JP2006086355A - 非水電解液二次電源 - Google Patents

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Abstract

【課題】電解液の発火・引火の危険性を大幅に低減した非水電解液二次電源を提供する。
【解決手段】多孔性炭素を含む正極と、リチウムイオンを吸蔵及び脱離できる炭素材料を含む負極と、リチウムイオンを含む非水電解液とを備えた非水電解液二次電源において、前記非水電解液の限界酸素指数が19.5体積%以上であることを特徴とする非水電解液二次電源である。ここで、前記非水電解液は、分子中にリン及び/又は窒素を有する化合物の少なくとも1種を含有するのが好ましく、リン−窒素間二重結合を有する化合物を含有するのが更に好ましく、ホスファゼン化合物を含有するの特に好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解液二次電源、所謂、ハイブリッドキャパシタに関し、特に電解液の発火・引火の危険性が大幅に低減された非水電解液二次電源に関するものである。
電気二重層キャパシタは、電極と電解質との間に形成される電気二重層を利用したコンデンサであり、電極表面において電解質から電気的にイオンを吸着・脱着するサイクルが充放電サイクルである点で、物質移動を伴う酸化還元反応のサイクルが充放電サイクルである電池とは異なる。このため、電気二重層キャパシタは、電池と比較して瞬間充放電特性に優れることに加え、化学反応を伴わないため、充放電を繰り返しても瞬間充放電特性が殆ど劣化しない等の多くの利点を有しており、メモリーバックアップ用等の小容量タイプから、電気自動車のパワーアシスト用等の中容量タイプ及び電力貯蔵用蓄電池の代替等の大容量タイプまで幅広く検討されている。
上記電気二重層キャパシタの電極と電解質との接触界面では、極めて短い距離を隔てて正・負の電荷が対向して配列し、電気二重層を形成している。従って、電解質は、電気二重層を形成するためのイオン源としての役割を担うため、電極と同様に、電気二重層キャパシタの基本特性を左右する重要な物質である。該電解質としては、従来、水系電解液及び非水電解液等が知られているが、水系電解液を用いた場合、キャパシタの耐電圧は1.2Vであり、非水電解液を使用した場合でも、キャパシタの耐電圧は2.5〜3.3Vである。ここで、電気二重層キャパシタのエネルギーは、耐電圧の2乗に比例するため、エネルギー密度の観点から、非水電解液が有利であるが、非水電解液を用いた電気二重層キャパシタでも、鉛蓄電池等の二次電池と比較してエネルギー密度が1/10以下であり、更にエネルギー密度を向上させる必要がある。この課題に対して、電気二重層キャパシタのエネルギー密度を向上させるには、キャパシタの耐電圧を向上させることが効果的であるが、電圧を高くすると、電解液の分解が起こり、キャパシタの寿命が短くなるという問題が発生する。
これに対して、活性炭等の多孔性炭素を含む正極と、黒鉛系炭素材料等のリチウムイオンを吸蔵及び脱離できる炭素材料を含む負極と、リチウムイオン及び非プロトン性有機溶媒を含む非水電解液とを備えた非水電解液二次電源(所謂、ハイブリッドキャパシタ)は、正極及び負極が活性炭等の多孔性炭素を含む従来の電気二重層キャパシタよりも高電圧とすることができ、電気二重層キャパシタよりもエネルギー密度の面で優れる(特許文献1参照)。
特開2001−338679号公報
しかしながら、上記非水電解液二次電源の電解液に用いられる非プロトン性有機溶媒は、引火点が低いため、例えば、非水電解液二次電源が発熱等により発火した際に、引火する危険性が高い。また、該非プロトン性有機溶媒は、非水電解液二次電源の発熱につれ、気化・分解してガスを発生したり、発生したガス及び熱により非水電解液二次電源の破裂・発火を引き起こしたりする危険性も高い。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、電解液の発火・引火の危険性を大幅に低減した非水電解液二次電源を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、分子中にリン及び/又は窒素を有する化合物を非水電解液二次電源の電解液に添加して、電解液の限界酸素指数を19.5体積%以上にすることにより、非水電解液二次電源の発火・引火の危険性を大幅に低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の非水電解液二次電源は、多孔性炭素を含む正極と、リチウムイオンを吸蔵及び脱離できる炭素材料を含む負極と、リチウムイオンを含む非水電解液とを備えた非水電解液二次電源において、前記非水電解液の限界酸素指数が19.5体積%以上であることを特徴とする。
