JP2006114302A - シャドウマスク - Google Patents
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Abstract
【課題】 電子ビームの欠けを極力抑えてブラウン管の蛍光体上に所定大きさと形状のビームスポットをランディングさせることができるスロット構造を有するシャドウマスクを提供する。
【解決手段】 略矩形状の裏側孔部21と略矩形状の表側孔部22とで連通された貫通孔11がマスク本体の水平方向X及び垂直方向Yに多数配列してなるシャドウマスクにおいて、少なくともマスク本体の中心を通る水平軸の外周部及びその中心を通る対角軸の外周部に位置する貫通孔11が、貫通孔間に垂直方向Yで介在するブリッジ部23の方向に張り出してその貫通孔11の平面視形状を大きくする張り出し空間部25を有し、その張り出し空間部25が、マスク本体の中心を通る垂直軸の側を張り出し始端としてテーパー状に拡開しているように構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】 略矩形状の裏側孔部21と略矩形状の表側孔部22とで連通された貫通孔11がマスク本体の水平方向X及び垂直方向Yに多数配列してなるシャドウマスクにおいて、少なくともマスク本体の中心を通る水平軸の外周部及びその中心を通る対角軸の外周部に位置する貫通孔11が、貫通孔間に垂直方向Yで介在するブリッジ部23の方向に張り出してその貫通孔11の平面視形状を大きくする張り出し空間部25を有し、その張り出し空間部25が、マスク本体の中心を通る垂直軸の側を張り出し始端としてテーパー状に拡開しているように構成する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、カラーブラウン管の蛍光面に略矩形状のビームスポットを成形するためのシャドウマスクに関する。
シャドウマスク1は、図12に示すように、カラーブラウン管101の蛍光面102に対向するように配置され、電子銃103から放出されて偏向ヨーク104の磁界により偏向された電子ビーム105をカラーブラウン管100の蛍光面102の所定位置に正しくランディングさせるために使用されるものである。
図8は、シャドウマスクの各部に形成されているスロットの位置関係を説明する模式的な平面図である。シャドウマスク1は、略矩形状のマスク本体1aを有しており、そのマスク本体1aには、厚さ方向に貫通する略矩形状の貫通孔を有するスロット2(2a、2b、2c、2dを含む)が平面視での水平方向X及び垂直方向Yに多数配列されている。なお、本願では、貫通孔とその貫通孔を形成する表側孔部及び裏側孔部とで構成される単位構造を「スロット」と呼び、また、図8において、符号6はマスク本体1aの対向する隅部を連結する2つの対角軸5,5の交点で表される中心点(中心ともいう。)であり、符号3はその中心点6を通る水平軸であり、符号4はその中心点6を通る垂直軸である。スロット2aはマスク本体1aの中心点6でのスロットであり、スロット2bは垂直軸4上の外周部のスロットであり、スロット2cは水平軸3上の外周部のスロットであり、スロット2dは対角軸5上の外周部のスロットである。また、図8は模式図であり、スロットを大きく誇張して表している。
こうしたシャドウマスク1が図12に示すカラーブラウン管101の蛍光面102に対向するように配置された場合、電子銃103から放出された電子ビーム105は、シャドウマスク1の中央部のスロット2aに対しては真っ直ぐに入射するが、その中央部から遠ざかる各軸(水平軸3、垂直軸4及び対角軸5)の外側領域である外周部のスロット2b、2c、2dに対しては斜めに入射する。このため、シャドウマスク1では、スロットの位置に応じて、スロットを構成する表側孔部の形成位置と裏側孔部の形成位置とが調整されている。
図9は、マスク本体1aの各部に形成されるスロットの形状を示す模式的な平面図である。符号11はスロットが有する貫通孔であり、この貫通孔11は、エッチングにより形成される表側孔部12と裏側孔部13とが連通することにより形成される。裏側孔部13は電子ビーム7が入射する側に形成され、表側孔部12は電子ビーム7が出射する側に形成されている。これらの裏側孔部13と表側孔部12は略矩形状になるように形成されており、表側孔部12は電子ビーム7が通過する際に邪魔とならないように大きな面積で形成されている。
