JP2006089727A - 多孔性フィルムの製造法及び該製造法により得られる多孔性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 延伸速度を低下させることなく、優れた透気性を有する多孔性フィルムを製造する方法を提供する。また、該製造法により得られる多孔性フィルムを提供する。
【解決手段】 ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、(A)アミド系化合物の少なくとも1種からなるβ晶核剤0.0001〜5重量部、(B)分子内に水酸基を1個以上有していてもよい炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩及び亜鉛塩の少なくとも1種0.001〜2重量部を含有することを特徴とする多孔性フィルム用β晶系ポリプロピレン樹脂組成物から、ポリプロピレン樹脂のβ晶結晶を含有する原反シートを得、該原反シートを、好ましくは高い延伸速度で、一軸又は二軸延伸することにより透気性に優れた多孔性フィルムを製造する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、多孔性フィルムの製造法及び該製造法により得られる多孔性フィルムに関する。また、本発明は、該製造法に使用するβ晶含有原反シートにも関する。
従来より、β晶系ポリオレフィンシート(即ち、ポリプロピレン樹脂のβ晶結晶を含有する未延伸のシート。以下「β晶含有原反シート」という。)を一軸延伸又は同時若しくは逐次二軸延伸し、多孔性フィルムを製造する方法が多数提案されている(特許文献1、2及び非特許文献1参照)。そして、この多孔性フィルムは衛生材料、医療用材料、建築用材料、電池セパレーター等の各種用途に使用されている。
一般的な延伸方法として採用されている逐次二軸延伸工程において、縦及び/又は横延伸速度、特に横延伸速度を大きくすると、得られる多孔性フィルムの透気性が低下する。このため、高い透気性を有する多孔性フィルムを製造するには、横延伸速度を小さくしてフィルムを製造する必要がある。一方、横延伸速度を下げると製膜時のライン速度を落とさなければならず、生産性が著しく低下するという問題がある。ここでいうライン速度とはフィルム製造後の最終フィルム巻き取り速度に相当する。
近年では生産性を向上させるため、製膜時のライン速度が上がってきているが、ライン速度を上げるには横延伸速度を大きくしなければならず、得られる多孔性フィルムの透気性の低下は避けられないという問題があった。
しかしながら、これまでこれらの問題を解消する方法が強く求められてきたが、未だ十分な解決には至っていないのが現状である。
特開平6−64038号公報 特開平8−225662号公報 木村ら,Polymer,35,3442(1994)
本発明の目的は、延伸速度を低下させることなく、優れた透気性を有する多孔性フィルムを製造し得るβ晶含有原反シートを提供することにある。
また、本発明の目的は、該β晶含有原反シートを用いて、延伸速度を低下させることなく、優れた透気性を製造する方法を提供することにある。
更に、本発明の目的は、該方法により製造される多孔性フィルムを提供することにもある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その過程で、ポリプロピレン樹脂組成物を構成する成分、特に、従来からポリプロピレン樹脂中の重合触媒や塩素を補足する目的でしばしば使用されている中和剤に着目して研究を重ねた結果、次の知見を得た。
(1)特定量のポリプロピレン樹脂、アミド系β晶核剤及び、これらに加えて、特定の脂肪酸金属塩、即ち分子内に1個以上の水酸基を有していてもよい炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩又は亜鉛塩を含む樹脂組成物を用いることにより得られるポリプロピレン樹脂系β晶含有原反シートは、延伸速度を大きくしても、高い空孔率及び高透気性を有する多孔性フィルムを与える。
(2)例えば、一軸延伸法において、同一の縦延伸速度で比較すると、本発明に従い上記の脂肪酸マグネシウム塩又は脂肪酸亜鉛塩を用いたβ晶含有原反シートを使用すると、従来のステアリン酸カルシウムを使用したβ晶含有原反シートを用いる場合に比し、空孔率が高くなり、透気性が著しく向上する(例えば、後述の実施例1、2、5〜9及び比較例1、2,5〜14参照)。
(3)また、二軸延伸法においても、同一の縦延伸速度、同一の横延伸速度で比較すると、本発明に従い上記の脂肪酸マグネシウム塩又は脂肪酸亜鉛塩を用いたβ晶含有原反シートを使用すると、従来のステアリン酸カルシウムを使用したβ晶含有原反シートを使用する場合に比し、得られる多孔性フィルムは、より優れた透気性を有する(例えば、後述の実施例10、12、14及び15及び比較例15、17、19及び20参照)。
(4)同じく中和剤であっても、無機系の中和剤として汎用されているハイドロタルサイトを用いた場合、延伸速度を上げると、優れた透気性を有する多孔性フィルムを得ることは困難である。(後述の比較例12及び比較例26参照)。また、脂肪酸の他の塩、例えば、アルカリ金属塩、アルミニウム塩等では、延伸速度を上げると、優れた透気性を有する多孔性フィルムを得ることはできない。(後述の比較例7〜11及び比較例21〜25参照)。従って、延伸速度を上げても優れた透気性を有する多孔性フィルムを製造できる効果は、前記の分子内に1個以上の水酸基を有していてもよい炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩又は亜鉛塩に特異的な現象であると思われる。
本発明は、かかる知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものである。即ち、本発明は、以下の多孔性フィルムの製造法、該製造法により得られる多孔性フィルム並びに該製造法で使用するβ晶含有原反シート等を提供するものである。
項1 ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、
(A)下記一般式(1)
Figure 2006089727
[式中、R1は、炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表す。R2及びR3は同一又は異なって、炭素数3〜18のシクロアルキル基、又は、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表し、
Figure 2006089727
一般式(a)〜(d)において、R4は水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、R5は炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、R6及びR7は、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。]
で表されるアミド系化合物の少なくとも1種0.0001〜5重量部、及び
(B)分子内に水酸基を1個以上有していてもよい炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩及び亜鉛塩からなる群から選ばれる少なくとも1種0.001〜2重量部
を含有するポリプロピレン樹脂組成物からポリプロピレン樹脂のβ晶結晶を含有する原反シートを得、得られたβ晶含有原反シートを一軸または二軸延伸に供することを特徴とする多孔性フィルムの製造方法。
項2 ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが0.5〜40.0g/10分である項1に記載の製造方法。
項3 上記一般式(1)において、R1が炭素数1〜12の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜10の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R2及びR3が、同一又は異なって、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す項1に記載の製造方法。
項4 上記一般式(1)において、R1が炭素数4〜8の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜8の飽和脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜12の芳香族ジカルボン酸残基であり、R2及びR3が、1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数4〜8のシクロアルキル基又は非置換フェニル基である項1に記載の製造方法。
項5 上記一般式(1)において、R1が炭素数4〜8の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、フタル酸残基又はナフタレンジカルボン酸残基であり、R2及びR3が、1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基又は非置換フェニル基である項1に記載の製造方法。
項6 アミド系化合物が、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドである項1に記載の製造方法。
項7 (B)成分が、分子内に水酸基を1個又は2個有していてもよい炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩及び亜鉛塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
