JP2006081406A - ポリメラーゼ連鎖反応用流路を有するマイクロ流体デバイス - Google Patents

ポリメラーゼ連鎖反応用流路を有するマイクロ流体デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】軽量であり、焼却等による廃棄が可能で、衝撃に強い、樹脂製マイクロ流体デバイスであり、かつ、高精度の核酸増幅を行うことができるマイクロ流体デバイスを提供すること。
【解決手段】基板樹脂フィルム(A)と、表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)とを貼り合わせた、
または、
前記基板樹脂フィルム(A)と、スペーサー樹脂フィルム(C)と、もう一方の基板樹脂フィルム(D)とをこの順による貼りあわせた、
ポリメラーゼ連鎖反応用流路を有することを特徴とするマイクロ流体デバイスを提供する。

Description

本発明は、標的とする塩基配列を有するDNA断片を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応用流路を有するマイクロ流体デバイスに関する。
ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction;以下PCRと言う。)法は、微量のDNA含有試料から標的とする塩基配列を有するDNA断片を、多量に、簡便な方法で得ることができる優れた方法である。一般に、PCR法は、PCR用反応液をプラスチック製容器に入れ、ヒートブロックからなるPCR用温調機にセットするという、操作的に簡単な方法ではあるが、1〜2時間と長時間を要する。これは、DNA鎖のアニーリング、伸長、変性に適した温度に正確に制御するために多くの時間を要していることに由来する。より短時間でPCRを行う方法としては、例えば、PCRを毛細管内で行うフロースルーPCR装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
さらに、基板上に毛細管を形成した、いわゆるマイクロ流体デバイスを用いてPCRを行う方法も報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。このマイクロ流体デバイスは、硝子基板上に流路となる凹部が形成され、平板と貼り合わせたものであるが、活性エネルギー線硬化性樹脂を用いて、フォトリソグラフィー法により流路となる凹部を有する部材を形成し、この部材と平板と貼り合わせることによってもPCRを行うマイクロ流体デバイスが得られることが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開平07−075544号公報 特開2002−58470号公報 マーティン ユー コップ、アンドリュー ジェイ ド メロー、アンドレアス マンツ(Martin U. Kopp, Andrew J. de Mello, Andreas Manz),「サイエンス(SCIENCE)」,1998年,第280巻,P.1046−1048
シリコン、ガラス製のマイクロ流体デバイスは、デバイス製作プロセスに、シリコン基板、ガラス基板の切削もしくはエッチング工程、高温高圧下で長時間かけてガラスを貼り合わせる工程等があり、手間やコストがかかる。また、シリコン、ガラス等の脆性材料は、衝撃で容易に割れるために、取り扱いに注意を要し、廃棄時も焼却できないといった問題点があり、大量に使用する目的には適さない。これに対し、樹脂製のマイクロ流体デバイスは、耐衝撃性に強く、焼却等による廃棄も可能であり、コスト的にも有利である。
マイクロ流体デバイス上にポリメラーゼ連鎖反応用流路(以下、PCR用流路と言う。)を設けたマイクロ流体デバイスは、毛細管内を液体が流れ、所定の温度に制御されたヒートブロック上を液体が通過することによって、迅速に熱交換される。ヒートブロックの昇温、降温に要する時間がない分、短時間に核酸増幅されることが期待されるが、樹脂製マイクロ流体デバイスでは核酸増幅しない、あるいは、非特異増幅が起こる、などによって、標的とする塩基配列を有するDNA断片を効率的に得られないことが多々あった。
また、上記の従来の方法では、該部材の表面に平行な面内において温度が互いに異なる領域を複数設ける構成が必要なので、マイクロ流体素子が微小である場合は温度差が大きい領域を設けることが困難であった。
本発明が解決しようとする課題は、軽量であり、焼却等による廃棄が可能で、衝撃に強い、樹脂製マイクロ流体デバイスであり、かつ、高精度の核酸増幅を行うことができるマイクロ流体デバイスを提供することである。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、樹脂製マイクロ流体デバイスが、高精度の核酸増幅を行うことが難しい理由が、
1)シリコン製や、ガラス製マイクロ流体デバイスと比較して熱伝導性が低く、温度制御が厳密にされ難いこと、
2)また、原材料からPCR阻害物質が漏出し、PCRを阻害する場合があること、
の2点にあることを解明し、マイクロ流体デバイスの構造、材質等を最適化することによって、高精度の核酸増幅を行うことができる、樹脂製マイクロ流体デバイスが得られることを見いだし、上記課題を解決した。
即ち、本発明は、
