JP5861713B2 - アミド化合物の結晶化を制御する方法を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法、該製造方法により得られるポリプロピレン系樹脂成形体、及びその二次加工成形品 - Google Patents

アミド化合物の結晶化を制御する方法を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法、該製造方法により得られるポリプロピレン系樹脂成形体、及びその二次加工成形品 Download PDF

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Description

本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物を成形する際のアミド化合物の針状結晶の巨大化(肥大化)を抑制する方法を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法、該製造方法により得られるポリプロピレン系樹脂成形体、及びその二次加工成形品に関する。
ポリプロピレン系樹脂には、α晶やβ晶等の結晶形態が存在するが、特定の結晶化条件やβ晶核剤を配合することにより、β晶を優先的に生成させることができる。β晶は、通常のα晶に比べて熱的性質、力学的性質が大きく異なり、β晶を優先的に発現させることにより耐熱性、耐衝撃性等の様々な物性を向上させることができることが知られている。β晶を形成させる方法としては、熱勾配下で成形する方法もあるが、ある種のアミド化合物を加えることにより効率的により多くのβ晶を形成することができることが知られている(特許文献1〜5)。
しかしながら、前記アミド化合物をβ晶核剤として、ポリプロピレン系樹脂に配合した場合、ポリプロピレン系樹脂中に溶解したアミド化合物の再結晶化が生じるため、再結晶化が進み過ぎて結晶が巨大化(肥大化)することがある。このようなアミド化合物の結晶の巨大化は、押出時のフィルターの閉塞や、得られたフィルムのフィッシュアイの発生等の問題を起こしたり、更には巨大化した結晶がきっかけとなり、成形体の衝撃強度が低下する等の問題がある。
特開平5−255551号公報 特開平5−262936号公報 特開平5−310665号公報 特開平7−188246号公報 特開平8−100088号公報
本発明は、ポリプロピレン系樹脂中に存在するアミド化合物の針状結晶を含有する系において、ポリプロピレン系樹脂組成物を成形する際におけるその結晶の巨大化(肥大化)を抑制する方法、その方法を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法、該製造方法により得られるポリプロピレン系樹脂成形体、及びその二次加工成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、優れた特性を有するポリプロピレン系樹脂成形体を容易に得る方法を探索する過程で、溶融ポリプロピレン系樹脂中に溶解したアミド化合物の結晶析出に際し、その結晶の針状化、即ち縦方向への結晶成長を促進することにより、得られた成形体の機械的特性や熱的特性がより向上することを確認した。また、ポリプロピレン系樹脂組成物を成形する際にアミド化合物の融解・再結晶化により針状結晶が横方向に結晶成長、即ち結晶の巨大化(肥大化)により、押出機のフィルター閉塞や得られたポリプロピレン系樹脂成形体の物性低下、二次加工性の低下、更には二次加工成形品の物性低下等の問題が生じる傾向があることを確認した。即ち、ポリプロピレン系樹脂組成物を成形する際のアミド化合物の結晶の巨大化(肥大化)を抑制することが、優れた特性を有するポリプロピレン系樹脂成形体及びその二次加工成形品を得るためには肝要であることが判った。
そこで、本発明者らは、アミド化合物を加えて優れた特性を有するポリプロピレン系成形体を製造するに際して、配合されたアミド化合物の針状結晶を含有する系において、ポリプロピレン系樹脂組成物を成形する際にその針状結晶の巨大化(肥大化)を抑制する方法に関して、鋭意検討した結果、特定の炭素鎖長を有する脂肪酸カルシウム塩を共存させることにより、前記課題を満たすことができることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のポリプロピレン系樹脂中のアミド化合物の針状結晶の針状化が促進された系において、ポリプロピレン系樹脂組成物を成形する際にその針状結晶の巨大化(肥大化)を抑制する方法を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法、該製造方法により得られるポリプロピレン系樹脂成形体及びその二次加工成形品を提供するものである。
(項1) 下記一般式(1)で表される少なくとも1種のアミド化合物の針状結晶が溶融状態のポリプロピレン系樹脂中に存在する溶融ポリプロピレン系樹脂組成物を成形する工程を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法であって、
前記溶融ポリプロピレン系樹脂組成物中に、前記アミド化合物と、炭素数22〜32の飽和又は不飽和の脂肪酸カルシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸カルシウム塩が共存していることを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
一般式(1):
Figure 0005861713
[式(1)中、Rは、炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ炭素数3〜18のシクロアルキル基、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す
Figure 0005861713
(式(a)〜(d)中、Rは水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、Rは炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し、Rは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す)。]
(項2) 脂肪酸カルシウム塩が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.001〜0.5重量部含有する上記(項1)に記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
(項3) アミド化合物の針状結晶を含有するポリプロピレン系樹脂組成物が、(i)ポリプロピレン系樹脂及びアミド化合物を含むポリプロピレン系樹脂組成物を加熱し、溶融したポリプロピレン系樹脂中にアミド化合物を溶解させる工程、及び(ii)前記工程(i)で得られた溶融状態のポリプロピレン系樹脂組成物を冷却して、アミド化合物の針状結晶を析出させる工程を具備する製造方法で得られる組成物であり、
前記ポリプロピレン系樹脂組成物を成形する工程における溶融温度の範囲が、T+10℃〜T−10℃(Tは、ポリプロピレン系樹脂の融点を表し、Tは、ポリプロピレン系樹脂にアミド化合物が溶解する温度を表す)の温度範囲であり、かつ、
前記工程(i)において、脂肪酸カルシウム塩をポリプロピレン系樹脂組成物に配合することを特徴とする上記(項1)又は(項2)に記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
(項4) 一般式(1)において、Rが炭素数1〜12の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜10の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R及びRが、同一又は異なって、それぞれ炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す上記(項1)〜(項3)の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
(項5) 一般式(1)において、Rが炭素数4〜8の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜8の飽和脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸残基であり、R及びRが、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基又はフェニル基である上記(項1)〜(項4)の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
(項6) 一般式(1)において、Rが、一般式(e)又は一般式(f)
Figure 0005861713
で表される芳香族ジカルボン酸残基であり、R及びRが、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である上記(項1)〜(項5)の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
(項7) アミド化合物が、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドである上記(項1)〜(項6)の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
(項8) 前記溶融ポリプロピレン系樹脂中でアミド化合物と共存する脂肪酸カルシウム塩が、ベヘン酸カルシウムである上記(項1)〜(項7)の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
(項9) ポリプロピレン系樹脂の230℃、荷重2160gにおけるメルトフローレートが0.5〜40g/10分である上記(項1)〜(項8)の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
(項10) 溶融ポリプロピレン系樹脂中に存在する下記一般式(1)で表される少なくとも1種のアミド化合物の針状結晶の巨大化を抑制する方法であって、
溶融状態のポリプロピレン系樹脂組成物中で、アミド化合物と、炭素数22〜32の飽和及び不飽和の脂肪酸カルシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸カルシウム塩を共存状態で存在させることを特徴とする方法。
一般式(1):
Figure 0005861713