本発明の非水電解液二次電源の好適例においては、前記非水電解液が分子中にリン及び/又は窒素を有する化合物の少なくとも1種を含有する。該分子中にリン及び/又は窒素を有する化合物の中でも、分子中にリン及び窒素を有する化合物が好ましい。また、該分子中にリン及び窒素を有する化合物の中でも、リン−窒素間二重結合を有する化合物が好ましく、ホスファゼン化合物が特に好ましい。
前記ホスファゼン化合物としては、下記式(I):
Figure 2006086355

[式中、R1は、それぞれ独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Y1は、それぞれ独立して2価の連結基、2価の元素又は単結合を表し;Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、硫黄、セレン、テルル及びポロニウムからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基を表す]で表される鎖状ホスファゼン化合物、及び下記式(II):
(NPR2 2)n ・・・ (II)
[式中、R2はそれぞれ独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;nは3〜15を表す]で表される環状ホスファゼン化合物が好ましい。
また、前記非水電解液中の前記分子中にリン及び/又は窒素を有する化合物の含有量は、0.5〜20質量%の範囲が好ましい。
本発明の非水電解液二次電源の他の好適例においては、前記非水電解液が更に非プロトン性有機溶媒を含有する。
本発明の非水電解液二次電源の他の好適例においては、前記正極に含まれる多孔性炭素が活性炭である。
本発明の非水電解液二次電源の他の好適例においては、前記負極に含まれるリチウムイオンを吸蔵及び脱離できる炭素材料は、X線回折法による[002]面の平均面間隔が0.335〜0.410nmである。
また、本発明の非水電解液二次電源は、充電電圧が2.5V以上であるのが好ましい。
本発明によれば、電解液の限界酸素指数を19.5体積%以上とすることにより、電解液の発火・引火の危険性が大幅に低減された非水電解液二次電源を提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の非水電解液二次電源は、多孔性炭素を含む正極と、リチウムイオンを吸蔵及び脱離できる炭素材料を含む負極と、リチウムイオンを含む非水電解液とを備え、該非水電解液の限界酸素指数が19.5体積%以上であることを特徴とする。ここで、本発明において、限界酸素指数とは、JIS K 7201に規定の所定の試験条件下において、材料が燃焼を持続するのに必要な体積パーセントで表される最低酸素濃度の値をいい、限界酸素指数が低いことは発火・引火の危険性が高いことを意味し、反対に限界酸素指数が高いことは発火・引火の危険性が低く、「安全性が高い」ことを意味する。従来、非水電解液二次電源に用いられていた非水電解液は、限界酸素指数が18体積%以下と非常に低く、これに対して、本発明の非水電解液二次電源の非水電解液は、限界酸素指数が19.5体積%以上であるため、発火・引火の危険性が大幅に低減されている。
なお、本発明者らの検討の結果、限界酸素指数が21体積%以上の電解液はUL94HB法に準拠する方法で定義される自己消火性を有し、限界酸素指数が23体積%以上の電解液はUL94HB法に準拠する方法で定義される難燃性を有し、限界酸素指数が25体積%以上の電解液はUL94HB法に準拠する方法で定義される不燃性を有することが分ったため、上記非水電解液の限界酸素指数は、21体積%以上であるのが好ましく、23体積%以上であるのが更に好ましく、25体積%以上であるのがより一層好ましい。ここで、UL94HB法に準拠する方法で定義される自己消火性・難燃性・不燃性とは、不燃性石英ファイバーに1.0mLの電解液を染み込ませ127mm×12.7mmの試験片を作製し、該試験片を大気環境下で着火した際、着火した炎が25〜100mmラインで消火し且つ落下物にも着火が認められない場合を自己消火性ありとし、着火した炎が装置の25mmラインまで到達せず、かつ網からの落下物にも着火が認められなかった場合を難燃性ありとし、着火が認められなかった場合(燃焼長0mm)を不燃性ありとしたものである。
本発明の非水電解液二次電源は、従来の電気二重層キャパシタよりも高電圧とすることができ、好ましくは、充電電圧が2.5V以上である。充電電圧が2.5V以上の非水電解液二次電源は、エネルギー密度が高く、二次電源の小型化等が可能である。
