JP2004156925A - ラボオンチップ - Google Patents
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Abstract
【課題】微量な物質の混合、反応、分離精製、検出等の単位操作に於いて混合、反応、分離精製、線上効率が良く、反応物質が少量、短時間反応、高感度検出を可能にする。
【解決手段】試料流体が流入する試料流入部と、当該試料流出部と同一形状の試料流出部と、前記試料流入部と試料流出部とを接続する試料流路とからなる複数のフロースルーセルが配設された帯状シートからなるものである。
【選択図】なし
【解決手段】試料流体が流入する試料流入部と、当該試料流出部と同一形状の試料流出部と、前記試料流入部と試料流出部とを接続する試料流路とからなる複数のフロースルーセルが配設された帯状シートからなるものである。
【選択図】なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、マイクロアレー、バイオチップ、DNAチップ、プロティンチップ
およびラボオンチップ等と称される各種微少物質の混合、反応、加熱、冷却、分離精製、相合流、相分離、検出等の単位操作機能を持つチップ、およびそれを用いた試料の混合、反応、加熱、分離精製、相合流、相分離、検出に際しての使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、DNA,RNA等の核酸、オリゴペプチド、タンパク質等のバイオ物質を検出するためにDNAチップ、プロティンチップ等のバイオチップが市販されている。DNAチップに於いてはシリコンウェハーやガラス基板上にオリゴヌクレオチド等の核酸分子をプローブとして高密度に固定化し、細胞等から抽出した核酸分子を蛍光色素等でラベル化した検体をDNAチップに浸積する事で前記プローブとハイブリダイゼーションさせ、洗浄により未ハイブリダイゼーション物質を除去した後に、ハイブリダイゼーションしたプローブの位置とその量を蛍光検出装置等により検出する。(例えば、特許文献1を参照)
これらのDNAチップではプローブと検体とのハイブリダイセーション効率を上げることと、検体量を減らすことを目的として、プローブを結合したセルを高密度化し、チップ面積を縮小する事が一般に行われており、現在において最小のチップでは1cm2のチップ上に数万個のセルを搭載されたものも実用化されている。しかしこれらのチップにおいては、セル面積を縮小する事は単位面積当たりに搭載されるDNAプローブ数を減少させる事を意味し、検出感度低下につながる。またこれらのチップにおける検体とプローブとの反応では、DNAプローブを搭載したチップ全体に検体を浸積させる方法が採用されているが、この場合はプローブ搭載セル以外の部分にも検体を浸積させる事となり必要検体量が増え、かつ、セル以外部分への検体付着に伴う洗浄が必要となる。また検体のハイブリダイゼーションには通常5−10時間を要する。洗浄は、平面セル上を洗浄液を流動させる事により行われるが、洗浄液の流動状態は複雑であり、洗浄液の投入量、流速、セルの配置等により微妙に異なるため、全てのセルを均一に洗浄する事が困難である。さらに、不十分な洗浄セルがあるとノイズの原因となる。
【0003】
これらの課題を解消するために近年フロースルー型セルと称する貫通孔を持ち孔の両端面が開放された三次元型のバイオチップが提案されている。(例えば、特許文献2、3および特開2002−122596号を参照)
これらのフロースルー型チップは、平面上に垂直に貫通孔を設け、上面貫通孔から検体や洗浄液を投入し、必要により下側から減圧する事により溶液を貫通孔内部に導入し、下面貫通孔から溶液を排出するいわゆるフローダウン法で使用される。フローダウン法では平面型チップに比し、洗浄が容易、かつ、より均一に行われ、また検体を投入した場合孔の内部を逐次下に検体が移動しながら反応するため、プローブとの反応効率が高く反応時間が大幅に短縮されるとされている。
【0004】
またフロースルーセルの場合にはセルは三次元形状となり、平面型チップの二次元形状に比し同じチップ面積で比較した場合にはセル単位面積当たりのセル密度を増やす事が可能であり、高感度検出につながるとされている。
セルに検体を投入する方法としては、チップ全体に検体液を含浸するか、それぞれの個別のセルにスポッターで検体をスポットする方法が可能である。
【0005】
本発明者もスポット法による検体投入方法を考案し特願2002−148048号として出願している。
しかし前者の方法では検体液がセル以外の箇所にも含浸されるために過剰の検体溶液が必要となる。一方後者では、検体液が個別のセルに分割スポットされるためにセル毎に割り当てられる検体数はスポット量単位にあらかじめ限定され、チップ全体でのプローブと検体数のマッチングではなく個別セルに割り当てられた検体とプローブのマッチングになるために、検体の有効利用において含浸法に比し劣る。
【0006】
即ちあるセルにスポットされた検体がプローブと反応せず余った場合、余った検体は他のセルに使用させる事が出来ない。
そのためにセル間にマイクロチャンネルを設けセル間で検体を共有しながら、検体量を最低限にする4Dアレイ法なる方法が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。この方法ではマイクロチャンネルを設けるコストの増加と検体の移動手段が新たに必要となる事、さらにマイクロチャンネルへ壁への検体の付着等の問題が、その付着量は少なくなるものの、依然として存在する。
【0007】
これらの三次元の貫通孔を持つ立方体を作成する方法としては、先ず立方体に垂直な貫通孔を形成する方法が挙げられ、その方法としては、多孔質ガラスを使用する方法、電解法アルミナ孔空けシートを張り合わせる方法、ドリルで孔を空ける方法、針金上の凸型金型による樹脂の成形が挙げられている、また他には中空糸をバインダー等で含浸束ねる方法等が提案されている。これらのいずれの方法も、孔径0.5ミリ以下の孔を、100本以上、孔の側面の面積や孔の体積を均一に、低コストで、形成する事は非常に困難である。
【0008】
またこれらの内部空間にプローブの結合や、光検出のための反射層の形成などの表面処理を行うことが望ましいがこれらの表面処理も極めて困難である。
分離精製用を目的としたアフィニティークロマトグラフィーが広く用いられている。これはカラムと呼ばれる中空管に生体分子や化学物質をリガンドとして、セファロース、アガロース、アクリロアミドゲル、あるいはスチレン系ラテツクスビーズなどの担体に固定化したものを充填して、管の上部から検体を投入し、管上部からの加圧あるいは管下部からの減圧により検体を管内に導入し、検体中の所定の物質でリガンド選択的に反応するものを分離精製するものである。この場合は担体を充填しているためにカラムに通す検体の流速とカラム背圧、分離性能は逆相関になる。背圧上昇を避けるためあるいは検体中の複数の物質の分離のためにキャピラリーをつなぎ合わせたマルチアフィニティクラマトグラフィーが存在する。カラムの接続はカラム同士が独立しているために相互の位置関係が固定されておらず、接続には時間とテクニックを要する。一般に微少な検体対応のためにカラムを細くする場合は、分離精製時間と接続の困難さは幾何級数的に増加する。
【0009】
また近年ラボオンチップ、集積化マイクロチップ、μ―TAS(Micro Total Analysis System)、Micro Fluid Chip等と称するチップ上で各種の混合、反応、分離精製、検出を行うチップが実用化され始めている。
これらは実験室や定常的な検査等で微量検体を対象とした一連の単位操作をあらかじめチップ上に組み込み装置の自動化を意図したものである。
【0010】
これらのチップとしては多様な構造のチップがあるが、代表的なのは二枚の板の間に溝を切り、板の平面上の所定箇所に孔を空け、平面上の孔から所定の薬液を投入し、溝のそれぞれの両端に設けられた電極に電圧をかけ電気浸透流と電気泳動により薬液を移動させ、必要によりゲル充填あるいはキャピラリー内面の表面修飾によりあるいは蛍光検出機により、混合、反応、分離精製、検出を行うものである。
【0011】
これらのチップでは試料の投入の孔は通常平面上に設けられており、検体のようにそれぞれ独立薬液投入孔と、これらと反応させる試薬のように共通薬液投入孔から構成されている。独立薬液は溝からなるチャンネルを介しての反応のため、ある段階で共通薬液と接するように設計されている。
しかし共通薬液をそれぞれの独立チャンネルに独立チャンネル同士が接続しないように供給するには、独立チャンネル同士の薬液が混合しないように薬液切り替えスイッチやバルブを設けるか、独立チャンネル同士が接続しないように共通溶液チャンネルを中心に配置しその周辺に独立チャンネルを放射状に配置するかあるいは三次元配線が必要である。
【0012】
バルブを設けるにはその制御機構が必要となる。放射状に配置する場合はチャンネルあたりの溝の専有面積が多くなり検体投入ラインが減少するさらに複数種の共通薬液チャンネルを必要とする場合はさらに配線が複雑となる。また三次元チャンネルの製造の場合はあらかじめ幾つかの溝を形成したプレートを張り合わせて三次元チャンネルを形成する事が可能であるが、チャンネルが微細になると溝同士の位置合わせが困難となりまた製造コストアツプとなる。
【0013】
また、チップに設けられた複数の孔あるいはチャンネルを持つ複数のチップをそれぞれモデュール化して、チップの端面に複数の接続孔を有するモデュールを自由に組み合わせる事で、モデュールにより異なる処理を行わせる方法も開発されている。この接続では、あらかじめ決められた順序と決められた間隔に設けられたチャンネル同士を、チップに設けられた位置あわせ場所に何らかの位置あわせをすることで行われる。そのため、この場合はチャンネルのモデュール単位での接続は、モデュール毎にあらかじめ決められたチャンネルの順序と間隔、と同じ順序とチャンネルの間隔のモデュールを接続することになるため、あるモデュールの任意のチャンネルと、別のモデュールの任意のチャンネルの組み合わせによる反応の構成は不可能である。
【0014】
【特許文献1】
特表平11−512293号公報
【特許文献2】
特表平9−504864号公報
【特許文献3】
WO01/45843号
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実状に鑑みて鑑みて発明されたものであり、微量な物質の混合、反応、分離精製、検出等の単位操作に於いて混合、反応、分離精製、洗浄効率が良く、反応物質が少量、短時間反応、高感度検出を可能にし、複数のセルを任意に組み合わせる事でフレキシブルな単位操作の組合せを可能とするラボオンチップと、および微量な物質の混合、反応、分離精製、検出等の単位操作のフレキシブルな組合せを可能とする簡便な、前記ラボオンチップの使用方法を提供する事を目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るラボオンチップは、上述した問題を解決するために、試料流体が流入する試料流入部と、試料流体が流出する試料流出部と、前記試料流入部と試料流出部とを接続する試料流路とからなる複数のフロースルーセルが配設された帯状シートからなるラボオンチップであって、
前記試料流路が前記帯状シートの表面に配設され、
前記試料流入部が前記帯状シートの長手方向の一の側面に沿って配設され、前記試料流出部が前記帯状シートの長手方向の他の側面に沿って配設されるとともに、各側面では各試料流入部または試料流出部の中心軸が、前記帯状シートの長手方向へ一列になるように設けられる
帯状シートからなるものである。
【0017】
あるいは、本発明に係るラボオンチップは、試料流体が流入する試料流入部と、試料流体が流出する試料流出部と、前記試料流入部と試料流出部とを接続する試料流路とからなる複数のフロースルーセルが配設された帯状シートからなるラボオンチップにおいて、
前記試料流路が前記帯状シートに埋設され、
前記試料流入部が前記帯状シートの長手方向の一の側面に配設され、前記試料流出部が前記帯状シートの長手方向の他の側面に配設されるとともに、各側面では各試料流入部または試料流出部の中心軸が前記帯状シートの長手方向へ一列になるように設けられる
帯状シートからなるものである。
【0018】
上述したラボオンチップにおいて、前記フロースルーセルの試料流路の少なくとも一部が透明である事が好ましい。
さらに、前記フロースルーセルの試料流路の少なくとも一部が光反射材料からなる事が好ましい。
さらに、前記フロースルーセルの試料流路の少なくとも一部の内部空間表面が、金、銀、プラチナ、ニッケル、インジウムティンオキサイド(ITO(Indium Tin Oxide))、化合物半導体、シリカ、アルミナ、アミノ基、カルボキシル基、カルボジイミド基、エポキシ基、 N―スクシイミド基、マレイミド基、トシル基、トリメトキシシリル基、ニトリロ三酢酸基、チオール基、スルフィド基、ヒドロキシル基、ベンゾスルホアミド基、ヒスチジン、アビジンからなる群から選ばれるもので構成されている事が好ましい。
【0019】
また、さらに前記フロースルーセル内に、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド数5〜100の一本鎖核酸、分子量500〜100万のタンパク質、ペプチド、脂質、アプタマー、ウィルス、酵素、分子量50〜100万の化合物、ラテックス粒子、セファロース、アガロース、アクリロアミドゲル、相転移樹脂、金属粒子、金属酸化物粒子、金属硫化物粒子、蛍光体の群から選ばれるものを収納する事が好ましい。
【0020】
また、本発明に係るラボオンチップの使用方法は、上述のいずれかに記載のラボオンチップの使用方法であって、
周囲径aの心材に、当該心材の径方向と前記帯状シートの長手方向とが角度θになるように、前記帯状シートを巻き付けて、一のフロースルーセルの試料流出部と、当該一のフロースルーセルから距離dだけ離れた二のフロースルーセルの試料流入部とを連結して用いることを特徴としている:
ただし、前記周囲径a、角度θおよび距離dが下記のような関係を満たす。
【0021】
【数2】
【0022】
ただし、式中wは帯状シートの短手方向の長さである。
また、本発明に係るラボオンチップの使用方法は、上述のいずれかに記載のラボオンチップの使用方法であって、
前記フロースルーセルに試料を充填した状態で、透過部分から外部エネルギーを照射して、当該外部エネルギーの前記試料とあらかじめ存在する別の試料との相互作用によるエネルギー変化を、フロースルーセルを構成する6面の少なくとも1面から検出することを特徴としている。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るラボオンチップおよび当該ラボオンチップの使用方法の具体的な実施態様について、図面を参照しながら説明する。
前記ラボオンチップの実施態様は、試料流体が流入する試料流入部と、当該試料流出部と同一形状の試料流出部と、前記試料流入部と試料流出部とを接続する試料流路とからなる複数のフロースルーセルが配設された帯状シートからなるものである。
【0024】
ここで、フロースルーセルとは両端が開放されて内部が中空のセルであり中空部分内部にて各種単位操作を行うものである。このフロースルーセルの試料流路は、前記帯状シート上の平面XY軸面(Y軸が長手方向)に設置され、長手方向の側面に設けられた試料流路の両端にZ軸面に向いた開放面を有する。このフロースルーセルは、帯状シート表面の二次元平面の中に埋没していても、試料流路の一部又は全部が平面から飛び出していても構わず、階段状の凹凸や多少の傾斜があっても実質的に二次元平面に配置されていれば構わない。
【0025】
具体的には、図1(a)に示したように、試料流路11が帯状シート10に埋設される。また、試料流入部としての開放面12が帯状シート10の長手方向の一の側面に配設され、あるいは試料流出部としての開放面12が帯状シート10の長手方向の他の側面に配設される。また、各側面では各試料流入部または試料流出部の中心軸が一列になるように設けられる。
【0026】
また、図1(b)に示したように、試料流路11が帯状シート15の表面に配設される。また、試料流入部としての開放面12が帯状シート15の長手方向の一の側面に沿って配設され、あるいは試料流出部としての開放面12が帯状シート15の長手方向の他の側面に沿って配設される。また、各側面では各試料流入部または試料流出部の中心軸が一列になるように設けられる。
【0027】
また、これらのフロースルーセルの形状としては、例えば図2に示したような直線状、斜め直線状、幅変化状、曲線状、途中分岐状、Y字型分岐状、Y字統合状、複数分岐状等いずれの形状も使用可能であるが、これらに限定されるものではない。また、試料流路の断面の形状についても特に何でもよく、例えば図3(a)〜(d)に示したような各種形状のものが使用可能であるが、これらに限定されるものではない。また、図3(e)に示したように、開放面の一部を閉鎖してもよい。
【0028】
また、フロースルーセルの大きさは、その開放面に蓋をしないでも開放面12における表面張力により各種の試料溶液がセル内部に保持される様にある一定以下の内径であることが好ましい。具体的には、開放面12の内径は、フロースルーセル内表面と試料流路11の内部溶液との親和性により異なるが、好ましく0.05mmΦ〜10mm,より好ましくは0.1mmΦ〜5mmである。但し、上記内径は試料流路両端の開放面の内径であり、試料流路の中心部が太くなるような形状では中心部の径は限定されない。当該試料流路の長さは特に限定されないが、フロースルーセル中の液を取り出す場合には流速抵抗があまりに大きいと取り出せなくなる事から、好ましくは0.1mm〜500mm,より好ましくは0.5〜200mm以下である事が好ましい。
【0029】
また、フロースルーセル(セル)間ピッチは、0.3mm以上であれば如何様でも構わなく、好ましくは0.5mm以上1000mm未満、より好ましくは1mmから100mmである。ここでセル間ピッチとはセル中心部から隣のセル中心部までの距離である。
0.3mm未満の場合には溶液のセルへのスポットにおいてセル同士のクロスオーバーが起きる可能性がある。
【0030】
また、セルの平面上への形成方法は、簀巻きの様に中空パイプ状セルを並べて糸で接続する方法、中空パイプ状セルを平板の上に接着固定する方法、中空糸をニット編み機等にて平面配置し樹脂にて含浸固定する方法、あらかじめセルが凹部分となる凹部を有するフィルム作成しこれらあるいはこれら凹面フィルムと平面フィルムを張り合わせる方法等いずれの方法でも可能である。またこれらのセルの数は、特に限定されるものではなく、フロースルーセルを配設したチップをテープ状の連続体にする事により、当該テープをつなぎ合せる事で、セル数に限度なく多数のセルを搭載する事が可能となる。
【0031】
また、テープ状にする事により従来のチップのようなバッチの搬送系ではなく、たとえば磁気テープをReel To Reelで連続的に移動させ、ヘッドで読み取るような連続巻き取り、あるいはリール方式が採用でき、その結果ハンドリングが容易になり処理システムが低コストとなる。さらに、試料のフロースルーセルへの注入、排出において連続して処理することが出来る事から処理の簡便化と処理スピードのアップが期待できる。この場合セルはテープの一定幅上にテープ上に一次元的に搭載されているため、セルの位置合わせ、光学的加熱あるいは検出等の光学的処理は相対的な一次元の移動ですみ、チップを一次元的に移動させるか、光学的処理装置を一次元的に移動させるかのいずれかで良く、ハンドリング方法が簡便となる。
【0032】
セルの材質としては、特に限定はなくガラス、金属、セラミックス、樹脂いずれも可能である。具体的には、ガラス、シリコン、金、銀、銅、アルミ、ニッケル、チタン、アルミナ、シリカ、チタニア等の金属あるいは金属酸化物、架橋ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、セルロース、セルロースアセテート、硝酸セルロース、ポリアミド樹脂、、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ビニロン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリペンテン樹脂、ポリビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、不飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、環状シクロオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、フルオロカーボン樹脂等が使用可能である。しかし、加工上の理由から、製造の容易な樹脂が好ましい。フロースルーセル内部に有機溶媒が使用される場合は、無機系の材料あるいは有機系の材料の架橋されたものを使用する事が好ましい。
【0033】
これらの材料を使用し、フロースルーセルを作製する方法は、後述したような製造方法により製造する事が可能である。これらの材料は、セルに投入され、あるいは通過する溶液によりセル毎に使い分ける事が可能である。投入溶液が親水性の場合は、最初の投入セル内面を親水性にする事が好ましく、その親水化度は水の接触角で、90度以下、より好ましくは80度以下、さらに好ましくは70度以下である。また、投入溶液が有機溶媒の場合は、最初の投入セル内面は溶媒親和性のものが好ましく、さらに耐溶媒性のために樹脂セルの場合は樹脂架橋する事が好ましい。
【0034】
材料とセル内面の親水性あるいは親油性を類似のものとし、セル内径を一定以下の内径とすることで、投入溶液はセルに投入された瞬間にセル内部の表面張力によりセル内部に入り込み、またにセル内部の溶液が表面張力でセル内部に保持可能となり、セル開放面を封鎖しなくとも溶液保持が可能となる。