項8 (B)成分が、分子内に水酸基を1個有していてもよい炭素数18〜22の飽和又は不飽和脂肪酸マグネシウム塩及び亜鉛塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である項7に記載の製造方法。
項9 (B)成分が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、ベヘン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム及び12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種である項7に記載の製造方法。
項10 上記β晶含有原反シートを、50%/sec以上の縦延伸速度で一軸延伸に供する項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
項11 上記β晶含有原反シートを、50%/sec以上の縦延伸速度、及び、50%/sec以上の横延伸速度で、逐次二軸延伸に供する項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
項12 ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、
(A)下記一般式(1)
Figure 2006089727
[式中、R1は、炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表す。R2及びR3は同一又は異なって、炭素数3〜18のシクロアルキル基、又は、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表し、
Figure 2006089727
一般式(a)〜(d)において、R4は水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、R5は炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、R6及びR7は、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。]
で表されるアミド系化合物の少なくとも1種0.0001〜5重量部、及び
(B)分子内に水酸基を1個以上有していてもよい炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩及び亜鉛塩からなる群から選ばれる少なくとも1種0.001〜2重量部
を含有するポリプロピレン樹脂組成物からポリプロピレン樹脂のβ晶結晶を含有する原反シートを得、得られたβ晶含有原反シートを一軸または二軸延伸に供することにより得られる多孔性フィルム。
項13 ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが0.5g/10分以上5.0g/10分未満であり、空孔率が50〜65%、JIS P−8117(1998)に従って測定されたガーレ透気度が5000sec/100cc以下の一軸延伸多孔性フィルムである項12に記載の多孔性フィルム。
項14 ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが5.0g/10分以上15.0g/10分未満であり、空孔率が50〜65%、JIS P−8117(1998)に従って測定されたガーレ透気度が3000sec/100cc以下の一軸延伸多孔性フィルムである項12に記載の多孔性フィルム。
項15 ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが15.0〜40.0g/10分であり、空孔率が50〜65%、JIS P−8117(1998)に従って測定されたガーレ透気度が2500sec/100cc以下の一軸延伸多孔性フィルムである項12に記載の多孔性フィルム。
項16 ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが0.5g/10分以上5.0g/10分未満であり、空孔率が65〜75%、JIS P−8117(1998)で測定したガーレ透気度が800sec/100cc以下の二軸延伸多孔性フィルムである項12に記載の多孔性フィルム。
項17 ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが5.0g/10分以上15.0g/10分未満であり、空孔率が65〜75%、JIS P−8117(1998)で測定したガーレ透気度が600sec/100cc以下の二軸延伸多孔性フィルムである項12に記載の多孔性フィルム。
項18 ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが15.0〜40.0g/10分であり、空孔率65〜75%、JIS P−8117(1998)で測定したガーレ透気度が300sec/100cc以下の二軸延伸多孔性フィルムである項12に記載の多孔性フィルム。
項19 ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、
(A)下記一般式(1)
Figure 2006089727
[式中、R1は、炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表す。R2及びR3は同一又は異なって、炭素数3〜18のシクロアルキル基、又は、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表し、
Figure 2006089727
一般式(a)〜(d)において、R4は水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、R5は炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、R6及びR7は、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。]
で表されるアミド系化合物の少なくとも1種0.0001〜5重量部、及び
(B)分子内に水酸基を1個以上有していてもよい炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩及び亜鉛塩からなる群から選ばれる少なくとも1種0.001〜2重量部
を含有し、ポリプロピレン樹脂のβ晶結晶を含有することを特徴とする多孔性フィルム製造用原反シート。
本発明によれば、中和剤として、従来のステアリン酸カルシウムに代えて、前記分子内に水酸基を1個以上有していてもよい炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩及び亜鉛塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することにより、次の優れた効果が奏される。
(i)一軸延伸又は二軸延伸する際に、延伸速度を大きくしても高空孔率及び高透気性を有する多孔性フィルムを得ることができるβ晶含有原反シートが提供される。
(ii)そのため、本発明のβ晶含有原反シートを延伸することにより、ステアリン酸カルシウムを使用する場合に比し、延伸速度を大きくしても、優れた透気性を有する多孔性フィルムが得られる。
(iii)従って、本発明の製造法は、当該多孔性フィルムの生産性が高い。
(iv)又、上記飽和又は不飽和脂肪酸金属塩の中で、分子内に水酸基を1個以上有する炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩及び亜鉛塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用した場合、β晶含有原反シートのフィッシュアイの発生が抑制される。そのため、その原反シートを延伸して得られる多孔性フィルムの表面欠点(例えばピンホールや窪みなど)の発生が著しく低減される。よって、当該多孔性フィルムの品質が向上する。
(v)また、本発明のβ晶含有原反シートを一軸延伸又は二軸延伸する際に、ステアリン酸カルシウムを使用する場合と同様の延伸速度を採用すると、一段と優れた透気性を有する多孔性フィルムが得られる。
(vi)本発明により得られる多孔性フィルムは、使い捨て紙オムツ、生理用品などの衛生材料、建築材料、各種包装材料、合成紙、農業用マルチシート、電池セパレーター等の分野において極めて有用である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の多孔性フィルムの製造法は、ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、(A)一般式(1)で表されるアミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種0.0001〜5重量部及び(B)分子内に水酸基を1個以上有していてもよい炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸マグネシウム塩及び亜鉛塩からなる群から選ばれる少なくとも1種0.001〜2重量部を含有する樹脂組成物から、ポリプロピレン樹脂のβ晶結晶を含有する原反シートを得、得られた原反シートを一軸延伸又は二軸延伸に供することを特徴とする。
本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物からなる原反シートは、速い延伸速度でも高空孔率及び高透気性を維持できる多孔性フィルム用原料として好適である。そのため該原料を用いて製造した原反シートを延伸することにより透気性に優れた多孔性フィルムが容易に得られる。