基板樹脂フィルム(A)と、表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)とを貼り合わせた、
または、
前記基板樹脂フィルム(A)と、スペーサー樹脂フィルム(C)と、もう一方の基板樹脂フィルム(D)とをこの順による貼り合わせた、
ポリメラーゼ連鎖反応用流路を有するマイクロ流体デバイスを提供する。
高精度の核酸増幅を短時間で行うことができ、かつ、軽量で、衝撃に強い、焼却等による廃棄が可能な正確なマイクロ流体デバイスが得られた。
(マイクロ流体デバイス)
本発明のマイクロ流体デバイスとは、マイクロ・フルイディック・デバイス、マイクロ・ファブリケイテッド・デバイス、ラボ・オン・チップ、又はマイクロ・トータル・アナリティカル・システム(μ−TAS)などと呼ばれるものである。すなわちマイクロ流体デバイスは、内部に微細な流路を有し、該流路が樹脂を主成分とする材料により構成されており、該流路内に、流体が温度変化をうける機構、濃度調整される機構、化学反応をうける機構、流動の流速、流動の分岐、混合若しくは分離などの制御をうける機構、又は電気的、光学的な測定をうける機構等を有する化学、生化学反応用の反応機器を指す。
本発明のマイクロ流体デバイスは、その殆どが樹脂材料からなり、
1)基板樹脂フィルム(A)と表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)とを貼り合わせる、
あるいは、
2)基板樹脂フィルム(A)と、スペーサー樹脂フィルム(C)と、もう一方の基板樹脂フィルム(D)とをこの順に貼り合わせる
ことにより流路を形成する、
といった極めて簡単な方法で製造できる。
樹脂材料は、一般に、シリコンや、ガラスなどより熱伝導性が低いが、薄膜の樹脂フィルムを形成することができる。
薄膜の基板樹脂フィルム(A)の表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)を貼り合わせ、薄い基板樹脂フィルム(A)側から加熱することによって、精密な温度制御ができる。
熱伝導度は、単位長さ当たりの値であるため、基板樹脂フィルム(A)の厚みが1/10になると、10倍の熱伝導効果が得られる。厚みの薄い基板樹脂フィルム(A)を使用すると、隣合うPCR用流路の温度が異なる温度設定領域間の間隔に対して、基板樹脂フィルム(A)の厚みが非常に小さく設定できるため、隣合う温度設定領域に対する干渉を小さくすることできる。このため、精密な温度設定が可能となり、高精度の核酸増幅反応が可能となる。
また、射出成型樹脂部材(B)の凹部の深さや、スペーサー樹脂フィルム(C)の厚みを薄くすることにより、熱伝導性を更に向上することができるため、高精度なPCRを行うことができる。
更に、樹脂の種類や充填剤を選択することにより最適な流路設計を行うことができる。例えば、流路の深さ方向には熱が伝わりやすく、流路の流れ方向には、熱が伝わりにくい、熱伝導性の異方性を形成するために、基板樹脂フィルム(A)を薄膜かつ高熱伝導度とすると同時に、射出成型樹脂部材(B)及びスペーサー樹脂フィルム(C)の熱伝導度を小さくする(熱容量を大きくする)ことにより最適化を計ることができる。この設計思想に従う場合、基板樹脂フィルム(A)の熱伝導度は0.1W/m・K以上であり、且つ、射出成型樹脂部材(B)及びスペーサー樹脂フィルム(C)の熱伝導度は2W/m・K以下であることが好ましい。
(PCR用流路)
本発明のPCR用流路は、PCR用反応液が本流路を通過することによって核酸増幅されるものであれば任意の形状のものを用いることができる。アニーリング、伸長、変性に相応した、20〜50サイクルの回路であって、液体が面内方向に移動することによって核酸増幅される流路であることが温度制御が容易であることから好ましい。
(PCR阻害)
マイクロ流体デバイスは、単位体積当たりの液体に対する壁面との接触面積が非常に大きいことから、壁材に含まれるごく僅かな物質によってもPCRが阻害される恐れがある。実際、光硬化性樹脂で構成されたマイクロ流体デバイスは、この阻害が特に顕著に現れ易いことを見いだした。この阻害物質は、現時点では特定できていないが、光硬化性樹脂の未硬化物、あるいは、光照射時の分解物であろうと想定している。射出成型に使われる樹脂、あるいは、樹脂フィルムとして用いられる樹脂は、比較的分子量が高く、流路中の液体に漏洩するものは殆どないと考えられる。射出成型樹脂部材(B)を用いることによって、より高精度なPCRを行うことができた。以下、詳細に説明する。
(基板樹脂フィルム(A))
本発明で用いられる表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)に貼り付ける基板樹脂フィルム(A)は、PCRを阻害しない任意の樹脂フィルムが使用でき、例えば、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルムなどの二軸延伸フィルムなどが好適に用いられる。基板樹脂フィルム(A)の厚みは200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。厚みが200μmを越えると、PCRを行うためのヒーターからの熱伝導性が悪く、PCRの効率を低下させる。基板樹脂フィルム(A)は、薄くする方が熱伝導性が向上し、より好ましいが、薄くしすぎると強度を保てないことから、マイクロ流体デバイスを使用する際に、強度を保てる範囲で薄くすることが好ましい。このため、基板樹脂フィルム(A)の厚みは、1μm〜200μmが好ましく、10μm〜200μmが更に好ましい。
