JP2006098796A - 放射線画像読取方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 放射線像変換パネルの放射線像再生性能を実質的に低下させることなく、消去特性を向上させ、そして消去操作において消去光量を低減できる放射線画像読取方法を提供する。
【解決手段】 放射線画像が記録された、柱状結晶構造のユーロピウム付活ハロゲン化セシウム系輝尽性蛍光体からなる蛍光体層を有する放射線像変換パネルに、励起光を2乃至10J/m2の範囲の励起エネルギーにて照射し、該変換パネルから発せられる輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号に変換して、放射線画像を電気的画像信号として得ることを含む放射線画像読取方法。
【選択図】 図4

Description

本発明は、放射線画像が記録された蓄積性蛍光体層を有する放射線像変換パネルから放射線画像を読み取る方法に関するものである。
X線などの放射線が照射されると、放射線エネルギーの一部を吸収蓄積し、そののち可視光線や赤外線などの励起光の照射を受けると、蓄積した放射線エネルギーに応じて発光を示す性質を有する蓄積性蛍光体(輝尽発光を示す輝尽性蛍光体等)を利用して、この蓄積性蛍光体を含有するシート状の放射線像変換パネルに、被検体を透過したあるいは被検体から発せられた放射線を照射して被検体の放射線画像を一旦記録した後、パネルにレーザ光などの励起光を走査して順次発光光として放出させ、そしてこの発光光を光電的に読み取って画像信号を得ることからなる、放射線画像記録再生方法が広く実用に供されている。読み取りを終えたパネルは、残存する放射線エネルギーの消去が行われた後、次の撮影のために備えられて繰り返し使用される。
放射線画像記録再生方法に用いられる放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シートともいう)は、基本構造として、支持体とその上に設けられた蛍光体層とからなる。ただし、蛍光体層が自己支持性である場合には必ずしも支持体を必要としない。また、蛍光体層の上面(支持体に面していない側の面)には通常、保護層が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
蛍光体層としては、蓄積性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなるもの、気相堆積法や焼結法によって形成される結合剤を含まないで蓄積性蛍光体の凝集体のみから構成されるものなどが知られている。このうち気相堆積法は、蛍光体またはその原料を蒸着、スパッタリングなどにより基板表面に堆積させて、柱状結晶構造の蛍光体層を形成するものである。形成された蛍光体層は蛍光体のみからなり、蛍光体の柱状結晶間には空隙が存在するため、励起光の進入効率や発光光の取出し効率を上げることができるので高感度であり、また励起光の平面方向への散乱を防ぐことができるので高鮮鋭度の画像が得られる。
特許文献1には、二価ユーロピウム付活ハロゲン化セシウム蛍光体(ハロゲンは、塩素または臭素である)を含み、Smaxより大きくない表面積を有する光刺激可能な燐光スクリーンに蓄積記録された放射線画像を読み取った後、該燐光スクリーンを、300乃至1500nmの波長範囲で発光し、かつSmax×1Jより大きくない電力を有する消去用光源組立体により発光される消去用の光に暴露することにより消去することからなる放射線画像の読取方法、およびそれに用いられる装置が開示されている。その実施例には、CsBr:Eu2+蛍光体を含む燐光スクリーンが、従来より公知のBaFBr:Eu2+蛍光体を含むスクリーンよりも良好な消去性能を示し、よって消去光の照射出力が少なくて済むことが記載されている。
特開2001−74898号公報
前述したように、放射線画像記録再生方法において放射線像変換パネルは繰り返し使用されるものである。そのためには通常、放射線画像の読み取り後および/または次回の撮影(記録)前に、変換パネルに残存している放射線画像、そして更にはパネルに微量混入した放射性同位元素からの放射線や環境放射線によりパネルに蓄積された放射線エネルギーを除去するために、変換パネル全面に消去光を照射することからなる消去操作が実施される。そして、変換パネルから放射線画像を読み取ったときに、得られた放射線画像上に前回の撮影の残像等が現れないことが要求される。従って、変換パネルは消去特性が高い(残留放射線エネルギーの除去が相対的に低エネルギーの消去光で可能なこと)ことが望まれている。
