以下、図面を参照しながら、本発明の例を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
1. 参考例
まず、磁気ランダムアクセスメモリの参考例について説明する。
(1) セルアレイ構造
図1は、磁気ランダムアクセスメモリのセルアレイ構造の概要を示している。図2及び図3は、MTJ素子の構造例を示している。
磁気ランダムアクセスメモリは、MTJ素子により“1”,“0”−データを記憶する。MTJ素子は、例えば、図2に示すように、2つの強磁性層により絶縁層(トンネルバリア)を挟み込んだ構造を有する。MTJ素子に記憶されるデータは、2つの強磁性層の残留磁化(remnant magnetization)の向きが平行状態(parallel state)か、又は、反平行状態(anti-parallel state)かによって判断される。
ここで、図3に示すように、平行状態とは、2つの強磁性層の残留磁化の向き(矢印)が同じであることを意味し、反平行状態とは、2つの強磁性層の残留磁化の向き(矢印)が逆であることを意味する。
なお、通常、2つの強磁性層の一方側には、反強磁性層が配置される。反強磁性層は、一方側の強磁性層の磁化の向きを固定し、他方側の強磁性層の磁化の向きのみを変えることにより、データの書き込みを容易に行うための部材である。
磁化の向きが固定された強磁性層は、ピン層又は固定層と呼ばれる。また、書き込みデータに応じて、磁化の向きを自由に変えることができる強磁性層は、フリー層又は記憶層と呼ばれる。
2つの強磁性層の残留磁化の向きが平行状態になったとき、MTJ素子の抵抗値は、最も低くなる。この状態を、例えば、“0”状態とする。また、2つの強磁性層の残留磁化の向きが反平行状態になったとき、MTJ素子の抵抗値は、最も高くなる。この状態を、例えば、“1”状態とする。
次に、MTJ素子に対する書き込み動作原理について簡単に説明する。
MTJ素子は、互いに交差する2本の書き込み線の交点に配置される。そして、MTJ素子に対するデータ書き込みは、2本の書き込み線に電流を流し、両配線に流れる電流により作られる合成磁界を用いて、MTJ素子の残留磁化の向きを平行状態又は反平行状態にすることにより達成される。
例えば、MTJ素子の磁化容易軸がx方向である場合、x方向に延びる書き込み線に一方向に向かう電流を流し、y方向に延びる書き込み線に、書き込みデータに応じて、一方向又は他方向に向かう電流を流す。
(2) 磁気ランダムアクセスメモリの課題
磁気ランダムアクセスメモリを実用化するために解決しなければならない課題に、書き込み電流の低減と、書き込み時におけるビットデータの熱擾乱耐性(ディスターブ耐性)の向上とがある。
例えば、セル幅(最小加工寸法(minimum feature size)Fに相当)が0.4μmのメモリセル(MTJ素子)に対して書き込みを実行する場合、書き込みに必要な書き込み電流の値は、8〜10mAとなる。この値は、実用化に当たっては大き過ぎる値であり、さらなる低消費電流化への試みが必要とされる。
また、書き込み時には、書き込み電流が流れる書き込み線を共有する複数のメモリセル(MTJ素子)のうち、選択セルを除いた残りの全ての非選択セルにも弱い磁場が作用する。これら残りの全ての非選択セルは、半選択セルと呼ばれ、これら半選択セルに対する誤書き込み(ディスターブ)をなくすことが必要とされる。
半選択セルに対する誤書き込みの発生は、熱擾乱と関連する。
MTJ素子のビットデータの保持特性を調べたところ、ハードディスク装置の磁気記録媒体で考えられている熱擾乱耐性の基準値 Ku×V/kB×T を80以上に設定しているにもかかわらず、ビットデータの反転が生じた。
ここで、Kuは、磁気異方性エネルギー密度、Vは、MTJ素子のフリー層の体積、kBは、ボルツマン定数、Tは、絶対温度である。また、磁気ランダムアクセスメモリの場合、Kuは、主に、MTJ素子の形状による磁気異方性(形状磁気異方性)により決定されるが、正確には、MTJ素子の形状磁気異方性エネルギーと誘導磁気異方性エネルギーとの和になる。
ビットデータの反転、即ち、誤書き込みを防止するには、ビットデータの熱擾乱耐性を向上させればよい。熱擾乱耐性の向上は、Ku×Vを大きくすることにより実現できる。しかし、この場合、書き込み電流の値が大きくなる。
このように、磁気ランダムアクセスメモリでは、書き込み電流の低減及び書き込み時におけるビットデータの熱擾乱耐性の向上が要求されているが、両者の間には、一方を良くすると他方が悪くなる、というトレードオフの関係が成立している。
そこで、このトレードオフの関係を改善する試みがなされている。
例えば、256メガビットのメモリ容量を持つ磁気ランダムアクセスメモリを実現する場合について考える。この場合、セル面積を1μm2 以下の値にし、かつ、これに合わせて、周辺回路のサイズも小さくする必要がある。
セル面積が1μm2 の場合、メモリセルの設計ルール(最小加工寸法F)は、約0.13μmとなる。チップ上の有効面積のうち、メモリセルアレイが占める面積の割合(セル占有率)を、0.6程度にするには、書き込み電流の値は、1mA以下に設定することが必須となる。
しかし、既に述べたように、書き込み電流の値は、セル幅(最小加工寸法Fに相当)が0.4μmの場合に、8〜10mAである。従って、単に、設計ルールを約0.13μmにし、MTJ素子のセル幅もこれに合わせて小さくすると、さらに、書き込み電流の値が大きくなり、実用化が難しくなる。
そこで、まず、第一に、MTJ素子を、長方形、楕円形、十字形などの形状とし、MTJ素子に形状磁気異方性を持たせる。MTJ素子の形状磁気異方性エネルギー及び誘導磁気異方性エネルギーの和と、MTJ素子のフリー層の体積との積が、Ku×Vとなる。
ここで、MTJ素子のフリー層の形状磁気異方性と誘導磁気異方性は、同じ方向に生じるようにし、異方性の分散が発生しないようにする。
但し、例えば、フリー層に使用されるNiFeは、誘導磁気異方性の大きさ(数Oe)が形状磁気異方性の大きさ(数十Oe)に比べて1桁ほど小さい。このため、ビットデータを反転させるために必要な磁界の大きさ、即ち、反転磁界は、主に、形状磁気異方性により決まる。
反転磁界Hswは、(1)式により与えられる。
Hsw = 4π×Ms×t/F(Oe) …(1)
ここで、Msは、フリー層の飽和磁化、tは、フリー層の厚さ、Fは、最小加工寸法(フリー層の幅)である。
また、形状磁気異方性エネルギーと誘導磁気異方性エネルギーとの和Kuは、(2)式により与えられる。
Ku = Hsw×Ms/2 …(2)
また、第二に、書き込み線(例えば、Cu)に、NiFeなどのヨーク材(軟磁性材料)を付加したヨーク配線構造を採用する。ヨーク材は、書き込み線を流れる書き込み電流により発生した磁場を収束し、これを、効率よく、MTJ素子に作用させるための部材である。
以上により、書き込み(磁化反転)に必要とされる書き込み電流の値は、従来の1/2(約5mA)でき、結果として、書き込み効率を2倍に向上できる。しかし、それでも、この書き込み電流の値は、256メガビットのメモリ容量を持つ磁気ランダムアクセスメモリを実現するために必要な目標値1mAには、ほど遠い値である。
(3) ヨーク配線構造
ヨーク配線構造について説明する。
図4は、ヨーク配線構造の例を示している。
MTJ素子の直上に書き込み線が配置される場合、ヨーク材は、この書き込み線の上面及び側面を覆うように形成される。書き込み線に流れる書き込み電流により発生する磁界は、ヨーク材により収束され、MTJ素子に効率よく作用する。
図5は、ヨーク配線構造を採用した場合の書き込み特性を示している。
ここで、MTJ素子のサイズは、フリー層の幅で規定され、フリー層の幅は、最小加工寸法Fに等しいものとする。
ラインAは、MTJ素子のフリー層に厚さ2nmのCoFeNiを使用した場合のMTJ素子のサイズFと反転磁界(スイッチング磁界)Hswとの関係を示している。ラインAからは、MTJ素子の微細化(1/Fの増大)に伴って、反転磁界Hswも増大することが分かる。
ラインB,Cは、MTJ素子の微細化(1/Fの増大)に伴って、MTJ素子に作用する発生磁界(書き込み電流により発生する磁界)が減少する様子を示している。
ヨークなし書き込み線(ラインB)の場合には、1/Fが約7.5までは、発生磁界が反転磁界よりも大きいため書き込み可能であるが、1/Fが約7.5を越えると、書き込みが不可能になる。
これに対し、ヨーク付き書き込み線(ラインC)の場合には、1/Fが約10まで、発生磁界が反転磁界よりも大きい状態を確保できる。つまり、ヨーク配線構造を採用することにより、メモリセル(MTJ素子)の微細化及び書き込み電流の低減を実現できる。
しかし、既に述べたように、ヨーク配線構造を採用したとしても、MTJ素子の微細化(フリー層の幅約0.1μm)と書き込み電流の低減(目標値約1mA)とを同時に実現することは、現状では、不可能である。
2. 概要
本発明の例は、MTJ素子の微細化と書き込み電流の低減とを同時に向上させるための新規な書き込み技術に関する。
この書き込み技術は、選択されたMTJ素子に対して加熱しながら書き込みを行う点に特徴を有する。MTJ素子の反転磁界(スイッチング磁界)は、温度に依存し、温度の上昇と共に低い値となるため、上述のように、加熱しながら書き込みを行うことにより、小さな発生磁界で磁化の反転が行えるようになり、結果として、書き込み電流の大幅な削減を達成できる。ここでは、このような書き込み方式を、熱アシスト書き込み方式と称することにする。
尚、非選択のMTJ素子に対しては、加熱しないことにより、誤書き込み(ディスターブ)もなくすことができ、選択性を向上できる。
熱アシスト書き込み方式の適用範囲は、MTJ素子の構造や、セルアレイ構造などに限定されず、様々なタイプの磁気ランダムアクセスメモリに適用可能である。但し、この方式は、特に、2つの強磁性層により絶縁層(トンネルバリア)を挟み込んだ構造を有し、かつ、2つの強磁性層の残留磁化の向きが積層面に垂直な方向となる垂直磁化タイプMTJ素子に適用すると、最も大きな効果を得ることができる。
なぜなら、通常、MTJ素子は、強磁性層、絶縁層及び強磁性層が半導体基板上に積み重ねられた積層構造を有するが、垂直磁化タイプMTJ素子では、2つの強磁性層の残留磁化の向きが積層面に垂直な方向となるため、例えば、ヨーク材をMTJ素子の上下に容易に配置でき、さらなる書き込み効率の向上(書き込み電流の削減)に貢献できるからである。
尚、熱アシスト書き込み方式では、垂直磁化タイプ及び水平磁化タイプにかかわらず、書き込み時に、MTJ素子を何らかの方法で加熱しなければならない。ここで、データをセンスアンプに読み出すために使用される読み出し線を熱アシストのための熱アシスト線として機能させれば、メモリセルアレイ内の配線数が増加することがない。
但し、熱アシストを行うに当たって、読み出し線とは別の配線、例えば、熱アシスト専用の配線や書き込み線などを利用するようにしてもよい。また、熱アシストは、配線を用いる方法以外の方法で行うようにしてもよい。
3. 実施の形態
以下、本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリに関し、最良と思われる複数の実施の形態について説明する。
(1) 第1実施の形態
図6は、第1実施の形態に関わる磁気ランダムアクセスメモリを示している。
MTJ素子は、2つの強磁性層11,12と、これらの間に挟み込まれた絶縁層(トンネルバリア)13とから構成される。絶縁層としては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)が用いられる。
例えば、MTJ素子は、半導体基板上に形成され、半導体基板の表面がX−Y面に平行であるとすると、MTJ素子の構造としては、トップピンタイプとボトムピンタイプの2つが考えられる。
トップピンタイプの場合には、強磁性層11は、フリー層(記録層)として用いられ、強磁性層12は、ピン層(固定層)として用いられる。ボトムピンタイプの場合には、強磁性層11は、ピン層(固定層)として用いられ、強磁性層12は、フリー層(記録層)として用いられる。
MTJ素子は、垂直磁化タイプであり、強磁性層11,12の残留磁化は、積層面(半導体基板の表面)に垂直な方向、即ち、z方向を向く。例えば、強磁性層11,12の残留磁化の向きが平行状態のとき(共に、上を向いているとき)、MTJ素子の抵抗値は、最も低くなる。この状態を、例えば、“0”状態とする。また、強磁性層11,12の残留磁化の向きが反平行状態のとき(一方が上、他方が下を向いているとき)、MTJ素子の抵抗値は、最も高くなる。この状態を、例えば、“1”状態とする。