(基板樹脂フィルム(A)の熱伝導度)
基板樹脂フィルム(A)は、その熱伝導度が、0.01W/m・K以上であることが好ましい。更に0.05W/m・K以上が好ましく、0.1W/m・K以上が特に好ましい。
0.01W/m・K未満であると、PCRを行うためのヒーターからの熱伝導性が悪く、PCRの効率を低下させる。本発明で用いられる基板樹脂フィルム(A)は、前述の熱伝導度を満たす市販の樹脂フィルムを使用することもできる。樹脂フィルム内に熱伝導性充填剤を含んだもの、樹脂フィルム表面に熱伝導性物質を固着させたものなど、熱伝導性を向上させた樹脂フィルムも、PCRを阻害しないものであれば、好ましく使用することができる。
(基板樹脂フィルム(A)中の熱伝導粒子)
本発明に使用する基板樹脂フィルム(A)に熱伝導粒子を含有させることにより、熱伝導度を高めることができる。熱伝導性が高い充填剤であれば、特に限定されないが、例えば金属酸化物、金属窒化物、炭化珪素、水和金属化合物の群から選ばれた少なくとも1種を挙げることができる。かかる金属酸化物としては、酸化アルミニウム等が挙げられる。金属窒化物としては窒化硼素、窒化アルミニウム等が挙げられる。水和金属化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。ポリマー100質量部に対して50〜500質量部含有させることができるが、500質量部を越えるとシートの柔軟性が損なわれるので、ヒートブロックへの追従性が低下し熱伝導性が低下する。
本発明では、ヒートブロックに接する部分に、基板樹脂フィルム(A)を使用する。ガラスを基板とする従来のマイクロ流体デバイスに比べて、基板樹脂フィルム(A)は、熱伝導度は使用する材料により変化させることができるので、好適な材料を選択することができる。最近では、高配向性の付与や、熱伝導粒子の添加により数W/m・K以上もの高い熱伝導度を有する樹脂フィルムが開発されているが、もちろんこれらの樹脂フィルムも好ましく使用することができる。
(熱伝導効率)
本発明のマイクロ流体デバイスは、λ:基板樹脂フィルム(A)の熱伝導度(W/m・K、l:基板樹脂フィルム(A)の厚さ(μm)、d:流路の深さ(μm)とすると、下記式1を満たすことが好ましい。
(l+d)/λ≦2000・・・(式1)
(l+d)/λが2000を越えると、PCR用反応液への熱伝導が小さくなり、PCR効率が低下する。すなわち、後述する流路深さにも依存するが、基板樹脂フィルム(A)が厚い場合、より熱伝導度の高い基板樹脂フィルム(A)を使用することが好ましい。
(第一の形態)
本発明の第一の形態は、表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)に基板樹脂フィルム(A)を貼り合わせたことを特徴とするPCR用流路を有するマイクロ流体デバイスである。本発明でPCR用流路とは、PCRを行うためにマイクロ流体デバイス上に設置された流路部分を称し、耐熱性DNAポリメラーゼ、プライマー、鋳型DNA、ヌクレオチドおよび緩衝液を必須とするPCR用反応液がこのマイクロ流体デバイスのPCR用流路を通過することによってPCRが進行し、標的とする塩基配列を有するDNA断片が得られる。
(射出成型樹脂部材(B))
本発明の表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)は、平滑である表面上にPCR用流路に相当する凹部を必須として有する樹脂部材である。該樹脂部材は、PCRを行う際の熱に耐えうる高分子材料であれば任意のものが使用でき、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン等の樹脂が使用できる。これらの樹脂を、射出成型することによって本発明の表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)を得ることができる。凹部の一部に貫通口を設け、この貫通口に合わせて、流路内にPCR用反応液を導入するための、あるいは、流路内で核酸増幅されたPCR用反応液を取り出すためのポート部を、凹部を有する面と反対側の面に設けるように金型をデザインし、凹部とポート部とを併せ有する部材を一気に射出成型することもできる。
(射出成型樹脂部材(B)の熱伝導度)
射出成型樹脂部材(B)の少なくともPCR用流路部は、薄い板状であることが好ましく、この厚さは2mm以下であることが好ましく、厚さが1mm以下であることがより好ましい。厚さが2mmを越えるとマイクロ流体デバイスの水平方向の熱流束が大きくなり、独立した温度に制御することが困難になる。
また、射出成型樹脂部材(B)の熱伝導度は、本発明のマイクロ流体デバイスの使用法によって、適値が異なる。
本発明のマイクロ流体デバイスの基板樹脂フィルム(A)側からのみ加熱する場合、射出成型樹脂部材(B)の熱伝導度は、2W/m・K以下であることが好ましく、1W/m/K以下であることがより好ましい。射出成型樹脂部材(B)の熱伝導度が、2W/m・Kより高いとマイクロ流体デバイスの水平方向の熱流束が大きくなり、独立した温度に制御することが困難になる。
