1.第1実施形態
(1)構成
図1は本発明の一実施形態が採用されたトルクコンバータ1を示している。図1において、トルクコンバータ1は、主に、フロントカバー2と、フロントカバー2と同心に配置された3種の羽根車(インペラー10、タービン11、ステータ12)からなるトーラス形状の流体作動部3と、フロントカバー2とタービン11との軸方向間の空間に配置されたロックアップ装置4とから構成されている。フロントカバー2とインペラー10のインペラーシェル15は外周部が溶接により固定されており、両者で作動油が充填された流体室を形成している。
フロントカバー2は、エンジンのクランクシャフト(図示せず)からトルクが入力される部材である。フロントカバー2は主に円板状の本体5から構成されている。本体5の中心にはセンターボス6が固定されている。本体5の外周部エンジン側端面には複数のボルト7が固定されている。本体5の外周部にはトランスミッション側に延びる外周筒状部8が一体に形成されている。
フロントカバー2の本体5の内側で外周部には環状かつ平坦な摩擦面73が形成されている。摩擦面73は軸方向トランスミッション側を向いている。
インペラー10は、インペラーシェル15と、インペラーシェル15の内側に固定された複数のインペラーブレード16と、インペラーシェル15の内周縁に固定されたインペラーハブ18とから構成されている。
タービン11は流体室内でインペラー10に対向して配置されている。タービン11は、タービンシェル20と、タービンシェル20に固定された複数のタービンブレード21と、タービンシェル20の内周縁に固定されたタービンハブ23とから構成されている。
タービンハブ23は、円筒状のボス23aと、そこから外周側に延びるフランジ23bを有している。フランジ23bは複数のリベット24によってタービンシェル20の内周部に固定されている。さらに、ボス23aの内周面にはスプライン23cが形成されている。スプライン23cにはトランスミッション側から延びる図示しないシャフトが係合している。これによりタービンハブ23からのトルクは図示しないトランスミッション入力シャフトに出力される。ボス23aの軸方向エンジン側の外周面26は、断面で軸方向にストレートに延びている。
ステータ12はインペラー10の内周部とタービン11の内周部との間に配置されている。ステータ12はタービン11からインペラー10へと戻る作動油を整流し、トルクコンバータ1におけるトルク増幅作用を実現するための機構である。このトルク増幅作用によって、発進時に優れた加速性能が得られる。ステータ12は、ステータキャリア27と、その外周面に設けられた複数のステータブレード28とから構成されている。ステータキャリア27はワンウェイクラッチ30を介して図示しない固定シャフトに支持されている。
フロントカバー2の本体5とタービンハブ23との軸方向間には、第1ワッシャ32が配置されている。なお、第1ワッシャ32には半径方向に延びる複数の溝が形成されており、これらの溝により第1ワッシャ32の半径方向両側を作動油が流通可能となっている。タービンハブ23とワンウェイクラッチ30との間には第2スラストベアリング33が配置されている。第2スラストベアリング33では、半径方向両側を作動油が流通可能となっている。ステータキャリア27とインペラーハブ18との軸方向間には、第3スラストベアリング34が配置されている。第3スラストベアリング34では、半径方向両側を作動油が流通可能となっている。
なお、この実施形態ではインペラーハブ18とステータ12との軸方向間に油圧回路の第1油路が連結され、ステータ12とタービンハブ23との軸方向間に油圧回路の第2油路が連結され、タービンハブ23とフロントカバー2の内周部との間に油圧回路の第3油路が連結されている。第1油路と第2油路は通常は共通の油圧回路につながっており、ともに、流体作動部3に作動油を供給し、又は流体作動部3から作動油を排出する。第3油路は、図示しないシャフトの内部に形成され、フロントカバー2とタービンハブ23との間に作動油を供給したり又は排出することができる。
