JP2006090449A - チェーンテンショナ - Google Patents

Abstract

【課題】プランジャの押し込み状態を自動的に解除することができるようにしたチェーンテンショナを提供することである。
【解決手段】ハウジング１のシリンダ室３に摺動自在に組込まれ、スプリング６によって外方への突出性が付与されたプランジャ４の先端部外周に係合ピン２０を固定し、ハウジング１の先端部外周には板ばねから成る係合片２２の後端部を支持する。係合片２２に屈曲片部２２ａを設け、その屈曲片部２２ａの先端部にピン孔２４を設ける。屈曲片部２２ａをプランジャ４の外周に向けて弾性変形させ、ピン孔２４に対する係合ピン２０の係合によりプランジャ４を押し込み状態に保持し、エンジンの始動によって緊張するチェーンでプランジャ４を押し込み、屈曲片部２２ａの復元弾性による弾性変形により係合ピン２０とピン孔２４の係合を解除し、スプリング６の押圧によりプランジャ４を外方に移動させてチェーンの張力を一定に保持する。
【選択図】図１

Description

この発明は、チェーン伝動装置、特に、カム軸駆動用チェーン伝動装置のチェーンの張力を一定に保持するチェーンテンショナに関するものである。

この種のチェーン伝動装置として、ハウジングに形成されたシリンダ室内にプランジャと、そのプランジャを外方向に向けて押圧するスプリングとを組込み、前記ハウジングにはプランジャの背部に形成された圧力室に連通する給油通路を設け、その給油通路から圧力室内に供給される作動油によってプランジャに付与される押し込み力を緩衝するようにしたものが従来から知られている。

上記のようなチェーンテンショナにおいては、スプリングの押圧によってプランジャが常に突出する方向に付勢されているため、組付けに際しては、プランジャを押し込み、その押し込み状態を保持してテンショナ取付け対象にハウジングを固定する必要が生じ、組付けに非常に手間がかかるという問題がある。

かかる問題点を解決するため、プランジャの先端部外周面およびハウジングの先端部外周面にそれぞれピン孔を形成し、プランジャの押し込みによりプランジャのピン孔をハウジングのピン孔に一致させ、その一致するピン孔にピンを挿入して、プランジャを押し込み状態に保持するようにしたチェーンテンショナが提案されている。

また、特許文献１には、ハウジングに形成されたシリンダ室の開口部内周にガイド溝を設け、そのガイド溝内に摘みの押圧によって拡径されるレジスタリングを組込み、そのレジスタリングをプランジャの先端部外周に形成されたセット壁に係合してプランジャを押し込み状態に保持し、上記摘みの押圧によりレジスタリングを拡径させ、セット壁に対するレジスタリングの係合解除によりプランジャを外方に突出させるようにしたチェーンテンショナが提案されている。
特開２００１−３５５６９１号公報

ところで、ピン孔に対するピンの挿入によってプランジャを押し込み状態に保持するようにしたチェーンテンショナおよび特許文献１に記載されたチェーンテンショナのいずれのチェーンテンショナにおいても、エンジンブロック等のテンショナ取付け対象に対するハウジングの取付け後にピンの引き抜きやレジスタリングの摘みの押圧によりプランジャの保持を解除する操作が必要であり、これらの操作をし忘れるおそれがある。

この発明の課題は、取付け後のエンジンの始動によるチェーンの張力変化によってプランジャの押し込み状態の保持を自動的に解除することができるようにしたチェーンテンショナを提供することである。

上記の課題を解決するために、この発明においては、ハウジングに形成されたシリンダ室内に摺動可能なプランジャと、そのプランジャを外方に向けて押圧するスプリングとを組込み、前記ハウジングには前記プランジャの背部に形成された圧力室に連通する給油通路を設け、この給油通路から圧力室内に供給される作動油によってプランジャに付与される押し込み力を緩衝するチェーンテンショナにおいて、前記プランジャの先端部外周に半径方向に延びる係合ピンを設け、前記ハウジングの外周には弾性を有する係合片を、その先端がハウジングの先端面より前方に位置するよう取付け、その係合片の先端部にはハウジングの外周から離反する方向に折れ曲がる屈曲片部を設け、その屈曲片部の先端部にピン孔を形成し、前記プランジャの外周に向けて弾性変形させた屈曲片部のピン孔と前記係合ピンの係合によってプランジャを押し込み状態に保持するようにした構成を採用したのである。

ここで、係合片の後端部に一部が切り離された弾性リング部を一体に設け、一方、ハウジングの外周にはリング溝を設け、そのリング溝に上記弾性リングを係合して、リング溝の円筒形内面を締付けるようにすると、ハウジングに対して係合片を簡単に、しかも安定よく取付けることができる。

