、第1のスイッチ13は、図14に示すように、上部電極31,下部電極32,上部電極31に接続されたヒンジ33,バイアスライン(図示せず)から構成され、上部電極31は隣接する第1の無給電素子12の対向する辺とほぼ同じ長さを持ち、ヒンジ33によって可動できる。
そのため上部電極31にバイアスが印加されると上部電極31と下部電極32間に静電引力が発生し、実施例2と同様に、上部電極31が下方に動いて第1の無給電素子12と接触し、第1のスイッチ13は第1の無給電素子の辺のほぼ全面で導通する。
また、上部電極31のバイアスが遮断されると上部電極31と下部電極32の間の静電引力が無くなり、実施例2と同様に、上部電極31はヒンジ33の剛性によって上方へ動き、上部電極31が第1の無給電素子12の対向する辺とほぼ同じ長さであるため、第1のスイッチ13は隣接する第1の無給電素子12の対向する辺のほぼ全面で遮断される。なお、第1のスイッチ13のON/OFFは図示されていないバイアスラインによって個別に選択できるようになっている。
また、隣接した第1の無給電素子12と第2の無給電素子19の間、および隣接した第2の無給電素子19の間にはMEMSスイッチからなる第3のスイッチ20が設けられている。
第3のスイッチ20も、図14に示す第1のスイッチ13と同様に、上部電極31,下部電極32,上部電極31に接続されたヒンジ33,バイアスライン(図示せず)から構成され、上部電極31は隣接する第1の無給電素子12および第2の無給電素子19の対向する辺とほぼ同じ長さを持ち、ヒンジ33によって可動できるようになっている。
そのため上部電極31にバイアスが印加されると上部電極31と下部電極32間に静電引力が発生し、第1のスイッチ13の場合と同様に、上部電極31が下方に動いて第1の無給電素子12あるいは第2の無給電素子19と接触し、第3のスイッチ20は、第1の無給電素子12と第2の無給電素子19の間、あるいは隣接する第2の無給電素子19間の対向する辺のほぼ全面で導通する。
また、上部電極31のバイアスが遮断されると上部電極31と下部電極32の間の静電引力が無くなり、第1のスイッチ13の場合と同様に、上部電極31はヒンジ33の剛性によって上方へ動き、上部電極31が第1の無給電素子12および第2の無給電素子19の対向する辺とほぼ同じ長さであるため、第3のスイッチ20は、第1の無給電素子12と第2の無給電素子19の間、あるいは隣接する第2の無給電素子19間の対向する辺のほぼ全面で遮断される。なお、第3のスイッチ20のON/OFFは図示しないバイアスラインによって個別に選択できるようになっている。
図8は、本実施例の指向性制御の一例を説明するための図である。
同図において、領域A(点線内)は、点線内にある2個の第1のスイッチ13(13aと記す)と5個の第3のスイッチ20(20aと記す)をON状態にして3個の第1の無給電素子12と3個の第2の無給電素子19を接続状態にした領域を示している。
その他の第1のスイッチ13(13bと記す),第3のスイッチ20(20bと記す)はOFF状態であり、領域Aの外側にある5個の第1の無給電素子12および13個の第2の無給電素子19は隣接した無給電素子と遮断されている。
給電素子11が基本モードで励振された場合、領域Aの外側にある5個の第1の無給電素子12と13個の第2の無給電素子19は給電素子11との素子間相互結合によってY方向の電流が励起される。第1の無給電素子12,第2の無給電素子19の共振長は給電素子11と同じであるため、第1の無給電素子12,第2の無給電素子19にもλ/2の基本モードが生じる。
一方、領域A内では、第1のスイッチ13(13a)および第3のスイッチ20(20a)がON状態になって3個の第1の無給電素子12と3個の第2の無給電素子19が接続されているため、Y方向の長さはほぼ3Lとなり、Y方向の辺を3λ/2とする高次モードが発生する。
厳密には第1のスイッチ13,第3のスイッチ20の長さによって接続された無給電素子のY方向の長さは3Lにならないが、MEMSスイッチの長さは0.5mm程度であり、第1および第2の無給電素子のY方向の長さLに対して十分小さいので、接続された無給電素子にはλ3/2の高次モードが発生すると見なせる。
ここでH面(水平)の指向性を考えると、給電素子11に対してY方向で対称に配置された2個の第1の無給電素子と第2の無給電素子は影響を与えないので、それ以外の残りの素子、すなわち領域Aの接続された無給電素子と、領域A以外にある3個の第1の無給電素子12と11個の第2の無給電素子19と給電素子11とを考えれば良い。
本実施例では、上記の素子の作用によりアンテナの放射パターンは天頂から+X側に20〜30°傾いた。また、図8に示す第1のスイッチ13,第3のスイッチ20のON/OFFを給電素子11を中心にY軸でミラー反転させると、放射パターンを天頂から−X側に20〜30°傾けることができた。
図9は、本実施例の指向性制御の別の例を説明するための図である。
同図において、領域B(点線内)は点線内にある2個の第1のスイッチ13と11個の第3のスイッチ20をON状態にして3個の第1の無給電素子12と7個の第2の無給電素子19を接続状態にした領域を示している。
その他の6個の第1のスイッチ13および17個の第3のスイッチ20はOFF状態であり、領域Bの外側にある5個の第1の無給電素子12および9個の第2の無給電素子19は隣接した無給電素子と遮断されている。
給電素子11が基本モードで励振された場合、領域Bの外側にある5個の第1の無給電素子12と9個の第2の無給電素子19は給電素子11との素子間相互結合によってλ/2の基本モードが生じる。
一方、領域B内では第1のスイッチ13,第3のスイッチ20がON状態になって3個の第1の無給電素子12と7個の第2の無給電素子19が接続されているため、Y方向の長さはほぼ2Lとなり、Y方向の辺を2×(λ/2)とする高次モードが発生する。
ここでE面の指向性を考えると、給電素子11に対してX方向で対称に配置された2個の第1の無給電素子12と2個の第2の無給電素子19は影響を与えないので、それ以外の領域B内の接続された無給電素子と、領域B以外にある残りの3個の第1の無給電素子12と、7個の第2の無給電素子19と、給電素子11とを考えれば良い。
上述した実施例1, 2は、給電素子11に対しH面方向では高次モードの無給電素子を配置できたが、E面では第1の無給電素子が+Y側,−Y側とも1個づつしかないため高次モードの無給電素子は配置できなかった。そのため実施例1,2ではH面方向と比較してE面方向ではビームチルト角が小さくなる欠点があった。
