JP2006082445A - 液滴吐出ヘッド及びその製造方法並びに画像形成装置 - Google Patents

液滴吐出ヘッド及びその製造方法並びに画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 ノズル形成部材と撥水層の密着力が十分でなく、ワイピングに対する耐久性が低く、あるいは、密着力を向上させると、加工上十分なノズル径精度が得られなくなる。
【解決手段】 金属部材からなり、ノズル先穴61を形成した基材としてのノズル形成部材62の液滴吐出面側に、ポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層63、有機ケイ素化合物層64、フッ素系撥水層65を順次積層形成し、液室側からレーザ光でノズル14内にはみ出す部分を除去することで、径精度の高いノズル14を形成するとともに、ノズル形成部材63とフッ素系撥水層65の密着力を向上して耐久性を向上する。
【選択図】図4

Description

本発明は液滴吐出ヘッド及びその製造方法並びに画像形成装置に関する。
例えば、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像形成装置としては、記録液の液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室(吐出室、圧力室、加圧室、インク流路等とも称される。)と、この液室内の液体を加圧するためのエネルギーを発生するアクチュエータ手段とを備えた液滴吐出ヘッドを記録ヘッドとして搭載したものがある。
このような液滴吐出ヘッドにおいて、ノズルから液滴を吐出するために、ノズルの形状及び精度は、滴体積や滴速度など滴吐出特性に大きな影響を与えることから、ノズルの吐出側表面に撥水膜(撥インク膜)を形成することによって、ノズルの吐出側表面の均一性を高めることで、滴吐出特性の安定化が図られている。
従来のこのよう撥水層を形成した液滴吐出ヘッドとしては、例えば特許文献1に記載されているように、ステンレスやシリコンなどからなるノズル形成部材にフッ素樹脂重合膜を形成した後、加熱処理してフッ素樹脂重合膜を硬化させたものがある。
特開2003−72086号公報
また、特許文献2に記載されているように、樹脂材料からなるノズル形成部材を用いて、撥水層と樹脂層との密着性を改善するため、ノズル形成部材とフッ素系撥水剤との間にSiO膜を形成したものがある。
特開2003−341070号公報
さらに、特許文献3に記載されているように、ノズルの周辺部が、支持基体の片面にテトラフルオロエチレンを一成分とする共重合体を含む有機樹脂層を、そしてその反対面には接着層により構成される撥インク層にて被覆されてなるものがある。
特開平10−305582号公報
また、特許文献4に記載されているように、シリコーン油をプラズマ重合して、撥インク層を形成したものがある。
特開2003−72085号公報
一方、ノズル形成部材にノズル孔を加工する方法としては、ノズルが連通する液室を形成した液室構成部材にノズル形成部材となる樹脂部材を予め接合した後、ノズル形成部材にエキシマレーザーを用いてノズル孔を加工する方法が知られている。
特開平2−121842号公報 特開平1−108056号公報
上述したように、従来の液滴吐出ヘッドにあっては、ノズル形成部材と撥水層の密着力性を改善するための試みが行なわれているが、ノズル形成部材を金属部材で形成した場合のフッ素樹脂系撥水層との密着性は未だ十分に改善されておらず、ワイピングなどで撥水層の表面を擦過した場合に、撥水層が界面から剥離するという課題がある。
また、フッ素系樹脂層で撥インク層(撥水層)を形成した場合、表面張力30mN/m程度以上の染料インク、顔料インクでは良好な撥インク性を持たせることが可能であったが、15〜30mN/mの表面張力の低いインクや、フッ素系界面活性剤を添加したインクでは、十分な撥インク性を得ることができないという課題がある。
この場合、上述したように、特許文献4に記載されているように、シリコーン樹脂皮膜を形成することにより、インク移動性の良い撥水層を形成することができるが、従来は、液状のシリコーン樹脂材料を真空蒸着する方法や、シリコーンオイルをプラズマ重合することによってシリコーン樹脂被膜を形成している。
そのため、シリコーン樹脂被膜の成膜時に真空処理をする必要があり、設備が大掛かりでコストが高くなる。また、真空蒸着やプラズマ重合等の方法によりシリコーン樹脂皮膜を形成する場合、成膜時間が長く形成される皮膜が非常に薄いため、ピンホール等の欠陥を生じやすいという課題がある。また、真空蒸着やプラズマ重合等の方法では皮膜を厚くすることが困難であり、ワイピングやインクに対する十分な耐久性を確保することが難しいという課題がある。
さらに、従来の液滴吐出ヘッドにあってはノズルへの撥水層のはみ出しという課題がある。つまり、特に、先穴を加工したノズル形成部材に撥水層被膜を厚く形成する場合、どうしてもノズル内に撥水層がはみ出し、ノズルからの液滴の噴射方向に悪影響を与えることになる。この場合、ディスペンサーでエアーをノズルから噴出しながら塗布する方法などが考えられているが、十分な効果が得られていない。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ワイピングや記録液に対する十分な耐久性を有する撥水層を備える液滴吐出ヘッド及びその撥水層のノズル内へのはみ出しを抑えた液滴吐出ヘッドの製造方法を提供し、そのような液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、金属部材からなるノズル形成部材の滴吐出面側にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂層、有機ケイ素化合物層及びフッ素系撥水層が順次積層形成されている構成とした。
ここで、ノズル形成部材がニッケル電鋳で形成されているが好ましい。また、フッ素系撥水層の膜厚が1Å以上300Å以下であることが好ましい。さらに、フッ素系撥水層が、変性パーフルオロポリオキセタンから形成されていることが好ましい。さらにまた、有機ケイ素化合物層がジメチルシロキサン系化合物からなる層であることが好ましい。また、ポリイミド樹脂層又はポリアミド樹脂層の膜厚が、0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、フッ素系撥水層を有する本発明に係る液滴吐出ヘッドを製造する製造方法であって、ポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂を金属部材に液状の状態でコーティングする構成としたものである。
この場合、金属部材はノズル穴に相当する部位が樹脂をコーティングする前に先穴加工されていることが好ましい。この場合、金属部材に各層を積層した後、先穴加工部にレーザーを照射し、先穴をマスクとして、ポリイミド樹脂層又はポリアミド樹脂層、有機ケイ素化合物層及びフッ素系撥水層のはみ出しを除去して、ノズルのエッジを形成することが好ましい。また、金属部材の両面にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂を塗布し、吐出面側にのみ有機ケイ素化合物層、フッ素系撥水層を形成し、流路形成側より先穴加工周辺部にレーザーを照射し、流路側のノズル近傍部のポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂とノズルエッジのはみ出し部を除去することが好ましい。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、金属部材からなるノズル形成部材の滴吐出面側にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂層及びシリコーン樹脂が順次積層形成されている構成としたものである。
ここで、ノズル形成部材がニッケル電鋳で形成されていることが好ましい。また、シリコーン樹脂の膜厚が1μm以上20μm以下であることが好ましい。さらに、ポリイミド樹脂層又はポリアミド樹脂層の膜厚が、0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。さらにまた、ポリイミド樹脂層又はポリアミド樹脂層とシリコーン樹脂層との間にケイ素酸化膜層が介在していることが好ましい。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、シリコーン樹脂層を有する本発明に係る液滴吐出ヘッドを製造する製造方法であって、ポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂を金属部材に液状の状態でコーティングする構成としたものである。
ここで、金属部材はノズル穴に相当する部位が樹脂をコーティングする前に先穴加工されていることが好ましい。この場合、金属部材に各層を積層した後、先穴加工部にレーザーを照射し、先穴をマスクとして、ポリイミド樹脂層又はポリアミド樹脂層、シリコーン樹脂層のはみ出しを除去して、ノズルのエッジを形成することが好ましい。また、金属部材の両面にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂を塗布し、吐出面側にのみシリコーン樹脂層を形成し、流路形成側より先穴加工周辺部にレーザーを照射し、流路側のノズル近傍部のポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂とノズルエッジのはみ出し部を除去することが好ましい。
本発明に係る画像形成装置は、記録液を吐出する記録ヘッドとして本発明に係るいずれかの液滴吐出ヘッドを備えたものである。
ここで、使用する記録液の表面張力が15ないし30N/mの範囲内であることが好ましい。また、記録液はフッ素系界面活性剤を含んでいることが好ましい。さらに、記録液は顔料を含む顔料系記録液であることが好ましく、この場合、自己分散型顔料系記録液、高分子分散型顔料系記録液、樹脂被覆型顔料系記録液のいずれかであることが好ましい。
本発明に係る液滴吐出ヘッドによれば、金属部材からなるノズル形成部材の滴吐出面側にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂層、有機ケイ素化合物層及びフッ素系撥水層が順次積層形成されている構成としたので、フッ素系撥水層と有機ケイ素系化合物層と密着するため、ノズル形成部材との密着力が向上して、撥水層の耐久性が向上する。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、金属部材からなるノズル形成部材の滴吐出面側にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂層、有機ケイ素化合物層及びフッ素系撥水層が順次積層形成されている液滴吐出ヘッドを製造するとき、ポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂を金属部材に液状の状態でコーティングする構成としたので、ポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂のフィルムを金属部材に貼る場合に比べてノズル径精度を向上することができるようになり、これにより、高耐久な高撥水膜を持つ高精度のノズルを得ることができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドによれば、金属部材からなるノズル形成部材の滴吐出面側にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂層及びシリコーン樹脂が順次積層形成されている構成としたので、シリコーン樹脂とノズル形成部材の密着力が高くなり、耐久性が向上する。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、金属部材からなるノズル形成部材の滴吐出面側にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂層及びシリコーン樹脂が順次積層形成されている液滴吐出ヘッドを製造するとき、ポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂を金属部材に液状の状態でコーティングする構成としたので、ポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂のフィルムを金属部材に貼る場合に比べてノズル径精度を向上することができるようになり、これにより、高耐久な高撥水膜を持つ高精度のノズルを得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る液滴吐出ヘッドの第1実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同ヘッドの分解斜視説明図、図2は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図3は同ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