マスク本体1aの中央部のスロット2aは、図9(a)に示すように、電子ビームが正面から入射するので、貫通孔11が表側孔部12の略中央に位置するように形成されている。図9(b)は垂直軸4の外周部に位置するスロット2bを示し、同図(c)は水平軸3の外周部に位置するスロット2cを示し、同図(d)は対角軸5の外周部に位置するスロット2dを示している。マスク本体1aの外周部に位置する各スロット2b,2c,2dには電子ビーム7が斜めに入射するので、貫通孔11を抜けて通過する電子ビーム7の邪魔にならないように、表側孔部12が貫通孔11に対してマスク本体1aの外周側にシフトするように形成される。
しかしながら、図9に示す態様のシフト配置を行っても、マスク本体1aの外周部に形成されるスロット2b,2c,2dのうち、特に水平軸の外周部及び対角軸の外周部に形成されるスロット2c、2dにおいては、そのスロット2c、2dに対して斜めに入射する電子ビーム7の一部が表側孔部12の側壁で遮断され、電子ビーム7をブラウン管の蛍光面上に所定の矩形でランディングさせることができないという問題があった。
こうした問題に対し、特許文献1及び2には、略矩形状の貫通孔を形成する2つの長辺のうちマスク本体1aの中央から遠い側の長辺について、その長辺の上下両端の少なくとも一端(特許文献1)又は両端(特許文献2)を垂直軸4から遠ざかる方向に膨出させた構造のシャドウマスクが提案されている。
図10は、これらの特許文献に記載された従来のスロット形状を示す正面図である。図10(a)は、図8に示すマスク本体1aを平面視した場合において、水平軸3の右方向外周部に位置するスロット2cに対応する形態であり、図10(b)は、図8に示すマスク本体1aを平面視した場合において、右上がりの対角軸5の右上方向外周部に位置するスロット2dに対応する形態である。図10(a)に示すスロット2cは、貫通孔11に対して表側孔部12が右方向である外周側にシフトしていると共に、貫通孔11を形成する2つの長辺のうち外周側である右側の長辺の上部と下部が外周方向に膨出した膨出部11aを有している。一方、図10(b)に示すスロット2dは、貫通孔11に対して表側孔部12が右上方向である外周側にシフトしていると共に、貫通孔11を形成する2つの長辺のうち外周側である右側の長辺の下部が外周方向に膨出した膨出部11aを有している。
また、図11(a)は、図10(a)のスロット2cを通過する電子ビームの経路方向から眺めたA矢視図であり、図11(b)は、図11(a)のB−B線断面図である。表側孔部12は側壁14、15によって形成され、裏側孔部13は側壁16、17によって形成されており、これらの表側孔部12と裏側孔部13とで貫通孔11が形成されている。膨出部11aを有する貫通孔11は、その膨出部11aによって側壁16、17の間が離れているので、図11(b)に示すように、スロット2に所定の角度αで入射する電子ビーム7を遮断することなく通過させることができる。
特開平1−320738号公報
特開平5−6741号公報
ところで、図12に示すような近年の薄型ブラウン管では、シャドウマスクに形成されたスロット2への入射角が特に外周部で顕著に大きくなってきており、例えば図11(b)に示すような角度βで入射する電子ビーム8は、たとえ膨出部11aが形成されたスロット2であっても、図11(a)に示すように、膨出部に11aに近い部位の裏側孔部13の側壁17や表側孔部12の側壁15によって電子ビーム8の一部が遮断される現象が生じる。こうした現象は、膨出部11aに近い部位の裏側孔部13の側壁17や表側孔部12の側壁15が、膨出部11aに近くない貫通孔の略中央部に位置する側壁(図11(b)中の波線)に比べて、所謂立ち上がった形状を呈していることに基づくものであり、膨出部11aに近い部位の立ち上がった側壁15,17によって、電子ビームの一部が蹴られて部分的な欠けが発生し、ブラウン管の蛍光体上に所定の大きさからなる略矩形状のビームスポットをランディングさせることができないという問題を生じさせる。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、電子ビームの入射角が大きくなった場合であっても、電子ビームの欠けを極力抑えてブラウン管の蛍光体上に所定大きさと形状のビームスポットをランディングさせることができるスロット構造を有するシャドウマスクを提供する。