ロックアップ装置4は、フロントカバー2の本体5とタービン11との軸方向間に形成された環状の空間40内に配置され、空間内の油圧変化によってフロントカバー2とタービン11とを機械的に連結・連結解除するための装置である。ロックアップ装置4は、空間40内で油圧変化によって作動するクラッチ連結機能と、回転方向の捩じり振動を吸収・減衰するためのダンパー機能とを有している。ロックアップ装置4は、主に、ピストン41とダンパー機構42とから構成されている。ピストン41は空間40内においてフロントカバー2の本体5側に近接して配置された円板状の部材である。ピストン41は、空間内をフロントカバー2側の第1空間43と、タービン11側の第2空間44とに分割している。ピストン41の外周部は、フロントカバー2の摩擦面73の軸方向トランスミッション側に配置された摩擦連結部49となっている。摩擦連結部49は、環状かつ平坦な板状部分であり、軸方向エンジン側に環状の摩擦部材46が貼られている。
ピストン41の内周縁には内周筒状部47が形成されている。内周筒状部47はピストン41の内周縁から軸方向トランスミッション側に延びている。内周筒状部47の内周面はタービンハブ23の外周面26によって軸方向及び回転方向に移動可能に支持されている。内周筒状部47の軸方向トランスミッション側は、タービンハブ23のフランジ23bに当接可能となっている。これによりピストン41の軸方向トランスミッション側への移動が制限されている。なお、外周面26には環状の溝が形成されており、その溝内にはシールリング48が配置されている。シールリング48は内周筒状部47の内周面に当接している。このシールリング48によってピストン41の内周部の軸方向両側がシールされている。さらに、ピストン41の外周縁には、外周筒状部45が形成されている。外周筒状部45はピストン41の外周縁から軸方向トランスミッション側に延びている。
ダンパー機構42は、ピストン41からのトルクをタービン11側に伝達すると共に、捩じり振動を吸収・減衰するための機構である。ダンパー機構42はピストン41の外周部とタービンシェル20の外周部との間に配置されている。ダンパー機構42は、主に、ドライブ部材50とドリブン部材51とトーションスプリング52と第1プレート53と第2プレート54から構成されている。図2〜4において、矢印R1が回転方向駆動側(回転方向第1側)であり、矢印R2が回転方向逆駆動側(回転方向第2側)である。
ドライブ部材50は、トーションスプリング52に対してトルクを入力するための駆動部材であって、ピストン41の外周部の軸方向トランスミッション側に配置されている。ドライブ部材50は、板状部材であり、ピストン41の外周部の軸方向トランスミッション側に間隔を空けて配置された環状部50aを有している。環状部50aの内周縁には、円周方向に間隔を空けて配置された複数の連結部50bが設けられている。連結部50bは、軸方向に延びる係合部50cと、そこから半径方向に延びてピストン41に当接する固定部50dとから構成されている。固定部50dは、リベット55によってピストン41に堅く固定されている。なお、連結部50bは円周方向両端が折り曲げられた形状になっており、そのため係合部50cの円周方向両端には、板断面より面積の大きな当接部50eが形成されている。なお、環状部50aの外周縁には、軸方向エンジン側に延びる筒状部50fが形成されている。筒状部50fは、ピストン41の外周筒状部45の内周側に近接又は当接して配置されている。変形例としては、ドライブ部材の内周部をストップピンでピストンに固定してもよく、その場合はストップピンが第1プレート及び第2プレートを駆動することになる。
ドリブン部材51は、トーションスプリング52にからトルクが出力される従動部材であって、ピストン41の内周部の軸方向トランスミッション側に配置されている。ドリブン部材51は、環状の板状部材であり、内周部が前述のリベット24によってタービンハブ23のフランジ23bに固定されている。ドリブン部材51の外周縁には、円周方向に間隔を空けて配置された複数の係合部51aが設けられている。係合部51aは、軸方向エンジン側に折り曲げられたように伸びる爪状の突起である。係合部51aは、図2に示すように、円周方向位置及び円周方向幅(角度)がドライブ部材50の連結部50bに一致するように配置されている。なお、係合部51aは係合部50cに対して半径方向内側に配置されている。
トーションスプリング52は、捩り振動を吸収するための弾性部材であって、例えばコイルスプリングからなる。トーションスプリング52は、ピストン41の外周部と、ドライブ部材50の環状部50aによって形成されている環状空間内に配置されている。トーションスプリング52は、円周方向に並んで複数配置されている。なお、ピストン41の外周部と、ドライブ部材50の環状部50aは、トーションスプリング52の軸方向両側を支持するのみであって、トーションスプリング52とトルクを伝達する部分を有していない。