[式(1)中、Rは、炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ炭素数3〜18のシクロアルキル基、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す
Figure 0005861713
(式(a)〜(d)において、Rは水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、Rは炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し、Rは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す)]
(項11) 一般式(1)において、Rが、炭素数1〜12の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜10の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R及びRが、同一又は異なって、それぞれ炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す上記(項10)に記載の方法。
(項12) 一般式(1)において、Rが炭素数4〜8の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜8の飽和脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸残基であり、R及びRが、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基又はフェニル基である上記(項10)又は(項11)に記載の方法。
(項13) 一般式(1)において、Rが一般式(e)、又は一般式(f)
Figure 0005861713
で表される芳香族ジカルボン酸残基であり、R及びRが、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である上記(項10)〜(項12)の何れかに記載の方法。
(項14) アミド化合物が、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドである上記(項10)〜(項13)の何れかに記載の方法。
(項15) 脂肪酸カルシウム塩がベヘン酸カルシウムである、上記(項10)〜(項14)の何れかに記載の方法。
(項16) (i)ポリプロピレン系樹脂、下記一般式(1)で表される少なくとも1種のアミド化合物及び炭素数22〜32の飽和又は不飽和の脂肪酸カルシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸カルシウム塩を含むポリプロピレン系樹脂組成物を加熱し、溶融したポリプロピレン系樹脂中にアミド化合物を溶解させる工程、
(ii)前記工程(i)で得られた溶融状態のポリプロピレン系樹脂組成物を冷却して、アミド化合物の針状結晶を析出させる工程、及び
(iii)前記工程(ii)で得られたアミド化合物の針状結晶を析出させたポリプロピレン系樹脂組成物を、T+10℃〜T−10℃(Tは、ポリプロピレン系樹脂の融点を表し、Tは、ポリプロピレン系樹脂にアミド化合物が溶解する温度を表す)の温度範囲で溶融させ、成形する工程
を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法により得られる、ポリプロピレン系樹脂成形体であって、
ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、アミド化合物を0.001〜2重量部、脂肪酸カルシウム塩を0.001〜0.5重量部含有するポリプロピレン系樹脂成形体。
一般式(1):
Figure 0005861713
[式(1)中、Rは一般式(e)、又は一般式(f)
Figure 0005861713
で表される芳香族ジカルボン酸残基を表し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基を表す]
(項17) アミド化合物が、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドである上記(項16)に記載のポリプロピレン系樹脂成形体。
(項18) 脂肪酸カルシウム塩がベヘン酸カルシウムである、上記(項16)又は(項17)に記載のポリプロピレン系樹脂成形体。
(項19) 上記(項16)〜(項18)の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体を、更に成形することによって得られる二次加工成形品。
上記(項1)又は(項2)に記載の発明によれば、ポリプロピレン系樹脂組成物を成形する際の溶融ポリプロピレン系樹脂中に存在するアミド化合物の針状結晶の巨大化(肥大化)を抑制することができる。
また、(項3)に記載の発明によれば、溶融ポリプロピレン系樹脂中に溶解したアミド化合物の結晶を析出させるに際して、脂肪酸カルシウム塩を共存させることにより、その結晶の針状化、即ち縦方向への結晶成長が促進され、更にポリプロピレン系樹脂組成物を成形する際に、アミド化合物の融解・再結晶化による針状結晶の横方向への結晶成長、即ち結晶の巨大化(肥大化)を抑制することができる。
その結果、得られた成形品は、剛性及び耐熱性において優れるだけでなく、耐衝撃性においても向上する。また、押出時のフィルター目詰まりによる生産性の低下がなくなり、得られた成形体の中でのフィッシュアイ発生等の問題が解消され、得られたポリプロピレン系樹脂成形体の品質低下の懸念が大幅に低下する。更に、その成形体から多孔性フィルム等の延伸フィルムや熱成形品を生産する際の二次加工性も大きく改善することが可能である。
ポリオレフィン系樹脂成形体(実施例13)の、結晶成長速度の抑制効果の評価(1時間加熱静置)時の顕微鏡写真である。 ポリオレフィン系樹脂成形体(実施例13)の、結晶成長速度の抑制効果の評価(2時間加熱静置)時の顕微鏡写真である。 ポリオレフィン系樹脂成形体(比較例8)の、結晶成長速度の抑制効果の評価(1時間加熱静置)時の顕微鏡写真である。 ポリオレフィン系樹脂成形体(比較例8)の、結晶成長速度の抑制効果の評価(2時間加熱静置)時の顕微鏡写真である。
以下、本発明について詳細に説明する。
<ポリプロピレン系樹脂組成物>
本発明において、ポリプロピレン系樹脂組成物を製造するには、所望の樹脂組成物が得られる限り、特に限定されることなく、当該技術分野で公知の製造方法を用いることができる。例えば、後述のポリプロピレン系樹脂(粉末又はフレーク)、アミド化合物及び脂肪酸カルシウム塩、並びに必要に応じて他の添加剤を混合することにより製造される。
<ポリプロピレン系樹脂>
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンを主要な構成成分とする重合体であって、具体的には、プロピレンホモポリマー、プロピレンを主体とするランダム又はブロックプロピレン共重合体を挙げることができる。
該プロピレン共重合体としては、例えば、プロピレンとコモノマーとのランダム共重合体又はブロック共重合体であって、プロピレンを主成分とするものが例示できる。該コモノマーとしては、プロピレン以外の1−アルケン(エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン等)の他、他のコモノマー、例えば、スチレン、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸等を例示できる。また、該共重合体は、プロピレン−エチレン多元共重合体であってもよく、例えば、プロピレン、エチレンに加えて、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン等を含む共重合体等が例示される。
上記共重合体におけるプロピレンの含有量は、70〜99重量%程度、特に80〜98重量%程度であることが好ましい。また、プロピレンを主体とする共重合体のなかでも、プロピレン−エチレン共重合体が好ましい。プロピレン−エチレン共重合体としては、エチレンコンテントが1〜30重量%程度、特に2〜20重量%程度の共重合体が好ましい。
本明細書において、上記「エチレンコンテント」とは、プロピレン−エチレンコポリマーに含まれているエチレン含有量(エチレン由来の構造部分の含有量)を意味する。上記エチレンコンテントは、一般的に赤外線スペクトル法(J.Polym.Sci.,7,203(1964))により測定することができる。
また、上記ポリプロピレン系樹脂は、他に少量の熱可塑性樹脂、例えば、高密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等を含んでいるポリマーブレンドとして使用してもよい。これらポリマーブレンドにおけるポリプロピレン系樹脂の含有割合は、樹脂中、70〜99重量%程度、特に80〜98重量%程度であることが好ましい。
これらのポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(「MFR」と略記する。JIS K−7210(1999))としては、0.5〜60g/10分程度、好ましくは2〜30g/10分程度が推奨される。射出成形品の場合は、5〜60g/10分程度、好ましくは10〜30g/10分程度が推奨される。また、延伸フィルムの場合は、0.5〜40g/10分程度、好ましくは2〜15g/10分程度が推奨される。上記ポリマーブレンドのMFRも同様に、0.5〜60g/10分程度、好ましくは2〜30g/10分程度が推奨される。なお、上記のMFRは、荷重2160g、230℃における数値である。
本発明において用いられるポリプロピレン系樹脂のMFRは、得られた成形体の剛性、耐衝撃性との機械的特性に影響することが確認されている。例えば、ポリプロピレン系樹脂のMFRが高くなると、延伸により多孔化したフィルムの透気性は向上するが、全般に延伸フィルムそのものの強度は低下する。また、二次加工時の延伸性が低下し、成形時に破断し易くなる傾向が見られる。一方、MFRが低くなると、成形時の延伸性や得られるフィルムの強度は改善されるが、例えば多孔性フィルムの場合、透気性は低下する傾向が見られる。
従って、延伸フィルムの場合は、フィルム製造時の破断を防止しつつ、また、多孔性フィルムである場合には、十分な透気性を得る観点から、ポリプロピレン系樹脂のMFRは、上記のように、0.5〜40g/10分程度であることが好ましい。
<アミド化合物>
本発明に用いられるアミド化合物は、下記一般式(1)で示されるアミド化合物が例示される。前記アミド化合物は、β晶核剤として多用される。
一般式(1):
Figure 0005861713