ポリプロピレン樹脂
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂としては、プロピレンを主要な構成成分とする重合体であって、具体的には、プロピレンホモポリマー、プロピレンを主体とするランダム又はブロックプロピレン共重合体を挙げることができる。
該プロピレン共重合体としては、例えば、プロピレンとコモノマーとのランダム共重合体又はブロック共重合体であって、プロピレンを主成分とするものが例示できる。該コモノマーとしては、プロピレン以外の1−アルケン(エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン等)の他、他のコモノマー、例えば、スチレン、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸等を例示できる。また、該共重合体は、プロピレン・エチレン多元共重合体であってもよく、例えば、プロピレン、エチレンに加えて、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン又は1,4−ヘキサジエン等を含む共重合体等が例示される。
上記共重合体におけるプロピレンの含量は、70〜99重量%程度、特に80〜98重量%程度であるのが好ましい。また、プロピレンを主体とする共重合体のなかでも、プロピレン−エチレン共重合体が好ましい。プロピレン−エチレン共重合体としては、エチレンコンテントが1〜30重量%程度、特に2〜20重量%程度の共重合体が好ましい。
本明細書において、上記「エチレンコンテント」とは、プロピレン−エチレンコポリマーに含まれているエチレン量(エチレン由来の構造部分の量)の総和である。上記エチレンコンテントは、一般的に赤外線スペクトル法(J.Polym.Sci.,7,203(1964))により測定することができる。
また、上記ポリプロピレン樹脂は、他に少量の熱可塑性樹脂、例えば、高密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等を含んでいるポリマーブレンドとして使用してもよい。これらポリマーブレンドにおけるポリプロピレン樹脂の含量は、70〜99重量%程度、特に80〜98重量%程度であるのが好ましい。
これらのポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(「MFR」と略記する。JIS K−7210)としては、0.5〜40.0g/10分程度、好ましくは2.0〜15.0g/10分程度が推奨される。上記ポリマーブレンドのMFRも同様に、0.5〜40.0g/10分程度、好ましくは2.0〜15.0g/10分程度が推奨される。
本発明において、用いられるポリプロピレン樹脂のMFRは、多孔性フィルム製造時の延伸性及び得られる多孔性フィルムの透気性に影響を与えることが見いだされた。例えば、ポリプロピレン樹脂のMFRが高くなると、得られる多孔性フィルムの透気性は向上するが、製造時の延伸性は低下し、フィルムが破断し易くなる傾向が見られる。一方、MFRが低くなると、製造時の延伸性は改善されるが、得られる多孔性フィルムの透気性は低下する傾向が見られる。
従ってフィルム製造時の破断を防止しつつ、十分な透気性を有する多孔性フィルムを得る観点から、ポリプロピレン樹脂のMFRは、上記のように、0.5〜40.0g/10分程度であるのが好ましい。
(A)β晶核剤
本発明に用いられるβ晶ポリプロピレン樹脂用核剤(以下、「β晶核剤」と記す。)としては、下記一般式(1)で示されるアミド系化合物等が例示される。
Figure 2006089727
[式中、R1は、炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表す。R2及びR3は同一又は異なって、炭素数3〜18のシクロアルキル基、又は、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表し、
Figure 2006089727
一般式(a)〜(d)において、R4は水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、R5は炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、R6及びR7は、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。]
本明細書において、R1で表される飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基は、対応するジカルボン酸から2つのカルボキシル基を除いて得られる基を指す。
また、本明細書において、R1で表される飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基の炭素数は、ジカルボン酸残基としての炭素数(即ち、対応するジカルボン酸の炭素数−2)である。
一般式(1)で示されるアミド系化合物は、一般式(1a)
Figure 2006089727
[式中、R8は前記のR1と同義である。]
で表される脂肪族、脂環族又は芳香族のジカルボン酸と一般式(1b)
Figure 2006089727
[式中、R9は前記のR2、R3と同義である。]
で表される1種若しくは2種の脂環族又は芳香族のモノアミンとを常法に従ってアミド化することにより容易に調製することができる。
脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数3〜26、好ましくは3〜14の飽和又は不飽和の脂肪族ジカルボン酸が例示され、より具体的には、マロン酸、ジフェニルマロン酸、コハク酸、フェニルコハク酸、ジフェニルコハク酸、グルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,18−オクタデカン二酸が例示される。
脂環族ジカルボン酸としては、炭素数6〜30、好ましくは8〜12の脂環族ジカルボン酸が例示され、より具体的には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジ酢酸が例示される。
芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜30、好ましくは8〜22の芳香族ジカルボン酸が例示され、より具体的には、p−フェニレンジ酢酸、p−フェニレンジエタン酸、フタル酸、4−tert−ブチルフタル酸、イソフタル酸、5−tert−ブチルイソフタル酸、テレフタル酸、1,8−ナフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビナフチルジカルボン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)メタン、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、3,3’−スルホニルジ安息香酸、4,4’−スルホニルジ安息香酸、3,3’−オキシジ安息香酸、4,4’−オキシジ安息香酸、3,3’−カルボニルジ安息香酸、4,4’−カルボニルジ安息香酸、3,3’−チオジ安息香酸、4,4’−チオジ安息香酸、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジ安息香酸、4,4’−イソフタロイルジ安息香酸、4,4’−テレフタロイルジ安息香酸、ジチオサリチル酸などの芳香族二塩基酸が例示される。
脂環族モノアミンとしては、炭素数3〜18のシクロアルキルアミン、一般式(2)
Figure 2006089727
[式中、R10は前記のR5と同義である。]
又は一般式(3)
Figure 2006089727
[式中、R11は前記のR7と同義である。]
で表される化合物が例示され、より具体的には、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、2−エチルシクロヘキシルアミン、4−エチルシクロヘキシルアミン、2−プロピルシクロヘキシルアミン、2−イソプロピルシクロヘキシルアミン、4−プロピルシクロヘキシルアミン、4−イソプロピルシクロヘキシルアミン、2−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、4−n−ブチルシクロヘキシルアミン、4−イソブチルシクロヘキシルアミン、4−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、4−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、4−n−アミルシクロヘキシルアミン、4−イソアミルシクロヘキシルアミン、4−sec−アミルシクロヘキシルアミン、4−tert−アミルシクロヘキシルアミン、4−ヘキシルシクロヘキシルアミン、4−ヘプチルシクロヘキシルアミン、4−オクチルシクロヘキシルアミン、4−ノニルシクロヘキシルアミン、4−デシルシクロヘキシルアミン、4−ウンデシルシクロヘキシルアミン、4−ドデシルシクロヘキシルアミン、4−シクロヘキシルシクロヘキシルアミン、4−フェニルシクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロドデシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、α−シクロヘキシルエチルアミン、β−シクロヘキシルエチルアミン、α−シクロヘキシルプロピルアミン、β−シクロヘキシルプロピルアミン、γ−シクロヘキシルプロピルアミンが例示される。
芳香族モノアミンとしては、一般式(4)
Figure 2006089727