第1プレート53と第2プレート54は、ドライブ部材50とドリブン部材51が相対回転すると両者によって駆動されて、トーションスプリング52を回転方向に圧縮するための部材である。なお、ドライブ部材50は、正駆動時には第1プレート53を駆動し、逆駆動時には第2プレート54を駆動するようになっている。
第1プレート53と第2プレート54は、軸方向に重ねて配置された板状部材である。第1プレート53は軸方向エンジン側に配置されており、第2プレート54は軸方向トランスミッション側に配置されている。第1プレート53と第2プレート54は同一の形状の部材であり、軸方向の向きを互いに異ならせることで平面視において対称な配置となっている。特に、第1プレート53と第2プレート54はスプリングの中心線に対して線対称になっている。
第1プレート53は、主に、第1環状部53aと、そこから半径方向外側に延びる複数の第1支持部53bとから構成されている。第1支持部53bは、トーションスプリング52の回転方向端面を支持するための部分である。第1支持部53b同士の回転方向間は、ばね収容のための窓孔53gとなっている。第1支持部53bの回転方向R1側端面53cは、図2及び図4に示すように、半径方向外側端が半径方向内側端より回転方向R1側にずれて配置されている。第1支持部53bの半径方向外側端には、回転方向R1側に延びる係合突起53dが形成されている。第1支持部53bの回転方向R1側端面53c及び係合突起53dは、図3に示すように、軸方向に折り曲げられて延びる板面構造となっている。このため、トーションスプリング52と第1プレート53の当接部分の接触面積が大きくなっている。以上より、トーションスプリング52や第1支持部53bの摩耗や破損が生じにくくなっている。また、第1支持部53bの回転方向R1側端面53cの半径方向外側端である基部53e(係合突起53dとの接点)がトーションスプリング52の端部の外周側に当接している。
第2プレート54は、主に、第2環状部54aと、そこから半径方向外側に延びる複数の第2支持部54bとから構成されている。第2支持部54bは、トーションスプリング52の回転方向端面を支持するための部分である。第2支持部54b同士の回転方向間は、ばね収容のための窓孔54gとなっている。第2支持部54bの回転方向R2側端面54cは、図2及び図4に示すように、半径方向外側端が半径方向内側端より回転方向R2側にずれて配置されている。第2支持部54bの半径方向外側端には、回転方向R2側に延びる係合突起54dが形成されている。第2支持部54bの回転方向R2側端面54c及び係合突起54dは、図3に示すように、軸方向に折り曲げられて延びる板面構造となっている。このため、トーションスプリング52と第2プレート54の当接部分の接触面積が大きくなっている。以上より、トーションスプリング52や第2支持部54bの摩耗や破損が生じにくくなっている。また、第2支持部54bの回転方向R2側端面54cの半径方向外側端である基部54e(係合突起54dとの接点)がトーションスプリング52の端部の外周側に当接している。
なお、第1支持部53bの回転方向R2側端面53fは、トーションスプリング52の回転方向R1側端面及び第2支持部54bの回転方向R2側端面54cから回転方向R1側に離れて配置されている。第2支持部54bの回転方向R1側端面54fは、トーションスプリング52の回転方向R2側端面及び第1支持部53bの回転方向R1側端面53cから回転方向R2側に離れて配置されている。
以上の構造において、トーションスプリング52の外周側は第1プレート53及び第2プレート54によっては閉ざされていない。
第1プレート53の内周縁には、半径方向内側に延びる複数の第1突起57が形成されている。各突起57の円周方向間の空間は第1切り欠き58である。第1突起57は、係合部50c及び係合部51aの回転方向R1側に配置され、互いに当接している。各第1突起57は、自らの回転方向R1側にある係合部50cや係合部51aから所定角度離れて配置されている。第2プレート54の内周縁には、半径方向内側に延びる複数の第2突起59が形成されている。各第2突起59の円周方向間の空間は第2切り欠き60である。第2突起59は、係合部50c及び係合部51aの回転方向R2側に配置され、互いに当接している。各第2突起59は、自らの回転方向R2側にある係合部50cや係合部51aからな所定角度離れて配置されている。