[式(1)中、Rは、炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表す。R及びRは同一又は異なって、それぞれ炭素数3〜18のシクロアルキル基、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す
Figure 0005861713
(式(a)〜(d)中、Rは水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、Rは炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し、Rは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す)。]
本明細書及び特許請求の範囲において、Rで表される飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基とは、対応するジカルボン酸から2つのカルボキシル基を除いて得られる基を指す。
また、本明細書及び特許請求の範囲において、Rで表される飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基の炭素数とは、ジカルボン酸残基としての炭素数(即ち、ジカルボン酸の炭素数から2個の炭素数を引いたもの)を意味する。
一般式(1)で示されるアミド化合物は、一般式(1a)
Figure 0005861713
[式中、Rは前記一般式(1)におけるRと同義である。]
で表される脂肪族、脂環族、又は芳香族のジカルボン酸と一般式(1b)
Figure 0005861713
[式中、Rは前記一般式(1)におけるR及びRと同義である。]
で表される1種若しくは2種の脂環族又は芳香族のモノアミンをアミド化することにより容易に調製することができる。
本発明に係るアミド化合物は、公知であるか又は公知の方法に従い製造できる。例えば、特開平5−310665号公報や特開平7−188246号公報の記載に従って、ジカルボン酸とモノアミンを原料にアミド化反応を行うことにより製造できる。また、これらのジカルボン酸の酸無水物、塩化物、該ジカルボン酸と炭素数1〜4程度の低級アルコールとのエステル化合物等の反応性誘導体をアミド化に供することによっても製造できる。公知の方法に従い製造されたアミド化合物は、若干不純物を含むものであってもよいものの、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、特に好ましくは97重量%以上が推奨される。不純物としては、反応中間体又は未反応物由来の部分アミド化物、副反応物由来のイミド化合物等が例示される。
脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数3〜26、好ましくは3〜14程度の飽和又は不飽和の脂肪族ジカルボン酸が例示され、より具体的には、マロン酸、ジフェニルマロン酸、コハク酸、フェニルコハク酸、ジフェニルコハク酸、グルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,18−オクタデカン二酸が例示される。脂環族ジカルボン酸としては、炭素数6〜30、好ましくは8〜12程度の脂環族ジカルボン酸が例示され、より具体的には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジ酢酸が例示される。
芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜30、好ましくは8〜22程度の芳香族ジカルボン酸が例示され、より具体的には、p−フェニレンジ酢酸、p−フェニレンジエタン酸、フタル酸、4−tert−ブチルフタル酸、イソフタル酸、5−tert−ブチルイソフタル酸、テレフタル酸、1,8−ナフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビナフチルジカルボン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)メタン、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、3,3’−スルホニルジ安息香酸、4,4’−スルホニルジ安息香酸、3,3’−オキシジ安息香酸、4,4’−オキシジ安息香酸、3,3’−カルボニルジ安息香酸、4,4’−カルボニルジ安息香酸、3,3’−チオジ安息香酸、4,4’−チオジ安息香酸、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジ安息香酸、4,4’−イソフタロイルジ安息香酸、4,4’−テレフタロイルジ安息香酸、ジチオサリチル酸、3,9−ビス(p−カルボキシフェニル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(m−カルボキシフェニル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(o−カルボキシフェニル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の芳香族ジカルボン酸が例示される。
脂環族モノアミンとしては、炭素数3〜18のシクロアルキルアミン、一般式(2)
Figure 0005861713
[式中、R10は前記一般式(b)におけるRと同義である。]
で表される化合物、又は一般式(3)
Figure 0005861713
[式中、R11は前記一般式(d)におけるRと同義である。]
で表される化合物が例示される。
より具体的には、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、2−エチルシクロヘキシルアミン、4−エチルシクロヘキシルアミン、2−プロピルシクロヘキシルアミン、2−イソプロピルシクロヘキシルアミン、4−プロピルシクロヘキシルアミン、4−イソプロピルシクロヘキシルアミン、2−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、4−n−ブチルシクロヘキシルアミン、4−イソブチルシクロヘキシルアミン、4−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、4−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、4−n−アミルシクロヘキシルアミン、4−イソアミルシクロヘキシルアミン、4−sec−アミルシクロヘキシルアミン、4−tert−アミルシクロヘキシルアミン、4−ヘキシルシクロヘキシルアミン、4−ヘプチルシクロヘキシルアミン、4−オクチルシクロヘキシルアミン、4−ノニルシクロヘキシルアミン、4−デシルシクロヘキシルアミン、4−ウンデシルシクロヘキシルアミン、4−ドデシルシクロヘキシルアミン、4−シクロヘキシルシクロヘキシルアミン、4−フェニルシクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロドデシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、α−シクロヘキシルエチルアミン、β−シクロヘキシルエチルアミン、α−シクロヘキシルプロピルアミン、β−シクロヘキシルプロピルアミン、γ−シクロヘキシルプロピルアミンが例示される。
芳香族モノアミンとしては、一般式(4)
Figure 0005861713
[式中、R12は前記一般式(a)におけるRと同義である。]
で表される化合物、又は一般式(5)
Figure 0005861713
[式中、R13は前記一般式(c)におけるRと同義である。]
で表される化合物が例示される。
より具体的には、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−エチルアニリン、p−エチルアニリン、o−プロピルアニリン、m−プロピルアニリン、p−プロピルアニリン、o−クミジン、m−クミジン、p−クミジン、o−tert−ブチルアニリン、p−n−ブチルアニリン、p−イソブチルアニリン、p−sec−ブチルアニリン、p−tert−ブチルアニリン、p−n−アミルアニリン、p−イソアミルアニリン、p−sec−アミルアニリン、p−tert−アミルアニリン、p−ヘキシルアニリン、p−ヘプチルアニリン、p−オクチルアニリン、p−ノニルアニリン、p−デシルアニリン、p−ウンデシルアニリン、p−ドデシルアニリン、p−シクロヘキシルアニリン、o−アミノジフェニル、m−アミノジフェニル、p−アミノジフェニル、ベンジルアミン、α−フェニルエチルアミン、β−フェニルエチルアミン、α−フェニルプロピルアミン、β−フェニルプロピルアミン、γ−フェニルプロピルアミンが例示される。
上記一般式(1)の化合物の中でも、好ましくは、Rが炭素数1〜12程度の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜10程度の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜20程度の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R及びRが、同一又は異なって、炭素数3〜12程度のシクロアルキル基、又は、一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基である。
より好ましくは、Rが炭素数4〜8程度の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜8程度の飽和脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜20程度の芳香族ジカルボン酸残基であり、R及びRが、1個の炭素数1〜4程度のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基又はフェニル基である。
更に好ましくは、Rが炭素数6〜20程度の芳香族ジカルボン酸残基であり、R及びRが、1個の炭素数1〜4程度のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である。
特に、Rが、下記一般式(e)又は一般式(f)で表される芳香族ジカルボン酸残基であり、R及びRが1個の炭素数1〜4程度のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基であることが推奨される。
Figure 0005861713