一方、本発明のマイクロ流体デバイスを、基板樹脂フィルム(A)、射出成型樹脂部材(B)の両面からヒートブロックにより加熱する場合、射出成型樹脂部材(B)の熱伝導度は、概ね基板樹脂フィルム(A)と同程度であることが好ましい。
(射出成型樹脂部材(B)の凹部の深さ)
本発明の表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)の凹部の深さは任意であるが、PCR用流路部に相当する凹部の深さは、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。300μmを越えると、PCRを行うためのヒーターからの熱伝導性が悪く、PCRの効率を低下させる。凹部が深い場合、マイクロ流体デバイスの流速を低下させることによって、PCRの効率を向上させることはできるが、PCR時間が長くなり、マイクロ流体デバイスを用いる効果が薄れる。また、凹部が浅くなり過ぎると、液体を流す際の圧損が大きくなり過ぎたり、基板樹脂フィルム(A)を貼る際に、流路の深さが均一になり難く、一定の流速を保てない等の問題が生じることから、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。以上より、射出成型樹脂部材(B)の凹部の深さは10μm〜200μmであることがもっとも好ましい。
(PCR用流路部の流路深さ及び流路幅)
また、本発明のPCR用流路部の流路深さは、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。300μmを越えると、PCRを行うためのヒーターからの熱伝導性が悪く、PCRの効率を低下させる。流路部が深い場合、マイクロ流体デバイスの流速を低下させることによって、PCRの効率を向上させることはできるが、PCR時間が長くなり、マイクロ流体デバイスを用いる効果が薄れる。また、流路が浅くなり過ぎると、液体を流す際の圧損が大きくなり過ぎたり、流路の深さが不均一になり易く、一定の流速を保てない等の問題が生じることから、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。以上より、射出成型樹脂部材(B)の凹部の深さは10μm〜200μmであることがもっとも好ましい。
流路幅は、500μm以下が好ましく、200μmが好ましい。また製造上の精度の点から1μm以上、更には10μm以上が好ましい。以上のことから、流路幅は、10〜200μmがもっとも好ましい。
(基板樹脂フィルム(A)と、表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)との貼り合わせ)
基板樹脂フィルム(A)と、表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)とを貼り合わせるには、熱融着、超音波融着など、接着剤を用いない公知の方法で接着することが好ましい。接着剤を使用しないと、PCR阻害する物質の漏洩を抑制することができる。接着剤を使用して接着することも勿論でき、全面に接着剤が塗布された基板樹脂フィルム(A)を表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)と貼り合わせても勿論良いが、接着剤等が凹部に面さない様に接着することがより好ましく、例えば、表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)の凹部以外に接着剤を塗布し、基板樹脂フィルム(A)と貼り合わせるような方法が好ましく用いられる。接着剤は、熱硬化性、もしくは活性エネルギー線硬化性を有していることが好ましい。接着後、加熱、もしくは光照射し、接着剤を硬化させることによって、接着剤が、流路内に流れる液体と接触し、PCRを阻害することを抑制することができる。
(第一の形態のマイクロ流体デバイスの使用方法)
次に、本発明の第一の形態のマイクロ流体デバイスの使用方法について述べる。本マイクロ流体デバイスは、アニーリング、変性の少なくとも2つの温度に調整されたヒートブロックに、本マイクロ流体デバイスの基板樹脂フィルム(A)面側を接触させて使用する。PCR用反応液がPCR用流路を流れることによって、アニーリング、変性、及び、その両温度間に存在する伸長反応に適した温度の3つの温度領域を20〜50サイクル通過し、核酸増幅される。必要に応じて、ヒートブロックは、伸長反応に適する温度に調整された3つ目のヒートブロックを用いても勿論良い。本発明のPCR用流路部は、PCRを行うための流路が薄い基板樹脂フィルム(A)に近接して配置されているために、ヒートブロックからの熱伝導性が良く、アニーリング、伸長、変性に適した温度に正確に温度制御できる。また、本マイクロ流体デバイスは、PCR用流路部が薄いことから、異なる温度に制御された領域間の熱流束を抑えられ、独立した温度制御ができる。ヒートブロックは、補助用として射出成型樹脂部材(B)側に設けてもよい。