MTJ素子の上下には、ヨーク材(軟磁性材料)20a,20bが配置される。ヨーク材20a,20bは、MTJ素子を上下方向から挟み付け、MTJ素子の下部のヨーク材20aは、接地点に接続され、上部のヨーク材20bは、読み出し線41及びスイッチSW3を経由して、センスアンプS/Aに接続される。
読み出し線41には、スイッチSW1を経由して、電流源Is1が接続される。この電流源Is1は、読み出し時に、MTJ素子に対して読み出し電流を供給する。また、読み出し線41には、スイッチSW2を経由して、電流源Is2が接続される。この電流源Is2は、書き込み時に、MTJ素子に対して熱アシスト電流を供給する。
書き込み線42は、MTJ素子の近傍に配置され、x方向に延びている。書き込み線42が延びる方向は、x方向に限られず、X−Y面内であれば、いずれの方向に延びていても構わない。読み出し線41及び書き込み線42は、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)などの金属から構成される。
また、MTJ素子とヨーク材20a,20bの間には、Taなどの金属、又は、MgOなどの絶縁体が配置されていてもよい。
以下、簡単に、書き込み/読み出しの方法について説明する。
MTJ素子は、トップピンタイプ+垂直磁化タイプとし、強磁性層11をフリー層、強磁性層12をピン層と仮定して、以下に説明する。
書き込みは、書き込み線42に、書き込みデータに応じて、一方向A又は他方向Bに向かう書き込み電流を流すことにより行う。
例えば、書き込み線42に一方向Aに向かう書き込み電流を流すと、この書き込み電流により発生した磁場は、ヨーク材20a,20bにより収束され、MTJ素子の強磁性層(フリー層)11に作用する。その結果、強磁性層11では、磁化反転が生じ、書き込み電流を停止させると、強磁性層11の残留磁化の向きは、下方向aを向き、MTJ素子としては、反平行状態となる。
また、書き込み線42に他方向Bに向かう書き込み電流を流すと、この書き込み電流により発生した磁場は、ヨーク材20a,20bにより収束され、MTJ素子の強磁性層11に作用する。その結果、強磁性層11では、磁化反転が生じ、書き込み電流を停止させると、強磁性層11の残留磁化の向きは、上方向bを向き、MTJ素子としては、平行状態となる。
ここで、本例では、書き込み動作中、即ち、書き込み電流を書き込み線42に流している間、熱アシスト電流をMTJ素子に与え、MTJ素子の温度を上昇させることにより、書き込み(磁化反転)を行い易くしている。
例えば、書き込み時、スイッチSW1,SW3をオフにし、スイッチSW2をオンにすれば、電流源Is2からMTJ素子に熱アシスト電流を与えることができる。熱アシスト電流がMTJ素子に流れることにより、MTJ素子は、自ら発熱するため、温度が上昇する。また、MTJ素子にトンネルバリア以外の高抵抗層を設け、高抵抗層の発熱を熱源として、熱伝導により、フリー層を加熱しても良い。
尚、熱アシスト電流は、書き込み動作前、即ち、書き込み電流を書き込み線42に流す前に、予め、MTJ素子に補助的に与えるようにしてもよい。
読み出しは、MTJ素子に読み出し電流を流すことにより行う。
例えば、読み出し時、スイッチSW1,SW3をオンにし、スイッチSW2をオフにすれば、電流源Is1からMTJ素子に読み出し電流を与えることができる。
MTJ素子に読み出し電流が流れると、MTJ素子の両端には、電圧Vが発生する。この電圧Vは、MTJ素子の状態、即ち、平行状態か又は反平行状態かによって変わる。従って、センスアンプS/Aを用いて、電圧V(平行状態のとき、Vc、反平行状態のとき、Vc+ΔVc)をレファレンス電圧VREFと比較することにより、MTJ素子に記憶されたデータの値を判断できる。
第1実施の形態によれば、データ書き込み時に、選択されたMTJ素子に対して熱アシストすることにより、選択性の向上と書き込みディスターブの防止を図ることができる。
(2) 第2実施の形態
図7は、第2実施の形態に関わる磁気ランダムアクセスメモリを示している。
この磁気ランダムアクセスメモリは、上述の第1実施の形態のメモリと比べると、書き込み線42及びヨーク材(軟磁性材料)20a,20bの構造に特徴を有し、その他については、上述の第1実施の形態のメモリと同じである。
MTJ素子は、垂直磁化タイプである。MTJ素子の上下には、ヨーク材20a,20bが配置される。ヨーク材20a,20bは、MTJ素子を上下方向から挟み付け、MTJ素子の下部のヨーク材20aは、接地点に接続され、上部のヨーク材20bは、読み出し線41及びスイッチSW3を経由して、センスアンプS/Aに接続される。
書き込み線42は、MTJ素子ごとに設けられる。書き込み線42は、MTJ素子の近傍に部分的に配置され、x方向に延びている。書き込み線42の一端は、書き込み選択スイッチとしてのNチャネルMOSトランジスタ31を経由して、接地点に接続され、他端は、例えば、同一行に属するメモリセルに共通の書き込み線43に接続される。
MOSトランジスタ31は、MTJ素子ごとに設けられる。従って、MTJ素子によりアレイを構成した場合において、MOSトランジスタ31のオン/オフを制御することにより、MTJ素子に対して選択的に書き込みを行うことができる。
ヨーク材20a,20bは、書き込み線42をリング状に取り囲むように配置される。本例では、書き込み線42は、x方向に延び、書き込み線42に流れる書き込み電流により発生する磁場は、Y−Z面に平行に円を描くため、ヨーク材20a,20bについても、その磁場をMTJ素子に効率よく収束させるため、Y−Z面に平行な面内でリング状に形成される。
ヨーク材20a,20bは、書き込み線42をリング状に取り囲むが、ヨーク材20a,20bと書き込み線42は、絶縁層21により互いに電気的に絶縁される。また、ヨーク材20a,20b同士についても、絶縁層21により互いに電気的に絶縁される。
尚、MTJ素子とヨーク材20a,20bの間には、Taなどの金属、又は、MgOなどの絶縁体が配置されていてもよい。
書き込み/読み出しの方法については、上述の第1実施の形態のメモリと同じであるため、ここでは、その説明については省略する。
但し、第2実施の形態では、書き込み線42にMOSトランジスタ31が接続されているため、例えば、書き込み時、選択信号CNT1により、MOSトランジスタ31のオン/オフを制御すれば、選択されたMTJ素子のみに対して熱アシストすることができ、選択性の向上と書き込みディスターブの防止を図ることができる。
(3) 第3実施の形態
図8は、第3実施の形態に関わる磁気ランダムアクセスメモリを示している。
この磁気ランダムアクセスメモリは、上述の第1実施の形態のメモリと比べると、書き込み線の数に特徴を有し、その他については、上述の第1実施の形態のメモリと同じである。即ち、第1実施の形態では、1つのMTJ素子に対して書き込み線は1本であったが、第3実施の形態では、1つのMTJ素子に対しては、互いに直交する2本の書き込み線を対応させる。
MTJ素子は、垂直磁化タイプである。MTJ素子の上下には、ヨーク材20a,20bが配置される。ヨーク材20a,20bは、MTJ素子を上下方向から挟み付け、MTJ素子の下部のヨーク材20aは、接地点に接続され、上部のヨーク材20bは、読み出し線41及びスイッチSW3を経由して、センスアンプS/Aに接続される。
書き込み線42Aは、x方向に延び、書き込み線42Bは、y方向に延びる。即ち、2本の書き込み線42A,42Bは、互いに直交する。MTJ素子は、書き込み線42A,42Bの交差部の近傍に配置される。
尚、MTJ素子とヨーク材20a,20bの間には、Taなどの金属、又は、MgOなどの絶縁体が配置されていてもよい。
以下、簡単に、書き込み/読み出しの方法について説明する。
MTJ素子は、トップピンタイプ+垂直磁化タイプとし、強磁性層11をフリー層、強磁性層12をピン層と仮定して、以下に説明する。
書き込みは、書き込み線42A,42Bに、書き込みデータに応じて、一方向A又は他方向Bに向かう書き込み電流を流すことにより行う。
例えば、書き込み線42A,42Bに一方向Aに向かう書き込み電流を流すと、この書き込み電流により発生した合成磁場は、ヨーク材20a,20bにより収束され、MTJ素子の強磁性層(フリー層)11に作用する。その結果、強磁性層11では、磁化反転が生じ、書き込み電流を停止させると、強磁性層11の残留磁化の向きは、下方向aを向き、MTJ素子としては、反平行状態となる。
また、書き込み線42A,42Bに他方向Bに向かう書き込み電流を流すと、この書き込み電流により発生した合成磁場は、ヨーク材20a,20bにより収束され、MTJ素子の強磁性層11に作用する。その結果、強磁性層11では、磁化反転が生じ、書き込み電流を停止させると、強磁性層11の残留磁化の向きは、上方向bを向き、MTJ素子としては、平行状態となる。
ここで、本例では、書き込み動作中、即ち、書き込み電流を書き込み線42A,42Bに流している間、熱アシスト電流をMTJ素子に与え、MTJ素子の温度を上昇させることにより、書き込み(磁化反転)を行い易くしている。
例えば、書き込み時、スイッチSW1,SW3をオフにし、スイッチSW2をオンにすれば、電流源Is2からMTJ素子に熱アシスト電流を与えることができる。熱アシスト電流がMTJ素子に流れることにより、MTJ素子は、自ら発熱するため、温度が上昇する。
尚、熱アシスト電流は、書き込み動作前、即ち、書き込み電流を書き込み線42A,42Bに流す前に、予め、MTJ素子に補助的に与えるようにしてもよい。
読み出しは、MTJ素子に読み出し電流を流すことにより行う。
例えば、読み出し時、スイッチSW1,SW3をオンにし、スイッチSW2をオフにすれば、電流源Is1からMTJ素子に読み出し電流を与えることができる。
MTJ素子に読み出し電流が流れると、MTJ素子の両端には、電圧Vが発生する。この電圧Vは、MTJ素子の状態、即ち、平行状態か又は反平行状態かによって変わる。従って、センスアンプS/Aを用いて、電圧V(平行状態のとき、Vc、反平行状態のとき、Vc+ΔVc)をレファレンス電圧VREFと比較することにより、MTJ素子に記憶されたデータの値を判断できる。
第3実施の形態においても、データ書き込み時に、選択されたMTJ素子に対して熱アシストすることにより、選択性の向上と書き込みディスターブの防止を図ることができる。
(4) 第4実施の形態
図9は、第4実施の形態に関わる磁気ランダムアクセスメモリを示している。
この磁気ランダムアクセスメモリは、上述の第2実施の形態のメモリと比べると、複数のMTJ素子に対して書き込み線42を共有させている点に特徴を有し、その他については、上述の第2実施の形態のメモリと同じである。
MTJ素子は、垂直磁化タイプである。MTJ素子の上下には、ヨーク材20a,20bが配置される。
ヨーク材20a,20bは、MTJ素子を上下方向から挟み付け、MTJ素子の下部のヨーク材20aは、選択スイッチ(NチャネルMOSトランジスタ)32を経由して接地点に接続され、上部のヨーク材20bは、読み出し線41A,41B、カラム選択スイッチCSW及びスイッチSW3を経由して、センスアンプS/Aに接続される。
尚、選択スイッチ32は、MTJ素子ごとに設けられる。
従って、書き込み時には、選択されたMTJ素子のみに対して熱アシスト電流を流すことができる。
選択スイッチ32は、熱アシストのためのみに使用する専用のトランジスタであってもよいし、また、読み出し時にMTJ素子を選択するための読み出し選択トランジスタとして使用してもよい。
前者の場合には、選択スイッチ32とは別に、読み出し時にMTJ素子を選択するための読み出し選択トランジスタ(破線で示す)RSWがMTJ素子ごとに必要になる。後者の場合には、選択スイッチ32を用いて、読み出し時には、選択されたMTJ素子のみに対して読み出し電流を流し、書き込み時には、選択されたMTJ素子のみに対して熱アシスト電流を流すことができる。
書き込み線42は、x方向に配置される複数(本例では、2つ)のMTJ素子の近傍に配置され、かつ、x方向に延びている。
尚、書き込み線42に関しては、第2実施の形態と同様に、その一端に、スイッチとしてのNチャネルMOSトランジスタ(図7の43)を接続し、他端に、同一行に属するメモリセルに共通の書き込み線(図7の31)を接続してもよい。
ヨーク材20a,20bは、書き込み線42をリング状に取り囲むように配置される。本例では、書き込み線42は、x方向に延び、書き込み線42に流れる書き込み電流により発生する磁場は、Y−Z面に平行に円を描くため、ヨーク材20a,20bについても、その磁場をMTJ素子に効率よく収束させるため、Y−Z面に平行な面内でリング状に形成される。
ヨーク材20a,20bは、書き込み線42をリング状に取り囲むが、ヨーク材20a,20bと書き込み線42は、絶縁層21により互いに電気的に絶縁される。また、ヨーク材20a,20b同士についても、絶縁層21により互いに電気的に絶縁される。
