JP2004071322A - カラー陰極線管およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】十分なマスク曲面強度を有しているとともに画像品位の良好なカラー陰極線管およびその製造方法を提供する。
【解決手段】シャドウマスク7は、主マスク14と補助マスク20とを重ねて構成されている。主マスクの各電子ビーム通過孔は、主マスクの蛍光体スクリーン側の表面に開口した大孔19aと電子銃側の表面に開口した小孔19bとを連通した連通孔で形成され、補助マスクの各電子ビーム通過孔は、補助マスクの一方の表面に開口した大孔25aと補助マスクの他方の表面に開口した小孔25bとを連通した連通孔で形成されている。主マスクの各小孔は、主マスクの電子銃側表面から大孔に向かって徐々に減少した径を有し、補助マスクの各小孔は、補助マスクの上記他方の表面から上記大孔に向かってほぼ一定の径あるいは徐々に増加した径を有している。
【選択図】 図11
【解決手段】シャドウマスク7は、主マスク14と補助マスク20とを重ねて構成されている。主マスクの各電子ビーム通過孔は、主マスクの蛍光体スクリーン側の表面に開口した大孔19aと電子銃側の表面に開口した小孔19bとを連通した連通孔で形成され、補助マスクの各電子ビーム通過孔は、補助マスクの一方の表面に開口した大孔25aと補助マスクの他方の表面に開口した小孔25bとを連通した連通孔で形成されている。主マスクの各小孔は、主マスクの電子銃側表面から大孔に向かって徐々に減少した径を有し、補助マスクの各小孔は、補助マスクの上記他方の表面から上記大孔に向かってほぼ一定の径あるいは徐々に増加した径を有している。
【選択図】 図11
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、シャドウマスクを備えたカラー陰極線管およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、カラー陰極線管は、内面に蛍光体スクリーンが形成されたパネルを有する外囲器と、この外囲器内で蛍光体スクリーンに対向して設けられたほぼ矩形状のシャドウマスクと、を備えている。シャドウマスクの蛍光体スクリーンと対向する有効面には、電子ビーム通過孔として多数の開孔が所定の配列で形成されている。そして、シャドウマスクは、各開孔により電子銃から放出された3電子ビームを選別し、蛍光体スクリーンを構成する3色蛍光体層に入射させる機能を備えている。
【0003】
近年、外光反射が少なく且つ画像歪を軽減して視認性を高めるため、カラー陰極線管のパネル外面の曲率半径を10,000mm以上と実質的に平坦としたフラット管が主流となりつつある。通常、蛍光体スクリーンと対向するシャドウマスクの有効面は、パネルの内面形状に対応した形状に形成されている。そのため、フラット管のシャドウマスクは、従来のカラー陰極線管に対して曲率が小さくなり、ほぼ平坦化している。
【0004】
ところが、このような曲率の小さなシャドウマスクを用いた場合、以下の問題が生じる。
通常、シャドウマスクは板厚が0.22〜0.25mm程度の金属板によって形成されている。このような薄板で形成された大画面用のシャドウマスクは、有効面の曲率が小さい場合、自重または外力によって変形し、マスク曲面を維持することが難しい。すなわち、有効面の曲率を小さくすると、マスク曲面の保持力(以下、マスク曲面強度)が低下する。特に、マスク曲面強度の低下は有効面中心すなわち画面センター近傍が最も顕著となる。
【0005】
そして、マスク曲面強度が低い場合、製造中、あるいは輸送中の微小な外力によってシャドウマスクの有効面が変形してしまう。シャドウマスクが変形すると、シャドウマスクの電子ビーム通過孔とパネル内面との距離関係が変動し、電子銃から放出された電子ビームが所定の蛍光体層にランディングせず、色ずれの原因となる。
【0006】
また、マスク曲面強度の低下は、シャドウマスクが変形まで到達しないまでも、テレビジョンセットに組み込んだ際、音声などの振動により、マスク有効面が共振しやすくなり、画面上に不要な明暗を映し出してしまう。
【0007】
このようなマスク曲面強度の低下を防止する最も簡単な方法は、シャドウマスクの板厚を厚くすることである。しかしながら、シャドウマスク板厚が増加すると、シャドウマスク製造時のエッチング制御が困難となり、電子ビーム通過孔の孔径のバラツキが大きくなる。その結果、シャドウマスク製造時及びカラー陰極線管製造時の歩留まり低下や、画面品位劣化を生じる要因となってしまう。
【0008】
これらの問題に対応するため、本出願人は特願2000−392891において、マスク曲面を維持するためシャドウマスクの短軸近傍に補助マスクを貼り付けたカラー陰極線管が提案している。このような構造であればマスク曲面を効率的に維持することが可能となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、通常、シャドウマスクには多数の開孔が設けられている。これら多数の開孔を工業的に効率良く得るため、従来より、開孔はエッチングにより形成されている。このエッチングにはさまざまな手法があり、シャドウマスクを製造するにあたっては主に2つの手法が取られている。その1つは、両面エッチングと呼ばれる1ステップエッチングの手法であり、他方は、2段エッチングと呼ばれる2ステップエッチングの手法である。
【0010】
両面エッチングは、工程が単純でありシャドウマスクを安価に製造することが可能となる。しかし、この手法は、開孔のバラツキや開孔ムラが発生し易く、製造可能な開孔が比較的大きなものに限られる。
【0011】
また、2段エッチングは、2ステップに分けて開孔を形成するため、工程が複雑となり製造コストが高価となる。その反面、両面エッチングに比較して開孔のバラツキおよびマスク開孔ムラが生じにくい。この手法によれば、比較的小さな開孔を有したシャドウマスクを製造することができる。そのため、近年の高精細カラー陰極線管の場合は、2段エッチングを用いて製造することが好ましいとされている。
【0012】
ここで、前述した2枚のシャドウマスクを貼り合せるカラー陰極線管では以下のような課題がある。すなわち、2段エッチングで製造された2枚のマスクを張り合わせた構成の場合、補助マスクの強度が弱いと、マスク全体の強度をかえって低下させてしまう恐れがある。そのため、補助マスク自体の強度を向上させる必要がある。
【0013】
また、補助マスクが主マスクに重ね合わされた重畳部と主マスクだけで形成されている非重畳部とで、電子ビーム反射による蛍光面の不要発光の発生状態が相違する。また、カラー陰極線管の製造時、このシャドウマスクを用いて蛍光面の露光を行うと、形成された蛍光面において、上記重畳部に対応する部分と非重畳部に対応する部分とで蛍光体層の幅が相違する。
【0014】
以上のことから、上記カラー陰極線管により画像を表示した場合、シャドウマスクの重畳部に対応する部分と非重畳部に対応する部分とで画像表示状態が相違し、これらの間に帯状の境界が現われて画質の劣化を招く恐れがある。
【0015】
この発明は、以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、十分なマスク曲面強度を有しているとともに画像品位の良好なカラー陰極線管およびその製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の態様に係るカラー陰極線管は、内面に蛍光体スクリーンが設けられたパネルと、上記蛍光体スクリーンに向かって電子ビームを放出する電子銃と、上記パネルの内側に上記蛍光体スクリーンに対向して配置され、互いに直交しているとともに管軸と直交した長軸および短軸を備えたほぼ矩形状のシャドウマスクと、を備え、
上記シャドウマスクは、上記蛍光体スクリーンのほぼ全面と対向しているとともに多数の電子ビーム通過孔が形成されたほぼ矩形状の有孔部を有した主マスクと、上記主マスクの有孔部の短軸を含む領域に固定され、上記主マスクの電子ビーム通過孔に対応した多数の電子ビーム通過孔を有しているとともに上記短軸に沿った方向を長手方向とした帯状の補助マスクと、を具備している。
【0017】