一般式(1)で表されるアミド化合物の中でも、好ましい化合物としては、アジピン酸ジアニリド、テレフタル酸ジ(シクロヘキシルアミド)、テレフタル酸ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド、N,N’−ジ(2−メチルシクロヘキシル)−2,6−ナフタレンジカルボキサミド、3,9−ビス[4-(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス[4-(N−4−tert−ブチルシクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス{4-[N−(2,4−ジ−tert−ブチルシクロヘキシル)カルバモイル]フェニル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が例示でき、特に好ましい化合物としてはN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドが推奨される。
本発明に用いられるアミド化合物の最大粒径としては、20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下であることが推奨される。最大粒径が20μmを越えるとポリプロピレン系樹脂組成物を製造する際に、アミド化合物が完全に溶解せず、溶け残りが生ずる可能性がある。溶け残った未溶融アミド化合物は、次の成形過程で結晶の巨大化(肥大化)の原因となり、得られた成形品の衝撃強度の低下、更には二次加工時の破断等の原因となる。ここで、最大粒径は、レーザー回折方式に基づく方法により測定した場合の粒径を指す。
<脂肪酸カルシウム塩>
本発明に用いられる脂肪酸カルシウム塩は、炭素数22〜32の飽和又は不飽和の脂肪酸カルシウム塩である。炭素数22〜32の飽和の脂肪酸カルシウム塩としては、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、カルボセリック酸、モンタン酸、メリシン酸、ラセロイン酸等が挙げられる。
また、炭素数22〜32の不飽和の脂肪酸カルシウム塩としては、エルカ酸、ドコサジエン酸、アドレン酸、オズボンド酸、イワシ酸、ネルボン酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸等が挙げられる。
これらは、それぞれ単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することもできる。
これらの内でも、炭素数22〜28程度の飽和の脂肪酸カルシウム塩が好ましく、更にベヘン酸、モンタン酸のカルシウム塩が特に好ましい。
従来汎用のステアリン酸カルシウム等の炭素数21以下の脂肪酸カルシウム塩を使用した場合は、溶融ポリプロピレン系樹脂中のアミド化合物の針状結晶の成長を促進させる効果が認められ、その針状結晶が存在するポリプロピレン系樹脂組成物の成形品は、機械特性(例えば剛性)や耐熱性が向上し、二次加工成形品である延伸フィルムの透気性等のフィルム特性の向上にも寄与する。しかしながら、ポリプロピレン系樹脂組成物を成形する際にアミド化合物の融解・再結晶化により、針状結晶が横方向に結晶成長、即ち結晶の巨大化(肥大化)する傾向が認められた。その結晶の巨大化により、例えば、成形品の耐衝撃性が安定的に発揮されないことがあったり、二次加工の際の押出機のフィルターが閉塞することがあったり、得られた延伸フィルムの安定的な物性が発現されなかったりすること等があった。その要因と考えられる結晶の巨大化を抑制する方法を開発することは容易ではなかった。
本発明によれば、本発明に係る脂肪酸カルシウム塩の少なくとも1種を共存させることにより、ポリプロピレン系樹脂組成物を成形する際にアミド化合物の融解・再結晶化により、針状結晶が横方向に結晶成長、即ち結晶の巨大化(肥大化)することを抑制することが可能となる。また、溶融ポリプロピレン系樹脂中に溶解したアミド化合物の結晶析出に際してもその針状結晶化、即ち縦方向への結晶成長の促進に寄与することが可能である。
<他の添加剤>
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物には、使用目的やその用途に応じて、適宜、従来公知のポリオレフィン用改質剤を本発明の効果を損なわない程度の範囲で配合してもよい。特に、アミド化合物によるβ晶核剤の核剤効果を阻害する添加剤については、その核剤効果を損なわない範囲で配合することが好ましい。
かかるポリオレフィン用改質剤としては、例えば、ポリオレフィン等衛生協議会編「ポジティブリストの添加剤要覧」(2001年5月)に記載されている各種添加剤が挙げられ、より具体的には、安定剤(金属化合物、エポキシ化合物、窒素化合物、燐化合物、硫黄化合物、フェノール系化合物、UV吸収剤等)、界面活性剤(非イオン性、陰イオン性、両イオン性、陽イオン性等)、滑剤(パラフィン、ワックス等の脂肪族炭化水素、炭素数8〜22程度の高級脂肪酸、炭素数8〜18程度の脂肪族アルコール、ポリグリコール、炭素数4〜22程度の高級脂肪酸と炭素数4〜18程度の脂肪族1価アルコールとのエステル、炭素数8〜22程度の高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン誘導体等)、充填剤(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩等)、発泡剤、発泡助剤、ポリマー添加材、本発明に係るアミド化合物以外の有機造核剤等の各種添加剤が例示される。
前記有機造核剤として、例えば、従来公知のβ晶ポリプロピレン用核剤が例示される。
具体的には、下記一般式(6)
Figure 0005861713
[式中、R14は水素原子、炭素数1〜12程度の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基又はカルボキシル基を表し、aは0〜12程度の整数を表し、Aは下記の一般式(g)、一般式(h)、一般式(i)、一般式(j)又は一般式(k)で表される基を表す
Figure 0005861713
(式(g)〜(k)中、R15は、水素原子、炭素数1〜12程度の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はハロゲン原子を表し、xは1〜4程度の整数、yは1〜6程度の整数を表す。尚、x又はyが2以上の整数の場合、2以上のR15は同一又は異なってもよい)。]
で表される化合物、有機二塩基酸のカルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩(例えばピメリン酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム等)、12−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウム等、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタリンスルホン酸ナトリウム等の芳香族スルホン酸化合物、ジカルボン酸ジエステル類又はトリカルボン酸トリエステル類、テトラオキサスピロ化合物類、イミドカルボン酸誘導体、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、キナクリドン、キナクリドンキノン等のキナクリドン系等の顔料、前記有機二塩基酸と周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物又は塩とからなる二成分系等が例示される。
<ポリプロピレン系樹脂成形体及びその二次加工成形品の製造方法>
本発明のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法は、アミド化合物の結晶が溶融状態のポリプロピレン系樹脂中に存在する溶融ポリプロピレン系樹脂組成物を成形する工程を具備し、その溶融ポリプロピレン系樹脂中に本発明に係るアミド化合物と脂肪酸カルシウム塩が共存した状態で成形することを特徴とする。更に、得られたポリプロピレン系樹脂成形体を当該技術分野で採用されている方法にて成形加工することにより、二次加工成形品が得られる。例えば、当該成形体を原反シートとして用いた場合、その原反シートを熱成形(例えば、一軸延伸、又は同時若しくは逐次二軸延伸)に供することにより、二次加工成形品が得られる。
以下、推奨されるポリプロピレン系樹脂成形体及びその二次加工成形品の製造条件について、製造工程に沿って詳しく説明する。
まずポリプロピレン系樹脂成形体の製法方法としては、通常次の手順(工程)が採用される。
ポリプロピレン系樹脂(粉末又はフレーク)、アミド化合物及び脂肪酸カルシウム塩、並びに必要に応じて他の添加剤を混合して、ドライブレンド物を得る。混合方法には特に制限はなく、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、スーパーミキサー、タンブラー型等の公知の混合機を用いて混合する。混合温度は、通常室温〜100℃程度であり、混合時間は、装置の回転速度等にもよるが、一般に1〜60分間程度である。その後、当該技術分野で採用されている一軸あるいは二軸スクリュー押出機、タンデム型混練押出機等によって、そのドライブレンド物を混練温度180〜330℃程度、好ましくは250〜320℃程度で混練し、ペレット化する。このペレットは、ポリプロピレン系樹脂組成物に該当する。
ここで、ポリプロピレン系樹脂成形体の剛性、耐熱性等の観点から、重要なことは前記ポリプロピレン系樹脂組成物中のアミド化合物が針状結晶であることである。針状結晶のアミド化合物を含むポリプロピレン系樹脂組成物を得る方法としては、次の様な方法が例示されるが、針状結晶の形状をコントロールできる点で、(II)の方法が好ましい。また、その際に脂肪酸カルシウム塩を共存させることが、針状結晶の形状をコントロールする面でより効果的である。
(I) 予め針状結晶のアミド化合物を添加し、該アミド化合物が溶解しない条件で混練する方法。
(II) 添加したアミド化合物をいったん溶融ポリプロピレン系樹脂中に溶解し、その後冷却してペレット化する際に針状結晶としてポリプロピレン系樹脂中に析出させる方法、即ち、ポリプロピレン系樹脂及びアミド化合物を含むポリプロピレン系樹脂組成物を加熱し、溶融したポリプロピレン系樹脂中にアミド化合物を溶解させる工程、及び前記工程で得られた溶融状態のポリプロピレン系樹脂組成物を冷却して、アミド化合物の結晶を析出させる工程による方法。
本発明のアミド化合物の配合量としては、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.001〜2重量部程度が推奨され、より好ましくは、0.01〜1重量部程度である。当該推奨範囲とすることにより、アミド化合物による効果(例えば核剤効果等)が優位に発揮されることが認められる。