放射線像変換パネルから放射線画像を読み取るための読取装置には一般に、消去操作を実施するための消去手段が備えられているが、消去時間を短縮化し、装置を軽量、小型化し、コストの低減を図るためには、パネルの消去に要する消去光量(照度×時間)ができるだけ少ないことが望ましい。
従って、本発明は、放射線像変換パネルの感度を実質的に低下させることなく消去特性が向上し、そして消去操作において消去光量を低減できる放射線画像読取方法を提供することにある。
本発明者は、柱状結晶構造のユーロピウム付活ハロゲン化セシウム系輝尽性蛍光体(CsX:Euの基本組成式で表わされる蛍光体、但し、Xはハロゲンである)からなる蛍光体層を有する放射線像変換パネルについて検討を重ねた結果、放射線画像の読み取り時にパネルに照射される励起光の励起エネルギーによって、パネルの消去特性が変化することを見い出した。励起光の励起エネルギーを一定の範囲内で低くすることによって、変換パネルからの放射線画像の再生能力を殆ど低下させることなく、消去特性を高めることができ、更には消去時の消去光量を低減できることを見い出し、本発明に到達したものである。
従って、本発明は、放射線画像が記録された、柱状結晶構造のユーロピウム付活ハロゲン化セシウム系輝尽性蛍光体からなる蛍光体層を有する放射線像変換パネルに、励起光を2乃至10J/m2の範囲の励起エネルギーにて照射し、該変換パネルから発せられる輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号に変換して、放射線画像を電気的画像信号として得ることを含む放射線画像読取方法にある。
ここで、励起光の励起エネルギーとは、放射線像変換パネルのパネル面上における励起光の励起エネルギーを意味する。
本発明の方法によれば、放射線像変換パネルの放射線画像再生性能を殆ど低下させることなく消去特性を向上させることができる。すなわち、本発明の方法によって放射線画像が読み取られた放射線像変換パネルの残留放射線エネルギーの消去操作に必要な消去光量を低減することができる。従って、本発明の方法は、消去操作を含む読取方法の迅速化、並びに消去手段を内蔵する読取装置の軽量、小型化に寄与することができる。
本発明の放射線画像読取方法において、放射線像変換パネルから放射線画像を読み取った後さらに、該パネルに消去用の光を4万乃至9万lx・sの範囲の消去光量で照射して、パネルに残存している放射線エネルギーを消去する工程を付加することが好ましい。
ユーロピウム付活ハロゲン化セシウム系輝尽性蛍光体は、CsBr:Euの基本組成式で表わされる蛍光体であることが好ましい。
励起光はレーザ光であることが好ましい。また、放射線像変換パネルから発せられる輝尽発光光を、複数の光電変換素子を線状に配してなるラインセンサを用いて光電的に読み取ることが好ましい。
以下に、本発明の放射線画像読取方法について、添付図面を参照しながら詳細に述べる。
本発明の放射線画像読取方法に用いられる放射線像変換パネルは、柱状結晶構造のユーロピウム付活ハロゲン化セシウム系輝尽性蛍光体からなる蛍光体層を有する。
ユーロピウム付活ハロゲン化セシウム系輝尽性蛍光体は、例えば下記基本組成式(I)を有することができる。

CsX・aMIIX’2・bMIIIX”3:zEu ‥‥(I)
[ただし、X、X’及びX”はそれぞれ、F、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表し;MIIはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Cu、Zn及びCdからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属又は二価金属を表し;MIIIはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素又は三価金属を表し;そしてa、b及びzはそれぞれ、0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<z<1.0の範囲内の数値を表す]