[式中、R12は前記のR4と同義である。]
又は一般式(5)
Figure 2006089727
[式中、R13は前記のR6と同義である。]
で表される化合物が例示され、より具体的には、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−エチルアニリン、p−エチルアニリン、o−プロピルアニリン、m−プロピルアニリン、p−プロピルアニリン、o−クミジン、m−クミジン、p−クミジン、o−tert−ブチルアニリン、p−n−ブチルアニリン、p−イソブチルアニリン、p−sec−ブチルアニリン、p−tert−ブチルアニリン、p−n−アミルアニリン、p−イソアミルアニリン、p−sec−アミルアニリン、p−tert−アミルアニリン、p−ヘキシルアニリン、p−ヘプチルアニリン、p−オクチルアニリン、p−ノニルアニリン、p−デシルアニリン、p−ウンデシルアニリン、p−ドデシルアニリン、p−シクロヘキシルアニリン、o−アミノジフェニル、m−アミノジフェニル、p−アミノジフェニル、ベンジルアミン、α−フェニルエチルアミン、β−フェニルエチルアミン、α−フェニルプロピルアミン、β−フェニルプロピルアミン、γ−フェニルプロピルアミンが例示される。
上記一般式(1)の化合物のうちでも、特に、R1が炭素数1〜12の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜10の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R2及びR3が、同一又は異なって、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す化合物が好ましい。
これらの化合物のうちでも、R1が炭素数4〜8の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜8の飽和脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜12の芳香族ジカルボン酸残基であり、R2及びR3が、1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数4〜8のシクロアルキル基又は非置換フェニル基である一般式(1)で表される化合物がより好ましい。
これらのうちでも、R1が炭素数4〜8の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、又は炭素数6〜12の芳香族ジカルボン酸残基であり、R2及びR3が、1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数4〜8のシクロアルキル基又は非置換フェニル基である一般式(1)の化合物がより好ましい。
なかでも、R1が炭素数4〜8の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、フタル酸残基又はナフタレンジカルボン酸残基であり、R2及びR3が1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基又は非置換フェニル基である一般式(1)の化合物が好ましい。
一般式(1)で表されるアミド系化合物のうち、特に好ましい化合物としては、アジピン酸ジアニリド、テレフタル酸ジ(シクロヘキシルアミド)、テレフタル酸ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド、N,N’−ジ(2−メチルシクロヘキシル)−2,6−ナフタレンジカルボキサミド等が例示でき、なかでもN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドが挙げられる。
本発明に用いられるアミド系化合物の最大粒径としては、20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下であることが推奨される。最大粒径が20μmを越えると延伸時の破断の原因となる可能性がある。ここで、最大粒径は、 レーザー回折方式に基づく方法により測定した場合の粒径を指す。
本発明において、一般式(1)で表されるアミド系化合物と、従来公知のβ晶ポリプロピレン用核剤とを本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて併用することもできる。
具体的には、下記一般式(6)
Figure 2006089727
[式中、R14は水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基又はカルボキシル基を表し、aは0〜12の整数を表し、Aは下記の一般式(e)、一般式(f)、一般式(g)、一般式(h)又は一般式(i)で表されるジカルボン酸残基を表し、
Figure 2006089727
上記一般式(e)〜(i)において、R15は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、ハロゲン原子を表し、xは1〜4の整数、yは1〜6の整数を表す。尚、x及びyが1より大きい場合、R15で表されるそれぞれの基は同一又は異なってもよい。]
で表される化合物、有機二塩基酸のカルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩(例えばピメリン酸カルシウム、テレフタル酸カルシウムなど)、12−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウム等、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタリンスルホン酸ナトリウム等の芳香族スルホン酸化合物、ジ又はトリカルボン酸のジもしくはトリエステル類、テトラオキサスピロ化合物類、イミドカルボン酸誘導体、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、キナクリドン、キナクリドンキノン等のキナクリドン系等の顔料、有機二塩基酸である成分(i)と周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物又は塩である成分(ii)とからなる二成分系が例示される。
(B)飽和又は不飽和脂肪酸マグネシウム塩又は亜鉛塩
本発明に用いられる飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩又は亜鉛塩としては、分子内に1個以上(特に1〜2個、好ましくは1個)の水酸基を有していてもよい炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸マグネシウム塩又は亜鉛塩、好ましくは、炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩又は亜鉛塩が挙げらる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することもできる。
これらのうちでも、分子内に水酸基を1個又は2個有していてもよい炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸(特に飽和脂肪酸)のマグネシウム塩又は亜鉛塩が好ましく、更に、分子内に水酸基を1個有していてもよい炭素数18〜22の飽和又は不飽和脂肪酸(特に飽和脂肪酸)のマグネシウム塩又は亜鉛塩が特に好ましい。
これら好ましい飽和又は不飽和脂肪酸金属塩の具体例としては、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、フプタデシル酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、9,10−ジヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、エルカ酸のマグネシウム塩又は亜鉛塩が挙げられる。
本発明によれば、これらの飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩及び亜鉛塩の少なくとも1種を使用することにより、中和剤として汎用されているステアリン酸カルシウムを使用する場合に比較して、原反シートを延伸する際の延伸速度を上げることができ、更に、該原反シートを延伸して得られる多孔性フィルムの透気性が大幅に改善される。
特に上記飽和又は不飽和脂肪酸金属塩の中でも、多孔性フィルムの高透気性の観点から、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、ベヘン酸亜鉛が特に推奨される。又、多孔性フィルムの表面欠点の低減の観点から、分子内に水酸基を1個以上((特に1〜2個、好ましくは1個))有する炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸(特に飽和脂肪酸)のマグネシウム塩又は亜鉛塩が好ましい。好ましい具体例としては、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛が挙げられる。
また、脂肪酸の他の塩、例えば、アルカリ金属塩、アルミニウム塩等では、延伸速度を上げると優れた透気性を有する多孔性フィルムを得ることは困難であった(後述の比較例参照)。従って、延伸速度を上げても優れた透気性を有する多孔性フィルムを製造できる効果は、前記の分子内に1個以上の水酸基を有していてもよい炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩又は亜鉛塩に特異的な現象であると思われる。
他の添加剤