上記目的を達成するための請求項1の本発明のシャドウマスクは、電子ビームが入射する側の略矩形状の裏側孔部と、電子ビームが出射する側の略矩形状の表側孔部とで連通された貫通孔がマスク本体の水平方向及び垂直方向に多数配列してなり、ブラウン管の蛍光面上に略矩形状のビームスポットを形成するシャドウマスクにおいて、少なくとも前記マスク本体の中心を通る水平軸の外周部及びその中心を通る対角軸の外周部に位置する貫通孔が、当該貫通孔間に垂直方向で介在するブリッジ部の方向に張り出して当該貫通孔の平面視形状を大きくする張り出し空間部を有し、当該張り出し空間部が、前記マスク本体の中心を通る垂直軸の側を張り出し始端としてテーパー状に拡開していることを特徴とする。
請求項2の発明は、上記本発明のシャドウマスクにおいて、前記水平軸の外周部に位置する貫通孔が有する張り出し空間部が、上下のブリッジ部の両方向に張り出しており、前記対角軸の外周部に位置する貫通孔が有する張り出し空間部が、水平軸の側のブリッジ部の方向に張り出していることを特徴とする。
請求項3の発明は、上記本発明のシャドウマスクの前記張り出し空間部において、前記張り出し始端から張り出し終端までの張り出し量が少なくとも10μmであることを特徴とする。
請求項4の発明は、上記本発明のシャドウマスクにおいては、前記張り出し空間部の拡開の程度が、前記マスク本体の中心から外周方向に向かうにしたがって連続的又は段階的に大きくなっていることを特徴とする。
請求項5の発明は、上記本発明のシャドウマスクにおいて、少なくとも前記マスク本体の中心を通る水平軸の外周部及びその中心を通る対角軸の外周部に位置する貫通孔の表側孔部が、前記ブリッジ部の方向に張り出して当該表側孔部の平面視形状を大きくする張り出し部を有し、当該張り出し部が、前記マスク本体の中心を通る垂直軸の側を張り出し始端としてテーパー状に拡開していることを特徴とする。
請求項6の発明は、上記請求項5のシャドウマスクにおいて、前記水平軸の外周部に位置する貫通孔の表側孔部が有する張り出し部が、上下のブリッジ部の両方向に張り出しており、前記対角軸の外周部に位置する貫通孔の表側孔部が有する張り出し部が、水平軸から離れる側のブリッジ部の方向に張り出していることを特徴とする。
請求項7の発明は、上記請求項5又は6のシャドウマスクにおいて、前記張り出し部において、前記張り出し始端から張り出し終端までの張り出し量が少なくとも10μmであることを特徴とする。
請求項8の発明は、上記本発明のシャドウマスクにおいて、前記張り出し部の拡開の程度が、前記マスク本体の中心から外周方向に向かうにしたがって連続的又は段階的に大きくなっていることを特徴とする。
上記目的を達成するための請求項9の発明は、電子ビームが入射する側の略矩形状の裏側孔部と、電子ビームが出射する側の略矩形状の表側孔部とで連通された貫通孔がマスク本体の水平方向及び垂直方向に多数配列してなり、ブラウン管の蛍光面上に略矩形状のビームスポットを形成するシャドウマスクにおいて、少なくとも前記マスク本体の中心を通る水平軸の外周部及びその中心を通る対角軸の外周部に位置する貫通孔の表側孔部が、前記貫通孔間に垂直方向で介在するブリッジ部の方向に張り出して当該表側孔部の平面視形状を大きくする張り出し部を有し、当該張り出し部が、前記マスク本体の中心を通る垂直軸の側を張り出し始端としてテーパー状に拡開していることを特徴とする。
本発明のシャドウマスクによれば、少なくともマスク本体の中心を通る水平軸の外周部及びその中心を通る対角軸の外周部に位置する貫通孔が、貫通孔間に垂直方向で介在するブリッジ部の方向に張り出してその貫通孔の平面視形状を大きくする張り出し空間部を有し、その張り出し空間部が、マスク本体の中心を通る垂直軸の側を張り出し始端としてテーパー状に拡開しているので、膨出部に近い部位の裏側孔部の側壁や表側孔部の側壁を後退させて、所謂側壁を寝かせた形状を呈するようにすることができる。したがって、従来にように、膨出部に近い部位の立ち上がった側壁で電子ビームの一部が蹴られて部分的な欠けが発生するという問題を極力抑制することができる。その結果、こうしたスロット構造を有するシャドウマスクは、電子ビームの入射角が大きくなった場合であっても、スロットの貫通孔を通過した電子ビームが表側孔部で遮断されることを極力抑制することができ、良好な輝度を有した状態で、所望の大きさと形状からなるスポットをブラウン管の蛍光面上にランディングさせることができる。