上記基本組成式(I)において、Xは少なくともBrを含んでいることが好ましい。zは1×10-4≦z≦0.1の範囲内にあることが好ましい。
柱状結晶構造の蛍光体層については知られていて、抵抗加熱又は電子線照射方式による蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着(CVD)法など公知の各種の気相堆積法を利用することにより形成することができる。
例えば、蒸着法では、蒸発源として上記輝尽性蛍光体またはその原料を用いて一元蒸着または多元蒸着(共蒸着)により、蛍光体の蒸着膜を形成することができる。具体的には、一以上の蒸発源を抵抗加熱器または電子線の照射により加熱して蒸発させ、基板表面に蛍光体を形成しながら堆積させる。その際に、蒸着装置内の真空度としては0.1〜10Pa程度の中真空度、もしくは1×10-5〜1×10-2Pa程度の高真空度が用いられる。また、基板を加熱してもよいし、あるいは冷却してもよい。基板温度は、一般には20乃至350℃の範囲にあり、好ましくは100乃至300℃の範囲にある。蛍光体の堆積速度、すなわち蒸着速度は、一般には0.1乃至1000μm/分の範囲にあり、好ましくは1乃至100μm/分の範囲にある。なお、蒸着を複数回に分けて行って二層以上の蛍光体層を形成することもできる。蒸着終了後に蒸着膜を熱処理(アニール処理)してもよい。これにより、蛍光体の柱状結晶がほぼ厚み方向に成長した蛍光体層が得られる。蛍光体層は蛍光体のみからなり、蛍光体の柱状結晶と柱状結晶の間には空隙が存在する。蛍光体層の層厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、蒸着法の実施手段や条件などによっても異なるが、通常は50μm〜1mmの範囲にあり、好ましくは200μm〜700μmの範囲にある。
本発明に係る放射線像変換パネルは基本的に、支持体(基板)と、その上に気相堆積法により形成された蛍光体層とからなる。蛍光体層の上には、蛍光体層を物理的および化学的に保護するために保護層を設けることが好ましい。さらに、パネルは、光反射層など公知の各種の補助層を設けたり、あるいは蛍光体層を吸湿による劣化から保護するために密封構造にするなど公知の各種の構造とすることができる。
本発明の放射線画像読取方法は、例えば図1及び図2に示すような読取装置を用いて実施することができる。
図1は、本発明の方法に用いられる放射線画像読取装置の読取部の例を示す構成図であり、図2は、図1のI−I線に沿った断面図である。
図1及び図2において、放射線像変換パネル10は、上述したように支持体と柱状結晶構造のCsX:Eu系輝尽性蛍光体からなる蛍光体層とから構成され、そして被検体を透過したX線等の放射線が照射されるなどして被検体の放射線画像が蓄積記録されている。走査ベルト40上に蛍光体層側を上にして載置されたパネル10は、走査ベルト40が矢印Y方向に移動することにより矢印Y方向に搬送される。パネル10の搬送速度はベルト40の移動速度に等しく、ベルト40の移動速度は画像情報読取手段30に入力される。
一方、ブロードエリアレーザ(以下、BLDという)21から、パネル10表面に対して略平行に発せられた線状の励起光Lは、その光路上に設けられたシリンドリカルレンズ22により集光され、パネル10に対して45度の角度で傾けて配された、励起光を反射し輝尽発光光を透過するように設定されてなるダイクロイックミラー24により反射されて、パネル10表面に対して垂直に入射する方向に進行し、屈折率分布形レンズアレイ(多数の屈折率分布形レンズが配列されてなるレンズであり、以下、第一のセルフォックレンズアレイという)25により、パネル10上に矢印X方向に沿って延びる線状に集光される。
本発明において、BLD21から発せられた励起光Lのパネル10表面における励起エネルギーは、後で詳述するように2乃至10J/m2の範囲内にある。
パネル10に垂直に入射した線状の励起光Lの励起により、パネル10の集光域およびその近傍から、蓄積記録されている放射線画像に応じた強度の輝尽発光光Mが発せられる。この輝尽発光光Mは、第一のセルフォックレンズアレイ25により平行光束とされ、ダイクロイックミラー24を透過し、第二のセルフォックレンズアレイ26により、励起光Lの集光域の真上に配置されたラインセンサ28を構成する各光電変換素子29の受光面に集光される。すなわち、パネル10上の像は1対1の大きさで素子29の受光面に結像される。