本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物には、使用目的やその用途に応じて、適宜、従来公知のポリオレフィン用添加剤を本発明の効果を損なわない程度の範囲で配合してもよい。特に、β晶核剤の核剤効果を阻害する添加剤については、その核剤効果を損なわない範囲で配合することが好ましい。
かかるポリオレフィン用改質剤としては、例えば、ポリオレフィン等衛生協議会編「ポジティブリストの添加剤要覧」(2001年5月)に記載されている各種添加剤が挙げられ、より具体的には、安定剤(金属化合物、エポキシ化合物、窒素化合物、燐化合物、硫黄化合物、フェノール系化合物、UV吸収剤など)、界面活性剤(非イオン性、陰イオン性、両イオン性、陽イオン性など)、滑剤(パラフィン、ワックスなどの脂肪族炭化水素、炭素数8〜22の高級脂肪酸、炭素数8〜18の脂肪族アルコール、ポリグリコール、炭素数4〜22の高級脂肪酸と炭素数4〜18の脂肪族1価アルコールとのエステル、炭素数8〜22の高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン誘導体など)、充填剤(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、けい酸塩など)、発泡剤、発泡助剤、ポリマー添加材などの各種添加剤が例示される。
β晶含有原反シート
本発明のβ晶含有原反シートは、前記ポリプロピレン樹脂、(A)成分、(B)成分、及び必要に応じて前記他の添加剤を含有するポリプロピレン樹脂組成物から得られる。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物を製造するには、所望の該樹脂組成物が得られる限り、特に限定されることなく、常法を用いることができる。例えば、ポリプロピレン樹脂(粉末又はフレーク)と(A)成分(β晶核剤)、(B)成分(前記飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩及び亜鉛塩の少なくとも1種)、及び必要に応じて前記他の添加剤を混合することにより製造される。
混合方法には特に制限はなく、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、スーパーミキサー、タンブラー型等の公知の混合機を用いて混合する方法等が挙げられる。この場合の、混合温度は通常室温〜100℃程度であり、混合時間は、装置の回転速度などにもよるが、一般に1〜20分間程度である。その後、通常の一軸あるいは二軸スクリュー押出機、タンデム型混練押出機等によって180〜300℃、好ましくは250〜300℃で混練し、ペレット化する。
本発明の(A)成分であるβ晶核剤の配合量としては、ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、0.0001〜5重量部が推奨され、より好ましくは、0.001〜1重量部である。0.0001重量部未満では、原反シートのβ晶含量が低い。また、5重量部を越えて含有しても効果上の優位差が認められず、更には延伸工程時の破断の原因となり得るので好ましくない。
本発明の(B)成分である飽和又は不飽和脂肪酸金属塩の配合量は、ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、0.001〜2重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部である。0.001重量部未満の量では、多孔性フィルムの透気性の改良効果が十分に得られにくく、また、2重量部を越えて使用しても、透気性の改良効果に更なる優位性は認めらにくいばかりでなく、不経済である。
本発明に係る原反シートは、上記ポリプロピレン樹脂組成物から、Tダイ等が装着された押出成形機、円形ダイが装着されたインフレーション成形機等の公知の成形機を用いて製造することができる。特に、上記ポリプロピレン樹脂組成物をTダイ等が装着された押出成形機を用いて溶融混練し、Tダイから押し出された溶融シートを所定温度のチルロール上で冷却固化することにより製造することが推奨される。
場合によっては、本発明に係る原反シートは、上記ポリプロピレン樹脂組成物をペレット化せず、直接成形機で製造することもできる。例えば、ポリプロピレン樹脂(粉末又はフレーク)、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて他の添加剤をドライブレンドすることにより得られる未混練原料を、或いは、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて他の添加剤を高濃度に配合した高濃度添加剤配合物(例えば、上記添加剤を高濃度にポリプロピレン樹脂に配合したマスターバッチ、上記各成分を事前にブレンドしたプリブレンド物)をポリプロピレン樹脂(粉末又はフレーク)に配合することにより得られる未混練原料を、ペレット化工程を経ることなく、直接、Tダイが装着された成形機に投入して溶融混練し、Tダイから押し出すことにより製造することもできる。
当該原反シートを製造する際の溶融混練時の樹脂温度としては、190〜260℃、好ましくは200〜240℃、さらに好ましくは200〜210℃の範囲である。190℃未満では未溶融樹脂が発生し、延伸工程での破断の原因となる可能性があり、一方、260℃を越えると透気性が悪化する傾向が見られ好ましくない。
また、チルロールの表面温度(結晶化温度)としては、原反シートのβ晶含量をできる限り高くするため110〜130℃が好ましく、特に120〜125℃が好ましい。
得られる原反シートのβ晶含量としては、本発明の効果を損なわない範囲から選択されるが、通常、60〜90%、特に70〜85%とするのが好ましい。尚、β晶含量とは、ポリプロピレン原反シートを適当な大きさに切り取ったサンプルを、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minでDSC装置(パーキンエルマー社製「DSC7」)により示差走査熱量分析を行い、このとき得られるDSCサーモグラムのα晶とβ晶の融解熱量から以下の式に従い求めた値である。
β晶含量(%)=100×Hβ/(Hα+Hβ)
[式中、Hβはβ晶の融解熱量を示し、Hαはα晶の融解熱量を示す。]。
原反シートの厚さは、最終製品に応じて適宜選択すればよく、通常、50〜2000μm、好ましくは100〜1000μmとするのが好ましいが、この範囲に限定されない。また、原反シートの幅も、最終製品に応じて適宜選択すればよく、通常、100〜2000mm、好ましくは100〜1000mmとするのが好ましいが、この範囲に限定されない。
かくして得られる原反シートは、多孔性フィルム製造の際の延伸工程時の延伸速度を低下させることがなく、生産効率よく多孔性フィルムを得ることができる有用なβ晶含有原反シートである。
多孔性フィルムの製造法及び得られる多孔性フィルム
本発明に係る多孔性フィルムは、上記で得られた原反シートを、公知のロール法、テンター法、ギアストレッチ法、又はこれらの方法の組み合わせによって一軸又は二軸延伸することにより製造することができる。
延伸方向は、機械方向(以下、「縦方向」という。)又は機械方向と直角をなす方向(以下、「横方向」という。)に一軸延伸してもよいし、また、二軸延伸であってもよい。二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよく、逐次二軸延伸であってもよい。特に、高い透気性が得られる点で逐次二軸延伸が好ましい。
<一軸延伸>
一軸延伸条件としては、延伸温度が70〜140℃、好ましくは、90〜130℃であり、延伸倍率が2〜6倍、好ましくは3〜5倍の範囲であることが推奨される。延伸温度が、70℃未満では均一な延伸が困難であり、140℃を越えると得られるフィルムの透気性が著しく低下してしまう。延伸速度としては、例えば、50%/sec以上、特に50〜300%/sec程度が好ましく、50〜200%/secがより好ましい。
また、延伸した後、必要に応じて得られた開孔の形態を安定させるために熱固定処理を行ってもよい。熱固定処理条件としては、130〜160℃の温度において、1〜300秒間熱処理する条件が例示できる。
本発明の一軸延伸を採用する製造法において、MFRが(1)0.5g/10分以上5.0g/10分未満、(2)5.0g/10分以上15.0g/10分未満、又は(3)15.0〜40.0g/10分の範囲であるポリプロピレン樹脂を使用することにより、以下の一軸延伸多孔性フィルムが得られる。
(i)MFRが0.5g/10分以上5.0g/10分未満の場合、空孔率が50〜65%、JIS P−8117(1998)に従って測定されたガーレ透気度が5000sec/100cc以下(特に、4000〜2000sec/100cc以下)の範囲にある一軸延伸多孔性フィルム。
(ii)MFRが5.0g/10分以上15.0g/10分未満の場合、空孔率が50〜65%、JIS P−8117(1998)に従って測定されたガーレ透気度が3000sec/100cc以下(特に、3000〜2000sec/100cc以下)の範囲にある一軸延伸多孔性フィルム。
(iii)MFRが15.0〜40.0g/10分の場合、空孔率が50〜65%、JIS P−8117(1998)に従って測定されたガーレ透気度が2500sec/100cc以下(特に、2000〜1000sec/100cc以下)の範囲にある一軸延伸多孔性フィルム。
このように、本発明では、MFRの異なるポリプロピレン樹脂(1)〜(3)に対して、50%/sec以上の高い縦延伸速度を採用できるので生産性が高く、しかも、かかる高い縦延伸速度を採用しても、得られる多孔性フィルム(i)〜(iii)は、それぞれ(i)5000sec/100cc以下、(ii)3000sec/100cc以下、(iii)2500sec/100cc以下という優れたガーレ透気度を有している(後述の実施例1〜9参照)。