言い換えると、第1プレート53と第2プレート54は、互いに重なった部分を有する第1及び第2切り欠き58,60をそれぞれ有している。係合部50cは、第1及び第2切り欠き58,60内に延びている。係合部51aは、第1及び第2切り欠き58,60内に延びている。第1切り欠き58は、第2切り欠き60に対して回転方向R1側にずれている。係合部50cは、第1プレート53の回転方向R2側を向く面(具体的には、第1突起57の回転方向R2側端面)に回転方向に当接しているがR1側を向く面(具体的には、別の第1突起57の回転方向R1側端面)に回転方向に隙間を確保しており、さらに、第2プレート54の回転方向R1側を向く面(具体的には、第2突起59の回転方向R1側端面)に回転方向に当接しているがR2側を向く面(具体的には、別の第2突起59の回転方向R2側端面)に回転方向に隙間を確保している。係合部51aは、第1プレート53の回転方向R2側を向く面(具体的には、第1突起57の回転方向R2側端面)に回転方向に当接しているがR1側を向く面(具体的には、別の第1突起57の回転方向R1側端面)に回転方向に隙間を確保しており、さらに、第2プレート54の回転方向R1側を向く面(具体的には、第2突起59の回転方向R1側端面)に回転方向に当接しているがR2側を向く面(具体的には、別の第2突起59の回転方向R2側端面)に回転方向に隙間を確保している。さらに、係合部50c及び係合部51aは、第1切り欠き58及び第2切り欠き60の隙間側の面と回転方向に当接可能である。
(2)動作
クラッチ連結動作について説明する。第3油路からフロントカバー2とピストン41との間の空間内の作動油をドレンする。これより、油圧差によって、ピストン41は軸方向エンジン側に移動し、摩擦連結部49がフロントカバー2の摩擦面73に当接する。
この状態で、ピストン41からのトルクは、ドライブ部材50から、第1プレート53又は第2プレート54、トーションスプリング52、第2プレート54又は第1プレート53を通って、ドリブン部材51に伝達される。
図5〜図10に示す第1実施形態の簡略構成又は変形例を用いて、ダンパー機構42のトルク伝達動作及び捩り動作を説明する。図5は第1プレート53を示しており、図6は第2プレート54を示している。図7は、第1プレート53と第2プレート54を重ね合わせた状態を示しており、この状態でダンパー機構42にトルクは入力されておらず、第1プレート53と第2プレート54は中立位置にある。
駆動時の動作を説明する。図8に示すように、最初に係合部51aを固定した状態で、係合部50cを回転方向R1側に移動させる。すると、係合部50cは第1突起57に当接した状態で第1プレート53を回転方向R1側に駆動する。このとき、第2プレート54の第2突起59は係合部51aによって回転方向R1側への移動を禁止されている。したがって、トーションスプリング52は、第1プレート53の第1支持部53bと第2プレート54の第2支持部54bとの間で回転方向に圧縮される。捩り角度が大きくなっていくと、図9に示すように、第1突起57が係合部51aに回転方向R2側から当接する。この結果、第1プレート53と第2プレート54の相対回転が停止する。またこのとき、第1切り欠き58と第2切り欠き60とが一致することによって、ストッパー効果があり、バネ圧縮の際の密着防止又は圧縮量調整が可能となる。
逆駆動時の動作を説明する。図10に示すように、最初に係合部51aを固定した状態で、係合部50cを回転方向R2側に移動させる。すると、係合部50cは第2突起59に当接した状態で第2プレート54を回転方向R2側に駆動する。このとき、第1プレート53の第1突起57は係合部51aによって回転方向R2側への移動を禁止されている。したがって、トーションスプリング52は、第1プレート53の第1支持部53bと第2プレート54の第2支持部54bとの間で回転方向に圧縮される。捩り角度が大きくなっていくと、第2突起59が係合部51aに回転方向R1側から当接する。この結果、第1プレート53と第2プレート54の相対回転が停止する。
いずれの場合も、第1プレート53の第1支持部53bはトーションスプリング52から回転方向R1側からのみ荷重を受け、第2プレート54の第2支持部54bはトーションスプリング52から回転方向R2側からのみ荷重を受ける。以上より、第1支持部53b及び第2支持部54bに作用する荷重は一方向からであるため、両振り応力ではなく片振り応力が発生する。このため、第1支持部53b及び第2支持部54bの強度を従来に比べて低減できる。例えば、各支持部の円周方向幅を短くして、トーションスプリングの円周方向長さを長くできる。この場合は、捩り特性の広角化及び低剛性化が可能になる。または、各プレートの板厚を減らして重量低減も可能である。