ただし開放系にする場合は、蒸発による溶液減少を防ぐために保存時にはチップ全体を密封し、また処理時には湿度60%以上の室温で処理することが好ましい。
【0035】
また、逆Y字型のセルを設け、セル内部の混合溶液を親水性と親油性で分離する等の場合には二股の片側部分を親水性に、もう片側部分を親油性にするにより混合溶媒を親水性溶媒、親油性溶媒に分離する事が出来る。また、後述するように一つのセル内にフィルタを介して担体粒子を入れる入口セル部屋と出口セル部屋とを設ける場合は、入口セル部屋は粒子溶液と同一親水/親油性に、出口セル部屋は逆の親水/親油性にすることが好ましい。
【0036】
これらにより、粒子とその溶液は表面張力により、セル内にとどまり、必要によりセルの一端を減圧吸引するあるいは高吸液性材料と接触させることで溶液は容易に試料排出部より排出される。
これらのセルの親水性材料としては、ガラス、シリコン、金、銀、銅、アルミ、ニッケル、チタン、アルミナ、シリカ、チタニア等の金属あるいは金属酸化物、架橋ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、セルロース、セルロースアセテート、硝酸セルロース、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、各種スルホン酸基、カルボキシル基、あるいはヒドロキシ基変成樹脂等が使用可能である。また親油性あるいは撥水性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリペンテン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、環状シクロオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、フルオロカーボン樹脂等が使用可能である。
【0037】
また、フロースルーセル内部表面のみを親水性あるいは親油性に改質する事も可能である。これらの方法としては、親油性あるいは親水性を付与したい部分にプラズマ処理、コロナ処理あるいはイオン処理により表面にヒドロキシ基やカルボキシル基を形成する方法、蒸着、スパッタ、CVD等の方法により金属あるいは金属酸化物層を形成する方法、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基等の親水基を持つポリマー、オリゴマーを塗布する方法、メッキにより金属を形成する方法、シラン、チタンをジルコニア等の前駆体をセルに塗布した後に加水分解する事によりヒドロキシ基を含む金属酸化物を表面に形成する方法等が可能である。
【0038】
また、フロースルーセルを構成するセル基材の表面に凹凸のある金型転写のエンポス加工、エッチング加工等により凹凸をつける事で表面積を大きくして表面張力を高め、親水性、あるいは親油性を上げる事が可能である。
これらのうちで特に好ましいのは、チップを構成する基材のうちでフロースルーセルの内部表面以外の全ての基材を試料溶液とは非親和性にして、フロースルーセル内部表面のみを試料溶媒と親和性とする方法であり、これによりフロースルーセル内部の溶液がフロースルーセル外部に拡散する事を防止する事ができる。
【0039】
また、セルとセルとの間の平面は試料流入部および試料流出部のいずれも、その間隔が1mm以下の場合は隣のフロースルーセルへの試料の混入であるクロスオーバーを避けるために、後述する材料で形成されるあるいは表面処理されることが好ましい。
これらの材料としてはシリコーンあるいはフッ素撥水剤が使用可能であり、これらの材料からなる塗布剤をセル間部分に塗布するにより、撥水性あるいは溌油性とする事が出来る。
【0040】
また、上述したラボオンチップのうち、フロースルーセル(セル)の試料流路の少なくとも一部が透明である事が好ましい。
この場合、フロースルーセル全体が透明である必要はなく、セルの平面上の上部、あるいは下部のいずれかが透明である事が好ましい。
ここで透明とは、当該外部エネルギーの前記試料とあらかじめ存在する別の試料との相互作用によるエネルギー変化を、フロースルーセルを構成する6面の少なくともいずれか1面から検出に際して照射するエネルギーに対して、あるいは照射に伴い発生する第二エネルギーに対して透過率が80%以上、より好ましくは90%以上である事が好ましい。
【0041】
ここで、エネルギーとはイオンビーム、電子ビーム、β―線、γ―線、X―線、紫外線、可視光、赤外線等を言う。
また、これらの透明な材質としては、アルカリ硝子、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリペンテン樹脂、ポリビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、環状シクロオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、セルロース、セルロースアセテート、硝酸セルロース、フルオロカーボン樹脂などが使用可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
フロースルーセル内部に有機溶媒が使用される場合は、耐溶媒性のある無機系の材料あるいは有機系の材料の架橋されたものを使用する事が好ましい。
これらの材料を使用したフロースルーセルとする方法は、後述するような製造方法により製造する事が可能である。
また、上述したラボオンチップのうち、フロースルーセル(セル)の試料流路の少なくとも一部が光反射材料であることが好ましい。
【0043】
フロースルーセルの一部を光反射材料とすることにより、前述したような試料流路の透明部分を通してセル内に照射された検出光による反応により励起された反応光を反射し、反射光のロスを最小限にして、当該反射光を検出器などの検出系にもたらす事が可能となる。
これらの光反射材料として、金、銀、アルミニウム、ニッケル、高屈折と低屈折材料で屈折率差が3%以上ある材料を複数層形成する方法などが可能である。
【0044】
これらの材料の形成方法としては、樹脂や硝子などの表面に金、銀、ニッケル、酸化チタン、シリカ、アルミナなどの金属、金属酸化物をスパッタ、蒸着、CVD等で乾式あるいはメッキ等湿式等の方法で薄膜形成する方法、および後述するような製造方法で金属フィルムを樹脂フィルム等とラミネートする方法が可能である。
【0045】
また、セル内面を高屈折率材料とし、その外側に3%以上の低屈折率材料を積層することにより内部の光は界面で反射され実質的な反射材料とすることができる。
これらの組み合わせとしては、上記透明材料の内屈折率が1.5以上のものをフロースルーセル内面に、フロースルーセル外面に屈折率が上記よりも3%以上低い材料例えばポリフッ化ビニリデン、フッ素の含有アクリレート等の膜を形成し、内面と外面とを複層膜とすることで反射材料とする事が可能となる。
【0046】
また、上述したラボオンチップのうち、フロースルーセル(セル)の試料流路の少なくとも一部の内部空間表面が、金、銀、プラチナ、ニッケル、インジウムティンオキサイド(ITO(Indium Tin Oxide))、化合物半導体、シリカ、アルミナ、アミノ基、カルボキシル基、カルボジイミド基、エポキシ基、N―スクシイミド基、マレイミド基、トシル基、トリメトキシシリル基、ニトリル三酢酸基、チオール基、スルフィド基、ヒドロキシル基、ベンゾスルホアミド基、ヒスチジン、アビジンからなる群から選ばれるもので構成されていることが好ましい。
【0047】
これらの金属、金属化合物あるいは官能基を、フロースルーセル内部空間表面に設けることで、後述するような各種プローブをフロースルーセル内部表面に結合させることが可能となる。ここで、樹脂フィルム上に金、銀、シリカ、アルミナ、ITO、化合物半導体を形成する方法としては、スパッタ、蒸着、CVDなどの方法により薄膜形成することが挙げられる。また、金属フィルムを後述するような方法により直接樹脂フィルムとラミネートする事も可能である。
【0048】
また、各種官能基の形成については、これらの官能基を持つ化合物を樹脂フィルム上に塗布する方法、樹脂フィルムを変性する方法、樹脂そのものがこれらの官能基を持つ物を使用する方法などが可能である。
このフロースルーセル内部表面にはプローブを直接あるいはスペーサーを介して結合することが可能である。
【0049】
スペーサーを使用する場合は、セル表面に自己集合により高密度に規則正しいスペーサープローブ結合を得ることが望ましく、さらにプローブと試料検体とが相互作用するに際して立体障害に起因する反応率の低下を防止し、高反応を起こさせることが望ましい。
これらのスペーサーとしては、プローブと結合できる官能基を有し、比較的低分子量の化合物を使用することにより可能となる。具体的には、たとえば液晶や炭素数10〜100のアルキレン基の両端に官能基が結合してなる構造の化合物、たとえばエチレングリコールジグリシジルエーテル誘導体、N―k―マレイミドウンデカニック酸、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、カリックスアレン誘導体等を使用することができる。また、アミノ基、カルボキシル基、チオール基などで修飾されたオリゴヌクレオチドも使用可能である。
【0050】
また、上述したラボオンチップのうち、フロースルーセル(セル)内に、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド数5〜100の一本鎖核酸、分子量500〜100万のタンパク質、脂質、アプタマー、ウィルス、酵素、分子量50〜100万の薬理活性を持ったいわゆるリード化合物、ラテックス粒子、セファロース、アガロース、アクリルアミドゲル、温度、ph、光等でそのモルフォロジーを転移するアクリル系、アクリルアミド系、ポリアミノ酸系の相転移樹脂、金属粒子、金属酸化物粒子、金属硫化物粒子、蛍光体、すなわち有機蛍光体あるいは無機蛍光体の群から選ばれるものを収納する事が好ましい。
【0051】
これらの材料は、(1)フロースルーセル内部空間表面に直接あるいは何らかのスペーサーを介して結合させておく、(2)有機粒子、金属粒子、金属酸化物粒子を担体として直接、間接的に結合させそれをフロースルーセル内部空間に充填あるいは分散させておく、あるいは(3)材料そのものをフロースルーセル内部空間に水あるいは有機溶剤にて分散あるいは溶解させておくことも可能である。
【0052】
これらのオリゴヌクレオチドあるいは核酸の断片は、DNA合成機を利用するなどして適時合成してもよく各種の動物、植物、細菌、真菌、もしくは原生動物、または各種の動物もしくは植物ウィルスから得たDNAやRNAを市販の制限酵素、たとえばBamHIやHindIII等を適時組み併せて切断して得ることが出来る。
また、適当なヌクレオチドやヌクレオチドの配列を有している市販品を利用することも可能である。これらのオリゴヌクレオチドや核酸の断片の末端は、チオール基,アミノ基、カルボキシル基等の修飾基やビオチン等の化合物で修飾されていても良い。
【0053】
分子量500〜100万のタンパク質としては、合成ペプチド、膜タンパク質、酵素、輸送タンパク質、サイトカイン、リンフォカイン、IgA、IgEをはじめとする抗体、各種抗原、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、エクオリン、グリーン蛍光タンパク質等の生物発光機能をもつもの等をあげる事が出来る。
脂質としてはホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトーマンノシド、ウルシオール、各種のガングリオシドなどを挙げることが出来る。
【0054】
これらは分子量によっては免疫原生を有する抗原として作用するが、これらが抗原として作用した場合はそれによって産生されたポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体なども使用することが可能である。これらが免疫原性を有しないハブテンである場合は適当なタンパク質と組み合わせることにより人口抗原として、これらに対する抗体を得て使用することも可能である。
【0055】
分子量50〜100万の化合物の低分子化合物(リード化合物)としては、基質、補酵素、調整因子、レクチン、ホルモン、神経伝達物質、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマーなどのようなリガンド、フェニルピペリジン誘導体、スルホンアミド/スルホン酸誘導体、ステロイド、プロスタグランディンなどの医薬候補物質が挙げられる。
【0056】
また、ウィルスとしてはバキュロウィルス内にタンパク質を発現させたものが使用可能である。
また、アプタマーは、タンパク質、酵素、色素、アミノ酸、ヌクレオチド、成長因子、遺伝子発現調節因子、細胞接着分子、生物固体等と結合能力のある機能性核酸であり、たとえばトランビンアプタマー、エラスターゼアプタマー、活性化プロティンC、C型肝炎ウィルスのNS3プロテアーゼアプタマー等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0057】
これらのオリゴヌクレオチド、ヌクレオチド数5〜100の一本鎖核酸、分子量500〜100万のタンパク質、アプタマー、ウィルス、酵素、脂質、低分子化合物等はセル表面あるいはスペーサーと結合させるために、末端あるいは分子途中にアミノ基、カルポキシル基、エポキシ基、チオール基、ヒスチジンタグ、アビジン、ビオチン等の結合基を設けることが可能である。あるいは、既に存在するこれらの結合プローブ結合サイトと、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド数5〜100の一本鎖核酸、分子量500〜100万の蛋白、アプタマー、ウィルス、酵素、脂質、低分子化合物のいずれかを結合させるには、カルボキシル基−アミノ基、マレイミド基−チオール基、金−チオール基、トシル基−アミノ基、アミノ基−水酸基、アミノ基−アミノ基、アビジン−ビオチン、カリックスアレン−上記記載分子内のアンモニウム基等の組合せにより結合させる事が可能である。
【0058】
これらの結合方法は「有機合成化学 1984年 第42巻第4号 北川 常広」に示されたように、具体的に実現する事が可能である。
有機粒子はブタジエン系、スチレン系、ジビニルベンゼン系、アクリロニトリル系、アクリレート系、メタクリレート系、アクリルアミド系、ベンゾグアナミン系、フッ素系の単独モノマーあるいはこれらの組合せによる複数のモノマーを使用した乳化重合あるいサスペンション重合、再分散系粒子が使用可能であり、重合時にフェライト等の磁性体、あるいはフェライトメッキしたもの、あるいはセファロース、アガロース、ガラクトース等の天然物ゲルも使用可能である。これらの有機粒子を反応担体として使用する場合の粒子径は0.01ミクロン〜10mmが好ましく、より好ましいのは、0.1ミクロン〜1mmである。
【0059】
粒子が小さい場合はハンドリング性に難点が生じ、特に後述のフィルタによる捕捉が困難となる。また大きい場合は、セル中の合計の粒子表面積が小さくなりあるいは沈降により反応性が低下する。また必要に応じ粒子を多孔質にする事も可能である。
これら粒子の表面はアミノ基、カルボキシル基、カルボジイミド基、エポキシ基、トシル基、N―スクシイミド基、マレイミド基、チオール基、スルフィド基、ヒドロキシル基、トリメトキキシリル基、ニトリル三酢酸基、ベンゾスルホアミド基、ポリエチレンイミン基等の各種官能基を持たせる事が好ましい。これらの粒子の製造方法としては、たとえばスチレン系の粒子については特開昭57−168163号公報に記載の方法により得ることが可能である。
【0060】
また磁性粒子の製造方法としては特開平11−176622号公報に記載の方法により得ることが可能である。
無機系の粒子としては、金属酸化物粒子、金属硫化物粒子、金属粒子が使用可能である。
金属酸化物粒子として最も好ましいのは、シリカ粒子であり、市販の各種シリカ粒子を使用する事が出来る。これらのうちで反応担体として好ましいのは粒子径が0.05ミクロン〜0.1mmのものであり、より好ましくは0.1ミクロン〜0.05mmのものである。
【0061】
粒子が0.05ミクロンよりも小さい場合は、フィルタでの捕捉が困難となり、粒子が0.1mmより大きい場合は重量により沈降して反応性を阻害する。また、粒子が大きい場合は多孔質とする事で溶液中に浮遊させる事が可能であり、それらの粒子としては旭硝子製のサンスフェアーH、Lシリーズ等が使用可能である。これらのシリカ粒子は市販のシランカップリング剤、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等により表面に必要な官能基をする事が可能である。
【0062】
また、金属粒子としては金、銀、ニッケル、鉄、マンガン、セリウム、クロム、カドミウムの粒子が使用可能であり、特に金、銀、ニッケルの数ナノメートルから100ナノメートルの粒子が好ましい。金、銀の数ナノから数十ナノメートルの粒子は表面プラズモン、ラマン、蛍光等の検出の際の信号増幅粒子としても使用可能である。
【0063】
これらの粒子の製造方法としては、金属の蒸着、逆ミセルによる重合方法等により得ることが可能である。金、銀の蒸着ナノ粒子としては真空冶金株式会社製パーフェクトゴールドパーフェクトシルバー、あるいはアーカイラスエンジニアリング合資会社製ラマン増感試薬780−830が使用可能である。
また、有機系の蛍光体としては、フルオレイセン、テキサスレッド、ローダミン、CY3、CY5、グリーンフルオロセントタンパクやユウロピウム等の金属錯体が上げられる。ユウロピウム錯体は「未来材料第2巻第4号p.17」に記載の方法により得る事ができる。また無機系の蛍光体としては、量子効果発光によるナノ粒子蛍光体が退色が少なく、分子量分布がシャープなために好ましく、これらとしては硫化カドミウム、硫化亜鉛等のナノ粒子蛍光体が使用可能である。また、これらの粒子の製造方法は、例えば「応用物理第70巻第9号p.1087」に記載の方法により製造する事が可能である。また上記無機粒子は前記粒子の製造方法の他に、平坦なシリコンウェハー等の基板の上に二層のレジストを塗布し、所定の大きさの空隙を持つマスクによるフォト法により表面層レジストに所定の孔を設け、その上から無機膜を蒸着あるいはCVDにより形成し、二層のレジストを除去する事で、所定の孔径からなる任意の形状の無機粒子を作成する事が可能となる。
【0064】
これらの有機、無機粒子は、アフィニティ性を利用してのリガンド担体粒子による各種物質の分離精製、特定物質の濾過、粒子表面に物質を結合させ、他の物質との反応を粒子表面で行わせる反応担体、あるいは粒子担体を使用したバイオプローブと検体との反応後における未反応物の洗浄時の検体およびプローブ反応結合粒子の流出防止に際して使用可能である。
【0065】
これらの方法では粒子を使用する事により反応のための表面積が大きくなり反応効率が大となる。
これらの有機、無機粒子を使用する場合は粒子がフロースルーセル外に流出することも防ぐためにフィルターを使用することが好ましい。
粒子とフィルターとの組み合わせにより、従来アフィニティークロマトグラフィや磁性粒子による各種物質の分離精製に比較して、装置が簡便であり、特に後述するような当該ラボオンチップを心材、例えば柱に巻きつけてフロースルーセルを連結する方法と組み合わせる事により、複数のリガンド担体を収納するフロースルーセルを連結する事が可能であり一つのサンプルから複数の物質を同時に簡便に分離精製する事が可能となる。
【0066】
さらにまた、機能の異なるフロースルーセルを複数配置する、たとえば精製用粒子、反応用粒子、検出用粒子をそれぞれ配置し、これらを連結することで精製、反応、検出を1つのチップ上で行うことが可能となる。
フィルターと粒子の組み合わせにおける粒子の粒子径はその粒子の使用目的が精製や反応の場合は0.01ミクロン〜1mm、より好ましくは0.5ミクロン〜500ミクロン、さらに好ましくは10ミクロン〜500ミクロンの多孔質粒子である。0.01ミクロン以下の場合は対応するフィルターのメッシュが細かくフィルトレーションに時間がかかり、また他の濾過すべき物質との判別がつきにくくなる。フィルトレーションのためには粒子が大きい方が好ましいが大きいと粒子が沈降しまた表面積が小さくなる。その点から0.1ミクロン〜0.7ミクロンの粒子あるいは0.5ミクロンから50ミクロンの多孔質粒子が非沈降と大表面積の点から好ましい。また検出の場合には粒子径は検出光による散乱を防ぐために検出光の波長以下が好ましい。
【0067】
ただし、あまりに粒子径を小さくする場合は、短時間でフィルトレーションできる対応フィルターが見つかりにくく、これらの要因を勘案すると、0.01〜1ミクロン、より好ましくは0.05ミクロンから0.5ミクロンが好ましい。また粒子の代わりに相転移樹脂を使用することも可能である。
相転移樹脂は、ph、温度、光等の外部刺激によりそのモルフォロジーを変化させる樹脂があり、精製、反応、検出時には線状の樹脂のモルフォロジーをとり濾過時には外部刺激によりゲル状のモルフォロジーでフィルターから濾過されることを防ぐ事が可能である。
【0068】
これらの相転移樹脂の製造方法はたとえば、特開平8−196274号公報、特開平9−154573号公報等に記載の製造方法である。