また、アミド化合物をβ晶核剤として使用した場合には、その配合量を0.001重量部以上に設定することにより、β晶含量をより多くすることが可能となる。2重量部以下に設定することにより、例えば延伸等の二次加工時の破断を抑制することができるという効用も認められる。
本発明の脂肪酸カルシウム塩の配合量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、好ましくは0.001〜0.5重量部程度、より好ましくは0.01〜0.3重量部程度である。当該推奨範囲とすることにより、溶融ポリプロピレン系樹脂中の前記アミド化合物の結晶の巨大化を優位に抑制する効果が得られる傾向が認められる。なお、脂肪酸カルシウム塩の配合量を0.5重量部以下に設定することは、経済的観点から好ましい。
また、本発明に係る脂肪酸カルシウム塩は、比較的少量の添加で効果が得られる傾向があり、例えば抽出溶媒への溶出量が少ないことから、ポリプロピレン系樹脂成形体の品質を損なう可能性が小さいと言える。
<ポリプロピレン系樹脂成形体>
本発明に係るポリプロピレン系樹脂成形体は、上記ポリプロピレン系樹脂組成物から、当該技術分野で採用されている射出成形機、Tダイ等が装着された押出成形機、円形ダイが装着されたインフレーション成形機等の公知の成形機を用いて成形する工程を経て製造される。
また、本発明に係るポリプロピレン系樹脂成形体は、上記ポリプロピレン系樹脂組成物をペレット化せず、直接成形機で製造することもできる。例えば、ポリプロピレン系樹脂(粉末又はフレーク)とアミド化合物及び脂肪酸カルシウム塩や必要に応じて他の添加剤を高濃度に配合した高濃度添加剤配合物(例えば、上記添加剤を高濃度にポリプロピレン系樹脂に配合したマスターバッチ等)をポリプロピレン系樹脂(粉末又はフレーク)や必要に応じて他の添加剤を配合した未混練原料を、ペレット化工程を経ることなく、直接、射出成形機や押出機に投入して溶融混練し、ノズルやTダイから押し出すことにより製造することもできる。
この場合も、ポリプロピレン系樹脂成形体を成形する時点におけるアミド化合物が針状結晶であることが重要である。
本発明に係るアミド化合物の針状結晶が溶融状態のポリプロピレン系樹脂中に存在する溶融ポリプロピレン系樹脂組成物を成形する工程において、当該溶融ポリプロピレン系樹脂組成物とする為の溶融温度の範囲は、好ましくは(T+10℃)〜(T−10℃)程度の温度範囲、より好ましくは(T+15℃)〜(T−15℃)程度、特に(T+20℃)〜(T−15℃)程度が推奨される。
ここで、Tは、「ポリプロピレン系樹脂の融点」を表し、Tは、ポリプロピレン系樹脂組成物(目的とするポリプロピレン系樹脂成形体の組成と一致している組成物)において存在する当該アミド化合物が完全に溶解する温度を「アミド化合物の溶解温度」として表す。なお、当該温度範囲の関係には、(T+10℃)<(T−10℃)、(T+15℃)<(T−15℃)、或いは(T+20℃)<(T−15℃)が成立する。
より具体的には、上記成形工程における溶融温度(樹脂温度)としては、アミド化合物の種類及び配合量にもよるが、190〜260℃程度、好ましくは200〜240℃程度、更に好ましくは200〜230℃程度の範囲である。溶融温度(樹脂温度)を190℃以上に設定することによって、未溶融樹脂の発生が抑制され、260℃以下に設定することによって、ポリプロピレン系樹脂成形体の剛性、耐熱性等の物性を優位に向上させる傾向が認められる。
また、溶融温度を推奨範囲とすることにより、二次加工成形品へ良影響を及ぼす場合もある。例えば、二次加工時における延伸工程での破断の発生を優位に抑制することができ、多孔性延伸フィルムを成形した場合には、透気性の低下を優位に抑制することができる。
射出成形等の金型温度(結晶化温度)としては、通常30〜90℃程度、好ましくは40〜80℃程度の範囲が推奨される。当該推奨範囲において、得られた成形品の剛性、耐熱性が優位に向上する傾向が認められる。また生産性の面でも有利である。ポリプロピレン系成形体(射出成形品)のβ晶含量の観点から、同様の金型温度の範囲が推奨される。
また、押出シート成形の場合のチルロールの表面温度(結晶化温度)としては、通常50〜120℃程度、好ましくは70〜110℃程度が推奨される。ポリプロピレン系成形体(原反シート)のβ晶含量をできる限り高くしたい場合、110〜130℃程度が好ましく、特に115〜125℃程度が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂成形体のβ晶含量としては、本発明の効果を損なわない範囲から選択されるが、通常、射出成形品の場合は、20〜70%程度とすることが好ましく、延伸フィルム等の原反シートとして用いる場合には、60〜90%程度、特に70〜85%程度とすることが好ましい。
尚、β晶含量は、ポリプロピレン系樹脂成形体を適当な大きさに切り取ったサンプルを、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minでDSC装置(パーキンエルマー社製「ダイヤモンドDSC」)により示差走査熱量分析を行い、このとき得られるDSCサーモグラムのα晶とβ晶の融解熱量から以下の式に従い求めた値である。
β晶含量(%)=100×Hβ/(Hα+Hβ
[式中、Hβはβ晶の融解熱量を示し、Hαはα晶の融解熱量を示す。]。
延伸フィルム等の原反シートとして用いる場合の厚さは、最終製品に応じて適宜選択すればよく、通常、50〜2000μm程度、好ましくは100〜1000μm程度とすることが好ましいが、この範囲に限定されない。また、原反シートの幅も、最終製品に応じて適宜選択すればよく、通常、100〜2000mm程度、好ましくは100〜1000mm程度とすることが好ましいが、特にこの範囲に限定されることはない。
<二次加工成形品>
本発明に係る二次加工方法としては、真空成形、圧空成形等の熱成形、一軸延伸、同時又は逐次二軸延伸等の延伸成形等の通常の方法が用いられる。次に、その中で、逐次二軸延伸による多孔性フィルム製造方法について更に詳しく説明する。
(縦延伸)
上記ポリプロピレン系樹脂成形体(原反シート)は、通常、Tダイ等が装着された押出成形機を用いて溶融混練し、Tダイから押し出された溶融シートを所定温度のチルロール上で冷却固化して得られる。
そして、そのポリプロピレン系樹脂成形体(原反シート)は、次に縦延伸ロールへと連続的に導かれ、ロールの回転速度差を利用して縦方向に延伸される。また、かかる縦延伸は複数の延伸ロールを用いて数回に分けて行ってもよい。そのときの延伸温度、即ちロール表面温度は60〜140℃程度、好ましくは70〜130℃程度、更に好ましくは70〜100℃程度、縦総延伸倍率は3〜8倍程度、好ましくは3〜5倍程度が望ましい。延伸温度を60℃以上に設定することで、均一な延伸を行うことができ、140℃以下に設定することで、例えば、多孔性フィルムを成形した場合には、透気性の低下を抑制できる。
(横延伸)
続いて、縦延伸シート又はアニーリング処理された縦延伸シートは、横延伸装置に導かれ、延伸温度120〜155℃程度、好ましくは125〜150℃程度、延伸倍率3〜10倍程度、好ましくは5〜8倍程度、横延伸歪み速度10〜300%/sec程度、好ましくは20〜200%/sec程度、より好ましくは40〜150%/sec程度の条件で横延伸される。
ここで、横延伸歪み速度は、縦延伸シートの幅Dtに対する横延伸速度Vtの比Vt/Dt(又は100Vt%/Dt)として求められる速度である。
延伸温度を120℃以上に設定することによって、延伸工程における破断を抑制することができ、155℃以下に設定することによって、多孔性フィルムを成形した場合には、透気性の低下を抑制できる。また、延伸倍率が4倍以上に設定することで、生産性が損なわないという効果が得られ、10倍以下に設定することにより、横延伸工程において破断を抑制することができる。
かくして得られた本発明に係るポリプロピレン系樹脂成形体は、剛性、耐熱性、耐衝撃性に優れており、いずれも、従来公知のポリプロピレン系樹脂成形体が使用されてきた分野と同様の分野において利用することができる。特に、衝撃強度が高いので、自動車部品、機械光学部品、化学工業部品、家電部品等の成形品として使用することができる。更に、得られた成形体は二次加工性に優れており、延伸成形、真空成形、圧空成形等の従来公知の二次加工成形に供することが可能であり、従来公知の二次加工成形品の分野において利用することができる。中でも、延伸成形により延伸フィルムは優れた機械的特性だけでなく、多孔性フィルム分野における透気性、空孔性にも優れており、従来公知の多孔性フィルムの用途で有用に利用することができる。
また、二次加工後の多孔性フィルムは、同様に、従来の多孔性フィルムが使用されてきたと同様の分野において利用できる。
具体的には、簡易雨具、簡易作業服等の透湿防水衣料、衛生製品(例えば、紙おむつ(使い捨ておむつ、パンツ型おむつ等)、生理用ナプキン等の生理用品、失禁パッド等の吸収性物品、ベッドシーツ等の衛生用品等)、防水シート、壁紙等の建築材料、除湿剤、脱酸素剤、ケミカルカイロ等の各種包装材料、合成紙、照明や液晶等の反射板、濾過膜や分離膜、電池や電気分解等に使われる電池用セパレーター、医療材料及び農業用マルチシート等の分野で利用することができる。
[実施例]
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、ポリプロピレン系樹脂成形体のβ晶含量、剛性(曲げ弾性率)、耐熱性(熱変形温度)、耐衝撃性(デュポン衝撃強度)、結晶成長速度の抑制効果の評価方法、押出時のスクリーンメッシュの状態、ポリプロピレン系樹脂成形体(原反シート)の外観、延伸フィルムのガーレ透気度、及び空孔率は、以下の方法により求めた。
(1)β晶含量:
ポリプロピレン系樹脂成形体(射出成形品,原反シート)から切り取ったサンプルを窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minでDSC装置(パーキンエルマー社製「ダイヤモンドDSC」)により示差走査熱量分析を行い、このとき得られるDSCサーモグラムのα晶とβ晶の融解熱量から以下の式に従い求めた。
β晶含量(%)=100×Hβ/(Hα+Hβ
[式中、Hβはβ晶の融解熱量を示し、Hαはα晶の融解熱量を示す。]。
(2)剛性:曲げ弾性率
ASTM D790に準拠して、25℃にてポリプロピレン系樹脂成形体を用いて測定した。
(3)耐熱性:熱変形温度(HDT)
JIS K 7207に準拠して、ポリプロピレン系樹脂成形体の荷重4.6kgf/cmにおける熱変形温度を測定した。熱変形温度が高いほど、耐熱性に優れていることを示す。
(4)耐衝撃性:デュポン衝撃強度