なお、本発明のマイクロ流体デバイスは、表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)に基板樹脂フィルム(A)を貼り合わせたものであるが、本発明における流路深さとは、表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)を天井、基板樹脂フィルム(A)を底面とし、流路の鉛直方向の距離を深さ、水平方向の距離を幅と便宜上称する。したがって、基板樹脂フィルム(A)側を底面とする様な使い方を定めている訳ではなく、表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)を底面として使用する、あるいは、表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)と基板樹脂フィルム(A)が側面となる様に直立させて使用する等、任意の使い方ができる。
(第二の形態)
本発明の第二の形態は、基板樹脂フィルム(A)と、スペーサー樹脂フィルム(C)と、もう一方の基板樹脂フィルム(D)とを、この順に積層させたPCR用流路を有するマイクロ流体デバイスである。本発明でPCR用流路とは、PCRを行うためにマイクロ流体デバイス上に設置された流路部分を称し、耐熱性DNAポリメラーゼ、プライマー、鋳型DNA、ヌクレオチドおよび緩衝液を必須とするPCR用反応液がこのマイクロ流体デバイスのPCR用流路を通過することによってPCRが進行し、標的とする塩基配列を有するDNA断片が得られる。すなわち、PCR用流路を構成する流路相当部分が必須として形成されるようにスペーサー樹脂フィルム(C)を、2枚の基板樹脂フィルム(A)と基板樹脂フィルム(D)で挟む様に、すなわち、PCR用流路を構成する流路相当部分が空隙となる様に積層し、この空隙部を流路とすることを特徴とするマイクロ流体デバイスである。
本発明の樹脂フィルムを積層させたマイクロ流体デバイスは、基板樹脂フィルム(A)スペーサー樹脂フィルム(C)、基板樹脂フィルム(D)の3枚のフィルムを必須とした製法を示すものではなく、例えば、基板樹脂フィルム(A)、基板樹脂フィルム(D)を一枚の樹脂フィルム(A’)とし、樹脂フィルム(A’)を折り畳みスペーサー樹脂フィルム(C)を挟みこむように作製してもよく、基板樹脂フィルム(A)、スペーサー樹脂フィルム(C)、基板樹脂フィルム(D)が積層された構造を有していればよい。また、PCRを抑制しない様な範囲で、多くの樹脂フィルムを積層して用いても良い。
この第二の形態において、基板樹脂フィルム(A)、もしくは基板樹脂フィルム(D)の内、いずれか一方、あるいは、両方の樹脂フィルムの、積層した際に流路の天井もしくは底となる部分に、予め貫通口を設けておくことが好ましい。基板樹脂フィルム(A)、スペーサー樹脂フィルム(C)、基板樹脂フィルム(D)を積層して、マイクロ流体デバイスを作製した際、この貫通口からPCR用反応液を導入、もしくは、核酸増幅されたPCR用反応液を取り出すための取り出し口とすることができる。また、必要に応じて、この貫通口に合わせて、ポート部材を接着して用いることもできる。
(スペーサー樹脂フィルム(C))
本発明で用いられるスペーサー樹脂フィルム(C)は、PCRを阻害しない任意の樹脂フィルムが使用でき、例えば、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルムなどの二軸延伸フィルムなどが好適に用いられる。
本発明で用いられる流路相当部分を形成するために、2枚の基板樹脂フィルム間に積層されるスペーサー樹脂フィルム(C)は、短冊状に切った樹脂フィルム間に流路を形成するようにする態様や、流路部分が切り抜かれた樹脂フィルムである態様が挙げられる。流路部分が切り抜かれたスペーサー樹脂フィルム(C)は、樹脂フィルムを公知慣用の方法で流路となる部分を切り抜けば良い。スペーサー樹脂フィルム(C)は、ほぼその厚さがマイクロ流体デバイスの流路深さとなる。該樹脂フィルムの厚さは、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。300μmを越えると、PCRを行うためのヒーターからの熱伝導性が悪く、PCRの効率を低下させる。また、該樹脂フィルムの厚さは1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。樹脂フィルムが1μmより薄いと、樹脂フィルムの取り扱いが困難となり、液体を流す際の圧損が大きくなり過ぎたり、樹脂フィルムを貼る際に、流路の深さが均一になり難く、一定の流速を保てない等の問題が生じる。このことから、スペーサー樹脂フィルム(C)の厚さは、10〜200μmが最も好ましい。
短冊状に切った樹脂フィルム間に流路を形成する場合及び、フィルムの一部が切り抜かれた樹脂フィルムにより流路を形成する場合のいずれの場合も、流路幅は、500μm以下が好ましく、200μmが好ましい。また製造上の精度の点から1μm以上、更には10μm以上が好ましい。以上のことから、流路幅は、10〜200μmがもっとも好ましい。
(スペーサー樹脂フィルム(C)の熱伝導度)
スペーサー樹脂フィルム(C)の熱伝導度は、2W/m・K以下であることが好ましく、1W/m/K以下であることがより好ましい。スペーサー樹脂フィルム(C)の熱伝導度が、2W/m・Kより高いとマイクロ流体デバイスの水平方向の熱流束が大きくなり、独立した温度に制御することが困難になる。
(基板樹脂フィルム(D))