ここで使用されるフィルタは、その使用方法により各種フィルタが使用可能である。織布、湿式法不織布、乾式法不織布、焼結法不織布、フィルムにレーザーやフォトエッチングでの穿孔、あるいは延伸力で引き伸ばすことにより貫通孔を空けるもの、あるいは糸の側面に孔の空いたホロファイバーと呼ばれる中空糸(以下、「中空糸」と称する)等の各種の市販品が使用可能である。これらのフィルタの材質は硝子、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、PVDF(poly vinyliden fluoride)、PTFE(poly tetra fluoro ethylene)、ポリイミド、PPS(poly phenylene sulfide)、液晶ポリマー、ポリサルホン、ナイロン、ニトロセルロース、アセチルセルロース、ステンレススチール、ニッケル、金等が使用可能である。
【0069】
これらのフィルタのフロースルーセル内へ組み込みかたは複数の方式が可能である。
第一の態様は、図4に示したように、セル40の開放部の少なくとも片側溶液排出側に、フィルタ41をZ軸方向に取り付けるものである。
第二の態様は、図5に示したように、セル上室50とセル下室53との間にフィルタ51によりセルを分割する様に2つの室を設けるものである。
【0070】
第三の態様は、図6に示したように、セルの上室60またはセル下室63のいずれか片側をフィルタ61で充填する様に設けるものである。
図5、図6に示したように、セルの上下室をフィルタで区分する場合は、連結する左右の二つのセルの投入側開放端面の上下室の内どちらかを閉鎖し、さらにセル開放面の溶液排出面の上下室の内溶液投入面とは逆の室を閉鎖することにより、投入した溶液をフィルタを経て投入した室とは逆の室を経由して排出する事が可能となる。
【0071】
また、セルを後述するように、径がwの心材、例えば柱に巻き付けることでセルを連続使用する場合は、連結対象のセルは、図5に示したように、その上下室の開放室と閉鎖室を交互に逆になるように、柱の径を選択する事により、連続したセルとして溶液を連続して流すことが可能となる。
第四の態様は、図7に示したように、中空糸71を折り曲げで試料流入部72に折り曲げ面を向け、試料流出部73に中空糸71の開放面を向け、さらに試料流出部73にて中空糸71をセル70内で保持し、セル70中の非中空糸部分の封止のためにシールするものである。
【0072】
第五の態様は、図8、図9に示したように、中空糸81、91の片側端面の内面82、92をシールし、シールした側をフロースルーセルの溶液投入側84、94に挿入し、中空糸の別の片側端面83、93で中空糸空間シールしない側の中空糸外形とフロースルーセルとの間を端面83、93の様にシールする方法が可能である。
【0073】
これらの態様の内では、第四の態様と、第五の態様がより好ましい。即ち、第一から第三の態様では、フィルタをセルに固定する場合はフィルタの周囲すべてをセルに溶液を漏れないように確実に固定する必要があり、フィルタの厚みと固定方法は困難性の点で逆相関になる。即ち、フィルタは目つまりとふるい性を両立させるためにはある程度の厚みを必要とするが、厚い場合はセルへの固定が困難となる。
【0074】
一方、中空糸の場合は最低限中空糸の開放面片側をフロースルーセルと接合するだけで良く加工性が容易である。さらに、貫通孔の存在する表面積が中空糸の方が大きく単位時間あたりの濾過量が大きくなるため好ましい。
これらのフィルタは同一ラボオンチップの全てのフロースルーセルに設ける必要はなく、必要なフロースルーセルのみに選択的に付けてもよい。またフィルタのメッシュの大きさは、担体粒子や濾過物質の大きさを勘案して自由に選択すれば良い。
【0075】
これらのフィルタのラボオンチップへの組み込む第一の方法としては、あらかじめ別途フィルタを作成しておき、ラボオンチップ作成時に組み込む方法が挙げられる。第二の方法としては、中空糸を用意し、フロースルーセルに挿入する方法が挙げられ、第三の方法としては、ラボオンチップの作成時にフロースルーセルの内部空間にフィルタ組成物を投入し、フロースルーセル内にフィルタを作り込む方法等が挙げられる。
【0076】
前記第一の方法では、あらかじめフィルタをセルの試料流路の直径と接着部分を加算した寸法に裁断した帯状のフィルタを使用して、これをフィルタを充填するセルと同一の寸法隔に張り渡しておき、あらかじめ作成された凹型セルフィルムをこの張り渡しフィルタに合体させ、セル内部にフィルタを充填し、さらにフィルタ内蔵フィルムを所定の巾にテープ状に切断することにより作製してもよい。
【0077】
また、前記第二の方法としては、あらかじめラボオンチップを形成する平面フィルム上に一定間隔で微少なピンを植え付け、このピン部分でピンを介して糸を折り曲げながら配置する。折り曲げ中空糸部分をセル内に内蔵する中空糸において、中空糸を内蔵しない部分は次の中空糸内蔵セルまで糸を折り曲げない事により、中空糸を内蔵するセルのみに折り曲げ中空糸を内蔵する糸配置が可能となる。この中空糸内蔵セルフィルムと別のフィルムをラミネート接着する。さらに溶液排出側の中空糸外形とセルとの間にウレタンシール剤等をスポットあるいは含浸等にてシールする。続いて、シール部分の一部を残して平面フィルムを含む不要中空糸部分を切断除去する。これにより、溶液投入セル面に中空糸が折り曲げられて内蔵しており、溶液排出面に中空糸の端面を持つセルを有するチップを作成する事が可能になる。
【0078】
第三の方法としては、あらかじめ凹面を持つフィルムを作成し、この凹面セル中にあらかじめ繊維を水に分散し、その分散溶液を凹型フィルムに投入し、水を揮発させる事で湿式不織布を作る方法、あるいは触媒化学株式会社製のアルミナゾル等の特定のモルフォロジー形成する材料を充填し溶媒を揮発させる方法、あるいはブロックポリマーと他のポリマーを混合しミクロ相分離構造を形成し、他のポリマーを乾式あるいは湿式法により除去する事により多孔質三次元構造体を形成する方法であり、具体的には特開2001−151834号公報に記載された方法により製造可能である。
【0079】
また、フィルターと粒子の組み合わせ以外に、粒子として磁性粒子を使用し、磁石と磁性粒子の組み合わせによるものも使用可能である。
この場合は、フロースルーセル内の磁性粒子をチップ外部の磁石により保持して、粒子がフロースルーセル以外に流出することを防ぐことも可能である。
このようなラボオンチップは、例えば基材となるフィルムと、フロースルーセルを作製しておいたフィルムとを張り合わせる事で製造することができる。
【0080】
ここで、基材となるフィルムは、例えば図1(a)に示した基材13であり、図1(b)に示した基材14である。この基材13、14は、例えば金属、樹脂などからなるものであり、具体的には、シリコン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタンなどの金属、架橋ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、セルロース、セルロースアセテート、硝酸セルロース、ポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ビニロン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリペンテン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、環状シクロオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、フルオロカーボン樹脂などの樹脂が挙げられる。また、フロースルーセルの材質については、前述した通りである。
【0081】
このフィルム同士を張り合わせる事によりチップを製造する方法としては、少なくとも片方に凹面、あるいは凸面を有するフィルムと、もう一枚のフィルムを張り合わせる事により、例えば図1(a)に示したようなラボオンチップを作成することが可能である。
このとき、上記凸面あるいは凹面形状をフィルム上に形成する方法としては、既知の各種方法が使用可能であり、例えば雄型あるいは雌型金型を作成し、前記基材材料のペレット、前駆体、モノマー、オリゴマー、フィルムのいずれかを金型により成形して凹凸形状を作成することができる。
【0082】
ここで、金型あるいはロールによる成形方法としては既存の各種の方法が可能であり、プレス成形、射出成形、押し出し成形、カレンダー成形、ブロー成形、ロール成形等が可能であるがこれらに限定されるものではない。あるいは、平面フィルムや板に直接に化学的エッチング、機械的溝空け、レーザー穿孔などの方法により凹面を形成することも可能である。
【0083】
これらのフィルム同士の張り合わせは、既存のフィルムラミネート方法を使用することができる。具体的な方法としては、所定の箇所に接着剤を塗布して張り合わせる方法、接着部が凸となった熱ロールで熱シールする方法、高周波接着、接続箇所に選択的に溶剤を塗布し表面を溶剤溶解し接着する方法、平面フィルム上にUV硬化性樹脂を塗布し金型で凹凸面を作成し光照射して予備硬化し、さらに別のフィルムと張り合わせた後に、さらに光照射し、本接着硬化させる等の方法が可能である。
【0084】
また、図1(b)で示したようなラボオンチップは、波板形状のフィルムを金型などで作成しこれを平面フィルムを張り合わせる方法、あらかじめ所定の長さの中空のフロースルーセル管を作成しておき、これを簀の子や簀巻きを作成するように糸で管同士を接続する方法、フィルム上にUV樹脂接着剤などの接着剤を塗布しておきその上にフロースルーセル管を所定の間隔で配置フィルムと接合するなどが可能である。
【0085】
また、これらのフィルムには、必要に応じて、あらかじめセル部分に反射層や親水性層あるいは疎水性層、プローブの結合層、スペーサー層等を形成の後、張り合わせてもよい。
また、このようなラボオンチップでは、フロースルーセル(セル)の試料流入部から溶液を投入し、必要により試料流入部を加圧する方法と、試料流出部を別の片側端面を減圧吸引する方法を組み合わせる事により溶液を所定のセルに逐次導入、移動、置換あるいは排出することができる。
【0086】
ここで、溶液の投入に際しては、投入溶液が重力で所定のセルに投下されるように、セルの二次元平面を垂直とし、投入側セル端面を上向きにして投入することが好ましい。
また、溶液の投入方法としては、マイクロピペット、インクジェットによるスポット、スポッターによるスポット、溶液の含浸等の方法が可能である。溶液のフロースルーセル含浸に際しては、あらかじめ溶液浸透性の濾紙をセル投入口に接触させ、セル内部空間と溶液との親和性を高くして浸透圧により投入することも可能である。この場合には、個別のセルに選択的に溶液投入するよりも、複数の投入セルに一斉に溶液を投入する方法として使用することが望ましい。
【0087】
また、必要に応じて、セルの別の片側端面から減圧吸引する事により溶液の導入、移動、置換あるいは排出を行う事が可能となる。減圧吸引に際しては、多孔質体を吸引セル口に接触させ、多孔質体を介して吸引するのも可能である。これらの多孔質体としては、例えばトーメイ株式会社製のエチレンビニルアセテート、メチルメタアクリレート、ポリプロピレン、ポリエーテルサルホン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリサルホン等の焼結法による多孔質体、各種セラミックス系の多孔質体等が使用可能である。
【0088】
また、既に溶液の収納されたフロースルーセルの溶液を排出置換する場合は、減圧にする代わりに、溶液排出側のセル開放面に溶液高吸収性の材料をフロースルーセルの溶液と接触させる事により溶液の排出置換が可能である。
フロースルーセル間のピッチ間隔が短い場合は、上記溶液高吸収性の材料の端面の非フロースルーセル部分を撥水性の材料、例えばJSRデソライト等でコーティングする事により、フロースルーセル中の溶液が高吸収性材料を介して他のフロースルーセル溶液と接触コンタミネーションを起こす事を最小限とする事ができる。
【0089】
これらの高溶媒吸収性の材料としては、例えば紙おむつ等に使用されるポリアクリル酸系高吸水性樹脂、カネボー株式会社製のポリビニルアルコールの焼結多孔質体、チャフローズ株式会社製のセルロース系スポンジ、市販の各種ウレタン発泡体、トーメイ株式会社製のエチレンビニルアセテート、メチルメタアクリレート、ポリプロピレン、ポリエーテルサルホン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン等の中からフロースルーセル中の溶液と親和性の高いものを選択する事により容易に溶液を排出置換可能となる。
【0090】
また、前記溶液の投入、減圧吸引対象セルは単独のフロースルーセルである必要はなく、後述するようなフロースルーセルを連結して使用する場合でも、適用可能である。この場合は連結されたセル群の第一セル端面から投入し、最後のセル端面を減圧吸引する。
また、前記ラボオンチップの使用方法の実施態様は、前述したラボオンチップの使用方法であって、周囲径aの心材に、当該心材の径方向と前記帯状シートの長手方向とが角度θになるように、前記帯状シートを巻き付けて、一のフロースルーセルの試料流出部と、当該一のフロースルーセルから距離dだけ離れた二のフロースルーセルの試料流入部とを連結して用いることを特徴としている。
【0091】
ただし、前記周囲径a、角度θおよび距離dが下記のような関係を満たす。
【0092】
【数3】
【0093】
ただし、式中wは帯状シートの短手方向の長さである。
前記ラボオンチップにおいて、各フロースルーセルは単位操作を行う場ではあるが、図10(a)、(b)に示したように、複数のフロースルーセル131、132が配設されたラボオンチップ135を心材130、例えば柱に巻き付けることにより、セルとセルとの間を所定の接続流路(セルとは別途設けられた溶液の流路)を介さないで複数のフロースルーセルを直接連結する事が可能となる。
【0094】
ここで、特定のフロースルーセル同士を連結する場合は、あらかじめ、所定の間隔でチップ上に併置された試料流路の長さがwであるフロースルーセルについて、連結したいセルの間隔を計算し、その間隔がdである場合は、周囲径aが(d2+w2)1/2である心材、例えば柱を選択し、その角度θがsinθ=w/a=w/(d2+w2)1/2となるようにチップを巻き付けることで、間隔dのフロースルーセルは相互に連結することが可能となる。
【0095】
また間隔がdである複数のフロースルーセルを巻き付け連結して所定の単位操作を行った後に、さらに間隔がd‘である別のフロースルーセルを連結する場合は、所定の単位操作をした最後のフロースルーセルと間隔がd‘であるフロースルセルを、周囲径aが(d’2+w2)1/2である柱を選択し、その角度θがsinθ=w/a=w/(d’2+w2)1/2となるように巻き付ける事で、当該フロースルーセルを別のフロースルーセルに連結する事が可能となる。
【0096】
このようにラボオンチップを心材に巻き付け、複数のフロスルーセル同士を連結することにより、第一には、セル群間に連結のための流路を介さず、直接かつ直線的に連結する事で、溶液を流した場合の溶液抵抗を最小限にする事が可能になる。また、薬液はフローダウン方式でセルの投入口を上にして投入する事により、混合が極めて均一に行われ、反応や、洗浄、分離精製などを高効率に、均一に行うことが出来る。
【0097】
第二に、これらのセル群は間に連結のための連結路を持たないために、検体の連結流路への付着が無く、その結果検体量を最小限にでき、検体連結路での検体の残留に伴うコンタミネーションを最小限にすることが可能となる。例えば、あらかじめ複数のセル内部にそれぞれ異なるDNA、抗体、タンパク質等のプローブを結合あるいは内蔵させたDNAチップ、抗体チップ、タンパク質チップとして用いる場合、各プローブを有する複数のフロースルーセルを上記方法で連結させ、さらに検体を連結させたセル群の最上部連結セルからフローダウン方式で投入する事により、投入検体は連結セル内で相補的に結合する全てのプローブと反応機会を有する。すなわち、投入検体は、第一のセルでプローブで反応しない残余の検体が次のセルに流入してプローブと反応し、さらに残余の検体がさらに次のセルに流入してプローブと反応するという順序で共通の検体として使用することが可能になるため、検体の利用効率が高く検体量が少なくて済み、かつプローブと検体との反応距離が極めて短く極めて高い反応効率で反応することが可能となる。
【0098】
また、特定の物質とのアフィニティー性を有するリガンド担体を利用しての試料の精製等に際して、1個のフロースルーセルの精製能力が不足する場合は、複数のフロースルーセルに同一のリガンド担体を用意して、これらを必要な数のみ連結する事で任意の精製度の精製を行なう事が可能となる。
第三に、これらのセルは同一ラボオンチップ上に配置されており、連結は同一の心材に巻き付けることだけで行われるために位置あわせは不要である。そのために従来では異なるチップを使用して、各チップを連結する必要があったのだが、複数のチップを接合する際の接合間違いや、セルの位置あわせに伴う各種の処理が不要であり、簡便かつ高精度の位置あわせが可能となる。
【0099】
この位置合わせ精度をさらに高めるために、写真フィルムの様にラボオンチップのフロースルーセルとフロースルーセルとの間の部分にキャリアーテープ穿孔を設け、また巻き付け心材にこれに対応する送りピッチの突起を設ける事で、位置合わせはより正確となる。
さらに、フロースルーセルの連結精度と連結セル間の密着性を高めるために、フロースルーセル間の間の部分に雌型突起と雄型へこみを設け、雄型突起を雌型へこみに結合させることでより密着性を高めることが可能となる。
【0100】
第四に、フロースルーセルは、ラボオンチップを巻き付ける心材の周囲径を任意に変更することにより、任意の間隔のフロースルーセル同士を接続することができるため、フレキシブルナな単位操作の組み合わせが可能となる。
特に、ラボオンチップを使用する場合にあっては、商業生産や、生産試験とは異なり実験の途中経過により実験計画を臨機応変に変更する必要が極めて多く、あらかじめセルの内容とセルの位置を登録しておき、実験結果に応じて、次の実験セルを選択するようにしておく。これにより、この選択に見合う巻き付け用の心材と、投入順序とをコンピューターに登録することで、使用するセルの変更、セルの連結順序の変更などを自動化する事が可能となる。
【0101】
第五には、前述のフィルターを備えた粒子内蔵フロースルーセルを用いて粒子担体上で分離精製、反応、検出の独立の単位操作を高効率に行なう事が可能であるが、本実施態様を適用することにより、これらの独立の単位操作を連続して行う事が可能となる。言うまでもなく粒子上での分離精製、反応、検出は基板に反応プローブを固定して検体と反応する場合と比較して極めて反応性が高い。従来の96〜数千孔を有するマイクロプレートやビーカー内で担体粒子を用いたコンビナトリアルケミストリー、あるいはドラッグディスカバリー用ハイスループッとスクリーニングに於いては、未反応物質の洗浄除去が困難であった。本方法では極めて洗浄性の良好なチップとする事が可能である。
【0102】
ここで使用される心材の形状は、多面体、四角、三角、丸等の各種形状の柱状の心材が使用可能であるが、巻き付けるラボオンチップとの密着性を考えると鈍角のものが好ましく、多面体、特に円が好ましい。またこれらの心材の周囲径は自在に変えられる物が好ましく、例えば内部を空気で密封された弾性体で柱を形成し内部の空気を加減圧する事で集計を変化させる事が可能である。このように、心材は中空の物であってもよいし、何かで充填された物であってもよい。
【0103】
これらの心材の材質は、ラボオンチップを巻きつけた際に、心材とラボオンチップとの密着性を上げるために撥水性の高い弾性体であることが好ましい。また、心材にラボオンチップを巻きつけた後に、連結セル隙間からの溶液の漏出防止のためにセル間の隙間を覆うように撥水性の材質からなるテープをさらに巻き付けることも可能である。
【0104】
これらの撥水性の材料としては、撥水溌油性の高いシリコーンゴム、フッ素ゴムが好ましい。
また、前記ラボオンチップの使用方法の他の実施態様は、前述したラボオンチップの使用方法であって、前記フロースルーセルに試料を充填した状態で、試料流入部または試料流出部から外部エネルギーを照射して、当該外部エネルギーの前記試料による吸収を、試料流路の側方方向から検出することを特徴としている。
【0105】
ここで使用される外部エネルギーとしては、イオンビーム、電子ビーム、β―線、γ―線、X―線、紫外線、可視光、赤外線、マイクロウェープが使用可能である。セルに加熱を行う場合は、赤外線、マイクロウェーブ照射が好ましく、赤外線源としては赤外線ランプ、赤外線レーザー、マグネトロン、ガン・タイオード等が使用可能である。全面加熱を行う場合は、マグネトロンや赤外線ランプが好ましく、所定のセルだけに加熱を行うためにはLEDや赤外線レーザーが好ましい。これらの加熱による温度は照射時間により制御可能である。加熱に赤外線を使用する場合は、フロースルーセルを形成する材料の照射部分は黒色材料あるいは金属が好ましく、マイクロウェーブを照射する場合は透明材料が好ましい。
【0106】
この加熱により、PCR(Polymerase Chain Reaction)等の各種反応、およびセル内に水等の溶液を入れ加熱する事により、水蒸気等を気体にしてその膨張エネルギーを利用して当該セルあるいは連結セル内の溶液の移動、排出等を行う事が可能となる。この場合、フロースルーセルの両側にある開放面のうち、溶液の移動方向先の開放面のみを開放し、他方の開放面を封止する事で、溶液の移動方向を任意に制御する事が可能となる。
【0107】
これらのエネルギーの照射は、セルの試料流路に行うことがセル内の加熱の均一化の観点から好ましく、必要に応じて試料流路に線照射あるいは面照射する事により、より均一加熱することが可能となる。
また、前記フロースルーセルの照射エネルギーの透過部分にエネルギーを照射し、あらかじめフロースルーセルに設けられたプローブと、フロースルーセルに投入された検体との相互作用の結果、発生する光を検出器により検出する事が可能となる。
【0108】