本発明の非水電解液二次電源の非水電解液は、分子中にリン及び/又は窒素を有する化合物を1種以上含有するのが好ましく、分子中にリン及び窒素を有する化合物を1種以上含有するのが更に好ましい。非水電解液が分子中にリンを有する化合物を含有する場合、該化合物から誘導されるリン酸エステル等の作用によって、二次電源の非常時に、非水電解液が発火・引火する危険性を大幅に低減することが可能となる。また、リンには、非水電解液二次電源を構成する高分子材料の連鎖分解を抑制する作用があるため、効果的に非水電解液二次電源の安全性を向上させることもきる。また、非水電解液が分子中に窒素を有する化合物を含有する場合、該化合物から誘導される窒素ガスの作用によって、二次電源の非常時に電解液が発火・引火する危険性を低減することができる。
上記分子中にリン及び/又は窒素を有する化合物としては、リン酸エステル化合物、ポリリン酸エステル化合物、縮合リン酸エステル化合物等の分子中にリンを有する化合物;トリアジン化合物、グアニジン化合物、ピロリジン化合物等の分子中に窒素を有する化合物;並びに、ホスファゼン化合物、ホスファゼン化合物の異性体、ホスファザン化合物、及び上記分子中にリンを有する化合物として例示した化合物と分子中に窒素を有する化合物として例示した化合物との複合化合物等が挙げられる。なお、分子中にリン及び窒素を有する化合物は、当然に分子中にリンを有する化合物及び分子中に窒素を有する化合物の一例でもある。これらの中でも、熱安定性の向上及び高温保存特性の向上の観点から、ホスファゼン化合物等のリン−窒素間二重結合を有する化合物が特に好ましい。なお、上記リン及び/又は窒素含有化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
上記ホスファゼン化合物としては、上記式(I)で表される鎖状ホスファゼン化合物及び上記式(II)で表される環状ホスファゼン化合物が好ましい。また、上記式(I)又は式(II)で表されるホスファゼン化合物の中でも、25℃(室温)において液体であるものが好ましい。該液状ホスファゼン化合物の25℃における粘度は、300mPa・s(300cP)以下が好ましく、20mPa・s(20cP)以下が更に好ましく、5mPa・s(5cP)以下が特に好ましい。なお、本発明において粘度は、粘度測定計[R型粘度計Model RE500-SL、東機産業(株)製]を用い、1rpm、2rpm、3rpm、5rpm、7rpm、10rpm、20rpm及び50rpmの各回転速度で120秒間づつ測定し、指示値が50〜60%となった時の回転速度を分析条件とし、その際の粘度を測定することによって求めた。ホスファゼン化合物の25℃における粘度が300mPa・s(300cP)を超えると、後述するリチウムイオンのイオン源となる支持塩が溶解し難くなり、電極材料、セパレーター等への濡れ性が低下し、電解液の粘性抵抗の増大によりイオン導電性が著しく低下し、特に氷点以下等の低温条件下での使用において性能不足となる。また、これらのホスファゼン化合物は、液状であるため、通常の液状電解質と同等の導電性を有する。
上記式(I)の鎖状ホスファゼン化合物において、R1は、一価の置換基又はハロゲン元素である限り特に制限はなく、各R1は、同一でも、異なってもよい。ここで、一価の置換基としては、アルコキシ基、アルキル基、カルボキシル基、アシル基、アリール基等が挙げられ、これらの中でも、ホスファゼン化合物が低粘度となる点で、アルコキシ基が好ましい。一方、ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられる。上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等や、メトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基等のアルコキシ置換アルコキシ基等が挙げられ、これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基及びメトキシエトキシエトキシ基が好ましく、低粘度・高誘電率の観点から、メトキシ基及びエトキシ基が更に好ましい。また、上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、上記アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基等が挙げられ、上記アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。これら一価の置換基中の水素元素は、ハロゲン元素で置換されているのが好ましく、該ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素が好適であり、フッ素が最も好ましく、次いで塩素が好ましい。