しかしながら、本実施例3では、図9に示すように、給電素子11に対してE面方向でも高次モードの無給電素子を配置できるようになり、E面方向でのビームチルト角を実施例1〜2よりも大きくできる。
なお、図8〜9は、本実施例の第1のスイッチ13,第3のスイッチ20のON/OFFの組み合わせの一例を示したに過ぎず、これら第1のスイッチおよび第3のスイッチのON/OFFの組み合わせによって3次元方向でより多様な指向性パターンが実現できる。
以上のように、本実施例3の構造を採用すると、第1のスイッチ13,第3のスイッチ20をON状態とすると隣接した第1の無給電素子12、第2の無給電素子9を接続できる。
第1のスイッチ13,第3のスイッチ20を介して接続された無給電素子12,19はH面方向では給電素子11の2〜5倍の共振長を持つことができるので、2〜5次モードを選択できる。よって第1および第3のスイッチを介して接続された無給電素子12,19を給電素子11に対して非対称に配置することによって、放射パターンを天頂から傾かせることができる。
また、第1の無給電素子12は給電素子11を取り囲みマトリックス状に8個配置されており、第2の無給電素子19は第1の無給電素子12の外周に配置されているため、高次モードで励振される接続された無給電素子12,19を給電素子11に対して種々の方向で配置できるため、XYの2次元でより細かく指向性を制御できる。
さらに、E面方向で考えると、第1の無給電素子12の外側に第2の無給電素子19があり、前記第1の無給電素子12と第2の無給電素子19は第3のスイッチ20で選択的に接続できるため、給電素子11にE面で隣接する無給電素子は給電素子11の2倍の共振長を持つことができ、2次モードを選択できる。よってE面方向でのビームチルト角を請求項1〜3のアンテナよりも大きくすることができる。
以上のように第1のスイッチおよび第3のスイッチのON/OFFの組み合わせによって3次元方向で多様な指向性パターンが実現できる。
その結果、所望の方向にアンテナの最大放射角をより向けることが可能となり、さらに良好な通信が可能となる。
また、本実施例3では第1のスイッチ13および第3のスイッチ20がON状態になると、これら第1のスイッチおよび第3のスイッチは隣接した無給電素子の対向する辺のほぼ全面で接続される。
そのため、第1のスイッチ13と第3のスイッチ20を介して接続された無給電素子に流れるY方向の電流は第1のスイッチ13または第3のスイッチ20で制限されず、接続された無給電素子の帯域幅は低下しにくい。そのためアンテナ自体の帯域幅を実施例2と同様に改善できる。
また、本実施例3では、第3のスイッチ20にMEMSスイッチを用いている。MEMSスイッチは100GHz程度までの高周波信号を良好に遮断でき、さらに挿入ロスも小さいことから、高い周波数,例えばサブミリ波〜ミリ波を対象とした指向性制御アンテナを構成することができる。
なお、MEMSスイッチ(第3のスイッチ)は表面マイクロマシンプロセス、あるいはバルクマイクロマシーンプロセスによって第1のスイッチと同時に形成すれば良い。また、MEMSスイッチを別基板に作製し、表面実装によって無給電素子間に配置しても良い。
また、第3のスイッチとしてはPINダイオードも使用できる。PINダイオードは安価なチップ部品が入手でき、かつ20GHzまでは良好に高周波信号を遮断できることから、2.4GHzや5GHzを用いた無線LANや携帯端末での指向性制御アンテナに適している。
また、本実施例では給電素子11と第1の無給電素子12、第2の無給電素子19の外形は同一としたが、第1の無給電素子12および第2の無給電素子19の共振長が給電素子11とほぼ同じであれば良く、給電素子11と第1の無給電素子12、第2の無給電素子19の外形は同一である必要はない。
図10は、第1のスイッチ,第3のスイッチで囲まれた空隙をさらに小さくするスイッチの構造であり、第1のスイッチ13,第3のスイッチ20は他のスイッチと対向する先端部分の形状をV形状に延長し、4つのスイッチの間隔がX状になるようにする。
その結果、4個のスイッチで囲まれた空隙はさらに小さくなり、第1のスイッチ13,第3のスイッチ20の導通/遮断状態の組み合わせによって接続された無給電素子を形成した場合、接続された無給電素子に流れるY方向の電流は第1のスイッチ13,第3のスイッチ20でさらに制限されなくなり、接続された無給電素子の帯域幅の低下はさらに抑制され、アンテナ自体の帯域幅をより改善できる。
<実施例4>
次に、本発明の指向性制御マイクロストリップアンテナに係る別の実施例(実施例4)を説明する。
図11は、本発明の実施例4を説明するための図である。同図(a)は上面図、同図(b)は断面図を示している。
本実施例のアンテナは、同図に示すように、実施例3のアンテナの第1の無給電素子12全てに地板15と短絡する第2のスイッチ16を設け、第2の無給電素子19全てに地板15と短絡する第4のスイッチ21を設けた例である。
アンテナの構成を詳細に記述すると、比誘電率3.9の石英基板からなる誘電体10の下面に設けたCu層からなる地板15と、該誘電体10の上面に設けたCu層からなる矩形の給電素子11と、該給電素子11を取り囲んでピッチ0.3λo(λo:自由空間での共振周波数の波長)で配置された矩形の8個の第1の無給電素子12と、第1の無給電素子12の外周にピッチ0.3λoで配置された16個の矩形の第2の無給電素子19とを有する。
給電素子11、第1の無給電素子12、第2の無給電素子19の大きさはY方向でL,X方向でWとなっており、第1の無給電素子12,第2の無給電素子19は給電素子11と同じ共振長を持つ。
また、給電素子11には給電点14が設けられており、誘電体10の裏面からビアホール17を介して高周波信号18が供給されると、給電素子11はLを共振長とする基本モードで励振される。
また、隣接した第1の無給電素子12の間にはMEMSスイッチからなる第1のスイッチ13が設けられており、隣接した第1の無給電素子12と第2の無給電素子19の間、および隣接する第2の無給電素子の間にはMEMSスイッチからなる第3のスイッチ20が設けられている。
実施例2,3で説明したのと同様に、第1のスイッチ13および第3のスイッチ20は、図14に示すように、上部電極31,下部電極32,上部電極31に接続されたヒンジ33,図示しないバイアスラインから構成され、上部電極31は隣接した無給電素子の対向する辺とほぼ同じ長さを持ち、ヒンジ33によって可動できるようになっている。
本実施例における第1のスイッチであるMEMSスイッチは、実施例2におけるMEMSスイッチと同様の構成および同様の機能を有する。