尚、MTJ素子とヨーク材20a,20bの間には、Taなどの金属、又は、MgOなどの絶縁体が配置されていてもよい。
以下、簡単に、書き込み/読み出しの方法について説明する。
MTJ素子は、トップピンタイプ+垂直磁化タイプとし、強磁性層11をフリー層、強磁性層12をピン層と仮定して、以下に説明する。
書き込みは、書き込み線42に、書き込みデータに応じて、一方向A又は他方向Bに向かう書き込み電流を流すことにより行う。
第1実施の形態と同様に、書き込み線42に一方向Aに向かう書き込み電流を流すと、強磁性層11の残留磁化の向きは、下方向aを向き、書き込み線42に他方向Bに向かう書き込み電流を流すと、強磁性層11の残留磁化の向きは、上方向bを向く。
ここで、本例では、書き込み動作中、即ち、書き込み電流を書き込み線42に流している間、熱アシスト電流をMTJ素子に与え、MTJ素子の温度を上昇させることにより、書き込み(磁化反転)を行い易くしている。
さらに、この時、選択されたMTJ素子に対応する選択スイッチ32のみをオンにすることで、熱アシスト電流は、選択されたMTJ素子のみに流すことができる。つまり、書き込み対象となる選択されたMTJ素子については、その反転磁界が小さくなり、書き込み易い状態となるが、その他の非選択のMTJ素子については、その反転磁界に変化はなく、書き込み難い状態のままであるため、書き込み線42を複数のMTJ素子で共有させたとしても、選択的に書き込みを行うことができる。
具体的には、書き込み時、スイッチSW1,SW3をオフにし、スイッチSW2をオンにし、さらに、選択されたMTJ素子に対応する選択スイッチ32とその選択されたMTJ素子が属するカラムのカラム選択スイッチCSWをオンにすれば、電流源Is2から書き込み対象となる選択されたMTJ素子に対して熱アシスト電流を与えることができる。
尚、熱アシスト電流は、書き込み動作前、即ち、書き込み電流を書き込み線42に流す前に、予め、MTJ素子に補助的に与えるようにしてもよい。
読み出しは、MTJ素子に読み出し電流を流すことにより行う。
例えば、読み出し時、スイッチSW1,SW3をオンにし、スイッチSW2をオフにし、さらに、選択されたMTJ素子に対応する選択スイッチ32とその選択されたMTJ素子が属するカラムのカラム選択スイッチCSWをオンにすれば、電流源Is1から読み出し対象となる選択されたMTJ素子に対して読み出し電流を与えることができる。
MTJ素子に読み出し電流が流れると、MTJ素子の両端には、電圧Vが発生する。この電圧Vは、MTJ素子の状態、即ち、平行状態か又は反平行状態かによって変わる。従って、センスアンプS/Aを用いて、電圧V(平行状態のとき、Vc、反平行状態のとき、Vc+ΔVc)をレファレンス電圧VREFと比較することにより、MTJ素子に記憶されたデータの値を判断できる。
第4実施の形態においても、データ書き込み時に、選択されたMTJ素子に対して熱アシストすることにより、選択性の向上と書き込みディスターブの防止を図ることができる。
(5) その他
上述の第1乃至第4実施の形態に関しては、各実施の形態の構成要素を適宜組み合せて新たなデバイス構造とすることができる。
4. 実験データ
(1) 書き込み電流の低減について
上述の第1乃至第4実施の形態に関わる磁気ランダムアクセスメモリを用いれば、MTJ素子のフリー層の幅(設計ルールF)を約0.1μmに設定した場合に、書き込み電流の値を、その目標値である約1mAに設定することにより、熱擾乱による誤書き込みなく、書き込みを行えることが確認された。
以下、その経緯について説明する。
垂直磁化タイプMTJ素子では、残留磁化の向きを、強磁性層の厚さ方向に向けなければならない。そのためには、静磁エネルギー約2π・Ms2よりも大きな垂直磁気異方性エネルギーが必要となる。従って、ヨーク材及び熱アシスト書き込みのいずれも採用しない場合には、反転磁界は、数千Oeと非常に大きな値となる。
そこで、実験では、まず、MTJ素子下部(フリー層側)及び上部(ピン層側)にそれぞれヨーク材を配置し、ヨーク材によりMTJ素子をその上下方向から挟み込むデバイス構造を採用した。
これにより、MTJ素子の静磁エネルギーを大幅に低減でき、垂直磁気異方性エネルギーkuの値も下げても、残留磁化状態を垂直方向に向けることができた。つまり、垂直磁気異方性エネルギーを下げたことにより、反転磁界の小さい垂直磁化タイプMTJ素子が実現でき、従来の水平磁化タイプMTJ素子の反転磁界である約30Oeの3倍程度にまで下げることができた。
上下方向からヨーク材により挟み込まれた構造を持つ垂直磁化タイプMTJ素子では、ヨーク構造にもよるが、従来のMTJ素子と比べて、書き込み電流の値を同じとした場合には、発生できる磁界、若しくは、磁界の発生効率が、20倍以上になる。言い換えれば、従来と同じ大きさの磁界を発生させるために必要な書き込み電流の値を、従来の1/20以下に低減する事ができる。従って、垂直磁化タイプMTJ素子にヨーク構造を適用すれば、書き込み電流の値を、従来の10mAに対して、1〜2mAに低減できる。
しかし、それでも、書き込み電流の値を約1mAにするには、その反転磁界では大き過ぎるため、熱アシスト書き込み方式を採用した。
書き込み対象となる選択されたMTJ素子を加熱し、その温度を上げると、反転磁界を小さくすることができる。
温度と反転磁界との関係は、MTJ素子の構造やそれを構成する材料などによって変化するが、少なくとも温度の上昇に伴い、反転磁界が小さくなることは明らかな事実である(これについては、後に詳述する)。
そこで、書き込み時に、MTJ素子を加熱(熱アシスト)できるように、そのための手段をセルアレイ及び周辺回路に付加した。
実験では、MTJ素子を加熱するための熱アシスト電流を発生する電流源を新たに設け、書き込み時に、この熱アシスト電流を、読み出し線を経由して、MTJ素子に供給できるように構成した。
その結果、垂直磁化タイプMTJ素子の反転磁界を、熱アシストを行わない場合の半分又はそれ未満にすることができた。これは、書き込み電流の値に換算すると、従来の1/10以下、即ち、1mA以下に相当する。つまり、書き込み電流としては、目標値である約1mAで書き込みが可能になる。
(2) MTJ素子の微細化について
垂直磁化タイプMTJ素子によれば、反転磁界がその形状に左右されないため、原理的には、無限に微細化が可能である。つまり、MTJ素子を最新の加工技術、即ち、最小加工寸法で加工することにより、MTJ素子の微細化によるメモリ容量の増大に大いに貢献できる。
しかも、書き込みに関しては、ヨーク材を用いたデバイス構造と熱アシスト書き込み方式とにより、小さな書き込み電流で、反転磁界を越える発生磁界を生成できるため、磁気ランダムアクセスメモリの実用化が期待できる。
以下、具体的に説明する。
MTJ素子の磁気異方性は、主として、形状磁気異方性と誘導磁気異方性とからなる。MTJ素子の強磁性層の反転磁界Hswは、上述の参考例の「磁気ランダムアクセスメモリの課題」の項目で示した式(1)のように記述される。
強磁性層の残留磁化の向きを厚さ方向、即ち、半導体基板の表面に垂直なz方向に向けるには、z方向成分の磁気異方性エネルギーが必要である。このz方向成分の磁気異方性エネルギーを誘導磁気異方性エネルギーのみに頼る場合、反転磁界Hswは、MTJ素子の形状に左右されなくなるため、反転磁界Hswを増加させることなく、MTJ素子のサイズを小さくできる。
従って、本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリによれば、MTJ素子のサイズ(フリー層の幅)を0.1μm以下の値、例えば、約90nmとし、大メモリ容量、例えば、256メガビット以上のメモリ容量を有する磁気ランダムアクセスメモリを実現することができる。
(3) まとめ
以上のように、本発明の例によれば、垂直磁化タイプMTJ素子を使用している反転磁界HswがMTJ素子のサイズに影響されず、MTJ素子の微細化に貢献できる。
また、反転磁界Hswについては、MTJ素子の上下からMTJ素子を挟み込むようにヨーク材を配置し、かつ、熱アシスト書き込み方式を採用することにより、大幅に低減することができ、書き込み電流としては、実用的な非常に小さな値に設定できる。
従って、本発明の例によれば、磁気ランダムアクセスメモリにおけるメモリセルの微細化による大容量化と共に、誤書き込み(ディスターブ)を発生させることなく、書き込み電流を実用化に適した小さな値に設定できる。
また、垂直磁化タイプMTJ素子では、ピン層の磁化の向きを固定する反強磁性層が不要であるため、MTJ素子を薄くし、MTJ素子に対する磁場の作用効率を向上させる、という効果も得られる。
ところで、反強磁性層としては、現在、Mn(マンガン)を含む合金が主に用いられているが、この場合、温度300℃を越えると、合金中のMnが拡散し、MTJ素子のMR比(抵抗変化率)が小さくなることが知られている。しかし、本発明の例によれば、反強磁性層が不要なのであるから、このようなMR比の悪化を全く考慮しなくてよい。
また、MTJ素子の反転磁界HswがMTJ素子のサイズや形状などに影響されないため、基本的には、設計ルール(最小加工寸法F)にかかわらず、MTJ素子のスケーリングを自由に行うことができる。
さらに、MTJ素子の上下からヨーク材によりMTJ素子を挟み込む構造を採用することにより、MTJ素子の強磁性層に生じる反磁界による静磁エネルギーを低減でき、反転磁界Hswを小さくできる。
また、製造時に、複数のMTJ素子の間で、形状のばらつきが生じたとしても、それによっては、MTJ素子の反転磁界Hswが変わらないため、不良品の発生を低減でき、製造歩留りの向上にも貢献できる。
5. 書き込み時のメモリセルの選択方法
磁気ランダムアクセスメモリは、複数のMTJ素子を有し、通常、これらMTJ素子は、アレイ状に配置され、メモリセルアレイを構成している。
一方、磁気ランダムアクセスメモリは、ランダムアクセスが必須であるから、書き込み時においても、書き込み対象となるMTJ素子をランダムに選択できなければならない。そこで、以下では、書き込み時におけるメモリセル(MTJ素子)の選択方法の例について説明する。
(1) 書き込み選択スイッチを用いる例
MTJ素子ごとにローカルに書き込み線を配置し、この書き込み線に書き込み選択スイッチを接続することにより、選択されたMTJ素子のみに対して選択的に書き込みを行うことができる。
例えば、第2実施の形態に関わる磁気ランダムアクセスメモリ(図7)は、書き込み選択スイッチを用いて、MTJ素子に対する書き込みを選択的に行う例である。尚、図7の例では、NチャネルMOSトランジスタ31が書き込み選択スイッチに相当する。
この場合、MTJ素子ごとに書き込み選択スイッチが必要になるため、書き込み選択スイッチは、例えば、MTJ素子の直下の半導体基板上に形成される。
ここで、既に述べたように、本発明の例によれば、ヨーク材を用いたデバイス構造と熱アシスト書き込み方式とを採用しているため、書き込み電流の値を小さな値、例えば、1mA以下の値に設定することができる。従って、書き込み選択スイッチのサイズ(駆動力)は、MTJ素子のサイズ(例えば、フリー層の幅10〜100nm)と同程度に設定でき、現実に、これをMTJ素子の直下に配置することが可能になる。
また、書き込み選択スイッチを用いるMTJ素子の選択方法によれば、常に、選択されたMTJ素子に対応する書き込み線のみに書き込み電流を流すことになるため、いわゆる半選択状態(参考例の「磁気ランダムアクセスメモリの課題」の項目を参照)のMTJ素子が存在しなくなる。
従って、書き込み時における非選択のMTJ素子の誤書き込み(ディスターブ)を完全になくすことができ、磁気ランダムアクセスメモリとしての信頼性を向上できる。
(2) 熱アシストにより選択性を持たせる例
MTJ素子に熱アシストのための選択スイッチを接続し、選択されたMTJ素子に対応する選択スイッチのみをオンにし、そのMTJ素子のみに熱アシスト電流を供給することで、選択されたMTJ素子のみに対して選択的に書き込みを行うことができる。
例えば、第4実施の形態に関わる磁気ランダムアクセスメモリ(図9)は、熱アシストのための選択スイッチを用いて、MTJ素子に対する書き込みを選択的に行う例である。尚、図9の例では、NチャネルMOSトランジスタ32が熱アシストのための選択スイッチに相当する。
尚、熱アシスト書き込み方式を採用する場合に考慮しなければならない点は、熱アシストを行うに当たって、非選択のMTJ素子に熱が加わらないようにすることにある。非選択のMTJ素子にも熱が加わると、非選択のMTJ素子に対して熱擾乱によるフリー層の磁化反転が発生する可能性があるからである。
しかし、例えば、図9に示すような選択スイッチを用いる構成にすると、熱アシスト電流は、選択されたMTJ素子のみに流れるため、非選択のMTJ素子に対して直接熱が加わるという事態が発生することがない。従って、本発明の例によれば、熱擾乱耐性に優れた熱アシストを行うことができる。