この液滴吐出ヘッドは、流路ユニット1とアクチュエータユニット2とを接合し、流路ユニット1をフレーム部材3上に固定するとともに、フレーム部材3内部にアクチュエータユニット2を収納し、更に流路ユニット1を覆うノズルカバー4を装着したものである。
流路ユニット1は、例えば単結晶シリコン基板を異方性エッチングして形成した流路板11と、この流路板11の下面に接合した例えばニッケル電鋳で形成した振動板12と、流路板11の上面に接合したノズル板13とを接合して積層し、これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル14が連通する流路であるノズル連通路15及び液室16、液室16にインクを供給するための共通液室18に連通するインク供給口19などを形成している。
アクチュエータユニット2は、流路ユニット1の振動板12を変形させて液室16内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2列の積層型圧電素子21と、この圧電素子21を接合固定する基板22とを備えている。なお、圧電素子21の間には支柱部23を設けている。この支柱部23は圧電素子部材を分割加工することで圧電素子21と同時に形成した部分であるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。
また、このアクチュエータユニット2では、圧電素子21に図示しない駆動回路(駆動IC)に接続するためのFPCなどの電装基板24を接続して、ユニットを構成している。電装基板24もユニット構成部材とすることで、取り扱いが容易になる。
フレーム部材3には、アクチュエータユニット2を収納する貫通部31及び共通液室18となる凹部、この共通液室18に外部からインクを供給するためのインク供給穴32を形成している。このフレーム部材3は、例えばエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成している。
そして、これらの流路ユニット1とアクチュエータユニット2とを接着剤で接合し、更にアクチュエータユニット2をフレーム部材3に接着剤で接合して流路ユニット1とアクチュエータユニット2を一体的に固定している。
そして、これにノズルカバー4を取付けることで、ノズル板15の周縁部(ヘッド外周部)を被覆して、ノズル板13表面に付着するインクが内部に侵入しないようにしている。
ここで、流路板11は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路15a、加圧液室16となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
振動板12は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板12に圧電素子21及び支柱部23を接着剤接合し、更にフレーム部材3を接着剤接合している。
ノズル板13は各液室16に対応して直径10〜30μmのノズル14を形成し、流路板1に接着剤接合している。このノズル板13は、後述するように、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。
圧電素子21は、圧電材料51と内部電極52とを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この圧電素子21の交互に異なる端面に引き出された各内部電極52には個別電極53及び共通電極54が接続されている。なお、この実施形態では、圧電素子21の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室16内インクを加圧する構成としているが、圧電素子21の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室16内インクを加圧する構成とすることもできる。また、1つの基板22に1列の圧電素子21が設けられる構造とすることもできる。
このように構成した液滴吐出ヘッドヘッドにおいては、圧電素子21に対して選択的に20〜50Vの駆動パルス電圧を印加することによって、パルス電圧が印加された圧電素子21が積層方向に伸長して振動板12をノズル14方向に変形させ、液室16の容積/体積変化によって加圧液室16内の記録液が加圧され、ノズル14から記録液の滴が吐出(噴射)される。
そして、液滴の吐出に伴って加圧液室16内の液圧力が低下し、このときのインク流れの慣性によって加圧液室16内には若干の負圧が発生する。この状態の下において、圧電素子21への電圧の印加をオフ状態にすることによって、振動板12が元の位置に戻って加圧液室16が元の形状になるため、さらに負圧が発生する。このとき、共通液室18から加圧液室16内に記録液が充填される。そこで、ノズル14のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のために圧電素子21にパルス電圧を印加し液滴を吐出させる。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや引き−押し打ちを行うこともできる。
次に、この第1実施形態の液滴吐出ヘッドにおけるノズル板13について図4をも参照して説明する。なお、同図は同ノズル板のノズル部分の拡大断面説明図である。
このノズル板13は、金属部材からなり、ノズル先穴61を形成した基材としてのノズル形成部材62の液滴吐出面62a側に、ポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂層(以下「ポリイミド/ポリアミド樹脂層」という。)63が、このポリイミド/ポリアミド樹脂層63上に有機ケイ素化合物層64が、この有機ケイ素化合物層64上にフッ素系撥水層65が、それぞれ順次積層形成されている。なお、これらのポリイミド/ポリアミド樹脂層63、有機ケイ素化合物層64及びフッ素系撥水層65の開口部分をノズルエッジ14aと称し、ノズルエッジ14aとノズル先穴51とを併せてノズル14という。
ノズル形成部材62は、上述したように金属部材からなるが、Ni電鋳によって形成することで、ノズル径を精度よく形成できるとともに、レーザー加工の際に高精度なマスクの役割を果たし、フッ素系撥水層の穴径を精度よく形成することができるようになる。
ポリイミド/ポリアミド樹脂層63を形成する材料としては種々のものが使用可能であるが、後述するように、液状の樹脂材料を塗布することが好ましく、このような材料としてはユピファイン(商品名、宇部興産製)、ケミタイト(商品名、東芝ケミカル製)などが市販されている。
このポリイミド/ポリアミド樹脂層63は、膜厚が厚くなると、滴吐出面側の径精度の劣化をもたらし、薄すぎるとピンホール等の発生により、有機ケイ素化合物層64やフッ素系撥水層65の剥離を引き起こすことになる。このため、この樹脂層63の膜厚としては、0.1〜5μmの範囲にすることが好ましい。この範囲とすることにより、ノズル径の精度を損ねることなく、ポリイミド/ポリアミド樹脂層のピンホールによる撥水層の密着不良も防止することができる。
そして、ポリイミド/ポリアミド樹脂層63は、上述したように、液状の状態でノズル形成部材62にコーティングすることによって、0.1〜5μmの範囲の膜厚を容易に得ることができ、ノズル径精度を損なうことなく、ポリイミド/ポリアミド樹脂層のピンホールによる撥水層の密着不良を防止することができる。
有機ケイ素化合物層64の形成には、蒸着法や適当な溶媒に溶かしてのスピンコートなども利用可能である。有機ケイ素化合物層63の膜厚は、密着力が確保できる範囲で必要最小限の厚さとすることが、工程時間、材料費(コスト)から見て有利である。有機ケイ素化合物層64の膜厚があまり厚くなると、エキシマレーザーでのノズル孔加工に支障が出る場合が生じる。
すなわち、ポリイミド/ポリアミド樹脂層63はきれいにノズル孔形状加工されていても、有機ケイ素化合物層64の一部が十分に加工されず、加工残りになることがある。したがって、具体的には密着力が確保でき、エキシマレーザー加工時に有機ケイ素化合物層64が残らない範囲として、膜厚1Å〜300Åの範囲が好ましく、より好ましくは、10Å〜100Åの範囲内である。
本発明者らの実験によると、有機ケイ素化合物層64の膜厚が30Åでも密着性は十分であり、エキシマレーザー加工性についてはまったく問題がないことが確認された。また、有機ケイ素化合物層64の膜厚が300Åでは僅かな加工残りが観察されたが、使用可能範囲であり、300Åを超えるとかなり大きな加工残りが発生し、使用不可能なノズル異形の発生が確認された。
この有機ケイ素化合物層64としては、ジメチルシロキサン系樹脂がポリイミド/ポリアミド樹脂層62及びフッ素系撥水層65の双方と相性が良く、密着力を向上する上で好ましい。
フッ素系撥水層65に使用するフッ素系撥水材料としては、いろいろな材料が知られているが、ここでは変性パーフルオロポリオキセタン(ダイキン工業(株)製、商品名:オプツールDSX)を用いて、膜厚(層厚)が1Å以上30Å以下の範囲内になるように蒸着することで必要な撥水性を得ている。変性パーフルオロポリオキセタンをフッ素系撥水剤として使用することにより、ワイピング耐久性が向上するとともに、エキシマレーザー加工性が良好になるので、耐久性と加工性を両立することができる。
実験結果では変性パーフルオロポリオキセタンの厚さは、10Åでも20Å、30Åでも撥水性、ワイピング耐久性能に差は見られなかった。よって、コストなどを考慮すると、より好ましくは、1Å〜20Åの範囲内である。
このように、この液滴吐出ヘッドによれば、金属部材からなるノズル形成部材の滴吐出面側にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂層、有機ケイ素化合物層及びフッ素系撥水層が順次積層形成されている構成としたので、フッ素系撥水層と有機ケイ素系化合物層と密着するため、ノズル形成部材との密着力が向上して、ワイピングなどに対する撥水層の耐久性が向上する。
ここで、フッ素系撥水層の膜厚が1Å以上300Å以下とすることができる。これは、有機ケイ素化合物とフッ素系撥水層が化学的結合によって密着するため、フッ素系撥水層の膜厚を非常に薄くすることができるようになり、この結果、必要材料の使用量が低減し、処理時間も短縮できて、コストを低減することができる。
また、フッ素系撥水層を変性パーフルオロポリオキセタンから形成することで、ワイピング耐久性とエキシマレーザー加工性を両立することができる。これは、有機ケイ素化合物とフッ素系撥水層の密着性が高いことから、有機ケイ素化合物の膜厚、フッ素系撥水層の膜厚を薄くすることができて、エキシマレーザーによる加工が容易になるためである。
さらに、有機ケイ素化合物層がジメチルシロキサン系化合物からなる層であることで、より密着性を改善し、撥水層を薄くすることができる。
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法の第1実施形態として上記第1実施形態の液滴吐出ヘッドのノズル板13の製造工程を例にして図5を参照して説明する。
この実施形態では、図5(a)に示すように、ノズル先穴61の加工がされた金属のノズル形成部材62の滴吐出面62a側に液状のポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂を塗布し、硬化させてポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層63を形成した後、図5(b)に示すように、ポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層63上に有機ケイ素化合物層64を形成し、更に図5(c)に示すように、有機ケイ素化合物層64上にフッ素系撥水層65を形成する。