すなわち、第1のスイッチ13は、図14に示すように、上部電極31,下部電極32,上部電極31に接続されたヒンジ33,バイアスライン(図示せず)から構成され、上部電極31は隣接する第1の無給電素子12の対向する辺とほぼ同じ長さを持ち、ヒンジ33によって可動できる。
そのため上部電極31にバイアスが印加されると上部電極31と下部電極32間に静電引力が発生し、実施例3と同様に、上部電極31が下方に動いて第1の無給電素子12と接触し、第1のスイッチ13は第1の無給電素子の辺のほぼ全面で導通する。
また、上部電極31のバイアスが遮断されると、上部電極31と下部電極32の間の静電引力が無くなり、実施例3と同様に、上部電極31はヒンジ33の剛性によって上方へ動き、上部電極31が第1の無給電素子12の対向する辺とほぼ同じ長さであるため、第1のスイッチ13は隣接する第1の無給電素子12の対向する辺のほぼ全面で遮断される。なお、第1のスイッチ13および第3のスイッチ20のON/OFFは図示されていないバイアスラインによって個別に選択できるようになっている。
また、8個の第1の無給電素子12に設けられた地板15と短絡する第2のスイッチ16はPINダイオードからなり、該第2のスイッチ16がON状態では第1の無給電素子12は地板15と短絡し、第2のスイッチ16がOFF状態では第1の無給電素子12は地板15から開放される構造となっている。なお、8個の第1の無給電子素子12に各々接続された第2のスイッチ16は図示されていないバイアスラインによって個別にON/OFF状態が選択できるようになっている。
さらに、16個の第2の無給電素子19に設けられた地板15と短絡する第4のスイッチ21もPINダイオードからなり、該第4のスイッチ21がON状態では第2の無給電素子19は地板15と短絡し、第4のスイッチ21がOFF状態では第2の無給電素子19は地板15から開放される構造となっている。なお、16個の第2の無給電子素子19に各々接続された第4のスイッチ21も図示されていないバイアスラインによって個別にON/OFF状態が選択できる。
図12は、本実施例の指向性制御の例を説明するための図である。
同図において、領域A(点線内)は点線内にある1個の第1のスイッチ13(13aと記す)と6個の第3のスイッチ20(20aと記す)をON状態にして、領域A内の2個の第1の無給電素子12と4個の第2の無給電素子19を接続状態にした領域を示している。
その他の第1のスイッチ,第3のスイッチはOFF状態であり、領域Aの外側にある6個の第1の無給電素子12、12個の第2の無給電素子19は隣接した無給電素子と遮断されている。また、領域A内にある2個の第1の無給電素子12に設けられた第2のスイッチ16(16bと記す)と4個の第2の無給電素子19に設けられた第4のスイッチ21(21bと記す)は全てOFF状態になっており、領域A内の接続された無給電素子12および19は地板15から開放されている。
領域Aの外側にある第1の無給電素子12に設けられた第2のスイッチ16(16aと記す)と第2の無給電素子19に設けられた第4のスイッチ21(21aと記す)は全てON状態となっており、領域Aの外側にある第1の無給電素子12および第2の無給電素子19を地板15と短絡させている。
給電素子10が基本モードで励振された場合、領域Aの外にある6個の第1の無給電素子12および12個の第2の無給電素子19は給電素子11との素子間相互結合によってY方向の電流が励起されてλ/2の基本モードが発生するが、領域Aの外側にある第1の無給電素子12は第2のスイッチ16(16a)によって地板15と短絡し、第2の無給電素子19は第4のスイッチ21(21a)によって地板15と短絡しているため、第1の無給電素子や第2の無給電素子に励起される電圧は著しく低下し、放射パターンへの影響は小さくなる。
その結果、放射パターンは給電素子10と領域A内の接続された無給電素子12によってのみ決定され、図12の場合では、φ=−30〜−40°方向にビームを傾かせることができた。また、第2のスイッチ16と第4のスイッチ21のON/OFFの組み合わせによってビームのチルト角をより細かく制御できた。さらに、第1〜第4のスイッチのON/OFFの組み合わせを変えることによって3次元方向で非常に多様な指向性パターンが得られた。
以上のように、本実施例4の構造を採用すると、実施例3の効果に加え第1の無給電素子12、第2の無給電素子19を各々第2のスイッチ16、第4のスイッチ21によって地板15と短絡して放射パターンへの影響を無くすことができるため、3次元でより多様な指向性パターンが実現できる。そのため、実施例3よりも所望の方向にアンテナの最大放射角をより向けることができ、さらに良好な通信が可能となる。
なお、本実施例4では、第1の無給電素子12および第2の無給電素子19に地板15と短絡する第2のスイッチ16および第4のスイッチ21を設けたが、第2のスイッチ16および第4のスイッチ21は指向性制御アンテナに必要とされる仰角の制御性を考慮して数や配置を決定すれば良く、本実施例の説明に限定される必要はない。
また、本実施例4では第4のスイッチ21にPINダイオードを用いている。PINダイオードは安価なチップ部品が入手でき、かつ20GHzまでは良好に高周波信号を遮断できることから、2.4GHzや5GHzを用いた無線LANや携帯端末での指向性制御アンテナに適している。
第4のスイッチ21は、誘電体10の裏面の地板15の一部を切り欠いた後、ダイボンダーを用いて切り欠き部にPINダイオードを表面実装し、PINダイオードの一端を誘電体10を貫通するビアホール17を介して第2の無給電素子19に接続することによって容易に実現できる。
また、第4のスイッチ21としてはMEMSスイッチも使用できる。MEMSスイッチは100GHz程度までの高周波信号も良好に遮断でき、さらに挿入ロスも小さいことから、より高い周波数,例えばサブミリ波〜ミリ波を対象とした指向性制御アンテナを構成することができる。
<実施例5>
次に、本発明に係る無線モジュール(実施例5)について説明する。
図13は、本発明に係る無線モジュールの一実施例を説明するための図である。
本実施例5の無線モジュールは、アンテナとして実施例4の指向性制御マイクロストリップアンテナを用いている。また、アンテナを構成している誘電体10の下層には、さらにGaAs基板からなる第2の基板22が積層されており、該第2の基板22には20GHzに対応したフロントエンド回路23が作製され、誘電体10と第2の基板22を貫通するビアホール17によってフロントエンド回路23と給電素子11が接続されている。