また、ポリプロピレン樹脂の種類と使用量、β晶核剤の種類と使用量、脂肪酸金属塩の使用量を同一とし、且つ、原反シート中のβ晶含量を実質上同量にして比較すると、本発明に従い特定の脂肪酸金属塩(即ち、マグネシウム塩又は亜鉛塩)を使用して得られる一軸延伸フィルムは、対応する脂肪酸カルシウム塩、アルカリ金属塩又はアルミニウム塩を使用して得られる一軸延伸フィルムに比し、格段に優れた透気性を有している。このことは、後述の実施例1〜9と、これらに対応する比較例1〜14とを対比することから明らかである。
<逐次二軸延伸>
また、逐次二軸延伸の場合、縦延伸条件としては、延伸温度が70〜140℃、好ましくは90〜130℃であり、延伸倍率が2〜6倍、好ましくは3〜5倍の範囲であることが推奨される。延伸温度が、70℃未満では均一な延伸が困難であり、140℃を越えると得られたフィルムの透気性が著しく低下してしまう。
横延伸条件としては、延伸温度が、100〜160℃、好ましくは、120〜140℃であり、延伸倍率が1.5〜10倍、好ましくは6〜8倍の範囲であることが推奨される。延伸温度が、100℃未満では延伸において破断する可能性があり、160℃を越えると得られたフィルムの透気性が著しく低下してしまう。横延伸倍率が1.5倍未満では、生産性に乏しく、10倍を越えると延伸において破断する可能性がある。
縦延伸時の延伸速度としては、例えば、50%/sec以上、特に50〜300%/sec程度が好ましく50〜200%/secがより好ましい。
横延伸時の延伸速度は、広い範囲が採用でき、例えば10〜300%/sec程度、特に20〜200%/sec程度が採用でき、横延伸速度が50%/sec以上の高い場合であっても、透気性の高い多孔性フィルムを得ることができる。より好ましい横延伸速度は、50〜100%/secである。
また、横延伸した後、必要に応じて得られた開孔の形態を安定させるために熱固定処理を行ってもよい。熱固定処理条件としては、130〜160℃の温度において、1〜300秒間熱処理する条件が例示できる。
本発明の二軸延伸法を採用する製造法において、MFRが(1)0.5g/10分以上5.0g/10分未満、(2)5.0g/10分以上15.0g/10分未満、又は(3)15.0〜40.0g/10分の範囲のポリプロピレン樹脂を使用することにより、以下の二軸延伸多孔性フィルムが得られる。
(iv)MFRが0.5g/10分以上5.0g/10分未満の場合、空孔率65〜75%、JIS P−8117(1998)で測定したガーレ透気度が800sec/100cc以下(特に、700〜400sec/100cc以下)の範囲にある二軸延伸多孔性フィルム。
(v)MFRが5.0g/10分以上15.0g/10分未満の場合、空孔率65〜75%、JIS P−8117(1998)で測定したガーレ透気度が600sec/100cc以下(特に、600〜300sec/100cc以下)の範囲にある二軸延伸多孔性フィルム。
(vi)MFRが15.0〜40.0g/10分の場合、空孔率65〜75%、JIS P−8117(1998)で測定したガーレ透気度が300sec/100cc以下(特に、300〜200sec/100cc以下)の範囲にある二軸延伸多孔性フィルム。
このように、本発明では、MFRの異なる上記ポリプロピレン樹脂(1)〜(3)に対して、50%/sec以上の高い縦延伸速度、及び50%/sec以上の横延伸速度を採用できるので生産性が高く、しかも、かかる高い縦延伸速度、特に高い横延伸速度を採用しても、得られる多孔性フィルム(iv)〜(vi)は、それぞれ(iv)800sec/100cc以下、(v)600sec/100cc以下、(vi)300sec/100cc以下という優れたガーレ透気度を有している(後述の実施例10〜18参照)。
ポリプロピレン樹脂の種類と使用量、β晶核剤の種類と使用量、脂肪酸金属塩の使用量を同一とし、且つ、原反シート中のβ晶含量を実質上同量にして比較すると、本発明に従い特定の脂肪酸マグネシウム塩又は亜鉛塩を使用して得られる二軸延伸フィルムは、対応する脂肪酸カルシウム塩、アルカリ金属塩又はアルミニウム塩を使用して得られる二軸延伸フィルムに比し、優れた透気性を有している。このことは、後述の実施例10〜18と、これらに対応する比較例15〜28とを対比することから明らかである。
また、ステアリン酸カルシウムを含有する原反シートを二軸延伸する場合、横延伸速度の上昇にともない、透気性は低下する。しかしながら、本発明に従いステアリン酸マグネシウム塩を含有する原反シートを使用する場合は、従来のステアリン酸カルシウム塩を使用する場合と比較して、横延伸速度の影響が小さく、透気性の低下を大幅に抑制することができるため、延伸工程において横延伸速度を大きくしても、優れた透気性及び高空孔率を有するフィルムが得られるという優れた利点がある。
上記一軸延伸法又は二軸延伸法により得られる本発明の多孔性フィルムの厚さは、一般に、10〜1000μm、特に20〜500μmであるのが好ましいが、この範囲に限定されない。
これら本発明の多孔性フィルムは、いずれも、従来の多孔性フィルムが使用されてきたと同様の分野において利用できる。
具体的には、簡易雨具、簡易作業服等の透湿防水衣料、衛生製品(例えば、紙おむつ(使い捨ておむつ、パンツ型おむつ等)、生理用ナプキン等の生理用品、失禁パッド等の吸収性物品、ベッドシーツ等の衛生用品等)、防水シート、壁紙等の建築材料、除湿剤、脱酸素剤、ケミカルカイロ等の各種包装材料、合成紙、濾過膜や分離膜、電池や電気分解等に使われる電池セパレータ、医療材料及び農業用マルチシート等の分野で利用することができる。
以下に実施例及び比較例を掲げ、本発明を詳しく説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、原反シートのβ晶含量、延伸フィルムのガーレ透気度、空孔率、縦又は横延伸速度、フィッシュアイ数を以下の方法により求めた。
(1)β晶含量: ポリプロピレン原反シートから切り取ったサンプルを窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minでDSC装置(パーキンエルマー社製「DSC7」)により示差走査熱量分析を行い、このとき得られるDSCサーモグラムのα晶とβ晶の融解熱量から以下の式に従い求めた。
β晶含量(%)=100×Hβ/(Hα+Hβ)
[式中、Hβはβ晶の融解熱量を示し、Hαはα晶の融解熱量を示す。]。
(2)ガーレ透気度: JIS P−8117(1998)に準拠して測定した。この値が小さいほど透気性に優れる。
(3)空孔率: 延伸フィルムを正方形状に切り取り、一辺の長さL(cm)、重量W(g)、厚みD(cm)を測定し、以下の式より求めた。
空孔率(%)=100−100(W/ρ)/(L2×D)
[式中、ρは、延伸前の原反シートの密度を示す。]。
(4)縦又は横延伸速度(%/sec):縦又は横延伸倍率(%)を延伸に必要な時間(sec)で割った値である。
(5)フィッシュアイ数(個/0.1m2):原反シート0.1m2中のフィッシュアイを目視で判定した数である。
多孔性フィルム用β晶系ポリプロピレン樹脂組成物の調製方法
表1に示したホモポリプロピレン樹脂(MFR=2.9g/10分,6.0g/10分,又は30.0g/10分の3タイプ)と、当該ホモポリプロピレン樹脂100重量部に対して、表1に記載の量のβ晶核剤(N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド、商品名「エヌジェスターNU−100」、新日本理化株式会社製)、表1に記載の飽和脂肪酸マグネシム塩又は亜鉛塩0.05重量部若しくは0.2重量部、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(商品名、「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.05重量部、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名、「イルガフォス168」、チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.1重量部、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸と(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトとの1:2ブレンド(商品名、「サイアノックス2777」、サイテック・インダストリーズ社製)0.1重量部をヘンシェルミキサーで混合し、300℃で溶融混練した後、冷却、ペレット化して、本発明の多孔性フィルム用β晶系ポリプロピレン樹脂組成物を調製した。
原反シートの調製方法
上記「多孔性フィルム用β晶系ポリプロピレン樹脂組成物の調製方法」に記載の方法に従って得られた多孔性フィルム用β晶系ポリプロピレン樹脂組成物を、Tダイ押出機を用いて200℃の樹脂温度で溶融混練してシート状に押出し、表面温度120℃のチルロールで冷却固化し、厚さ200μmのポリプロピレン原反シートを得た。得られた原反シートのβ晶含量を表1に示す。
一軸延伸フィルムの調製方法
得られた原反シートを、二軸延伸機(東洋精機株式会社製)を用いて、縦方向に125℃、53%/sec、100%/sec又は150%/secの延伸速度で4倍延伸を行い、白色不透明な多孔性フィルムを得た。得られたフィルムの厚さは、90〜110μmであった。
逐次二軸延伸フィルムの調製方法
得られた原反シートを二軸延伸機(東洋精機株式会社製)を用いて、縦方向に125℃、53%/secの延伸速度で4倍延伸を行い、連続して横方向に125℃、表2に記載の横延伸速度で2倍延伸を行い、白色不透明な多孔性フィルムを得た。得られたフィルムの厚さは、50〜70μmであった。