この段階では塗布によって形成されるポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層63の一部がノズル形成部材62のノズル先穴61内にはみ出した(閉塞する場合も含む)はみ出し部63aとなっているので、このままではノズルとしての機能を持たない。そこで、図5(d)に示すように、流路面側(液室面側)からレーザー光66を照射し、ノズル先穴61内にはみ出している樹脂(はみ出し部53a)を除去する。
このとき、レーザー光66は、液室面側から照射することによって、金属部材であるノズル形成部材62をマスクとして使用することができ、ノズル径相当に絞る必要がなく、全面露光でもノズルを形成でき、極めて生産性に優れている。
また、ポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層63は極めて薄いので、ポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂のフィルムを貼って形成した場合のように、滴吐出面側がマスク(ノズル形成部材62)から離れていないため、ノズル径精度も極めて精度良く形成できる。
そこで、具体的に説明すると、図5(a)に示すように、ノズル先穴61を形成した金属部材からなるノズル形成部材62に液状のポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂を塗布する。この塗布は、スピンコート、ロールコートなどで実施することができる。これを硬化させることでポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層63を形成するが、このとき、ノズル先穴61内に樹脂が侵入してしまうので、はみ出し部63aが形成される。
次いで、図5(b)に示すように、ポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層63の表面に有機ケイ素化合物層64を形成する。
次いで、図5(c)に示すように、有機ケイ素化合物層64上にフッ素系撥水層65を形成する。このフッ素系撥水層65を形成する方法としては、フッ素系撥水剤をスピンコータ、ロールコータ、スプレーコータ、スクリーン印刷などの方法で塗布することもできるが、本発明者らの実験によると、真空蒸着で成膜する方法が撥水層65の密着性の向上につながることが確認された。
また、真空蒸着についても、上記有機ケイ素化合物層64を形成した後、そのまま同じ真空チャンバ内で実施することで、さらに良い効果が得られることが確認された。これは、有機ケイ素化合物層64を形成した後、一旦真空チャンバからワークを取り出すと不純物などが表面に付着することにより、密着性が損なわれるものと推測される。
また、フッ素系撥水材料については、種々の材料が知られているが、ここでは、フッ素非晶質化合物として、シラン変性パーフロロポリエーテルを使用することで、特にインクに対する必要な撥水性を得ることができることが確認された。
そこで、図5(d)に示すように、ノズル形成部材62をマスクとして液室面側からエキシマレーザー光66を照射することによって、ポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層63のはみ出し部63aを、このはみ出し部63a上に載る有機ケイ素化合物層64及びフッ素系撥水層65を含めて除去することによって、ノズルエッジ14a形成する。これによりノズル先穴61及びノズルエッジ14aを含むノズル14が形成される。
このように、ポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂を金属部材に液状の状態でコーティングしてポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層を形成することによって、ポリイミド/ポリアミド樹脂層の膜厚を0.1〜5μmの範囲に容易にすることができて、高耐久性の高精度のノズルを形成することができる。
また、金属部材はノズル穴に相当する部位が樹脂をコーティングする前に先穴加工されていることで、この先穴をマスクとしてノズルを形成することができて、ノズル径精度を高精度にすることができる。
さらに、金属部材に各層を積層した後、先穴加工部にレーザーを照射し、先穴をマスクとして、ポリイミド樹脂層又はポリアミド樹脂層、有機ケイ素化合物層及びフッ素系撥水層のはみ出しを除去して、ノズルのエッジを形成することにより。レーザー径を絞る必要がなくなり、広域照射で多くのノズルを同時に加工することができて、コストダウンを図れる。
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法の第2実施形態として上記第1実施形態の液滴吐出ヘッドのノズル板13の製造工程を例にして図6を参照して説明する。
この実施形態では、ポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂は金属、特にSUSやNiとの被着性が高く、かつエポキシ接着剤等との接着力も高いことから、金属面に塗布することにより接着力改善の効果が得られる。また、安定で溶剤にも強く、インク等の液に接液してもほとんど劣化しない。そこで、これらの特性をいかすため、ポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂を金属部材からなるノズル形成部材の両面に塗布し、流路面側にポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂からなる接着改善層を形成する。
ポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂の塗布方法は、ディップ法などでもよいし、スピンコータ、ロールコータで片面ずつ塗る手法でもよい。このとき、ノズル内がポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂で閉塞されるため、レーザーによってノズル内部の樹脂を除去する。この場合、照射径はノズル近傍部を除去できればよいので、ノズルをレーザーで形成する場合ほど高精度を必要とせず、多穴を同時加工でき、生産性が高くなる。
これを具体的に説明すると、図6(a)に示すように、先穴61の加工がされた金属のノズル形成部材62の両面に液状のポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂をスピンコート、ロールコートなどを用いて塗布し、硬化させてポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層63を形成する。この場合、先穴61内もポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂が入り込む。
その後、図6(b)に示すように、吐出面側のポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層63の表面に有機ケイ素化合物64を形成し、更に図6(c)に示すように、有機ケイ素化合物64上にフッ素系撥水層65を形成する。
次いで、図6(d)に示すように、所定のマスクを用いてノズル先穴61を含む所要の領域に液室面側からエキシマレーザー光66を照射することによって、ノズル形成部材62の液室側のポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層63を除去して、残存部分のポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層63を接合改善層67として残し、また、ノズル形成部材62をマスクとして液室面側からエキシマレーザー光66を照射することによって、ノズル先穴61内のポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層63及びこれに続くノズルエッジ14a部分のポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層63並びに有機ケイ素化合物層64及びフッ素系撥水層65を除去することによって、ノズル14を形成する。
このように、金属部材の両面にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂を塗布し、吐出面側にのみ有機ケイ素化合物層、フッ素系撥水層を形成し、流路形成側より先穴加工周辺部にレーザーを照射し、流路側のノズル近傍部のポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂とノズルエッジのはみ出し部を除去することにより、流路側には接合性改善膜、吐出面側には高撥水の基盤となる膜の両方を同時に形成することができて、高撥水でかつ信頼性の高いヘッドを低コストで形成することができる。
ここで、フッ素系撥水層について説明する。フッ素系撥水層を形成するための撥水性材料としては、フッ素原子を有する有機化合物、特にフルオロアルキル基を有する有機物を使用することができる。また、ジメチルシリキサン骨格を有する有機ケイ素化合物等も撥水剤材料である。
フッ素原子を有する有機化合物としては、フルオロアルキルシラン、フルオロアルキル基を有するアルカン、カンボン酸、アルコール、アミン等が好ましい。具体的には、フルオロアルキルシランとしては、ヘプタデカフルオロ−1、1、2、2−テトラハイドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1、1、2、2−テトラハイドロトリクロオシラン;フルオロアルキル基を有するアルカンとしては、オクタフルオロシクロブタン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオローnーヘキサン、パーフルオローnーヘプタン、テトラデカフルオロー2ーメチルペンタン、パーフルオロドデカン、パーフルオロオイコサン;フルオロオアルキル基を有するカルボン酸としては、パーフルオロデカン酸、パーフルオロオクタン酸;フルオロアルキル基を有するアルコールとしては、3、3、4、4、5、5、5−ヘプタフルオロー2ーペンタノール;フルオロアルキル基を有するアミンとしては、ヘプタデカフルオロー1、1、2、2−テトラハイドロデシルアミン等を挙げることができる。
また、ジメチルシロキサン骨格を有する有機ケイ素化合物としては、α,w−ビス(3ーアミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α、w−ビス(3ーグリシドキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,w−ビス(ビニル)ポリジメチルシロキサン等を挙げることができる。
さらに、別の撥水性材料として、シリコン原子を有する有機化合物、特にアルキルシロキサン基を有する有機化合物が使用できる。アルキルシロキサン基を有する有機化合物としては、含アルキルシロキサンエポキシ樹脂組成物を構成する分子中にアルキルシロキサン基、及び環状脂肪族エポキシ基を2個以上有する含アルキルシロキサンエポキシ樹脂としては、例えば、上記の一般式(a)及び(b)で表される構造単位を含む高分子化合物(A)が挙げられる。
Figure 2006082445
上記のような構造を有する化合物は他の撥水性化合物と併用する際にバインダーとしての機能も果たす。つまり、撥インク性の組成物の塗布適性を高め、溶剤蒸発後の乾燥性を高める乾燥塗膜としての作業性を向上させる機能も与える。
撥水層の膜厚は、5μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下である。膜厚が5μmを超える場合、塗膜の乾燥が遅くなり生産性が悪くなったり、機械的耐久性が損なわれたりする場合があり、ワイピングしたときに剥がれが生じるおそれがある。
また、撥水層の形成は、前述したように、真空下での蒸着であっても良いし、適当な溶媒に溶解させて塗布しても良い。