ここで用いることが可能なエネルギーとしては、イオンビーム、電子ビーム、β―線、γ―線、X―線、紫外線、可視光等、赤外線等が使用可能である。
これらの内では、γ―線、X―線を用いるラジオアイソトープ検出、紫外線、可視光、赤外線を用いる化学発光検出、蛍光検出、ラマン検出、表面プラズモン検出、顕微鏡による検出等が使用可能である。
【0109】
これらの検出においては、照射光である第一波長の光(L1)を、フロースルーセルの透過部分から照射すると、セル内のプローブと検体物質との相互作用の結果、当該第一波長とは異なる第二波長の光(L2)が発生する。こうした第二波長の光としては、蛍光、表面プラズモン光あるいはラマン光等がある。ここで波長の光L2とは第二波長とは異なる波長の光を意味し、1種類の波長の光でなく、第一波長の光とは異なる複数種の波長の光が存在する場合を総称している。
【0110】
この第二波長を検出するためには、検出側に第一波長をカットするフィルタ(以下ノッチフィルタと称する)を設け、当該ノッチフィルタを通過した光をCCDカメラや撮像管等にて検出する事により、第二波長L2の光を検出する事が可能となる。上記第一波長の光を照射する透過部分としては、セルの試料流路あるいはセルの両端の開放面のいずれであってもよい。
【0111】
セルの試料流路から照射する場合は、当該試料流路が照射光に対して実質的に透明である必要があり、前述の各種の透明材料により試料流路を形成する事が必要である。さらに、試料流路の露出面積を照射スポット以上に大きくして、当該試料流路を面積スキャンし、検出にはそれから出る第二波長光L2を累積することで高感度検出が可能となる。
【0112】
試料流路に照射した光により発生した第二波長の光L2を検出する方法としては、例えば図11に示したように、フロースルーセルの試料流路111の基材110に面する底面114以外の3つの面あるいは開放面試料流入面、流出面を含む5つの面に反射層を設けて形成した反射面112により、第一波長の光L1および第二波長の光L2の光を反射させ、試料流路111の底面に設けたノッチフィルタ115で光L1を遮断し、検出器117により光L2を検出する方法が挙げられる。
【0113】
この場合第一波長の光L1は、フロースルーセルの試料投入面あるいは排出面から投入され投入面、排出面に反射層を設ける場合は、反射層の一部に投入光用の孔をあけ、そこからL1の光を照射することが可能となる。
また、図12に示したように、試料流路121の上面より第一波長の光L1を照射し、試料流路121の開放面122を含む5つの面を反射層にて覆い形成された反射面122から反射された光L1、L2光を、入射面側の上面に設けられたノッチフィルタ125を通して光L1を遮断し、光L2を入射面上方に設けられた検出器127にて検出する方法が挙げられる。
【0114】
また、図13に示したように、試料流路131の開放面以外の4面を反射層にて覆って反射面132を形成し、両側の開放面133にノッチフィルタ135を設ける態様が挙げられる。試料流路131の上方より第一波長の光L1を照射すると、試料流路131内で発生した第二波長の光L2は両開放面133より出射して、ノッチフィルタ135を介して検出器137へと入射し、検出器137でこの光L2が検出される。このとき、ノッチフィルタ135では、光L1をカットする。
【0115】
また、図14に示したように、フロースルーセルの投入面、排出面から光を照射する方法も可能である。具体的には、試料流路141の開放面以外の4面を反射層で覆って反射面142を形成し、開放面の一方を光照射用の穴を設けて残りを反射層で多い部分反射面148を形成しておく。さらに、他方の開放面には後述する第一波長の光L1を遮断するノッチフィルタ145を設けて、このノッチフィルタ145の外側には検出器147を設けておく。そこで、部分反射面148側より、第一波長の光L1を照射し、試料流路141の内部で第二波長の光L2を発生させる。この光L2は、反射面142、148からは試料流路141の外には出ず、ノッチフィルタ145を通って、検出器147に入射し、検出器147で光L2が検出される。このとき、ノッチフィルタ145は、光L1をカットする。
【0116】
また、図15に示したように、試料流路151の開放面以外の側面の両方に反射層を設けて反射面152を形成しておく。また、片方の開放面に光照射用の穴を開けた穴空きノッチフィルタ158を設けておく。他の面には、それぞれノッチフィルタ155を設けておく。なお、これらノッチフィルタ155、158は、後述する第一波長の光L1を遮断する。さらに、ノッチフィルタ155、158の外側に、検出器157を設けておく。そこで、穴空きノッチフィルタ158に設けられた穴より第一波長の光L1を照射する。試料流路151の内部では、第二波長の光L2が発生する。この光L2は、ノッチフィルタ155、158を通って、それぞれの検出器157に入射し、検出器157にて、光L2が検出される。このとき、ノッチフィルタ155、158は、光L1をカットする。
【0117】
また、図15の側面の反射層の代わりにノッチフィルタと検出器を設け、フロースルーセルの6面全部にノッチフィルタと検出器を設ける事も可能である。
以上、本発明に係るラボオンチップおよびこのラボオンチップの使用方法の実施態様について、それぞれ説明してきたが、本発明がこれら実施態様に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0118】
【発明の効果】
本発明によれば、微量な物質の混合、反応、分離精製、検出等の単位操作に於いて混合、反応、分離精製、線上効率が良く、反応物質が少量、短時間反応、高感度検出を可能にし、複数のセルを任意に組み合わせる事でフレキシブルな単位操作の組合せが可能になる。
【0119】
【実施例】
【0120】
【実施例1】
(チップ巻き付け用柱の作成)
柱の周径が100.5mmおよび185.3mmで長さが100mmの円柱ポリウレタン製ロールを外注購入した。このロールに市販のフッ素系撥水剤をスプレーにて吹き付け表面を撥水性にした。
【0121】
【実施例2】
(貫通溝を有するフィルムの作成)
JSR株式会社製シクロオレフィン系透明樹脂:アートンFX4726(屈折率1.522)の厚さ0.7mmフィルムを押し出し成形により作成した。前記フィルムをプレス成形にて、厚さ0.7mm,幅10mm,長さ400mmのフィルム上に、長さ方向に直角に幅1mm,深さ0.6mmの溝がフィルムの幅方向の端面まで貫通し溝と溝の中心間の距離が5mmであり,長さ方向のフィルム端面と最初および最後列の溝の中心との距離が2.5mmである溝を80個持つのフィルムを成形した。このフィルムを、図16に示す。
【0122】
このフィルムの平坦側の長さ方向の200mmから400mmに、JSR株式会社製フッ素アクリレート系UVコート樹脂:オプスターJM5010(屈折率1.41)を塗布し、0mmから200mmの間にはオキツモ株式会社製赤外線吸収塗料ワンタッチスプレー艶消しを塗った。
このフィルムの凹面側を春日電機株式会社CG−102コロナ処理装置にて30秒間コロナ処理を行い、親水化した。
【0123】
【実施例3】
(フィルム同士の張り合わせ)
JSR株式会社製シクロオレフィン系透明樹脂:アートンFX4726(屈折率1.522)の厚さ0.1mm、巾15mm、長さ400mmの平坦フィルムを用意し、実施例2と同様に、片側の長さ方向の200mmから400mmの間にJSR株式会社製フッ素アクリレート系UVコート樹脂:オプスターJM5010(屈折率1.41)をロール塗布し、別の片側にコロナ処理を行い、表面を親水化した。
【0124】
さらに上記フィルムの片側のオプスターJM5010を塗布したと同じ側に、長さ方向に0mmから200mmの間を上記赤外線吸収塗料を塗った。
実施例1にて得た貫通溝を有するフィルムの凸面表面に金属ロールにてケミテック株式会社製接着剤ケミシール4X525を塗布し、前記平坦フィルムのコロナ処理をした面と前記接着剤塗布フィルムとを幅方向片側端面同士を合わせて、両者のフィルムをはり合わせた。
【0125】
上記はり合わせフィルムに水銀ランプを光照射しフィルムを接着硬化し、貫通孔を有する、図17に示したようなラミネートフィルムを得た。
【0126】
【実施例4】
(中空糸の挿入とシール)
株式会社キッツ製ポリプロビレン系中空糸、透過孔径0.1ミクロン、外径約500ミクロン、内径約400ミクロンを用意した。図18に示したように、中空糸の25mm点と49mm点の中間点を折り曲げて両点を接合させ、JSR株式会社製UV接着樹脂:デソライトKZ8718にて両点を接着し、以下同様に25+29(n―1)mm点と25+24(n)+5(n―1)mm点(ここでnは2〜20)、および705+29(n―41)mmおよび705+24(n−40)+5(n−41)mm点(ここでnは41〜60)点の中間点を折り曲げてそれぞれの両点を点接着した。この折り曲げ部分を持つ中空糸の端と端とを直線上に張り渡しこの張り渡し中空糸の40箇所の接着点部分を、図19に示したように、実施例3で得られた図17に示したラミネートフィルムの平面フィルムの未張り合わせ部分に、フィルムの長さ方向端面と中空糸の端面を合わせ巾方向は接着部分端面より3mmの距離になるように逐次接着し、水銀ランプにて光照射し硬化接着させた。この折り曲げた部分を微小ドライバーにて端から数えて1〜20および41〜60番目の貫通孔の中に押し込んだ。
【0127】
また、ポリエチレン製角柱に深さが8ミリmm,幅1mm,長さ401mmの溝を切り、溝にJSR株式会社製ウレタン系UV硬化性樹脂:デソライトZ8412Hを深さ3mとなるように流し入れた。
上記中空糸を挿入したラミネートフィルムの未張り合わせ部分を下にして、当該ラミネートフィルムを前記光硬化性樹脂の入ったポリエチレン製角柱の溝に、溝の底面まで挿入してUV樹脂溶液中に含浸させ、10秒間静置して光硬化性樹脂を貫通孔に設けた中空糸挿入部分の隙間の一部に浸透圧により浸透させた後に、水銀ランプをポリエチレン製角柱の溝に照射し光硬化性樹脂の入った溝とラミネートフィルムとの隙間部分を硬化させた。
【0128】
その後、ラミネートフィルムをポリエチレン製角柱の溝より取り出し、さらに水銀ランプにて光硬化させて、図20に示したようなフィルムを得た。さらに、貫通孔外の中空糸を含む未張り合わせ部分5mmを切断除去した(図21)。
本実施により、図22、図23に示したような、貫通孔の片側に中空糸が折り曲げられて挿入され、反対側の貫通孔の端面は中空糸の切断面が露出し、中空糸以外の貫通孔の開放面は光硬化性樹脂によりシールされている、当該貫通孔をフロースルーセルとするラボオンチップを得た。
【0129】
【実施例5】
(ラテツクスへのプローブ結合)
10μg/μlの3種類のオリゴヌクレオチド溶液、5’−CCCCAGCCATGTACGTTGCTATCCA−3’(ヒト、ベータアクチン遺伝子の一部)、5’−CCCCCCAGGTCTCCACGGCCGTGGT−3’(ヒト、チューブリン、アルファ2遺伝子の一部)、5’−CCCTCCCGACCAGCAGAGGCTCATC−3’(ヒト、ユビキチンB遺伝子の一部)を用意し、この3種類のオリゴヌクレオチド溶液500μlをそれぞれ別の2mlのマイクロチューブに入れ、さらに500μlのJSR(株)製カルボキシ変成ラテックスG0305(固形分濃度10重量%と5mg/ml濃度の5mg/mlの水溶性カルボジイミド水溶液(同仁化学株式会社製)を入れて、50℃にて3時間加温してオリゴヌクレオチドをラテックス表面に結合させた。続いて1mlのTE(トリス;トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−EDTA)緩衝液(pH=8.0)にて遠心洗浄を3回行った後に、TE緩衝液に再懸濁し、固形分濃度10重量%の3種類のオリゴヌクレオチドを表面に持つラテックス懸濁液を得た。この各2μlを実施例4にて作成したラボオンチップのフロースローセルのうち、第41,42,43番面の中空糸内蔵フロースルーセルにそれぞれ別々にマイクロピペットにて投入した。
【0130】
【実施例6】
(セル内面への3種類のプローブオリゴヌクレオチドの結合)
実施例5と同様に、3種類のオリゴヌクレオチドと水溶性カルボジイミドにより、前記ラボオンチップチップのフロースルーセルのうち、第61,62,63番目のセル表面に、これらオリゴヌクレオチドを固定化した。
【0131】
【実施例7】
(m―RNA捕捉粒子のセル投入)
JSR株式会社製m―RNA精製用試薬:Oligotex dt30の2μl懸濁液を、前記ラボオンチップのフロースルーセルのうち、第1〜6番目のフロースルーセルにマイクロピペットにて投入した。
【0132】
【実施例8】
(未精製検体の投入と洗浄)
AGPC法(新細胞工学実験プロトコール、東京大学医科学研究所編集、秀潤社、1991年)によって、ヒト培養細胞から全RNA(5mg/ml)を抽出した。このRNA溶液3μlをマイクロピペットにて実施例7で作成したOligotex dt30を投入した1〜6番目のフロースルーセルにそれぞれ入れ、37℃にて5分間加温して、RNA溶液中のm−RNAをOligotex dt30と反応させ、その後、TE緩衝液にて洗浄した。
【0133】
【実施例9】
(オリゴテツクス捕捉m―RNAの分離とPCR用セルへの移動)
実施例5で得られたラボオンチップの1〜6番目のフロースルーセルに滅菌蒸留水3μlを入れ、ハイベックス株式会社製近赤外線ヒーターをチップの黒色塗布面に照射して、65℃にて3分間加温して、m−RNAをOlogotex dt30から分離した。実施例1にて作成した周径が100.5mmの柱に、図3で示される角度θが 5.7度となるように斜めにチップを巻き付け、同一チップ上の1番目と21番目、2番目と22番目、3番目と23番目、4番目と24番目、5番目と25番目、6番目と26番目のセルを上下に連結した。
【0134】
さらに21〜26番目のセルの非連結側にゴムバルーンつきマイクロピペットにて減圧して、m−RNAを21〜26番目のセルに移動させた後、チップを巻き付けた柱から解いた。
【0135】
【実施例10】
(PCRセルでのm−RNA増殖とDNA作成)
宝酒造(株)、One Step RNA PCRキット(AMV)を用いて目的とする遺伝子を増幅してDNAを得た。まず、増幅反応はプライマーとキット増幅試薬の混合液2μlとを21〜26番目のセルのそれぞれに入れ、赤外線ランプを21〜26番目のセルの黒色フィルム側に照射し、温度センサーにより50℃x10分になる様に加温制御して、逆転写酵素によりcDNAを合成し、次に上記赤外線ヒーターで同様にして温度を94℃x2分、94℃x2分、94℃x2分をサイクル繰り返し加温制御して目的DNAを増殖した。
【0136】
プライマーは、5‘末端をFITC(フルオレセンイ・イソチオシアネート)にて蛍光標識したものを使用し、ヒトベータアクチン遺伝子の増幅には、5’−CACCCCGTGCTGCTGACCGAG−3’および5’−CAGGTCCAGAGCCAGGATGG−3’を使用し、ヒトチューブリンアルファ2遺伝子の増幅には、5’−CGGATCCGCAAACTGGCGGA−3’および5’−TGTTCCAGGGTCGTGTGGGT−3’を使用し、ヒトユビキチンB遺伝子の増幅には、5’−GTGAAGACCCTGACCGGCAA−3’および5’−GCATACCACCTCTCAGACGC−3’を使用した。
【0137】
【実施例11】
(PCR増殖DNA検体をラテックス内蔵中空糸内蔵セルに投入ハイブリタイ゛ゼーションと洗浄を行った)
実施例9にて増殖された21,22,23番目のセルにおけるDNAと、実施例5にて準備された中空糸内蔵粒子入り41,42,43番目のセルの部分を、実施例1にて作成した柱の周径が100.5mmロールに、図3における角度θが5.7度 となるように巻き付け、21番目と41番目,22番目と42番目、23番目と43番目のセルをそれぞれ連結させ、連結されたセルの連結に関与していない側のセルの開放面に、市販の紙おむつから取り出した高吸水性樹脂をあてがい溶液を吸収させ、DNA検体を順次中空糸内蔵セルに移行させた。
【0138】
このラボオンチップを、柱から開放してそのまま2μlの0.2規定水酸化ナトリウム水溶液を加え、室温x5分静置し、1.5μlの5M酢酸カリウム溶液を添加して室温x5分静置した後、TE緩衝液にて洗浄した。
【0139】
【実施例12】
(PCR増殖DNA検体を実施例6のセルに入れハイブリタイ゛ゼーションと洗浄を行った)
実施例9にて増殖されたDNAを入れた24,25,26番目のセルと、実施例6にて準備されたプローブオリゴヌクレオチドの付いた61,62,63番目のセルを、実施例1にて作成された周径185.3mmのロールに、図3における角度θが3.1度となるように巻き付け、24番目と61番目,25番目と62番目,26番目と63番目とを連結させ、連結された最下部に前記高吸水性樹脂をあてがい、DNA検体を順次61,62,63番目セルに移行させた。このラボオンチップを柱から開放してそのまま2μlの0.2規定水酸化ナトリウム水溶液を加え、室温x5分静置し、1.5μlの5M酢酸カリウム溶液を添加して室温x5分静置した後、TE緩衝液にて洗浄した。
【0140】
【実施例13】
(実施例11,12にて作成されたハイブリダイゼーション検体の蛍光検出)
実施例11,12にて作成されたハイブリダイゼーション検体を内蔵した41,42,43番目のセル、および61,62,63番目のセルを、セルの試料流路を試料排出面が下になるように垂直に置き、バイオラッド株式会社製モレキュラーイメージャーFxProを用い、各フロースルーセルの片側の試料排出面にミラーを置き、488nmのレーザー励起光をフロースルーセルの試料投入面から照射し、520nmの反射光を検出した。
【0141】
この結果を、実施例10からのセル、および実施例11からのフロースルーセルについて、それぞれ、表1に示す。
【0142】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係るラボオンチップの実施態様を示す図である。
【図2】図2は、前記実施態様におけるフロースルーセルの形状の例を説明する図である。
【図3】図3は、前記フロースルーセルの断面形状を説明する図である。
【図4】図4は、前記フロースルーセルにフィルタを設けたときの実施態様を説明する図である。
【図5】図5は、前記フロースルーセルにフィルタを設けたときのその他の実施態様を説明する図である。
【図6】図6は、前記フロースルーセルにフィルタを設けたときのその他の実施態様を説明する図である。
【図7】図7は、前記フロースルーセルにフィルタを設けたときのその他の実施態様を説明する図である。
【図8】図8は、前記フロースルーセルにフィルタを設けたときのその他の実施態様を説明する図である。
【図9】図9は、前記フロースルーセルにフィルタを設けたときのその他の実施態様を説明する図である。
【図10】図10は、本発明に係るラボオンチップの第一の使用方法の一実施態様を説明する図である。
【図11】図11は、本発明に係るラボオンチップの第二の使用方法の一実施態様を説明する図である。
【図12】図12は、前記第二の使用方法の他の実施態様を説明する図である。
【図13】図13は、前記第二の使用方法の他の実施態様を説明する図である。
【図14】図14は、前記第二の使用方法の他の実施態様を説明する図である。
【図15】図15は、前記第二の使用方法の他の実施態様を説明する図である。
【図16】図16は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【図17】図17は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【図18】図18は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【図19】図19は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【図20】図20は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【図21】図21は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【図22】図22は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【図23】図23は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【符号の説明】
10、15 ラボオンチップ
11 フロースルーセル
13、14 基材
【産業上の利用分野】
本発明は、マイクロアレー、バイオチップ、DNAチップ、プロティンチップ
およびラボオンチップ等と称される各種微少物質の混合、反応、加熱、冷却、分離精製、相合流、相分離、検出等の単位操作機能を持つチップ、およびそれを用いた試料の混合、反応、加熱、分離精製、相合流、相分離、検出に際しての使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、DNA,RNA等の核酸、オリゴペプチド、タンパク質等のバイオ物質を検出するためにDNAチップ、プロティンチップ等のバイオチップが市販されている。DNAチップに於いてはシリコンウェハーやガラス基板上にオリゴヌクレオチド等の核酸分子をプローブとして高密度に固定化し、細胞等から抽出した核酸分子を蛍光色素等でラベル化した検体をDNAチップに浸積する事で前記プローブとハイブリダイゼーションさせ、洗浄により未ハイブリダイゼーション物質を除去した後に、ハイブリダイゼーションしたプローブの位置とその量を蛍光検出装置等により検出する。(例えば、特許文献1を参照)