本実施例5の無線モジュールは、実施例4の指向性制御マイクロストリップアンテナを用いているため、第1〜第4のスイッチのON/OFFの組み合わせによって3次元での指向性制御が可能である。そのため、所望波の方向にアンテナの最大放射角を向けることによって大きな利得を実現でき、良好な送受信が行なえる。
また、指向性制御マイクロストリップアンテナは平面構造をしているため、無線モジュールを小型化できる。さらにアンテナの下層に第2の基板22を積層し、該第2の基板22にフロントエンド回路23を設けているため、さらに小型な無線モジュールを実現できる。
なお、上記本実施例5では、第2の基板23にフロントエンド回路23のみを作製した場合を説明したが、第2の基板23にフロントエンド回路23とベースバンド回路の両方を作製してもよく、フロントエンド回路とベースバンド回路の一部を作製しても同様に無線モジュールを小型化できる。
<実施例6>
次に、本発明に係る無線システムの実施例(実施例6)について説明する。
図15は、本発明の無線システムの一実施例を説明するための図である。
本実施例6では、図13に示した無線モジュールを使用しており、アンテナ40は送信系・受信系を切替える送受信切替スイッチ41に接続されている。所望の指向性に従って、制御回路42によって第1,第2,第3,第4スイッチのON/OFFの組み合わせを設定する。
その後、制御回路42から制御信号Aを第1のスイッチのバイアス発生回路43に与えて所定のバイアスを発生し、第1のスイッチ13のON/OFF制御を行い、第1の無給電素子12同士の接続/遮断の制御を行なう。
また、制御回路42から制御信号Cを第3のスイッチのバイアス発生回路45に与えて所定のバイアスを発生し、第3のスイッチ20のON/OFF制御を行い、第1の無給電素子12と第2の無給電素子12および第2の無給電素子12同士を接続/遮断制御を行なう。
さらに、制御回路42から制御信号Bを第2のスイッチのバイアス発生回路44に与えて所定のバイアスを発生し、第2のスイッチ16のON/OFF制御を行なって所定の第1の無給電素子12を地板15と短絡させる。
そして、制御回路42から制御信号Dを第4のスイッチのバイアス発生回路46に与えて所定のバイアスを発生し、第4のスイッチ21のON/OFF制御を行なって所定の第2の無給電素子を地板と短絡させる。上記のように第1〜第4のスイッチのON/OFFの組み合わせによって目的とする放射パターンを得る。
以上のように、本実施例6の無線システムは、第1〜第4のスイッチのON/OFFの組み合わせによって、3次元で指向性制御が可能である。そのため所望の方向に放射パターンを向けることによって高い利得を実現でき、良好な送受信が行なえる。また、本実施例6の無線システムは、本発明の指向性制御マイクロストリップアンテナから構成される小型な無線モジュールを用いているため、小型化な無線システムを実現できる。
なお、実施例5の無線モジュールおよび実施例6の無線システムは、実施例4のアンテナを用いた例であるが、実施例1のアンテナを用いた場合はXYの2次元で、実施例2,3のアンテナを用いた場合は3次元で指向性制御が可能でありかつ平面構造であるため同様の効果が期待できる。無線モジュールおよび無線システムが目的とする指向性制御の範囲によって、本発明の実施例1〜実施例4の指向性制御マイクロストリップアンテナを適宜選択すれば良い。
<実施例7>
次に、本発明に係る指向性制御マイクロストリップアンテナの別の実施例(実施例7)について説明する。
図16は、本発明の実施例7を説明するための図である。同図(a)は上面図、同図(b)は断面図を示している。
本実施例に係るアンテナは、同図に示すように、給電素子11を第1の無給電素子12がマトリクス状に取り囲み、さらにその外周を第2の無給電素子19がマトリックス状に取り囲み、隣接した無給電素子間、及び給電素子11と第1の無給電素子12はスイッチによって接続または遮断される構造となっている。
また、給電素子の給電点には整合回路24が接続されている。
さらに、第1の無給電素子12、第2の無給電素子19には、各々第2のスイッチ16、第4のスイッチ16が設けられており、地板15と短絡できる構造を持っている。
アンテナの構成を詳細に記述すると、比誘電率3.9の石英基板からなる誘電体10の下面にCu層からなる地板15が形成されており、誘電体10の上面にはCu層からなる矩形の給電素子11と、該給電素子11を取り囲んで第1の矩形の無給電素子12がピッチ0.3λo(λo:自由空間での共振周波数の波長)で8個配置されており、さらに、第1の無給電素子19の外周には第2の矩形の無給電素子19がピッチ0.3λoでマトリックス状に3周(第2の無給電素子は72個)配置されている。給電素子11、第1の無給電素子12、第2の無給電素子19の大きさはY方向でL,X方向でWとなっており、第1の無給電素子12,第2の無給電素子19は給電素子11と同じ共振長を持つ。
また、給電素子11には給電点14が設けられており、誘電体10の裏面に積層されたポリイミド基板からなる第2の基板22上に設けられた整合回路24を介して高周波信号18が供給される構造となっている。
また、隣接した第1の無給電素子12間にはMEMSスイッチからなる第1のスイッチ13が設けられており、隣接した第1の無給電素子12と第2の無給電素子19間、及び第2の無給電素子19間にはMEMSスイッチからなる第3のスイッチ20が設けられており、隣接した給電素子11と第1の無給電素子12間にもMEMSスイッチからなる第5のスイッチ25が設けられている。
第1のスイッチ13,第3のスイッチ20、第5のスイッチ25とも、図14に示すような上部電極31,下部電極32,上部電極31に接続されたヒンジ33,バイアスラインから構成され、上部電極31は隣接した各素子の対向する辺とほぼ同じ長さを持ち、ヒンジ33によって可動できる。
そのため、上部電極31にバイアスが印加されると、上下電極間に静電引力が発生し、実施例3,実施例4と同様に、第1のスイッチ13および、第3のスイッチ20は隣接する無給電素子の対向する辺のほぼ全面で接続される。また、第5のスイッチ25は隣接する給電素子11と第1の無給電素子12の対向する辺のほぼ全面で接続される。
一方、上部電極31のバイアスが遮断されると、上下電極間の静電引力が無くなり、実施例3,実施例4と同様に、第1のスイッチ13および第3のスイッチ20は隣接する無給電素子の対向する辺のほぼ全面で遮断される。また、第5のスイッチ25は隣接する給電素子11と第1の無給電素子12の対向する辺のほぼ全面で遮断される。