特に、水平軸の外周部に位置する貫通孔が有する張り出し空間部が上下のブリッジ部の両方向に張り出しており、対角軸の外周部に位置する貫通孔が有する張り出し空間部が水平軸側のブリッジ部の方向に張り出すように構成することにより、近年特に要請のある高偏向角の薄型ブラウン管に対応することができる。
また、本発明のシャドウマスクにおいては、さらに、少なくともマスク本体の中心を通る水平軸の外周部及びその中心を通る対角軸の外周部に位置する貫通孔の表側孔部が、ブリッジ部の方向に張り出して表側孔部の平面視形状を大きくする張り出し部を有し、その張り出し部が、マスク本体の中心を通る垂直軸の側を張り出し始端としてテーパー状に拡開するように構成したので、表側孔部の側壁を後退させて、所謂側壁をより一層寝かせた形状を呈するようにすることができる。したがって、従来にように、ブリッジ部に近い部位の側壁で電子ビームの一部が蹴られて部分的な欠けが発生するという問題を極力抑制することができる。その結果、上記同様の効果を奏することができる。
なお、張り出し空間部ないし張り出し部において、張り出し始端から張り出し終端までの張り出し量を少なくとも10μmに設定することにより、電子ビームの遮断を確実に防止することができる。
以下、本発明のシャドウマスクについて図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を含む各種の形態を包含する。
図1は、本発明の一の実施形態に係るシャドウマスクにおいて、その水平軸外周部に形成されたスロット形状を示す平面図であり、図2は、図1と同様のシャドウマスクの対角軸外周部に形成されたスロット形状を示す平面図である。また、図3は、スロット20の短尺方向である図1におけるD−D線断面図である。
本発明のシャドウマスクは、図1、図2及び図8に示すように、電子ビーム8が入射する側の略矩形状の裏側孔部21と、電子ビーム8が出射する側の略矩形状の表側孔部22とで連通された貫通孔11がマスク本体1aの水平方向X及び垂直方向Yに多数配列してなるものである。そして、本発明のシャドウマスクの特徴は、少なくともマスク本体1aの中心6を通る水平軸3の外周部及びその中心6を通る対角軸5,5の外周部に位置する貫通孔11が、その貫通孔11,11間に垂直方向Yで介在するブリッジ部23の方向に張り出してその貫通孔11の平面視形状を大きくする張り出し空間部25を有すると共に、その張り出し空間部25が、マスク本体1aの中心6を通る垂直軸4の側を張り出し始端25aとしてテーパー状に拡開していることにある。
本発明のシャドウマスクは、略矩形状のマスク本体1aに、貫通孔11を有する多数のスロットを備えた構成であり、その貫通孔11は、金属薄板をエッチングして形成された表側孔部22と裏側孔部21とが連通することにより形成される。スロットは、図8に示すように、マスク本体1aの水平方向X及び垂直方向Yに多数配列している。このようなシャドウマスク1は、ブラウン管に装着されることにより磁気シールを行うと共に、ブラウン管の蛍光面に略矩形状のビームスポットを形成するために使用される。
図1及び図2に示すスロット20、30は、いずれも、電子ビーム8が入射する側の略矩形状の裏側孔部21と、電子ビーム8が出射する側の略矩形状の表側孔部22とを備えている。表側孔部22は、図3に示すような側壁26,27で構成され、出射する電子ビーム8の邪魔にならないように大きな面積の略矩形状となっている。また、図1及び図2に示すように、垂直軸4の方向である垂直方向Yにおいては、スロット20,30は狭幅のブリッジ部23を介して配列されている。
図1に示すスロット20は、図8のマスク本体1aを平面視した場合において、水平軸3の右側外周部に形成されるスロットであり、例えば、図8におけるスロット2c及びスロット2cと水平方向X(横方向)で隣接するスロットが対応する。このスロット20は、貫通孔11に対して表側孔部22が水平軸3の外周部側となる右方向外側にシフトしている。貫通孔11の水平軸外周部側の長辺部分には、水平軸外周部側に向かって膨出する膨出部21aが形成されている。膨出部21aは、垂直方向に延びる長辺の両端部(上下端部)から膨出するように形成されており、貫通孔11に斜め方向から入射する電子ビーム8の入射領域を拡大するように作用する。
