JP2006111661A - リフラックスコンデンサー付設重合器並びにその重合器を用いた重合体の製造方法 - Google Patents

リフラックスコンデンサー付設重合器並びにその重合器を用いた重合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、リフラックスコンデンサー付設重合器における発泡に伴うトラブルを未然に防止し、リフラックスコンデンサーによる除熱割合を高くした場合でも安定的な運転を可能にすることである。さらに、高品質な重合体を高生産性で製造する方法を提供することである。
【解決手段】 リフラックスコンデンサー付設重合器において、リフラックスコンデンサーで凝縮し重合器内に還流する単量体を内容液表面に飛散させるための攪拌翼を重合器の気相部に設ける。
【選択図】 なし

Description

本発明はリフラックスコンデンサーを付設した重合器、並びにその重合器を用いた重合体の製造方法に関する。詳しくは、リフラックスコンデンサーによる除熱割合を安定的に高くすることができ、高品質な重合体を高生産性かつ安定的に製造することができるリフラックスコンデンサー付設重合器並びにその重合器を用いた重合体の製造方法に関する。
汎用重合体の製造では、当業者にとって製造コストの低減や重合生産性の向上が重要な課題である。たとえば、おもにバッチ方式で製造される塩化ビニル系重合体の重合生産性を向上させる方策として、大型重合器によるスケールメリットの追求が近年なされてきた。大型重合器を用いることによりバッチあたりの収量は増える反面、重合器の大型化とこれに伴う反応熱の増大に伴い、内容液の単位容積あたりの除熱面積低下、すなわち通常の外部ジャケットによる除熱能力低下を解消することが当業者の重要な課題となってきており、外部ジャケットのみで全反応熱を除去することは著しく困難となってきた。
重合器大型化に伴う除熱能力低下を補う方策としては、隔壁の厚みを薄くすることによって高い伝熱効率を持たせることのできる内部ジャケット方式や通水式バッフルの付設、リフラックスコンデンサーの付設、等が挙げられ、著しい除熱能力向上が期待できるという点から、特にリフラックスコンデンサー付設による方法が好んで用いられている。
リフラックスコンデンサーによる除熱は単量体の蒸発潜熱を利用した方法であり、外部ジャケットによる除熱と併用されるのが一般的である。全除熱必要量に占める外部ジャケット及びリフラックスコンデンサーによる除熱量の割合は様々であるが、特に大型重合器では外部ジャケットによる除熱に比べてリフラックスコンデンサーによる除熱の割合の方が高くなる傾向があり、究極的には全除熱をリフラックスコンデンサーのみによることも可能である。
一方、このようにリフラックスコンデンサーによる除熱の割合が増大するのに伴い、当業者間では内容液の発泡によるトラブルが問題となってきた。すなわち、リフラックスコンデンサーによる除熱量の増大は内容液からの単量体の蒸発量が増加することを意味し、蒸発する単量体ガスと重合生成物が泡を形成して重合器上部や極端な場合にはリフラックスコンデンサー内部にまで飛散する、いわゆる飛沫同伴という問題である。この現象により飛散した重合生成物が重合器上部やリフラックスコンデンサー内部に沈積してスケールを形成すると、その除去に多大な労力を要するのみならず、特にリフラックスコンデンサー内部の閉塞を起こすと重合中の除熱が困難となって内温が異常に上昇し、制御不能に陥るなど、工程の運転上著しい危険を伴う。さらに生成したスケールが最終製品に混入することによって品質が低下するといった問題も起こり易かった。
発泡対策には大きく分けて化学的な方法と機械的な方法がある。代表的な汎用重合体として塩化ビニル系重合体について例示してみると、化学的な方法には、分散剤として高鹸化度の部分鹸化ポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)を用いることによって重合系内そのものを発泡し難くする方法、消泡剤等を併用して発泡を抑制する方法が挙げられ、機械的な方法には、発生する気泡を機械的に破泡する方法が挙げられる。