なお、第1のスイッチ13,第3のスイッチ20,第5のスイッチ25のON/OFFはバイアスラインによって個別に選択できるようになっている。
また、8個の第1の無給電素子12に設けられた地板15と短絡する第2のスイッチ16はPINダイオードからなり、第2のスイッチ16がON状態では第1の無給電素子12は地板15と短絡し、第2のスイッチ16がOFF状態では第1の無給電素子12は地板15から開放される構造となっている。なお、8個の第1の無給電子素子12に各々接続された第2のスイッチ16は図示されていないバイアスラインによって個別にON/OFF状態が選択できる。
さらに、72個の第2の無給電素子19に設けられた地板15と短絡する第4のスイッチ21もPINダイオードからなり、第4のスイッチ21がON状態では第2の無給電素子19は地板15と短絡し、第4のスイッチ21がOFF状態では第2の無給電素子19は地板15から開放される構造となっている。なお、72個の第2の無給電素子19に各々接続された第2のスイッチ16も図示されていないバイアスラインによって個別にON/OFF状態が選択できる。
本実施例のアンテナは、給電素子11と無給電素子がMEMSスイッチによって接続できる構造となっているので、第5のスイッチ25のON/OFF,第1のスイッチ13および第3のスイッチ20のON/OFFの組み合わせによって複数の共振長を持つことができるので、多周波対応アンテナを実現できる。
本実施例のアンテナを2周波(高周波側/低周波側の共振モード)で使用する場合について説明する。高周波対応とする場合の第1のスイッチ13,第3のスイッチ20,および第5のスイッチ25のON/OFFの組み合わせの一例を図17−Aに示す。第5のスイッチ25を全てOFF状態として給電素子11と第1の無給電素子12を分離すると、給電素子11のみからなる放射素子A(一点鎖線で囲まれた領域)が形成される。放射素子Aは給電素子11からなるので共振長はLとなり、基本モードで励振されて高周波対応(高周波側の共振モード)を実現できる。
高周波側の共振モードでの指向性制御を一例を、図17−B,図17−Cを用いて説明する。
第5のスイッチ25を全てOFF状態として給電素子11と第1の無給電素子12を分離すると、実施例4と同様なアンテナ構成が実現できるので、放射素子A(給電素子11)を取り囲む第1の無給電素子12と第2の無給電素子19をスイッチで接続することによって指向性を変化させることができる。
また、第1の無給電素子12,第2の無給電素子19を各々第2のスイッチ16,第4のスイッチ21によって地板15と短絡させることによっても指向性を変化させることができる。
例えば、図17−Bの例では、給電素子11の−X側にある3個の第1の無給電素子12と、前記第1の無給電素子12と−X側で隣接する3個の第2の無給電素子19との間にある2個の第1のスイッチ13と5個の第3のスイッチ20をON状態にし、3個の第1の無給電素子12と3個の第2の無給電素子19が接続された無給電素子(領域A)を形成している。なお、領域Aにある第1の無給電素子12、第2の無給電素子19に接続された第2のスイッチ16、第4のスイッチ21はOFF状態となっており、領域Aにある第1の無給電素子12、第2の無給電素子19を地板15から開放している。
その他の第1のスイッチ13,第3のスイッチ20はOFF状態であり、領域Aの外側にある5個の第1の無給電素子12、69個の第2の無給電素子19は隣接した無給電素子と遮断され、かつ第2のスイッチ16、第4のスイッチ21によって全て地板15と短絡されている。
放射素子A(給電素子)がY方向の辺LをλH/2(λH:高周波対応の時の誘電体中での共振周波数の波長)とする周波数の基本モードで励振された場合、領域Aの外にある5個の第1の無給電素子12、69個の第2の無給電素子19は給電素子11との素子間相互結合によってY方向の電流が励起されてλH/2の基本モードが発生するが、領域Aの外側にある第1の無給電素子12は第2のスイッチ16によって地板15と短絡し、第2の無給電素子19は第4のスイッチ21によって地板15と短絡しているため、第1の無給電素子12や第2の無給電素子19に励起される電流は著しく低下し、放射パターンへの影響は小さくなる。
その結果、放射パターンは給電素子11と領域Aの接続された無給電素子によってのみ決定され、図17−Bの場合は+X方向に25〜35度ビームを傾かせることができた。
また、図17−Cでは 放射素子A(給電素子)の+X側にある3個の第1の無給電素子12のうち2個の第1の無給電素子12を接続し、残りの第1の無給電素子12を遮断し,−X側についても同様な接続として領域B,Cに接続された無給電素子を配置した。なお、領域B,Cにある第1の無給電素子12に接続された第2のスイッチ16はOFF状態として、領域B,Cにある第1の無給電素子12を地板15から開放している。なお、その他の第1のスイッチ13,第3のスイッチ20は全てOFF状態であり、領域B,Cの外側にある4個の第1の無給電素子12、72個の第2の無給電素子19は隣接した無給電素子と遮断され、かつ第2のスイッチ16、第4のスイッチ21によって全て地板15と短絡させた。
上記のようなスイッチのON/OFFの組み合わせでは+Y方向に20〜35度ビームを傾かせることができた。
また、領域A,B,Cの外側にある第1の無給電素子12,第2の無給電素子19に接続された第2のスイッチ16,第4のスイッチ21の一部をOFFとして第1の無給電素子12,第2の無給電素子19の一部を地板15と開放すると、ビームの仰角をより細かく制御できた。
次に、低周波対応とする場合の第1のスイッチ13,第3のスイッチ20,第5のスイッチ25のON/OFFの組み合わせの一例を図18−Aに示す。
第1のスイッチ13,第5のスイッチ25を全てON状態とし、第1の無給電素子12と第2の無給電素子19間にある第3のスイッチ20を全てOFF状態とすると、給電素子11と第1の無給電素子12、第1の無給電素子12同士が接続されて、給電素子11と8個の第1の無給電素子12からなる放射素子B(一点鎖線で囲まれた領域)が形成される。放射素子Bの共振長はL2であり、放射素子A(給電素子)の3倍以上の共振長を持つので低周波側で共振(低周波側の共振モード)できる。
低周波側の共振モードでの指向性制御を一例を、図18−Bおよび図18−Cを用いて説明する。給電素子11と8個の第1の無給電素子12から形成された放射素子Bは共振長がL2であるので、第2の無給電素子19を接続してL2の高次モードが発生する無給電素子を放射素子Bに隣接させることで指向性を変化させることができる。