さらに、第1プレート53が第1環状部53a及び第1支持部53bからなり、第2プレート54が第2環状部54a及び第2支持部54bからなり、構造が簡単になる。
このダンパー機構42では、第1プレート53及び第2プレート54はトーションスプリング52の外周側を覆う壁部分を有していないため、トーションスプリング52の摺動抵抗が少なくなる。そのため、ダンパー機構42の捩り振動吸収性能が向上する。さらに、第1支持部53b及び第2支持部54bの係合突起53d,54dによって、トーションスプリング52は半径方向外側に移動するのを制限されている。このため、トーションスプリング52の摺動抵抗が少なくなる。
2.第2実施形態
図11及び図12を用いて、本発明の第2実施形態を説明する。トルクコンバータ及びロックアップ装置の基本的な構造は前記実施形態と実質的に前記実施形態と同様である。したがって、ダンパー機構142の構造を中心に説明する。
ダンパー機構142は、ピストン141からのトルクをタービン111側に伝達すると共に、捩じり振動を吸収・減衰するための機構である。ダンパー機構142はピストン141の半径方向中間部から内周部とタービンシェル120の内周部との間に配置されている。ダンパー機構142は、主に、ドライブ部材150とドリブン部材151とトーションスプリング152と第1プレート153と第2プレート154から構成されている。
ドライブ部材150は、トーションスプリング152に対してトルクを入力するための駆動部材であって、ピストン141の軸方向トランスミッション側に配置されている。ドライブ部材150は、板状部材であり、ピストン141の外周部の軸方向トランスミッション側に間隔を空けて配置された環状部150aを有している。環状部150aの外周縁には、軸方向エンジン側に延びる筒状の壁部150bが形成されており、壁部150bには、円周方向に間隔を空けて配置された複数の係合部150cが設けられている。係合部150cは円周方向両側が切断されて内周側に押し出された部分であり、円周方向両側に断面を有する板部分である。壁部150bの先端からは、半径方向に延びてピストン141に当接する固定部150dが設けられている。固定部150dは、リベット155によってピストン141に堅く固定されている。
ドリブン部材151は、トーションスプリング152にからトルクが出力される従動部材であって、ピストン141の最内周部の軸方向トランスミッション側に配置されている。ドリブン部材151は、環状の板状部材であり、リベット124によってタービンハブ123のフランジ123bに固定されている。ドリブン部材151の外周縁には、円周方向に間隔を空けて配置された複数の突起151aが設けられている。突起151aは、軸方向エンジン側に折り曲げられたように伸びる爪状の突起である。
トーションスプリング152は、捩り振動を吸収するための弾性部材であって、例えばコイルスプリングからなる。トーションスプリング152は、ピストン141の内周部と、ドライブ部材150の環状部150aによって形成されている環状空間内に配置されている。トーションスプリング152は、円周方向に並んで複数配置されている。なお、ピストン141の内周部と、ドライブ部材150の環状部150aは、トーションスプリング152の軸方向両側を支持するのみであって、トーションスプリング152とトルクを伝達する部分を有していない。
第1プレート153と第2プレート154は、ドライブ部材150とドリブン部材151が相対回転すると両者によって駆動されて、トーションスプリング152を回転方向に圧縮するための部材である。なお、ドライブ部材150は、正駆動時には第1プレート153を駆動し、逆駆動時には第2プレート154を駆動するようになっている。
第1プレート153と第2プレート154は、軸方向に重ねて配置された板状部材である。第1プレート153は軸方向エンジン側に配置されており、第2プレート154は軸方向トランスミッション側に配置されている。第1プレート153と第2プレート154は同一の形状の部材であり、軸方向の向きを互いに異ならせることで平面視において対称な配置となっている。特に、第1プレート153と第2プレート154はスプリングの中心線に対して線対称になっている。