上記主マスクの各電子ビーム通過孔は、主マスクの蛍光体スクリーン側の表面に開口した大孔と主マスクの電子銃側の表面に開口した小孔とを連通した連通孔で形成され、上記補助マスクの各電子ビーム通過孔は、補助マスクの一方の表面に開口した大孔と補助マスクの他方の表面に開口した小孔とを連通した連通孔で形成され、上記主マスクの各小孔は、主マスクの電子銃側表面から上記大孔に向かって徐々に減少した径を有し、上記補助マスクの各小孔は、補助マスクの上記他方の表面から上記大孔に向かってほぼ一定の径あるいは徐々に増加した径を有している。
【0018】
また、この発明の他の態様に係るカラー陰極線管の製造方法は、内面に蛍光体スクリーンが設けられたパネルと、上記蛍光体スクリーンに向かって電子ビームを放出する電子銃と、上記パネルの内側に上記蛍光体スクリーンに対向して配置され、互いに直交しているとともに管軸と直交した長軸および短軸を備えたほぼ矩形状のシャドウマスクと、を備え、上記シャドウマスクは、上記蛍光体スクリーンのほぼ全面と対向しているとともに多数の電子ビーム通過孔が形成されたほぼ矩形状の有孔部を有した主マスクと、上記主マスクの有孔部の短軸を含む領域に固定され、上記主マスクの電子ビーム通過孔に対応した多数の電子ビーム通過孔を有しているとともに上記短軸に沿った方向を長手方向とした帯状の補助マスクと、を具備したカラー陰極線管の製造方法において、
上記主マスク用の平坦なマスク素板、および上記補助マスク用の平坦なマスク素板を用意し、上記主マスク用のマスク素板を2段エッチングし、それぞれマスク素板の一方の表面に開口した大孔とマスク素板の他方の表面に開口した小孔とが連通した連通孔からなる複数の電子ビーム通過孔を形成し、上記補助マスク用のマスク素板を両面エッチングし、それぞれマスク素板の一方の表面に開口した大孔とマスク素板の他方の表面に開口した小孔とが連通した連通孔からなる複数の電子ビーム通過孔を形成し、それぞれ上記電子ビーム通過孔が形成された主マスク用のマスク素板および補助マスク用のマスク素板を互いに固定し、上記互いに固定されたマスク素板を所望形状にプレス形成して上記シャドウマスクを形成することを特徴としている。
【0019】
上記のように構成されたカラー陰極線管およびその製造方法によれば、主マスクの各小孔を、主マスクの電子銃側表面から大孔に向かって徐々に減少した径を有する構造とし、また、補助マスクの各小孔を、補助マスクの他方の表面から大孔に向かってほぼ一定の径あるいは徐々に増加した径を有した構造としている。これにより、補助マスクの充分な強度を確保するとともに、補助マスクが主マスクに重ね合わされた重畳部と主マスクだけで形成されている非重畳部とで、電子ビーム反射による蛍光面の不要発光の発生状態をほぼ同一とすることができる。従って、シャドウマスクの充分なマスク曲面強度を得ることができるとともに、画像品位の良好なカラー陰極線管を得ることが可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら、この発明の実施の形態に係るカラー陰極線管について詳細に説明する。
図1および図2に示すように、カラー陰極線管はガラスで形成された外囲器を備え、この外囲器は、周縁部にスカート部2を有した矩形状のパネル1と、スカート部2に接合されたファンネル3と、ファンネル3の小径部から伸びたネック4とを有している。パネル1の内面には蛍光体スクリーン5が形成されている。そして、外囲器は、パネル1の中心およびネック4の中心を通る管軸Z、管軸と直交して延びた長軸(水平軸)X、並びに、管軸および長軸と直交して延びた短軸(垂直軸)Yを有している。
【0021】
画面アスペクト比16対9で画面有効径76cmの32インチワイドタイプのカラー陰極線管を一例とした場合、パネル1の外面は、曲率半径が100,000mmと実質的に平坦となっている。また、パネル1内面は、X軸上でX軸に沿った曲率半径が約7,000mm、Y軸上でY軸に沿った曲率半径が約1,500mmとほぼ円筒状になっている。
【0022】
外囲器内には、色選別電極として機能するシャドウマスク構体6が蛍光体スクリーン5に対向して配置されている。このシャドウマスク構体6は、電子ビーム通過孔となる開孔が多数形成されたシャドウマスク7と、シャドウマスク7の周辺部が固定された断面L字形の矩形枠状のマスクフレーム8と、を有している。シャドウマスク構体6は、マスクフレーム8の側壁に設けられた複数の弾性支持体(図示せず)をパネル1のスカート部2に埋設されたスタッドピン(図示せず)にそれぞれ係止することで、パネル1の内側に支持されている。なお、シャドウマスク7に形成された電子ビーム通過孔の開孔形状は、用途に応じて矩形状または円形状に形成される。
【0023】
ネック4内には長軸X上にインライン配列された3本の電子ビーム9R、9G、9Bを放出する電子銃10が配置されている。そして、上記カラー陰極線管では、電子銃10から放出された電子ビーム9R、9G、9Bをファンネル3の外側に取り付けられた偏向ヨーク11により偏向し、シャドウマスク7を介して、蛍光体スクリーン5を水平、垂直走査することで画像を表示する。
【0024】
次に、シャドウマスク7の構成について詳細に説明する。図3ないし図5に示すように、シャドウマスク7は、主マスク14と、主マスクの一部に重複して固定された補助マスク20と、を備え、部分的に2重構造に構成されている。
【0025】
主マスク14は、パネル1の内面と対向して配置されるとともに所定の曲面形状に形成されたほぼ矩形状のマスク主面38と、マスク主面の周縁から管軸Z方向に沿って電子銃側に延出したスカート部17と、を一体に備えている。マスク主面38は、電子ビーム通過孔として機能する多数の開孔12が形成された矩形状の有孔部13と、有孔部を囲むように位置しているとともに開孔を持たないほぼ矩形枠状の無孔部16と、を有している。この主マスク14は、板厚0.1〜0.25mm程度の金属材料で形成され、その材質としては鉄材または低膨張材としてのアンバー材(Fe−Ni合金)などを使用する。
【0026】
主マスク14の各開孔12は、有孔部13の長軸X方向を幅方向とするほぼ矩形状に形成されている。そして、複数の開孔12が、それぞれ有孔部13の短軸Y方向にブリッジ15を介してほぼ直線状に配列されて開孔列を構成し、この開孔列が、長軸X方向に約0.4〜0.6mmの配列ピッチPHで多数配列されている。
【0027】
図6のように各開孔12は、主マスク14の蛍光体スクリーン側の表面に開口したほぼ矩形状の大孔19aと、電子銃側の表面に開口したほぼ矩形状の小孔22と、を連通した連通孔により形成されている。これらの開孔12は、有孔部13の周辺側に位置した開孔ほど、大孔19aの中心C1が小孔19bの中心C2に対して相対的に有孔部周辺側へΔだけオフセットしている。これは、電子ビームが小孔19bを通過したあと、開孔12の内面に衝突して反射し、画面上に不要発光が生じるのを抑制するためである。主マスク14の短軸Y方向、長軸X方向ともに、大孔19aは小孔19bに対してオフセットされている。
【0028】
具体例によれば、シャドウマスクは、板厚0.22mmの低熱膨張材であるアンバー(Fe−Ni合金)で形成され、短軸Y方向には複数個の開孔12が0.6mmの配列ピッチで直線状に配置され、この短軸方向の複数個の開孔からなる開孔列が長軸X方向に短軸付近で0.75mm、長軸方向周辺で0.82mmのピッチで配列され、長軸方向周辺に近づくにしたがって大きくなるバリアブルピッチで配列されている。開孔12の大孔19aの幅方向の開孔寸法は、短軸Y上で0.46mm、長軸X方向周辺で0.50mm、小孔19bの幅方向の開孔寸法は、短軸上で0.18mm、長軸方向周辺で0.20mmとなっている。電子ビームが長軸X方向周辺部に位置した開孔12に46°の偏向角で入射する場合、長軸X方向周辺の開孔の小孔19bに対する大孔19aのオフセットΔは0.06mmとなっている。
【0029】
一方、図3ないし図6に示すように、補助マスク20は長い帯状に形成され、主マスク14の内面側、つまり、電子銃側の表面上で、有孔部13の短軸Yを含む領域に重ねて固定されている。そして、補助マスク20は、その長軸方向が、主マスク14の短軸Yと一致して設けられている。これにより、シャドウマスク7は、短軸Yを含む所定幅の領域に、補助マスク20が固定され2重構造の重複部と、重複部の両側に位置した非重複部とを有している。