これらのDNAチップではプローブと検体とのハイブリダイセーション効率を上げることと、検体量を減らすことを目的として、プローブを結合したセルを高密度化し、チップ面積を縮小する事が一般に行われており、現在において最小のチップでは1cm2のチップ上に数万個のセルを搭載されたものも実用化されている。しかしこれらのチップにおいては、セル面積を縮小する事は単位面積当たりに搭載されるDNAプローブ数を減少させる事を意味し、検出感度低下につながる。またこれらのチップにおける検体とプローブとの反応では、DNAプローブを搭載したチップ全体に検体を浸積させる方法が採用されているが、この場合はプローブ搭載セル以外の部分にも検体を浸積させる事となり必要検体量が増え、かつ、セル以外部分への検体付着に伴う洗浄が必要となる。また検体のハイブリダイゼーションには通常5−10時間を要する。洗浄は、平面セル上を洗浄液を流動させる事により行われるが、洗浄液の流動状態は複雑であり、洗浄液の投入量、流速、セルの配置等により微妙に異なるため、全てのセルを均一に洗浄する事が困難である。さらに、不十分な洗浄セルがあるとノイズの原因となる。
【0003】
これらの課題を解消するために近年フロースルー型セルと称する貫通孔を持ち孔の両端面が開放された三次元型のバイオチップが提案されている。(例えば、特許文献2、3および特開2002−122596号を参照)
これらのフロースルー型チップは、平面上に垂直に貫通孔を設け、上面貫通孔から検体や洗浄液を投入し、必要により下側から減圧する事により溶液を貫通孔内部に導入し、下面貫通孔から溶液を排出するいわゆるフローダウン法で使用される。フローダウン法では平面型チップに比し、洗浄が容易、かつ、より均一に行われ、また検体を投入した場合孔の内部を逐次下に検体が移動しながら反応するため、プローブとの反応効率が高く反応時間が大幅に短縮されるとされている。
【0004】
またフロースルーセルの場合にはセルは三次元形状となり、平面型チップの二次元形状に比し同じチップ面積で比較した場合にはセル単位面積当たりのセル密度を増やす事が可能であり、高感度検出につながるとされている。
セルに検体を投入する方法としては、チップ全体に検体液を含浸するか、それぞれの個別のセルにスポッターで検体をスポットする方法が可能である。
【0005】
本発明者もスポット法による検体投入方法を考案し特願2002−148048号として出願している。
しかし前者の方法では検体液がセル以外の箇所にも含浸されるために過剰の検体溶液が必要となる。一方後者では、検体液が個別のセルに分割スポットされるためにセル毎に割り当てられる検体数はスポット量単位にあらかじめ限定され、チップ全体でのプローブと検体数のマッチングではなく個別セルに割り当てられた検体とプローブのマッチングになるために、検体の有効利用において含浸法に比し劣る。
【0006】
即ちあるセルにスポットされた検体がプローブと反応せず余った場合、余った検体は他のセルに使用させる事が出来ない。
そのためにセル間にマイクロチャンネルを設けセル間で検体を共有しながら、検体量を最低限にする4Dアレイ法なる方法が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。この方法ではマイクロチャンネルを設けるコストの増加と検体の移動手段が新たに必要となる事、さらにマイクロチャンネルへ壁への検体の付着等の問題が、その付着量は少なくなるものの、依然として存在する。
【0007】
これらの三次元の貫通孔を持つ立方体を作成する方法としては、先ず立方体に垂直な貫通孔を形成する方法が挙げられ、その方法としては、多孔質ガラスを使用する方法、電解法アルミナ孔空けシートを張り合わせる方法、ドリルで孔を空ける方法、針金上の凸型金型による樹脂の成形が挙げられている、また他には中空糸をバインダー等で含浸束ねる方法等が提案されている。これらのいずれの方法も、孔径0.5ミリ以下の孔を、100本以上、孔の側面の面積や孔の体積を均一に、低コストで、形成する事は非常に困難である。
【0008】
またこれらの内部空間にプローブの結合や、光検出のための反射層の形成などの表面処理を行うことが望ましいがこれらの表面処理も極めて困難である。
分離精製用を目的としたアフィニティークロマトグラフィーが広く用いられている。これはカラムと呼ばれる中空管に生体分子や化学物質をリガンドとして、セファロース、アガロース、アクリロアミドゲル、あるいはスチレン系ラテツクスビーズなどの担体に固定化したものを充填して、管の上部から検体を投入し、管上部からの加圧あるいは管下部からの減圧により検体を管内に導入し、検体中の所定の物質でリガンド選択的に反応するものを分離精製するものである。この場合は担体を充填しているためにカラムに通す検体の流速とカラム背圧、分離性能は逆相関になる。背圧上昇を避けるためあるいは検体中の複数の物質の分離のためにキャピラリーをつなぎ合わせたマルチアフィニティクラマトグラフィーが存在する。カラムの接続はカラム同士が独立しているために相互の位置関係が固定されておらず、接続には時間とテクニックを要する。一般に微少な検体対応のためにカラムを細くする場合は、分離精製時間と接続の困難さは幾何級数的に増加する。
【0009】
また近年ラボオンチップ、集積化マイクロチップ、μ―TAS(Micro Total Analysis System)、Micro Fluid Chip等と称するチップ上で各種の混合、反応、分離精製、検出を行うチップが実用化され始めている。
これらは実験室や定常的な検査等で微量検体を対象とした一連の単位操作をあらかじめチップ上に組み込み装置の自動化を意図したものである。
【0010】
これらのチップとしては多様な構造のチップがあるが、代表的なのは二枚の板の間に溝を切り、板の平面上の所定箇所に孔を空け、平面上の孔から所定の薬液を投入し、溝のそれぞれの両端に設けられた電極に電圧をかけ電気浸透流と電気泳動により薬液を移動させ、必要によりゲル充填あるいはキャピラリー内面の表面修飾によりあるいは蛍光検出機により、混合、反応、分離精製、検出を行うものである。
【0011】
これらのチップでは試料の投入の孔は通常平面上に設けられており、検体のようにそれぞれ独立薬液投入孔と、これらと反応させる試薬のように共通薬液投入孔から構成されている。独立薬液は溝からなるチャンネルを介しての反応のため、ある段階で共通薬液と接するように設計されている。
しかし共通薬液をそれぞれの独立チャンネルに独立チャンネル同士が接続しないように供給するには、独立チャンネル同士の薬液が混合しないように薬液切り替えスイッチやバルブを設けるか、独立チャンネル同士が接続しないように共通溶液チャンネルを中心に配置しその周辺に独立チャンネルを放射状に配置するかあるいは三次元配線が必要である。
【0012】
バルブを設けるにはその制御機構が必要となる。放射状に配置する場合はチャンネルあたりの溝の専有面積が多くなり検体投入ラインが減少するさらに複数種の共通薬液チャンネルを必要とする場合はさらに配線が複雑となる。また三次元チャンネルの製造の場合はあらかじめ幾つかの溝を形成したプレートを張り合わせて三次元チャンネルを形成する事が可能であるが、チャンネルが微細になると溝同士の位置合わせが困難となりまた製造コストアツプとなる。
【0013】
また、チップに設けられた複数の孔あるいはチャンネルを持つ複数のチップをそれぞれモデュール化して、チップの端面に複数の接続孔を有するモデュールを自由に組み合わせる事で、モデュールにより異なる処理を行わせる方法も開発されている。この接続では、あらかじめ決められた順序と決められた間隔に設けられたチャンネル同士を、チップに設けられた位置あわせ場所に何らかの位置あわせをすることで行われる。そのため、この場合はチャンネルのモデュール単位での接続は、モデュール毎にあらかじめ決められたチャンネルの順序と間隔、と同じ順序とチャンネルの間隔のモデュールを接続することになるため、あるモデュールの任意のチャンネルと、別のモデュールの任意のチャンネルの組み合わせによる反応の構成は不可能である。
【0014】
【特許文献1】
特表平11−512293号公報
【特許文献2】
特表平9−504864号公報
【特許文献3】
WO01/45843号
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実状に鑑みて鑑みて発明されたものであり、微量な物質の混合、反応、分離精製、検出等の単位操作に於いて混合、反応、分離精製、洗浄効率が良く、反応物質が少量、短時間反応、高感度検出を可能にし、複数のセルを任意に組み合わせる事でフレキシブルな単位操作の組合せを可能とするラボオンチップと、および微量な物質の混合、反応、分離精製、検出等の単位操作のフレキシブルな組合せを可能とする簡便な、前記ラボオンチップの使用方法を提供する事を目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るラボオンチップは、上述した問題を解決するために、試料流体が流入する試料流入部と、試料流体が流出する試料流出部と、前記試料流入部と試料流出部とを接続する試料流路とからなる複数のフロースルーセルが配設された帯状シートからなるラボオンチップであって、
前記試料流路が前記帯状シートの表面に配設され、
前記試料流入部が前記帯状シートの長手方向の一の側面に沿って配設され、前記試料流出部が前記帯状シートの長手方向の他の側面に沿って配設されるとともに、各側面では各試料流入部または試料流出部の中心軸が、前記帯状シートの長手方向へ一列になるように設けられる
帯状シートからなるものである。
【0017】
あるいは、本発明に係るラボオンチップは、試料流体が流入する試料流入部と、試料流体が流出する試料流出部と、前記試料流入部と試料流出部とを接続する試料流路とからなる複数のフロースルーセルが配設された帯状シートからなるラボオンチップにおいて、
前記試料流路が前記帯状シートに埋設され、
前記試料流入部が前記帯状シートの長手方向の一の側面に配設され、前記試料流出部が前記帯状シートの長手方向の他の側面に配設されるとともに、各側面では各試料流入部または試料流出部の中心軸が前記帯状シートの長手方向へ一列になるように設けられる
帯状シートからなるものである。
【0018】
上述したラボオンチップにおいて、前記フロースルーセルの試料流路の少なくとも一部が透明である事が好ましい。
さらに、前記フロースルーセルの試料流路の少なくとも一部が光反射材料からなる事が好ましい。
さらに、前記フロースルーセルの試料流路の少なくとも一部の内部空間表面が、金、銀、プラチナ、ニッケル、インジウムティンオキサイド(ITO(Indium Tin Oxide))、化合物半導体、シリカ、アルミナ、アミノ基、カルボキシル基、カルボジイミド基、エポキシ基、 N―スクシイミド基、マレイミド基、トシル基、トリメトキシシリル基、ニトリロ三酢酸基、チオール基、スルフィド基、ヒドロキシル基、ベンゾスルホアミド基、ヒスチジン、アビジンからなる群から選ばれるもので構成されている事が好ましい。
【0019】
また、さらに前記フロースルーセル内に、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド数5〜100の一本鎖核酸、分子量500〜100万のタンパク質、ペプチド、脂質、アプタマー、ウィルス、酵素、分子量50〜100万の化合物、ラテックス粒子、セファロース、アガロース、アクリロアミドゲル、相転移樹脂、金属粒子、金属酸化物粒子、金属硫化物粒子、蛍光体の群から選ばれるものを収納する事が好ましい。
【0020】
また、本発明に係るラボオンチップの使用方法は、上述のいずれかに記載のラボオンチップの使用方法であって、
周囲径aの心材に、当該心材の径方向と前記帯状シートの長手方向とが角度θになるように、前記帯状シートを巻き付けて、一のフロースルーセルの試料流出部と、当該一のフロースルーセルから距離dだけ離れた二のフロースルーセルの試料流入部とを連結して用いることを特徴としている:
ただし、前記周囲径a、角度θおよび距離dが下記のような関係を満たす。
【0021】
【数2】
【0022】
ただし、式中wは帯状シートの短手方向の長さである。
また、本発明に係るラボオンチップの使用方法は、上述のいずれかに記載のラボオンチップの使用方法であって、
前記フロースルーセルに試料を充填した状態で、透過部分から外部エネルギーを照射して、当該外部エネルギーの前記試料とあらかじめ存在する別の試料との相互作用によるエネルギー変化を、フロースルーセルを構成する6面の少なくとも1面から検出することを特徴としている。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るラボオンチップおよび当該ラボオンチップの使用方法の具体的な実施態様について、図面を参照しながら説明する。
前記ラボオンチップの実施態様は、試料流体が流入する試料流入部と、当該試料流出部と同一形状の試料流出部と、前記試料流入部と試料流出部とを接続する試料流路とからなる複数のフロースルーセルが配設された帯状シートからなるものである。
【0024】
ここで、フロースルーセルとは両端が開放されて内部が中空のセルであり中空部分内部にて各種単位操作を行うものである。このフロースルーセルの試料流路は、前記帯状シート上の平面XY軸面(Y軸が長手方向)に設置され、長手方向の側面に設けられた試料流路の両端にZ軸面に向いた開放面を有する。このフロースルーセルは、帯状シート表面の二次元平面の中に埋没していても、試料流路の一部又は全部が平面から飛び出していても構わず、階段状の凹凸や多少の傾斜があっても実質的に二次元平面に配置されていれば構わない。
【0025】
具体的には、図1(a)に示したように、試料流路11が帯状シート10に埋設される。また、試料流入部としての開放面12が帯状シート10の長手方向の一の側面に配設され、あるいは試料流出部としての開放面12が帯状シート10の長手方向の他の側面に配設される。また、各側面では各試料流入部または試料流出部の中心軸が一列になるように設けられる。
【0026】
また、図1(b)に示したように、試料流路11が帯状シート15の表面に配設される。また、試料流入部としての開放面12が帯状シート15の長手方向の一の側面に沿って配設され、あるいは試料流出部としての開放面12が帯状シート15の長手方向の他の側面に沿って配設される。また、各側面では各試料流入部または試料流出部の中心軸が一列になるように設けられる。
【0027】
また、これらのフロースルーセルの形状としては、例えば図2に示したような直線状、斜め直線状、幅変化状、曲線状、途中分岐状、Y字型分岐状、Y字統合状、複数分岐状等いずれの形状も使用可能であるが、これらに限定されるものではない。また、試料流路の断面の形状についても特に何でもよく、例えば図3(a)〜(d)に示したような各種形状のものが使用可能であるが、これらに限定されるものではない。また、図3(e)に示したように、開放面の一部を閉鎖してもよい。
【0028】
また、フロースルーセルの大きさは、その開放面に蓋をしないでも開放面12における表面張力により各種の試料溶液がセル内部に保持される様にある一定以下の内径であることが好ましい。具体的には、開放面12の内径は、フロースルーセル内表面と試料流路11の内部溶液との親和性により異なるが、好ましく0.05mmΦ〜10mm,より好ましくは0.1mmΦ〜5mmである。但し、上記内径は試料流路両端の開放面の内径であり、試料流路の中心部が太くなるような形状では中心部の径は限定されない。当該試料流路の長さは特に限定されないが、フロースルーセル中の液を取り出す場合には流速抵抗があまりに大きいと取り出せなくなる事から、好ましくは0.1mm〜500mm,より好ましくは0.5〜200mm以下である事が好ましい。
【0029】
また、フロースルーセル(セル)間ピッチは、0.3mm以上であれば如何様でも構わなく、好ましくは0.5mm以上1000mm未満、より好ましくは1mmから100mmである。ここでセル間ピッチとはセル中心部から隣のセル中心部までの距離である。
0.3mm未満の場合には溶液のセルへのスポットにおいてセル同士のクロスオーバーが起きる可能性がある。
【0030】
また、セルの平面上への形成方法は、簀巻きの様に中空パイプ状セルを並べて糸で接続する方法、中空パイプ状セルを平板の上に接着固定する方法、中空糸をニット編み機等にて平面配置し樹脂にて含浸固定する方法、あらかじめセルが凹部分となる凹部を有するフィルム作成しこれらあるいはこれら凹面フィルムと平面フィルムを張り合わせる方法等いずれの方法でも可能である。またこれらのセルの数は、特に限定されるものではなく、フロースルーセルを配設したチップをテープ状の連続体にする事により、当該テープをつなぎ合せる事で、セル数に限度なく多数のセルを搭載する事が可能となる。
【0031】
また、テープ状にする事により従来のチップのようなバッチの搬送系ではなく、たとえば磁気テープをReel To Reelで連続的に移動させ、ヘッドで読み取るような連続巻き取り、あるいはリール方式が採用でき、その結果ハンドリングが容易になり処理システムが低コストとなる。さらに、試料のフロースルーセルへの注入、排出において連続して処理することが出来る事から処理の簡便化と処理スピードのアップが期待できる。この場合セルはテープの一定幅上にテープ上に一次元的に搭載されているため、セルの位置合わせ、光学的加熱あるいは検出等の光学的処理は相対的な一次元の移動ですみ、チップを一次元的に移動させるか、光学的処理装置を一次元的に移動させるかのいずれかで良く、ハンドリング方法が簡便となる。
【0032】
セルの材質としては、特に限定はなくガラス、金属、セラミックス、樹脂いずれも可能である。具体的には、ガラス、シリコン、金、銀、銅、アルミ、ニッケル、チタン、アルミナ、シリカ、チタニア等の金属あるいは金属酸化物、架橋ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、セルロース、セルロースアセテート、硝酸セルロース、ポリアミド樹脂、、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ビニロン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリペンテン樹脂、ポリビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、不飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、環状シクロオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、フルオロカーボン樹脂等が使用可能である。しかし、加工上の理由から、製造の容易な樹脂が好ましい。フロースルーセル内部に有機溶媒が使用される場合は、無機系の材料あるいは有機系の材料の架橋されたものを使用する事が好ましい。
【0033】
これらの材料を使用し、フロースルーセルを作製する方法は、後述したような製造方法により製造する事が可能である。これらの材料は、セルに投入され、あるいは通過する溶液によりセル毎に使い分ける事が可能である。投入溶液が親水性の場合は、最初の投入セル内面を親水性にする事が好ましく、その親水化度は水の接触角で、90度以下、より好ましくは80度以下、さらに好ましくは70度以下である。また、投入溶液が有機溶媒の場合は、最初の投入セル内面は溶媒親和性のものが好ましく、さらに耐溶媒性のために樹脂セルの場合は樹脂架橋する事が好ましい。
【0034】
材料とセル内面の親水性あるいは親油性を類似のものとし、セル内径を一定以下の内径とすることで、投入溶液はセルに投入された瞬間にセル内部の表面張力によりセル内部に入り込み、またにセル内部の溶液が表面張力でセル内部に保持可能となり、セル開放面を封鎖しなくとも溶液保持が可能となる。
ただし開放系にする場合は、蒸発による溶液減少を防ぐために保存時にはチップ全体を密封し、また処理時には湿度60%以上の室温で処理することが好ましい。
【0035】
また、逆Y字型のセルを設け、セル内部の混合溶液を親水性と親油性で分離する等の場合には二股の片側部分を親水性に、もう片側部分を親油性にするにより混合溶媒を親水性溶媒、親油性溶媒に分離する事が出来る。また、後述するように一つのセル内にフィルタを介して担体粒子を入れる入口セル部屋と出口セル部屋とを設ける場合は、入口セル部屋は粒子溶液と同一親水/親油性に、出口セル部屋は逆の親水/親油性にすることが好ましい。
【0036】
これらにより、粒子とその溶液は表面張力により、セル内にとどまり、必要によりセルの一端を減圧吸引するあるいは高吸液性材料と接触させることで溶液は容易に試料排出部より排出される。
これらのセルの親水性材料としては、ガラス、シリコン、金、銀、銅、アルミ、ニッケル、チタン、アルミナ、シリカ、チタニア等の金属あるいは金属酸化物、架橋ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、セルロース、セルロースアセテート、硝酸セルロース、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、各種スルホン酸基、カルボキシル基、あるいはヒドロキシ基変成樹脂等が使用可能である。また親油性あるいは撥水性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリペンテン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、環状シクロオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、フルオロカーボン樹脂等が使用可能である。
【0037】