このように、熱アシストにより選択性を持たせる例によれば、アレイ状に配置された複数のMTJ素子に対して、選択されたMTJ素子のみに選択的に熱アシスト(加熱)を行うことができる。
熱アシストされたMTJ素子は、保磁力が小さくなるため、反転磁界も小さくなり、書き込み電流により発生した磁界により書き込みが行われ、その他の熱アシストされないMTJ素子は、保磁力が高いままであるため、反転磁界も高く、書き込み電流により発生した磁界では書き込みが行われない。
ところで、熱アシスト書き込み方式を採用する場合には、MTJ素子に関して、例えば、図10に示すように、第一に、熱アシストを加えた場合の保磁力とそれを加えない場合の保磁力との比ができるだけ大きく、第二に、特定温度を境にして急激に保磁力が変化する、というような特性を持たせることが実用化にとって重要な要素となる。これは、熱アシストされた隣接ビットから熱伝導による温度上昇と、熱アシスト書き込みを行ったビットの冷却過程における熱擾乱耐性を確保するためである。
以下では、そのような特性を実現するための技術について説明する。
MTJ素子の基本構造は、フリー層(記録層)及びピン層(固定層)により絶縁層(トンネルバリア)を挟み込んだ構造である。
ここで、まず、高保磁力を有する磁性材料を用いてピン層を構成し、かつ、書き込み時の保磁力がピン層のそれよりも小さくなるような磁性材料を用いてフリー層を構成する。
尚、フリー層に関しては、熱アシストを加えた場合の保磁力とそれを加えない場合の保磁力との比を大きくするために、複数の磁性材料から構成するようにしてもよい。
次に、特定温度を境にして保磁力が急激に変化する特性を実現するために、フリー層に隣接して機能層なるものを新たに設ける。
機能層は、トンネルバリアとフリー層との間に配置してもよいが、フリー層のトンネルバリア側ではない側の面上に配置した方がより好ましい。
機能層としては、例えば、特定温度Tfを境にして、常磁性から強磁性、又は、反強磁性から強磁性へと、その性質が変化する材料を用いる。
ここで、特定温度Tfは、常温Tnよりも高く、かつ、常温Tnに対して十分なマージンを確保できている必要がある。また、特定温度Tfは、書き込み時におけるMTJ素子の温度、即ち、記録温度Twよりも低く、かつ、記録温度Twに対して十分なマージンを確保できている必要がある。
例えば、反強磁性−強磁性転移を示す材料としては、Fe-Rh、 Fe-RhにCo、Ni、Pd、Pt、Irなどの添加物を添加した合金、 Mn-Rh、 Mn-Cr-Sb、 Mn-V-Sb、 Mn-Co-Sb、 Mn-Cu-Sb、 Mn-Zn-Sb、 Mn-Ge-Sb、 Mn-As-Sbなどがある。これらの材料のうちから、記録温度Twとの相性がよい最適な材料を選択する。
また、機能層として、常温付近に補償温度(補償点)Tcompを有するフェリ磁性体を用いてもよい。フェリ磁性を示す材料として、フェリ磁性体を薄膜化したものを用いてもよい。このような材料としては、例えば、Tb-Fe、 Tb-Fe-Co、 Tb-Co、 Gd-Tb-Fe-Co、 Gd-Dy-Fe-Co、 Nd-Fe-Co、 Nd-Tb-Fe-Coなどのアモルファス希土類−遷移金属合金薄膜や、CrPt3 のような規則合金などがある。
また、M Fe2 O4 (Mは、Mn、Fe、Co、Ni、Co、Mg、Zn、Cdのうちの1つ)、LiFe5 O8 などのフェライトや、多元系フェライトなどもフェリ磁性体となることが知られている。これらのうちから、常温付近に補償点を有するものを、本発明の例に用いられる機能層(フェリ磁性体)として適用する。
機能層は、フリー層に接触して形成される。そこで、機能層とフリー層との強磁性交換結合は、例えば、真空中において、スパッタ法により両者を連続して形成することにより実現できる。
本発明の例によれば、書き込み時に、選択されたMTJ素子のフリー層の温度を熱アシストにより記録温度Twまで上昇させ、一時的にフリー層の保磁力(磁気異方性エネルギー)を減少させる。非選択のMTJ素子については、誤書き込みを防止するために、常温Tnを維持し、フリー層の保磁力を高い値のままにする。
書き込み時以外においては、熱揺らぎによるMTJ素子の劣化を防ぐために、MTJ素子を常温Tnに維持し、高い保磁力を確保する。
MTJ素子に関して、図10に示すような特性(温度と保磁力との関係)を得ることができれば、熱アシスト書き込み方式で考慮しなければならない書き込み直後の熱揺らぎの加速による誤書き込みの問題や、書き込み時に選択されたMTJ素子に隣接するMTJ素子に熱が加わることによるクロスイレーズの問題などを回避できる。
以下、図10に示すような特性を実現する方法について説明する。
図11は、フリー層と機能層とのモーメントの向きを模式的に示している。
ここでは、説明を分かり易くするため、両者共に、残留磁化の向きが積層面に垂直な方向となる垂直磁化タイプであるものとする。
矢印は、モーメントの向きを表している。強磁性交換結合の相互作用とは、モーメントの向きが同じであるときに、最もエネルギーが低く、かつ、安定となるような交換結合の相互作用を意味する。このような交換結合によるヒステリシスループがどのようになるかについては、既に多くの研究発表がなされている。
例えば、Japanese Journal of Applied Physics, vol. 20, No. 11, 1981 pp.2089-2095では、交換結合した2つの垂直磁化タイプ磁性層についての解析を行っている。これによると、交換結合エネルギーの面密度σと各磁性層の磁気特性によってヒステリシスの形が変わることになる。
例えば、図12に示すような磁性層について検討する。
ここで、磁性層1に関し、Ku1、Ms1、t1は、それぞれ、磁気異方性エネルギー密度、飽和磁化、厚さを表している。また、磁性層2に関し、Ku2、Ms2、t2は、それぞれ、磁気異方性エネルギー密度、飽和磁化、厚さを表している。但し、Ku1 > Ku2とする。
磁性層1,2の飽和磁化Ms1,Ms2が同じであれば、磁性層1の保磁力Hc1 (= 2Ku1/Ms1)は、磁性層2の保磁力Hc2 (= 2Ku2/Ms2)よりも大きくなる。このとき、交換結合エネルギーは、磁性層1,2のスピンの向きを揃える作用があるが(そのような作用が生じるようにエネルギーを与える)、その作用は、磁性層1,2に交換磁界Hw1 (= σ/2Ms1・t1),Hw2 (= σ/2Ms2・t2)が与えられたのと等価になる。
ここで、磁性層1,2の保磁力Hc1,Hc2が交換磁界Hw1,Hw2よりも大きければ(Hc1 > Hw1 , Hc2 > Hw2)、両層のスピンが対向した状態でエネルギーが安定になる(準安定状態)。従って、このときのヒステリシスループは、図13に示すようになる。
図13に示すようなヒステリシスループが得られた場合には、磁化の変化点(反転磁界) HR1, HR2は、解析的に求めることができる。
HR1 = Hc1−Hw1 = Hc1−σ/2Ms1・t1 ・・・(3)
HR2 = Hc2+Hw2 = Hc2+σ/2Ms2・t2 ・・・(4)
即ち、大きな保磁力を持つ磁性層1は、それよりも小さな保磁力を持つ磁性層2から交換結合エネルギーの面密度σに依存した保磁力を下げる作用を受け、逆に、小さな保磁力を持つ磁性層2は、それよりも大きな保磁力を持つ磁性層1から交換結合エネルギーの面密度σに依存した保磁力を上げる作用を受ける。
ところが、磁性層1,2の保磁力Hc1,Hc2が交換磁界Hw1,Hw2よりも小さい場合(Hc1 < Hw1 , Hc2 < Hw2)には、例えば、磁化の変化点HR2で磁性層2の磁化が反転すると、このときの交換力が大きいために、磁性層1の磁化も同時に反転してしまう。このようになると、図14に示すように、交換結合した2つの垂直磁化タイプ磁性層のヒステリシスループは、1層のみからなる通常の磁性層のそれと同じになる。
この場合の磁化の変化点HR3は、
HR3 = (Ms2・t2・Hc2 + Ms1・t1・Hc1)/(Ms2・t2 + Ms1・t1) ・・・(5)
となる。
この磁化の変化点(反転磁界)HR3は、磁性層1,2の保磁力Hc1,Hc2のちょうど中間の値になる。従って、磁性層1,2が積層された場合の保磁力についても、磁性層1,2の保磁力Hc1,Hc2の中間の値となる。つまり、高い磁気異方性エネルギー密度Ku1を持つ磁性層1と低い磁気異方性エネルギー密度Ku2を持つ磁性層2とを交換結合させると、保磁力は、磁性層1単独の場合の保磁力よりも低くなる。
この現象を利用すれば、書き込みに関して、MTJ素子の特性(温度と保磁力との関係)を図10に示すように設定することができ、結果として、熱揺らぎによる誤書き込みの恐れがない高信頼性の磁気ランダムアクセスメモリを提供できる。
図15は、反強磁性から強磁性に変化する材料を機能層に用いた場合の温度と飽和磁化との関係を示している。
機能層は、特定温度Tfで反強磁性から強磁性に変化するため、その特定温度Tfで飽和磁化が急激に上昇する特性を示す。既に述べたように、高い磁気異方性エネルギー密度Ku1を持つ磁性層1と低い磁気異方性エネルギー密度Ku2を持つ磁性層2とを交換結合させると、保磁力は、磁性層1単独の場合の保磁力よりも低くなる。
高い磁気異方性エネルギー密度Ku1を持つ磁性層1の保磁力Hc1の減少の割合は、交換結合エネルギー面密度σや、フリー層と機能層の磁気異方性エネルギー密度Ku1,Ku2、飽和磁化Ms1,Ms2及び厚さt1、t2などにより調整できる。
また、書き込み以外では、機能層は、反強磁性を示している。この状態では、フリー層の磁気異方性エネルギー密度は、機能層のそれに比べて大きくなる。機能層は、書き込み終了後の冷却過程においてフリー層の磁化の向きに影響された磁化配列を持つようになり、フリー層の磁化が機能層の磁化配列の影響で反転するということはない。
図16は、第1のシミュレーションにより得た温度と保磁力との第1の関係を示している。
本例では、前提として、温度とフリー層の飽和磁化Ms1とは、図17に示すような関係を有し、温度とフリー層の磁気異方性エネルギー Ku1とは、図18に示すような関係を有し、温度と機能層の磁気異方性エネルギー Ku2とは、図19に示すような関係を有しているものとした。また、機能層が反強磁性から強磁性に転移する温度Tfは、絶対温度375Kとした。
実線は、フリー層単独の保磁力HcRL (=2×Ku1/Ms1)の温度変化を示し、点線は、機能層単独の保磁力HcFL (=2×Ku2/Ms2)の温度変化を示している。
また、白い丸及び黒い丸は、それぞれ、フリー層と機能層の交換結合エネルギー面密度σが1erg/cm2の場合におけるフリー層及び機能層の保磁力HcRL(σ=1),HcFL(σ=1) を示し、白い四角及び黒い四角は、それぞれ、フリー層と機能層の交換結合エネルギー面密度σが5erg/cm2の場合におけるフリー層及び機能層の保磁力HcRL(σ=5),HcFL(σ=5) を示し、白い菱形及び黒い菱形は、それぞれ、フリー層と機能層の交換結合エネルギー面密度σが10erg/cm2の場合におけるフリー層及び機能層の保磁力HcRL(σ=10),HcFL(σ=10) を示している。
フリー層単独の場合、保磁力HcRLは、温度の上昇に反比例して、連続的に減少していくのに対し、フリー層と機能層とを積層した構造では、温度が上昇する過程で、機能層が反強磁性から強磁性に転移する温度Tf(=375K)にさしかかると、保磁力が不連続に急激に減少する。
そして、温度Tf及びその近傍における保磁力の不連続性の度合い(変化の割合)は、交換結合エネルギー面密度σが大きくなるほど大きくなる。
このように、フリー層に機能層を付加することにより、実際に、図10に示すような特性を実現することができる。
図20は、第2のシミュレーションにより得た温度と保磁力との第2の関係を示している。
本例では、常温近傍に補償点を有するフェリ磁性体を機能層として用いることを前提とした。また、温度とフリー層の飽和磁化Ms1とは、図17に示すような関係を有し、温度とフリー層の磁気異方性エネルギー Ku1とは、図18に示すような関係を有し、温度と機能層の飽和磁化Ms2とは、図21に示すような関係を有し、温度と機能層の磁気異方性エネルギー Ku2とは、図22に示すような関係を有しているものとした。
実線は、フリー層単独の保磁力HcRL (=2×Ku1/Ms1)の温度変化を示し、点線は、機能層単独の保磁力HcFL (=2×Ku2/Ms2)の温度変化を示している。