また、第2の無給電素子19に接続された第4のスイッチ21をON状態にして第2の無給電素子19を地板15と短絡させることによっても指向性を変化させることができる。
例えば、図18−Bの例では、放射素子Bの+X側にある27個の第2の無給電素子19を第3のスイッチ20によって接続して無給電素子(領域D,点線で囲まれた領域)を形成する。
領域Dにある第2の無給電素子19に接続された第4のスイッチ21はOFF状態となっており、領域Dにある第2の無給電素子19は地板15から開放されている。
その他の第3のスイッチ20はOFF状態であり、領域Dの外側にある45個の第2の無給電素子19は隣接した無給電素子と遮断され、かつ第4のスイッチ21によって全て地板15と短絡されている。
放射素子BがY方向の辺L2をλL/2(λL:低周波対応の時の誘電体中での共振周波数の波長)とする周波数の基本モードで励振された場合、領域Dの外にある45個の第2の無給電素子19は放射素子Bと共振長が異なるため誘起されるY方向の電流は小さくなる。
さらに、第2の無給電素子19は第4のスイッチ21によって地板15と短絡されているため、第2の無給電素子19に励起された電流は著しく抑制されて放射パターンへの影響は非常に小さくなる。
その結果、放射パターンは放射素子Bと領域Dの接続された無給電素子によってのみ決定される。領域Dにある第3のスイッチ20によって接続された無給電素子はY方向のさがほぼ3×L2であるので、Y方向の辺を3×(λL/2)とする高次モードが発生する。そのため放射パターンを天頂から−X側に傾けることができる。本例では−X側に−25〜−40度傾けることができた。
また、図18−Cでは 放射素子Bに対し+X側にある27個の第2の無給電素子19のうち18個の第2の無給電素子19を接続し、残りの第2の無給電素子19を遮断し,−X側についても同様な接続として領域E,Fに接続された無給電素子(点線で囲まれた領域)を配置した。
なお、領域E、Fにある第2の無給電素子19に接続された第4のスイッチ21はOFF状態として、領域E,Fにある第2の無給電素子19を地板15から開放している。なお、その他の第3のスイッチ20は全てOFF状態であり、領域E,Fの外側にある36個の第2の無給電素子19は隣接した無給電素子と遮断され、かつ第4のスイッチ21によって全て地板15と短絡されている。
上記のようなスイッチのON/OFFの組み合わせによって+Y方向に20〜30度ビームを傾かせることができた。
また、領域D,E,Fの外側にある第1の無給電素子12,第2の無給電素子19に接続された第2のスイッチ16,第4のスイッチ21の一部をOFFとして第1の無給電素子12,第2の無給電素子19の一部を地板15と開放すると、ビームの仰角をより細かく制御することが可能であった。
以上のように、本実施例のアンテナの構造を採用すると、第1〜第4のスイッチのON/OFFの組み合わせを変えることによって、2周波対応を実現しながら3次元方向で非常に多様な指向性パターンを実現できる。
次に、本実施例に採用されている整合回路24の構成および動作について説明する。
矩形のマイクロストリップアンテナの入力インピーダンスは近似式から求めることができ、図19に示すように、共振方向の辺の長をL,共振方向と直交する辺の長さをW,給電点14のインセット位置をL’、誘電体の比誘電率をεr、アンテナ端での入力インピーダンスをRa、インセット給電での入力インピーダンスをRinとすると、下記(1)式、(2)式のように記述される。
(1),(2)式で判るように矩形のマイクロストリップアンテナではアンテナ端での入力インピーダンスRaは(L/W)2に比例し、インセット給電での入力インピーダンスRinは(L’/L)に影響される。
本実施例のアンテナも基本的には矩形のマイクロストリップアンテナの構造をしている。高周波側の共振モード(放射素子A,つまり給電素子単体で共振)と低周波側での共振モード(放射素子Bで共振)では(L’/L)が大きく異なるため同等の入力インピーダンスにならない。そのため給電素子11の入力インピーダンスを給電線の特性インピーダンス(通常は50Ω)に合わせた場合は低周波側で動作させるとアンテナの入力インピーダンスが給電線の特性インピーダンスと大きくずれ、反射が大きくなる。
本実施例では、2周波で整合を取るために給電点14に整合回路24を設けている。整合回路24の詳細を図20に示す。同図に示すように、整合回路24はスパイラルインダクタとキャパシタをπ型に組み合わせた回路からなり、切り替えスイッチ26によって50Ωの給電線と整合回路を切り替えることができる。
例えば、給電素子の入力インピーダンスが50Ωになるように給電点を配置した場合は、高周波側での共振モードでは切り替えスイッチ26を50Ωの給電線側に入れてアンテナ27とRF回路28を直結する。その結果、高周波側の共振モードでは、アンテナの入力インピーダンスは指向性制御を行った場合も放射素子A(給電素子)の入力インピーダンスとほぼ等しくなるので、反射が抑制されて良好な送受信が可能となる。
一方、低周波側の共振モードでは切り替えスイッチ26を整合回路24側に入れ、アンテナ27とRF回路28の間に整合回路24を接続する。整合回路24のL,Cの定数を適切に選ぶことによって放射素子Bの入力インピーダンスを50Ωに整合することができ、低周波側の共振モードでも反射が抑制されて良好な送受信が可能となる。
以上のように、給電素子11の給電点14に整合回路24を設けることによって2周波とも良好な送受信が可能となる。
なお、本例では、π型の整合回路24を用いたが、整合回路24はT型,L型整合回路でも良く、λ/4変成器や移相器とインダクタ,キャパシタの組み合わせでも良く、一般的に使用されている整合回路が使用できる。
また、定数が可変できる整合回路を用いる場合は、アンテナ27に整合回路を直結し、高周波側,低周波側でのアンテナの入力インピーダンスに合わせて素子の定数を適切に選ぶことによって2周波とも整合が可能となり、良好な送受信が行える。
また、本実施例に用いた第1のスイッチ13,第5のスイッチ25はON状態になると隣接した第1の無給電素子12同士または給電素子11と第1の無給電素子12は対向する辺のほぼ全面で接続される構造となっている。そのため第1のスイッチ13,第5のスイッチ25を全てON状態にして低周波対応にした場合、4個のスイッチ(2個の第1のスイッチ13と2個の第5のスイッチ25)の間に形成される空隙を小さくすることができる。そのため放射素子Bに流れるY方向の電流は空隙によって制限されにくくなり、放射素子Bの帯域幅を向上でき、低周波対応の場合のアンテナ自体の帯域幅を改善できる。