ラインセンサ28は、矢印X方向に沿って多数(例えば1000個以上)の光電変換素子29が配列された構成を有する。光電変換素子29としては具体的には、アモルファスシリコンセンサ、CCDセンサ、バックイルミネータ付きのCCD、MOSイメージセンサ等を用いることができ、各素子が一画素に対応している。ラインセンサ28を励起光Lの集光域の真上に配置することにより、ほぼ垂直方向に出射する輝尽発光光Mを効率良く集光することができる。光電変換素子29は受光面積が小さいので、とりわけ集光効率の向上が著しい。
なおこの際、第二のセルフォックレンズアレイ26を透過した輝尽発光光Mに僅かに混在する、パネル10表面で反射した励起光Lは、励起光をカットし輝尽発光光を透過する励起光カットフィルタ27によりカットされる。
各光電変換素子29により受光された輝尽発光光Mは光電変換され、そして光電変換して得られた各信号Sは、画像情報読取手段30に入力される。画像情報読取手段30にて各信号Sは、走査ベルト40の移動速度に基づいてパネル10の部位に対応して演算処理され、画像データとして画像処理装置(図示なし)に出力される。
図3は、本発明の方法に用いられる放射線画像読取装置の消去部の例を概略的に示す断面図である。
図3において、読み取りを終えた放射線像変換パネル10は、搬送ベルト60により矢印Y方向に搬送される。そして、搬送ベルト60の上方に設けられた消去手段50からパネル全面に消去光が照射される。
利用される消去光を発する消去用光源としては、蛍光灯あるいは冷陰極管などの公知の消去用光源を挙げることができる。パネル10に照射される消去光量は、後で詳述するように4万乃至9万lx・sの範囲にあることが好ましい。また、パネルに残存する放射線エネルギーを効率良く放出させるために、パネル10にはカットフィルタ(図示なし)を通過した消去光が照射される。例えば、始めにUVカットフィルタを通過した消去光が照射され、次いで黄色アクリルフィルタを通過した消去光が照射される(二段消去)。消去光の照射により、パネル10に残存する放射線エネルギーが輝尽発光光として充分に放出されて、パネル10は次回の撮影に使用できる状態になる。
なお、本発明に用いられる放射線画像読取装置は、図1〜図3に示した態様に限定されるものではなく、各光源、光源とパネルとの間の集光光学系、パネルとラインセンサとの間の光学系、およびラインセンサはそれぞれ、公知の種々の構成を採用することができる。
ライン光源は、光源自体がライン状であってもよく、蛍光灯、冷陰極蛍光灯、LED(発光ダイオード)アレイなども用いることができる。ライン光源から発せられる励起光は、連続的に出射するものであってもよいし、あるいは出射と停止を繰り返すパルス光であってもよい。
ラインセンサは、矢印Y方向に光電変換素子が1列配列されたもののみならず、複数列で配列されたものであってもよい。そして、各素子の受光面の大きさおよび所望とする画素サイズに応じて、複数個の素子が一画素に対応していてもよい。
放射線像変換パネルを移動させる方向は、ライン光源およびラインセンサの長さ方向に略直交する方向であることが望ましいが、例えばパネルの略全面に渡って均一に励起光を照射することができる範囲内で、長さ方向から外れた斜め方向やジグザグ状に方向を変化させて移動させてもよい。
また、上記態様では励起光Lの光路と輝尽発光光Mの光路とが一部分重複するような構成として、装置のコンパクト化を図ったが、励起光Lの光路と輝尽発光光Mの光路が全く異なる構成を採用してもよい。放射線像変換パネルを移動させる代わりに、パネルを静置してラインセンサをパネル表面に沿って移動させる構成を採用してもよい。パネルの支持体が光透過性である場合には、ラインセンサをパネルの表面のみならずパネルの裏面にも配置して、パネルの表裏両面から輝尽発光光を検出することもできる。あるいは、パネルの裏面からのみ輝尽発光光を検出してもよい。
さらに、上記態様では読取装置に消去部が備えられていたが、消去部は読取装置から独立した別個の装置(消去器)であってもよい。また、読取装置は、画像情報読取手段から出力された画像データ信号に対して種々の信号処理を施す画像処理装置を更に備えた構成であってもよい。