また、係合ピンの先端部外周に前記屈曲片部に形成されたピン孔の内周一部が係合可能な切欠部を形成し、あるいは、係合ピンの先端部にフランジを設けると、係合ピンを係合状態に確実に保持することができる。

この発明に係るチェーンテンショナにおいて、ハウジングとプランジャの相互間に、プランジャがシリンダ室の閉塞端に向けて所定量以上に後退動するのを防止する後退動規制手段を設けておくと、エンジンの停止時に、カムの停止位置の関係によってプランジャが押し込まれるのを防止することができ、エンジンの再始動時にチェーンに大きな弛みが生じるのを防止することができる。

前記後退動規制手段として、シリンダ室の開口部内周にクリップ収容溝を形成し、そのクリップ収容溝にレジスタクリップに設けられた径方向に弾性変形可能なリング部を組込み、前記プランジャの外周には前記リング部で締付ける複数の円周溝を軸方向に間隔をおいて設け、各円周溝の内周にプランジャの前進時に前記リング部を拡径させるテーパ面と、プランジャの後退時に前記リング部に係合してプランジャの後退動を阻止する係合面とを設けた構成から成るものを採用することができる。

上記のように、ハウジングの外周に取付けた係合片の屈曲片部をプランジャの外周に向けて弾性変形させ、その屈曲片部の先端部に形成されたピン孔にプランジャの先端部外周に設けた係合ピンを係合させることにより、プランジャを押し込み状態に保持することができるため、テンショナ取付け対象に対するチェーンテンショナの組付けの容易化を図ることができる。

また、チェーンテンショナの組付け後、エンジンを始動すると、チェーンの弛み側チェーンが緊張してプランジャが押し込まれるため、屈曲片部が自己の復元弾性により外方に弾性変形して自然状態に戻り、係合ピンとピン孔の係合が解除されることになり、プランジャの押し込み保持を自動的に解除することができる。

さらに、プランジャを押し込み状態に保持するロック機構が弾性を有する係合片と係合ピンとから成る部品点数の少ない簡単な構成であり、しかも、係合片はハウジングの外周に沿う取付けであるため、ロック機構の取付けのために大きなスペースを確保する必要がなく、チェーンテンショナが大型化することもない。

以下、この発明の実施形態を示す。図１に示すように、ハウジング１は円柱状をなし、その後端部には取付け用のフランジ２が一体に設けられている。

また、ハウジング１には先端面で開口するシリンダ室３が設けられ、そのシリンダ室３内にプランジャ４が摺動自在に組込まれている。

プランジャ４は、その後端面で開口するスプリング収納孔５を有し、そのスプリング収納孔５の閉塞端とシリンダ室３の閉塞端間に組込まれたスプリング６はプランジャ４を外方向に向けて押圧している。

シリンダ室３の閉塞端壁には前記プランジャ４の背部に形成された圧力室７に連通する給油通路８が形成され、その給油通路８の油出口側に圧力室７内の作動油が給油通路８側に逆流するのを防止するチェックバルブ９が設けられている。

ハウジング１とプランジャ４の相互間には、プランジャ４がシリンダ室３の閉塞端に向けて所定量以上後退動するのを防止する後退動規制手段１０が設けられている。

図５に示すように、後退動規制手段１０は、シリンダ室３の開口部内周にクリップ収容溝１１を形成し、そのクリップ収容溝１１内にレジスタクリップ１２に設けられた径方向に弾性変形可能なリング部１２ａを収容し、プランジャ４の外周部には前記リング部１２ａで締付けられる複数の円周溝１３を軸方向に等間隔に設け、各円周溝１３の内周にプランジャ４の先端に向けて小径となるテーパ面１３ａと、そのテーパ面１３ａの小径端に連続して係合面１３ｂとを設けている。

ここで、レジスタクリップ１２のリング部１２ａの両端には図２および図３に示すように、一対の摘み１２ｂが設けられている。一対の摘み１２ｂはハウジング１の先端面に形成された切欠部１４から外部に臨み、その一対の摘み１２ｂを両側から押圧することによってリング部１２ａが拡径するようになっている。

上記の構成から成る後退動規制手段１０においては、テーパ面１３ａがレジスタクリップ１２のリング部１２ａを拡径させる作用によってプランジャ４の前進動を許容し、クリップ収容溝１１の後壁面１１ａに当接して停止するレジスタクリップ１２のリング部１２ａに対する係合面１３ｂの係合によってプランジャ４の後退動を規制するようにしている。