例えば、平均鹸化度85モル%以上のPVAを用いる方法が開示されている(特許文献1)が、この方法では、高鹸化度PVAの保護コロイド性が高いことによる粗粒や微粒子の発生、すなわち粒度分布の拡大が避けられず、粗粒によるフィッシュアイ等の品質低下、排水への微粒子混入による水質悪化が深刻な問題であった。
また、消泡剤を併用する方法が開示されている(特許文献2)(特許文献3)が、これらの方法では、消泡剤が最終製品の色調や透明性、電気的特性の悪化をもたらすといった問題があった。
さらに、発生する気泡を重合器内の気相部に設けた回転羽根によって破泡する方法が開示されている(特許文献4)が、この方法では破泡による発泡抑制効果は大きいものの、生成した粒子を含む泡を機械的に撒き散らすことによって重合器上部や回転羽根カバーへのスケール付着が激しく、このスケール除去に多大な労力を要したり、スケールが製品に混入するという問題が避けられなかった。
その他、一般的な消泡の手段としてメタノール、エタノールといった低級アルコールやヘキサン、ヘプタンといった液状炭化水素類、すなわち低表面張力の物質を泡に噴霧する方法がある。この方法では確かに消泡効果は高いが、重合反応に及ぼす影響が大きい、排水のCODが高くなり、処理に多大な労力や費用がかかる、といった問題があり、適用は難しい。
特開昭61−115908号公報 特開平02−180908号公報 特開平03−212409号公報 特開昭58−49710号公報
本発明の課題は、上記のようなリフラックスコンデンサー付設重合器における発泡に伴うトラブルを未然に防止し、リフラックスコンデンサーによる除熱割合を高くした場合でも安定的に運転を可能にすることで、高品質な重合体を高生産性で製造する方法を提供することにある。
本発明者らは上記の問題に対し鋭意検討を重ねた結果、前記低級アルコールや液状炭化水素の噴霧による消泡効果と同様の効果を単量体に発揮させるという発想に到った。そこで、リフラックスコンデンサーで凝縮し、重合器内に還流する単量体をできる限り細かい液滴として発生する泡に接触させることで著しい消泡効果が認められることを発見し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
リフラックスコンデンサー付設重合器において、リフラックスコンデンサーで凝縮して重合器内に還流する単量体を重合内容液表面に飛散させるための攪拌翼を重合器の気相部に設けたことを特徴とする重合器(請求項1)、単量体が塩化ビニル単量体単独または塩化ビニル単量体を主体としこれと共重合可能な単量体と塩化ビニル単量体との混合物であり、これら単量体を請求項1に記載の重合器を用いて重合することを特徴とする塩化ビニル系重合体の製造方法(請求項2)、重合方法が懸濁重合であることを特徴とする請求項2に記載の塩化ビニル系重合体の製造方法(請求項3)、をその内容とする。
本発明によれば、リフラックスコンデンサーによる除熱割合を高くしても内容液の発泡を安定的に抑制することができる。また、特に気液界面部や重合器上部のスケール付着を著しく低減することが可能となる。また、高い生産性を維持したまま安定的に工程を運転することができる。さらに、得られる重合体のフィッシュアイなどの品質を低下することなく重合が可能である。
本発明でいうリフラックスコンデンサーとは、重合器の外部に取り付けられ、重合反応中に重合内容液から蒸発する単量体ガスを冷却して凝縮させ、液体状態にして重合内容液に戻すためのものである。リフラックスコンデンサーは、内容液から単量体が蒸発する際にうばう潜熱によって反応熱を除去する役割をもっている。
本発明の重合器はリフラックスコンデンサーで凝縮して重合器内に還流する単量体を重合内容液表面に飛散させるための攪拌翼が重合器の気相部に設けられている。ここで、還流する単量体を重合内容液表面に飛散させるとは還流する単量体が内容液表面の一箇所のみに滴下したり降り注いだりするのではなく、多数箇所に降り注ぐことを意味する。飛散は重合液面に対して満遍なくおこなわれることが好ましい。通常のリフラックスコンデンサーでは、還流する単量体が落下する場所は重合内容液表面の一箇所のみであるため、この部位では局部的な発泡抑制効果が発揮されるものの、この発泡抑制速度より泡の発生速度の方が上回って全体としての発泡抑制は期待できない。還流単量体の飛散により単量体が内容液表面に落下する部位は、その数が多ければ多いほど高い効果を発揮する。以下に本発明の重合器および本発明で使用する装置について、図に従って簡単に説明する。