【0030】
補助マスク20は、主マスク14と同様に鉄材あるいはアンバー材等から構成され、板厚は0.25mm程度に形成されている。補助マスク20は、長軸X方向に沿った幅LH1が主マスク14の有孔部13の長軸方向長LH2よりも小さく、また、短軸Y方向に沿った長さは主マスク14の同方向長さとほぼ等しく形成されている。補助マスク20は、有孔部21と、有孔部21の外側で補助マスクの長手方向両端部に位置した無孔部23と、更に、各無孔部23から両端方向へ延出した一対のスカート部24と、を一体に備えている。有孔部21には、主マスク14の開孔12に対応した電子ビーム通過孔としての多数の開孔42が設けられた
そして、補助マスク20は、その有孔部21、無孔部23、スカート部24が主マスク14の有孔部13、無孔部16およびスカート部17とそれぞれ重なった状態で主マスクの電子銃側の表面に固定されている。これにより、主マスク14の短軸Y上の領域は全て2重構造となっている。
【0031】
有孔部21に形成された各開孔42は、補助マスク20の蛍光体スクリーン側の表面、つまり、主マスク14側の表面に開口したほぼ矩形状の大孔25aと、電子銃側の表面に開口したほぼ矩形状の小孔25bと、を連通した連通孔により形成されている。すなわち、補助マスク20は、開孔42の大孔25aが主マスク14と向かい合った状態で主マスク14に固定されている。そして、主マスク14の開孔12と同様に、補助マスク20の開孔42は、短軸Y方向に延びた複数の開孔列を形成し、これらの開孔列は、長軸X方向に約0.4〜0.6mmのピッチで配列されている。これにより、各開孔42は、主マスク14の開孔12と整列して配置されている。
【0032】
このような補助マスク20は、主マスク14に密着した状態で固定されている。主マスク14と補助マスク20との固定には、圧着と呼ばれる拡散接合や、レーザー溶接あるいは抵抗溶接などの手法を用いることができる。補助マスク20は、少なくとも数箇所の固定点を有している。
【0033】
上記のように構成されたカラー陰極線管において、シャドウマスク7を製造する場合、主マスク14の開孔12は2段エッチングにより、また、補助マスク20の開孔42は両面エッチングにより形成する。
【0034】
2段エッチングおよび両面エッチングによる開孔の形成方法ついて詳細に説明する。まず、主マスク14の開孔12を2段エッチングにより形成する場合について説明する。まず、例えば、アンバー材からなる主マスク用のマスク素板45を用意する。次に、図7(a)、7(b)に示すように、主マスク14の開孔12に対応するパターンのレジスト膜44a、44bをマスク素板45の両面にそれぞれ形成する。続いて、図7(c)に示すように、一方のレジスト膜44aに重ねてポリエステル樹脂などからなるエッチング保護フィルム46を貼着した後、他方のレジスト膜44b側からエッチング液をスプレーしてマスク素板45に小孔19bとなる凹孔を形成する。
【0035】
次に、図7(d)に示すように、レジスト膜44bを剥離し、凹孔の形成されたマスク素板45の表面側を水洗および乾燥する。その後、この表面側にパラフィン、ラッカーなどの抗エッチング剤を塗布し、形成された凹孔に埋込むように抗エッチング層47を形成する。また、マスク素板45の他方の面側に貼着されたエッチング保護フィルム46を剥離する。
【0036】
この状態、図7(e)に示すように、レジスト膜44aを介してマスク素板45の他方の面にエッチング液をスプレーし、先に形成された凹孔に連通する大孔19aを形成する。その後、図7(f)に示すように、苛性アルカリ溶液をスプレーして、他方の面に設けられている抗エッチング層47およびもう一方の面に形成されたレジスト膜44aを剥離する。これにより、図8(a)に示すような、多数の開孔12が所定の径およびピッチで形成された有孔部13を有した平坦なマスク素板45が得られる。
【0037】
次に、補助マスク20の開孔42を両面エッチングにより形成する場合について説明する。まず、例えば、アンバー材からなる補助マスク用のマスク素板50を用意する。次に、図9(a)、9(b)に示すように、補助マスク20の開孔42に対応するパターンのレジスト膜52a、52bをマスク素板50の両面にそれぞれ形成する。続いて、図9(c)に示すように、一方のレジスト膜側から、つまり、開孔42の大孔に対応するレジスト膜52a側からマスク素板50を連続的にエッチングし、開孔42を形成する。その後、図9(d)に示すように、マスク素板50からレジスト膜52a、52bを剥離する。これにより、図8(b)に示すような、補助マスク用のマスク素板50が得られる。
【0038】
次に、上記のようにして得られたマスク素板45および50をアニール処理した後、これらのマスク素板を互いに正確に位置決めした状態で重ね合わせ、レーザー溶接により互いに固定する。続いて、貼り合わされたマスク素板45および50をプレス装置によってプレス成形し、主マスクの電子銃側表面に補助マスクが位置した所望形状のシャドウマスク7を形成する。
【0039】
上記のように構成されたシャドウマスク7において、主マスク14および補助マスク20は、エッチング方法の違いから、図10(a)、10(b)に示すようなマスク断面形状の相違が生じる。図10(a)は、主マスク14および補助マスク20の長軸X方向に沿った断面を重ね合わせて示した図で、点線は2段エッチングにより形成された主マスク14の開孔12を、実線は両面エッチングにより形成された開孔42をそれぞれ示している。図10(b)は、主マスク14および補助マスク20の短軸Y方向に沿った断面を重ね合わせて示した図で、点線は2段エッチングにより形成された主マスク14の開孔12を、実線は両面エッチングにより形成された開孔42をそれぞれ示している。
【0040】
図10(a)に示す長軸X方向の断面に関しては、開孔12、42の相違はそれほど大きくないが、図10(b)に示す短軸Y方向の断面については、開孔12、42の断面形状が相違している。2段エッチングは、両面エッチングよりも開孔を形成するためのエッチング範囲が広い。その結果、2段エッチングを用いた場合、シャドウマスク7を形成する材料の残り、つまりは体積が少なくなる。そのため、マスク強度としては両面エッチングにより開孔を形成したマスクの方がより大きな強度を得ることができる。
【0041】
この際、主マスク14についても、両面エッチングにより開孔12を形成することにより、主マスクの体積が増加しマスク強度が上がる。しかし、高精細な表示に要求される小さい開孔を形成するためには、2段エッチングによる形成方法が必要となり、実際には、主マスクの製造に両面エッチングを使用することは難しい。
【0042】
補助マスク20の場合は、主マスク14との位置合わせ余裕度を確保する等の観点から、主マスクの開孔よりもより大きい開孔を有した構造とする必要がある。そのため、補助マスク20の開孔42は、両面エッチングでも充分対応可能な大きさとなっている。
【0043】
図11に示すように、本実施の形態におけるシャドウマスク7によれば、2段エッチングにより形成された開孔12を有した主マスク14の電子銃側表面に、両面エッチングにより形成された開孔42を有した補助マスク20が貼り合わされている。補助マスク20は、開孔42の大孔25a側が主マスク14に形成された開孔12の小孔19b側と対向するように配置されている。補助マスク20に形成された開孔42は、長軸X方向について、主マスク14の開孔12よりもやや大きな寸法に形成されている。これは、主マスク14と補助マスク20との位置合せズレが発生した場合の余裕を持たせるためである。また、短軸Y方向についても、補助マスク20の開孔42の方が主マスク14の開孔12よりも大きな寸法を有していることが好ましい。しかし、蛍光面輝度の点から、主マスク14のブリッジ幅は製造上可能なほぼ最小値となっているため、短軸Y方向に関しては、補助マスク20および主マスク14の開孔径を同一としてもよい。
【0044】