デュポン式衝撃試験機(安田精機社製)を用い、JIS K 5400(1990)に準じた方法でデュポン衝撃値を測定した。評価試料には、2mm厚み射出成形品のポリプロピレン系樹脂成形体を使用し、落下重錘300g、撃芯先端寸法1/4インチの条件で20回実施し、それらの平均値をデュポン衝撃値(J)とした。その数値が大きいほど耐衝撃性に優れていることを示す。
(5)結晶成長速度の抑制効果の評価方法:
230℃にセットしたホットステージ(METTLER TOLEDO株式会社製、Hot Stage(FP82HT型))に、ポリプロピレン系樹脂成形体及びスペーサーとしてテフロン(登録商標)シート(100μm厚)をカバーガラス(松浪硝子工業株式会社製/18mm×18mm/No.1[0.12−0.17mm])で挟み込み、1分間加熱してポリプロピレン系樹脂成形体を溶融させた。1分間経過直後に、ピンセットでガラスの上を押さえて、ポリプロピレン系樹脂成形体が均一な薄膜(100μm)となるように調整した。ホットステージ上で1時間静置させ、光学顕微鏡(Nikon社製、偏光顕微鏡ECLIPSE LV100POL(接眼レンズ:10倍、対物レンズ:50倍))にて、溶融ポリプロピレン系樹脂中に存在するアミド化合物の結晶の最大の長さを目視で判断して評価した。更に、ホットステージ上で1時間静置(合計2時間静置)させた溶融ポリプロピレン系樹脂中のアミド化合物の結晶の最大の長さを目視で判断して評価した。
評価方法としては、光学顕微鏡の視野が縦170μm、横130μmの四角形の範囲内において、溶融温度と同じ温度にセットしたホットステージ上で1時間及び2時間それぞれ静置させ、溶融ポリプロピレン系樹脂中のアミド化合物の結晶の最大の長さが10μm以上の結晶の個数と、前記1分間後の10μm以上の結晶の個数との差により、結晶成長速度の抑制の効果を評価した。
(6)押出時のスクリーンメッシュの状態
連続押出成形を実施した実施例及び比較例について、スクリーンメッシュ(金網;500mesh)の状態を下記の判定基準で目視により判断して評価した。
○;目詰まりが殆ど認められない。
△;僅かながら目詰まりが認められる。
×;明らかに目詰まりが認められる。
(7)外観
原反シートの外観を下記の判定基準で目視により判断して評価した。
○;外観が良好である。
△;僅かながら淡黄色の着色が知覚できる。
×;着色、フィッシュアイ、白点、クレーター等、外観に異常が認められる。
(8)ガーレ透気度:
Gurley社製のdensometer4118を用いて、JIS P−8117(1998)に準拠して測定した。この値が小さいほど透気性に優れていることを示す。
(9)空孔率:
延伸フィルムを正方形状に切り取り、一辺の長さL(cm)、重量W(g)、厚みD(cm)を測定し、以下の式より求めた。
空孔率(%)=100−100(W/ρ)/(L×D)
[式中、ρは、延伸前の原反シートの密度を示す]。
<実施例1>
ポリプロピレン系樹脂としてポリプロピレンホモポリマー(MFR=10g/10分(荷重2160g、温度230℃),融点;168℃)100重量部、アミド化合物としてN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド(商品名;エヌジェスターNU−100,新日本理化株式会社製)0.3重量部、及び脂肪酸カルシウム塩としてベヘン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「CS−7」)0.05重量部、並びにポリオレフィン用改質剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャルティーケミカルズ社製、商品名「IRGANOX1010」)0.05重量部、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(チバスペシャルティーケミカルズ社製、商品名「IRGAFOS168」)0.10重量部、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸と(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトとの1:2(重量比)ブレンド(商品名、「サイアノックス2777」、サイテック・インダストリーズ社製)0.1重量部をドライブレンドした。そのドライブレンド物を二軸押出機((株)テクノベル社製L/D=45、スクリュー径15mm)にて混練温度(樹脂温度)300℃で溶融混練して、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドを溶解させ、押し出されたストランドを水冷し、ペレタイザーでカッティングして、ペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物を調製した。当該ストランドは透明であり、未溶解物は認められなかった。
次に、得られたポリプロピレン系樹脂組成物を射出温度200℃、金型温度40℃の条件下で射出して、本発明のポリプロピレン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率、熱変形温度及びデュポン衝撃強度を測定し、それらの結果を表1にまとめた。
<実施例2>
射出温度を240℃に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<実施例3>
射出成形における金型温度を80℃に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<実施例4>
ベヘン酸カルシウムの配合量を0.1重量部に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<実施例5>
ベヘン酸カルシウムの配合量を0.03重量部に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体及びポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<実施例6>
射出成形における金型温度を80℃に代えた以外は、実施例5と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<実施例7>
N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドの配合量を0.05重量部に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<実施例8>
ベヘン酸カルシウムからモンタン酸カルシウムに代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<実施例9>
アミド化合物として3,9-ビス[4-(N-シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン0.2重量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<実施例10>
ポリプロピレン系樹脂としてポリプロピレンホモポリマー(MFR=30g/10分(荷重2160g、温度230℃),融点;168℃)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<実施例11>
ポリプロピレン系樹脂としてポリプロピレンホモポリマー(MFR=2g/10分(荷重2160g、温度230℃),融点;168℃)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<実施例12>
ポリプロピレン系樹脂としてポリプロピレンブロックコポリマー(MFR=10g/10分(荷重2160g、温度230℃),融点;168℃)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<比較例1>
脂肪酸カルシウム塩をベヘン酸カルシウムからステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「Ca−St CP」)に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<比較例2>
脂肪酸カルシウム塩をベヘン酸カルシウムからステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「Ca−St CP」)に代えた以外は、実施例2と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<比較例3>
脂肪酸カルシウム塩をベヘン酸カルシウムからステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「Ca−St CP」)に代えた以外は、実施例3と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<比較例4>
脂肪酸カルシウム塩をベヘン酸カルシウムからステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「Ca−St CP」)に代えた以外は、実施例9と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<比較例5>
脂肪酸カルシウム塩をベヘン酸カルシウムからステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「Ca−St CP」)に代えた以外は、実施例10と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<比較例6>
脂肪酸カルシウム塩をベヘン酸カルシウムからステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「Ca−St CP」)に代えた以外は、実施例11と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
<比較例7>
脂肪酸カルシウム塩をベヘン酸カルシウムからステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「Ca−St CP」)に代えた以外は、実施例12と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表1に示した。
Figure 0005861713
<実施例13>
実施例1で得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、Tダイ一軸押出機((株)テクノベル社製、L/D=28、スクリュー径25mm)を用いて、二軸押出機にて調製したペレットを200℃の樹脂温度で溶融混練してスクリュー回転数20rpmにて溶融押出し、表面温度120℃のチルロールで冷却固化し、厚さ300μmのポリプロピレン系樹脂成形体(押出シート)を得た。押出時のスクリーンメッシュの状態、外観、β晶含量及びポリプロピレン系樹脂成形体の結晶成長速度の抑制効果について表2にまとめた。また図1及び図2に、ポリプロピレン系樹脂成形体の結晶成長速度の抑制効果の評価(1時間、2時間加熱静置)時の顕微鏡写真を示す。