図2に示すスロット30は、図8のマスク本体1aを平面視した場合において、右上がりの対角軸5の右上外周部に形成されるスロットであり、例えば、図8におけるスロット2d及びスロット2dと垂直方向Y(縦方向)で隣接するスロットが対応する。このスロット30は、裏側孔部21に対して表側孔部22が対角軸外周部側にシフトしている。裏側孔部21における略矩形状の水平軸外周部側の長尺部分には、水平軸外周部側に向かって膨出する膨出部21bが形成されている。この膨出部21bは、水平軸側の片端のみに形成されており、裏側孔部21に斜め方向から入射する電子ビーム8の入射領域を拡大するように作用する。
表側孔部22は、マスク本体1a内でのスロット20,30の位置に応じて、貫通孔11に対する位置を変化させている。すなわち、図8に示すように、マスク本体1aの中心6に位置するスロット2aでは、表側孔部22は貫通孔11を中央に配置するように形成される。この中心6に位置するスロット2aから水平軸3の外周方向に向かうスロット2cは、中心6から離れるにつれて表側孔部22が外周側に徐々にシフトするように形成される。同様に、中心6に位置するスロット2aから垂直軸4の外周方向に向かうスロット2bは、中心6から離れるにつれて表側孔部22が外周側に徐々にシフトするように形成される。
対角軸5,5上又はその対角軸に沿った位置のスロット2dにおいても上記同様であり、表側孔部22は中心6から離れるにつれて表側孔部22が外周側に徐々にシフトするように形成される。例えば図8を平面視した場合、右上がりの対角軸5では、スロットの位置が中心6から右側上方に向かうにつれて、表側孔部22の位置は貫通孔11の位置に対して右方向且つ上方向(すなわち斜め右上方向)に徐々にシフトする。一方、スロットの位置が中心6から左側下方に向かうにつれて、表側孔部22の位置は貫通孔11の位置に対して左方向且つ下方向(すなわち斜め左下方向)に徐々にシフトする。このような表側孔部22のシフトは、右下がりの対角軸5においても同様である。こうしたシフト量の変化は、スロットに斜めに入射する電子ビームの入射角θに対応したものであり、貫通孔11を通過した電子ビームの一部が表側孔部の側壁によって遮られないようにしたものである。
本発明のシャドウマスクにおいては、スロット20、30の貫通孔11に張り出し空間部25が形成されている。この張り出し空間部25は、水平軸3の外周部に位置するスロット20においては、その貫通孔11の垂直方向Yに存在する上下ブリッジ部23,23の両方向に張り出している。一方、対角軸5の外周部に位置するスロット30においては、その張り出し空間部25は、貫通孔11の水平軸3の側に存在するブリッジ部23の方向のみが張り出している。
水平軸3の外周部に位置するスロット20においては、図1に示すように、垂直方向Yに存在する上下のブリッジ部23,23の両方向に張り出し空間部25が形成されているので、膨出部21aと張り出し空間部25とが連設した形態となっている。一方、図2に示すように、対角軸5の外周部に位置するスロット30においても、貫通孔11の水平軸3の側に存在するブリッジ部23の方向のみに張り出し空間部25が形成されているので、張り出し空間部25が形成された部位においては、前記同様、膨出部21aと張り出し空間部25とが連設した形態となっている。
図3は、張り出し空間部25を貫通孔11に形成したスロット20のD−D線断面図を示している。図1に示すスロット20では、側壁26、27によって表側孔部22が形成され、側壁28、29によって裏側孔部21が形成されている。張り出し空間部25を有する貫通孔11は、これらの表側孔部22と裏側孔部21とを所定のパターンでエッチングして形成される。貫通孔11に張り出し空間部25を形成することにより、表側孔部22の側壁27と裏側孔部21の側壁29とを、破線で示した側壁15,17(図11(b)に示した側壁15,17)よりもブリッジ部23の方向に後退させて、所謂側壁を寝かせた形状を呈するようにすることができる。それにより、その張り出し空間部25に相当する部分の貫通孔及び各側壁がブリッジ部23の方向に拡大し、膨出部に近い部位の立ち上がった側壁で電子ビームの一部が蹴られて部分的な欠けが発生しない程度に開孔領域が大きくなる。その結果、従来の態様の貫通孔では通過できていなかった電子ビーム8が、その張り出し空間部25を通過することが可能となる。