本発明において放射線像変換パネルの消去特性は、消去値で評価することができる。消去値は次のようにして求められる。放射線としてX線を使用する場合には、まず、放射線像変換パネルに線量amRのX線を照射してX線エネルギーを蓄積させた後、パネルに励起光を照射し、パネルから発せられる輝尽発光光を検出して初期輝尽発光量Aを測定する。次に、このパネルに線量bmRのX線を照射してX線エネルギーを蓄積させた後、パネルに消去光を照射して消去を行う。消去後のパネルに上記と同様にして、励起光を照射し、パネルから発せられる消去後の輝尽発光量Bを測定する。
パネルの消去値は、基本的には消去後の発光量B/初期発光量Aで表されるが、X線の照射線量の相違(b/a)を考慮に入れて換算すると、消去値は次のように定義することができる。

消去値 = B/{A×(b/a)}
本発明においては、読取装置の検出感度上の制約から、a=20mR、b=1000mRの条件で消去値を求めた。
この消去値は、X線に対する人体の透過率が約0.01であることから、一般に少なくとも0.01より小さいことが要求される。
しかしながら、実際の医療用放射線画像診断においては、診断する部位によってX線の照射線量は広範囲に渡って変化する。例えば、胃のような人体の内部器官の場合には約300mRの非常に多い線量が用いられ、指のような外部末端部分の場合には約1mRの少ない線量が用いられる。このような極端な場合、すなわちX線の照射線量300mRでパネルにX線画像を蓄積記録してその画像信号を読み取った直後に、このパネルに照射線量1mRでX線画像を蓄積記録した場合について考える。前回の画像記録による残像(ゴースト)の発生を防ぐためには、消去によって前回の画像信号を1/300より小さくしなければならない。従って、この場合に要求される消去値(以下、必要消去値と呼ぶ)は、次のような値になる。

必要消去値 < 0.01×(1/300) = 3.3×10-5
また、比較的少ないX線照射線量でX線画像の記録および読取が繰り返し行われる場合、例えば照射線量50mRでX線画像を得た直後に、照射線量1mRでX線画像を得る場合には、必要消去値は次のような値になる。

必要消去値 < 0.01×(1/50) = 2.0×10-4
図4は、柱状結晶構造のCsBr:0.001Eu蛍光体からなる蛍光体層を有する放射線像変換パネル(後述の実施例1)について、励起光(レーザ光)の励起エネルギーと消去値との関係を表すグラフである。消去光量は、25万lx・sであった。
図4のグラフから、レーザ光の励起エネルギーが充分に高い領域ではパネルの消去値の変化は小さいが、励起エネルギーが10J/m2以下の領域では、励起エネルギーが低いほどパネルの消去値は顕著に減少することが分かる。
図5は、柱状結晶構造のCsBr:0.001Eu蛍光体からなる蛍光体層を有する放射線像変換パネルについて、励起光(レーザ光)の励起エネルギーと感度(相対値、対数目盛)との関係を表すグラフである。
図5のグラフから、レーザ光の励起エネルギーが2J/m2以上であれば、パネルは充分に高い感度を示すことが分かる。
従って、励起エネルギーが2乃至10J/m2の範囲内で励起光を放射線像変換パネルに照射して読み取りを行うことにより、充分に高い感度を維持しつつ、消去値を低くして、すなわち消去特性を向上させて読み取りを遂行することができる。
図6は、柱状結晶構造のCsBr:0.001Eu蛍光体からなる蛍光体層を有する放射線像変換パネルについて、励起光(レーザ光)の励起エネルギーと消去値との関係を表すグラフである。曲線1は消去光量25万lx・sであり、曲線2は消去光量9万lx・sである。また、点3は消去光量20万lx・sであり、点4は消去光量10万lx・sであり、そして点5は消去光量5万lx・sである(点3〜5は、レーザ光の励起エネルギーが5J/m2である)。実線6は必要消去値3.3×10-5を示し、点線7は必要消去値2.0×10-4を示す。
図6のグラフから、消去光量が約9万lx・sであれば、上記の極端な多線量X線照射(300mR→1mR)の場合における必要消去値3.3×10-5を満足することが分かる。また、消去光量が約5万lx・sであれば、上記の少線量X線照射(50mR→1mR)の場合における必要消去値2.0×10-4を充分に満足することが分かる。