<実施例14>
Tダイ押出温度を240℃に代えた以外は、実施例13と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体(押出シート)を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表2に示した。
<実施例15>
ベヘン酸カルシウムの配合量を0.1重量部に代えた以外は、実施例13と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体(押出シート)を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表2に示した。
<実施例16>
ベヘン酸カルシウムの配合量を0.03重量部に代えた以外は、実施例13と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体(押出シート)を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表2に示した。
<実施例17>
N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドの配合量を0.05重量部に代えた以外は、実施例13と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体(押出シート)を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表2に示した。
<実施例18>
ベヘン酸カルシウムからモンタン酸カルシウムに代えた以外は、実施例13と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体(押出シート)を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表2に示した。
<実施例19>
アミド系化合物として3,9-ビス[4-(N-シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン0.2重量部を用いた以外は、実施例13と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体(押出シート)を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表2に示した。
<実施例20>
ポリプロピレン系樹脂としてポリプロピレンホモポリマー(MFR=2g/10分(荷重2160g、温度230℃),融点;168℃)を用いた以外は、実施例13と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体(押出シート)を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表2に示した。
<実施例21>
ポリプロピレン系樹脂としてポリプロピレンブロックコポリマー(MFR=10g/10分(荷重2160g、温度230℃),融点;168℃)を用いた以外は、実施例13と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体(押出シート)を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表2に示した。
<比較例8>
脂肪酸カルシウム塩をベヘン酸カルシウムからステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「Ca−St CP」)に代えた以外は、実施例13と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体(押出シート)を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表2に示した。図3及び図4に、ポリプロピレン系樹脂成形体の結晶成長速度の抑制効果の評価(1時間、2時間加熱静置)時の顕微鏡写真を示す。
<比較例9>
脂肪酸カルシウム塩をベヘン酸カルシウムからステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「Ca−St CP」)に代えた以外は、実施例14と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体(押出シート)を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表2に示した。
<比較例10>
脂肪酸カルシウム塩をベヘン酸カルシウムからステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「Ca−St CP」)に代えた以外は、実施例19と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体(押出原反シート)を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表2に示した。
<比較例11>
脂肪酸カルシウム塩をベヘン酸カルシウムからステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「Ca−St CP」)に代えた以外は、実施例20と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体(押出シート)を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表2に示した。
<比較例12>
脂肪酸カルシウム塩をベヘン酸カルシウムからステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「Ca−St CP」)に代えた以外は、実施例21と同様の操作を行って、ポリプロピレン系樹脂成形体(押出シート)を得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表2に示した。
Figure 0005861713
<実施例22>
実施例13で得られた押出シート(原反シート)を二軸延伸機(東洋精機株式会社製)を用いて、縦方向に125℃、53%/secの延伸速度で4倍延伸を行い、連続して横方向に125℃、53%/secの延伸速度で3倍延伸を行い、白色不透明な多孔性ポリプロピレンフィルム(本発明の二次加工成形品)を得た。得られたフィルムの厚さは、25〜35μmであった。表3に組成、製造条件、及び評価結果をまとめた。
<実施例23>
Tダイ押出温度を240℃に代えた以外は、実施例22と同様の操作を行って、白色不透明な多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表3に示した。
<実施例24>
アミド系化合物として3,9-ビス[4-(N-シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン0.2重量部を用いた以外は、実施例22と同様の操作を行って、白色不透明な多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表3に示した。
<比較例13>
脂肪酸カルシウム塩をベヘン酸カルシウムからステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「Ca−St CP」)に代えた以外は、実施例22と同様の操作を行って、白色不透明な多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表3に示した。
<比較例14>
脂肪酸カルシウム塩をベヘン酸カルシウムからステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「Ca−St CP」)に代えた以外は、実施例23と同様の操作を行って、白色不透明な多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表3に示した。
<比較例15>
脂肪酸カルシウム塩をベヘン酸カルシウムからステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「Ca−St CP」)に代えた以外は、実施例24と同様の操作を行って、白色不透明な多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。組成、製造条件、及び得られた結果をまとめて表3に示した。
Figure 0005861713
なお、表に示す略号は、以下の通りである。
h−PP(2):ポリプロピレンホモポリマー(MFR=2g/10分,融点;168℃)
h−PP(10):ポリプロピレンホモポリマー(MFR=10g/10分,融点;168℃)
h−PP(30):ポリプロピレンホモポリマー(MFR=30g/10分,融点;168℃)
b−PP(10):エチレンプロピレンブロックコポリマー(MFR=10g/10分,融点;168℃)
A:N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミド
B:3,9-ビス[4-(N-シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン
I:ベヘン酸カルシウム
II:モンタン酸カルシウム
III:ステアリン酸カルシウム
本発明により、溶融ポリプロピレン中のアミド化合物の結晶成長速度を制御することができる。その結果、例えば、得られた成形品の剛性、耐熱性だけでなく、耐衝撃性の向上も可能となる。また、押出時のフィルター目詰まりによる押出機運転時のトラブルが抑制され、長期安定生産が可能となり、生産性の低下が大幅に抑制される。得られた押出シートの中でのフィッシュアイ発生等の問題が解消され、得られたシートの品質低下の懸念が著しく縮小される。更に、二次加工成形品である多孔性フィルム等の延伸フィルムや熱成形品を生産する際の延伸等の二次加工性も大きく改善することが可能となることから、工業的に効率良く製造することに寄与することができる。

Claims (19)

  1. 下記一般式(1)で表される少なくとも1種のアミド化合物の針状結晶が溶融状態のポリプロピレン系樹脂中に存在する溶融ポリプロピレン系樹脂組成物を成形する工程を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法であって、