このような張り出し空間部25を設けたスロットにおいては、例えば図11(b)に示すように、電子ビーム8が大きな入射角β1で貫通孔11に入射しても、ブリッジ部23の方向に後退した側壁29が電子ビーム8の遮断を極力抑制する。これにより、所定の大きさからなる略矩形状のビームスポットを蛍光面にランディングさせることが可能となる。
テーパー状に形成される張り出し空間部25は、シャドウマスクに入射する電子ビームの入射角θが最も大きくなる対角軸5の最外周部に位置するスロットにおいて、張り出し空間部25の張り出し始端25aから張り出し終端25bまでの張り出し量Lが少なくとも10μmに設定される。本発明においては、対角軸5の最外周部に位置するスロットが有する張り出し量Lを少なくとも10μm以上としたのは、裏側孔部21の側壁や表側孔部22の側壁を後退させて、その側壁で電子ビームの一部が蹴られて部分的な欠けが発生することがないようにするためであり、そうすることができるように任意に設定される。なお、偏向角が110°以上となる薄型のブラウン管に好ましく用いられるシャドウマスクにあっては、対角軸5の最外周部に位置するスロットにおける好ましい張り出し量Lは20μm以上40μm以下である。このときの上限値である40μmは、所望のビームスポット形成の観点から設定される。本発明において、上記範囲の張り出し量Lとすることにより、上述した作用を確実に行うことができ、電子ビームが表側孔部32の側壁で蹴られるのを確実に防止することができる。なお、張り出し空間部25の拡開の程度は、シャドウマスクの各部に入射する電子ビームの入射角に応じ、マスク本体の中心6から外周方向に向かうにしたがって連続的又は段階的に大きくなっているように構成することが好ましい。
図4は、本発明の他の実施形態に係るシャドウマスクにおいて、その水平軸3の外周部に形成されたスロット20を示す正面図であり、図5は、図4に示したシャドウマスクの対角軸5の外周部に形成されたスロット30を示す正面図であり、図6は、図5におけるスロット20短尺方向のE−E線断面図である。
この実施の形態におけるスロット20及び30においても、図1〜図3の実施形態と同様に、ブリッジ部23方向に張り出す張り出し空間部25が貫通孔11に形成されている。また、表側孔部22が裏側孔部21に対して同様にシフトした状態となっている。これに加えて、この実施形態では、表側孔部22に張り出し部33が形成される。すなわち、本発明においては、少なくともマスク本体1aの中心6を通る水平軸3の外周部及びその中心6を通る対角軸5の外周部に位置する貫通孔11の表側孔部22が、ブリッジ部23の方向に張り出してその表側孔部22の平面視形状を大きくする張り出し部33を有すると共に、その張り出し部33が、マスク本体1aの中心6を通る垂直軸4の側を張り出し始端33aとしてテーパー状に拡開していることがより好ましい。
水平軸3の外周部に位置するスロット20の略矩形状の表側孔部22は、図4に示すように、その張り出し部33が、垂直方向Yの上下両側の端部をブリッジ部23の方向に張り出すように形成されている。一方、対角軸5の外周部に位置するスロット30の略矩形状の表側孔部22は、図5に示すように、その張り出し部33が、垂直方向Yの上側(すなわち、水平軸3から離れる側)の端部のみをブリッジ部23方向に張り出すように形成されている。
張り出し部33を表側孔部22に形成することにより、貫通孔11を通過した電子ビームを抜け易くするための開孔領域を大きくすることができる。上述したように、本発明では貫通孔11に張り出し空間部25が形成されているので、その張り出し空間部25と併せてその開孔領域を大きくすることができる。
図6は、表側孔部22に形成された張り出し部33の作用の説明図である。張り出し部33を設けることにより、表側孔部22における側壁27が破線で示す図11(b)の側壁15よりもブリッジ部23の方向に後退させることができるので、所謂側壁をより一層寝かせた形状を呈するようにすることができる。したがって、従来にように、ブリッジ部に近い部位の側壁で電子ビームの一部が蹴られて部分的な欠けが発生するという問題を極力抑制することができる。