実施例1〜9、比較例1〜14
表1に記載の配合比となる多孔性フィルム用β晶系ポリプロピレン樹脂組成物から上記「一軸延伸フィルムの調製方法」に従って原反シート、一軸延伸フィルムを調製した。得られた原反シートのβ晶含量、縦延伸速度、並びに一軸延伸フィルムのガーレ透気度、空孔率を表1に示す。
表1において、各略号は次の意味を表す(下記の表2及び表3においても同じ)。
BeMg:ベヘン酸マグネシウム
StMg:ステアリン酸マグネシウム
12−OHStMg:12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム
StZn:ステアリン酸亜鉛
StCa:ステアリン酸カルシウム
StLi:ステアリン酸リチウム
StNa:ステアリン酸ナトリウム
StK :ステアリン酸カリウム
StAl(モノ):モノステアリン酸アルミニウム
StAl(ジ) :ジステアリン酸アルミニウム
DHT−4A(商品名、協和化学工業社製):ハイドロタルサイト
Figure 2006089727
表1から次のことが明らかである:
(i)ホモポリプロピレン樹脂のMFRが0.5g/10分以上5.0g/10分未満の範囲内の2.9g/10分である場合:
従来のステアリン酸カルシウムを使用した場合、低い透気性(ガーレ透気度が6900sec/100cc)の一軸延伸多孔性フィルムが得られた(比較例1)。
一方、本発明に従い脂肪酸マグネシウム塩を使用した場合、空孔率が50〜65%の範囲内の56%であり、ガーレ透気度が5000sec/100cc以下の範囲内の2800sec/100ccである、より透気性の高い一軸延伸多孔性フィルムが得られた(実施例1)。
(ii)ホモポリプロピレン樹脂のMFRが5.0g/10分以上15.0g/10分未満の範囲内の6.0g/10分である場合:
従来のステアリン酸カルシウムを使用すると、低い透気性(ガーレ透気度が4100sec/100cc以上)の一軸延伸多孔性フィルムが得られた(比較例2〜6)。
一方、本発明に従い脂肪酸マグネシウム塩又は亜鉛塩を使用すると、空孔率が50〜65%の範囲内であり、ガーレ透気度が3000sec/100cc以下の範囲内にある高透気性の一軸延伸多孔性フィルムを得ることができた(実施例2〜8)。
(iii)ホモポリプロピレン樹脂のMFRが15.0〜40.0g/10分の範囲内の30.0g/10分である場合:
従来のステアリン酸カルシウムを使用すると、低い透気性(ガーレ透気度が4200sec/100cc)の一軸延伸多孔性フィルムが得られた(比較例14)。
一方、本発明に従い脂肪酸マグネシウム塩又は亜鉛塩を使用すると、空孔率が50〜65%の範囲内の60%であり、ガーレ透気度が2500sec/100cc以下の範囲内の1900sec/100ccである高透気性の一軸延伸多孔性フィルムを得ることができた(実施例9)。
また、表1から判るように、ポリプロピレン樹脂の種類と使用量、β晶核剤の種類と使用量、脂肪酸金属塩の使用量を同一とし、且つ、原反シート中のβ晶含量を実質上同量にして比較すると、本発明に従い特定の脂肪酸マグネシウム塩又は亜鉛塩を含有する原反シートを一軸延伸して得られる多孔性フィルムは、対応する脂肪酸カルシウム塩、アルカリ金属塩、アルミニウム塩又はハイドロハイドロタルサイトを含有する原反シートを一軸延伸して得られる多孔性フィルムに比し、格段に優れた透気性を有している。このことは、実施例1と比較例1との対比、実施例2〜4と比較例2〜4との対比、実施例6と比較例6との対比、実施例6〜8と比較例6〜8との対比等から明らかである。また、本発明に従い特定の脂肪酸マグネシウム塩又は亜鉛を使用する場合、縦延伸速度がガーレ透気度に及ぼす影響は小さく、延伸工程において縦延伸速度を大きくしても、優れた透気性及び高空孔率を有するフィルムが得られるという優れた利点がある。
実施例10〜18、比較例15〜28
表2に記載の配合比となる多孔性フィルム用β晶系ポリプロピレン樹脂組成物から上記「逐次二軸延伸フィルムの調製方法」に従って原反シート、逐次二軸延伸フィルムを調製した。得られた原反シートのβ晶含量、縦及び横延伸速度、並びに逐次二軸延伸フィルムのガーレ透気度、空孔率を表2に示す。
Figure 2006089727
表2から次のことが明らかである:
(i)ホモポリプロピレン樹脂のMFRが0.5g/10分以上5.0g/10分未満の範囲内の2.9g/10分である場合:
従来のステアリン酸カルシウムを使用すると、低い透気性(ガーレ透気度が850sec/100cc)の二軸延伸多孔性フィルムが得られた(比較例15)。
一方、本発明に従い脂肪酸マグネシウム塩を使用すると、空孔率が65〜75%の範囲内の67%であり、ガーレ透気度が800sec/100cc以下の範囲内の580sec/10分である、より透気性の高い二軸延伸多孔性フィルムが得られた(実施例10)。
(ii)ホモポリプロピレン樹脂のMFRが5.0g/10分以上15.0g/10分未満範囲内の6.0g/10分である場合:
横延伸速度が53%/secの場合、従来のステアリン酸カルシウムを使用すると、ガーレ透気度が600sec/100cc以下の二軸延伸多孔性フィルムは得られなかった(比較例17、19及び20)。
一方、本発明に従い脂肪酸マグネシウム塩又は亜鉛塩を使用すると、空孔率が65〜75%の範囲内であり、ガーレ透気度が600sec/100cc以下の範囲内にある、高透気性の二軸延伸多孔性フィルムが得られた(実施例12及び14〜17)。
(iii)ホモポリプロピレン樹脂のMFRが15.0〜40.0g/10分範囲内の30.0g/10分である場合:
従来のステアリン酸カルシウムを使用すると、ガーレ透気度が300sec/100cc以下の二軸延伸多孔性フィルムは得られない(比較例28)
一方、本発明に従い脂肪酸マグネシウム塩又は亜鉛塩を使用すると、空孔率が65〜75%の範囲内であり、ガーレ透気度が300sec/100cc以下の範囲内の280sec/100ccである、より透気性の高い二軸延伸多孔性フィルムが得られた(実施例18)。
更に、表2から判るように、ポリプロピレン樹脂の種類と使用量、β晶核剤の種類と使用量、脂肪酸金属塩の使用量を同一とし、且つ、原反シート中のβ晶含量を実質上同量にして比較すると、本発明に従い特定の脂肪酸マグネシウム塩又は亜鉛塩を含有する原反シートを使用して得られる二軸延伸フィルム(実施例10〜18)は、対応する脂肪酸カルシウム塩を含有する原反シートを使用して得られる二軸延伸フィルム(比較例15〜20)、及び、アルカリ金属塩、アルミニウム塩又はハイドロタルサイトを含有する原反シートを使用して得られる二軸延伸フィルム(比較例21〜26)に比し、優れた透気性を有している。
また、表2の実施例11〜13及び比較例16〜18に示されているように、ポリプロピレン樹脂の種類と使用量、β晶核剤の種類と使用量、脂肪酸金属塩の使用量を同一とし、且つ、原反シート中のβ晶含量を実質上同量にして、横延伸速度(25、53、100%/sec)の影響を比較すると、ステアリン酸カルシウムを含有する原反シートを二軸延伸する場合、横延伸速度の上昇にともない、透気性は低下する。しかしながら、本発明に従いステアリン酸マグネシウム塩を含有する原反シートを使用する場合は、従来のステアリン酸カルシウム塩を使用する場合と比較して、横延伸速度の影響が小さく、透気性の低下を大幅に抑制することができるため、延伸工程において横延伸速度を大きくしても、優れた透気性及び高空孔率を有するフィルムが得られるという優れた利点がある。
実施例19及び20、比較例29
表3に記載の配合比となる多孔性フィルム用β晶系ポリプロピレン樹脂組成物から上記「原反シートの調製方法」に従って原反シートを調製した。但し、Tダイ押出機における樹脂温度を200℃から240℃へと変更し、且つ、原反シートの厚さを200μmから50μmへ変更した。得られた原反シートのβ晶含量及びフィッシュアイ数を表3に示す。
Figure 2006089727
表3から、判るように、ステアリン酸カルシウムを使用した場合(比較例29)と比較して、12−ヒドロキシ酸ステアリン酸マグネシウムを使用した場合には、原反シートでのフィッシュアイ発生の顕著な抑制効果が認められた。
本発明の多孔性フィルム用β晶系ポリプロピレン樹脂組成物から、横延伸速度を低下させることなく、多孔性フィルムを効率よく生産できる原反シートが得られ、該原反シートを延伸することにより、優れた透気性及び高空孔率を有する多孔性フィルムが得られる。かくして得られる多孔性フィルムは、使い捨て紙オムツ、生理用品などの衛生材料、建築材料、各種包装材料、合成紙、農業用マルチシート、電池セパレーター等の分野において極めて有用である。

Claims (19)

  1. ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、
    (A)下記一般式(1)
    Figure 2006089727
    [式中、R1は、炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表す。R2及びR3は同一又は異なって、炭素数3〜18のシクロアルキル基、又は、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表し、
    Figure 2006089727
    一般式(a)〜(d)において、R4は水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、R5は炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、R6及びR7は、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。]