また、フロースルーセル内部表面のみを親水性あるいは親油性に改質する事も可能である。これらの方法としては、親油性あるいは親水性を付与したい部分にプラズマ処理、コロナ処理あるいはイオン処理により表面にヒドロキシ基やカルボキシル基を形成する方法、蒸着、スパッタ、CVD等の方法により金属あるいは金属酸化物層を形成する方法、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基等の親水基を持つポリマー、オリゴマーを塗布する方法、メッキにより金属を形成する方法、シラン、チタンをジルコニア等の前駆体をセルに塗布した後に加水分解する事によりヒドロキシ基を含む金属酸化物を表面に形成する方法等が可能である。
【0038】
また、フロースルーセルを構成するセル基材の表面に凹凸のある金型転写のエンポス加工、エッチング加工等により凹凸をつける事で表面積を大きくして表面張力を高め、親水性、あるいは親油性を上げる事が可能である。
これらのうちで特に好ましいのは、チップを構成する基材のうちでフロースルーセルの内部表面以外の全ての基材を試料溶液とは非親和性にして、フロースルーセル内部表面のみを試料溶媒と親和性とする方法であり、これによりフロースルーセル内部の溶液がフロースルーセル外部に拡散する事を防止する事ができる。
【0039】
また、セルとセルとの間の平面は試料流入部および試料流出部のいずれも、その間隔が1mm以下の場合は隣のフロースルーセルへの試料の混入であるクロスオーバーを避けるために、後述する材料で形成されるあるいは表面処理されることが好ましい。
これらの材料としてはシリコーンあるいはフッ素撥水剤が使用可能であり、これらの材料からなる塗布剤をセル間部分に塗布するにより、撥水性あるいは溌油性とする事が出来る。
【0040】
また、上述したラボオンチップのうち、フロースルーセル(セル)の試料流路の少なくとも一部が透明である事が好ましい。
この場合、フロースルーセル全体が透明である必要はなく、セルの平面上の上部、あるいは下部のいずれかが透明である事が好ましい。
ここで透明とは、当該外部エネルギーの前記試料とあらかじめ存在する別の試料との相互作用によるエネルギー変化を、フロースルーセルを構成する6面の少なくともいずれか1面から検出に際して照射するエネルギーに対して、あるいは照射に伴い発生する第二エネルギーに対して透過率が80%以上、より好ましくは90%以上である事が好ましい。
【0041】
ここで、エネルギーとはイオンビーム、電子ビーム、β―線、γ―線、X―線、紫外線、可視光、赤外線等を言う。
また、これらの透明な材質としては、アルカリ硝子、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリペンテン樹脂、ポリビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、環状シクロオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、セルロース、セルロースアセテート、硝酸セルロース、フルオロカーボン樹脂などが使用可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
フロースルーセル内部に有機溶媒が使用される場合は、耐溶媒性のある無機系の材料あるいは有機系の材料の架橋されたものを使用する事が好ましい。
これらの材料を使用したフロースルーセルとする方法は、後述するような製造方法により製造する事が可能である。
また、上述したラボオンチップのうち、フロースルーセル(セル)の試料流路の少なくとも一部が光反射材料であることが好ましい。
【0043】
フロースルーセルの一部を光反射材料とすることにより、前述したような試料流路の透明部分を通してセル内に照射された検出光による反応により励起された反応光を反射し、反射光のロスを最小限にして、当該反射光を検出器などの検出系にもたらす事が可能となる。
これらの光反射材料として、金、銀、アルミニウム、ニッケル、高屈折と低屈折材料で屈折率差が3%以上ある材料を複数層形成する方法などが可能である。
【0044】
これらの材料の形成方法としては、樹脂や硝子などの表面に金、銀、ニッケル、酸化チタン、シリカ、アルミナなどの金属、金属酸化物をスパッタ、蒸着、CVD等で乾式あるいはメッキ等湿式等の方法で薄膜形成する方法、および後述するような製造方法で金属フィルムを樹脂フィルム等とラミネートする方法が可能である。
【0045】
また、セル内面を高屈折率材料とし、その外側に3%以上の低屈折率材料を積層することにより内部の光は界面で反射され実質的な反射材料とすることができる。
これらの組み合わせとしては、上記透明材料の内屈折率が1.5以上のものをフロースルーセル内面に、フロースルーセル外面に屈折率が上記よりも3%以上低い材料例えばポリフッ化ビニリデン、フッ素の含有アクリレート等の膜を形成し、内面と外面とを複層膜とすることで反射材料とする事が可能となる。
【0046】
また、上述したラボオンチップのうち、フロースルーセル(セル)の試料流路の少なくとも一部の内部空間表面が、金、銀、プラチナ、ニッケル、インジウムティンオキサイド(ITO(Indium Tin Oxide))、化合物半導体、シリカ、アルミナ、アミノ基、カルボキシル基、カルボジイミド基、エポキシ基、N―スクシイミド基、マレイミド基、トシル基、トリメトキシシリル基、ニトリル三酢酸基、チオール基、スルフィド基、ヒドロキシル基、ベンゾスルホアミド基、ヒスチジン、アビジンからなる群から選ばれるもので構成されていることが好ましい。
【0047】
これらの金属、金属化合物あるいは官能基を、フロースルーセル内部空間表面に設けることで、後述するような各種プローブをフロースルーセル内部表面に結合させることが可能となる。ここで、樹脂フィルム上に金、銀、シリカ、アルミナ、ITO、化合物半導体を形成する方法としては、スパッタ、蒸着、CVDなどの方法により薄膜形成することが挙げられる。また、金属フィルムを後述するような方法により直接樹脂フィルムとラミネートする事も可能である。
【0048】
また、各種官能基の形成については、これらの官能基を持つ化合物を樹脂フィルム上に塗布する方法、樹脂フィルムを変性する方法、樹脂そのものがこれらの官能基を持つ物を使用する方法などが可能である。
このフロースルーセル内部表面にはプローブを直接あるいはスペーサーを介して結合することが可能である。
【0049】
スペーサーを使用する場合は、セル表面に自己集合により高密度に規則正しいスペーサープローブ結合を得ることが望ましく、さらにプローブと試料検体とが相互作用するに際して立体障害に起因する反応率の低下を防止し、高反応を起こさせることが望ましい。
これらのスペーサーとしては、プローブと結合できる官能基を有し、比較的低分子量の化合物を使用することにより可能となる。具体的には、たとえば液晶や炭素数10〜100のアルキレン基の両端に官能基が結合してなる構造の化合物、たとえばエチレングリコールジグリシジルエーテル誘導体、N―k―マレイミドウンデカニック酸、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、カリックスアレン誘導体等を使用することができる。また、アミノ基、カルボキシル基、チオール基などで修飾されたオリゴヌクレオチドも使用可能である。
【0050】
また、上述したラボオンチップのうち、フロースルーセル(セル)内に、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド数5〜100の一本鎖核酸、分子量500〜100万のタンパク質、脂質、アプタマー、ウィルス、酵素、分子量50〜100万の薬理活性を持ったいわゆるリード化合物、ラテックス粒子、セファロース、アガロース、アクリルアミドゲル、温度、ph、光等でそのモルフォロジーを転移するアクリル系、アクリルアミド系、ポリアミノ酸系の相転移樹脂、金属粒子、金属酸化物粒子、金属硫化物粒子、蛍光体、すなわち有機蛍光体あるいは無機蛍光体の群から選ばれるものを収納する事が好ましい。
【0051】
これらの材料は、(1)フロースルーセル内部空間表面に直接あるいは何らかのスペーサーを介して結合させておく、(2)有機粒子、金属粒子、金属酸化物粒子を担体として直接、間接的に結合させそれをフロースルーセル内部空間に充填あるいは分散させておく、あるいは(3)材料そのものをフロースルーセル内部空間に水あるいは有機溶剤にて分散あるいは溶解させておくことも可能である。
【0052】
これらのオリゴヌクレオチドあるいは核酸の断片は、DNA合成機を利用するなどして適時合成してもよく各種の動物、植物、細菌、真菌、もしくは原生動物、または各種の動物もしくは植物ウィルスから得たDNAやRNAを市販の制限酵素、たとえばBamHIやHindIII等を適時組み併せて切断して得ることが出来る。
また、適当なヌクレオチドやヌクレオチドの配列を有している市販品を利用することも可能である。これらのオリゴヌクレオチドや核酸の断片の末端は、チオール基,アミノ基、カルボキシル基等の修飾基やビオチン等の化合物で修飾されていても良い。
【0053】
分子量500〜100万のタンパク質としては、合成ペプチド、膜タンパク質、酵素、輸送タンパク質、サイトカイン、リンフォカイン、IgA、IgEをはじめとする抗体、各種抗原、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、エクオリン、グリーン蛍光タンパク質等の生物発光機能をもつもの等をあげる事が出来る。
脂質としてはホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトーマンノシド、ウルシオール、各種のガングリオシドなどを挙げることが出来る。
【0054】
これらは分子量によっては免疫原生を有する抗原として作用するが、これらが抗原として作用した場合はそれによって産生されたポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体なども使用することが可能である。これらが免疫原性を有しないハブテンである場合は適当なタンパク質と組み合わせることにより人口抗原として、これらに対する抗体を得て使用することも可能である。
【0055】
分子量50〜100万の化合物の低分子化合物(リード化合物)としては、基質、補酵素、調整因子、レクチン、ホルモン、神経伝達物質、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマーなどのようなリガンド、フェニルピペリジン誘導体、スルホンアミド/スルホン酸誘導体、ステロイド、プロスタグランディンなどの医薬候補物質が挙げられる。
【0056】
また、ウィルスとしてはバキュロウィルス内にタンパク質を発現させたものが使用可能である。
また、アプタマーは、タンパク質、酵素、色素、アミノ酸、ヌクレオチド、成長因子、遺伝子発現調節因子、細胞接着分子、生物固体等と結合能力のある機能性核酸であり、たとえばトランビンアプタマー、エラスターゼアプタマー、活性化プロティンC、C型肝炎ウィルスのNS3プロテアーゼアプタマー等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0057】
これらのオリゴヌクレオチド、ヌクレオチド数5〜100の一本鎖核酸、分子量500〜100万のタンパク質、アプタマー、ウィルス、酵素、脂質、低分子化合物等はセル表面あるいはスペーサーと結合させるために、末端あるいは分子途中にアミノ基、カルポキシル基、エポキシ基、チオール基、ヒスチジンタグ、アビジン、ビオチン等の結合基を設けることが可能である。あるいは、既に存在するこれらの結合プローブ結合サイトと、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド数5〜100の一本鎖核酸、分子量500〜100万の蛋白、アプタマー、ウィルス、酵素、脂質、低分子化合物のいずれかを結合させるには、カルボキシル基−アミノ基、マレイミド基−チオール基、金−チオール基、トシル基−アミノ基、アミノ基−水酸基、アミノ基−アミノ基、アビジン−ビオチン、カリックスアレン−上記記載分子内のアンモニウム基等の組合せにより結合させる事が可能である。
【0058】
これらの結合方法は「有機合成化学 1984年 第42巻第4号 北川 常広」に示されたように、具体的に実現する事が可能である。
有機粒子はブタジエン系、スチレン系、ジビニルベンゼン系、アクリロニトリル系、アクリレート系、メタクリレート系、アクリルアミド系、ベンゾグアナミン系、フッ素系の単独モノマーあるいはこれらの組合せによる複数のモノマーを使用した乳化重合あるいサスペンション重合、再分散系粒子が使用可能であり、重合時にフェライト等の磁性体、あるいはフェライトメッキしたもの、あるいはセファロース、アガロース、ガラクトース等の天然物ゲルも使用可能である。これらの有機粒子を反応担体として使用する場合の粒子径は0.01ミクロン〜10mmが好ましく、より好ましいのは、0.1ミクロン〜1mmである。
【0059】
粒子が小さい場合はハンドリング性に難点が生じ、特に後述のフィルタによる捕捉が困難となる。また大きい場合は、セル中の合計の粒子表面積が小さくなりあるいは沈降により反応性が低下する。また必要に応じ粒子を多孔質にする事も可能である。
これら粒子の表面はアミノ基、カルボキシル基、カルボジイミド基、エポキシ基、トシル基、N―スクシイミド基、マレイミド基、チオール基、スルフィド基、ヒドロキシル基、トリメトキキシリル基、ニトリル三酢酸基、ベンゾスルホアミド基、ポリエチレンイミン基等の各種官能基を持たせる事が好ましい。これらの粒子の製造方法としては、たとえばスチレン系の粒子については特開昭57−168163号公報に記載の方法により得ることが可能である。
【0060】
また磁性粒子の製造方法としては特開平11−176622号公報に記載の方法により得ることが可能である。
無機系の粒子としては、金属酸化物粒子、金属硫化物粒子、金属粒子が使用可能である。
金属酸化物粒子として最も好ましいのは、シリカ粒子であり、市販の各種シリカ粒子を使用する事が出来る。これらのうちで反応担体として好ましいのは粒子径が0.05ミクロン〜0.1mmのものであり、より好ましくは0.1ミクロン〜0.05mmのものである。
【0061】
粒子が0.05ミクロンよりも小さい場合は、フィルタでの捕捉が困難となり、粒子が0.1mmより大きい場合は重量により沈降して反応性を阻害する。また、粒子が大きい場合は多孔質とする事で溶液中に浮遊させる事が可能であり、それらの粒子としては旭硝子製のサンスフェアーH、Lシリーズ等が使用可能である。これらのシリカ粒子は市販のシランカップリング剤、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等により表面に必要な官能基をする事が可能である。
【0062】
また、金属粒子としては金、銀、ニッケル、鉄、マンガン、セリウム、クロム、カドミウムの粒子が使用可能であり、特に金、銀、ニッケルの数ナノメートルから100ナノメートルの粒子が好ましい。金、銀の数ナノから数十ナノメートルの粒子は表面プラズモン、ラマン、蛍光等の検出の際の信号増幅粒子としても使用可能である。
【0063】
これらの粒子の製造方法としては、金属の蒸着、逆ミセルによる重合方法等により得ることが可能である。金、銀の蒸着ナノ粒子としては真空冶金株式会社製パーフェクトゴールドパーフェクトシルバー、あるいはアーカイラスエンジニアリング合資会社製ラマン増感試薬780−830が使用可能である。
また、有機系の蛍光体としては、フルオレイセン、テキサスレッド、ローダミン、CY3、CY5、グリーンフルオロセントタンパクやユウロピウム等の金属錯体が上げられる。ユウロピウム錯体は「未来材料第2巻第4号p.17」に記載の方法により得る事ができる。また無機系の蛍光体としては、量子効果発光によるナノ粒子蛍光体が退色が少なく、分子量分布がシャープなために好ましく、これらとしては硫化カドミウム、硫化亜鉛等のナノ粒子蛍光体が使用可能である。また、これらの粒子の製造方法は、例えば「応用物理第70巻第9号p.1087」に記載の方法により製造する事が可能である。また上記無機粒子は前記粒子の製造方法の他に、平坦なシリコンウェハー等の基板の上に二層のレジストを塗布し、所定の大きさの空隙を持つマスクによるフォト法により表面層レジストに所定の孔を設け、その上から無機膜を蒸着あるいはCVDにより形成し、二層のレジストを除去する事で、所定の孔径からなる任意の形状の無機粒子を作成する事が可能となる。
【0064】
これらの有機、無機粒子は、アフィニティ性を利用してのリガンド担体粒子による各種物質の分離精製、特定物質の濾過、粒子表面に物質を結合させ、他の物質との反応を粒子表面で行わせる反応担体、あるいは粒子担体を使用したバイオプローブと検体との反応後における未反応物の洗浄時の検体およびプローブ反応結合粒子の流出防止に際して使用可能である。
【0065】
これらの方法では粒子を使用する事により反応のための表面積が大きくなり反応効率が大となる。
これらの有機、無機粒子を使用する場合は粒子がフロースルーセル外に流出することも防ぐためにフィルターを使用することが好ましい。
粒子とフィルターとの組み合わせにより、従来アフィニティークロマトグラフィや磁性粒子による各種物質の分離精製に比較して、装置が簡便であり、特に後述するような当該ラボオンチップを心材、例えば柱に巻きつけてフロースルーセルを連結する方法と組み合わせる事により、複数のリガンド担体を収納するフロースルーセルを連結する事が可能であり一つのサンプルから複数の物質を同時に簡便に分離精製する事が可能となる。
【0066】
さらにまた、機能の異なるフロースルーセルを複数配置する、たとえば精製用粒子、反応用粒子、検出用粒子をそれぞれ配置し、これらを連結することで精製、反応、検出を1つのチップ上で行うことが可能となる。
フィルターと粒子の組み合わせにおける粒子の粒子径はその粒子の使用目的が精製や反応の場合は0.01ミクロン〜1mm、より好ましくは0.5ミクロン〜500ミクロン、さらに好ましくは10ミクロン〜500ミクロンの多孔質粒子である。0.01ミクロン以下の場合は対応するフィルターのメッシュが細かくフィルトレーションに時間がかかり、また他の濾過すべき物質との判別がつきにくくなる。フィルトレーションのためには粒子が大きい方が好ましいが大きいと粒子が沈降しまた表面積が小さくなる。その点から0.1ミクロン〜0.7ミクロンの粒子あるいは0.5ミクロンから50ミクロンの多孔質粒子が非沈降と大表面積の点から好ましい。また検出の場合には粒子径は検出光による散乱を防ぐために検出光の波長以下が好ましい。
【0067】
ただし、あまりに粒子径を小さくする場合は、短時間でフィルトレーションできる対応フィルターが見つかりにくく、これらの要因を勘案すると、0.01〜1ミクロン、より好ましくは0.05ミクロンから0.5ミクロンが好ましい。また粒子の代わりに相転移樹脂を使用することも可能である。
相転移樹脂は、ph、温度、光等の外部刺激によりそのモルフォロジーを変化させる樹脂があり、精製、反応、検出時には線状の樹脂のモルフォロジーをとり濾過時には外部刺激によりゲル状のモルフォロジーでフィルターから濾過されることを防ぐ事が可能である。
【0068】
これらの相転移樹脂の製造方法はたとえば、特開平8−196274号公報、特開平9−154573号公報等に記載の製造方法である。
ここで使用されるフィルタは、その使用方法により各種フィルタが使用可能である。織布、湿式法不織布、乾式法不織布、焼結法不織布、フィルムにレーザーやフォトエッチングでの穿孔、あるいは延伸力で引き伸ばすことにより貫通孔を空けるもの、あるいは糸の側面に孔の空いたホロファイバーと呼ばれる中空糸(以下、「中空糸」と称する)等の各種の市販品が使用可能である。これらのフィルタの材質は硝子、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、PVDF(poly vinyliden fluoride)、PTFE(poly tetra fluoro ethylene)、ポリイミド、PPS(poly phenylene sulfide)、液晶ポリマー、ポリサルホン、ナイロン、ニトロセルロース、アセチルセルロース、ステンレススチール、ニッケル、金等が使用可能である。
【0069】
これらのフィルタのフロースルーセル内へ組み込みかたは複数の方式が可能である。
第一の態様は、図4に示したように、セル40の開放部の少なくとも片側溶液排出側に、フィルタ41をZ軸方向に取り付けるものである。
第二の態様は、図5に示したように、セル上室50とセル下室53との間にフィルタ51によりセルを分割する様に2つの室を設けるものである。
【0070】
第三の態様は、図6に示したように、セルの上室60またはセル下室63のいずれか片側をフィルタ61で充填する様に設けるものである。
図5、図6に示したように、セルの上下室をフィルタで区分する場合は、連結する左右の二つのセルの投入側開放端面の上下室の内どちらかを閉鎖し、さらにセル開放面の溶液排出面の上下室の内溶液投入面とは逆の室を閉鎖することにより、投入した溶液をフィルタを経て投入した室とは逆の室を経由して排出する事が可能となる。
【0071】
また、セルを後述するように、径がwの心材、例えば柱に巻き付けることでセルを連続使用する場合は、連結対象のセルは、図5に示したように、その上下室の開放室と閉鎖室を交互に逆になるように、柱の径を選択する事により、連続したセルとして溶液を連続して流すことが可能となる。
第四の態様は、図7に示したように、中空糸71を折り曲げで試料流入部72に折り曲げ面を向け、試料流出部73に中空糸71の開放面を向け、さらに試料流出部73にて中空糸71をセル70内で保持し、セル70中の非中空糸部分の封止のためにシールするものである。
【0072】
第五の態様は、図8、図9に示したように、中空糸81、91の片側端面の内面82、92をシールし、シールした側をフロースルーセルの溶液投入側84、94に挿入し、中空糸の別の片側端面83、93で中空糸空間シールしない側の中空糸外形とフロースルーセルとの間を端面83、93の様にシールする方法が可能である。
