JP2006092647A - 光記録媒体用反射膜および半透明反射膜並びにこれら反射膜を形成するためのAg合金スパッタリングターゲット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにIr:0.005〜0.2質量%かつPd:0.01〜0.5質量%、Re:0.005〜0.2質量%かつPd:0.01〜0.5質量%、またはIrおよびReの合計:0.005〜0.2質量%かつPd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成の銀合金からなる。
【選択図】 なし
Description
また、記録膜を2層有する2層記録型の光記録媒体においては、例えば、「Proceeding of the 15th.Symposium on Phase Change Optical Information Storage PCOS2003,P86〜89」に示されるように、入射光側に厚さ:10〜20nm程度の極めて薄い半透明反射膜が設けられており、かかる半透明反射膜は入射光側の記録層に対する反射膜としての機能の他に光を透過して第二の記録層に記録させる機能を有する。
この場合、半透明反射膜が入射光を吸収すると、第二記録層において記録する効率が劣化するという問題が生じることから、半透明反射膜においては入射光の半透明反射膜への吸収を低減させることが重要な課題である。一方、半透明反射膜は入射側の第一の記録層への記録のために、先に述べた高倍速記録の要求から高熱伝導性も同時に実現しなければならない。
こうした特性を付与するのに最も好適な材料として純Agが知られているが、半透明反射膜が純Agからなる場合、記録、または記録/再生/消去の際に加熱されると膜が凝集することにより半透明反射膜に穴があいてしまうという問題点があり、一方、従来のCu:0.5〜3質量%を含有し、さらにCa、Be、Siから選ばれる1種または2種以上の合計:0.005〜0.05質量%を含有し、残部がAgからなるAg合金の半透明反射膜は、記録、または記録/再生/消去の際に加熱されても膜が凝集することはないが、Cu:0.5〜3質量%を含有するので熱伝導率および吸収率が純Agに比べて低いという問題点があった。
(イ)Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにIr:0.005〜0.2質量%、Pd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成の銀合金からなる反射膜または半透明反射膜、
Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにRe:0.005〜0.2質量%、Pd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成の銀合金からなる反射膜または半透明反射膜、または、
Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにIrおよびReの合計:0.005〜0.2質量%、Pd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成の銀合金からなる反射膜または半透明反射膜は、純Agに近い高熱伝導率および低吸収率を有し、さらにレーザービームによる加熱・冷却されても半透明反射膜に凝集が生じて穴があくことは無い、
(ロ)前記(イ)に記載の反射膜または半透明反射膜は、前記(イ)に記載の銀合金からなる反射膜の成分組成と同じ成分組成を有するスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングすることにより得られる、などの研究結果が得られたのである。
(1)Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにIr:0.005〜0.2質量%、Pd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成の銀合金からなる光記録媒体用反射膜または半透明反射膜、
(2)Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにRe:0.005〜0.2質量%、Pd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成の銀合金からなる光記録媒体用反射膜または半透明反射膜、
(3)Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにIrおよびReの合計:0.005〜0.2質量%、Pd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成の銀合金からなる光記録媒体用反射膜または半透明反射膜、
(4)Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにIr:0.005〜0.2質量%、Pd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成の銀合金からなる光記録媒体の反射膜または半透明反射膜形成用銀合金スパッタリングターゲット、
(5)Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにRe:0.005〜0.2質量%、Pd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成の銀合金からなる光記録媒体の反射膜または半透明反射膜形成用銀合金スパッタリングターゲット、