    で表されるアミド系化合物の少なくとも1種0.0001〜5重量部、及び
    (B)分子内に水酸基を1個以上有していてもよい炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩及び亜鉛塩からなる群から選ばれる少なくとも1種0.001〜2重量部
    を含有するポリプロピレン樹脂組成物からポリプロピレン樹脂のβ晶結晶を含有する原反シートを得、得られたβ晶含有原反シートを一軸延伸又は二軸延伸に供することを特徴とする多孔性フィルムの製造方法。
  2. ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが0.5〜40.0g/10分である請求項1に記載の製造方法。
  3. 上記一般式(1)において、R1が炭素数1〜12の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜10の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R2及びR3が、同一又は異なって、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す請求項1に記載の製造方法。
  4. 上記一般式(1)において、R1が炭素数4〜8の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜8の飽和脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜12の芳香族ジカルボン酸残基であり、R2及びR3が、1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数4〜8のシクロアルキル基又は非置換フェニル基である請求項1に記載の製造方法。
  5. 上記一般式(1)において、R1が炭素数4〜8の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、フタル酸残基又はナフタレンジカルボン酸残基であり、R2及びR3が1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基又は非置換フェニル基である請求項1に記載の製造方法。
  6. アミド系化合物が、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドである請求項1に記載の製造方法。
  7. (B)成分が、分子内に水酸基を1個又は2個有していてもよい炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩及び亜鉛塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. (B)成分が、分子内に水酸基を1個有していてもよい炭素数18〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩及び亜鉛塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載の製造方法。
  9. (B)成分が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、ベヘン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム及び12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載の製造方法。
  10. 上記β晶含有原反シートを、50%/sec以上の縦延伸速度で一軸延伸に供する請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
  11. 上記β晶含有原反シートを、50%/sec以上の縦延伸速度、及び、50%/sec以上の横延伸速度で、逐次二軸延伸に供する請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
  12. ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、
    (A)下記一般式(1)
    Figure 2006089727
    [式中、R1は、炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表す。R2及びR3は同一又は異なって、炭素数3〜18のシクロアルキル基、又は、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表し、
    Figure 2006089727
    一般式(a)〜(d)において、R4は水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、R5は炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、R6及びR7は、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。]
    で表されるアミド系化合物の少なくとも1種0.0001〜5重量部、及び
    (B)分子内に水酸基を1個以上有していてもよい炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩及び亜鉛塩からなる群から選ばれる少なくとも1種0.001〜2重量部
    を含有するポリプロピレン樹脂組成物からポリプロピレン樹脂のβ晶結晶を含有する原反シートを得、得られたβ晶含有原反シートを一軸延伸又は二軸延伸に供することにより得られる多孔性フィルム。
  13. ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが0.5g/10分以上5g/10分未満であり、空孔率が50〜65%、JIS P−8117(1998)に従って測定されたガーレ透気度が5000sec/100cc以下の一軸延伸多孔性フィルムである請求項12に記載の多孔性フィルム。
  14. ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが5g/10分以上15g/10分未満であり、空孔率が50〜65%、JIS P−8117(1998)に従って測定されたガーレ透気度が3000sec/100cc以下の一軸延伸多孔性フィルムである請求項12に記載の多孔性フィルム。
  15. ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが15〜40g/10分であり、空孔率が50〜65%、JIS P−8117(1998)に従って測定されたガーレ透気度が2500sec/100cc以下の一軸延伸多孔性フィルムである請求項12に記載の多孔性フィルム。
  16. ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが0.5g/10分以上5g/10分未満であり、空孔率が65〜75%、JIS P−8117(1998)で測定したガーレ透気度が800sec/100cc以下の二軸延伸多孔性フィルムである請求項12に記載の多孔性フィルム。
  17. ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが5g/10分以上15g/10分未満であり、空孔率が65〜75%、JIS P−8117(1998)で測定したガーレ透気度が600sec/100cc以下の二軸延伸多孔性フィルムである請求項12に記載の多孔性フィルム。
  18. ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが15〜40g/10分未満であり、空孔率が65〜75%、JIS P−8117(1998)で測定したガーレ透気度が300sec/100cc以下の二軸延伸多孔性フィルムである請求項12に記載の多孔性フィルム。
  19. ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、
    (A)下記一般式(1)
    Figure 2006089727
    [式中、R1は、炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表す。R2及びR3は同一又は異なって、炭素数3〜18のシクロアルキル基、又は、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表し、
    Figure 2006089727
    一般式(a)〜(d)において、R4は水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、R5は炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、R6及びR7は、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。]
    で表されるアミド系化合物の少なくとも1種0.0001〜5重量部、及び
    (B)分子内に水酸基を1個以上有していてもよい炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩及び亜鉛塩からなる群から選ばれる少なくとも1種0.001〜2重量部
    を含有し、ポリプロピレン樹脂のβ晶結晶を含有することを特徴とする多孔性フィルム製造用原反シート。
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