式(I)のY1は、2価の連結基、2価の元素又は単結合である限り特に制限はなく、各Y1は、同一でも、異なってもよい。ここで、2価の連結基としては、CH2基の他、酸素、硫黄、セレン、窒素、ホウ素、アルミニウム、スカンジウム、ガリウム、イットリウム、インジウム、ランタン、タリウム、炭素、ケイ素、チタン、スズ、ゲルマニウム、ジルコニウム、鉛、リン、バナジウム、ヒ素、ニオブ、アンチモン、タンタル、ビスマス、クロム、モリブデン、テルル、ポロニウム、タングステン、鉄、コバルト、ニッケルからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む2価の連結基が挙げられ、電解液の発火・引火の危険性を効果的に低減する観点から、硫黄及び/又はセレンの元素を含む2価の連結基が好ましい。また、上記2価の元素としては、酸素、硫黄、セレン等が挙げられる。これらの中でも、式(I)のY1としては、単結合が好ましい。
式(I)のXは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、硫黄、セレン、テルル及びポロニウムからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基である限り特に制限はない。有害性、環境等への配慮の観点から、式(I)のXとしては、炭素、ケイ素、窒素、リン、酸素及び硫黄からなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基が好ましく、下記式(III)、式(IV)又は式(V):
Figure 2006086355

Figure 2006086355

Figure 2006086355

[式(III)、式(IV)及び式(V)中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Y3、Y4及びY5は、それぞれ独立に2価の連結基、2価の元素又は単結合を表し;Zは2価の基又は2価の元素を表す]で表される置換基が更に好ましい。
式(III)のR3、式(IV)のR4及び式(V)のR5としては、式(I)のR1で述べたのと同様の一価の置換基又はハロゲン元素がいずれも好適に挙げられる。また、式(III)の2つのR3、並びに式(V)の2つのR5は、それぞれ同一でも、異なってもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(III)のY3、式(IV)のY4及び式(V)のY5としては、式(I)のY1で述べたのと同様の2価の連結基又は2価の元素がいずれも好適に挙げられる。同様に、硫黄及び/又はセレンの元素を含む2価の連結基の場合には、電解液の発火・引火の危険性が大きく低減するため特に好ましい。また、Y3、Y4及びY5としては、単結合も好ましい。式(III)の2つのY3、並びに式(V)の2つのY5は、それぞれ同一でも、異なってもよい。
式(III)のZは、2価の基又は2価の元素である限り特に制限はない。ここで、2価の基としては、CH2基、CHR基(ここで、Rは、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基等を表す)、NR基の他、酸素、硫黄、セレン、ホウ素、アルミニウム、スカンジウム、ガリウム、イットリウム、インジウム、ランタン、タリウム、炭素、ケイ素、チタン、スズ、ゲルマニウム、ジルコニウム、鉛、リン、バナジウム、ヒ素、ニオブ、アンチモン、タンタル、ビスマス、クロム、モリブデン、テルル、ポロニウム、タングステン、鉄、コバルト、ニッケルからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む2価の基等が挙げられ;2価の元素としては、酸素、硫黄、セレン等が挙げられる。これらの中でも、式(III)のZとしては、CH2基、CHR基、NR基の他、酸素、硫黄、セレンからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む2価の基が好ましい。特に、硫黄及び/又はセレンの元素を含む2価の基の場合には、電解液の発火・引火の危険性が大幅に低減するため好ましい。
これら置換基としては、特に効果的に発火・引火の危険性を低減し得る点で、式(III)で表されるようなリンを含む置換基が特に好ましい。また、置換基が式(IV)で表されるような硫黄を含む置換基である場合には、電解液の小界面抵抗化の点で特に好ましい。
