JP2006083905A

JP2006083905A - 波動歯車装置

Info

Publication number: JP2006083905A
Application number: JP2004267625A
Authority: JP
Inventors: Kazumasa Nishio; 一政西尾; Mitsuaki Ikeda; 満昭池田
Original assignee: Kyushu Institute of Technology NUC
Current assignee: Kyushu Institute of Technology NUC
Priority date: 2004-09-15
Filing date: 2004-09-15
Publication date: 2006-03-30

Abstract

【課題】小型化、高トルク化、さらには長寿命化の要求に応えることができる波動歯車装置を提供する。
【解決手段】波動歯車装置１は、剛性内歯歯車２と、可撓性外歯歯車３と、波動発生器４を有する。可撓性外歯歯車３を構成する歯部８、胴部５およびダイヤフラム６の各部品の全てまたは少なくとも一部品の結晶粒の平均粒径を１〜１０μｍに調製する。平均粒径の調製は、オーステナイト領域の温度まで急速加熱した後、オーステナイト領域以下の温度まで急速冷却する工程を３回以上繰り返す、高周波焼入れ、レーザ焼入れ、火炎焼入れまたは電解焼入れのいずれかの焼入れ処理により行う。
【選択図】図１

Description

本発明は、波動歯車装置に関する。

ロボットなどの駆動機構における減速機として、小型且つ軽量で高減速比を有しておりバックラッシュの少ないことを特徴とする波動歯車装置が知られている。波動歯車装置の種類は、組込まれている可撓性歯車の形状によってカップ型、シルクハット型およびフラット型に分類されるが、いずれも動作は同様である。

カップ型の波動歯車装置を例にとり、図１および図２を参照して、その構造を説明すると、波動歯車装置１は、環状の剛性内歯歯車２と、この内側に同心状に配置されたカップ状の可撓性外歯歯車３と、可撓性外歯歯車３の内側にはめ込まれた楕円形の輪郭を有する波動発生器４とを備える。
可撓性外歯歯車３は、円筒状の胴部５と、胴部５の一端に連続している環状のダイヤフラム６と、ダイヤフラム６の中心にダイヤフラム６と一体形成されている円環状のボス７と、胴部５の外周面に形成された円筒状の歯部８とを備える。

可撓性外歯歯車３は波動発生器４によって楕円形に撓められて、その楕円形状の長軸方向の両端部分にある歯部８の外歯が剛性内歯歯車２の内周面に形成した内歯９に噛み合っている。そして、波動発生器４が図示しないモータ回転軸に連結されて回転すると可撓性外歯歯車３および剛性内歯歯車２の噛み合い位置が円周方向に移動し、外歯と内歯９の歯数差に応じた相対回転が両歯車の間に発生する。一般的には内歯歯車２の側が固定されるので可撓性外歯歯車３の側から歯数差に応じて大幅に減速された回転出力が得られる。

波動発生器４の回転に伴い、歯部８は、繰り返し、半径方向に撓められる。また、これに伴い、胴部５、ダイヤフラム６も繰り返し変形する。このような、可撓性外歯歯車３を構成する歯部８、胴部５およびダイヤフラム６の各部品の撓み動作、すなわちコーニングの発生を考慮して、これらの部品の疲労強度を高める必要がある。

ここで、鋼材の静的強度と疲労強度を高めるために一般的な表面硬化処理や焼入れ焼戻しなどの熱処理を上記各部品に適用すると、疲労強度は向上するものの靭性が低下して割れが発生しやすくなる。

この点に鑑み、特に肉厚が薄い胴部５およびダイヤフラム６に、軟窒化処理またはレーザビーム焼入れを部品肉厚の４５％以下の範囲に適用した波動歯車装置が提案されている（特許文献１参照。）。
この場合、表面硬化処理部は圧縮応力が残存しているので疲労強度が向上し、一方、内部の表面硬化処理をしてない素材部は表面部より柔らかいので靭性があり割れにくくなるものと考えられる。
特開２０００−５５１４７号公報

しかしながら、近年、動歯車装置が使用されているロボットにおいては小型化および高トルク化、さらには波動歯車装置部のさらなる長寿命化も要求されるようになって来ている。これに対して、上記の部品肉厚の４５％以下の範囲に軟窒化処理等を適用する方法で得られた波動歯車装置では、軟窒化処理等を施していない素材内部の部分の疲労強度や靭性によって耐トルクや寿命が制限され、上記の小型化等の要求に応えることが難しいものと考えられる。なお、軟窒化処理等の表面硬化処理は、処理に時間がかかり、また、コスト高の要因にもなる。

本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、小型化、高トルク化、さらには長寿命化の要求に応えることができる波動歯車装置を提供することを目的とする。

上記目的を達成するために、本発明に係る波動歯車装置は、内歯歯車と、該内歯歯車の内側に配置される鉄合金製外歯歯車と、該鉄合金製外歯歯車の内側に配置される波動発生器を有する波動歯車装置において、
該鉄合金製外歯歯車を構成する歯部、胴部およびダイヤフラムの各部品の全てまたは少なくとも一部品の結晶粒の平均粒径が１〜１０μｍであることを特徴とする。

また、本発明に係る波動歯車装置は、少なくとも歯部の結晶粒の平均粒径が１〜１０μｍであることを特徴とする。

また、本発明に係る波動歯車装置は、前記結晶粒の平均粒径が、オーステナイト領域の温度まで急速加熱した後、オーステナイト領域以下の温度まで急速冷却する工程を３回以上繰り返す焼入れ処理により調製されてなることを特徴とする。

また、本発明に係る波動歯車装置は、前記焼入れ処理が高周波焼入れ、レーザ焼入れ、火炎焼入れおよび電解焼入れのうちから選択されるいずれか１つの方法または２以上の方法の組み合わせであることを特徴とする。