次に、上記のように構成されたシャドウマスクにおける電子ビームの反射について説明する。図11に示したように、2段エッチングにより形成された主マスク14の開孔12は、大孔19aおよび小孔19bを有している。小孔19bは、主マスク14の電子銃側表面から大孔19a側に向かって徐々に径が小さくなっている。そのため、小孔19bを規定している側壁面60は、電子銃側に向かった傾斜した曲面となっている。
【0045】
これに対し、両面エッチングにより形成された補助マスク20の開孔42において、小孔25bは、補助マスクの電子銃側表面から大孔25aに向かって径がほぼ一定、あるいは、径が徐々に大きくなっている。そのため、小孔25bを規定している側壁面62は、電子銃側に向かって傾斜することなく、電子ビームとほぼ平行か、むしろ蛍光体スクリーン側に傾斜した曲面となっている。
【0046】
電子銃からシャドウマスク7に向かって放射された電子ビームは、補助マスク20の開孔42および主マスク14の開孔12を順に通過して蛍光体スクリーンにランディングする。この際、補助マスク20に形成された開孔42の小孔25bは、電子銃側を向いた側壁面、つまり、電子ビームが衝突する側壁面を持たないため、電子ビームは2次電子をほとんど発生することなく開孔42を通過する。
【0047】
一方、補助マスク20の開孔42を通過した電子ビームは、主マスク14の開孔12に入射し、その大部分は開孔12を通過して蛍光体スクリーンに到達する。また、主マスク14の開孔12に入射した電子ビームの一部は、小孔19bを規定している側壁面60に衝突し2次電子を放出させる。放出された2次電子の一部は主マスクの開孔を通過し蛍光面に到達する。この2次電子により、蛍光体スクリーンの一部に不要発光が発生する。
【0048】
以上のように、両面エッチングにより形成された開孔42を有した補助マスク20は、実質的に電子ビームの衝突する小孔側の側壁面がないため、2次電子の発生自体が少ない。そのため、電子ビームの反射は主マスク14の側壁面60だけで発生する。このような2次電子の発生状態は、補助マスク20が貼り付けられていない主マスク14の非重畳部と同じ状態となる。そのため、蛍光体スクリーンにおいて、不要発光自体は発生するが、シャドウマスク7の重畳部に対応する部分と非重畳部に対応する部分とで不要発光の差を無くすことができる。これにより、表示画面上に不要な明るさの段差や帯状の境界が現われることがなく、良好な画像を得ることが可能となる。
【0049】
説明は省略するが、不要発光の発生は短軸Y方向についても同様であり、両面エッチングにより形成された開孔42を有した補助マスク20は、主マスク14よりも2次電子放出が少ない。そのため、蛍光体スクリーンの不要発光に起因する明るさの段差、境界の発生を防止することができる。
【0050】
また、カラー陰極線管の製造時、上記のシャドウマスク7を用いて例えばストライプ状の蛍光体層を露光、形成する際、上記と同様に、不要発光の発生を全域に渡ってほぼ均一にすることができる。そのため、蛍光体スクリーンにおける蛍光体層の幅をシャドウマスク7の重畳部に対向する領域と非重畳部に対応する領域とでほぼ均一に形成することができる。その結果、表示画像の品位が向上したカラー陰極線管を得ることが可能となる。
【0051】
以上のように構成されたカラー陰極線管によれば、主マスク14に重ねて補助マスク20を設けることにより、シャドウマスク7の最も変形しやすい画面中央近傍の変形を抑制することが可能となり、結果的にマスク曲面強度を向上させることができる。特に、補助マスクの開孔を両面エッチングによって形成することにより、開孔形成後のマスク材の体積を充分に確保し、マスク強度を維持することができる。更に、補助マスクの開孔を両面エッチングにより形成し、電子銃側に傾斜した側壁面を持たない開孔構造、あるいは、電子銃側に傾斜した側壁面が主マスク側の側壁面に比較して小さい開孔構造としている。これにより、シャドウマスクの重畳部と非重畳部との間で不要発光及び蛍光面の違いによる不要な明るさの段差が発生することなく、良好が画像を得ることが可能となる。
【0052】
なお、この発明は上述した実施の形態に限定されることなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。例えば、上述した実施の形態において、補助マスク20が主マスク14の電子銃側に配置された構成について説明したが、図12および図13に示すように、補助マスク20は主マスク14の外面側、つまり、蛍光体スクリーン5側の表面に設けてもよい。この場合、補助マスク20は、開孔42の小孔25bが主マスク14に対向した状態で、主マスク14に固定される。このような構成のシャドウマスクとした場合でも、上記と同様の作用効果を得ることができる。なお、他の構成は前述した実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0053】
また、補助マスクは1枚に限らず複数設けてもよい。更に、シャドウマスクの各開孔は、矩形状に限らず、丸型としても有効に活用することができる。
【0054】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、十分なマスク曲面強度を有しているとともに画像品位の良好なカラー陰極線管およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係るカラー陰極線管の長軸を含む断面図。
【図2】上記カラー陰極線管の短軸を含む断面図。
【図3】上記カラー陰極線管におけるシャドウマスクを示す斜視図および電子ビーム通過孔を拡大して示す平面図。
【図4】上記シャドウマスクの長軸方向に沿った断面図。
【図5】上記シャドウマスクの短軸方向に沿った断面図。
【図6】上記シャドウマスクの主マスクおよび補助マスクを拡大して示す断面図。
【図7】上記主マスクの2段エッチング工程をそれぞれ示す断面図。
【図8】上記主マスクおよび補助マスクの製造に用いるマスク素板を示す平面図。
【図9】上記補助マスクの両面エッチング工程をそれぞれ示す断面図。
【図10】2段エッチングにより形成された開孔と両面エッチングにより形成された開孔とを重ねて概略的に示す断面図。
【図11】上記シャドウマスクにおける電子ビームの通過および反射状態を示す断面図。
【図12】この発明の他の実施の形態に係るカラー陰極線管のシャドウマスクを示す断面図。
【図13】上記他の実施の形態におけるシャドウマスクを開孔部分を拡大して示す断面図。
【符号の説明】
1…パネル
5…蛍光体スクリーン
6…シャドウマスク構体
7…シャドウマスク
8…マスクフレーム
9B、9G、9R…電子ビーム
10…電子銃
14…主マスク
20…補助マスク
12、42…開孔
13、21…有孔部
19a、25a…大孔
19b、25b…小孔
60、62…側壁面
【発明の属する技術分野】
この発明は、シャドウマスクを備えたカラー陰極線管およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、カラー陰極線管は、内面に蛍光体スクリーンが形成されたパネルを有する外囲器と、この外囲器内で蛍光体スクリーンに対向して設けられたほぼ矩形状のシャドウマスクと、を備えている。シャドウマスクの蛍光体スクリーンと対向する有効面には、電子ビーム通過孔として多数の開孔が所定の配列で形成されている。そして、シャドウマスクは、各開孔により電子銃から放出された3電子ビームを選別し、蛍光体スクリーンを構成する3色蛍光体層に入射させる機能を備えている。
【0003】
近年、外光反射が少なく且つ画像歪を軽減して視認性を高めるため、カラー陰極線管のパネル外面の曲率半径を10,000mm以上と実質的に平坦としたフラット管が主流となりつつある。通常、蛍光体スクリーンと対向するシャドウマスクの有効面は、パネルの内面形状に対応した形状に形成されている。そのため、フラット管のシャドウマスクは、従来のカラー陰極線管に対して曲率が小さくなり、ほぼ平坦化している。
【0004】
ところが、このような曲率の小さなシャドウマスクを用いた場合、以下の問題が生じる。