前者について言えば、例えば、真空排気ポンプにて真空槽内を所定の真空度まで排気した後、撥水性材料を400℃で気化せしめて真空槽に導入し、真空雰囲気を調整するとともに、高周波電源から放電電極に電力を供給してRFグロー放電を起こさせ、プラズマ雰囲気下に液滴吐出ヘッドのノズル面を表面処理して、ノズル面上に撥水膜を形成することができる。なお、材料及び真空槽内の真空度によっては、常温〜200℃程度の低温での撥水膜を形成することもできる。
また、後者について言えば、例えば、撥水性材料を有機溶剤に溶解させ、ワイヤーバーやドクターブレードなどの治具でコーティングすることができるし、スピンコーターによって回転塗布することもできるし、スプレーによって塗布することもできるし、塗工液を満たした容器に浸漬塗工(ディッピング)することもできる。
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドの第2実施形態について図7を参照して説明する。なお、同図は同実施形態の液滴吐出ヘッドにおけるノズル板13のノズル部分の拡大説明図である。
このノズル板13は、金属部材からなり、ノズル先穴71を形成した基材としてのノズル形成部材72の液滴吐出面72aに、ポリイミド/ポリアミド樹脂層73が、このポリイミド/ポリアミド樹脂層73上に撥水層となるシリコーン樹脂層75が順次積層形成されている。なお、これらのポリイミド/ポリアミド樹脂層73、シリコーン樹脂層75の開口部分をノズルエッジ14aと称し、ノズルエッジ14aとノズル先穴71とを併せてノズル74という。
ノズル形成部材72は、上述したように金属部材からなるが、Ni電鋳によって形成することで、ノズル径を精度よく形成できるとともに、レーザー加工の際に高精度なマスクの役割を果たし、フッ素系撥水層の穴径を精度よく形成することができるようになる。
ここでも、ポリイミド/ポリアミド樹脂層73を形成する材料としては種々のものが使用可能であるが、前記実施例と同様に、液状の樹脂材料を塗布することが好ましく、このような材料としてはユピファイン(商品名、宇部興産製)、ケミタイト(商品名、東芝ケミカル製)などが市販されている。
このポリイミド/ポリアミド樹脂層73は、膜厚が厚くなると、滴吐出面側の径精度の劣化をもたらし、薄すぎるとピンホール等の発生により、シリコーン樹脂層75の剥離を引き起こすことになる。このため、この樹脂層73の膜厚としては、0.1〜5μmの範囲にすることが好ましい。この範囲とすることにより、ノズル径の精度を損ねることなく、ポリイミド/ポリアミド樹脂層のピンホールによるシリコーン樹脂層75の密着不良も防止することができる。
そして、ポリイミド/ポリアミド樹脂層73は上述したように状態でノズル形成部材72にコーティングすることによって、0.1〜5μmの範囲の膜厚を容易にえることができ、高耐久性の高撥水性のノズル板を容易に得ることができる。
シリコーン樹脂層75を形成するためのシリコーン樹脂としては、室温硬化型や加熱硬化型の液状シリコーンレジン若しくはエラストマーなどがあるが、いずれも比較的硬度が低いため、膜厚は耐摩耗性の点から厚いものが好ましい。しかしながら、撥水層であるシリコーン樹脂層75の膜厚が厚くなると、ノズルの径精度を維持することが困難となり、両者のバランスから1μm〜20μm程度の範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜10μmの範囲内である。シリコーン樹脂層75の膜厚を1μm〜20μmの範囲内とすることで耐摩耗性とノズル径精度とを両立することができる。
このように、金属部材からなるノズル形成部材の滴吐出面側にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂層及びシリコーン樹脂が順次積層形成されている構成とすることにより、シリコーン樹脂とノズル形成部材の密着力が高くなり、撥水層の耐久性が向上する。
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドの第3実施形態について図8を参照して説明する。なお、図8は同実施形態に係る液滴吐出ヘッドのノズル板のノズル部分の拡大説明図である。
このノズル板13は、上記第2実施形態に係る液滴吐出ヘッドのノズル板13に形成した、ポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層73とシリコーン樹脂層75との間に、Si酸化膜層74を形成したものである。
シリコーン樹脂層75のより一層の密着性の改善手段として、ポリイミド/ポリアミド樹脂層73とシリコーン樹脂層75の間にSi酸化膜層74を形成することが有効である。このSi酸化膜層74の形成には、スパッタリング、イオンビーム蒸着、イオンプレーティング、CVD(化学蒸着法)、P−CVD(プラズマ蒸着法)などが適しているが、液相のSi系プライマーを塗布し、ベークする方法でも良い。
ここで、Si酸化膜層74の膜厚は、シリコーン樹脂層75の密着力が確保できる範囲で、必要最小限の厚さとすることが、工程時間、材料費(コスト)から見て有利である。このSi酸化膜層74の膜厚があまり厚くなると、エキシマレーザーでノズル孔加工をするときに支障が生じるおそれがある。つまり、ポリイミド/ポリアミド樹脂層73はきれいにノズル孔形状加工されていても、Si酸化膜層74の一部が十分に加工されず、加工残りになることがある。
したがって、具体的には、密着力が確保でき、エキシマレーザー加工時にSi酸化膜層74が残らない範囲として、Si酸化膜層74の膜厚は、1Å〜300Åの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10Å〜100Åの範囲内である。本発明者らによる実験結果では、Si酸化膜層74の膜厚が30Åでも密着性は十分であり、エキシマレーザーによる加工性についてもまったく問題がないことが確認された。また、Si酸化膜層74の膜厚が300Åでは僅かな加工残りが観察されたが使用可能範囲であり、300Åを超えるとかなり大きな加工残りが発生し、使用不可能なノズル異形が見られるようになることが確認された。
このように、金属部材からなるノズル形成部材の滴吐出面側にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂層、Si酸化膜層、シリコーン樹脂が順次積層形成されている構成とすることにより、シリコーン樹脂とノズル形成部材の密着力が一層高くなり、撥水層の耐久性(耐摩耗性、耐剥離性)が向上する。
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法の第3実施形態について上記第3実施形態に係る液滴吐出ヘッドのノズル板13を例にして図9を参照して説明する。
この実施形態では、図9(a)に示すように、ノズル先穴71の加工がされた金属のノズル形成部材72の滴吐出面72a側に液状のポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂を塗布し、硬化させてポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層73を形成した後、図9(b)に示すように、ポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層73上にSi酸化膜層74を形成し、更に図9(c)に示すように、Si酸化膜層74上にシリコーン樹脂層75を形成する。
この段階では塗布によって形成されるポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層73の一部がノズル形成部材72のノズル先穴71内にはみ出した(閉塞する場合も含む)はみ出し部73aとなっているので、このままではノズルとしての機能を持たない。そこで、図9(d)に示すように、流路面側(液室面側)からレーザー光76を照射し、ノズル先穴71内にはみ出している樹脂(はみ出し部63a)を除去する。
このとき、レーザー光76は、液室面側から照射することによって、金属部材であるノズル形成部材72をマスクとして使用することができ、ノズル径相当に絞る必要がなく、全面露光でもノズルを形成でき、極めて生産性に優れている。
また、ポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層73は極めて薄いので、ポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂のフィルムを貼って形成した場合のように、滴吐出面側がマスク(ノズル形成部材62)から離れていないため、ノズル径精度も極めて精度良く形成できる。
そこで、具体的に説明すると、図9(a)に示すように、ノズル先穴71を形成した金属部材からなるノズル形成部材72に液状のポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂を塗布する。この塗布は、スピンコート、ロールコートなどで実施することができる。これを硬化させることでポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層73を形成するが、このとき、ノズル先穴71内に樹脂が侵入してしまうので、はみ出し部73aが形成される。
次いで、図9(b)に示すように、ポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層73の表面にSi酸化膜層74を形成する。
次いで、図9(c)に示すように、Si酸化膜層74上にシリコーン樹脂層75を形成する。このシリコーン樹脂層75を形成する方法としては、シリコーン樹脂撥水剤をスピンコータ、ロールコータ、スプレーコータ、スクリーン印刷などの方法で塗布することができる。
そこで、図9(d)に示すように、ノズル形成部材72をマスクとして液室面側からエキシマレーザー光76を照射することによって、ポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層73のはみ出し部73aを、このはみ出し部73a上に載るSi酸化膜層74及びシリコーン樹脂層75を含めて除去することによって、ノズルエッジ14a形成する。これによりノズル先穴71及びノズルエッジ14aを含むノズル14が形成される。
このように、ポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂を金属部材に液状の状態でコーティングしてポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層を形成することによって、ポリイミド/ポリアミド樹脂層の膜厚を0.1〜5μmの範囲に容易にすることができて、高耐久性の高精度のノズルを形成することができる。
また、金属部材はノズル穴に相当する部位が樹脂をコーティングする前に先穴加工されていることで、この先穴をマスクとしてノズルを形成することができて、ノズル径精度を高精度にすることができる。
さらに、金属部材に各層を積層した後、先穴加工部にレーザーを照射し、先穴をマスクとして、ポリイミド樹脂層又はポリアミド樹脂層、Si酸化膜層及びシリコーン樹脂層のはみ出しを除去して、ノズルのエッジを形成することにより。レーザー径を絞る必要がなくなり、広域照射で多くのノズルを同時に加工することができて、コストダウンを図れる。
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法の第4実施形態として上記第3実施形態の液滴吐出ヘッドのノズル板13の製造工程を例にして図10を参照して説明する。
この実施形態では、ポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂は金属、特にSUSやNiとの被着性が高く、かつエポキシ接着剤等との接着力も高いことから、金属面に塗布することにより接着力改善の効果が得られる。また、安定で溶剤にも強く、インク等の液に接液してもほとんど劣化しない。そこで、これらの特性をいかすため、ポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂を金属部材からなるノズル形成部材の両面に塗布し、流路面側にポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂からなる接着改善層を形成する。
ポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂の塗布方法は、ディップ法などでもよいし、スピンコータ、ロールコータで片面ずつ塗る手法でもよい。このとき、ノズル内がポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂で閉塞されるため、レーザーによってノズル内部の樹脂を除去する。この場合、照射径はノズル近傍部を除去できればよいので、ノズルをレーザーで形成する場合ほど高精度を必要とせず、多穴を同時加工でき、生産性が高くなる。
これを具体的に説明すると、図10(a)に示すように、先穴71の加工がされた金属のノズル形成部材72の両面に液状のポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂をスピンコート、ロールコートなどを用いて塗布し、硬化させてポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層73を形成する。この場合、先穴71内もポリイミド樹脂或いはポリアミド樹脂が入り込む。
その後、図10(b)に示すように、吐出面側のポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層73の表面にSi酸化膜層74を形成し、更に図10(c)に示すように、Si酸化膜層74上にシリコーン樹脂層75を形成する。
次いで、図10(d)に示すように、所定のマスクを用いてノズル先穴71を含む所要の領域に液室面側からエキシマレーザー光76を照射することによって、ノズル形成部材72の液室側のポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層73を除去して、残存部分のポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層73を接合改善層77として残し、また、ノズル形成部材72をマスクとして液室面側からエキシマレーザー光76を照射することによって、ノズル先穴71内のポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層73及びこれに続くノズルエッジ14a部分のポリイミド樹脂/ポリアミド樹脂層73並びにSi酸化膜層74及びシリコーン樹脂層75を除去することによって、ノズル14を形成する。
このように、金属部材の両面にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂を塗布し、吐出面側にのみSi酸化膜層、シリコーン樹脂層を形成し、流路形成側より先穴加工周辺部にレーザーを照射し、流路側のノズル近傍部のポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂とノズルエッジのはみ出し部を除去することにより、流路側には接合性改善膜、吐出面側には高撥水の基盤となる膜の両方を同時に形成することができて、高撥水でかつ信頼性の高いヘッドを低コストで形成することができる。
上述したようなノズル板を使用した液滴吐出ヘッドを搭載した画像形成装置(インクジェット記録装置)は、ノズル面が十分な撥インク性を持つことで極めて印字品質の優れた装置となる。特に、撥インク性の出にくい表面張力の低いインク、具体的には15〜30N/m程度のインクにおいて、大きな効果を発揮する。また、フッ素系の撥水剤に濡れやすいフッ素系界面活性剤を含むインクについても大きな効果を発揮する。
本発明に係るシリコーン樹脂の撥インク膜(撥水層)を形成したノズル板と、従来使用されているNi−PTFEの共析めっきを施し、350℃・60分の加熱処理をしたノズル板の各インクに対する撥インク性を表1に示している。なお、インクの条件は、表面張力:20mN/m、35mN/m、フッ素系界面活性剤:含有、含有しないとした。
Figure 2006082445
この表1から分かるように、従来方法によるノズル板では、表面張力20mN/mのインク、及びフッ素系界面活性剤を含有するインクに対して撥インク性(撥水性)が得られなかった。これに対し、本発明に係るノズル板によれば、上記全ての条件のインクに対して良好な撥インク性を得ることができた。
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドを搭載した本発明に係る画像形成装置の一例について図11及び図12を参照して説明する。なお、図10は本発明に係る画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図11は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド101とガイドレール102とでキャリッジ103を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ104でタイミングベルト105を介して図11で矢示方向(主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ103には、例えば、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)のインク滴を吐出する本発明に係る液滴吐出ヘッドからなる4個の記録ヘッド107を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド107を構成する液滴吐出ヘッドとしては、前述したように圧電素子などの圧電アクチュエータを用いて液滴を吐出するヘッドの他にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて記録液の膜沸騰を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどをインク(液体)を吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。なお、異なる色を吐出する複数のノズル列を備えた1又は複数の液滴吐出ヘッドで記録ヘッドを構成することもできる。
キャリッジ103には、記録ヘッド107に各色のインクを供給するための各色のサブタンク108を搭載している。このサブタンク108にはインク供給チューブ109を介して図示しないメインタンク(インクカートリッジ)からインクが補充供給される。
一方、給紙カセット110などの用紙積載部(圧板)111上に積載した用紙112を給紙するための給紙部として、用紙積載部111から用紙112を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙ローラ)113及び給紙ローラ113に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド114を備え、この分離パッド114は給紙ローラ113側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙112を記録ヘッド107の下方側で搬送するための搬送部として、用紙112を静電吸着して搬送するための搬送ベルト121と、給紙部からガイド115を介して送られる用紙112を搬送ベルト121との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ122と、略鉛直上方に送られる用紙112を略90°方向転換させて搬送ベルト121上に倣わせるための搬送ガイド123と、押さえ部材124で搬送ベルト121側に付勢された先端加圧コロ125とを備えている。また、搬送ベルト121表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ126を備えている。
ここで、搬送ベルト121は、無端状ベルトであり、搬送ローラ127とテンションローラ128との間に掛け渡されて、副走査モータ131からタイミングベルト132及びタイミングローラ133を介して搬送ローラ127が回転されることで、図11のベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。なお、搬送ベルト121の裏面側には記録ヘッド107による画像形成領域に対応してガイド部材129を配置している。
また、図11に示すように、搬送ローラ127の軸には、スリット円板134を取り付け、このスリット円板134のスリットを検知するセンサ135を設けて、これらのスリット円板134及びセンサ135によってエンコーダ136を構成している。
帯電ローラ126は、搬送ベルト121の表層に接触し、搬送ベルト121の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nをかけている。
また、キャリッジ103の前方側には、図10に示すように、スリットを形成したエンコーダスケール142を設け、キャリッジ103の前面側にはエンコーダスケール142のスリットを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ143を設け、これらによって、キャリッジ103の主走査方向位置を検知するためのエンコーダ144を構成している。
さらに、記録ヘッド107で記録された用紙112を排紙するための排紙部として、搬送ベルト121から用紙112を分離するための分離部と、排紙ローラ152及び排紙コロ153と、排紙される用紙112をストックする排紙トレイ154とを備えている。
また、背部には両面給紙ユニット161が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット161は搬送ベルト121の逆方向回転で戻される用紙112を取り込んで反転させて再度カウンタローラ122と搬送ベルト121との間に給紙する。
さらに、図12に示すように、キャリッジ103の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド107のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構191を配置している。
この維持回復機構191は、記録ヘッド107の各ノズル面(ここでの「ノズル面」はノズル板13の最表面即ちフッ素系撥水層65の表面又はシリコーン樹脂75の表面を言う。)をキャピングするための各キャップ192a〜192d(区別しないときは「キャップ192」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード193と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け194などを備えている。
このように構成した画像形成装置においては、給紙部から用紙112が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙112はガイド115で案内され、搬送ベルト121とカウンタローラ122との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド123で案内されて先端加圧コロ125で搬送ベルト121に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、図示しない制御回路によって高圧電源から帯電ローラ126に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト21が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト121上に用紙112が給送されると、用紙112が搬送ベルト121に静電力で吸着され、搬送ベルト121の周回移動によって用紙112が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ103を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド107を駆動することにより、停止している用紙112にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙112を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙112の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙112を排紙トレイ154に排紙する。