図１に示すように、プランジャ４の先端部の外周下部にはプランジャ４の半径方向に延びる係合ピン２０が設けられている。一方、ハウジング１の先端部にはプランジャ保持具２１が取付けられている。

図１および図６に示すように、プランジャ保持具２１は板ばねから成る係合片２２の後端に一部が切り離された弾性リング部２３を設けた構成とされ、上記係合片２２はくの字形に折曲げられて屈曲片部２２ａが設けられ、その屈曲片部２２ａの先端部に前記係合ピン２０が係合可能なピン孔２４が設けられている。

上記プランジャ保持具２１は、ハウジング１の先端部外周に形成されたリング溝２５に弾性リング部２３が嵌合し、かつ、ハウジング１の外周に形成された軸方向の溝２６に係合片２２が挿入する取付けとされ、その取付け状態で上記弾性リング部２３はリング溝２５の円筒形内面を締付けてプランジャ保持具２１の取付けの安定化を図っている。また、プランジャ保持具２１の取付け状態で屈曲片部２２ａの先端部はハウジング１の先端面より前方に臨んでいる。

実施の形態で示すチェーンテンショナは上記の構造から成り、そのチェーンテンショナの組付けに際しては、プランジャ４を押し込み、係合片２２の先端部に設けられた屈曲片部２２ａをプランジャ４の外周に向けて押圧し、ピン孔２４に対する係合ピン２０の係合により屈曲片部２２ａを弾性変形状態に保持すると共に、プランジャ４を押し込み状態に保持し、その状態でハウジング１のフランジ２をテンショナ取付け対象に固定する。

図７は、チェーンテンショナの取付け状態を示し、テンショナ取付け対象としてのエンジンカバー３０にはテンショナ取付孔３１が設けられている。また、エンジンカバー３０内にはカム軸駆動用チェーン３２と、そのチェーン押圧用の揺動可能なチェーンガイド３３とが設けられている。

いま、図１に示すように、係合ピン２０と屈曲片部２２ａのピン孔２４の係合によってプランジャ４が押し込み状態に保持されたチェーンテンショナのハウジング１を図７に示すテンショナ取付孔３１に挿入し、ボルト３４の締付けによってエンジンカバー３０にフランジ２を固定したのちにおいて、エンジンの駆動によりチェーン３２を移動させると、チェーン３２が緊張し、その緊張するチェーン３２の張力によりチェーンガイド３３を介してプランジャ４に押し込み力が負荷されてプランジャ４が後退する。そのプランジャ４の後退により、ピン孔２４に対する係合ピン２０の係合力が弱められ、係合片２２の屈曲片部２２ａは自己の復元弾性により外方に弾性変形して、係合ピン２０とピン孔２４の係合が解除する。その係合解除により、プランジャ４はスプリング６の押圧により外方に移動し、チェーン３２からプランジャ４に負荷される押し込み力とスプリング６のばね力とが釣り合う位置まで移動して、チェーン３２に一定の張力を負荷する。

上記のように、エンジンカバー３０にハウジング１を取付けたのち、エンジンの始動によりチェーン３２を移動させると、緊張するチェーン３２によりプランジャ４に押し込み力が負荷され、屈曲片部２２ａの自己の復元弾性による弾性変形により係合ピン２０とピン孔２４の係合が解除されるため、プランジャ４の押し込み保持を自動的に解除することができる。

また、プランジャ４を押し込み状態に保持するロック機構が弾性を有する係合片２２と係合ピン２０から成る部品点数の少ない簡単な構成であり、しかも、係合片２２はハウジング１の外周に沿う取付けであるため、ロック機構の取付けに大きなスペースを確保する必要がなく、チェーンテンショナが大型化することもない。

上記のようなチェーンテンショナの組付け後、給油通路８から圧力室７内に作動油を供給して圧力室７内に作動油を満たし、その作動油によってチェーン３２からプランジャ４に負荷される押し込み力を緩衝する。

上記押し込み力がスプリング６のばね力より大きい場合、レジスタクリップ１２のリング部１２ａがクリップ収容溝１１の後壁面に当接し、そのリング部１２ａに対する係合面１３ｂの係合によってプランジャ４の後退動が阻止される。

このため、エンジンの停止時、カムの停止位置の関係によってチェーン３２が緊張状態に保持されても、プランジャ４はリング部１２ａと係合面１３ｂの係合によって後退動することが防止されるため、チェーン３２は緊張状態に保持される。したがって、エンジンの再始動時にチェーン３２に大幅な弛みが生じるのが防止され、チェーン３２のバタツキや歯飛びが生じるのを防止することができる。