上記式(II)の環状ホスファゼン化合物において、R2は、一価の置換基又はハロゲン元素である限り特に制限はない。ここで、一価の置換基としては、アルコキシ基、アルキル基、カルボキシル基、アシル基、アリール基等が挙げられ、これらの中でも、ホスファゼン化合物が低粘度となる点で、アルコキシ基が好ましい。一方、ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられ、これらの中でも、フッ素が特に好ましい。上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、プロポキシ基、フェノキシ基等が挙げられ、これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシ基が特に好ましい。また、上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられ;上記アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基等が挙げられ;上記アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。これら一価の置換基中の水素元素は、ハロゲン元素で置換されているのが好ましく、ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられ、フッ素原子で置換された置換基としては、トリフルオロエトキシ基等が挙げられる。
式(I)〜式(V)におけるR1〜R5、Y1、Y3〜Y5、Zを適宜選択することにより、より好適な粘度、添加・混合に適する溶解性等を有するホスファゼン化合物が得られる。これらホスファゼン化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の非水電解液二次電源の非水電解液は、少なくともリチウムイオンを含み、リチウムイオンのイオン源となる支持塩を含むのが好ましい。該支持塩としては、特に制限はなく、通常リチウム電池の非水電解液に用いられているリチウム塩を用いることができ、具体的には、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiAsF6、LiC49SO3、Li(CF3SO2)2N及びLi(C25SO2)2N等のリチウム塩が好適に挙げられる。これら支持塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記非水電解液中の支持塩の濃度としては、0.2〜1.5mol/L(M)が好ましく、0.5〜1mol/L(M)が更に好ましい。支持塩の濃度が0.2mol/L未満では、電解液の導電性を充分に確保することができず、二次電源の放電特性及び充電特性に支障をきたすことがあり、1.5mol/Lを超えると、電解液の粘度が上昇し、リチウムイオンの移動度を充分に確保できないため、前述と同様に電解液の導電性を充分に確保できず、二次電源の放電特性及び充電特性に支障をきたすことがある。
本発明の非水電解液二次電源の非水電解液は、電解液の粘度を低く抑える観点から、更に非プロトン性有機溶媒を含有するのが好ましい。該非プロトン性有機溶媒としては、エーテル化合物やエステル化合物等が好ましく、具体的には、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルフォルメート(MF)等が好適に挙げられる。これらの中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン等の環状エステル化合物、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状エステル化合物、1,2-ジメトキシエタン等の鎖状エーテル化合物が好ましい。環状のエステル化合物は、比誘電率が高く支持塩の溶解能に優れる点で、また、鎖状のエステル化合物及びエーテル化合物は、低粘度であるため電解液の低粘度化の点で好適である。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の非水電解液二次電源の非水電解液における上記分子中にリン及び/又は窒素を有する化合物の含有量は、0.5〜20質量%の範囲が好ましい。非水電解液中の上記分子中にリン及び/又は窒素を有する化合物の含有量が0.5質量%未満では、非水電解液の発火・引火の危険性を低減する効果が不十分なことがあり、一方、20質量%を超えても、非水電解液の発火・引火の危険性を低減する効果があまり向上しないことに加え、非水電解液が高コストになる。
本発明の非水電解液二次電源の正極は、少なくとも多孔性炭素を含む。ここで、正極中の多孔性炭素の含有率は、65〜100質量%の範囲が好ましい。該正極としては、通常、比表面積及びかさ比重が大きく、電気化学的に不活性で、抵抗が小さい等の特性を有するものが好ましく、一般的な電気二重層キャパシタの正極及び負極に用いられる多孔性炭素系の分極性電極を好適に用いることができる。また、上記正極に含まれる多孔性炭素として、具体的には、活性炭が特に好ましい。なお、本発明の非水電解液二次電源の正極では、充電により非水電解液中のアニオンが吸着し、放電により該アニオンが脱着し、該アニオンは、通常上述した支持塩に由来する。