通常、シャドウマスクは板厚が0.22〜0.25mm程度の金属板によって形成されている。このような薄板で形成された大画面用のシャドウマスクは、有効面の曲率が小さい場合、自重または外力によって変形し、マスク曲面を維持することが難しい。すなわち、有効面の曲率を小さくすると、マスク曲面の保持力(以下、マスク曲面強度)が低下する。特に、マスク曲面強度の低下は有効面中心すなわち画面センター近傍が最も顕著となる。
【0005】
そして、マスク曲面強度が低い場合、製造中、あるいは輸送中の微小な外力によってシャドウマスクの有効面が変形してしまう。シャドウマスクが変形すると、シャドウマスクの電子ビーム通過孔とパネル内面との距離関係が変動し、電子銃から放出された電子ビームが所定の蛍光体層にランディングせず、色ずれの原因となる。
【0006】
また、マスク曲面強度の低下は、シャドウマスクが変形まで到達しないまでも、テレビジョンセットに組み込んだ際、音声などの振動により、マスク有効面が共振しやすくなり、画面上に不要な明暗を映し出してしまう。
【0007】
このようなマスク曲面強度の低下を防止する最も簡単な方法は、シャドウマスクの板厚を厚くすることである。しかしながら、シャドウマスク板厚が増加すると、シャドウマスク製造時のエッチング制御が困難となり、電子ビーム通過孔の孔径のバラツキが大きくなる。その結果、シャドウマスク製造時及びカラー陰極線管製造時の歩留まり低下や、画面品位劣化を生じる要因となってしまう。
【0008】
これらの問題に対応するため、本出願人は特願2000−392891において、マスク曲面を維持するためシャドウマスクの短軸近傍に補助マスクを貼り付けたカラー陰極線管が提案している。このような構造であればマスク曲面を効率的に維持することが可能となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、通常、シャドウマスクには多数の開孔が設けられている。これら多数の開孔を工業的に効率良く得るため、従来より、開孔はエッチングにより形成されている。このエッチングにはさまざまな手法があり、シャドウマスクを製造するにあたっては主に2つの手法が取られている。その1つは、両面エッチングと呼ばれる1ステップエッチングの手法であり、他方は、2段エッチングと呼ばれる2ステップエッチングの手法である。
【0010】
両面エッチングは、工程が単純でありシャドウマスクを安価に製造することが可能となる。しかし、この手法は、開孔のバラツキや開孔ムラが発生し易く、製造可能な開孔が比較的大きなものに限られる。
【0011】
また、2段エッチングは、2ステップに分けて開孔を形成するため、工程が複雑となり製造コストが高価となる。その反面、両面エッチングに比較して開孔のバラツキおよびマスク開孔ムラが生じにくい。この手法によれば、比較的小さな開孔を有したシャドウマスクを製造することができる。そのため、近年の高精細カラー陰極線管の場合は、2段エッチングを用いて製造することが好ましいとされている。
【0012】
ここで、前述した2枚のシャドウマスクを貼り合せるカラー陰極線管では以下のような課題がある。すなわち、2段エッチングで製造された2枚のマスクを張り合わせた構成の場合、補助マスクの強度が弱いと、マスク全体の強度をかえって低下させてしまう恐れがある。そのため、補助マスク自体の強度を向上させる必要がある。
【0013】
また、補助マスクが主マスクに重ね合わされた重畳部と主マスクだけで形成されている非重畳部とで、電子ビーム反射による蛍光面の不要発光の発生状態が相違する。また、カラー陰極線管の製造時、このシャドウマスクを用いて蛍光面の露光を行うと、形成された蛍光面において、上記重畳部に対応する部分と非重畳部に対応する部分とで蛍光体層の幅が相違する。
【0014】
以上のことから、上記カラー陰極線管により画像を表示した場合、シャドウマスクの重畳部に対応する部分と非重畳部に対応する部分とで画像表示状態が相違し、これらの間に帯状の境界が現われて画質の劣化を招く恐れがある。
【0015】
この発明は、以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、十分なマスク曲面強度を有しているとともに画像品位の良好なカラー陰極線管およびその製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の態様に係るカラー陰極線管は、内面に蛍光体スクリーンが設けられたパネルと、上記蛍光体スクリーンに向かって電子ビームを放出する電子銃と、上記パネルの内側に上記蛍光体スクリーンに対向して配置され、互いに直交しているとともに管軸と直交した長軸および短軸を備えたほぼ矩形状のシャドウマスクと、を備え、
上記シャドウマスクは、上記蛍光体スクリーンのほぼ全面と対向しているとともに多数の電子ビーム通過孔が形成されたほぼ矩形状の有孔部を有した主マスクと、上記主マスクの有孔部の短軸を含む領域に固定され、上記主マスクの電子ビーム通過孔に対応した多数の電子ビーム通過孔を有しているとともに上記短軸に沿った方向を長手方向とした帯状の補助マスクと、を具備している。
【0017】
上記主マスクの各電子ビーム通過孔は、主マスクの蛍光体スクリーン側の表面に開口した大孔と主マスクの電子銃側の表面に開口した小孔とを連通した連通孔で形成され、上記補助マスクの各電子ビーム通過孔は、補助マスクの一方の表面に開口した大孔と補助マスクの他方の表面に開口した小孔とを連通した連通孔で形成され、上記主マスクの各小孔は、主マスクの電子銃側表面から上記大孔に向かって徐々に減少した径を有し、上記補助マスクの各小孔は、補助マスクの上記他方の表面から上記大孔に向かってほぼ一定の径あるいは徐々に増加した径を有している。
【0018】
また、この発明の他の態様に係るカラー陰極線管の製造方法は、内面に蛍光体スクリーンが設けられたパネルと、上記蛍光体スクリーンに向かって電子ビームを放出する電子銃と、上記パネルの内側に上記蛍光体スクリーンに対向して配置され、互いに直交しているとともに管軸と直交した長軸および短軸を備えたほぼ矩形状のシャドウマスクと、を備え、上記シャドウマスクは、上記蛍光体スクリーンのほぼ全面と対向しているとともに多数の電子ビーム通過孔が形成されたほぼ矩形状の有孔部を有した主マスクと、上記主マスクの有孔部の短軸を含む領域に固定され、上記主マスクの電子ビーム通過孔に対応した多数の電子ビーム通過孔を有しているとともに上記短軸に沿った方向を長手方向とした帯状の補助マスクと、を具備したカラー陰極線管の製造方法において、
上記主マスク用の平坦なマスク素板、および上記補助マスク用の平坦なマスク素板を用意し、上記主マスク用のマスク素板を2段エッチングし、それぞれマスク素板の一方の表面に開口した大孔とマスク素板の他方の表面に開口した小孔とが連通した連通孔からなる複数の電子ビーム通過孔を形成し、上記補助マスク用のマスク素板を両面エッチングし、それぞれマスク素板の一方の表面に開口した大孔とマスク素板の他方の表面に開口した小孔とが連通した連通孔からなる複数の電子ビーム通過孔を形成し、それぞれ上記電子ビーム通過孔が形成された主マスク用のマスク素板および補助マスク用のマスク素板を互いに固定し、上記互いに固定されたマスク素板を所望形状にプレス形成して上記シャドウマスクを形成することを特徴としている。
【0019】
上記のように構成されたカラー陰極線管およびその製造方法によれば、主マスクの各小孔を、主マスクの電子銃側表面から大孔に向かって徐々に減少した径を有する構造とし、また、補助マスクの各小孔を、補助マスクの他方の表面から大孔に向かってほぼ一定の径あるいは徐々に増加した径を有した構造としている。これにより、補助マスクの充分な強度を確保するとともに、補助マスクが主マスクに重ね合わされた重畳部と主マスクだけで形成されている非重畳部とで、電子ビーム反射による蛍光面の不要発光の発生状態をほぼ同一とすることができる。従って、シャドウマスクの充分なマスク曲面強度を得ることができるとともに、画像品位の良好なカラー陰極線管を得ることが可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら、この発明の実施の形態に係るカラー陰極線管について詳細に説明する。