また、両面印刷の場合には、表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト121を逆回転させることで、記録済みの用紙112を両面給紙ユニット161内に送り込み、用紙112を反転させて(裏面が印刷面となる状態にして)再度カウンタローラ122と搬送ベルト121との間に給紙し、タイミング制御を行って、前述したと同様に搬送ベル121上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ154に排紙する
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ103は維持回復機構191側に移動されて、キャップ192で記録ヘッド107のノズル面がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ192で記録ヘッド107をキャッピングした状態でノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行い、この回復動作によって記録ヘッド107のノズル面に付着したインクを清掃除去するためにワイパーブレード193でワイピングを行なう。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド107の安定した吐出性能を維持する。
このように、本発明に係る画像形成装置においては、ワイピングなどに対する撥水層の耐久性に優れた本発明に係る液滴吐出ヘッドを備えているので、長期に亘り、安定して高画質画像を形成することができる。
次に、この画像形成装置で用いる記録液(インク)について説明する。
本発明に係る画像形成装置に用いられる記録液は、色材として、顔料、染料のいずれでも用いることができ、また、混合して用いることもできる。
〔顔料〕
記録液に用いる顔料として、特に限定はないが、例えば以下に挙げる顔料が好適に用いられる。また、これら顔料は複数種類を混合して用いても良い。
有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
無機顔料として酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉が挙げられる。
これらの顔料の粒子径は0.01〜0.30μmで用いることが好ましく、0.01μm以下では粒子径が染料に近づくため、耐光性、フェザリングが悪化してしまう。また、0.30μm以上では、吐出口の目詰まりや画像形成装置内のフィルタでの目詰まりが発生し、吐出安定性を得ることができない。
ブラック顔料インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が、15〜40ミリミクロン、BET法による比表面積が、50〜300平方メートル/g、DBP吸油量が、40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。
このようなものとしては、例えば、No.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(以上、三菱化学製)、Raven700、同5750、同5250、同5000、同3500、同1255(以上、コロンビア製)、Regal400R、同330R、同660R、MogulL、Monarch700、同800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、Monarch1400(以上、キャボット製)、カラーブラックFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、プリンテックス35、同U、同V、同140U、同140V、スペシャルブラック6、同5、同4A、同4(以上、デグッサ製)等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
カラー顔料の具体例を以下に挙げる。
有機顔料としてアゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられ、無機顔料として酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉等が挙げられる。
色別により具体的には以下のものが挙げられる。
イエローインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、同2、同3、同12、同13、同14、同16、同17、同73、同74、同75、同83、同93、同95、同97、同98、同114、同128、同129、同151、同154等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
マゼンタインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5、同7、同12、同48(Ca)、同48(Mn)、同57(Ca)、同57:1、同112、同123、同168、同184、同202等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
シアンインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同15:3、同15:34、同16、同22、同60、C.I.バットブルー4、同60等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
また、本発明に係る画像形成装置で使用する各インクに含有される顔料は、本発明に係る液滴吐出ヘッドのために新たに製造されたものでも使用可能である。
以上に挙げた顔料は高分子分散剤や界面活性剤を用いて水性媒体に分散させることでインクジェット用記録液とすることができる。このような有機顔料粉体を分散させるための分散剤としては、通常の水溶性樹脂や水溶性界面活性剤を用いることができる。
水溶性樹脂の具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶なアルカリ可溶型樹脂であり、これらの中でも重量平均分子量3000〜20000のものが、インクジェット用記録液に用いた場合に、分散液の低粘度化が可能であり、かつ分散も容易であるという利点があるので特に好ましい。
高分子分散剤と自己分散型顔料を同時に使うことは、適度なドット径を得られるため好ましい組み合わせである。その理由は明かでないが、以下のように考えられる。
高分子分散剤を含有することで記録紙への浸透が抑制される。その一方で、高分子分散剤を含有することで自己分散型顔料の凝集が抑えられるため、自己分散型顔料が横方向にスムーズに拡がることができる。そのため、広く薄くドットが拡がり、理想的なドットが形成できると考えられる。
また、本発明で分散剤として使用できる水溶性界面活性剤の具体例としては、下記のものが挙げられる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルアリル及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩等が挙げられる。又、カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。更に両性界面活性剤としては、ジメチルアルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。又、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
また、顔料は親水性基を有する樹脂によって被覆し、マイクロカプセル化することで、分散性を与えることもできる。
水不溶性の顔料を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化する方法としては、従来公知のすべての方法を用いることが可能である。従来公知の方法として、化学的製法、物理的製法、物理化学的方法、機械的製法などが挙げられる。具体的には、次の(1)ないし(10)を挙げることができる。
(1)界面重合法:2種のモノマーもしくは2種の反応物を、分散相と連続相に別々に溶解しておき、両者の界面において両物質を反応させて壁膜を形成させる方法である。
(2)in−situ重合法:液体または気体のモノマーと触媒、もしくは反応性の物質2種を連続相核粒子側のどちらか一方から供給して反応を起こさせ壁膜を形成させる方法)である。
(3)液中硬化被膜法:芯物質粒子を含む高分子溶液の滴を硬化剤などにより、液中で不溶化して壁膜を形成する方法である。
(4)コアセルベーション(相分離)法:芯物質粒子を分散している高分子分散液を、高分子濃度の高いコアセルベート(濃厚相)と希薄相に分離させ、壁膜を形成させる方法である。
(5)液中乾燥法:芯物質を壁膜物質の溶液に分散した液を調製し、この分散液の連続相が混和しない液中に分散液を入れて、複合エマルションとし、壁膜物質を溶解している媒質を徐々に除くことで壁膜を形成させる方法である。
(6)融解分散冷却法:加熱すると液状に溶融し常温では固化する壁膜物質を利用し、この物質を加熱液化し、その中に芯物質粒子を分散し、それを微細な粒子にして冷却し壁膜を形成させる方法である。
(7)気中懸濁被覆法:粉体の芯物質粒子を流動床によって気中に懸濁し、気流中に浮遊させながら、壁膜物質のコーティング液を噴霧混合させて、壁膜を形成させる方法である。
(8)スプレードライング法:カプセル化原液を噴霧してこれを熱風と接触させ、揮発分を蒸発乾燥させ壁膜を形成させる方法である。
(9)酸析法:アニオン性基を含有する有機高分子化合物類のアニオン性基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和することで水に対する溶解性を付与し色材と共に水性媒体中で混練した後、酸性化合物で中性または酸性にし有機化合物類を析出させ色材に固着せしめた後に中和し分散させる方法である。
(10)転相乳化法:水に対して分散能を有するアニオン性有機高分子類と色材とを含有する混合体を有機溶媒相とし、前記有機溶媒相に水を投入するかもしくは、水に前記有機溶媒相を投入する方法である。
マイクロカプセルの壁膜物質を構成する材料として使用される有機高分子類(樹脂)としては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリウレア、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、多糖類、ゼラチン、アラビアゴム、デキストラン、カゼイン、タンパク質、天然ゴム、カルボキシポリメチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸の重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アルギン酸ソーダ、脂肪酸、パラフィン、ミツロウ、水ロウ、硬化牛脂、カルナバロウ、アルブミンなどが挙げられる。
これらの中ではカルボン酸基またはスルホン酸基などのアニオン性基を有する有機高分子類を使用することが可能である。また、ノニオン性有機高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートまたはそれらの(共)重合体)、2−オキサゾリンのカチオン開環重合体などが挙げられる。特に、ポリビニルアルコールの完全ケン物は、水溶性が低く、熱水には解け易いが冷水には解けにくいという性質を有しており特に好ましい。
また、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類の量は、有機顔料またはカーボンブラックなどの水不溶性の色材に対して1重量%以上20重量%以下である。有機高分子類の量を上記の範囲にすることによって、カプセル中の有機高分子類の含有率が比較的低いために、有機高分子類が顔料表面を被覆することに起因する顔料の発色性の低下を抑制することが可能となる。有機高分子類の量が1重量%未満ではカプセル化の効果を発揮しづらくなり、逆に20重量%を越えると、顔料の発色性の低下が著しくなる。さらに他の特性などを考慮すると有機高分子類の量は水不溶性の色材に対し5〜10重量%の範囲が好ましい。
すなわち、色材の一部が実質的に被覆されずに露出しているために発色性の低下を抑制することが可能となり、また、逆に、色材の一部が露出せずに実質的に被覆されているために顔料が被覆されている効果を同時に発揮することが可能となるのである。また、本発明に用いる有機高分子類の数平均分子量としては、カプセル製造面などから、2000以上であることが好ましい。ここで「実質的に露出」とは、例えば、ピンホール、亀裂などの欠陥などに伴う一部の露出ではなく、意図的に露出している状態を意味するものである。