また、白い丸及び黒い丸は、それぞれ、フリー層と機能層の交換結合エネルギー面密度σが1erg/cm2の場合におけるフリー層及び機能層の保磁力HcRL(σ=1),HcFL(σ=1) を示し、白い四角及び黒い四角は、それぞれ、フリー層と機能層の交換結合エネルギー面密度σが3erg/cm2の場合におけるフリー層及び機能層の保磁力HcRL(σ=3),HcFL(σ=3) を示し、白い菱形及び黒い菱形は、それぞれ、フリー層と機能層の交換結合エネルギー面密度σが5erg/cm2の場合におけるフリー層及び機能層の保磁力HcRL(σ=5),HcFL(σ=5) を示している。
機能層の飽和磁化は、補償点 Tcomp までは、温度の上昇に伴い減少し、補償点 Tcomp からは、温度の上昇に伴い増加する。機能層の飽和磁化は、補償点 Tcomp を越えると、所定温度でピークとなり、それ以降は再び減少する。そして、機能層は、キュリー点で磁化を失うことになる。
常温近傍において磁化が非常に小さくなると、機能層の保磁力は、非常に大きくなる。また、機能層の磁化が温度と共に増加すると、機能層の保磁力は、急激に小さくなる。
従って、フリー層と機能層とが強磁性交換結合していると、フリー層の保磁力も、機能層の急激な保磁力の減少につられて、急激に減少することが期待される。高い磁気異方性エネルギー密度Ku1を持つフリー層の保磁力の減少の程度は、交換結合エネルギー面密度σ、フリー層及び機能層の磁気異方性エネルギー密度Ku1,Ku2、飽和磁化Ms1,Ms2、厚さt1,t2などにより調整できる。
また、書き込み以外では、フリー層及び機能層の磁気異方性エネルギー密度の差により、機能層は、書き込み終了後の冷却過程においてフリー層の磁化の向きに影響された磁化配列を持つようになる。つまり、フリー層の磁化が機能層の磁化配列の影響で反転するということはない。
機能層の補償点 Tcomp 付近では、温度が上昇するにつれて機能層の保磁力が急激に減少するが、機能層の保磁力の変化に引きずられて、フリー層の保磁力も不連続に急激に減少する。また、交換結合エネルギー面密度σが大きい場合には、フリー層の保磁力の変化は、機能層の保磁力の変化と同じようになる。
このように、フリー層に機能層を付加することにより、実際に、図10に示すような特性を実現することができる。
上記2つのシミュレーション結果は、フリー層と機能層のモーメントを独立に少しずつ回転させて、最もエネルギーが安定になる条件を探す、というエナジーミニマム( Energy Minimum)という手法により求めたものである。
また、反磁界については、反磁界係数を 0.3 として計算した。反磁界は、N×4πMs ( N:反磁界係数)で表される。但し、反磁界係数は形状に大きく依存するため、 N の値は決定しがたい。
しかし、いずれにしても、反磁界は、Ku(Hc) を低減する方向に作用するので、反磁界込みで Ku(Hc) を考えれば、上記2つのシミュレーション結果をそのまま実際のMTJ素子の特性として使えることになる。
フリー層と機能層とが強磁性交換結合した構造を持つMTJ素子において、機能層の磁気異方性エネルギー密度が記録層のそれよりも大きいと、フリー層と機能層の全体の保磁力が低下しないので、書き込みを行うことができない。
フリー層の磁気異方性エネルギー密度と機能層の磁気異方性エネルギー密度との差は、基本的には任意に決めてよいが、その差が小さいと、フリー層と機能層の全体の保磁力の低減効果が小さくなる。一方、フリー層の磁気異方性エネルギー密度と機能層の磁気異方性エネルギー密度との差が大きいと、フリー層と機能層の全体の保磁力の低減効果が大きくなるが、この場合、機能層を十分に厚くして同時反転を起こし易くする必要がある。
従って、両者の磁気異方性エネルギー密度の差は、書き込み時の温度、加熱効率などを考慮して、デバイスごとに決めることになるが、一般的な使用においては、両者の磁気異方性エネルギー密度の比 KuRL/KuFL として、3以上の値であれば十分である。但し、 KuRL は、フリー層の磁気異方性エネルギー密度、 KuFL は、機能層の磁気異方性エネルギー密度である。
また、その比が5以上の値であれば、より好ましくなり、10以上の値であれば、最適となる。
6. 材料例
[A] 高い保磁力を持つ磁性材料は、1×106 erg/cc 以上の高い磁気異方性エネルギー密度を持つ材料により構成される。
以下、その材料例について説明する。
(1) 例1
・ Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)のうちの少なくとも1つと、Cr(クロム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)のうちの少なくとも1つとを含む合金からなるもの
規則合金としては、Fe(50)Pt(50)、Fe(50)Pd(50)、Co(50)Pt(50)などがある。不規則合金としては、CoCr合金、CoPt合金、CoCrPt合金、CoCrPtTa合金、CoCrNb合金などがある。
(2) 例2
・ Fe、Co、Niのうちの少なくとも1つ又はこれらのうちの1つを含む合金と、Pd、Ptのうちの1つ又はこれらのうちの1つを含む合金とが、交互に積層された構造を持つもの
例えば、Co/Pt人工格子、Co/Pd人工格子、CoCr/Pt人工格子などがある。Co/Pt人工格子を使用した場合及びCo/Pd人工格子を使用した場合においては、抵抗変化率(MR比)は、約40%、という大きな値を実現できる。
(3) 例3
希土類金属のうちの少なくとも1つ、例えば、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、又は、Gd(ガドリニウム)と、遷移金属のうちの少なくとも1つとからなるアモルファス合金
例えば、TbFe、TbCo、TbFeCo、DyTbFeCo、GdTbCoなどがある。
[B] フリー層は、上述のような高い保磁力を持つ磁性材料から構成することもできるし、組成比の調整、不純物の添加、厚さの調整などを行って、上述のような高い保磁力を持つ磁性材料よりも磁気異方性エネルギー密度が小さい磁性材料から構成してもよい。
以下、その材料例について説明する。
(1) 例1
・ Fe、Co、Niのうちの少なくとも1つと、Cr、Pt、Pdのうちの少なくとも1つとを含む合金に、不純物を添加したもの
規則合金としては、Fe(50)Pt(50)、Fe(50)Pd(50)、又は、Co(50)Pt(50)に、Cu、Cr、Agなどの不純物を加えて磁気異方性エネルギー密度を低下させたものなどがある。不規則合金としては、CoCr合金、CoPt合金、CoCrPt合金、CoCrPtTa合金、又は、CoCrNb合金について、非磁性元素の割合を増加させて磁気異方性エネルギー密度を低下させたものなどがある。
(2) 例2
・ Fe、Co、Niのうちの少なくとも1つ又はこれらのうちの1つを含む合金と、Pd、Ptのうちの1つ又はこれらのうちの1つを含む合金とが、交互に積層された構造を持つものであって、前者の元素若しくは合金からなる層の厚さ、又は、後者の元素若しくは合金からなる層の厚さを調整したもの
Fe、Co、Niのうちの少なくとも1つ又はこれらのうちの1つを含む合金についての厚さの最適値と、Pd、Ptのうちの1つ又はこれらのうちの1つを含む合金についての厚さの最適値とが存在し、厚さがこれら最適値から離れるに従い、磁気異方性エネルギー密度は、次第に低下する。
(3) 例3
希土類金属のうちの少なくとも1つ、例えば、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、又は、Gd(ガドリニウム)と、遷移金属のうちの少なくとも1つとからなるアモルファス合金の組成比を調整したもの
例えば、TbFe、TbCo、TbFeCo、DyTbFeCo、GdTbCoなどのアモルファス合金の組成比を調整し、磁気異方性エネルギー密度を小さくしたものがある。
[C] ヨーク材(軟磁性材料)上にMTJ素子を形成する場合、ヨーク材とMTJ素子との間には、原子の拡散防止機能及び両者を交換結合させない機能を持つバッファ層、例えば、Ta、TiN、TaNなどからなる導電層が形成される。
機能層としては、結晶構造に左右されないRE-TMアモルファス合金を用いることができる。ここで、温度の上昇に伴い、保磁力が小さくなるように、RE-TMアモルファス合金の組成を調整すれば、RE-TMアモルファス合金にフリー層としての機能を持たせることもできる。
尚、REは、希土類金属(Rare Earth metal)を意味し、例えば、Gd、Tb、Dyが該当する。また、TMは、遷移金属(Transition metal)を意味し、例えば、Fe、Co、Niが該当する。
この場合、MR比を大きくするために、トンネルバリアと強磁性層(フリー層及びピン層)との界面に、Co、Fe、Ni、又は、これらの合金を配置する。
ピン層として、例えば、FePt、CoPtなどの規則合金を用いる場合、垂直磁気異方性を発生させるためには、fct(001)面を配向させる必要がある。このため、結晶配向制御層として、数nm程度のMgOからなる極薄下地層を用いることが好ましい。MgOの他にも、格子定数が28nm, 40nm, 56nm程度のfcc構造、bcc構造を持つ元素、化合物、例えば、Pt、Pd、Ag、Au、Al、Cu、Cr、Feなど、或いは、それらの合金などを用いることができる。
ボトムピン構造の場合には、ヨーク材とピン層との間に結晶配向制御層を配置すればよい。結晶配向制御層とヨーク材との間には、例えば、Ta、TiN、TaNなどからなるバッファ層が配置されていてもよい。トップピン構造の場合には、トンネルバリアにfcc(100)面が配向したMgOを用いることが好ましい。この場合、MR比が劣化しない程度に結晶配向制御層をさらに積層してもよい。
フリー層として、FePt、CoPtなどの規則合金を用いる場合にも、同様に、fct(001)面を配向させる必要がある。
トップピン(ボトムフリー)構造の場合には、ヨーク材とフリー層との間に結晶配向制御層を配置すればよい。結晶配向制御層とヨーク材との間には、例えば、Ta、TiN、TaNなどからなるバッファ層が配置されていてもよい。ボトムピン(トップフリー)構造の場合には、トンネルバリアにfcc(100)面が配向したMgOを用いることが好ましい。この場合、MR比が劣化しない程度に結晶配向制御層をさらに積層してもよい。
フリー層として、例えば、FePt、CoPtなどの規則合金を用いる場合、フリー層に付加する機能層には、(001)面の格子定数がフリー層のそれに近いFeRhを用いる。
フリー層として、例えば、Co/Pt人工格子又はCo/Pd人工格子を用いる場合においても、FeRhを機能層として用いることができる。
フリー層として、例えば、Co/Pt人工格子を用いる場合、CoとPtの厚さを調節することにより、MTJ素子の保磁力を調節できる。
7. MTJ素子の構造例
次に、ヨーク材(軟磁性材料)により挟み込まれたMTJ素子の構造例について説明する。
(1) 構造例1,2
図23は、MTJ素子の構造例1,2を示している。
・ 構造例1
MTJ素子は、フリー層11、ピン層12及びこれらの間に配置されるトンネルバリア(絶縁層)13から構成される。フリー層11とヨーク材20との間には、バッファ層14が配置され、ピン層12とヨーク材20との間には、バッファ層14及び結晶配向制御層15が配置される。
フリー層11は、例えば、厚さ約0.5nmの Co と厚さ約1.5nmの Pt とが積み重ねられた積層から構成され、ピン層12は、例えば、厚さ約5nmの FePt から構成される。トンネルバリア13は、厚さ約1.2nmの AlO から構成される。また、フリー層11に機能層を付加する場合には、機能層は、例えば、常温付近に補償点を持つ厚さ約30nmの Tb22(Fe0.7Co0.3)78 から構成される。
ヨーク材20は、例えば、 NiFe から構成される。バッファ層14は、例えば、厚さ約2nmの Ta から構成され、結晶配向制御層15は、例えば、厚さが約1nmの MgO から構成される。
ここで、フリー層11とトンネルバリア13との間に、MR比を悪化させない程度に、Pt、Pd などからなる層を挿入することもできる。ピン層12としては、 FePt の代わりに、CoPt を用いてもよい。また、フリー層11として、Co/Pt人工格子の代わりに、Co/Pd人工格子を用いてもよい。
・ 構造例2
構造例2は、MTJ素子のフリー層11及びピン層12に、FePt からなる規則合金を用いた場合の例である。
MTJ素子は、フリー層11、ピン層12及びこれらの間に配置されるトンネルバリア(絶縁層)13から構成される。フリー層11とヨーク材20との間には、バッファ層14が配置され、ピン層12とヨーク材20との間には、バッファ層14及び結晶制御用下地層15が配置される。
フリー層11は、例えば、厚さ約5nmの FePtCu から構成され、ピン層12は、例えば、厚さ約5nmの FePt から構成される。トンネルバリア13は、厚さ約1.2nmの MgO から構成される。また、フリー層11に機能層を付加する場合には、機能層は、例えば、常温付近に補償点を持つ厚さ約10nmの FeRh から構成される。