このように張り出し部33を設けて表側孔部22の開孔領域を大きくし、且つ張り出し空間部25を設けて貫通孔11の開孔領域を大きくすることにより、電子ビーム8の入射角β2に対する許容範囲が格段に大きくなり、大きな入射角β2の電子ビーム8がスロットに入射した場合であっても、所望の大きさからなる略矩形状のビームスポットをブラウン管の蛍光面にランディングさせることができる。従って、高偏向角の薄型ブラウン管に好ましく適用することができる。
なお、張り出し部33の張り出し量も、張り出し空間部25の張り出し量と同様であり、シャドウマスクに入射する電子ビームの入射角θが最も大きくなる対角軸5の最外周部に位置するスロットにおいて、張り出し始端33aから張り出し終端33bまでの張り出し量Lが少なくとも10μmに設定される。本発明において、対角軸5の最外周部に位置するスロットが有する張り出し量Lを少なくとも10μm以上としたのは、表側孔部22の側壁を後退させて、その側壁で電子ビームの一部が蹴られて部分的な欠けが発生することがないようにするためであり、そうすることができるように任意に設定される。なお、偏向角が110°以上となる薄型のブラウン管に好ましく用いられるシャドウマスクにあっては、対角軸5の最外周部に位置するスロットにおける好ましい張り出し量Lは15μm以上25μm以下である。このときの上限値である25μmは、マスク強度とプレス成型性の観点から設定される。本発明において、上記範囲の張り出し量Lとすることにより、上述した作用を確実に行うことができ、電子ビームが表側孔部32の側壁で蹴られるのを確実に防止することができる。なお、張り出し空間部25の拡開の程度は、シャドウマスクの各部に入射する電子ビームの入射角に応じ、マスク本体の中心6から外周方向に向かうにしたがって連続的又は段階的に大きくなっているように構成することが好ましい。
図7は、本発明のさらに他の実施形態に係るシャドウマスクにおいて、その対角軸5の外周部に形成されたスロット40を示す正面図である。図7においては、右上がりの対角軸5の外周部に位置するスロットに適用した形態であるが、水平軸3の外周部に位置するスロットにも同様に適用することが可能である。
この実施形態に係るシャドウマスクでは、上述した第1形態に係るシャドウマスクの場合と同様に、ブリッジ部23の側に張り出す張り出し空間部25を貫通孔11に設けると共に表側孔部22の張り出し部33もブリッジ部23の両方向に設けたものである。
以上に加えて、図示を省略するが、この発明では、スロット20、30における表側孔部22だけに対して張り出し部33を形成しても良い。この場合の張り出し部33としては、スロット20、30における垂直方向の一方の端部あるいは上下の両端部に設けることができ、これにより入射角の大きな電子ビーム8が入射しても、遮断することなく出射することが可能となる。なお、この場合の張り出し部33は、上述と同様に少なくとも10μmの張り出し量となるように設定される。
次に、上述したシャドウマスクの製造方法の一例について説明する。なお、言うまでもなく、本発明のシャドウマスクは、下記の製造方法に限定されない。
シャドウマスクは、従来公知の方法で形成することができる。通常、フォトエッチングの各工程で行われ、連続したインライン装置で製造される。例えば、金属薄板の両面に水溶性コロイド系フォトレジスト等を塗布し、乾燥する。その後、その表面には、上述したような表側孔部の形状パターンを形成したフォトマスクを密着させ、裏面には、裏側孔部の形状パターンを形成したフォトマスクを密着させ、高圧水銀等の紫外線によって露光し、水で現像する。なお、表側孔部のパターンを形成したフォトマスクと、裏側孔部のパターンを形成したフォトマスクの位置関係およびその形状は、得られるシャドウマスクに形成された表側孔部と裏側孔部との位置関係およびそれらの大きさに考慮して設計され、配置される。レジスト膜画像で周囲がカバーされた金属の露出部分は、各部のエッチング進行速度の相違に基づいて、上述したような各々の形状で形成される。なお、エッチング加工は、熱処理等された後、両面側から塩化第二鉄溶液をスプレー等して行われる。その後、水洗い、剥離等の後工程を連続的に行うことによってシャドウマスクが製造される。
1 シャドウマスク
1a シャドウマスク
2,2a,2b,2c,2d,20,30,40 スロット
3 水平軸
4 垂直軸
5 対角軸
6 中心点(中心)
7,8 電子ビーム
11 貫通孔
11a,21a 膨出部
12,21 裏側孔部
13,22 表側孔部
14,15,16,17,26,27,28,29 側壁