従って、本発明において、放射線画像が記録された放射線像変換パネルに励起光を2乃至10J/m2の範囲の励起エネルギーにて照射したのち、約4万乃至9万lx・sの範囲の消去光量で放射線像変換パネルの消去を行うことによって、X線照射線量が様々に変化してもそれに充分に対応してパネルの消去値を要求される値以下にすることができる。
(1)放射線像変換パネルの製造
蒸発源として、純度4N以上の臭化セシウム(CsBr)粉末、および純度3N以上の臭化ユーロピウム(EuBr2)の溶融物を用意した。EuBr2の溶融物は、白金るつぼに粉体を入れ、これを酸化を防ぐために充分なハロゲン雰囲気としたチューブ炉内にて800℃に加熱して溶融することにより作製し、冷却後炉から取り出した。各原料中の微量元素をICP−MS法(誘導結合高周波プラズマ分光分析−質量分析法)により分析した結果、CsBr中のCs以外のアルカリ金属(Li、Na、K、Rb)は各々10ppm以下であり、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)など他の元素は2ppm以下であった。また、EuBr2中のEu以外の希土類元素は各々20ppm以下であり、他の元素は10ppm以下であった。これらの原料は、吸湿性が高いので露点−20℃以下の乾燥雰囲気を保ったデシケータ内で保管し、使用直前に取り出すようにした。
支持体として、1mm厚のアルミニウム基板(圧延成型品、住友軽金属工業(株)製)を用意した。基板を蒸着装置内の基板ホルダーに設置し、基板と蒸発源との距離を15cmとした。上記CsBr蒸発源およびEuBr2蒸発源を装置内の抵抗加熱用るつぼ容器に充填した後、メイン排気バルブを開いて装置内を排気して1×10-3Paの真空度とした。このとき、真空排気装置としてロータリーポンプ、メカニカルブースターおよびディフュージョンポンプの組合せを用いた。さらに、水分除去のために水分排気用クライオポンプを使用した。排気をメイン排気バルブからバイパスに切り換え、装置内にArガスを導入して0.5Paの真空度とした。プラズマ発生装置(イオン銃)によりArプラズマを発生させ、基板表面の洗浄を行った。その後、排気をメイン排気バルブに切り換えて1×10-3Paの真空度まで排気した後、再度排気をバイパスに切り換え、Arガスを導入して1Paの真空度とした。蒸着膜の厚さを均一にするために、基板を周期的に搬送した。基板と各蒸発源との間に設けられたシャッタを閉じた状態で、各蒸発源を抵抗加熱器で加熱溶融した後、まず、CsBr蒸発源側のシャッタだけを開いて、基板表面にCsBr蛍光体母体を堆積させて被覆層を形成した。次いで、その3分後にEuBr2蒸発源側のシャッタも開いて、被覆層上にCsBr:Eu輝尽性蛍光体を堆積させた。堆積は8μm/分の速度で行った。また、各加熱器の抵抗電流を調整して、輝尽性蛍光体におけるEu/Csのモル濃度比が0.001/1となるように制御した。
蒸着終了後、装置内を大気圧に戻し、装置から基板を取り出した。その後、基板を熱処理炉に入れてN2ガス雰囲気中で2時間熱処理を行った。基板上には、蛍光体の柱状結晶がほぼ垂直方向に密に林立した構造の蛍光体層(層厚:600μm、面積:20cm×20cm)が形成されていた。
このようにして、共蒸着により支持体と蛍光体層とからなる本発明に係る放射線像変換パネルを製造した。
(2)放射線画像読取方法
得られた放射線像変換パネルを用いて、次のようにして放射線画像読取方法を実施した。そしてパネルの消去値を求め、それにより読取方法について消去特性の評価を行った。
放射線像変換パネルの蛍光体層に80kV、20mRのX線を照射した後、励起光として波長660nmの半導体レーザ光を蛍光体層面上での励起エネルギー5J/m2で照射し、蛍光体層から発せられた輝尽発光光をポイントスキャナ(光電子増倍管)により検出して輝尽発光量Aを測定した。次に、このパネルの蛍光体層に80kV、1000mRのX線を照射した。その後、冷陰極管から発せられた消去光を、二段消去(一段目:UVカットフィルタ(日東樹脂製、N-169)、二段目:黄色アクリルフィルタ(日東樹脂製、N-039)、フィルタ面積比3:2)により、各フィルタを通して蛍光体層の全面に照射して蛍光体層の消去を行った。消去光量は25万lx・sであった。消去後、蛍光体層に上記と同様にしてレーザ光を照射し、ポイントスキャナにより蛍光体層からの輝尽発光量Bを測定した。得られた輝尽発光量A、Bおよび各X線線量から、前記に定義した消去値(B/{A×(1000/20)})を算出した。さらに、半導体レーザ光の励起エネルギーを変えて同様の操作を行って、それぞれ消去値を求めた。また、消去光の消去光量を変えて同様の操作を行って、それぞれ消去値を求めた。