ヨーク材20は、例えば、 NiFe から構成される。バッファ層14は、例えば、厚さ約2nmの Ta から構成される。
ここで、フリー層11、ピン層12とトンネルバリア13との間にそれぞれMR比を向上させるために、Fe、Co、Ni、それらの合金を挿入しても良い。
(2) 構造例3
図24は、MTJ素子の構造例3を示している。
構造例3は、MTJ素子のフリー層11及びピン層12に人工格子を用いた場合の例である。
MTJ素子は、フリー層11、ピン層12及びこれらの間に配置されるトンネルバリア(絶縁層)13から構成される。フリー層11とヨーク材20との間には、バッファ層14が配置され、ピン層12とヨーク材20との間にも、バッファ層14が配置される。
フリー層11は、例えば、厚さ約0.5nmの Co と厚さ約1.5nmの Pt とが積み重ねられた積層から構成され、ピン層12は、例えば、厚さ約0.3nmの Co と厚さ約0.8nmの Pt とが積み重ねられた積層から構成される。トンネルバリア13は、厚さ約1.2nmの AlO から構成される。また、フリー層11に機能層を付加する場合には、機能層は、例えば、常温付近に補償点を持つ厚さ約30nmの Tb22(Fe0.7Co0.3)78 から構成される。
ヨーク材20は、例えば、 NiFe から構成される。下地バッファ層14は、例えば、厚さ約2nmの Ta から構成される。
ここで、フリー層11とトンネルバリア13との間に、MR比を悪化させない程度に、Pt、Pd などからなる層を挿入することもできる。
(3) 構造例4(構造例2を一部逆にした構造)
図25は、MTJ素子の構造例4を示している。
構造例4は、構造例2に関わるピン層とフリー層を上下逆にしたものである。つまり、構造例2は、ボトムピンタイプMTJ素子に関し、構造例4は、トップピンタイプMTJ素子に関する。
(4) 構造例5
図26は、MTJ素子の構造例5を示している。
構造例5は、構造例3に関わるMTJ素子の上下を逆にしたものである。つまり、構造例3は、ボトムピンタイプMTJ素子に関し、構造例5は、トップピンタイプMTJ素子に関する。
(5) 構造例6
構造例6は、構造例1〜5において、フリー層及びピン層に積層フェリ磁性構造 (stacked ferrimagnetic structure) を採用した構造に関する。
積層フェリ磁性構造は、フェリ磁性層と金属層とが交互に積み重ねられた構造からなる。フェリ磁性層としては、Fe、Co、Ni、又は、これらの合金が用いられ、金属層としては、Ru、Ir、Rh、Re、Osなどの金属が用いられる。具体例としては、Co/Ru、Co/Ir、Co/Rhなどがある。
構造例6では、例えば、ヨーク材として、 NiFe を用いる。下地バッファ層としては、例えば、厚さ約2nmの Ta を用いる。機能層としては、常温付近に補償点を持つ厚さ約30nmの Tb22(Fe0.7Co0.3)78 を用いる。フリー層としては、例えば、厚さ約0.5nmの Co と厚さ約1.5nmの Pd との積層を用い、ピン層としては、例えば、厚さ約0.3nmの Co と厚さ約0.8nmの Ru との積層を用い、トンネルバリアとしては、例えば、厚さ約1.2nmの AlO を用いる。
(6) 構造例7
構造例7は、構造例1〜5において、フリー層及びピン層に、フェリ磁性体又は積層フェリ磁性構造を採用した構造に関する。
フェリ磁性体としては、第一に、希土類金属のうちの少なくとも1つ(例えば、Gd、Tbなど)と遷移金属のうちの少なくとも1つとからなるアモルファス合金を用いることができる。これには、例えば、GdCo、TbFeCo、GdTbFe などがある。
第二に、Fe、Co、Niのうちの少なくとも1つと、V(バナジウム)、Cr、Cu、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd、Ta、W(タングステン)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt、Auのうちの1つとを交互に積み重ねた構造を用いることができる。
第三に、Mn(マンガン)、Cu、Al、Ge(ゲルマニウム)、Bi(ビスマス)を含む合金、例えば、MnBi、MnAlGe、MnCuBi などを用いることができる。
尚、MTJ素子のフリー層にフェリ磁性体を用いると、積層面に垂直な方向の静磁エネルギーを低減できるため、フリー層の反転磁界を小さくできる。また、ヨーク材にかかる自己バイアス磁界を低減できるため、オーバーライトに必要な電流値を低減できる。
また、MTJ素子のピン層にフェリ磁性体を用いると、フリー層にバイアスされる磁界を低減できるため、オフセットを低減できる。
(7) 構造例8
図27は、MTJ素子の構造例8を示している。
MTJ素子は、フリー層11、ピン層12及びこれらの間に配置されるトンネルバリア(絶縁層)13から構成される。フリー層11の直下には、フリー層11に隣接してヨーク材20が配置され、ピン層12の直上には、ピン層12に隣接してヨーク材20が配置される。
フリー層11とトンネルバリア13との間には、MTJ素子のMR比を向上させるための金属層16が配置される。また、ピン層12とトンネルバリア13との間にも、MTJ素子のMR比を向上させるための金属層16が配置される。
尚、構造例8は、トップピンタイプMTJ素子であるが、フリー層11の位置とピン層12の位置とを入れ替えて、ボトムピンタイプMTJ素子とすることもできる。
フリー層11は、例えば、厚さ約0.5nmの Co と厚さ約1.5nmの Pt とが積み重ねられた積層から構成され、ピン層12は、例えば、厚さ約0.3nmの Co と厚さ約0.8nmの Pt とが積み重ねられた積層から構成される。トンネルバリア13は、厚さ約1.2nmの AlO から構成される。また、フリー層11に機能層を付加する場合には、機能層は、例えば、常温付近に補償点を持つ厚さ約30nmの Tb22(Fe0.7Co0.3)78 から構成される。
ヨーク材20は、例えば、 NiFe から構成される。MR比を向上させるための金属層16としては、例えば、Co、Ni、Fe、又は、これらの合金 (CoFe、NiFe、NiCo、FeCoNi など)を用いることができる。
(8) 構造例9
図28は、MTJ素子の構造例9を示している。
MTJ素子は、フリー層11、ピン層12及びこれらの間に配置されるトンネルバリア(絶縁層)13から構成される。フリー層11の直下にはヨーク材20が配置され、ピン層12の直上にもヨーク材20が配置される。
フリー層11とトンネルバリア13との間には、MTJ素子のMR比を向上させるための金属層16が配置される。また、ピン層12とトンネルバリア13との間にも、MTJ素子のMR比を向上させるための金属層16が配置される。
フリー層11とヨーク材20との間には、ヨークティップ (yoke tip) 17が配置され、ピン層12とヨーク材20との間にも、ヨークティップ17が配置される。ヨークティップ17は、高い飽和磁束密度を持つヨーク材から構成され、書き込み電流により発生した磁場を収束させて、効率よく、フリー層11に作用させるための部材である。
尚、構造例9は、トップピンタイプMTJ素子であるが、フリー層11の位置とピン層12の位置とを入れ替えて、ボトムピンタイプMTJ素子とすることもできる。
フリー層11は、例えば、厚さ約0.5nmの Co と厚さ約1.5nmの Pt とが積み重ねられた積層から構成され、ピン層12は、例えば、厚さ約0.3nmの Co と厚さ約0.8nmの Pt とが積み重ねられた積層から構成される。トンネルバリア13は、厚さ約1.2nmの AlO から構成される。また、フリー層11に機能層を付加する場合には、機能層は、例えば、常温付近に補償点を持つ厚さ約30nmの Tb22(Fe0.7Co0.3)78 から構成される。
ヨーク材20は、例えば、 NiFe から構成される。MR比を向上させるための金属層16としては、例えば、Co、Ni、Fe、又は、これらの合金 (CoFe、NiFe、NiCo、FeCoNi など)を用いることができる。
高い飽和磁束密度を持つヨークティップ17としては、例えば、FeCo、CoFe、Fe(1-x)Nx などの磁性材料を用いることができる。
(9) 構造例10
図29は、MTJ素子の構造例10を示している。
構造例10は、構造例9の変形例に関わる。
構造例10では、MTJ素子に対するデータ書き込み効率をさらに向上させるため、構造例9におけるヨークティップ17及びヨーク材20の形状を工夫している。
即ち、フリー層11側のヨークティップ17に関して、ヨークティップ17のサイズ又は面積を、フリー層11のサイズ又は面積よりも大きくしている。同時に、フリー層11側のヨーク材20に関しても、ヨーク材20のサイズ又は面積を、フリー層11のサイズ又は面積よりも大きくしている。
このような構造によれば、書き込み電流により発生した磁場が、ヨークティップ17及びヨーク材20により、効率よく、MTJ素子のフリー層11に作用することになるため、書き込み電流の低減に貢献できる。
尚、構造例10は、トップピンタイプMTJ素子であるが、フリー層11の位置とピン層12の位置とを入れ替えて、ボトムピンタイプMTJ素子とすることもできる。
(10) 構造例11
図30は、MTJ素子の構造例11を示している。
構造例11も、構造例9の変形例に関わる。
構造例11では、MTJ素子に対するデータ書き込み効率をさらに向上させるため、構造例9におけるヨーク材20の形状を工夫している。
即ち、フリー層11側のヨーク材20に関して、ヨーク材20のサイズ又は面積を、フリー層11のサイズ又は面積よりも大きくしている。同時に、ピン層12側のヨーク材20に関して、ヨーク材20のサイズ又は面積を、ピン層12のサイズ又は面積よりも大きくしている。
ここで、構造例11においても、構造例10に示すように、フリー層11側のヨークティップ17に関して、ヨークティップ17のサイズ又は面積を、フリー層11のサイズ又は面積よりも大きくしてもよい。
このような構造によれば、書き込み電流により発生した磁場が、ヨークティップ17及びヨーク材20により、効率よく、MTJ素子のフリー層11に作用することになるため、書き込み電流の低減に貢献できる。
尚、構造例11は、トップピンタイプMTJ素子であるが、フリー層11の位置とピン層12の位置とを入れ替えて、ボトムピンタイプMTJ素子とすることもできる。
(11) その他
以上のような構造を持つ垂直磁化タイプMTJ素子において、データ読み出し時に、読み出し電流の値を次第に増加させていく実験を行ったところ、磁界が存在しないにもかかわらず、一定の確率で、フリー層の磁化が反転することが確認された。
そこで、まず、この現象がジュール熱による熱揺らぎに起因するものと仮定して、MTJ素子のサイズを変え、数回、同じ実験を行ったが、フリー層の磁化の反転確率は、MTJ素子のサイズに依存しなかった。さらに、続けて、実験を行ったところ、このようなフリー層の磁化反転は、MTJ素子に電流が流れることによるスピン注入に起因していることが判明した。
従って、例えば、構造例1〜11に示すような構造を持つ垂直磁化タイプMTJ素子に対して、書き込み時に熱アシスト電流を流すことにより、磁場、熱アシストに加えて、さらに、このスピン注入を、磁化反転のアシストとして用いることができる。
8. メモリセルアレイ
次に、メモリセルアレイの回路例について説明する。
(1) 回路例1
図31は、メモリセルアレイの回路例1を示している。
この回路例1は、2本の書き込み線を用いてMTJ素子に対する書き込みを行う例、例えば、MTJ素子と書き込み線とが図8に示すような関係にある場合の例である。
書き込みワード線WWL1,WWL2,WWL3,・・・は、x方向に延び、書き込みビット線WBL1,WBL2,WBL3,・・・は、y方向に延びている。書き込みワード線WWL1,WWL2,WWL3,・・・と書き込みビット線WBL1,WBL2,WBL3,・・・は、互いに交差(例えば、直交)する。
MTJ素子は、書き込みワード線WWL1,WWL2,WWL3,・・・と書き込みビット線WBL1,WBL2,WBL3,・・・との交差部に配置され、全体としては、アレイ状に配置されている。
書き込みワード線WWL1,WWL2,WWL3,・・・の一端には、書き込みワード線ドライバ/シンカー・デコーダ31Aが接続され、その他端には、書き込みワード線ドライバ/シンカー・デコーダ31Bが接続される。書き込みワード線ドライバ/シンカー・デコーダ31A,31Bは、書き込み時に、書き込みデータに応じて、選択された書き込みワード線WWLi(選択)に流す書き込み電流の向きを決定する。