第1プレート153は、主に、第1環状部153aと、そこから半径方向外側に延びる複数の第1支持部153bとから構成されている。第1支持部153bは、トーションスプリング152の回転方向端面を支持するための部分である。第1支持部153b同士の回転方向間は、ばね収容のための窓孔153hとなっている。第1支持部153bの回転方向R1側端面153cは、図12に示すように、半径方向外側端が半径方向内側端より回転方向R1側にずれて配置されている。第1支持部153bの半径方向外側端には、回転方向R1側に延びる係合突起153dが形成されている。第1支持部153bの回転方向R1側端面153c及び係合突起153dは、軸方向に折り曲げられて延びる板面構造となっている。このため、トーションスプリング152と第1プレート153の当接部分の接触面積が大きくなっている。以上より、トーションスプリング152や第1支持部153bの摩耗や破損が生じにくくなっている。また、第1支持部153bの回転方向R1側端面153cの半径方向外側端である基部153e(係合突起153dとの接点)がトーションスプリング152の端部の外周側に当接している。
第2プレート154は、主に、第2環状部154aと、そこから半径方向外側に延びる複数の第2支持部154bとから構成されている。第2支持部154bは、トーションスプリング152の回転方向端面を支持するための部分である。第2支持部154b同士の回転方向間は、ばね収容のための窓孔154hとなっている。第2支持部154bの回転方向R2側端面154cは、図12に示すように、半径方向外側端が半径方向内側端より回転方向R2側にずれて配置されている。第2支持部154bの半径方向外側端には、回転方向R2側に延びる係合突起154dが形成されている。第2支持部154bの回転方向R2側端面154c及び係合突起154dは、軸方向に折り曲げられて延びる板面構造となっている。このため、トーションスプリング152と第2プレート154の当接部分の接触面積が大きくなっている。以上より、トーションスプリング152や第2支持部154bの摩耗や破損が生じにくくなっている。また、第2支持部154bの回転方向R2側端面154cの半径方向外側端である基部154e(係合突起154dとの接点)がトーションスプリング152の端部の外周側に当接している。
なお、第1支持部153bの回転方向R2側端面153fは、トーションスプリング152の回転方向R1側端面及び第2支持部154bの回転方向R2側端面154cから回転方向R1側に離れて配置されている。第2支持部154bの回転方向R1側端面154fは、トーションスプリング152の回転方向R2側端面及び第1支持部153bの回転方向R1側端面153cから回転方向R2側に離れて配置されている。
以上の構造において、トーションスプリング152の外周側は、第1プレート153及び第2プレート154によっては閉ざされていない。
係合部150cは、第1プレート153の回転方向R2側を向く面(具体的には、第1支持部153bの半径方向外側の回転方向R2側端面153g)に回転方向に当接している。さらに、係合部150cは、第2プレート154の回転方向R1側を向く面(具体的には、第2支持部154bの半径方向外側部分の回転方向R1側端面154g)に回転方向に当接している。
第1プレート153の内周縁には、半径方向内側に延びる複数の第1突起157が形成されている。各第1突起157の円周方向間の空間は第1切り欠き158である。第1突起157は、突起151aの回転方向R1側に配置され、互いに当接している。各第1突起157は、自らの回転方向R1側にある突起151aから所定角度離れて配置されている。第2プレート154の内周縁には、半径方向内側に延びる複数の第2突起159が形成されている。各第2突起159の円周方向間の空間は第2切り欠き160である。第2突起159は、突起151aの回転方向R2側に配置され、互いに当接している。各第2突起159は、自らの回転方向R2側にある突起151aから所定角度離れて配置されている。
言い換えると、第1プレート153と第2プレート154は、互いに重なった部分を有する第1及び第2切り欠き158,160をそれぞれ有している。突起151aは、第1及び第2切り欠き158,160内に延びている。第1切り欠き158は、第2切り欠き160に対して回転方向R1側にずれている。さらに、突起151aは、第1切り欠き158及び第2切り欠き160の隙間側の面と回転方向に当接可能である。
この実施形態では、前記実施形態と同様の効果が得られる。
3.第3実施形態
図13〜図15を用いて、本発明の第3実施形態を説明する。トルクコンバータ及びロックアップ装置の基本的な構造は前記実施形態と実質的に同じである。したがって、ダンパー機構242の構造を中心に説明する。