【0073】
これらの態様の内では、第四の態様と、第五の態様がより好ましい。即ち、第一から第三の態様では、フィルタをセルに固定する場合はフィルタの周囲すべてをセルに溶液を漏れないように確実に固定する必要があり、フィルタの厚みと固定方法は困難性の点で逆相関になる。即ち、フィルタは目つまりとふるい性を両立させるためにはある程度の厚みを必要とするが、厚い場合はセルへの固定が困難となる。
【0074】
一方、中空糸の場合は最低限中空糸の開放面片側をフロースルーセルと接合するだけで良く加工性が容易である。さらに、貫通孔の存在する表面積が中空糸の方が大きく単位時間あたりの濾過量が大きくなるため好ましい。
これらのフィルタは同一ラボオンチップの全てのフロースルーセルに設ける必要はなく、必要なフロースルーセルのみに選択的に付けてもよい。またフィルタのメッシュの大きさは、担体粒子や濾過物質の大きさを勘案して自由に選択すれば良い。
【0075】
これらのフィルタのラボオンチップへの組み込む第一の方法としては、あらかじめ別途フィルタを作成しておき、ラボオンチップ作成時に組み込む方法が挙げられる。第二の方法としては、中空糸を用意し、フロースルーセルに挿入する方法が挙げられ、第三の方法としては、ラボオンチップの作成時にフロースルーセルの内部空間にフィルタ組成物を投入し、フロースルーセル内にフィルタを作り込む方法等が挙げられる。
【0076】
前記第一の方法では、あらかじめフィルタをセルの試料流路の直径と接着部分を加算した寸法に裁断した帯状のフィルタを使用して、これをフィルタを充填するセルと同一の寸法隔に張り渡しておき、あらかじめ作成された凹型セルフィルムをこの張り渡しフィルタに合体させ、セル内部にフィルタを充填し、さらにフィルタ内蔵フィルムを所定の巾にテープ状に切断することにより作製してもよい。
【0077】
また、前記第二の方法としては、あらかじめラボオンチップを形成する平面フィルム上に一定間隔で微少なピンを植え付け、このピン部分でピンを介して糸を折り曲げながら配置する。折り曲げ中空糸部分をセル内に内蔵する中空糸において、中空糸を内蔵しない部分は次の中空糸内蔵セルまで糸を折り曲げない事により、中空糸を内蔵するセルのみに折り曲げ中空糸を内蔵する糸配置が可能となる。この中空糸内蔵セルフィルムと別のフィルムをラミネート接着する。さらに溶液排出側の中空糸外形とセルとの間にウレタンシール剤等をスポットあるいは含浸等にてシールする。続いて、シール部分の一部を残して平面フィルムを含む不要中空糸部分を切断除去する。これにより、溶液投入セル面に中空糸が折り曲げられて内蔵しており、溶液排出面に中空糸の端面を持つセルを有するチップを作成する事が可能になる。
【0078】
第三の方法としては、あらかじめ凹面を持つフィルムを作成し、この凹面セル中にあらかじめ繊維を水に分散し、その分散溶液を凹型フィルムに投入し、水を揮発させる事で湿式不織布を作る方法、あるいは触媒化学株式会社製のアルミナゾル等の特定のモルフォロジー形成する材料を充填し溶媒を揮発させる方法、あるいはブロックポリマーと他のポリマーを混合しミクロ相分離構造を形成し、他のポリマーを乾式あるいは湿式法により除去する事により多孔質三次元構造体を形成する方法であり、具体的には特開2001−151834号公報に記載された方法により製造可能である。
【0079】
また、フィルターと粒子の組み合わせ以外に、粒子として磁性粒子を使用し、磁石と磁性粒子の組み合わせによるものも使用可能である。
この場合は、フロースルーセル内の磁性粒子をチップ外部の磁石により保持して、粒子がフロースルーセル以外に流出することを防ぐことも可能である。
このようなラボオンチップは、例えば基材となるフィルムと、フロースルーセルを作製しておいたフィルムとを張り合わせる事で製造することができる。
【0080】
ここで、基材となるフィルムは、例えば図1(a)に示した基材13であり、図1(b)に示した基材14である。この基材13、14は、例えば金属、樹脂などからなるものであり、具体的には、シリコン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタンなどの金属、架橋ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、セルロース、セルロースアセテート、硝酸セルロース、ポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ビニロン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリペンテン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、環状シクロオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、フルオロカーボン樹脂などの樹脂が挙げられる。また、フロースルーセルの材質については、前述した通りである。
【0081】
このフィルム同士を張り合わせる事によりチップを製造する方法としては、少なくとも片方に凹面、あるいは凸面を有するフィルムと、もう一枚のフィルムを張り合わせる事により、例えば図1(a)に示したようなラボオンチップを作成することが可能である。
このとき、上記凸面あるいは凹面形状をフィルム上に形成する方法としては、既知の各種方法が使用可能であり、例えば雄型あるいは雌型金型を作成し、前記基材材料のペレット、前駆体、モノマー、オリゴマー、フィルムのいずれかを金型により成形して凹凸形状を作成することができる。
【0082】
ここで、金型あるいはロールによる成形方法としては既存の各種の方法が可能であり、プレス成形、射出成形、押し出し成形、カレンダー成形、ブロー成形、ロール成形等が可能であるがこれらに限定されるものではない。あるいは、平面フィルムや板に直接に化学的エッチング、機械的溝空け、レーザー穿孔などの方法により凹面を形成することも可能である。
【0083】
これらのフィルム同士の張り合わせは、既存のフィルムラミネート方法を使用することができる。具体的な方法としては、所定の箇所に接着剤を塗布して張り合わせる方法、接着部が凸となった熱ロールで熱シールする方法、高周波接着、接続箇所に選択的に溶剤を塗布し表面を溶剤溶解し接着する方法、平面フィルム上にUV硬化性樹脂を塗布し金型で凹凸面を作成し光照射して予備硬化し、さらに別のフィルムと張り合わせた後に、さらに光照射し、本接着硬化させる等の方法が可能である。
【0084】
また、図1(b)で示したようなラボオンチップは、波板形状のフィルムを金型などで作成しこれを平面フィルムを張り合わせる方法、あらかじめ所定の長さの中空のフロースルーセル管を作成しておき、これを簀の子や簀巻きを作成するように糸で管同士を接続する方法、フィルム上にUV樹脂接着剤などの接着剤を塗布しておきその上にフロースルーセル管を所定の間隔で配置フィルムと接合するなどが可能である。
【0085】
また、これらのフィルムには、必要に応じて、あらかじめセル部分に反射層や親水性層あるいは疎水性層、プローブの結合層、スペーサー層等を形成の後、張り合わせてもよい。
また、このようなラボオンチップでは、フロースルーセル(セル)の試料流入部から溶液を投入し、必要により試料流入部を加圧する方法と、試料流出部を別の片側端面を減圧吸引する方法を組み合わせる事により溶液を所定のセルに逐次導入、移動、置換あるいは排出することができる。
【0086】
ここで、溶液の投入に際しては、投入溶液が重力で所定のセルに投下されるように、セルの二次元平面を垂直とし、投入側セル端面を上向きにして投入することが好ましい。
また、溶液の投入方法としては、マイクロピペット、インクジェットによるスポット、スポッターによるスポット、溶液の含浸等の方法が可能である。溶液のフロースルーセル含浸に際しては、あらかじめ溶液浸透性の濾紙をセル投入口に接触させ、セル内部空間と溶液との親和性を高くして浸透圧により投入することも可能である。この場合には、個別のセルに選択的に溶液投入するよりも、複数の投入セルに一斉に溶液を投入する方法として使用することが望ましい。
【0087】
また、必要に応じて、セルの別の片側端面から減圧吸引する事により溶液の導入、移動、置換あるいは排出を行う事が可能となる。減圧吸引に際しては、多孔質体を吸引セル口に接触させ、多孔質体を介して吸引するのも可能である。これらの多孔質体としては、例えばトーメイ株式会社製のエチレンビニルアセテート、メチルメタアクリレート、ポリプロピレン、ポリエーテルサルホン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリサルホン等の焼結法による多孔質体、各種セラミックス系の多孔質体等が使用可能である。
【0088】
また、既に溶液の収納されたフロースルーセルの溶液を排出置換する場合は、減圧にする代わりに、溶液排出側のセル開放面に溶液高吸収性の材料をフロースルーセルの溶液と接触させる事により溶液の排出置換が可能である。
フロースルーセル間のピッチ間隔が短い場合は、上記溶液高吸収性の材料の端面の非フロースルーセル部分を撥水性の材料、例えばJSRデソライト等でコーティングする事により、フロースルーセル中の溶液が高吸収性材料を介して他のフロースルーセル溶液と接触コンタミネーションを起こす事を最小限とする事ができる。
【0089】
これらの高溶媒吸収性の材料としては、例えば紙おむつ等に使用されるポリアクリル酸系高吸水性樹脂、カネボー株式会社製のポリビニルアルコールの焼結多孔質体、チャフローズ株式会社製のセルロース系スポンジ、市販の各種ウレタン発泡体、トーメイ株式会社製のエチレンビニルアセテート、メチルメタアクリレート、ポリプロピレン、ポリエーテルサルホン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン等の中からフロースルーセル中の溶液と親和性の高いものを選択する事により容易に溶液を排出置換可能となる。
【0090】
また、前記溶液の投入、減圧吸引対象セルは単独のフロースルーセルである必要はなく、後述するようなフロースルーセルを連結して使用する場合でも、適用可能である。この場合は連結されたセル群の第一セル端面から投入し、最後のセル端面を減圧吸引する。
また、前記ラボオンチップの使用方法の実施態様は、前述したラボオンチップの使用方法であって、周囲径aの心材に、当該心材の径方向と前記帯状シートの長手方向とが角度θになるように、前記帯状シートを巻き付けて、一のフロースルーセルの試料流出部と、当該一のフロースルーセルから距離dだけ離れた二のフロースルーセルの試料流入部とを連結して用いることを特徴としている。
【0091】
ただし、前記周囲径a、角度θおよび距離dが下記のような関係を満たす。
【0092】
【数3】
【0093】
ただし、式中wは帯状シートの短手方向の長さである。
前記ラボオンチップにおいて、各フロースルーセルは単位操作を行う場ではあるが、図10(a)、(b)に示したように、複数のフロースルーセル131、132が配設されたラボオンチップ135を心材130、例えば柱に巻き付けることにより、セルとセルとの間を所定の接続流路(セルとは別途設けられた溶液の流路)を介さないで複数のフロースルーセルを直接連結する事が可能となる。
【0094】
ここで、特定のフロースルーセル同士を連結する場合は、あらかじめ、所定の間隔でチップ上に併置された試料流路の長さがwであるフロースルーセルについて、連結したいセルの間隔を計算し、その間隔がdである場合は、周囲径aが(d2+w2)1/2である心材、例えば柱を選択し、その角度θがsinθ=w/a=w/(d2+w2)1/2となるようにチップを巻き付けることで、間隔dのフロースルーセルは相互に連結することが可能となる。
【0095】
また間隔がdである複数のフロースルーセルを巻き付け連結して所定の単位操作を行った後に、さらに間隔がd‘である別のフロースルーセルを連結する場合は、所定の単位操作をした最後のフロースルーセルと間隔がd‘であるフロースルセルを、周囲径aが(d’2+w2)1/2である柱を選択し、その角度θがsinθ=w/a=w/(d’2+w2)1/2となるように巻き付ける事で、当該フロースルーセルを別のフロースルーセルに連結する事が可能となる。
【0096】
このようにラボオンチップを心材に巻き付け、複数のフロスルーセル同士を連結することにより、第一には、セル群間に連結のための流路を介さず、直接かつ直線的に連結する事で、溶液を流した場合の溶液抵抗を最小限にする事が可能になる。また、薬液はフローダウン方式でセルの投入口を上にして投入する事により、混合が極めて均一に行われ、反応や、洗浄、分離精製などを高効率に、均一に行うことが出来る。
【0097】
第二に、これらのセル群は間に連結のための連結路を持たないために、検体の連結流路への付着が無く、その結果検体量を最小限にでき、検体連結路での検体の残留に伴うコンタミネーションを最小限にすることが可能となる。例えば、あらかじめ複数のセル内部にそれぞれ異なるDNA、抗体、タンパク質等のプローブを結合あるいは内蔵させたDNAチップ、抗体チップ、タンパク質チップとして用いる場合、各プローブを有する複数のフロースルーセルを上記方法で連結させ、さらに検体を連結させたセル群の最上部連結セルからフローダウン方式で投入する事により、投入検体は連結セル内で相補的に結合する全てのプローブと反応機会を有する。すなわち、投入検体は、第一のセルでプローブで反応しない残余の検体が次のセルに流入してプローブと反応し、さらに残余の検体がさらに次のセルに流入してプローブと反応するという順序で共通の検体として使用することが可能になるため、検体の利用効率が高く検体量が少なくて済み、かつプローブと検体との反応距離が極めて短く極めて高い反応効率で反応することが可能となる。
【0098】
また、特定の物質とのアフィニティー性を有するリガンド担体を利用しての試料の精製等に際して、1個のフロースルーセルの精製能力が不足する場合は、複数のフロースルーセルに同一のリガンド担体を用意して、これらを必要な数のみ連結する事で任意の精製度の精製を行なう事が可能となる。
第三に、これらのセルは同一ラボオンチップ上に配置されており、連結は同一の心材に巻き付けることだけで行われるために位置あわせは不要である。そのために従来では異なるチップを使用して、各チップを連結する必要があったのだが、複数のチップを接合する際の接合間違いや、セルの位置あわせに伴う各種の処理が不要であり、簡便かつ高精度の位置あわせが可能となる。
【0099】
この位置合わせ精度をさらに高めるために、写真フィルムの様にラボオンチップのフロースルーセルとフロースルーセルとの間の部分にキャリアーテープ穿孔を設け、また巻き付け心材にこれに対応する送りピッチの突起を設ける事で、位置合わせはより正確となる。
さらに、フロースルーセルの連結精度と連結セル間の密着性を高めるために、フロースルーセル間の間の部分に雌型突起と雄型へこみを設け、雄型突起を雌型へこみに結合させることでより密着性を高めることが可能となる。
【0100】
第四に、フロースルーセルは、ラボオンチップを巻き付ける心材の周囲径を任意に変更することにより、任意の間隔のフロースルーセル同士を接続することができるため、フレキシブルナな単位操作の組み合わせが可能となる。
特に、ラボオンチップを使用する場合にあっては、商業生産や、生産試験とは異なり実験の途中経過により実験計画を臨機応変に変更する必要が極めて多く、あらかじめセルの内容とセルの位置を登録しておき、実験結果に応じて、次の実験セルを選択するようにしておく。これにより、この選択に見合う巻き付け用の心材と、投入順序とをコンピューターに登録することで、使用するセルの変更、セルの連結順序の変更などを自動化する事が可能となる。
【0101】
第五には、前述のフィルターを備えた粒子内蔵フロースルーセルを用いて粒子担体上で分離精製、反応、検出の独立の単位操作を高効率に行なう事が可能であるが、本実施態様を適用することにより、これらの独立の単位操作を連続して行う事が可能となる。言うまでもなく粒子上での分離精製、反応、検出は基板に反応プローブを固定して検体と反応する場合と比較して極めて反応性が高い。従来の96〜数千孔を有するマイクロプレートやビーカー内で担体粒子を用いたコンビナトリアルケミストリー、あるいはドラッグディスカバリー用ハイスループッとスクリーニングに於いては、未反応物質の洗浄除去が困難であった。本方法では極めて洗浄性の良好なチップとする事が可能である。
【0102】
ここで使用される心材の形状は、多面体、四角、三角、丸等の各種形状の柱状の心材が使用可能であるが、巻き付けるラボオンチップとの密着性を考えると鈍角のものが好ましく、多面体、特に円が好ましい。またこれらの心材の周囲径は自在に変えられる物が好ましく、例えば内部を空気で密封された弾性体で柱を形成し内部の空気を加減圧する事で集計を変化させる事が可能である。このように、心材は中空の物であってもよいし、何かで充填された物であってもよい。
【0103】
これらの心材の材質は、ラボオンチップを巻きつけた際に、心材とラボオンチップとの密着性を上げるために撥水性の高い弾性体であることが好ましい。また、心材にラボオンチップを巻きつけた後に、連結セル隙間からの溶液の漏出防止のためにセル間の隙間を覆うように撥水性の材質からなるテープをさらに巻き付けることも可能である。
【0104】
これらの撥水性の材料としては、撥水溌油性の高いシリコーンゴム、フッ素ゴムが好ましい。
また、前記ラボオンチップの使用方法の他の実施態様は、前述したラボオンチップの使用方法であって、前記フロースルーセルに試料を充填した状態で、試料流入部または試料流出部から外部エネルギーを照射して、当該外部エネルギーの前記試料による吸収を、試料流路の側方方向から検出することを特徴としている。
【0105】
ここで使用される外部エネルギーとしては、イオンビーム、電子ビーム、β―線、γ―線、X―線、紫外線、可視光、赤外線、マイクロウェープが使用可能である。セルに加熱を行う場合は、赤外線、マイクロウェーブ照射が好ましく、赤外線源としては赤外線ランプ、赤外線レーザー、マグネトロン、ガン・タイオード等が使用可能である。全面加熱を行う場合は、マグネトロンや赤外線ランプが好ましく、所定のセルだけに加熱を行うためにはLEDや赤外線レーザーが好ましい。これらの加熱による温度は照射時間により制御可能である。加熱に赤外線を使用する場合は、フロースルーセルを形成する材料の照射部分は黒色材料あるいは金属が好ましく、マイクロウェーブを照射する場合は透明材料が好ましい。
【0106】
この加熱により、PCR(Polymerase Chain Reaction)等の各種反応、およびセル内に水等の溶液を入れ加熱する事により、水蒸気等を気体にしてその膨張エネルギーを利用して当該セルあるいは連結セル内の溶液の移動、排出等を行う事が可能となる。この場合、フロースルーセルの両側にある開放面のうち、溶液の移動方向先の開放面のみを開放し、他方の開放面を封止する事で、溶液の移動方向を任意に制御する事が可能となる。
【0107】
これらのエネルギーの照射は、セルの試料流路に行うことがセル内の加熱の均一化の観点から好ましく、必要に応じて試料流路に線照射あるいは面照射する事により、より均一加熱することが可能となる。
また、前記フロースルーセルの照射エネルギーの透過部分にエネルギーを照射し、あらかじめフロースルーセルに設けられたプローブと、フロースルーセルに投入された検体との相互作用の結果、発生する光を検出器により検出する事が可能となる。
【0108】
ここで用いることが可能なエネルギーとしては、イオンビーム、電子ビーム、β―線、γ―線、X―線、紫外線、可視光等、赤外線等が使用可能である。
これらの内では、γ―線、X―線を用いるラジオアイソトープ検出、紫外線、可視光、赤外線を用いる化学発光検出、蛍光検出、ラマン検出、表面プラズモン検出、顕微鏡による検出等が使用可能である。
【0109】
これらの検出においては、照射光である第一波長の光(L1)を、フロースルーセルの透過部分から照射すると、セル内のプローブと検体物質との相互作用の結果、当該第一波長とは異なる第二波長の光(L2)が発生する。こうした第二波長の光としては、蛍光、表面プラズモン光あるいはラマン光等がある。ここで波長の光L2とは第二波長とは異なる波長の光を意味し、1種類の波長の光でなく、第一波長の光とは異なる複数種の波長の光が存在する場合を総称している。
【0110】
この第二波長を検出するためには、検出側に第一波長をカットするフィルタ(以下ノッチフィルタと称する)を設け、当該ノッチフィルタを通過した光をCCDカメラや撮像管等にて検出する事により、第二波長L2の光を検出する事が可能となる。上記第一波長の光を照射する透過部分としては、セルの試料流路あるいはセルの両端の開放面のいずれであってもよい。
【0111】
セルの試料流路から照射する場合は、当該試料流路が照射光に対して実質的に透明である必要があり、前述の各種の透明材料により試料流路を形成する事が必要である。さらに、試料流路の露出面積を照射スポット以上に大きくして、当該試料流路を面積スキャンし、検出にはそれから出る第二波長光L2を累積することで高感度検出が可能となる。
【0112】
試料流路に照射した光により発生した第二波長の光L2を検出する方法としては、例えば図11に示したように、フロースルーセルの試料流路111の基材110に面する底面114以外の3つの面あるいは開放面試料流入面、流出面を含む5つの面に反射層を設けて形成した反射面112により、第一波長の光L1および第二波長の光L2の光を反射させ、試料流路111の底面に設けたノッチフィルタ115で光L1を遮断し、検出器117により光L2を検出する方法が挙げられる。
【0113】