本発明で用いられる基板樹脂フィルム(D)は、PCRを阻害しない任意の樹脂フィルムが使用でき、例えば、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルムなどの二軸延伸フィルムなどが好適に用いられる。基板樹脂フィルム(D)の厚みは特に制限されないが、基板樹脂フィルム(D)側からもPCRを行うための補助ヒーターによって加熱する場合は、基板樹脂フィルム(D)の厚みは200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。厚みが200μmを越えると、PCRを行うためのヒーターからの熱伝導性が悪く、PCRの効率を低下させる。また、基板樹脂フィルム(D)は、基板樹脂フィルム(A)と同様に、薄くする方が熱伝導性が向上し、より好ましいが、薄くしすぎると強度を保てないことから、マイクロ流体デバイスを使用する際に、強度を保てる範囲で薄くすることが好ましい。このため、基板樹脂フィルム(D)の厚みは、1μm〜200μmが好ましく、10μm〜200μmが更に好ましい。
(基板樹脂フィルム(D)の熱伝導度)
基板樹脂フィルム(D)の熱伝導度は、本発明のマイクロ流体デバイスの使用法によって、適値が異なる。本発明のマイクロ流体デバイスの基板樹脂フィルム(A)側からのみ加熱する場合、基板樹脂フィルム(D)の熱伝導度は、2W/m・K以下であることが好ましく、1W/m/K以下であることがより好ましい。基板樹脂フィルム(D)の熱伝導度が、2W/m・Kより高いとマイクロ流体デバイスの水平方向の熱流束が大きくなり、独立した温度に制御することが困難になる。一方、本発明のマイクロ流体デバイスを、基板樹脂フィルム(A)、基板樹脂フィルム(D)の両面から加熱する場合、基板樹脂フィルム(D)として、基板樹脂フィルム(A)と同様の熱伝導度を有する樹脂フィルムが好ましく使用できる。勿論、前述の樹脂フィルム内に熱伝導性充填剤を含んだもの、樹脂フィルム表面に熱伝導性物質を固着させたものなど、熱伝導性を向上させた樹脂フィルムも、PCRを阻害しないものであれば、好ましく使用することができる。
(基板樹脂フィルム(A)と、スペーサー樹脂フィルム(C)、基板樹脂フィルム(D)との貼り合わせ)
本発明の基板樹脂フィルム(A)、流路相当部分が切り抜かれたスペーサー樹脂フィルム(C)、基板樹脂フィルム(D)を互いに貼り合わせるには、熱融着、超音波融着など、接着剤を用いない公知の方法で接着することが好ましい。勿論、接着剤を使用して接着することもでき、接着剤等が凹部に入り込まない様に接着することが好ましい。例えば、樹脂フィルム(C)の片面、好ましくは、両面に、予め接着剤が塗布された剥離紙付きの樹脂フィルムの流路相当部分を切り抜き、剥離紙を剥離し、基板樹脂フィルム(A)、基板樹脂フィルム(D)で挟みこむ様に貼り合わせればよい。この際、用いられる接着剤は、熱硬化性、もしくは活性エネルギー線硬化性を有していることが好ましい。接着後、加熱、もしくは活性エネルギー線照射し、接着剤を硬化させることによって、接着剤が、流路内に流れる液体と接触し、PCRを阻害することを抑制することができる。接着させる方法は、ここに挙げた以外にもPCRを阻害しない様な任意の方法が使用できることはいうまでもない。
(第二の形態のマイクロ流体デバイスの使用方法)
次に、本発明の第二の形態のマイクロ流体デバイスの使用方法について述べる。本マイクロ流体デバイスは、アニーリング、変性の少なくとも2つの温度に調整されたヒートブロックに、本マイクロ流体デバイスの基板樹脂フィルム(A)面側を接触させて使用する。PCR用反応液がPCR用流路を流れることによって、アニーリング、変性、及び、その両温度間に存在する伸長反応に適した温度の3つの温度領域を20〜50サイクル通過し、核酸増幅される。必要に応じて、ヒートブロックは、伸長反応に適する温度に調整された3つ目のヒートブロックを用いても勿論良い。本発明のPCR用流路部は、PCRを行うための流路が薄い基板樹脂フィルム(A)に近接して配置されているために、ヒートブロックからの熱伝導性が良く、アニーリング、伸長、変性に適した温度に正確に温度制御できる。また、本マイクロ流体デバイスは、PCR用流路部が薄いことから、異なる温度に制御された領域間の熱流束を抑えられ、独立した温度制御ができる。
また、本発明の第二の形態のマイクロ流体デバイスは、流路が薄い基板樹脂フィルム(A)、および(D)に近接して配置されているために、補助用として基板樹脂フィルム(D)側にもヒートブロックを用意すると、アニーリング、伸長、変性に適した温度により正確に温度制御でき、好ましい使用方法である。
なお、本発明の第二の形態のマイクロ流体デバイスにおいても、第一の形態のマイクロ流体デバイスと同様、底面、側面等の指定はなく、直立させて使用する等、任意の使い方ができる。
以上、2つの実施形態について述べてきたが、いずれの形態にあっても、本発明のマイクロ流体デバイスは、PCR用流路以外に、分析、貯留等のための流路を有していてもよく、合流・分離するための流路を有していても勿論よい。すなわち、核酸増幅に支障のない範囲であれば、公知のマイクロ流体デバイスの様々な技術を利用できる。
以下、本発明を実施例により説明する。
[活性エネルギー線硬化性接着剤の調製]