図1は本発明の請求項1に関わる重合器の一例であり、リフラックスコンデンサー付設重合器において、リフラックスコンデンサーで凝縮して重合器内に還流する単量体を重合内容液表面に飛散させるための攪拌翼を重合器の気相部に設けたことを特徴とする重合器を示すものである。図1の符号において1は重合器本体、2は重合器外部ジャケット、3は攪拌軸、4は重合攪拌翼であり、5はバッフルである。重合器1の上部にはリフラックスコンデンサー8が付設されており、重合内容液7から蒸発した単量体ガスが単量体ガス流路9を通ってこのリフラックスコンデンサー内に導かれ、冷却されて凝縮し、凝縮単量体帰り流路10を通って重合器内に還流する。さらに攪拌軸3には、重合器内に還流する単量体を重合内容液の表面に飛散させるための単量体飛散翼6が気相部に取り付けられており、重合攪拌翼と同じ回転数で回転する。
本発明で用いる単量体飛散翼は単量体を内容液表面に飛散させることができればいかなる形態でも良く、プロペラ型、タービン型、パドル型、傾斜パドル型等を例示することができる。このうち、単量体飛散効果が最も期待できるという面から傾斜パドル型翼が望ましい。プロペラ型、傾斜パドル型翼などの傾斜型翼を用いる場合は回転方向前側より後ろ側が高くなるよう翼を設置するが、その水平面に対する傾斜角は15度から75度の範囲とするのが望ましい。単量体飛散翼の半径、すなわち攪拌軸の中心から単量体飛散翼の先端までの距離は、リフラックスコンデンサーで凝縮して重合器内に還流する単量体が落下する場所に届くよう、その長さを決めればよいが、還流する単量体の最も外側、すなわち重合器外部ジャケット側の位置よりも翼先端が外側に来るように設計することが望ましい。また、単量体飛散翼の取り付け高さは運転に支障がない限り制限はなく、前記単量体飛散翼の半径や重合反応中常に気相部に位置すること、などを考慮して決めればよいが、重合器上鏡部の最も上と重合開始時点の液面位置との中央部付近に設置するのが望ましい。
本発明の単量体飛散翼6は、その構造上重合攪拌翼4と同じ回転数で同じ方向に回転する。この回転数は重合に好適な回転数によって必然的に決まるが、翼先端の速度、いわゆる攪拌翼周速は6〜15m/秒とするのが好ましく、8〜12m/秒とするのが更に好ましい。
本発明の重合器はリフラックスコンデンサーを使用する重合体の製造プロセス全てに好適に使用することができ、特に水性媒体中で水溶性もしくは水分散性の高分子懸濁分散安定剤及び油溶性重合開始剤の存在下で懸濁重合をおこなう塩化ビニル系重合体の製造に好適である。
本発明における塩化ビニル系重合体としては、例えば塩化ビニル単独重合体、塩化ビニル共重合体が挙げられる。塩化ビニル共重合体を製造するための塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、酢酸ビニル等のアルキルビニルエステル類、セチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、塩化ビニリデン等のビニリデン化合物等が挙げられる。
次に、本発明に用いる水溶性もしくは水分散性の高分子懸濁分散安定剤は、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、酢酸ビニルーマレイン酸共重合体、スチレンーマレイン酸共重合体、ゼラチン、デンプン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられ、これらは単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明における油溶性重合開始剤は本発明の目的が達成できるものであれば特に制限はないが、これらの開始剤のうち10時間半減期温度が30〜65℃のものを1種又は2種以上使用するのが好ましい。重合開始剤の例としては、アセチルシクロヘキシルスルフォニルパーオキサイド、2,4,4トリメチルペンチル−2−パーオキシネオデカノエート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4,−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系開始剤等が挙げられ、これらは単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