本発明の波動歯車装置は、鉄合金製外歯歯車を構成する部品の全てまたは少なくとも一部品の結晶粒の平均粒径を１〜１０μｍに調製するため、部品の疲労強度を向上させ脆性破壊を防止でき、これにより、装置の小型化、高トルク化、さらには長寿命化を実現することができる。

本発明の実施の形態について、以下に説明する。なお、波動歯車装置の構造自体は、通常のものと同じとすることができるため、装置の構造を示す図１および図２を援用するとともに、重複する構造の説明は省略する。
本発明者らは実験により、部品の結晶粒の平均粒径を１〜１０μｍの範囲とすれば鉄合金部品の疲労強度を向上させ脆性破壊を防止できることを見出し、本発明に想達するに至った。

波動歯車装置１は、前記のように、剛性内歯歯車（内歯歯車）２と、剛性内歯歯車の内側に配置される鉄合金製の可撓性外歯歯車（鉄合金製外歯歯車）３と、可撓性外歯歯車３の内側に配置される波動発生器４を有する。
そして、本発明では、肉厚が薄くて繰り返し応力が大きい個所である可撓性外歯歯車３を構成する歯部８、胴部５およびダイヤフラム６の各部品の全てまたは少なくとも一部品の結晶粒を平均粒径が１〜１０μｍに調製する。
ここで、特に肉厚が薄い胴部５およびダイヤフラム６だけでなく歯部８も結晶粒調製の対象とするのは、歯部８は谷部の部分については肉厚が薄いためである。本発明を、歯部８の波動発生器４と接する側だけに適用してもよい。

上記の平均粒径は、部品をオーステナイト領域の温度まで急速加熱した後、オーステナイト領域以下の温度まで急速冷却する熱処理を少なくとも３回以上繰り返すことで得られる。回数はいくら多くてもよいが６回以上繰り返しても結晶粒径は小さくならない。
加熱・冷却は、各部品の全体に対して繰り返し行ってもよく、また、特定の同一部位に対して繰り返し行ってもよい。
平均粒径が１１μｍ以上になると、脆性破壊が起こり始める。

カップ型の波動歯車装置を使用して本発明を実施した。波動歯車装置の減速比は１：８０、瞬時最大トルクは９８Ｎ・ｍである。可撓性外歯歯車の材料はニッケル・クロム・モリブデン鋼を使用した。

可撓性外歯歯車の胴部、ダイヤフラムおよび円筒状歯部の各箇所にそれぞれ高周波コイル配置した。高周波コイルは、中空で所々に穴が開いており水を流した場合にその穴から水が拭き出す構造となっている。この高周波コイルに高周波電流を流して試料を加熱後、水を流して試料を急冷した。胴部およびダイヤフラムの位置に配置した高周波コイルには周波数５００ｋＨｚ、円筒状歯部の位置に配置した高周波コイルには周波数２００ｋＨｚを適用した。周波数が低いほど試料内部まで加熱されるので、肉厚の厚い円筒状歯部に対する周波数を低くした。電源電圧は７ｋＶである。高周波コイルに電流を流して加熱後、水を流して急冷する工程を所定回数繰り返した。

加熱温度はＪＩＳに規定されている熱処理温度より２００℃ほど高い、加熱時にオーステナイト組織にするために必要な温度とした。加熱および急冷の工程１回当り（１サイクル当たり）の所要時間は１０分であった。

熱処理後の可撓性外歯歯車で波動歯車装置を構成して、波動発生器にモータを連結した。また、可撓性外歯歯車の出力軸には負荷印加用発電機を連結した。モータを毎分３０００回転で回しながら可撓性外歯歯車に瞬時定格トルクの７０％を繰り返し印加した。

疲労特性測定結果を表１に示す。結晶粒径は試験後の試料について腐食液でエッチングして測定した。なお、結晶粒の平均粒径が少なくとも１つの部品について１〜１０μｍの範囲内にあるＮｏ．３〜Ｎｏ．７が本発明の実施例である。また、従来例は肉厚の３０%だけ軟窒化処理をしたものであり、このときの処理時間１２時間であった。

本発明の波動歯車装置を構成している可撓性外歯歯車が割れるまでの使用回数は従来例に比べて格段に優れていることが分る。なお、各実施例において、割れが発生したのは、いずれも歯部であった。

本発明を適用可能な波動歯車装置の概略断面図である。図１の装置の概略正面図である。

符号の説明

１波動歯車装置
２剛性内歯歯車
３可撓性外歯歯車
４波動発生器
５胴部
６ダイヤフラム
７ボス
８歯部
９内歯

Claims

内歯歯車と、該内歯歯車の内側に配置される鉄合金製外歯歯車と、該鉄合金製外歯歯車の内側に配置される波動発生器を有する波動歯車装置において、
該鉄合金製外歯歯車を構成する歯部、胴部およびダイヤフラムの各部品の全てまたは少なくとも一部品の結晶粒の平均粒径が１〜１０μｍであることを特徴とする波動歯車装置。
少なくとも歯部の結晶粒の平均粒径が１〜１０μｍであることを特徴とする請求項１記載の波動歯車装置。
前記結晶粒の平均粒径が、オーステナイト領域の温度まで急速加熱した後、オーステナイト領域以下の温度まで急速冷却する工程を３回以上繰り返す焼入れ処理により調製されてなることを特徴とする請求項１または２記載の波動歯車装置。
前記焼入れ処理が高周波焼入れ、レーザ焼入れ、火炎焼入れおよび電解焼入れのうちから選択されるいずれか１つの方法または２以上の方法の組み合わせであることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載の波動歯車装置。