さらに、色材として自己分散性の顔料である有機顔料または自己分散性のカーボンブラックを用いれば、カプセル中の有機高分子類の含有率が比較的低くても、顔料の分散性が向上するために、十分なインクの保存安定性を確保することが可能となるので本発明にはより好ましい。
なお、マイクロカプセル化の方法によって、それに適した有機高分子類を選択することが好ましい。例えば、界面重合法による場合は、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、エポキシ樹脂などが適している。in−situ重合法による場合は、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなどが適している。液中硬化法による場合は、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アルブミン、エポキシ樹脂などが適している。コアセルベーション法による場合は、ゼラチン、セルロース類、カゼインなどが適している。また、微細で、且つ均一なマイクロカプセル化顔料を得るためには、勿論前記以外にも従来公知のカプセル化法すべてを利用することが可能である。
マイクロカプセル化の方法として転相法または酸析法を選択する場合は、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類としては、アニオン性有機高分子類を使用する。転相法は、水に対して自己分散能または溶解能を有するアニオン性有機高分子類と、自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材との複合物または複合体、あるいは自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材、硬化剤およびアニオン性有機高分子類との混合体を有機溶媒相とし、該有機溶媒相に水を投入するか、あるいは水中に該有機溶媒相を投入して、自己分散(転相乳化)化しながらマイクロカプセル化する方法である。上記転相法において、有機溶媒相中に、記録液用のビヒクルや添加剤を混入させて製造しても何等問題はない。特に、直接記録液用の分散液を製造できることからいえば、記録液の液媒体を混入させる方がより好ましい。
一方、酸析法は、アニオン性基含有有機高分子類のアニオン性基の一部または全部を塩基性化合物で中和し、自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材と、水性媒体中で混練する工程および酸性化合物でpHを中性または酸性にしてアニオン性基含有有機高分子類を析出させて、顔料に固着する工程とからなる製法によって得られる含水ケーキを、塩基性化合物を用いてアニオン性基の一部または全部を中和することによりマイクロカプセル化する方法である。このようにすることによって、微細で顔料を多く含むアニオン性マイクロカプセル化顔料を含有する水性分散液を製造することができる。
また、上記に挙げたようなマイクロカプセル化の際に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルキルアルコール類;ベンゾール、トルオール、キシロールなどの芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;クロロホルム、二塩化エチレンなどの塩素化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類などが挙げられる。なお、上記の方法により調製したマイクロカプセルを遠心分離または濾過などによりこれらの溶剤中から一度分離して、これを水および必要な溶剤とともに撹拌、再分散を行い、目的とする本発明に用いることができる記録液を得る。以上の如き方法で得られるカプセル化顔料の平均粒径は50nm〜180nmであることが好ましい。
このように樹脂被覆することによって顔料が印刷物にしっかりと付着することにより、印刷物の擦過性を向上させることができる。
〔染料〕
記録液に用いられる染料としては、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料で耐水、耐光性が優れたものが用いられる。これら染料は複数種類を混合して用いても良いし、あるいは必要に応じて顔料等の他の色材と混合して用いても良い。これら着色剤は、本発明の効果が阻害されない範囲で添加される。
(a)酸性染料及び食用染料として、
C.I.アシッド・イエロー 17,23,42,44,79,142
C.I.アシッド・レッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289
C.I.アシッド・ブルー 9,29,45,92,249
C.I.アシッド・ブラック 1,2,7,24,26,94
C.I.フード・イエロー 3,4
C.I.フード・レッド 7,9,14
C.I.フード・ブラック 1,2
(b)直接染料として、
C.I.ダイレクト・イエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144
C.I.ダイレクト・レッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227
C.I.ダイレクト・オレンジ 26,29,62,102
C.I.ダイレクト・ブルー 1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202
C.I.ダイレクト・ブラック 19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171
(c)塩基性染料として、
C.I.ベーシック・イエロー 1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91
C.I.ベーシック・レッド 2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112
C.I.ベーシック・ブルー 1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155
C.I.ベーシック・ブラック 2,8
(d)反応性染料として、
C.I.リアクティブ・ブラック 3,4,7,11,12,17
C.I.リアクティブ・イエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67
C.I.リアクティブ・レッド 1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97
C.I.リアクティブ・ブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95等が使用できる。
〔染料・顔料共通の添加剤、物性〕
本発明に係る画像形成装置で使用する記録液を所望の物性にするため、あるいは乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止するためなどの目的で、色材の他に、水溶性有機溶媒を使用することが好ましい。水溶性有機溶媒には湿潤剤、浸透剤が含まれる。湿潤剤は乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止することを目的に添加される。
湿潤剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエ−テル額;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノ−ル等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等である。これらの溶媒は、水とともに単独もしくは複数混合して用いられる。
また、浸透剤は記録液と被記録材の濡れ性を向上させ、浸透速度を調整する目的で添加される。浸透剤としては、下記式(I)〜(IV)で表されるものが好ましい。すなわち、下記式(I)のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、式(II)のアセチレングリコール系界面活性剤、下記式(III)のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤ならびに式(IV)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤は、液の表面張力を低下させることができるので、濡れ性を向上させ、浸透速度を高めることができる。
Figure 2006082445
(Rは分岐していても良い炭素数6〜14の炭化水素鎖、kは5〜20)
Figure 2006082445
(m、nは0〜40)
Figure 2006082445
(Rは分岐していても良い炭素数6〜14の炭化水素鎖、nは5〜20)
Figure 2006082445
(Rは炭素数6〜14の炭化水素鎖、m、nは20以下の数)
前記式(I)〜(IV)の化合物以外では、例えばジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類を用いることができるが、特にジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
本発明に係る画像形成装置で使用する記録液の表面張力は、10〜60N/mであることが好ましく、被記録媒体との濡れ性と液滴の粒子化の両立の観点からは15〜30N/mであることがさらに好ましい。
同じく記録液の粘度は、1.0〜20mPa・sの範囲内であることが好ましく、吐出安定性の観点からは5.0〜10mPa・sの範囲内であることが好ましい。
また、記録液のpHは3〜11の範囲内であることが好ましく、接液する金属部材の腐食防止の観点からはpHは6〜10の範囲内であることがさらに好ましい。
さらに、記録液には防腐防黴剤を含有することができる。防腐防黴剤を含有することによって、菌の繁殖を押さえることができ、保存安定性、画質安定性を高めることができる。防腐防黴剤としてはベンゾトリアゾール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、イソチアゾリン系化合物、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が使用できる。
また、記録液には防錆剤を含有することができる。防錆剤を含有することによって、ヘッド等の接液する金属面に被膜を形成し、腐食を防ぐことができる。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が使用できる。
さらに、記録液には酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤を含有することによって、腐食の原因となるラジカル種が生じた場合にも酸化防止剤がラジカル種を消滅させることで腐食を防止することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系化合物類、アミン系化合物類が代表的であるがフェノール系化合物類としては、ハイドロキノン、ガレート等の化合物、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のヒンダードフェノール系化合物が例示され、アミン系化合物類としては、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N’−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニルエチレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン等が例示される。また、後者としては、硫黄系化合物類、リン系化合物類が代表的であるが、硫黄系化合物としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジブチレート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が例示され、リン系化合物類としては、トリフェニルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールフォスファイト等が例示される。