23 ブリッジ部
25 張り出し空間部
25a,33a 張り出し始端
25b,33b 張り出し終端
33 張り出し部
L 張り出し量
θ,α,β 入射角
X 水平方向
Y 垂直方向
1a シャドウマスク
2,2a,2b,2c,2d,20,30,40 スロット
3 水平軸
4 垂直軸
5 対角軸
6 中心点(中心)
7,8 電子ビーム
11 貫通孔
11a,21a 膨出部
12,21 裏側孔部
13,22 表側孔部
14,15,16,17,26,27,28,29 側壁
23 ブリッジ部
25 張り出し空間部
25a,33a 張り出し始端
25b,33b 張り出し終端
33 張り出し部
L 張り出し量
θ,α,β 入射角
X 水平方向
Y 垂直方向
Claims (9)
- 電子ビームが入射する側の略矩形状の裏側孔部と、電子ビームが出射する側の略矩形状の表側孔部とで連通された貫通孔がマスク本体の水平方向及び垂直方向に多数配列してなり、ブラウン管の蛍光面上に略矩形状のビームスポットを形成するシャドウマスクにおいて、
少なくとも前記マスク本体の中心を通る水平軸の外周部及びその中心を通る対角軸の外周部に位置する貫通孔が、当該貫通孔間に垂直方向で介在するブリッジ部の方向に張り出して当該貫通孔の平面視形状を大きくする張り出し空間部を有し、
当該張り出し空間部が、前記マスク本体の中心を通る垂直軸の側を張り出し始端としてテーパー状に拡開していることを特徴とするシャドウマスク。 - 前記水平軸の外周部に位置する貫通孔が有する張り出し空間部が、上下のブリッジ部の両方向に張り出しており、
前記対角軸の外周部に位置する貫通孔が有する張り出し空間部が、水平軸の側のブリッジ部の方向に張り出していることを特徴とする請求項1に記載のシャドウマスク。 - 前記張り出し空間部において、前記張り出し始端から張り出し終端までの張り出し量が少なくとも10μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシャドウマスク。
- 前記張り出し空間部の拡開の程度が、前記マスク本体の中心から外周方向に向かうにしたがって連続的又は段階的に大きくなっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシャドウマスク。
- 少なくとも前記マスク本体の中心を通る水平軸の外周部及びその中心を通る対角軸の外周部に位置する貫通孔の表側孔部が、前記ブリッジ部の方向に張り出して当該表側孔部の平面視形状を大きくする張り出し部を有し、
当該張り出し部が、前記マスク本体の中心を通る垂直軸の側を張り出し始端としてテーパー状に拡開していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシャドウマスク。 - 前記水平軸の外周部に位置する貫通孔の表側孔部が有する張り出し部が、上下のブリッジ部の両方向に張り出しており、
前記対角軸の外周部に位置する貫通孔の表側孔部が有する張り出し部が、水平軸から離れる側のブリッジ部の方向に張り出していることを特徴とする請求項5に記載のシャドウマスク。 - 前記張り出し部において、前記張り出し始端から張り出し終端までの張り出し量が少なくとも10μmであることを特徴とする請求項5又は6に記載のシャドウマスク。
- 前記張り出し部の拡開の程度が、前記マスク本体の中心から外周方向に向かうにしたがって連続的又は段階的に大きくなっていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のシャドウマスク。
- 電子ビームが入射する側の略矩形状の裏側孔部と、電子ビームが出射する側の略矩形状の表側孔部とで連通された貫通孔がマスク本体の水平方向及び垂直方向に多数配列してなり、ブラウン管の蛍光面上に略矩形状のビームスポットを形成するシャドウマスクにおいて、
少なくとも前記マスク本体の中心を通る水平軸の外周部及びその中心を通る対角軸の外周部に位置する貫通孔の表側孔部が、前記貫通孔間に垂直方向で介在するブリッジ部の方向に張り出して当該表側孔部の平面視形状を大きくする張り出し部を有し、
当該張り出し部が、前記マスク本体の中心を通る垂直軸の側を張り出し始端としてテーパー状に拡開していることを特徴とするシャドウマスク。
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