図1および図2に示すように、カラー陰極線管はガラスで形成された外囲器を備え、この外囲器は、周縁部にスカート部2を有した矩形状のパネル1と、スカート部2に接合されたファンネル3と、ファンネル3の小径部から伸びたネック4とを有している。パネル1の内面には蛍光体スクリーン5が形成されている。そして、外囲器は、パネル1の中心およびネック4の中心を通る管軸Z、管軸と直交して延びた長軸(水平軸)X、並びに、管軸および長軸と直交して延びた短軸(垂直軸)Yを有している。
【0021】
画面アスペクト比16対9で画面有効径76cmの32インチワイドタイプのカラー陰極線管を一例とした場合、パネル1の外面は、曲率半径が100,000mmと実質的に平坦となっている。また、パネル1内面は、X軸上でX軸に沿った曲率半径が約7,000mm、Y軸上でY軸に沿った曲率半径が約1,500mmとほぼ円筒状になっている。
【0022】
外囲器内には、色選別電極として機能するシャドウマスク構体6が蛍光体スクリーン5に対向して配置されている。このシャドウマスク構体6は、電子ビーム通過孔となる開孔が多数形成されたシャドウマスク7と、シャドウマスク7の周辺部が固定された断面L字形の矩形枠状のマスクフレーム8と、を有している。シャドウマスク構体6は、マスクフレーム8の側壁に設けられた複数の弾性支持体(図示せず)をパネル1のスカート部2に埋設されたスタッドピン(図示せず)にそれぞれ係止することで、パネル1の内側に支持されている。なお、シャドウマスク7に形成された電子ビーム通過孔の開孔形状は、用途に応じて矩形状または円形状に形成される。
【0023】
ネック4内には長軸X上にインライン配列された3本の電子ビーム9R、9G、9Bを放出する電子銃10が配置されている。そして、上記カラー陰極線管では、電子銃10から放出された電子ビーム9R、9G、9Bをファンネル3の外側に取り付けられた偏向ヨーク11により偏向し、シャドウマスク7を介して、蛍光体スクリーン5を水平、垂直走査することで画像を表示する。
【0024】
次に、シャドウマスク7の構成について詳細に説明する。図3ないし図5に示すように、シャドウマスク7は、主マスク14と、主マスクの一部に重複して固定された補助マスク20と、を備え、部分的に2重構造に構成されている。
【0025】
主マスク14は、パネル1の内面と対向して配置されるとともに所定の曲面形状に形成されたほぼ矩形状のマスク主面38と、マスク主面の周縁から管軸Z方向に沿って電子銃側に延出したスカート部17と、を一体に備えている。マスク主面38は、電子ビーム通過孔として機能する多数の開孔12が形成された矩形状の有孔部13と、有孔部を囲むように位置しているとともに開孔を持たないほぼ矩形枠状の無孔部16と、を有している。この主マスク14は、板厚0.1〜0.25mm程度の金属材料で形成され、その材質としては鉄材または低膨張材としてのアンバー材(Fe−Ni合金)などを使用する。
【0026】
主マスク14の各開孔12は、有孔部13の長軸X方向を幅方向とするほぼ矩形状に形成されている。そして、複数の開孔12が、それぞれ有孔部13の短軸Y方向にブリッジ15を介してほぼ直線状に配列されて開孔列を構成し、この開孔列が、長軸X方向に約0.4〜0.6mmの配列ピッチPHで多数配列されている。
【0027】
図6のように各開孔12は、主マスク14の蛍光体スクリーン側の表面に開口したほぼ矩形状の大孔19aと、電子銃側の表面に開口したほぼ矩形状の小孔22と、を連通した連通孔により形成されている。これらの開孔12は、有孔部13の周辺側に位置した開孔ほど、大孔19aの中心C1が小孔19bの中心C2に対して相対的に有孔部周辺側へΔだけオフセットしている。これは、電子ビームが小孔19bを通過したあと、開孔12の内面に衝突して反射し、画面上に不要発光が生じるのを抑制するためである。主マスク14の短軸Y方向、長軸X方向ともに、大孔19aは小孔19bに対してオフセットされている。
【0028】
具体例によれば、シャドウマスクは、板厚0.22mmの低熱膨張材であるアンバー(Fe−Ni合金)で形成され、短軸Y方向には複数個の開孔12が0.6mmの配列ピッチで直線状に配置され、この短軸方向の複数個の開孔からなる開孔列が長軸X方向に短軸付近で0.75mm、長軸方向周辺で0.82mmのピッチで配列され、長軸方向周辺に近づくにしたがって大きくなるバリアブルピッチで配列されている。開孔12の大孔19aの幅方向の開孔寸法は、短軸Y上で0.46mm、長軸X方向周辺で0.50mm、小孔19bの幅方向の開孔寸法は、短軸上で0.18mm、長軸方向周辺で0.20mmとなっている。電子ビームが長軸X方向周辺部に位置した開孔12に46°の偏向角で入射する場合、長軸X方向周辺の開孔の小孔19bに対する大孔19aのオフセットΔは0.06mmとなっている。
【0029】
一方、図3ないし図6に示すように、補助マスク20は長い帯状に形成され、主マスク14の内面側、つまり、電子銃側の表面上で、有孔部13の短軸Yを含む領域に重ねて固定されている。そして、補助マスク20は、その長軸方向が、主マスク14の短軸Yと一致して設けられている。これにより、シャドウマスク7は、短軸Yを含む所定幅の領域に、補助マスク20が固定され2重構造の重複部と、重複部の両側に位置した非重複部とを有している。
【0030】
補助マスク20は、主マスク14と同様に鉄材あるいはアンバー材等から構成され、板厚は0.25mm程度に形成されている。補助マスク20は、長軸X方向に沿った幅LH1が主マスク14の有孔部13の長軸方向長LH2よりも小さく、また、短軸Y方向に沿った長さは主マスク14の同方向長さとほぼ等しく形成されている。補助マスク20は、有孔部21と、有孔部21の外側で補助マスクの長手方向両端部に位置した無孔部23と、更に、各無孔部23から両端方向へ延出した一対のスカート部24と、を一体に備えている。有孔部21には、主マスク14の開孔12に対応した電子ビーム通過孔としての多数の開孔42が設けられた
そして、補助マスク20は、その有孔部21、無孔部23、スカート部24が主マスク14の有孔部13、無孔部16およびスカート部17とそれぞれ重なった状態で主マスクの電子銃側の表面に固定されている。これにより、主マスク14の短軸Y上の領域は全て2重構造となっている。
【0031】
有孔部21に形成された各開孔42は、補助マスク20の蛍光体スクリーン側の表面、つまり、主マスク14側の表面に開口したほぼ矩形状の大孔25aと、電子銃側の表面に開口したほぼ矩形状の小孔25bと、を連通した連通孔により形成されている。すなわち、補助マスク20は、開孔42の大孔25aが主マスク14と向かい合った状態で主マスク14に固定されている。そして、主マスク14の開孔12と同様に、補助マスク20の開孔42は、短軸Y方向に延びた複数の開孔列を形成し、これらの開孔列は、長軸X方向に約0.4〜0.6mmのピッチで配列されている。これにより、各開孔42は、主マスク14の開孔12と整列して配置されている。
【0032】
このような補助マスク20は、主マスク14に密着した状態で固定されている。主マスク14と補助マスク20との固定には、圧着と呼ばれる拡散接合や、レーザー溶接あるいは抵抗溶接などの手法を用いることができる。補助マスク20は、少なくとも数箇所の固定点を有している。
【0033】
上記のように構成されたカラー陰極線管において、シャドウマスク7を製造する場合、主マスク14の開孔12は2段エッチングにより、また、補助マスク20の開孔42は両面エッチングにより形成する。
【0034】
2段エッチングおよび両面エッチングによる開孔の形成方法ついて詳細に説明する。まず、主マスク14の開孔12を2段エッチングにより形成する場合について説明する。まず、例えば、アンバー材からなる主マスク用のマスク素板45を用意する。次に、図7(a)、7(b)に示すように、主マスク14の開孔12に対応するパターンのレジスト膜44a、44bをマスク素板45の両面にそれぞれ形成する。続いて、図7(c)に示すように、一方のレジスト膜44aに重ねてポリエステル樹脂などからなるエッチング保護フィルム46を貼着した後、他方のレジスト膜44b側からエッチング液をスプレーしてマスク素板45に小孔19bとなる凹孔を形成する。
【0035】