この場合第一波長の光L1は、フロースルーセルの試料投入面あるいは排出面から投入され投入面、排出面に反射層を設ける場合は、反射層の一部に投入光用の孔をあけ、そこからL1の光を照射することが可能となる。
また、図12に示したように、試料流路121の上面より第一波長の光L1を照射し、試料流路121の開放面122を含む5つの面を反射層にて覆い形成された反射面122から反射された光L1、L2光を、入射面側の上面に設けられたノッチフィルタ125を通して光L1を遮断し、光L2を入射面上方に設けられた検出器127にて検出する方法が挙げられる。
【0114】
また、図13に示したように、試料流路131の開放面以外の4面を反射層にて覆って反射面132を形成し、両側の開放面133にノッチフィルタ135を設ける態様が挙げられる。試料流路131の上方より第一波長の光L1を照射すると、試料流路131内で発生した第二波長の光L2は両開放面133より出射して、ノッチフィルタ135を介して検出器137へと入射し、検出器137でこの光L2が検出される。このとき、ノッチフィルタ135では、光L1をカットする。
【0115】
また、図14に示したように、フロースルーセルの投入面、排出面から光を照射する方法も可能である。具体的には、試料流路141の開放面以外の4面を反射層で覆って反射面142を形成し、開放面の一方を光照射用の穴を設けて残りを反射層で多い部分反射面148を形成しておく。さらに、他方の開放面には後述する第一波長の光L1を遮断するノッチフィルタ145を設けて、このノッチフィルタ145の外側には検出器147を設けておく。そこで、部分反射面148側より、第一波長の光L1を照射し、試料流路141の内部で第二波長の光L2を発生させる。この光L2は、反射面142、148からは試料流路141の外には出ず、ノッチフィルタ145を通って、検出器147に入射し、検出器147で光L2が検出される。このとき、ノッチフィルタ145は、光L1をカットする。
【0116】
また、図15に示したように、試料流路151の開放面以外の側面の両方に反射層を設けて反射面152を形成しておく。また、片方の開放面に光照射用の穴を開けた穴空きノッチフィルタ158を設けておく。他の面には、それぞれノッチフィルタ155を設けておく。なお、これらノッチフィルタ155、158は、後述する第一波長の光L1を遮断する。さらに、ノッチフィルタ155、158の外側に、検出器157を設けておく。そこで、穴空きノッチフィルタ158に設けられた穴より第一波長の光L1を照射する。試料流路151の内部では、第二波長の光L2が発生する。この光L2は、ノッチフィルタ155、158を通って、それぞれの検出器157に入射し、検出器157にて、光L2が検出される。このとき、ノッチフィルタ155、158は、光L1をカットする。
【0117】
また、図15の側面の反射層の代わりにノッチフィルタと検出器を設け、フロースルーセルの6面全部にノッチフィルタと検出器を設ける事も可能である。
以上、本発明に係るラボオンチップおよびこのラボオンチップの使用方法の実施態様について、それぞれ説明してきたが、本発明がこれら実施態様に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0118】
【発明の効果】
本発明によれば、微量な物質の混合、反応、分離精製、検出等の単位操作に於いて混合、反応、分離精製、線上効率が良く、反応物質が少量、短時間反応、高感度検出を可能にし、複数のセルを任意に組み合わせる事でフレキシブルな単位操作の組合せが可能になる。
【0119】
【実施例】
【0120】
【実施例1】
(チップ巻き付け用柱の作成)
柱の周径が100.5mmおよび185.3mmで長さが100mmの円柱ポリウレタン製ロールを外注購入した。このロールに市販のフッ素系撥水剤をスプレーにて吹き付け表面を撥水性にした。
【0121】
【実施例2】
(貫通溝を有するフィルムの作成)
JSR株式会社製シクロオレフィン系透明樹脂:アートンFX4726(屈折率1.522)の厚さ0.7mmフィルムを押し出し成形により作成した。前記フィルムをプレス成形にて、厚さ0.7mm,幅10mm,長さ400mmのフィルム上に、長さ方向に直角に幅1mm,深さ0.6mmの溝がフィルムの幅方向の端面まで貫通し溝と溝の中心間の距離が5mmであり,長さ方向のフィルム端面と最初および最後列の溝の中心との距離が2.5mmである溝を80個持つのフィルムを成形した。このフィルムを、図16に示す。
【0122】
このフィルムの平坦側の長さ方向の200mmから400mmに、JSR株式会社製フッ素アクリレート系UVコート樹脂:オプスターJM5010(屈折率1.41)を塗布し、0mmから200mmの間にはオキツモ株式会社製赤外線吸収塗料ワンタッチスプレー艶消しを塗った。
このフィルムの凹面側を春日電機株式会社CG−102コロナ処理装置にて30秒間コロナ処理を行い、親水化した。
【0123】
【実施例3】
(フィルム同士の張り合わせ)
JSR株式会社製シクロオレフィン系透明樹脂:アートンFX4726(屈折率1.522)の厚さ0.1mm、巾15mm、長さ400mmの平坦フィルムを用意し、実施例2と同様に、片側の長さ方向の200mmから400mmの間にJSR株式会社製フッ素アクリレート系UVコート樹脂:オプスターJM5010(屈折率1.41)をロール塗布し、別の片側にコロナ処理を行い、表面を親水化した。
【0124】
さらに上記フィルムの片側のオプスターJM5010を塗布したと同じ側に、長さ方向に0mmから200mmの間を上記赤外線吸収塗料を塗った。
実施例1にて得た貫通溝を有するフィルムの凸面表面に金属ロールにてケミテック株式会社製接着剤ケミシール4X525を塗布し、前記平坦フィルムのコロナ処理をした面と前記接着剤塗布フィルムとを幅方向片側端面同士を合わせて、両者のフィルムをはり合わせた。
【0125】
上記はり合わせフィルムに水銀ランプを光照射しフィルムを接着硬化し、貫通孔を有する、図17に示したようなラミネートフィルムを得た。
【0126】
【実施例4】
(中空糸の挿入とシール)
株式会社キッツ製ポリプロビレン系中空糸、透過孔径0.1ミクロン、外径約500ミクロン、内径約400ミクロンを用意した。図18に示したように、中空糸の25mm点と49mm点の中間点を折り曲げて両点を接合させ、JSR株式会社製UV接着樹脂:デソライトKZ8718にて両点を接着し、以下同様に25+29(n―1)mm点と25+24(n)+5(n―1)mm点(ここでnは2〜20)、および705+29(n―41)mmおよび705+24(n−40)+5(n−41)mm点(ここでnは41〜60)点の中間点を折り曲げてそれぞれの両点を点接着した。この折り曲げ部分を持つ中空糸の端と端とを直線上に張り渡しこの張り渡し中空糸の40箇所の接着点部分を、図19に示したように、実施例3で得られた図17に示したラミネートフィルムの平面フィルムの未張り合わせ部分に、フィルムの長さ方向端面と中空糸の端面を合わせ巾方向は接着部分端面より3mmの距離になるように逐次接着し、水銀ランプにて光照射し硬化接着させた。この折り曲げた部分を微小ドライバーにて端から数えて1〜20および41〜60番目の貫通孔の中に押し込んだ。
【0127】
また、ポリエチレン製角柱に深さが8ミリmm,幅1mm,長さ401mmの溝を切り、溝にJSR株式会社製ウレタン系UV硬化性樹脂:デソライトZ8412Hを深さ3mとなるように流し入れた。
上記中空糸を挿入したラミネートフィルムの未張り合わせ部分を下にして、当該ラミネートフィルムを前記光硬化性樹脂の入ったポリエチレン製角柱の溝に、溝の底面まで挿入してUV樹脂溶液中に含浸させ、10秒間静置して光硬化性樹脂を貫通孔に設けた中空糸挿入部分の隙間の一部に浸透圧により浸透させた後に、水銀ランプをポリエチレン製角柱の溝に照射し光硬化性樹脂の入った溝とラミネートフィルムとの隙間部分を硬化させた。
【0128】
その後、ラミネートフィルムをポリエチレン製角柱の溝より取り出し、さらに水銀ランプにて光硬化させて、図20に示したようなフィルムを得た。さらに、貫通孔外の中空糸を含む未張り合わせ部分5mmを切断除去した(図21)。
本実施により、図22、図23に示したような、貫通孔の片側に中空糸が折り曲げられて挿入され、反対側の貫通孔の端面は中空糸の切断面が露出し、中空糸以外の貫通孔の開放面は光硬化性樹脂によりシールされている、当該貫通孔をフロースルーセルとするラボオンチップを得た。
【0129】
【実施例5】
(ラテツクスへのプローブ結合)
10μg/μlの3種類のオリゴヌクレオチド溶液、5’−CCCCAGCCATGTACGTTGCTATCCA−3’(ヒト、ベータアクチン遺伝子の一部)、5’−CCCCCCAGGTCTCCACGGCCGTGGT−3’(ヒト、チューブリン、アルファ2遺伝子の一部)、5’−CCCTCCCGACCAGCAGAGGCTCATC−3’(ヒト、ユビキチンB遺伝子の一部)を用意し、この3種類のオリゴヌクレオチド溶液500μlをそれぞれ別の2mlのマイクロチューブに入れ、さらに500μlのJSR(株)製カルボキシ変成ラテックスG0305(固形分濃度10重量%と5mg/ml濃度の5mg/mlの水溶性カルボジイミド水溶液(同仁化学株式会社製)を入れて、50℃にて3時間加温してオリゴヌクレオチドをラテックス表面に結合させた。続いて1mlのTE(トリス;トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−EDTA)緩衝液(pH=8.0)にて遠心洗浄を3回行った後に、TE緩衝液に再懸濁し、固形分濃度10重量%の3種類のオリゴヌクレオチドを表面に持つラテックス懸濁液を得た。この各2μlを実施例4にて作成したラボオンチップのフロースローセルのうち、第41,42,43番面の中空糸内蔵フロースルーセルにそれぞれ別々にマイクロピペットにて投入した。
【0130】
【実施例6】
(セル内面への3種類のプローブオリゴヌクレオチドの結合)
実施例5と同様に、3種類のオリゴヌクレオチドと水溶性カルボジイミドにより、前記ラボオンチップチップのフロースルーセルのうち、第61,62,63番目のセル表面に、これらオリゴヌクレオチドを固定化した。
【0131】
【実施例7】
(m―RNA捕捉粒子のセル投入)
JSR株式会社製m―RNA精製用試薬:Oligotex dt30の2μl懸濁液を、前記ラボオンチップのフロースルーセルのうち、第1〜6番目のフロースルーセルにマイクロピペットにて投入した。
【0132】
【実施例8】
(未精製検体の投入と洗浄)
AGPC法(新細胞工学実験プロトコール、東京大学医科学研究所編集、秀潤社、1991年)によって、ヒト培養細胞から全RNA(5mg/ml)を抽出した。このRNA溶液3μlをマイクロピペットにて実施例7で作成したOligotex dt30を投入した1〜6番目のフロースルーセルにそれぞれ入れ、37℃にて5分間加温して、RNA溶液中のm−RNAをOligotex dt30と反応させ、その後、TE緩衝液にて洗浄した。
【0133】
【実施例9】
(オリゴテツクス捕捉m―RNAの分離とPCR用セルへの移動)
実施例5で得られたラボオンチップの1〜6番目のフロースルーセルに滅菌蒸留水3μlを入れ、ハイベックス株式会社製近赤外線ヒーターをチップの黒色塗布面に照射して、65℃にて3分間加温して、m−RNAをOlogotex dt30から分離した。実施例1にて作成した周径が100.5mmの柱に、図3で示される角度θが 5.7度となるように斜めにチップを巻き付け、同一チップ上の1番目と21番目、2番目と22番目、3番目と23番目、4番目と24番目、5番目と25番目、6番目と26番目のセルを上下に連結した。
【0134】
さらに21〜26番目のセルの非連結側にゴムバルーンつきマイクロピペットにて減圧して、m−RNAを21〜26番目のセルに移動させた後、チップを巻き付けた柱から解いた。
【0135】
【実施例10】
(PCRセルでのm−RNA増殖とDNA作成)
宝酒造(株)、One Step RNA PCRキット(AMV)を用いて目的とする遺伝子を増幅してDNAを得た。まず、増幅反応はプライマーとキット増幅試薬の混合液2μlとを21〜26番目のセルのそれぞれに入れ、赤外線ランプを21〜26番目のセルの黒色フィルム側に照射し、温度センサーにより50℃x10分になる様に加温制御して、逆転写酵素によりcDNAを合成し、次に上記赤外線ヒーターで同様にして温度を94℃x2分、94℃x2分、94℃x2分をサイクル繰り返し加温制御して目的DNAを増殖した。
【0136】
プライマーは、5‘末端をFITC(フルオレセンイ・イソチオシアネート)にて蛍光標識したものを使用し、ヒトベータアクチン遺伝子の増幅には、5’−CACCCCGTGCTGCTGACCGAG−3’および5’−CAGGTCCAGAGCCAGGATGG−3’を使用し、ヒトチューブリンアルファ2遺伝子の増幅には、5’−CGGATCCGCAAACTGGCGGA−3’および5’−TGTTCCAGGGTCGTGTGGGT−3’を使用し、ヒトユビキチンB遺伝子の増幅には、5’−GTGAAGACCCTGACCGGCAA−3’および5’−GCATACCACCTCTCAGACGC−3’を使用した。
【0137】
【実施例11】
(PCR増殖DNA検体をラテックス内蔵中空糸内蔵セルに投入ハイブリタイ゛ゼーションと洗浄を行った)
実施例9にて増殖された21,22,23番目のセルにおけるDNAと、実施例5にて準備された中空糸内蔵粒子入り41,42,43番目のセルの部分を、実施例1にて作成した柱の周径が100.5mmロールに、図3における角度θが5.7度 となるように巻き付け、21番目と41番目,22番目と42番目、23番目と43番目のセルをそれぞれ連結させ、連結されたセルの連結に関与していない側のセルの開放面に、市販の紙おむつから取り出した高吸水性樹脂をあてがい溶液を吸収させ、DNA検体を順次中空糸内蔵セルに移行させた。
【0138】
このラボオンチップを、柱から開放してそのまま2μlの0.2規定水酸化ナトリウム水溶液を加え、室温x5分静置し、1.5μlの5M酢酸カリウム溶液を添加して室温x5分静置した後、TE緩衝液にて洗浄した。
【0139】
【実施例12】
(PCR増殖DNA検体を実施例6のセルに入れハイブリタイ゛ゼーションと洗浄を行った)
実施例9にて増殖されたDNAを入れた24,25,26番目のセルと、実施例6にて準備されたプローブオリゴヌクレオチドの付いた61,62,63番目のセルを、実施例1にて作成された周径185.3mmのロールに、図3における角度θが3.1度となるように巻き付け、24番目と61番目,25番目と62番目,26番目と63番目とを連結させ、連結された最下部に前記高吸水性樹脂をあてがい、DNA検体を順次61,62,63番目セルに移行させた。このラボオンチップを柱から開放してそのまま2μlの0.2規定水酸化ナトリウム水溶液を加え、室温x5分静置し、1.5μlの5M酢酸カリウム溶液を添加して室温x5分静置した後、TE緩衝液にて洗浄した。
【0140】
【実施例13】
(実施例11,12にて作成されたハイブリダイゼーション検体の蛍光検出)
実施例11,12にて作成されたハイブリダイゼーション検体を内蔵した41,42,43番目のセル、および61,62,63番目のセルを、セルの試料流路を試料排出面が下になるように垂直に置き、バイオラッド株式会社製モレキュラーイメージャーFxProを用い、各フロースルーセルの片側の試料排出面にミラーを置き、488nmのレーザー励起光をフロースルーセルの試料投入面から照射し、520nmの反射光を検出した。
【0141】
この結果を、実施例10からのセル、および実施例11からのフロースルーセルについて、それぞれ、表1に示す。
【0142】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係るラボオンチップの実施態様を示す図である。
【図2】図2は、前記実施態様におけるフロースルーセルの形状の例を説明する図である。
【図3】図3は、前記フロースルーセルの断面形状を説明する図である。
【図4】図4は、前記フロースルーセルにフィルタを設けたときの実施態様を説明する図である。
【図5】図5は、前記フロースルーセルにフィルタを設けたときのその他の実施態様を説明する図である。
【図6】図6は、前記フロースルーセルにフィルタを設けたときのその他の実施態様を説明する図である。
【図7】図7は、前記フロースルーセルにフィルタを設けたときのその他の実施態様を説明する図である。
【図8】図8は、前記フロースルーセルにフィルタを設けたときのその他の実施態様を説明する図である。
【図9】図9は、前記フロースルーセルにフィルタを設けたときのその他の実施態様を説明する図である。
【図10】図10は、本発明に係るラボオンチップの第一の使用方法の一実施態様を説明する図である。
【図11】図11は、本発明に係るラボオンチップの第二の使用方法の一実施態様を説明する図である。
【図12】図12は、前記第二の使用方法の他の実施態様を説明する図である。
【図13】図13は、前記第二の使用方法の他の実施態様を説明する図である。
【図14】図14は、前記第二の使用方法の他の実施態様を説明する図である。
【図15】図15は、前記第二の使用方法の他の実施態様を説明する図である。
【図16】図16は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【図17】図17は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【図18】図18は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【図19】図19は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【図20】図20は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【図21】図21は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【図22】図22は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【図23】図23は、前記ラボオンチップおよびこの使用方法の実施例を説明するための図である。
【符号の説明】
10、15 ラボオンチップ
11 フロースルーセル
13、14 基材
Claims (8)
- 試料流体が流入する試料流入部と、試料流体が流出する試料流出部と、前記試料流入部と試料流出部とを接続する試料流路とからなる複数のフロースルーセルが配設された帯状シートからなるラボオンチップであって、
前記試料流路が前記帯状シートの表面に配設され、
前記試料流入部が前記帯状シートの長手方向の一の側面に沿って配設され、前記試料流出部が前記帯状シートの長手方向の他の側面に沿って配設されるとともに、各側面では各試料流入部または試料流出部の中心軸が、前記帯状シートの長手方向へ一列になるように設けられる
帯状シートからなるラボオンチップ。 - 試料流体が流入する試料流入部と、試料流体が流出する試料流出部と、前記試料流入部と試料流出部とを接続する試料流路とからなる複数のフロースルーセルが配設された帯状シートからなるラボオンチップにおいて、
前記試料流路が前記帯状シートに埋設され、
前記試料流入部が前記帯状シートの長手方向の一の側面に配設され、前記試料流出部が前記帯状シートの長手方向の他の側面に配設されるとともに、各側面では各試料流入部または試料流出部の中心軸が前記帯状シートの長手方向へ一列になるように設けられる
帯状シートからなるラボオンチップ。 - 前記フロースルーセルの試料流路の少なくとも一部が透明である事を特徴とする請求項1または2に記載のラボオンチップ。
- 前記フロースルーセルの試料流路の少なくとも一部が光反射材料からなる事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のラボオンチップ。
- 前記フロースルーセルの試料流路の少なくとも一部の内部空間表面が、金、銀、プラチナ、ニッケル、インジウムティンオキサイド(ITO(Indium Tin Oxide))、化合物半導体、シリカ、アルミナ、アミノ基、カルボキシル基、カルボジイミド基、エポキシ基、 N―スクシイミド基、マレイミド基、トシル基、トリメトキシシリル基、ニトリロ三酢酸基、チオール基、スルフィド基、ヒドロキシル基、ベンゾスルホアミド基、ヒスチジン、アビジンからなる群から選ばれるもので構成されている事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のラボオンチップ。
- 前記フロースルーセル内に、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド数5〜100の一本鎖核酸、分子量500〜100万のタンパク質、ペプチド、脂質、アプタマー、ウィルス、酵素、分子量50〜100万の化合物、ラテックス粒子、セファロース、アガロース、アクリロアミドゲル、相転移樹脂、金属粒子、金属酸化物粒子、金属硫化物粒子、蛍光体の群から選ばれるものを収納する事を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のラボオンチップ。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のラボオンチップの使用方法であって、
前記フロースルーセルに試料を充填した状態で、透過部分から外部エネルギーを照射して、当該外部エネルギーの前記試料とあらかじめ存在する別の試料との相互作用によるエネルギー変化を、フロースルーセルを構成する6面の少なくとも1面から検出することを特徴とするラボオンチップの使用方法。
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