得られた結果をまとめて、図4〜図6にそれぞれ示す。
図4は、上記の放射線像変換パネルについてレーザ光の励起エネルギーと消去値との関係を表すグラフである。
図5は、上記の放射線像変換パネルについてレーザ光の励起エネルギーと感度(相対値、輝尽発光量A)との関係を表すグラフである。
図6は、上記の放射線像変換パネルについてレーザ光の励起エネルギーと消去値との関係を表すグラフである。曲線1は消去光量25万lx・sであり、曲線2は消去光量9万lx・sである。また、点3は消去光量20×104lx・sであり、点4は消去光量10万lx・sであり、そして点5(消去値:9.68×10-5)は消去光量5万lx・sである(点3〜5は、レーザ光の励起エネルギー5J/m2である)。実線6は必要消去値3.3×10-5を示し、点線7は必要消去値2.0×10-4を示す。
図4及び図5から、励起光の励起エネルギーを2乃至10J/m2の範囲内にして放射線像変換パネルの読み取りを行うことにより、充分に高い感度を維持しながら、消去値を低く抑えて消去特性を向上させることができることが分かる。
図6から、約4万乃至9万lx・sの範囲の消去光量で放射線像変換パネルの消去を行うことによって、多線量(300mR→1mR)の場合の必要消去値3.3×10-5も、少線量(50mR→1mR)の場合の必要消去値2.0×10-4も満たすことができ、X線照射の様々な場合に充分に対応してパネルの消去を実施できることが分かる。
本発明に係る放射線画像読取装置の読取部の一例を示す概略図である。 図1に示した放射線画像読取装置のI−I線に沿った断面図である。 本発明に係る放射線画像読取装置の消去部の一例を示す概略断面図である。 本発明に係る放射線像変換パネルについて、励起光の励起エネルギーと消去値との関係を表すグラフである。 本発明に係る放射線像変換パネルについて、励起光の励起エネルギーと感度(相対値)との関係を表すグラフである。 本発明に係る放射線像変換パネルについて、励起光の励起エネルギーと消去値との関係を表すグラフである。
符号の説明
10 放射線像変換パネル
21 ブロードエリアレーザ(BLD)
22 シリンドリカルレンズ
24 ダイクロイックミラー
25、26 セルフォックレンズアレイ
27 励起光カットフィルタ
28 ラインセンサ
29 光電変換素子
30 画像情報読取手段
40 走査ベルト
50 消去手段
60 搬送ベルト
L 励起光
M 発光光
S 信号

Claims (5)

  1. 放射線画像が記録された、柱状結晶構造のユーロピウム付活ハロゲン化セシウム系輝尽性蛍光体からなる蛍光体層を有する放射線像変換パネルに、励起光を2乃至10J/m2の範囲の励起エネルギーにて照射し、該変換パネルから発せられる輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号に変換して、放射線画像を電気的画像信号として得ることを含む放射線画像読取方法。
  2. 放射線像変換パネルから放射線画像を読み取った後さらに、該パネルに消去用の光を4万乃至9万lx・sの範囲の消去光量で照射して、パネルに残存している放射線エネルギーを消去する工程を含む請求項1に記載の放射線画像読取方法。
  3. ユーロピウム付活ハロゲン化セシウム系輝尽性蛍光体が、CsBr:Euにより表わされる基本組成式を有する蛍光体である請求項1または2に記載の放射線画像読取方法。
  4. 励起光がレーザ光である請求項1乃至3のいずれかの項に記載の放射線画像読取方法。
  5. 放射線像変換パネルから発せられる輝尽発光光を、複数の光電変換素子を線状に配してなるラインセンサを用いて光電的に読み取る請求項1乃至4のいずれかの項に記載の放射線画像読取方法。
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