上記正極は、一般的には、活性炭等の多孔性炭素を含有し、必要に応じて導電剤や結着剤等のその他の成分を含有する。上記正極に好適に用いることができる活性炭の原料としては、特に制限はなく、例えば、フェノール樹脂の他、各種の耐熱性樹脂、ピッチ等が好適に挙げられる。耐熱性樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ビスマレイミドトリアジン、アラミド、フッ素樹脂、ポリフェニレン、ポリフェニレンスルフィド等の樹脂が好適に挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記活性炭の形体としては、より比表面積を高くして、非水電解液二次電源のエネルギー密度を大きくする点から、粉末状、繊維布状等の形体が好ましい。また、これらの活性炭は、非水電解液二次電源のエネルギー密度をより高くする目的で、熱処理、延伸成形、真空高温処理、圧延等の処理がなされていてもよい。
上記正極に用いる導電剤としては、特に制限はないが、黒鉛、アセチレンブラック等が挙げられる。また、上記正極に用いる結着剤としては、特に制限はないが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。これら添加剤の配合量は、通常の電気二重層キャパシタの正極及び負極における配合量と同様とすることができる。
一方、本発明の非水電解液二次電源の負極は、少なくともリチウムイオンを吸蔵及び脱離できる炭素材料を含む。ここで、負極におけるリチウムイオンの吸蔵及び脱離が可能な炭素材料の含有率は、50〜100質量%の範囲が好ましい。該負極としては、一般的なリチウムイオン2次電池の負極を好適に用いることができる。上記炭素材料としては、易黒鉛化性炭素、黒鉛、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)等のリチウムイオン2次電池の負極に用いられる炭素材料が好ましく、X線回折法による[002]面の平均面間隔が0.335〜0.410nmである炭素材料が更に好ましい。なお、本発明の非水電解液二次電源の負極では、充電により非水電解液中のリチウムイオンが吸蔵され、放電により該リチウムイオンが脱離する。ここで、リチウムイオンの吸蔵及び脱離は、電荷移動を伴う反応であり、上述した正極におけるアニオンの吸着及び脱着とは異なる。
上記負極には、必要に応じて導電剤、結着剤を混合することができ、導電剤としてはアセチレンブラック等が挙げられ、結着剤としてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。これら添加剤の配合量は、通常のリチウムイオン2次電池の負極における配合量と同様とすることができる。
また、上記正極及び負極の形状としては、特に制限はなく、電極として公知の形状の中から適宜選択することができる。例えば、シート状、円柱形状、板状形状、スパイラル形状等が挙げられる。
本発明の非水電解液二次電源は、上述した正極、負極、非水電解液の他に、セパレーター、集電体、容器等を備えるのが好ましく、更に通常非水電解液二次電源に使用されている公知の各部材を備えることができる。ここで、セパレーターは、非水電解液二次電源の短絡防止等を目的として、正負電極間に介在される。該セパレーターとしては、特に制限はなく、通常、非水電解液二次電源のセパレーターとして用いられる公知のセパレーターが好適に用いられる。セパレーターの材質としては、例えば、微多孔性フィルム、不織布、紙等が好適に挙げられる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製の不織布、薄層フィルム等が好適に挙げられる。これらの中でも、厚さ20〜50μm程度のポリプロピレン又はポリエチレン製の微孔性フィルムが特に好適である。
上記集電体としては、特に制限はなく、通常非水電解液二次電源の集電体として用いられる公知のものが好適に用いられる。該集電体としては、電気化学的耐食性、化学的耐食性、加工性、機械的強度に優れ、低コストであるものが好ましく、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、導電性樹脂等の集電体層等が好ましい。
上記容器としては、特に制限はなく、通常非水電解液二次電源の容器として用いられる公知のものが好適に挙げられる。該容器の材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、導電性樹脂等が好適である。