書き込みビット線WBL1,WBL2,WBL3,・・・の一端には、書き込みビット線ドライバ/シンカー・デコーダ32Aが接続され、その他端には、書き込みビット線ドライバ/シンカー・デコーダ・セレクタ32Bが接続される。書き込みビット線ドライバ/シンカー・デコーダ32A,32Bは、書き込み時に、書き込みデータに応じて、選択された書き込みビット線WBLj(選択)に流す書き込み電流の向きを決定する。
電流生成回路33は、読み出し時に、選択されたMTJ素子に与える読み出し電流を生成する。また、電流生成回路33は、書き込み時に、選択された書き込みワード線WWLi(選択)及び選択された書き込みビット線WBLj(選択)に流す書き込み電流を生成すると共に、書き込み対象となる選択されたMTJ素子に与える熱アシスト電流を生成する。
本例では、書き込み対象となる選択されたMTJ素子のみに熱アシスト電流を供給するために、例えば、MTJ素子にMOSトランジスタを接続し、このMOSトランジスタのオン/オフを、制御信号φ11,φ12,φ13,・・・により制御する。つまり、選択されたMTJ素子に対応する制御信号φijのみが“H”になるため、書き込み対象となる選択されたMTJ素子のみに熱アシスト電流を与えることができる。
尚、MOSトランジスタとしては、図9の例で述べたように、熱アシストのための専用のトランジスタであってもよいし、読み出し時に使用する読み出し選択トランジスタを用いてもよい。
後者の場合、例えば、図32に示すように、通常、読み出し選択トランジスタのゲートは、読み出しワード線RWL1,RWL2,RWL3,・・・に接続されている。従って、書き込み時、熱アシスト電流は、選択された読み出しワード線RWLi(選択)に接続される1ロウ内の複数のMTJ素子に供給されることになる。しかし、このような場合であっても、選択されたMTJ素子のみに対して、選択的に書き込みを行うことができる(これについては、後述する)。
読み出し回路34は、読み出し時に、MTJ素子のデータ値を判定するための回路であり、センスアンプを含んでいる。
次に、このような構造を持つメモリセルアレイに関して、MTJ素子に選択的にデータを書き込むための原理について説明する。
図33は、図31及び図32の回路図からメモリセルアレイ部分のみを取り出したものである。
書き込みワード線と書き込みビット線とにより格子が形成され、その格子間にMTJ素子が規則的に配置されている。
選択されたMTJ素子は、MTJ素子aであると仮定する。
選択された書き込みワード線WWLi(選択)に、例えば、紙面上、下から上へ向かう書き込み電流Ixを流すと、MTJ素子a,MTJcに対しては、紙面を表から裏に突き抜ける方向に磁場が作用し、MTJ素子b,MTJdに対しては、紙面を裏から表に突き抜ける方向に磁場が作用する。
また、選択された書き込みビット線WBLj(選択)に、例えば、紙面上、左から右へ向かう書き込み電流Iyを流すと、MTJ素子a,MTJdに対しては、紙面を表から裏に突き抜ける方向に磁場が作用し、MTJ素子b,MTJcに対しては、紙面を裏から表に突き抜ける方向に磁場が作用する。
その結果、MTJ素子aに関しては、ワード線WWLi(選択)を流れる電流Ix及び書き込みビット線WBLj(選択)を流れる電流IyによりMTJ素子aに作用する磁場は、いずれも、紙面を表から裏に突き抜ける方向であり、合成磁場が生じる。
また、MTJ素子bに関しても、ワード線WWLi(選択)を流れる電流Ix及び書き込みビット線WBLj(選択)を流れる電流IyによりMTJ素子aに作用する磁場は、いずれも、紙面を裏から表に突き抜ける方向であり、合成磁場が生じる。
ここで、常温においては、この合成磁場によっては、MTJ素子の磁化の反転が起こらないように設定しておく。
従って、熱アシストが加えられないMTJ素子bに対しては、合成磁場が作用するが、書き込み(磁化の反転)が起こることはない。
一方、MTJ素子aに対しては、熱アシスト電流を与え、合成磁場によりMTJ素子aに対する書き込み(磁化の反転)が起こる状態にする。
ここで、熱アシストは、図31に示すようなメモリセルアレイ構造を採用すれば、MTJ素子aのみに与えることができる。
また、図32に示すようなメモリセルアレイ構造を採用した場合には、熱アシストは、MTJ素子aが属するロウ内の複数のMTJ素子について与えられる。しかし、MTJ素子bは、MTJ素子aとは異なるロウに属しているため、MTJ素子bに熱アシストが与えられることはない。つまり、選択されたMTJ素子aに対してのみ、選択的に書き込みを行うことができる。
尚、MTJ素子c,MTJdに関しては、ワード線WWLi(選択)を流れる電流IxによりMTJ素子c,MTJdに作用する磁場の向きと、書き込みビット線WBLj(選択)を流れる電流IyによりMTJ素子c,MTJdに作用する磁場の向きとが、互いに逆となる。
このため、ワード線WWLi(選択)を流れる電流Ixにより発生する磁場と書き込みビット線WBLj(選択)を流れる電流Iyにより発生する磁場とが互いに打ち消しあい、結局、MTJ素子c,MTJdに作用する磁場の大きさは、ほぼ零となる。
このように、2本の書き込み線を用いた場合には、例えば、これら2本の書き込み線により格子を形成し、格子間にMTJ素子を配置すると共に、選択されたMTJ素子又はそれが属するロウ内の複数のMTJ素子に対して熱アシストを加えることにより、選択的な書き込みが可能になる。
(2) 回路例2
図34は、メモリセルアレイの回路例2を示している。
この回路例2は、1本の書き込み線を用いてMTJ素子に対する書き込みを行う例、例えば、MTJ素子と書き込み線とが図9に示すような関係にある場合の例である。
書き込みワード線WWL1,WWL2,WWL3,・・・は、例えば、x方向に延びている。書き込みワード線WWL1,WWL2,WWL3,・・・の近傍には、書き込みワード線WWL1,WWL2,WWL3,・・・に沿って、複数のMTJ素子が配置され、MTJ素子は、全体としては、アレイ状に配置されている。
書き込みワード線WWL1,WWL2,WWL3,・・・の一端には、書き込みワード線ドライバ/シンカー・デコーダ31Aが接続され、その他端には、書き込みワード線ドライバ/シンカー・デコーダ31Bが接続される。書き込みワード線ドライバ/シンカー・デコーダ31A,31Bは、書き込み時に、書き込みデータに応じて、選択された書き込みワード線WWLi(選択)に流す書き込み電流の向きを決定する。
電流源Is1は、読み出し時に、選択されたMTJ素子に読み出し電流を供給するためのもので、電流源Is2は、書き込み時に、選択されたMTJ素子に熱アシスト電流を供給するためのものである。
本例では、書き込み対象となる選択されたMTJ素子のみに熱アシスト電流を供給するために、例えば、MTJ素子にMOSトランジスタを接続し、このMOSトランジスタのオン/オフを、制御信号φ11,φ12,φ13,・・・により制御する。つまり、選択されたMTJ素子に対応する制御信号φijのみが“H”になるため、書き込み対象となる選択されたMTJ素子のみに熱アシスト電流を与えることができる。
尚、MOSトランジスタとしては、図9の例で述べたように、熱アシストのための専用のトランジスタであってもよいし、読み出し時に使用する読み出し選択トランジスタを用いてもよい。
後者の場合、例えば、図35に示すように、通常、読み出し選択トランジスタのゲートは、読み出しワード線RWL1,RWL2,RWL3,・・・に接続されている。従って、書き込み時、熱アシスト電流は、選択された読み出しワード線RWLi(選択)に接続される1ロウ内の複数のMTJ素子に供給されることになる。
従って、選択されたMTJ素子のみに対して選択的に書き込みを行うためには、x方向に延びる書き込みワード線WWL1,WWL2,WWL3,・・・を、y方向に延びる書き込みビット線WBL1,WBL2,WBL3,・・・に変える必要がある。
読み出し回路34は、読み出し時に、MTJ素子のデータ値を判定するための回路であり、センスアンプを含んでいる。
次に、このような構造を持つメモリセルアレイに関して、MTJ素子に選択的にデータを書き込むための原理について説明する。
まず、図34のメモリセルアレイにおいて、例えば、MTJ素子aに対して書き込みを行う場合を考える。
この場合、例えば、選択された書き込みワード線WWL1に、例えば、紙面上、下から上へ向かう書き込み電流Ixを流すと、MTJ素子a,MTJb,MTJc,・・・に対しては、紙面を表から裏に突き抜ける方向に磁場が作用する。
ここで、常温においては、この磁場によっては、MTJ素子の磁化の反転が起こらないように設定しておく。
従って、熱アシストが加えられないMTJ素子b,MTJc,・・・に対しては、書き込み(磁化の反転)が起こることはない。
一方、MTJ素子aに対しては、制御信号φ11を“H”にすることにより熱アシスト電流を与え、MTJ素子aに対する書き込み(磁化の反転)が起こる状態にする。
このように、1本の書き込み線を用いた場合でも、選択されたMTJ素子aのみに対して熱アシストを加えることにより、選択的な書き込みが可能になる。
次に、図35のメモリセルアレイにおいて、例えば、MTJ素子aに対して書き込みを行う場合を考える。
この場合、例えば、選択された書き込みビット線WBL1に、例えば、紙面上、左から右へ向かう書き込み電流Iyを流すと、MTJ素子a,MTJb,MTJc,・・・に対しては、紙面を表から裏に突き抜ける方向に磁場が作用する。
ここで、常温においては、この磁場によっては、MTJ素子の磁化の反転が起こらないように設定しておく。
従って、熱アシストが加えられないMTJ素子b,MTJc,・・・に対しては、書き込み(磁化の反転)が起こることはない。
一方、MTJ素子aに対しては、読み出しワード線ドライバ35を用いて、読み出しワード線RWL1を“H”にすることにより熱アシスト電流を与え、MTJ素子aに対する書き込み(磁化の反転)が起こる状態にする。
ここで、読み出しワード線RWL1を“H”にすると、読み出しワード線RWL1に接続される1ロウ内の全てのMOSトランジスタ(読み出し選択トランジスタ)がオンになる。
しかし、その1ロウ内の複数のMTJ素子のうち、MTJ素子a以外のMTJ素子については、書き込みビット線WBL1から十分に離れているため、書き込みが起こることはない。
また、例えば、カラム選択スイッチ(セレクタ)のオン/オフを制御することにより、読み出しビット線RBL1のみに、熱アシスト電流が流れるようにすれば、読み出しワード線RWL1に接続される全てのMOSトランジスタがオンになっても、熱アシスト電流は、選択されたMTJ素子aのみに流れることになる。
このように、1本の書き込み線を用いた場合でも、選択されたMTJ素子aのみに対して熱アシストを加えることにより、選択的な書き込みが可能になる。
(3) 回路例3
図36は、メモリセルアレイの回路例3を示している。
この回路例3は、互いに交差する2本の書き込み線を用いてMTJ素子に対する書き込みを行う例であるが、これら2本の書き込み線が交差部で電気的に接続されている点に特徴を有する。この例では、非選択のMTJ素子を経由したいわゆる電流の回り込みを防ぐため、2本の書き込み線の交差部には少なくともMTJと同程度以上の抵抗体を挿入する事が好ましい。
書き込みワード線WWL1,WWL2,WWL3,・・・は、x方向に延び、書き込みビット線WBL1,WBL2,WBL3,・・・は、y方向に延びている。書き込みワード線WWL1,WWL2,WWL3,・・・と書き込みビット線WBL1,WBL2,WBL3,・・・は、互いに交差(例えば、直交)し、かつ、その交差部において電気的に接続されている。
MTJ素子は、書き込みワード線WWL1,WWL2,WWL3,・・・と書き込みビット線WBL1,WBL2,WBL3,・・・との交差部に配置され、全体としては、アレイ状に配置されている。
書き込みワード線WWL1,WWL2,WWL3,・・・の一端には、書き込みワード線バイアス回路・デコーダ31A’’が接続され、その他端には、書き込みワード線ドライバ/シンカー・デコーダ31B’’が接続される。
書き込みビット線WBL1,WBL2,WBL3,・・・の一端には、書き込みビット線バイアス回路・デコーダ32A’’が接続され、その他端には、書き込みビット線ドライバ/シンカー・デコーダ・セレクタ32B’’が接続される。
書き込みワード線ドライバ/シンカー・デコーダ31B’’及び書き込みビット線ドライバ/シンカー・デコーダ32B’’は、書き込み時に、書き込みデータに応じて、選択された書き込みワード線WWLi(選択)及び選択された書き込みビット線WBLj(選択)に流す書き込み電流の向きを決定する。
書き込みワード線バイアス回路・デコーダ31A’’は、書き込み時に、選択された書き込みワード線WWLi(選択)以外の全ての非選択の書き込みワード線にバイアス電圧を与え、書き込み電流が書き込みワード線WWLi(選択)及び書き込みビット線WBLj(選択)以外の書き込みワード/ビット線に流れることを防止する。