さらに従来塩化ビニル系単量体の重合又は共重合に使用される重合度調節剤、連鎖移動剤、pH調節剤、ゲル化性改良剤、帯電防止剤、乳化剤、安定剤、スケール防止剤等やこれらの仕込み方法も本発明の目的が達成できるものや方法であれば特に制限はない。
本発明においては、全除熱量のうちリフラックスコンデンサーによる除熱の占める割合を、単にリフラックスコンデンサーによる除熱割合という。
重合反応中におけるリフラックスコンデンサーによる除熱割合は任意に設定すれば良く、究極的な例としては重合器ジャケットに冷却水を通水せず、リフラックスコンデンサーのみによって全除熱を行なっても良い。
以下に、本発明の具体的実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例では特にことわりのない限り「部」は重量部、「%」は重量%を表す。また本実施例の水は全てイオン交換水を用いた。
さらに以下の実施例で用いた重合器には、重合中に内容液の液面位置をモニターするための装置(以下、液面計と略す)を付設した。該液面計は設定した充填量、すなわち全ての主副原料を仕込んだ後、内温を所定重合温度まで昇温した時点での液面位置が40%を示すよう設定しており、発泡によって液面位置が高くなるにつれて値が大きくなる。また、前述したような飛沫同伴により重合に支障が発生し始める液面位置の目安は45%以上である。さらに該液面計での液面位置の測定限界は60%である。
得られた塩化ビニル系重合体の特性値は次の方法により測定した。
(1)フィッシュアイ
塩化ビニル系重合体100部にジオクチルフタレート6部、ブチル錫マレエート系安定剤2部、流動パラフィン系滑剤1部を添加し十分撹拌混合した後、この混合物をシリンダー温度160℃、ダイ温度165℃に調節した40mm押出し機でスクリュー回転数35rpmでパイプダイを用いて押出した。押出されたチューブの吐出先端から窒素ガスを少量吹き込み、チューブの厚みが0.2mmとなるよう調節した。塩化ビニル系重合体の未溶融分に起因してこのチューブ表面に発生するフィッシュアイの数を肉眼でカウントし、重合体10gあたりのフィッシュアイ個数として評価した。
(2)粗粒量
得られた塩化ビニル系重合体をJIS/K−6721に準拠し42メッシュの篩で篩分けを行い、メッシュ上に残存する重合体の重量を測定し、用いた重合体の元の全重量に対する割合を算出した。
(実施例1)
図1に示すように、攪拌翼4、外部ジャケット2及びリフラックスコンデンサー8を備えた内容積1500リットルのステンレス製重合器において、攪拌翼4のうち最上段攪拌翼のさらに上で重合中気相部に相当する位置に、リフラックスコンデンサー8で凝縮し重合器内に還流する単量体を重合内容液7の表面に飛散させるための攪拌翼6(以下単量体飛散翼と称す)を取り付けた。本重合器に水100部(塩化ビニル単量体100部に対して、以下同じ)、分散安定剤として平均重合度が900で鹸化度78%の部分ケン化ポリ酢酸ビニルを0.08部、油溶性開始剤としてtert−ブチルパーオキシネオデカノエートを0.015部及び3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシドを0.02部仕込み、真空ポンプで減圧し酸素を除去した。続いて攪拌を開始した後塩化ビニル単量体100部を仕込み、重合器外部ジャケット2を利用し内容液を63℃まで昇温して重合を開始し、引き続き63℃一定で重合を行った。なお、本実施例における重合攪拌翼の周速は8m/秒とした。重合転化率が約5%になったところで、リフラックスコンデンサー8の稼働を開始し、リフラックスコンデンサー8による除熱割合を徐々に高めて、転化率約20%の時点でリフラックスコンデンサー8による除熱割合が全除熱量の70%となるよう調節、以後転化率75%で重合終了するまでリフラックスコンデンサー8による除熱割合を70%で一定とした。残りの必要除熱量は重合器外部ジャケット2を使用した。液面計により重合中の液面位置を調べたところ、転化率約60%時点で液面位置が上昇し始めたが、その後最も高い値を示した時点でも液面位置は38%であり、発泡は抑制されていることが確認された。また、重合後の重合器内壁を観察した結果、重合器上部及び気液界面部のスケールは付着していなかった。得られた重合体を用いてフィッシュアイ及び粗粒量を調べたところ、それぞれ、168個、0.05%であった。