ユニディックV−4263(大日本インキ化学工業株式会社製のウレタンアクリレートオリゴマー)の60質量部、ユニディックV−5507(大日本インキ化学工業株式会社製のエポキシアクリレートオリゴマー)の20重量部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの20重量部、酢酸エチル20重量部、及び、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)3質量部を均一に混合して活性エネルギー線硬化性接着剤を調製した。
[マイクロ流体デバイスの作製]
ポリカーボネート樹脂を射出成型し、幅200μm、深さ100μmの凹部、及び流路内にPCR用反応液を導入するための、あるいは、流路内で核酸増幅されたPCR用反応液を取り出すための入り口及び出口としてのポート部を有する図2に示す樹脂部材を得た。この部材の表面に凹部に入り込まないように前記エネルギー線硬化性接着剤を塗布し、ごく短時間紫外線を照射し、該接着剤を半硬化させた後、表面をコロナ放電処理したPMMA樹脂フィルムを貼り合わせ、紫外線を照射して、接着剤を完全硬化させることによって、図2に示す目的とするマイクロ流体デバイス(A−1)を得た。
[PCR用反応液の調製]
DNAポリメラーゼとしてジーンタック(株式会社ニッポンジーン製)を使用し、PCR用緩衝液、dNTP混合液は該酵素に添付のものを使用した。10μlのPCR用緩衝液(10倍濃縮)、8μlのdNTP混合液(dATP、dGTP、dCTP、dTTP 各2.5mM)、5μlのプライマー(1)(primer (1))(10μM;配列番号1)、5μlのプライマー(2)(primer (2))(10μM;配列番号2)、0.5μlの5ユニット/μlジーンタック、テンプレートとして1μlのras Mutant Set c−Ki−ras codon12 Gly(1ng;タカラバイオ株式会社製;配列番号3)、さらに滅菌水を加えて100μlとし、PCR用反応液を調製した。
[PCRの実施]
マイクロ流体デバイス(A−1)を3つのヒートブロックから成るヒーター上に、図1に示す位置に固定した。ヒートブロック(A)を90℃、ヒートブロック(B)を72℃、ヒートブロック(C)を55℃に設定した。前述のPCR用反応液25μlをデバイスの開口部(入口)に注入し、さらに該開口部にマイクロシリンジポンプ(kdScientific社製 IC3200)を接続し、5μl/分にて送液した。これにより、該PCR用反応液はヒートブロック(A)、(B)、(C)、(B)、(A)、(B)、(C)・・・という順序でその上を通過し、その過程で核酸増幅の酵素反応が起こる。
反応の結果、核酸が増幅されたことを常法に従いアガロースゲル電気泳動によって検証した。核酸増幅を示すバンドが検出され(図4)、よって該マイクロ流体デバイスを用いたPCRが正常に進行したことが確認された。
実施例1で、ポリカーボネート樹脂の代わりにポリメチルメタクリレート樹脂を用い、流路深さを100μmから200μmに変更した以外は実施例1と同様の操作でマイクロ流体デバイス(A−2)を得た。本デバイス(A−2)を用いて、実施例1と同様にPCRを行い、核酸が増幅されたことを常法に従いアガロースゲル電気泳動によって検証した。核酸増幅を示すバンドが検出され(図5)、よって該マイクロ流体デバイスを用いたPCRが正常に進行したことが確認された。
両面に粘着剤が塗布されている膜厚100μmPETフィルムの両面剥離紙がついたまま、幅200μmの流路部が切り抜かれた形状にレーザー加工した。また、厚さ100μmのPETフィルムの二箇所に約200μmの孔を設けた。レーザー加工したフィルムの流路部末端と、孔を空けたPETフィルムの孔とを合わせるように貼り合わせた後、別の厚さ100μmのPETフィルムと貼り合わせ、マイクロ流体デバイスを得た。この2つの孔に、それぞれ内径3mm、高さ5mmのポリ塩化ビニル管を接着してポート部とし、図3に示すマイクロ流体デバイス(A−3)を得た。本デバイス(A−3)を用いて、実施例1と同様にPCRを行い、核酸が増幅されたことを常法に従いアガロースゲル電気泳動によって検証した。核酸増幅を示すバンドが検出され(図6)、よって該マイクロ流体デバイスを用いたPCRが正常に進行したことが確認された。
(比較例1)
以下の操作により、比較用マイクロ流体デバイスを作製した。
[活性エネルギー線硬化性組成物(1)の調製]
ユニディックV−4263(大日本インキ化学工業株式会社製のウレタンアクリレートオリゴマー)80質量部、ニューフロンティアHDDA(第一工業製薬株式会社製の1,6−ヘキサンジオールジアクリレート)を20質量部、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)5質量部を均一に混合して組成物(1)を調製した。
[活性エネルギー線硬化性組成物(2)の調製]
ユニディックV−4263(大日本インキ化学工業株式会社製のウレタンアクリレートオリゴマー)の60質量部、ニューフロンティアHDDAの40質量部、光重合開始剤としてイルガキュア184の5質量部、及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学株式会社製)0.5質量部を均一に混合して組成物(2)を調製した。
[マイクロ流体デバイスの作製]