また、記録液にはpH調整剤を含有することができる。pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン類、硼酸、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等を用いることができる。
ここで、本発明に係る画像形成装置で使用する記録液は、表面張力が15ないし30N/mの範囲内であることが好ましい。このように、表面張力の低い記録液が使用できることで、被記録媒体への記録液の定着性が向上する。また、使用する記録液にフッ素系界面活性剤を含有することが好ましく、これによって、発色性の良い画像形成が可能となる。さらに、顔料系記録液を使用することが好ましく、これにより、被記録媒体が普通紙でも耐侯性、耐水性に優れた高画質の画像形成が可能となる。この場合、顔料系記録液として、自己分散型顔料系記録液、あるいは、高分子分散型顔料系記録液を使用することにより、特に、普通紙でも耐侯性、耐水性、擦過性に優れた高画質の画像形成が可能となる。また、樹脂被覆型顔料系記録液を使用することで、特に普通紙でも耐侯性、耐水性、擦過性に優れた高画質の画像形成が可能となる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの第1実施形態の一例を示す分解斜視説明図である。 同ヘッドの液室長手方向に沿う方向の断面説明図である。 同じく液室短手方向に沿う断面説明図である。 同液滴吐出ヘッドのノズル板のノズル部分の拡大断面説明図である。 本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法の第1実施形態の説明に供する説明図である。 本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法の第2実施形態の説明に供する説明図である。 本発明に係る液滴吐出ヘッドの第2実施形態におけるノズル板のノズル部分の拡大断面説明図である。 本発明に係る液滴吐出ヘッドの第3実施形態におけるノズル板のノズル部分の拡大断面説明図である。 本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法の第3実施形態の説明に供する説明図である。 本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法の第4実施形態の説明に供する説明図である。 本発明に係る画像形成装置の一例を示す全体構成説明図である。 同画像形成装置の要部平面説明図である。
符号の説明
1…流路ユニット
2…アクチュエータユニット
11…流路板
12…振動板
13…ノズル板
14…ノズル
16…液室
61…ノズル先穴
62…ノズル形成部材
63…ポリイミド/ポリアミド樹脂層
64…有機ケイ素化合物層
65…フッ素系撥水層
71…ノズル先穴
72…ノズル形成部材
73…ポリイミド/ポリアミド樹脂層
74…Si酸化膜層
75…シリコーン樹脂層

Claims (26)

  1. 液滴を吐出するノズルを形成するノズル形成部材を有し、前記ノズルが連通する液室内の液体を加圧して前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドにおいて、前記ノズル形成部材が金属部材からなり、滴吐出面側にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂層、有機ケイ素化合物層及びフッ素系撥水層が順次積層形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 請求項1に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記ノズル形成部材がニッケル電鋳で形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  3. 請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記フッ素系撥水層の膜厚が1Å以上300Å以下であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記フッ素系撥水層が、変性パーフルオロポリオキセタンから形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記有機ケイ素化合物層がジメチルシロキサン系化合物からなる層であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記ポリイミド樹脂層又はポリアミド樹脂層の膜厚が、0.1μm以上5μm以下であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  7. 請求項1ないし6のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを製造する製造方法であって、前記ポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂を前記金属部材に液状の状態でコーティングすることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  8. 請求項7に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記金属部材はノズル穴に相当する部位が前記樹脂をコーティングする前に先穴加工されていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  9. 請求項8に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記金属部材に各層を積層した後、前記先穴加工部にレーザーを照射し、先穴をマスクとして、ポリイミド樹脂層又はポリアミド樹脂層、有機ケイ素化合物層及びフッ素系撥水層のはみ出しを除去して、前記ノズルのエッジを形成することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  10. 請求項8又は9に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記金属部材の両面にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂を塗布し、吐出面側にのみ有機ケイ素化合物層、フッ素系撥水層を形成し、流路形成側より先穴加工周辺部にレーザーを照射し、流路側のノズル近傍部のポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂とノズルエッジのはみ出し部を除去することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  11. 液滴を吐出するノズルを形成するノズル形成部材を有し、前記ノズルが連通する液室内の液体を加圧して前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドにおいて、前記ノズル形成部材が金属部材からなり、滴吐出面側にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂層及びシリコーン樹脂が順次積層形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  12. 請求項11に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記ノズル形成部材がニッケル電鋳で形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  13. 請求項11又は12に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記シリコーン樹脂の膜厚が1μm以上20μm以下であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  14. 請求項11ないし13のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記ポリイミド樹脂層又はポリアミド樹脂層の膜厚が、0.1μm以上5μm以下であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  15. 請求項11ないし14のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記ポリイミド樹脂層又はポリアミド樹脂層とシリコーン樹脂層との間にケイ素酸化膜層が介在していることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  16. 請求項11ないし15のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを製造する製造方法であって、前記ポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂を前記金属部材に液状の状態でコーティングすることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  17. 請求項16に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記金属部材はノズル穴に相当する部位が前記樹脂をコーティングする前に先穴加工されていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  18. 請求項17に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記金属部材に各層を積層した後、前記先穴加工部にレーザーを照射し、先穴をマスクとして、ポリイミド樹脂層又はポリアミド樹脂層、シリコーン樹脂層のはみ出しを除去して、前記ノズルのエッジを形成することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  19. 請求項17又は18に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記金属部材の両面にポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂を塗布し、吐出面側にのみシリコーン樹脂層を形成し、流路形成側より先穴加工周辺部にレーザーを照射し、流路側のノズル近傍部のポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂とノズルエッジのはみ出し部を除去することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  20. 記録液を吐出する記録ヘッドを備えて被記録媒体に画像を記録する画像形成装置において、前記記録ヘッドが請求項1ないし6のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド又は請求項11ないし15のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドであることを特徴とする画像形成装置。
  21. 請求項20に記載の画像形成装置において、使用する記録液の表面張力が15ないし30N/mの範囲内であることを特徴とする画像形成装置。
  22. 請求項21に記載の画像形成装置において、前記記録液はフッ素系界面活性剤を含んでいることを特徴とする画像形成装置。
  23. 請求項21に記載の画像形成装置において、前記記録液は顔料を含む顔料系記録液であることを特徴とする画像形成装置。
  24. 請求項22に記載の画像形成装置において、前記記録液が自己分散型顔料系記録液であることを特徴とする画像形成装置。
  25. 請求項22に記載の画像形成装置において、前記記録液が高分子分散型顔料系記録液であることを特徴とする画像形成装置。
  26. 請求項22に記載の画像形成装置において、前記記録液が樹脂被覆型顔料系記録液であることを特徴とする画像形成装置。
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