次に、図7(d)に示すように、レジスト膜44bを剥離し、凹孔の形成されたマスク素板45の表面側を水洗および乾燥する。その後、この表面側にパラフィン、ラッカーなどの抗エッチング剤を塗布し、形成された凹孔に埋込むように抗エッチング層47を形成する。また、マスク素板45の他方の面側に貼着されたエッチング保護フィルム46を剥離する。
【0036】
この状態、図7(e)に示すように、レジスト膜44aを介してマスク素板45の他方の面にエッチング液をスプレーし、先に形成された凹孔に連通する大孔19aを形成する。その後、図7(f)に示すように、苛性アルカリ溶液をスプレーして、他方の面に設けられている抗エッチング層47およびもう一方の面に形成されたレジスト膜44aを剥離する。これにより、図8(a)に示すような、多数の開孔12が所定の径およびピッチで形成された有孔部13を有した平坦なマスク素板45が得られる。
【0037】
次に、補助マスク20の開孔42を両面エッチングにより形成する場合について説明する。まず、例えば、アンバー材からなる補助マスク用のマスク素板50を用意する。次に、図9(a)、9(b)に示すように、補助マスク20の開孔42に対応するパターンのレジスト膜52a、52bをマスク素板50の両面にそれぞれ形成する。続いて、図9(c)に示すように、一方のレジスト膜側から、つまり、開孔42の大孔に対応するレジスト膜52a側からマスク素板50を連続的にエッチングし、開孔42を形成する。その後、図9(d)に示すように、マスク素板50からレジスト膜52a、52bを剥離する。これにより、図8(b)に示すような、補助マスク用のマスク素板50が得られる。
【0038】
次に、上記のようにして得られたマスク素板45および50をアニール処理した後、これらのマスク素板を互いに正確に位置決めした状態で重ね合わせ、レーザー溶接により互いに固定する。続いて、貼り合わされたマスク素板45および50をプレス装置によってプレス成形し、主マスクの電子銃側表面に補助マスクが位置した所望形状のシャドウマスク7を形成する。
【0039】
上記のように構成されたシャドウマスク7において、主マスク14および補助マスク20は、エッチング方法の違いから、図10(a)、10(b)に示すようなマスク断面形状の相違が生じる。図10(a)は、主マスク14および補助マスク20の長軸X方向に沿った断面を重ね合わせて示した図で、点線は2段エッチングにより形成された主マスク14の開孔12を、実線は両面エッチングにより形成された開孔42をそれぞれ示している。図10(b)は、主マスク14および補助マスク20の短軸Y方向に沿った断面を重ね合わせて示した図で、点線は2段エッチングにより形成された主マスク14の開孔12を、実線は両面エッチングにより形成された開孔42をそれぞれ示している。
【0040】
図10(a)に示す長軸X方向の断面に関しては、開孔12、42の相違はそれほど大きくないが、図10(b)に示す短軸Y方向の断面については、開孔12、42の断面形状が相違している。2段エッチングは、両面エッチングよりも開孔を形成するためのエッチング範囲が広い。その結果、2段エッチングを用いた場合、シャドウマスク7を形成する材料の残り、つまりは体積が少なくなる。そのため、マスク強度としては両面エッチングにより開孔を形成したマスクの方がより大きな強度を得ることができる。
【0041】
この際、主マスク14についても、両面エッチングにより開孔12を形成することにより、主マスクの体積が増加しマスク強度が上がる。しかし、高精細な表示に要求される小さい開孔を形成するためには、2段エッチングによる形成方法が必要となり、実際には、主マスクの製造に両面エッチングを使用することは難しい。
【0042】
補助マスク20の場合は、主マスク14との位置合わせ余裕度を確保する等の観点から、主マスクの開孔よりもより大きい開孔を有した構造とする必要がある。そのため、補助マスク20の開孔42は、両面エッチングでも充分対応可能な大きさとなっている。
【0043】
図11に示すように、本実施の形態におけるシャドウマスク7によれば、2段エッチングにより形成された開孔12を有した主マスク14の電子銃側表面に、両面エッチングにより形成された開孔42を有した補助マスク20が貼り合わされている。補助マスク20は、開孔42の大孔25a側が主マスク14に形成された開孔12の小孔19b側と対向するように配置されている。補助マスク20に形成された開孔42は、長軸X方向について、主マスク14の開孔12よりもやや大きな寸法に形成されている。これは、主マスク14と補助マスク20との位置合せズレが発生した場合の余裕を持たせるためである。また、短軸Y方向についても、補助マスク20の開孔42の方が主マスク14の開孔12よりも大きな寸法を有していることが好ましい。しかし、蛍光面輝度の点から、主マスク14のブリッジ幅は製造上可能なほぼ最小値となっているため、短軸Y方向に関しては、補助マスク20および主マスク14の開孔径を同一としてもよい。
【0044】
次に、上記のように構成されたシャドウマスクにおける電子ビームの反射について説明する。図11に示したように、2段エッチングにより形成された主マスク14の開孔12は、大孔19aおよび小孔19bを有している。小孔19bは、主マスク14の電子銃側表面から大孔19a側に向かって徐々に径が小さくなっている。そのため、小孔19bを規定している側壁面60は、電子銃側に向かった傾斜した曲面となっている。
【0045】
これに対し、両面エッチングにより形成された補助マスク20の開孔42において、小孔25bは、補助マスクの電子銃側表面から大孔25aに向かって径がほぼ一定、あるいは、径が徐々に大きくなっている。そのため、小孔25bを規定している側壁面62は、電子銃側に向かって傾斜することなく、電子ビームとほぼ平行か、むしろ蛍光体スクリーン側に傾斜した曲面となっている。
【0046】
電子銃からシャドウマスク7に向かって放射された電子ビームは、補助マスク20の開孔42および主マスク14の開孔12を順に通過して蛍光体スクリーンにランディングする。この際、補助マスク20に形成された開孔42の小孔25bは、電子銃側を向いた側壁面、つまり、電子ビームが衝突する側壁面を持たないため、電子ビームは2次電子をほとんど発生することなく開孔42を通過する。
【0047】
一方、補助マスク20の開孔42を通過した電子ビームは、主マスク14の開孔12に入射し、その大部分は開孔12を通過して蛍光体スクリーンに到達する。また、主マスク14の開孔12に入射した電子ビームの一部は、小孔19bを規定している側壁面60に衝突し2次電子を放出させる。放出された2次電子の一部は主マスクの開孔を通過し蛍光面に到達する。この2次電子により、蛍光体スクリーンの一部に不要発光が発生する。
【0048】
以上のように、両面エッチングにより形成された開孔42を有した補助マスク20は、実質的に電子ビームの衝突する小孔側の側壁面がないため、2次電子の発生自体が少ない。そのため、電子ビームの反射は主マスク14の側壁面60だけで発生する。このような2次電子の発生状態は、補助マスク20が貼り付けられていない主マスク14の非重畳部と同じ状態となる。そのため、蛍光体スクリーンにおいて、不要発光自体は発生するが、シャドウマスク7の重畳部に対応する部分と非重畳部に対応する部分とで不要発光の差を無くすことができる。これにより、表示画面上に不要な明るさの段差や帯状の境界が現われることがなく、良好な画像を得ることが可能となる。
【0049】
説明は省略するが、不要発光の発生は短軸Y方向についても同様であり、両面エッチングにより形成された開孔42を有した補助マスク20は、主マスク14よりも2次電子放出が少ない。そのため、蛍光体スクリーンの不要発光に起因する明るさの段差、境界の発生を防止することができる。
【0050】
また、カラー陰極線管の製造時、上記のシャドウマスク7を用いて例えばストライプ状の蛍光体層を露光、形成する際、上記と同様に、不要発光の発生を全域に渡ってほぼ均一にすることができる。そのため、蛍光体スクリーンにおける蛍光体層の幅をシャドウマスク7の重畳部に対向する領域と非重畳部に対応する領域とでほぼ均一に形成することができる。その結果、表示画像の品位が向上したカラー陰極線管を得ることが可能となる。