図21は、第1のスイッチ13,第5のスイッチ25で囲まれた空隙をさらに小さくするスイッチの構造であり、第1のスイッチ13,第5のスイッチ25は他のスイッチと対向する先端部分の形状がV形状に延長され、4つのスイッチの間隔がX状になっている。
そのため、4個のスイッチで囲まれた空隙はさらに小さくなり、第1のスイッチ13,第5のスイッチ25の導通、遮断状態の組み合わせによって低周波対応の放射素子を形成した場合、給電素子11と第1の無給電素子12が接続して形成される放射素子に流れるY方向の電流は第1のスイッチ13,第5のスイッチ25でさらに制限されなくなり、放射素子の帯域幅の低下はさらに抑制され、アンテナ自体の帯域幅をより改善できる。
また、本実施例では、第5のスイッチ25にMEMSスイッチを用いた。MEMSスイッチは100GHz程度までの高周波信号も良好に遮断でき、さらに挿入ロスも小さいことから、より高い周波数、例えばサブミリ波〜ミリ波を対象とした多周波対応指向性制御アンテナを構成することができる。
さらに、第5のスイッチ25にはPINダイオードも使用できる。PINダイオードは安価なチップ部品が入手でき、かつ20GHzまでは良好に高周波信号を遮断できることから、2.4GHzや5GHzを用いた無線LANや携帯端末での多周波対応指向性制御アンテナに適している。
また、本実施例では、給電素子11、第1の無給電素子12、第2の無給電素子19の外形は同一としたが、給電素子11単体で共振した場合に素子間相互結合によって第1の無給電素子12,第2の無給電素子19が励振できれば良いので、同一である必要はなくほぼ同じ形状であれば良い。
<実施例8>
図22(a)(b)に本発明の3周波対応指向性制御アンテナの一例を示す。本実施例のアンテナは低周波,中間周波,高周波の3モードで動作し、かつ各々の周波数帯で指向性制御が可能なアンテナである。
同図(a)は上面図、同図(b)は断面図を示しており、本実施例のアンテナは、給電素子11を第1の無給電素子12がマトリクス状に取り囲み、さらにその外周を第2の無給電素子19が6重に取り囲み、隣接した無給電素子間、及び給電素子11と第1の無給電素子12はスイッチによって接続または遮断される構造となっている。
また、給電素子11の給電点14には定数が可変できる整合回路24Aが接続されている。
さらに、第1の無給電素子12、第2の無給電素子19には各々第2のスイッチ16、第4のスイッチ21が設けられており、地板15と短絡できる構造を持っている。
アンテナの構成を詳細に記述すると、比誘電率3.9の石英基板からなる誘電体10の下面にCu層からなる地板15が形成されており、誘電体10の上面にはCu層からなる矩形の給電素子11と、該給電素子11を取り囲んで第1の矩形の無給電素子12がピッチ0.3λo(λo:自由空間での共振周波数の波長)で8個配置されており、さらに第1の無給電素子12の外周には第2の矩形の無給電素子19がピッチ0.3λoでマトリックス状に6周配置されている。給電素子11、第1の無給電素子12、第2の無給電素子19の大きさはY方向でL,X方向でWとなっており、第1の無給電素子12,第2の無給電素子19は給電素子11と同じ共振長を持つ。
また、給電素子11の給電点14には、誘電体20裏面に積層されたポリイミド基板からなる第2の基板22上に設けられた定数が可変できる整合回路24Aを介して高周波信号18が供給される構造となっている。
また、隣接した第1の無給電素子12と第2の無給電素子19間、及び第2の無給電素子19の間にはMEMSスイッチからなる第1のスイッチまたは第3のスイッチが設けられており、隣接した給電素子11と第1の無給電素子12間にもMEMSスイッチからなる第5のスイッチ25が設けられている。
第1のスイッチ13,第3のスイッチ20、第5のスイッチ25とも、図14に示すように、上部電極31,下部電極32,上部電極31に接続されたヒンジ33,バイアスラインから構成され、上部電極31は隣接した各素子の対向する辺とほぼ同じ長さを持ち、ヒンジ33によって可動できる構造となっている。なお、第1のスイッチ13,第3のスイッチ20,第5のスイッチ25のON/OFFはバイアスラインによって個別に選択できるようになっている。
また、第1の無給電素子12、第2の無給電素子19にPINダイオードからなる第2のスイッチ16,第4のスイッチ21が設けられており、該第2のスイッチ16,第4のスイッチ21がON状態では第1の無給電素子12,第2の無給電素子19は地板15と短絡し、第2のスイッチ16,第4のスイッチ21がOFF状態では第1の無給電素子12,第2の無給電素子19は地板15から開放される構造となっている。第2のスイッチ16,第4のスイッチ21も図示されていないバイアスラインによって個別にON/OFF状態が選択できるようになっている。
本実施例のアンテナを3周波(高周波側,中間周波数,低周波側の共振モード)で使用する場合について説明する。
高周波対応とする場合は、第5のスイッチ25を全てOFF状態として給電素子11と第1の無給電素子12を分離し、給電素子11のみからなる放射素子A(点線で囲まれた領域)を形成する。放射素子Aは給電素子11からなるので共振長はLとなり、基本モードで励振されて高周波対応(高周波側の共振モード)となる。
中間周波対応とする場合は、第1のスイッチ3,第5のスイッチ25を全てON状態とし、第1の無給電素子12と第2の無給電素子19間にある第3のスイッチ20を全てOFF状態にして、給電素子11と第1の無給電素子12、第1の無給電素子12同士が接続された放射素子Bを形成する。
給電素子11と8個の第1の無給電素子12からなる放射素子B(一点鎖線で囲まれた領域)の共振長はL2であり、放射素子A(給電素子11)の3倍以上の共振長を持つので中間周波数で共振(中間周波数帯の共振モード)する。
低周波対応とする場合は、2点鎖線で囲まれた領域にある第1のスイッチ13,第3のスイッチ20,第5のスイッチ25をON状態とし、給電素子11と8個の第1の無給電素子12と16個の第2の無給電素子19が接続した放射素子Cを形成する。給電素子11,8個の第1の無給電素子12,16個の第2の無給電素子19からなる放射素子C(二点鎖線で囲まれた領域)の共振長はL3であり、放射素子A(給電素子)の5倍以上の共振長を持つので低周波側で共振(低周波側の共振モード)する。
以上のように、本実施例のアンテナの構造を採用すると、第1のスイッチ13,第3のスイッチ20,第5のスイッチ25のON/OFFの組み合わせによって3周対応が実現できる。なお、各周波数帯での指向制御は実施例7と同様な方法を用いることで実現できる。