    前記溶融ポリプロピレン系樹脂組成物中に、前記アミド化合物と、炭素数22〜32の飽和又は不飽和の脂肪酸カルシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸カルシウム塩が共存していることを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
    一般式(1):
    Figure 0005861713
    [式(1)中、Rは、炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ炭素数3〜18のシクロアルキル基、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す
    Figure 0005861713
    (式(a)〜(d)中、Rは水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、Rは炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し、Rは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す)。]
  2. 脂肪酸カルシウム塩が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.001〜0.5重量部含有する請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
  3. アミド化合物の針状結晶を含有するポリプロピレン系樹脂組成物が、(i)ポリプロピレン系樹脂及びアミド化合物を含むポリプロピレン系樹脂組成物を加熱し、溶融したポリプロピレン系樹脂中にアミド化合物を溶解させる工程、及び(ii)前記工程(i)で得られた溶融状態のポリプロピレン系樹脂組成物を冷却して、アミド化合物の針状結晶を析出させる工程を具備する製造方法で得られる組成物であり、
    前記ポリプロピレン系樹脂組成物を成形する工程における溶融温度の範囲が、T+10℃〜T−10℃(Tは、ポリプロピレン系樹脂の融点を表し、Tは、ポリプロピレン系樹脂にアミド化合物が溶解する温度を表す)の温度範囲であり、かつ、
    前記工程(i)において、脂肪酸カルシウム塩をポリプロピレン系樹脂組成物に配合することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
  4. 一般式(1)において、Rが炭素数1〜12の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜10の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R及びRが、同一又は異なって、それぞれ炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す請求項1〜3の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
  5. 一般式(1)において、Rが炭素数4〜8の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜8の飽和脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸残基であり、R及びRが、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基又はフェニル基である請求項1〜4の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
  6. 一般式(1)において、Rが、一般式(e)、又は一般式(f)
    Figure 0005861713
    で表される芳香族ジカルボン酸残基であり、R及びRが、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である請求項1〜5の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
  7. アミド化合物が、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドである請求項1〜6の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
  8. 前記溶融ポリプロピレン系樹脂中でアミド化合物と共存する脂肪酸カルシウム塩が、ベヘン酸カルシウムである請求項1〜7の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
  9. ポリプロピレン系樹脂の230℃、荷重2160gにおけるメルトフローレートが0.5〜40.0g/10分である請求項1〜8の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
  10. 溶融ポリプロピレン系樹脂中に存在する下記一般式(1)で表される少なくとも1種のアミド化合物の針状結晶の巨大化を抑制する方法であって、
    溶融状態のポリプロピレン系樹脂組成物中で、アミド化合物と、炭素数22〜32の飽和及び不飽和の脂肪酸カルシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸カルシウム塩を共存状態で存在させることを特徴とする方法。
    一般式(1):
    Figure 0005861713
    [式(1)中、Rは、炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基又は炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ炭素数3〜18のシクロアルキル基、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す
    Figure 0005861713
    (式(a)〜(d)において、Rは水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、Rは炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し、Rは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す)]
  11. 一般式(1)において、Rが、炭素数1〜12の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜10の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R及びRが、同一又は異なって、それぞれ炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す請求項10に記載の方法。
  12. 一般式(1)において、Rが炭素数4〜8の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6〜8の飽和脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6〜20の芳香族ジカルボン酸残基であり、R及びRが、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基又はフェニル基である請求項10又は11に記載の方法。
  13. 一般式(1)において、Rが一般式(e)、又は一般式(f)
    Figure 0005861713
    で表される芳香族ジカルボン酸残基であり、R及びRが、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である請求項10〜11の何れかに記載の方法。
  14. アミド化合物が、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドである請求項10〜13の何れかに記載の方法。
  15. 脂肪酸カルシウム塩が、ベヘン酸カルシウムである請求項10〜14の何れかに記載の方法。
  16. (i)ポリプロピレン系樹脂、下記一般式(1)で表される少なくとも1種のアミド化合物及び炭素数22〜32の飽和又は不飽和の脂肪酸カルシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸カルシウム塩を含むポリプロピレン系樹脂組成物を加熱し、溶融したポリプロピレン系樹脂中にアミド化合物を溶解させる工程、
    (ii)前記工程(i)で得られた溶融状態のポリプロピレン系樹脂組成物を冷却して、アミド化合物の針状結晶を析出させる工程、及び
    (iii)前記工程(ii)で得られたアミド化合物の針状結晶を析出させたポリプロピレン系樹脂組成物を、T+10℃〜T−10℃(Tは、ポリプロピレン系樹脂の融点を表し、Tは、ポリプロピレン系樹脂にアミド化合物が溶解する温度を表す)の温度範囲で溶融させ、成形する工程
    を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法により得られる、ポリプロピレン系樹脂成形体であって、
    ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、アミド化合物を0.001〜2重量部、脂肪酸カルシウム塩を0.001〜0.5重量部含有するポリプロピレン系樹脂成形体。
    一般式(1):
    Figure 0005861713
    [式(1)中、Rは一般式(e)、又は一般式(f)
    Figure 0005861713
    で表される芳香族ジカルボン酸残基を表し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基を表す]
  17. アミド化合物が、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドである請求項16に記載のポリプロピレン系樹脂成形体。
  18. 脂肪酸カルシウム塩が、ベヘン酸カルシウムである請求項16又は17に記載のポリプロピレン系樹脂成形体。
  19. 請求項16〜18の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体を、更に成形することによって得られる二次加工成形品。
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