ポリアクリレート製の1mm厚の基板に、膜厚が10μmとなるように組成物(1)を塗布し、紫外線を照射して硬化させた。この塗膜の上に、膜厚が350μmとなるように組成物(2)を塗工し、該組成物(2)の未硬化塗膜を形成した。流路形成部を黒色で描画したフォトマスクを通して紫外線の平行光を照射し、流路以外の部分を硬化させた。次に、非照射部分の未硬化の組成物(2)をエタノールで除去して、表面に幅200μm、深さ350μmの凹部を有する塗膜を形成した。この凹部の両端をドリルで300μmの貫通口を設けた。次に、組成物(1)を、膜厚100μmのポリプロピレンフィルム上に塗布し、紫外線を3秒照射し、半硬化塗膜を形成した。これを蓋として前記凹部を有する塗膜に貼り合わせ、紫外線を照射して完全に硬化させ、マイクロ流体デバイスを得た。2つの孔に、それぞれ内径3mm、高さ5mmのポリ塩化ビニル管を接着してポート部とし、比較用マイクロ流体デバイス(B−1)を得た。本デバイス(B−1)を用いて、実施例1と同様にPCRを行い、核酸増幅の有無を常法に従いアガロースゲル電気泳動によって確認した。核酸増幅を示すバンドがバンドは全く検出されず(図7)、核酸増幅反応が進行しなかった。
(比較例2)
比較例1で、流路深さを350μmから200μmに変更した以外は、比較例1と同様の操作でマイクロ流体デバイス(B−2)を得た。本デバイス(B−2)を用いて、実施例1と同様にPCRを行い、核酸増幅の有無を常法に従いアガロースゲル電気泳動によって確認した。核酸増幅を示すバンドがバンドは全く検出されず(図8)、核酸増幅反応が進行しなかった。
以上の実施例、比較例をまとめると次表の通りとなり、本発明の有用性が明らかである。
以上の実施例及び比較例の結果より、本発明のPCR用流路を有するマイクロ流体デバイスは、そのほとんどが樹脂で構成されているため、軽量であり、焼却による廃棄が可能で、衝撃に強いという特徴を有し、従来の樹脂製マイクロ流体デバイスでの課題であったPCR増幅の阻害が起こらず、若しくは起こりにくいことから高精度の核酸増幅が可能となったことがわかる。
マイクロ流体デバイスを用いたフロースルーPCR法の模式図である。 実施例1のマイクロ流体デバイスの断面模式図である。 実施例3のマイクロ流体デバイスの断面模式図である。 実施例1で行ったPCRの結果をアガロースゲル電気泳動で解析した写真である(右列側)。左列側はマーカー(タカラバイオ(株)の20bp DNA Ladder)。 実施例2で行ったPCRの結果をアガロースゲル電気泳動で解析した写真である(右列側)。左列側はマーカー(タカラバイオ(株)の20bp DNA Ladder)。 実施例3で行ったPCRの結果をアガロースゲル電気泳動で解析した写真である(右列側)。左列側はマーカー(タカラバイオ(株)の20bp DNA Ladder)。 比較例1で行ったPCRの結果をアガロースゲル電気泳動で解析した写真である(右列側)。左列側はマーカー(タカラバイオ(株)の20bp DNA Ladder)。 比較例2で行ったPCRの結果をアガロースゲル電気泳動で解析した写真である(右列側)。左列側はマーカー(タカラバイオ(株)の20bp DNA Ladder)。
符号の説明
1 変性温度に設定したヒートブロック(A)
2 伸長反応温度に設定したヒートブロック(B)
3 アニーリング温度に設定したヒートブロック(C)
4 マイクロ流体デバイス
5 ポート部(入口)
6 ポート部(出口)
7 基板樹脂フィルム(A)
8 射出成型部材
9 流路
10 樹脂フィルム(B)
11 樹脂フィルム(C)
12 樹脂フィルム(D)

Claims (9)

  1. 基板樹脂フィルム(A)と、表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)とを貼り合わせた、
    または、
    前記基板樹脂フィルム(A)と、スペーサー樹脂フィルム(C)と、もう一方の基板樹脂フィルム(D)とをこの順による貼りあわせた、
    ポリメラーゼ連鎖反応用流路を有するマイクロ流体デバイス。
  2. 前記基板樹脂フィルム(A)の厚さが100μm以下である請求項1記載のマイクロ流体デバイス。
  3. 前記基板樹脂フィルム(A)の熱伝導度が 0.1W/m・K以上である請求項1記載のマイクロ流体デバイス。
  4. 前記表面に凹部を有する射出成型樹脂部材(B)がポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、またはポリメチルペンテンである請求項1記載のマイクロ流体デバイス。
  5. 前記ポリメラーゼ連鎖反応用流路が、液体が面内方向に移動することによって核酸増幅が起こるように設計されている請求項1記載のマイクロ流体デバイス。
  6. 下記式1を満たす、請求項1記載のデバイス。
    (l+d)/λ≦2000・・・(式1)
    (式中の記号は下記の意味を有する。λ:基板樹脂フィルム(A)の熱伝導度(W/m・K)、l:基板樹脂フィルム(A)の厚さ(μm)、d:流路の深さ(μm))
  7. 前記スペーサー樹脂フィルム(C)が、少なくとも片面に接着剤が塗布されている請求項1記載のマイクロ流体デバイス。
  8. 接着剤が熱硬化性である請求項7記載のマイクロ流体デバイス。
  9. 接着剤が活性エネルギー線硬化性である請求項7記載のマイクロ流体デバイス。
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