【0051】
以上のように構成されたカラー陰極線管によれば、主マスク14に重ねて補助マスク20を設けることにより、シャドウマスク7の最も変形しやすい画面中央近傍の変形を抑制することが可能となり、結果的にマスク曲面強度を向上させることができる。特に、補助マスクの開孔を両面エッチングによって形成することにより、開孔形成後のマスク材の体積を充分に確保し、マスク強度を維持することができる。更に、補助マスクの開孔を両面エッチングにより形成し、電子銃側に傾斜した側壁面を持たない開孔構造、あるいは、電子銃側に傾斜した側壁面が主マスク側の側壁面に比較して小さい開孔構造としている。これにより、シャドウマスクの重畳部と非重畳部との間で不要発光及び蛍光面の違いによる不要な明るさの段差が発生することなく、良好が画像を得ることが可能となる。
【0052】
なお、この発明は上述した実施の形態に限定されることなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。例えば、上述した実施の形態において、補助マスク20が主マスク14の電子銃側に配置された構成について説明したが、図12および図13に示すように、補助マスク20は主マスク14の外面側、つまり、蛍光体スクリーン5側の表面に設けてもよい。この場合、補助マスク20は、開孔42の小孔25bが主マスク14に対向した状態で、主マスク14に固定される。このような構成のシャドウマスクとした場合でも、上記と同様の作用効果を得ることができる。なお、他の構成は前述した実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0053】
また、補助マスクは1枚に限らず複数設けてもよい。更に、シャドウマスクの各開孔は、矩形状に限らず、丸型としても有効に活用することができる。
【0054】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、十分なマスク曲面強度を有しているとともに画像品位の良好なカラー陰極線管およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係るカラー陰極線管の長軸を含む断面図。
【図2】上記カラー陰極線管の短軸を含む断面図。
【図3】上記カラー陰極線管におけるシャドウマスクを示す斜視図および電子ビーム通過孔を拡大して示す平面図。
【図4】上記シャドウマスクの長軸方向に沿った断面図。
【図5】上記シャドウマスクの短軸方向に沿った断面図。
【図6】上記シャドウマスクの主マスクおよび補助マスクを拡大して示す断面図。
【図7】上記主マスクの2段エッチング工程をそれぞれ示す断面図。
【図8】上記主マスクおよび補助マスクの製造に用いるマスク素板を示す平面図。
【図9】上記補助マスクの両面エッチング工程をそれぞれ示す断面図。
【図10】2段エッチングにより形成された開孔と両面エッチングにより形成された開孔とを重ねて概略的に示す断面図。
【図11】上記シャドウマスクにおける電子ビームの通過および反射状態を示す断面図。
【図12】この発明の他の実施の形態に係るカラー陰極線管のシャドウマスクを示す断面図。
【図13】上記他の実施の形態におけるシャドウマスクを開孔部分を拡大して示す断面図。
【符号の説明】
1…パネル
5…蛍光体スクリーン
6…シャドウマスク構体
7…シャドウマスク
8…マスクフレーム
9B、9G、9R…電子ビーム
10…電子銃
14…主マスク
20…補助マスク
12、42…開孔
13、21…有孔部
19a、25a…大孔
19b、25b…小孔
60、62…側壁面
Claims (8)
- 内面に蛍光体スクリーンが設けられたパネルと、上記蛍光体スクリーンに向かって電子ビームを放出する電子銃と、上記パネルの内側に上記蛍光体スクリーンに対向して配置され、互いに直交しているとともに管軸と直交した長軸および短軸を備えたほぼ矩形状のシャドウマスクと、を備え、
上記シャドウマスクは、
上記蛍光体スクリーンのほぼ全面と対向しているとともに多数の電子ビーム通過孔が形成されたほぼ矩形状の有孔部を有した主マスクと、
上記主マスクの有孔部の短軸を含む領域に固定され、上記主マスクの電子ビーム通過孔に対応した多数の電子ビーム通過孔を有しているとともに上記短軸に沿った方向を長手方向とした帯状の補助マスクと、を具備し、
上記主マスクの各電子ビーム通過孔は、主マスクの蛍光体スクリーン側の表面に開口した大孔と主マスクの電子銃側の表面に開口した小孔とを連通した連通孔で形成され、
上記補助マスクの各電子ビーム通過孔は、補助マスクの一方の表面に開口した大孔と補助マスクの他方の表面に開口した小孔とを連通した連通孔で形成され、上記主マスクの各小孔は、主マスクの電子銃側表面から上記大孔に向かって徐々に減少した径を有し、上記補助マスクの各小孔は、補助マスクの上記他方の表面から上記大孔に向かってほぼ一定の径あるいは徐々に増加した径を有していることを特徴とするカラー陰極線管。 - 上記主マスクは、各小孔を規定しているとともに上記電子銃側に傾斜し電子ビームが衝突する側壁面を有し、上記補助マスクは、各小孔を規定しているとともに電子ビームとほぼ平行な、あるいは、蛍光体スクリーン側に傾斜した側壁面を有していることを特徴とする請求項1に記載のカラー陰極線管。
- 上記主マスクの電子ビーム通過孔は2段エッチングにより形成され、上記補助マスクの電子ビーム通過孔は両面エッチングにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカラー陰極線管。
- 上記補助マスクは、上記主マスクの電子銃側の表面に重ねて設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のカラー陰極線管。
- 上記補助マスクは上記大孔側の表面が、上記主マスクの小孔側の表面に接して設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のカラー陰極線管。
- 上記補助マスクは、上記主マスクの蛍光体スクリーン側の表面に重ねて設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のカラー陰極線管。
- 内面に蛍光体スクリーンが設けられたパネルと、上記蛍光体スクリーンに向かって電子ビームを放出する電子銃と、上記パネルの内側に上記蛍光体スクリーンに対向して配置され、互いに直交しているとともに管軸と直交した長軸および短軸を備えたほぼ矩形状のシャドウマスクと、を備え、上記シャドウマスクは、上記蛍光体スクリーンのほぼ全面と対向しているとともに多数の電子ビーム通過孔が形成されたほぼ矩形状の有孔部を有した主マスクと、上記主マスクの有孔部の短軸を含む領域に固定され、上記主マスクの電子ビーム通過孔に対応した多数の電子ビーム通過孔を有しているとともに上記短軸に沿った方向を長手方向とした帯状の補助マスクと、を具備したカラー陰極線管の製造方法において、
上記主マスク用の平坦なマスク素板、および上記補助マスク用の平坦なマスク素板を用意し、
上記主マスク用のマスク素板を2段エッチングし、それぞれマスク素板の一方の表面に開口した大孔とマスク素板の他方の表面に開口した小孔とが連通した連通孔からなる複数の電子ビーム通過孔を形成し、
上記補助マスク用のマスク素板を両面エッチングし、それぞれマスク素板の一方の表面に開口した大孔とマスク素板の他方の表面に開口した小孔とが連通した連通孔からなる複数の電子ビーム通過孔を形成し、
それぞれ上記電子ビーム通過孔が形成された主マスク用のマスク素板および補助マスク用のマスク素板を互いに固定し、
上記互いに固定されたマスク素板を所望形状にプレス形成して上記シャドウマスクを形成することを特徴とするカラー陰極線管の製造方法。 - 上記補助マスク用のマスク素板を上記大孔側の表面が、上記主マスク用のマスク素板の小孔側の表面に接するように上記マスク素板をレーザー溶接により固定し、上記補助マスクが上記主マスクの電子銃側に位置するように上記マスク素板をプレス成形することを特徴とする請求項7に記載のカラー陰極線管の製造方法。
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