(比較例1)
実施例1と同じ重合器において、単量体飛散翼6を取り外し、水100部、分散安定剤として平均重合度が900で鹸化度78%の部分ケン化ポリ酢酸ビニルを0.08部、油溶性開始剤としてtert−ブチルパーオキシネオデカノエートを0.015部及び3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシドを0.02部仕込み、真空ポンプで減圧し酸素を除去した。続いて攪拌を開始した後塩化ビニル単量体100部を仕込み、重合器外部ジャケット2を利用し内容液を63℃まで昇温して重合を開始し、引き続き63℃一定で重合を行った。なお、本比較例における重合攪拌翼の周速は8m/秒とした。重合転化率が約5%になったところで、リフラックスコンデンサー8の稼働を開始し、リフラックスコンデンサー8による除熱割合を徐々に高めて、転化率約20%の時点でリフラックスコンデンサー8による除熱割合が全除熱量の70%となるよう調節、以後転化率75%で重合終了するまでリフラックスコンデンサー8による除熱割合を70%で一定とした。残りの必要除熱量は重合器外部ジャケット2を使用した。さらに液面計により重合中の液面位置を追跡したところ、重合進行による重合内容液7の体積収縮に伴って液面位置は徐々に低下し、最も低いところで25%を示したが、転化率約60%時点で液面位置が上昇し始め、最も高い値を示した時点での液面位置は50%を示し、重合内容液7の発泡が著しいことをうかがわせた。重合終了後、未反応単量体を回収し、重合器を開放したところ、重合器内壁の気液界面部には帯状にスケールが、また重合器上部にもスケールが付着していた。得られた重合体を用いてフィッシュアイ及び粗粒量を調べたところ、それぞれ、約2000個、2.7%であった。
(比較例2)
実施例1と同じ重合器において、分散安定剤として平均重合度が900で鹸化度78%の部分ケン化ポリ酢酸ビニルを0.08部、油溶性開始剤としてtert−ブチルパーオキシネオデカノエートを0.015部及び3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシドを0.02部仕込み、真空ポンプで減圧し酸素を除去した。続いて塩化ビニル単量体100部を仕込み、重合器外部ジャケットを利用し内容液を63℃まで昇温して重合を開始し、引き続き63℃一定で重合を行った。なお、本比較例においても重合攪拌翼の周速は8m/秒とした。ただし本比較例では、リフラックスコンデンサー8を稼働せず、従って全除熱を重合器外部ジャケット2によっておこなった。液面計により重合中の液面位置を調べたところ、先に述べた実施例及び比較例と同様に転化率約60%時点で液面位置が上昇し始めたが、その後最も高い値を示した時点でも液面位置は35%であった。転化率が約60%の時点で重合器外部ジャケット2の冷却水温が急激に低下し、重合内容液の温度を一定に保つことが困難となったため、転化率約68%の時点で重合を終了した。このことは重合器外部ジャケット2による除熱能力が不足していることを示しており、先に述べた実施例及び比較例と同量の油溶性重合開始剤を使用した場合には重合制御が不可能であることを示している。なお、重合後の重合器内壁を観察した結果、重合器上部及び気液界面部のスケールは全く付着していなかった。得られた重合体を用いてフィッシュアイ及び粗粒量を調べたところ、それぞれ、138個、0.03%であった。本比較例の結果は、リフラックスコンデンサー8を使用しない場合には発泡が非常に少なく、敢えて本発明の重合器を用いる必要は無いものの、リフラックスコンデンサー8を使用する場合に比べて除熱能力が不足し、これに伴って重合時間を延長せざるを得ない、あるいは、水/単量体の重量比を大きくせざるを得ないなど、生産性を低下させなければならないことを示している。
(比較例3)