(6)Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにIrおよびReの合計:0.005〜0.2質量%、Pd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成の銀合金からなる光記録媒体用反射膜または半透明反射膜形成用銀合金スパッタリングターゲット、に特徴を有するものである。
この真空溶解法または不活性ガス溶解法でターゲットを製造するには、まず、原料として純度:99.99質量%以上の高純度Agおよび純度:99質量%以上のCaを用意し、さらにいずれも純度:99.9質量%以上のEu、IrおよびReを用意する。
次に、まず、Agを高真空もしくは不活性ガス雰囲気中で溶解して得られたAg溶湯にCaを所定の含有量となるように添加し、その後、真空または不活性ガス雰囲気中で鋳造することによりAg−Ca母合金を予め作製する。
さらに、Pdを高真空または不活性ガス雰囲気中で溶解して得られたPd溶湯にIrまたはReを所定の含有量となるように添加し、その後真空または不活性ガス中で鋳造することによりIr−Pd母合金およびRe−Pd母合金を予め作製する。
次にこれら母合金を高周波真空溶解したAg溶湯に添加してCa含有Ag溶湯を作製し、その後、Ca含有Ag溶湯にEu、Ir−Pd母合金およびRe−Pd母合金を所定の成分組成となるように成分調整した後鋳型に鋳込むことによりインゴットを作製し、このインゴットを冷間加工したのち機械加工することによりAg合金スパッタリングターゲットを製造することができる。この発明の反射膜または半透明反射膜は、このようにして作製したターゲットを用い、通常の条件でスパッタリングすることにより形成することができる。
Caは、Agにほとんど固溶しないが、スパッタリングにより膜を形成することによりAgによって形成される結晶粒内に強制的に固溶され、それによって反射膜または半透明反射膜の結晶粒内でのAgの自己拡散を抑制し、さらに結晶粒界にも析出し、Ag内部への強制固溶と結晶粒界ヘの析出と言う両者の効果により膜が加熱されても結晶粒同士の結合を防止し、反射膜または半透明反射膜の凝集防止を促進する効果を有するが、Caを0.005質量%未満含んでも所望の効果が得られず、一方、Caが0.1質量%を越えて含有すると、Ag合金反射膜の熱伝導率を低下させるので好ましくない。したがって、Ag合金反射膜およびこのAg合金反射膜を形成するためのスパッタリングターゲットに含まれるこれらCaの含有量は0.005〜0.1質量%に定めた。凝集抑制効果を発揮するための一層好ましい範囲は0.01〜0.07質量%である。
Eu成分は、EuとCaの複合添加によりCaによる凝集防止効果を促進する効果を有し、特に膜厚が30nm以下の極めて薄い半透明反射膜においては凝集抑制効果を著しく発揮させる効果を有するが、その含有量が0.002質量%未満ではCaによる凝集抑制の促進効果は得られず、一方、0.1質量%を越えて含有すると、スパッタにより形成されたAg合金からなる反射膜または半透明反射膜の熱伝導率が低下するとともに吸収率が増大してしまうので、高い熱伝導率および低い吸収率を有しかつ凝集を抑制するためにはEu:0.002〜0.1質量%とすることが好ましい。Caによる凝集抑制効果の促進を発揮するために添加するEuの一層好ましい範囲は0.005〜0.07質量%である。
これら成分は、Agにほとんど固溶しないがスパッタリングにより膜を形成することによりAgによって形成される結晶粒内に強制的に固溶され、それによって反射膜または半透明反射膜の結晶粒内でのAgの自己拡散を抑制し、凝集抑制効果を発揮するとともに耐食性を向上させるので添加するが、Ir、ReおよびIr+Reがいずれも0.005質量%未満含んでも凝集を抑制する効果が得られず、一方、Ir、ReおよびIr+Reが0.2質量%を越えて含有すると熱伝導率が低下し、高熱伝導率を有する反射膜または半透明反射膜とはならないので好ましくない。したがって、Ag合金からなる反射膜および半透明反射膜並びにこれら反射膜を形成するためのスパッタリングターゲットに含まれるこれら成分の含有量は、Ir:0.005〜0.2質量%、Re:0.005〜0.2質量%、IrおよびReの合計:0.005〜0.2質量%となるように定めた。
Pd成分は、Ag,Ir,Reのいずれとも固溶し、Agにほとんど固溶しないIr,Reをターゲットに均一に分散させる効果を有し、その結果、Ag合金からなる反射膜および半透明反射膜におけるIr、Re成分を均一化する効果を有すると共に、耐食性を向上させるので添加するが、Pdを0.01質量%未満含んでも耐食性に格段の効果が見られず、一方、0.5質量%を越えて含有すると、スパッタにより形成されたAg合金からなる反射膜および半透明反射膜の熱伝導率が低下すると共に吸収率が増大してしまうので高い熱伝導率および低い吸収率を付与するためにPd:0.01〜0.5質量%に定めた。
次に、まず、Agを高周波真空溶解炉で溶解してAg溶湯を作製し、このAg溶湯にCaが5質量%となるように添加し、溶解後炉内圧力が大気圧になるまでArガスを充填し、その後、黒鉛鋳型に鋳造し、Ag−5質量%Ca母合金を作製し、さらにPdとIr、またはPdとReの配合組成が質量比でPd:Ir=80:20、70:30およびPd:Re=80:20、70:30となるように秤量したのち、高周波真空溶解炉にて溶解し、溶解後、炉内圧が大気圧になるまでArガスを充填し、その後、黒鉛鋳型に鋳造し、いずれも質量%でPd−20%Ir,Pd−30%Ir,Pd−20%Re,Pd−30%Reのインゴットを作製し(以下、これらをPd−Ir母合金,Pd−Re母合金という)、その後、これら母合金を冷間圧延にて厚さ:2mmまで圧延した。
このようにして作製した母合金をあらかじめ高周波真空溶解炉にて溶解したAg溶湯に添加して、まず、Ca含有Ag溶湯を作製し、その後、Ca含有Ag溶湯にEu、Ir−Pd母合金、Re−Pd母合金を添加して成分調整したAg合金溶湯を作製した。この後、得られたAg合金溶湯を鋳型に鋳込むことによりインゴットを作製し、このインゴットを所定の大きさに切断した後550℃、2時間保持の条件で加熱し水冷した後、室温にて冷間圧延し、その後600℃、1時間保持の条件で熱処理を加え、次いで機械加工することにより直径:125mm、厚さ:5mmの寸法を有し、表1に示される成分組成を有する本発明ターゲット1〜15および比較ターゲット1〜10を作製した。