ダンパー機構242は、ピストン241からのトルクをタービン211側に伝達すると共に、捩じり振動を吸収・減衰するための機構である。ダンパー機構242はピストン241の半径方向中間部から内周部とタービンシェル220の内周部との間に配置されている。ダンパー機構242は、主に、プレート250とドリブン部材251とトーションスプリング252と第1プレート253と第2プレート254から構成されている。
プレート250は、ピストン241の軸方向トランスミッション側に配置されている。プレート250は、板状部材であり、ピストン241の外周部の軸方向トランスミッション側に間隔を空けて配置された環状部250aを有している。環状部250aの内周縁には、軸方向エンジン側に延びる筒状の壁部250bが形成されている。環状部250aの外周部は、円周方向に並んだ複数のストップピン255によってピストン241に堅く固定されている。ストップピン255は、トーションスプリング252に対してトルクを入力するための駆動部材である。なお、ストップピンの代わりにプレート250の外周部から突起を軸方向エンジン側に延ばしてリベットによってピストンに固定しても良い。
ドリブン部材251は、トーションスプリング252にからトルクが出力される従動部材であって、タービン211のタービンシェル220に固定されている。ドリブン部材251は、板状部材であり、環状部251aと、その外周縁から軸方向エンジン側に延びる突起251bとから構成されている。環状部251aはタービンシェル220に溶接等によって固定されている。
トーションスプリング252は、捩り振動を吸収するための弾性部材であって、例えばコイルスプリングからなる。トーションスプリング252は、ピストン241の半径方向中間部と、プレート250の環状部250aによって形成されている環状空間内に配置されている。トーションスプリング252は、円周方向に並んで複数配置されている。なお、ピストン241の半径方向中間部と、プレート250の環状部250aは、トーションスプリング252の軸方向両側を支持するのみであって、トーションスプリング252とトルクを伝達する部分を有していない。
第1プレート253と第2プレート254は、ストップピン255とドリブン部材251が相対回転すると両者によって駆動されて、トーションスプリング252を回転方向に圧縮するための部材である。なお、ストップピン255は、正駆動時には第1プレート253を駆動し、逆駆動時には第2プレート254を駆動するようになっている。
第1プレート253と第2プレート254は、軸方向に重ねて配置された板状部材である。第1プレート253は軸方向エンジン側に配置されており、第2プレート254は軸方向トランスミッション側に配置されている。第1プレート253と第2プレート254は同一の形状の部材であり、軸方向の向きを互いに異ならせることで平面視において対称な配置となっている。特に、第1プレート253と第2プレート254はスプリングの中心線に対して線対称になっている。
第1プレート253は、主に、第1環状部253aと、そこから半径方向内側に延びる複数の第1支持部253bとから構成されている。第1支持部253bは、トーションスプリング252の回転方向端面を支持するための部分である。第1支持部253b同士の回転方向間は、ばね収容のための窓孔253iとなっている。第1支持部253bの回転方向R1側端面253cは、図14に示すように、半径方向外側端が半径方向内側端より回転方向R1側にずれて配置されている。第1支持部253bの半径方向内側端には、回転方向R1側にわずかに曲げられた係合突起253dが形成されている。第1支持部253bの回転方向R1側端面253c及びさらにそこから回転方向第1側にある程度延びた部分253hは、軸方向に折り曲げられて延びる板面構造となっている。このため、トーションスプリング252と第1プレート253の当接部分の接触面積が大きくなっている。以上より、トーションスプリング252や第1支持部253bの摩耗や破損が生じにくくなっている。また、第1支持部253bの回転方向R1側端面253cの半径方向外側端である基部253eがトーションスプリング252の端部の外周側に当接している。