また、チェーン３２の張力調整状態において、チェーン３２に弛みが生じた場合、スプリング６の押圧によりプランジャ４が外方向に移動し、チェーンガイド３３を介してチェーン３２が押圧されるため、チェーン３２の弛みが吸収される。

プランジャ４が外方向に移動するとき、テーパ面１３ａがレジスタクリップ１２のリング部１２ａを拡径させるため、プランジャ４は外方向にスムーズに移動する。

チェーン３２に経時的な伸びが生じてプランジャ４の外方向への移動量が大きくなると、後方の円周溝１３がレジスタクリップ１２のリング部１２ａに対向して、以後、前記と同様の動作が行なわれる。

図１に示す実施の形態では、係合ピン２０として、全長にわたって同一径のものを示したが、図８（Ｉ）に示すように、係合ピン２０の外周にピン孔２４の内周一部が係合可能な切欠部２７を形成し、あるいは、図８（II）に示すように、係合ピン２０の先端部にフランジ２８を設けるようにしてもよい。

図８（Ｉ）に示すように、切欠部２７を形成し、あるいは図８（II）に示すように、フランジ２８を設けると、振動等によって係合ピン２０とピン孔２４の係合が解除されるのを防止することができ、係合ピン２０とピン孔２４を係合状態に確実に保持することができる。

この発明に係るチェーンテンショナの実施の形態を示す縦断正面図 図１に示すチェーンテンショナのハウジングの先端部分を示す正面図 図１の右側面図 図１に示すチェーンテンショナのハウジングの先端部分を示す底面図 プランジャの後退動を規制する後退動規制手段の一部分を拡大して示す断面図 プランジャ保持具を示す斜視図 チェーンテンショナの取付け状態を示す断面図 （Ｉ）、（II）は係合ピンの他の例を示す断面図

符号の説明

１ ハウジング
３ シリンダ室
４ プランジャ
６ スプリング
７ 圧力室
８ 給油通路
１０ 後退動規制手段
１１ クリップ収容溝
１２ レジスタクリップ
１２ａ リング部
１３ 円周溝
１３ａ テーパ面
１３ｂ 係合面
２０ 係合ピン
２２ 係合片
２２ａ 屈曲片部
２３ 弾性リング部
２４ ピン孔
２５ リング溝
２７ 切欠部
２８ フランジ

Claims (6)

1. ハウジングに形成されたシリンダ室内に摺動可能なプランジャと、そのプランジャを外方に向けて押圧するスプリングとを組込み、前記ハウジングには前記プランジャの背部に形成された圧力室に連通する給油通路を設け、この給油通路から圧力室内に供給される作動油によってプランジャに付与される押し込み力を緩衝するチェーンテンショナにおいて、前記プランジャの先端部外周に半径方向に延びる係合ピンを設け、前記ハウジングの外周には弾性を有する係合片を、その先端がハウジングの先端面より前方に位置するよう取付け、その係合片の先端部にはハウジングの外周から離反する方向に折れ曲がる屈曲片部を設け、その屈曲片部の先端部にピン孔を形成し、前記プランジャの外周に向けて弾性変形させた屈曲片部のピン孔と前記係合ピンの係合によってプランジャを押し込み状態に保持するようにしたことを特徴とするチェーンテンショナ。
2. 前記係合片が、ハウジングの外周に形成されたリング溝の円筒状内面を締め付ける一部切り離しの弾性リング部を後端に有して成る請求項１に記載のチェーンテンショナ。
3. 前記係合ピンの先端部外周に前記屈曲片部に形成されたピン孔の内周一部が係合可能な切欠部を形成した請求項１又は２に記載のチェーンテンショナ。
4. 前記係合ピンの先端部にフランジを設けた請求項１又は２に記載のチェーンテンショナ。
5. 前記ハウジングとプランジャの相互間に、プランジャがシリンダ室の閉塞端に向けて所定量以上に後退動するのを防止する後退動規制手段を設けた請求項１乃至４のいずれかに記載のチェーンテンショナ。
6. 前記後退動規制手段が、シリンダ室の開口部内周にクリップ収容溝を形成し、そのクリップ収容溝にレジスタクリップに設けられた径方向に弾性変形可能なリング部を組込み、前記プランジャの外周には前記リング部で締付ける複数の円周溝を軸方向に間隔をおいて設け、各円周溝の内周にプランジャの前進時に前記リング部を拡径させるテーパ面と、プランジャの後退時に前記リング部に係合してプランジャの後退動を阻止する係合面とを設けた構成から成る請求項５に記載のチェーンテンショナ。

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