次に、本実施例に用いた整合回路24Aの構成および動作について説明する。
本実施例のアンテナは3周波対応であり、各周波数帯で放射素子のL’/Lが大きく異なるため、給電点に整合回路が必要である。整合回路24Aの詳細を図23に示す。整合回路24AはバラクタダイオードとスパイラルインダクタをC,L,Cに組んだπ型整合回路からなり、切り替えスイッチ26によって50Ωの給電線と整合回路24Aを切り替えることができる。
例えば、給電素子11の入力インピーダンスが50Ωになるように給電点14を配置した場合は、高周波側での共振モードでは切り替えスイッチ26を50Ωの給電線側に入れてアンテナ27とRF回路28を直結する。その結果、高周波側の共振モードでは、アンテナの入力インピーダンスは指向性切り替えを行った場合も放射素子A(給電素子11)の入力インピーダンスとほぼ等しくなるので、反射が抑制されて良好な送受信が可能となる。
一方、中間周波数帯と低周波側の共振モードでは、切り替えスイッチ26を整合回路24A側に入れ、アンテナ27とRF回路28の間に整合回路24Aを接続する。整合回路24Aに用いたバラクタダイオードのCを適切に選び、放射素子B,放射素子Cの入力インピーダンスを50Ωに整合させると、中間周波数帯・低周波側の共振モードとも反射が抑制されて良好な送受信が可能となる。
以上のように、給電素子の給電点に定数を可変できる整合回路を設けることによって3周波とも良好な送受信が可能となる。
なお、本実施例も、π型整合回路の他にT型,L型整合回路を用いることができ、移相器とインダクタ,キャパシタの組み合わせでも何ら構わない。
また、本実施例では、定数が可変できる素子としてバラクタダイオードを用いたが、MEMSによる可変インダクタを採用しても良い。
また、整合回路に空間的余裕がある場合は、中間周波数帯用の固定式の整合回路と低周波側用の固定式の整合回路を各々設け、切替えスイッチによって各周波数帯で50Ωの給電線と2個の整合回路を切替えても良い。
なお、本実施例では、給電素子11と第1の無給電素子12、第2の無給電素子19の外形は全て同一としたが、給電素子11単体で共振した場合に第1の無給電素子12や第2の無給電素子19が素子間相互結合によって励振されれば良いので、同一である必要はなく、ほぼ同じ形状であれば良い。
また、本実施例では第1の無給電素子12を第2の無給電素子19が6周取り囲む構造であるため、3周波対応となったが、第1の放射素子をさらに多くの第2の無給電素子19でマトリックス状に取り囲み、第1の無給電素子12と第2の無給電素子19、第2の無給電素子19同士を接続する第3のスイッチ20を設けると、より多くの周波数帯で指向性制御可能となる。
<実施例9>
本発明に係る無線モジュールの実施例を説明する。
図24は、本実施例に係る無線モジュール一例を図24に示す。
本実施例の無線モジュールは実施例7のアンテナを用いている。またアンテナを構成している第2の基板22の下層には多孔質ポリイミド基板からなる第3の基板29が積層された構造を持ち、第3の基板29上にはチップ部品を用いてフロントエンド回路23が構成され、第3の基板29を貫通するビアホール17によってフロントエンド回路23と給電線が接続されている。
本実施例の無線モジュールは、実施例7のアンテナを用いているので、2周波で指向性制御が可能である。そのため、各周波数帯で所望波の方向にアンテナの最大放射角を向けることにより大きな利得が得られ、良好な送受信が行なえる。また2周波に対応できるため、1個の無線モジュールで2個の規格に対応でき、無線モジュールを小型化できる。
さらに、アンテナの下層、つまり第2の基板22の下方に第3の基板29を積層し、第3の基板29にフロントエンド回路23を設けているので、さらに小型な無線モジュールを実現できる。
なお、本例では、第3の基板29にフロントエンド回路23のみを実装したが、フロントエンド回路23とベースバンド回路の両方を実装してもよく、フロントエンド回路23とベースバンド回路の一部を実装しても同様に無線モジュールを小型化できる。
次に、本発明に係る無線システムの実施例を図25に示す。
本実施例では、図24に示した無線モジュールを使用しており、アンテナ送信系48・アンテナ受信系49を切替える送受信切替えスイッチ41に接続されている。所望の周波数に従って制御回路42によって第1のスイッチ13,第5のスイッチ25の導通、遮断の組み合わせを設定して放射素子Aまたは放射素子Bを形成する。
その後、高周波対応であれば制御回路24から制御信号A,B,C,Dを第1のスイッチ13,第2のスイッチ16,第3のスイッチ20,第4のスイッチ21それぞれのバイアス発生回路43〜46に与えて所定のバイアスを発生し、第1のスイッチ13,第2のスイッチ16,第3のスイッチ20,第4のスイッチ21の導通/遮断を行い、第1の無給電素子12,第2の無給電素子19を接続するか、または第1の無給電素子12,第2の無給電素子19を地板15と短絡してXYの2次元でビーム切替えを行う。
また、低周波対応であれば、制御回路42から制御信号C、Dを第3のスイッチと第4のスイッチのバイアス発生回路45,46に与えて所定のバイアスを発生し、第2の無給電素子19同士を接続または地板15と短絡するすることによってXYの2次元でビーム切替えを行う。
また、2周波でのインピーダンス整合は以下のようにして行う。制御回路から制御信号Fを切り替えスイッチのバイアス発生回路に与え所定のバイアスを発生して整合回路の切り替えスイッチをON/OFFし、高周波対応ではアンテナを直接フロントエンド回路に接続する。一方低周波対応ではアンテナを整合回路に接続してからフロントエンド回路に接続する。
さらに、送信あるいは受信モードを考慮して、制御回路42より制御信号Gを送受信切替えスイッチ制御回路47に与え所定のバイアスを発生し、送受信切替えスイッチ41にて送受信の切替えを行いアンテナ40とフロントエンド回路23を電気的に導通して通信を行なう。
以上のように、本実施例の無線システムは、2周波に対応して指向性制御が可能である。よって1個の無線システムで2つの周波数規格に対応でき、無線システム自体を小型化できる。
また、指向性制御が可能であるため、所望の方向に放射パターンを向けることによって高い利得を実現でき、良好な送受信が行える。さらに電波状況によっては周波数や指向性を切替えることで絶えず良好な送受信を行なうことができる。
なお、バイアス発生回路43〜51を省略し、制御信号A,B,C,D,E,F,Gを第1〜5のスイッチ13,16,20,21,25、切り替えスイッチ26、送受信切り替えスイッチ41に直接に与えてスイッチの導通/遮断を行っても良い。