比較例1と同じ重合器において、分散安定剤として平均重合度が900で鹸化度78%の部分ケン化ポリ酢酸ビニルを0.08部、油溶性開始剤としてtert−ブチルパーオキシネオデカノエートを0.015部及び3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシドを0.02部仕込み、真空ポンプで減圧し酸素を除去した。続いて塩化ビニル単量体100部を仕込み、外部ジャケットを利用し内容液を63℃まで昇温して重合を開始し、引き続き63℃一定で重合を行った。なお、本比較例においても重合攪拌翼の周速は8m/秒とした。ただし本比較例では、全除熱をリフラックスコンデンサーによっておこなった。リフラックスコンデンサー負荷率の調節方法は以下の通りとした。全ての主副原料の仕込みを終了した後、外部ジャケットを利用して内容液を昇温し、内温が63℃に達した時点でリフラックスコンデンサーによる除熱割合が100%となるよう調節、以後転化率75%で重合終了するまでリフラックスコンデンサーによる除熱割合を100%で一定とした。この間、外部ジャケットには水を流さなかった。液面計により重合中の液面位置を調べたところ、先に述べた比較例及び実施例と同様に転化率約60%時点で液面位置が上昇し始め、その後液面位置は60%を越えて、測定不可能となった。さらに、重合後の重合器内壁を観察した結果、気液界面部のみならず重合器上部にもスケールが非常に多く付着しており、スケール除去に多大な労力を要した。得られた重合体を用いてフィッシュアイ及び粗粒量を調べたところ、それぞれ、5000個以上、3.5%であった。
(実施例2)
実施例1と同じ重合器において、分散安定剤として平均重合度が900で鹸化度78%の部分ケン化ポリ酢酸ビニルを0.08部、油溶性開始剤としてtert−ブチルパーオキシネオデカノエートを0.015部及び3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシドを0.02部仕込み、真空ポンプで減圧し酸素を除去した。続いて塩化ビニル単量体100部を仕込み、重合器外部ジャケット2を利用し内容液を63℃まで昇温して重合を開始し、引き続き63℃一定で重合を行った。なお、本実施例においても重合攪拌翼の周速は8m/秒とした。ただし本実施例では、全除熱をリフラックスコンデンサー8によっておこなった。リフラックスコンデンサー8の負荷率の調節方法は比較例3と同じ方法とした。液面計により重合中の液面位置を調べたところ、先に述べた比較例及び実施例と同様に転化率約60%時点で液面位置が上昇し始めたが、その後最も高い値を示した時点でも液面位置は41%、つまり重合開始時点と同程度の液面位置であった。また、重合後の重合器内壁を観察した結果、重合器上部及び気液界面部のスケール付着状況は実施例1と同程度であった。得られた重合体を用いてフィッシュアイ及び粗粒量を調べたところ、それぞれ、280個、0.1%であった。
実施例1で使用した重合器の概略図である。
符号の説明
1 重合器本体
2 重合器外部ジャケット
3 攪拌軸
4 重合攪拌翼
5 バッフル
6 単量体飛散翼
7 重合内容液
8 リフラックスコンデンサー
9 単量体ガス流路
10 凝縮単量体帰り流路

Claims (3)

  1. リフラックスコンデンサー付設重合器において、リフラックスコンデンサーで凝縮して重合器内に還流する単量体を重合内容液表面に飛散させるための攪拌翼を重合器の気相部に設けたことを特徴とする重合器。
  2. 単量体が塩化ビニル単量体単独または塩化ビニル単量体を主体としこれと共重合可能な単量体と塩化ビニル単量体との混合物であり、これら単量体を請求項1に記載の重合器を用いて重合することを特徴とする塩化ビニル系重合体の製造方法。
  3. 重合方法が懸濁重合であることを特徴とする請求項2に記載の塩化ビニル系重合体の製造方法。
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CN114390945A (zh) * 2019-09-10 2022-04-22 韩华思路信株式会社 氯乙烯树脂悬浮聚合用分批式搅拌器及利用其的分批式悬浮聚合反应器
WO2022265055A1 (ja) * 2021-06-16 2022-12-22 信越化学工業株式会社 反応装置、及び、ビニル系重合体の製造方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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