本発明の非水電解液二次電源の形態としては、特に制限はなく、シリンダ型(円筒型、角型)、フラット型(コイン型)等の公知の形態が、好適に挙げられる。これらの非水電解液二次電源は、例えば、電気自動車や燃料電池自動車の主電源若しくは補助電源や、種々の電子機器、産業用機器、航空用機器等のメモリーバックアップ用や、玩具、コードレス用機器、ガス機器、瞬間湯沸し機器等の電磁ホールド用や、腕時計、柱時計、ソーラ時計、AGS腕時計等の時計用の電源等として用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<非水電解液の調製>
表1に示す配合の非プロトン性有機溶媒及びホスファゼン化合物からなる混合溶液に、LiBF4(支持塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させて非水電解液を調製し、以下に示す方法で該非水電解液の限界酸素指数を測定した。
(1)電解液の限界酸素指数
JIS K 7201に準じて、電解液の限界酸素指数を測定した。限界酸素指数が大きい程、電解液が燃焼し難いことを示す。具体的には、SiO2シート(石英濾紙、不燃性)127mm×12.7mmをU字型のアルミ箔で補強して自立可能とし、該SiO2シートに前記電解液1.0mLを含浸して試験片を作製した。該試験片を試験片支持具に垂直に、燃焼円筒(内径75mm、高さ450mm、直径4mmのガラス粒を底部から100±5mmの厚さに均等に満たし金属製の網をその上に置いたもの)の上端部から100mm以上の距離に位置するように取り付け、次に、燃焼円筒に酸素(JIS K 1101又はこれと同等以上のもの)及び窒素(JIS K 1107の2級又はこれと同等以上のもの)を流し、試験片を空気中で点火し(熱源はJIS K 2240の1種1号)、燃焼状態を調べた。但し、燃焼円筒内の総流量は11.4L/minである。この試験を3回行い、その平均値を表1に示す。なお、酸素指数とは、材料が燃焼を持続するのに必要な容量パーセントで表される最低酸素濃度の値をいい、本願では、試験片が3分以上継続して燃焼するか、着炎後の燃焼長さが50mm以上燃えるのに必要な最低の酸素流量とそのときの窒素流量から、下記の式:
限界酸素指数=(酸素流量)/[(酸素流量)+(窒素流量)]×100(体積%)
に従って限界酸素指数を算出した。
<正極の作製>
フェノール樹脂を原料として水蒸気賦活法によって得た比表面積1500m2/gの活性炭80質量%と、導電性カーボンブラック10質量%と、バインダーとしてのポリテトラフルオロエチレン10質量%とからなる混合物にエタノールを加えて混練し、70℃で24時間乾燥し、更に混練生地を粉末状に粉砕した。この粉末を0.070g秤り取り、φ14mmの金型に封入し、50MPaで5分間圧粉成型を行い、厚さ600μmの正極を作製した。得られた正極に日本黒鉛工業製導電接着剤エブリオームを塗布し、2032型コインセルの正極缶へ接合し、更に減圧下、150℃で24時間熱処理して、正極体とした。
<負極の作製>
ポリフッ化ビニリデンをN-メチル-2-ピロリジノン(NMP)に溶解した溶液に、リチウムイオンを吸蔵・脱離し得る炭素材料として、[002]面の面間隔が0.338nmの黒鉛系炭素材料[大阪ガス化学社製, 商品名:MCMB6−28]を分散させ、更に銅からなる集電体に塗布して乾燥し、集電体上に負極を形成した。なお、負極中のリチウムイオンを吸蔵・脱離し得る炭素材料とポリフッ化ビニリデンとの割合は、質量比で9:1であった。これを更にφ14mm、厚さ45μmに打ち抜いたものを10MPaで30秒プレスし、その後、減圧下、150℃で10時間熱処理し、負極体とした。
<二次電源の組立>
ポリエチレン製セパレーターを介して上記正極体と負極体との電極面を対向させ、更に上記非水電解液を充分に注液し含浸させて、2032型コインセルを作製し、非水電解液二次電源とした。得られた二次電源に対して、下記の方法で、初期容量及び2000サイクル後の容量変化率を測定した。結果を表1に示す。
(2)初期容量及び2000サイクル後の容量変化率
まず、作製した二次電源に対して、4.2Vから2.75Vまでの初期容量を測定した。その後、充放電電流2mA/cm2で、4.0Vから2.75Vまでの範囲で充放電サイクルを行い、2000サイクル後の容量を測定し、下記式:
容量変化率=(2000サイクル後の容量−初期容量)/初期容量×100(%)
から容量変化率を算出した。
Figure 2006086355