第2プレート254は、主に、第2環状部254aと、そこから半径方向内側に延びる複数の第2支持部254bとから構成されている。第2支持部254bは、トーションスプリング252の回転方向端面を支持するための部分である。第2支持部254b同士の回転方向間は、ばね収容のための窓孔254iとなっている。第2支持部254bの回転方向R2側端面254cは、図12に示すように、半径方向外側端が半径方向内側端より回転方向R2側にずれて配置されている。第2支持部254bの半径方向内側端には、回転方向R2側にわずかに曲げられた係合突起254dが形成されている。第2支持部254bの回転方向R2側端面254c及びそこから回転方向R2側にある程度延びた部分254hは、軸方向に折り曲げられて延びる板面構造となっている。このため、トーションスプリング252と第2プレート254の当接部分の接触面積が大きくなっている。以上より、トーションスプリング252や第2支持部254bの摩耗や破損が生じにくくなっている。また、第2支持部254bの回転方向R2側端面254cの半径方向外側端である基部254eがトーションスプリング252の端部の外周側に当接している。
なお、第1支持部253bの回転方向R2側端面253fは、トーションスプリング252の回転方向R1側端面及び第2支持部254bの回転方向R2側端面254cから回転方向R1側に離れて配置されている。第2支持部254bの回転方向R1側端面254fは、トーションスプリング252の回転方向R2側端面及び第1支持部253bの回転方向R1側端面253cから回転方向R2側に離れて配置されている。
第1プレート253と第2プレート254は、互いに重なった部分を有する第1及び第2スリット261,262をそれぞれ有している。ストップピン255は、第1及び第2スリット261,262内に延びている。第1スリット261は、第2スリット262に対して回転方向R1側にずれている。ストップピン255は、第1プレート253の回転方向R2側を向く面(具体的には、第1スリット261の回転方向R1側端面)に回転方向に当接しているがR1側を向く面(具体的には、第1スリット261の回転方向R2側端面)に回転方向に隙間を確保している。ストップピン255は、第2プレート254の回転方向R1側を向く面(具体的には、第2スリット262の回転方向R2側端面)に回転方向に当接しているがR2側を向く面(具体的には、第2スリット262の回転方向R1側端面)に回転方向に隙間を確保している。
第1プレート253の外周縁には、半径方向外側に延びる複数の第1突起257が形成されている。各第1突起257の円周方向間の空間は第1切り欠き258である。第1突起257は、突起251bの回転方向R1側に配置され、互いに当接している。各第1突起257は、自らの回転方向R1側にある突起251bから所定角度離れて配置されている。第2プレート154の外周縁には、半径方向外側に延びる複数の第2突起259が形成されている。各第2突起259の円周方向間の空間は第2切り欠き260である。第2突起259は、突起251bの回転方向R2側に配置され、互いに当接している。各第2突起259は、自らの回転方向R2側にある突起251bから所定角度離れて配置されている。
図15に示すように、第1支持部253bは、回転方向R2側端面253fの基部253gが、回転方向R1側端面253cの基部253eより半径方向外側にある。第2支持部254bは、回転方向R1側端面254fの基部254gが、回転方向R2側端面254cの基部254eより半径方向外側にある。以上をまとめると、基部253g及び基部254gの半径Rが基部253e及び基部254eの半径rより大きい。
このダンパー機構242では、トーションスプリング252は、第1支持部253の回転方向R1側端面253cの基部253eと第2支持部254bの回転方向R2側端面254cの基部254eとによって半径方向外側への移動を制限されたまま、回転方向に圧縮される。これら基部253e,254eが反対側の基部253g,254gより半径方向内側に配置されているため、トーションスプリング252が第1及び第2環状部253a,253bの内周面に摺動しにくい。したがって、ダンパー機構242の捩り振動吸収性能が低下しない。
この実施形態では、前記実施形態と同様の効果が得られる。さらに、この実施形態では、第1プレート及び第2プレートは内周縁側に係合部を有していないため、ピストンの内周部にスペースの余裕が無く、ドリブン部材をタービンハブに固定できない場合に有利である。
4.他の実施形態
前記実施形態は本発明の一実施例にすぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本発明に係るダンパー機構は、クラッチディスク組立体やフライホイール組立体にも採用できる。さらに、第3実施形態では、ドリブン部材は第1及び第2プレートの内周部と係合しても良い。