さらにAgを高周波真空溶解炉にて溶解し、Cuを添加することによりAg−Cu合金溶湯を作製し、得られたAg−Cu合金溶湯にさらにAg−5質量%Ca母合金を添加してCa含有Ag合金溶湯を作製し、得られたAg合金溶湯を黒鉛製鋳型にArガス雰囲気中で鋳造することによりインゴットを作製し、得られたインゴットを所定の大きさに切断した後、室温にて冷間圧延し、その後550℃、1時間保持の条件で熱処理を加え、次いで、機械加工することにより直径:125mm、厚さ:5mmの寸法を有し、表1に示される成分組成を有する従来ターゲット2を製造した。
本発明ターゲット1〜15、比較ターゲット1〜10および従来ターゲット1〜2をそれぞれ無酸素銅製のバッキングプレートにはんだ付けし、これを直流マグネトロンスパッタ装置に装着し、真空排気装置にて直流マグネトロンスパッタ装置内を1×10-4Paまで排気した後、Arガスを導入して1.0Paのスパッタガス圧とし、続いて直流電源にてターゲットに100Wの直流スパッタ電力を印加し、前記ターゲットに対抗しかつ70mmの間隔を設けて前記ターゲットと平行に配置した直径:30mm、厚さ:1mmの酸化膜付きSiウエハ基板と前記ターゲットの間にプラズマを発生させ、厚さ:100nmの表2〜3に示される成分組成を有する本発明Ag合金膜1〜15、比較Ag合金膜1〜10および従来Ag合金膜1〜2を形成した。
このようにして形成した厚さ:100nmのAg合金膜の比抵抗を四探針法により測定し、ウィーデマンフランツの法則に基づく式:κ=2.44×10−8T/ρ(ただし、κ:熱伝導率、T:絶対温度、ρ:比抵抗)により比抵抗値から熱伝導率を計算により求め、その結果を表2〜3に示した。
反射率・透過率を測定するために直径:30mm、厚さ:0.6mmのポリカーボネート基板と前記ターゲットの間にプラズマを発生させ、ポリカーボネート基板に厚さ:10nmの表2〜3に示される成分組成を有する本発明Ag合金膜1〜15、比較Ag合金膜1〜10および従来Ag合金膜1〜2を形成し、波長:300〜800nmの範囲の反射率と透過率を分光光度計にて測定し、波長:650nmでのスパッタ膜側の反射率、および透過率を求め、「100−(反射率+透過率)」を吸収率と定義して求め、その結果を表2〜3に示した。
直径:120mm、厚さ:0.6mmのポリカーボネート基板と前記ターゲットの間にプラズマを発生させ、ポリカーボネート基板に厚さ:20nmの表2〜3に示される成分組成を有する本発明Ag合金膜1〜15、比較Ag合金膜1〜10および従来Ag合金膜1〜2を形成し、その後、スピンコート法により前記厚さ:20nmの本発明Ag合金膜1〜15、比較Ag合金膜1〜10および従来Ag合金膜1〜2の上にそれぞれUV硬化樹脂を塗布することにより耐凝集性評価サンプルを作製した。これら耐凝集性評価サンプルを温度:90℃、相対湿度:85%の恒温恒湿槽にて300時間保持したのち、光学顕微鏡にて透過光を観察することにより膜に発生する穴の有無を調査し、その結果を表2〜3に示して膜の耐凝集性を評価した。
Claims (6)
- Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにIr:0.005〜0.2質量%、Pd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成の銀合金からなることを特徴とする光記録媒体用反射膜または半透明反射膜。
- Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにRe:0.005〜0.2質量%、Pd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成の銀合金からなることを特徴とする光記録媒体用反射膜または半透明反射膜。
- Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにIrおよびReの合計:0.005〜0.2質量%、Pd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成の銀合金からなることを特徴とする光記録媒体用反射膜または半透明反射膜。
- Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにIr:0.005〜0.2質量%、Pd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる組成の銀合金からなる成分組成の銀合金からなることを特徴とする光記録媒体の反射膜または半透明反射膜形成用銀合金スパッタリングターゲット。
- Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにRe:0.005〜0.2質量%、Pd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成の銀合金からなることを特徴とする光記録媒体の反射膜または半透明反射膜形成用銀合金スパッタリングターゲット。
- Ca:0.005〜0.1質量%、Eu:0.002〜0.1質量%を含有し、さらにIrおよびReの合計:0.005〜0.2質量%、Pd:0.01〜0.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成の銀合金からなることを特徴とする光記録媒体用反射膜または半透明反射膜形成用銀合金スパッタリングターゲット。
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