表1中、ECはエチレンカーボネートを示し、EMCはエチルメチルカーボネートを示し、ホスファゼンAは、上記式(II)において、nが3であって、6つのR2のうち1つがエトキシ基(CH3CH2O−)で、5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物(25℃における粘度:1.1mPa・s、沸点125℃)であり、ホスファゼンBは、上記式(II)において、nが3であって、6つのR2のうち1つがフェノキシ基(C65O−)で、5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物(25℃における粘度:1.7mPa・s、沸点194℃)であり、ホスファゼンCは、上記式(II)において、nが3であって、6つのR2のうち2つがエトキシ基(CH3CH2O−)で、4つがフッ素である環状ホスファゼン化合物(25℃における粘度:1.3mPa・s、沸点194℃)であり、ホスファゼンDは、上記式(II)において、nが3であって、6つのR2のうち1つが塩素で、5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物(25℃における粘度:1.1mPa・s、沸点85℃)である。
表1から明らかなように、非水電解液にホスファゼン化合物を添加することにより、非水電解液の限界酸素指数が向上し、非水電解液の発火・引火の危険性を効果的に低減することができる。また、非水電解液にホスファゼン化合物が添加された実施例の非水電解液二次電源は、二次電源として充分な特性(容量、サイクル特性)を有していることが確認された。

Claims (12)

  1. 多孔性炭素を含む正極と、リチウムイオンを吸蔵及び脱離できる炭素材料を含む負極と、リチウムイオンを含む非水電解液とを備えた非水電解液二次電源において、
    前記非水電解液の限界酸素指数が19.5体積%以上であることを特徴とする非水電解液二次電源。
  2. 前記非水電解液が分子中にリンを有する化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電源。
  3. 前記非水電解液が分子中に窒素を有する化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電源。
  4. 前記非水電解液が分子中にリン及び窒素を有する化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液二次電源。
  5. 前記分子中にリン及び窒素を有する化合物がリン−窒素間二重結合を有することを特徴とする請求項4に記載の非水電解液二次電源。
  6. 前記分子中にリン及び窒素を有し且つリン−窒素間二重結合を有する化合物がホスファゼン化合物であることを特徴とする請求項5に記載の非水電解液二次電源。
  7. 前記ホスファゼン化合物が下記式(I):
    Figure 2006086355

    [式中、R1は、それぞれ独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Y1は、それぞれ独立して2価の連結基、2価の元素又は単結合を表し;Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、硫黄、セレン、テルル及びポロニウムからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基を表す]又は下記式(II):
    (NPR2 2)n ・・・ (II)
    [式中、R2はそれぞれ独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;nは3〜15を表す]で表されることを特徴とする請求項6に記載の非水電解液二次電源。
  8. 前記非水電解液中の前記分子中にリン及び/又は窒素を有する化合物の含有量が0.5〜20質量%であることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の非水電解液二次電源。
  9. 前記非水電解液が更に非プロトン性有機溶媒を含有することを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電源。
  10. 前記正極に含まれる多孔性炭素が活性炭であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電源。
  11. 前記負極に含まれるリチウムイオンを吸蔵及び脱離できる炭素材料は、X線回折法による[002]面の平均面間隔が0.335〜0.410nmであることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電源。
  12. 充電電圧が2.5V以上であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電源。
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