書き込みビット線バイアス回路・デコーダ32A’’も、同様に、書き込み時に、選択された書き込みビット線WBLj(選択)以外の全ての非選択の書き込みビット線にバイアス電圧を与え、書き込み電流が書き込みワード線WWLi(選択)及び書き込みビット線WBLj(選択)以外の書き込みワード/ビット線に流れることを防止する。
電流生成回路33は、読み出し時に、選択されたMTJ素子に与える読み出し電流を生成する。また、電流生成回路33は、書き込み時に、選択された書き込みワード線WWLi(選択)及び選択された書き込みビット線WBLj(選択)に流す書き込み電流を生成すると共に、書き込み対象となる選択されたMTJ素子に与える熱アシスト電流を生成する。
本例では、書き込み対象となる選択されたMTJ素子のみに熱アシスト電流を供給するために、例えば、MTJ素子にMOSトランジスタを接続し、このMOSトランジスタのオン/オフを、制御信号φ11,φ12,φ13,・・・により制御する。つまり、選択されたMTJ素子に対応する制御信号φijのみが“H”になるため、書き込み対象となる選択されたMTJ素子のみに熱アシスト電流を与えることができる。
尚、MOSトランジスタとしては、図9の例で述べたように、熱アシストのための専用のトランジスタであってもよいし、読み出し時に使用する読み出し選択トランジスタを用いてもよい。
後者の場合、例えば、図37に示すように、通常、読み出し選択トランジスタのゲートは、読み出しワード線RWL1,RWL2,RWL3,・・・に接続されている。従って、書き込み時、熱アシスト電流は、選択された読み出しワード線RWLi(選択)に接続される1ロウ内の複数のMTJ素子に供給されることになる。
しかし、本例では、このような場合であっても、書き込み電流の流れる経路を工夫することにより、選択されたMTJ素子のみに対して、選択的に書き込みを行うことができる(これについては、後述する)。
読み出し回路34は、読み出し時に、MTJ素子のデータ値を判定するための回路であり、センスアンプを含んでいる。
次に、このような構造を持つメモリセルアレイに関して、MTJ素子に選択的にデータを書き込むための原理について説明する。
図38は、図36及び図37の回路図からメモリセルアレイ部分のみを取り出したものである。
書き込みワード線と書き込みビット線とにより格子が形成され、その格子間にMTJ素子が規則的に配置されている。書き込みワード線と書き込みビット線は、交差部において互いに電気的に接続されている。ここで、電流の回り込みを防ぐため、交差部には少なくともMTJと同程度以上の抵抗体を挿入することが好ましい。
選択されたMTJ素子は、MTJ素子aであると仮定する。
選択された書き込みワード線WWLi(選択)に、例えば、紙面上、下から上へ向かう書き込み電流Iwを流すと、この書き込み電流Iwは、選択された書き込みビット線WBLj(選択)を、紙面上、左から右に流れ、接地点Vssに吸収される。
書き込みワード線WWLi(選択)を流れる書き込み電流により、MTJ素子a,MTJbには、紙面を表から裏に突き抜ける方向に磁場が作用し、MTJ素子c,MTJdに対しては、紙面を裏から表に突き抜ける方向に磁場が作用する。
また、書き込みビット線WBLj(選択)を流れる書き込み電流により、MTJ素子aに対しては、紙面を表から裏に突き抜ける方向に磁場が作用し、MTJ素子eに対しては、紙面を裏から表に突き抜ける方向に磁場が作用する。
その結果、MTJ素子aに関しては、ワード線WWLi(選択)を流れる電流により生じる磁場と、書き込みビット線WBLj(選択)を流れる電流により生じる磁場との合成磁場が作用する。
ここで、常温においては、この合成磁場によっては、MTJ素子の磁化の反転が起こらないように設定しておく。
従って、熱アシストが加えられず、しかも、書き込みワード線WWLi(選択)に流れる書き込み電流により生じる磁場のみが作用するMTJ素子b,MTJc,MTJdに対しては、書き込み(磁化の反転)が起こることはない。
また、熱アシストが加えられず、しかも、書き込みビット線WBLj(選択)に流れる書き込み電流により生じる磁場のみが作用するMTJ素子eに対しても、書き込み(磁化の反転)が起こることはない。
一方、MTJ素子aに対しては、熱アシスト電流を与え、合成磁場によりMTJ素子aに対する書き込み(磁化の反転)が起こる状態にする。
ここで、熱アシストは、図36に示すようなメモリセルアレイ構造を採用すれば、MTJ素子aのみに与えることができる。
また、図37に示すようなメモリセルアレイ構造を採用した場合には、熱アシストは、MTJ素子aが属するロウ内の複数のMTJ素子a,MTJb,MTJeについて与えられる。
しかし、MTJ素子bに関しては、書き込みワード線WWLi(選択)を流れる書き込み電流により発生する磁場のみが作用し、MTJ素子eに関しては、書き込みビット線WBLj(選択)を流れる書き込み電流により発生する磁場のみが作用する。
このため、MTJ素子b,MTJeに関しては、熱アシストが加えられても、書き込み(磁化の反転)が起こることはない。
このように、互いに交差する2本の書き込み線をその交差部で電気的に接続した場合においても、熱アシストを利用することにより、選択的な書き込みが可能になる。
9. 変形例
以下、MTJ素子とヨーク付き書き込み線との関係について、いくつかの変形例を説明することにする。
(1) 変形例1
図39は、本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリの変形例1を示している。
この変形例1は、同一方向に延びる2本の書き込み線の間にMTJ素子を配置した点に特徴を有する。
MTJ素子は、垂直磁化タイプである。2本の書き込み線42は、共に、x方向に延びており、かつ、MTJ素子を横方向(y方向)から挟み込んでいる。書き込み線42の周囲には、絶縁層21を介して、ヨーク材20a,20bが配置される。
本変形例では、ヨーク材20a,20bに対して絶縁層21をxy平面に平行に挿入することにより、ヨーク材20a,20bを電気的に分離しているが、絶縁層21は、例えば、xz平面に平行に挿入してもよい。
ヨーク材20a,20bは、書き込み線42を取り囲むと共に、MTJ素子を上下方向(z方向)から挟み付けている。ヨーク材20a,20bは、絶縁層21により互いに絶縁されている。
MTJ素子の下部のヨーク材20aは、選択スイッチとしてのNチャネルMOSトランジスタ32を経由して接地点に接続される。このトランジスタ32のオン/オフは、制御信号φijにより制御される。上部のヨーク材20bは、読み出し線41に接続される。
尚、トランジスタ32は、MTJ素子ごとに設けられる。
従って、書き込み時には、選択されたMTJ素子のみに対して熱アシスト電流を流すことができる。
トランジスタ32は、熱アシストのためのみに使用する専用のトランジスタであってもよいし、また、読み出し時にMTJ素子を選択するための読み出し選択トランジスタとして使用してもよい。
本例では、同一方向に延びる2本の書き込み線42の間にMTJ素子が配置される。この場合、例えば、これら2本の書き込み線42に逆向きの書き込み電流を流すと、これら書き込み電流により発生し、MTJ素子に作用する磁場は、同じ方向を向くことになる。
従って、1本の書き込み線に流れる書き込み電流の値が小さくても、2本の書き込み線に流れる電流により発生する磁場と熱アシスト書き込み手法を採用することにより、効率よく、書き込みを行うことができる。
尚、MTJ素子とヨーク材20a,20bの間には、Taなどの金属、又は、MgOなどの絶縁体が配置されていてもよい。
(2) 変形例2
図40は、本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリの変形例2を示している。
この変形例2は、2つのMTJ素子の間に書き込み線を配置し、これらMTJ素子がこの書き込み線を共有している点に特徴を有する。
MTJ素子は、垂直磁化タイプである。書き込み線42は、x方向に延びている。書き込み線42の一方側には、MTJ素子1が配置され、他方側には、MTJ素子2が配置される。MTJ素子1,MTJ2は、書き込み線42を横方向(y方向)から挟み込んでいる。
書き込み線42の周囲には、絶縁層21を介して、ヨーク材20a,20bが配置される。ヨーク材20a,20bは、書き込み線42を取り囲むと共に、MTJ素子1,MTJ2を上下方向(z方向)から挟み付けている。ヨーク材20a,20bは、絶縁層21により互いに絶縁されている。
本変形例では、ヨーク材20aに対して絶縁層21をxz平面に平行に挿入することにより、ヨーク材20aを2つに分けているが、絶縁層21は、例えば、xy平面に平行に挿入してもよい。
MTJ素子の下部のヨーク材20aは、選択スイッチとしてのNチャネルMOSトランジスタ32、32’を経由して接地点に接続される。このトランジスタのオン/オフは、制御信号φij,φij’により制御される。上部のヨーク材20bは、読み出し線41に接続される。
尚、選択スイッチ32,32’は、MTJ素子1,MTJ2に対応して設けられる。
従って、書き込み時には、選択されたMTJ素子1,MTJ2のみに対して熱アシスト電流を流すことができる。
選択スイッチ32,32’は、熱アシストのためのみに使用する専用のトランジスタであってもよいし、また、読み出し時にMTJ素子を選択するための読み出し選択トランジスタとして使用してもよい。
本例では、例えば、MTJ素子1に対して書き込みを実行する場合、書き込み線42に書き込みデータに応じた向きの書き込み電流を流す。同時に、選択スイッチ32をオンにし、MTJ素子1に熱アシスト電流を供給する。これにより、MTJ素子1の温度が上昇し、磁化の反転に必要な反転磁界の値が小さくなる。
また、例えば、MTJ素子2に対して書き込みを実行する場合、書き込み線42に書き込みデータに応じた向きの書き込み電流を流す。同時に、選択スイッチ32’をオンにし、MTJ素子2に熱アシスト電流を供給する。これにより、MTJ素子2の温度が上昇し、磁化の反転に必要な反転磁界の値が小さくなる。
ここで、MTJ素子1,MTJ2に同一データを書き込む場合、MTJ素子1に対する書き込み時に書き込み線42に流す書き込み電流の向きと、MTJ素子1に対する書き込み時に書き込み線42に流す書き込み電流の向きとは、逆になることに注意する。
尚、MTJ素子とヨーク材20a,20bの間には、Taなどの金属、又は、MgOなどの絶縁体が配置されていてもよい。
本例によれば、2つのMTJ素子の間に書き込み線を配置しているため、メモリセルアレイ内の配線数を削減でき、メモリ容量の増大に貢献できる。
(3) 変形例3
図41は、本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリの変形例3を示している。
この変形例3は、互いに交差する2本の書き込み線の交差部にMTJ素子を配置し、かつ、これら2本の書き込み線の周囲に、磁場をMTJ素子に収束させるためのヨーク材を配置した点に特徴を有する。
MTJ素子は、垂直磁化タイプである。書き込みワード線WWLiは、x方向に延び、書き込みビット線WBLjは、y方向に延びている。書き込みワード線WWLiと書き込みビット線WBLjは、互いに交差し、その交差部にMTJ素子が配置される。
書き込み線ワード線WWLiの周囲には、絶縁層21を介して、ヨーク材20a,20bが配置される。ヨーク材20a,20bは、書き込みワード線WWLiを取り囲むと共に、MTJ素子を上下方向(z方向)から挟み付けている。ヨーク材20a,20bは、絶縁層21により互いに絶縁されている。
書き込み線ビット線WBLjの周囲にも、ヨーク材20a,20bが配置される。ヨーク材20a,20bは、書き込みビット線WBLjを取り囲むと共に、MTJ素子を上下方向(z方向)から挟み付けている。ヨーク材20a,20bは、絶縁層21により互いに絶縁されている。
MTJ素子の下部のヨーク材20aは、選択スイッチとしてのNチャネルMOSトランジスタ32を経由して接地点に接続される。このトランジスタ32のオン/オフは、制御信号φijにより制御される。上部のヨーク材20bは、読み出しワード線RWLiに接続される。
尚、トランジスタ32は、MTJ素子ごとに設けられる。
従って、書き込み時には、選択されたMTJ素子のみに対して熱アシスト電流を流すことができる。
トランジスタ32は、熱アシストのためのみに使用する専用のトランジスタであってもよいし、また、読み出し時にMTJ素子を選択するための読み出し選択トランジスタとして使用してもよい。
(4) 変形例4
図42は、本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリの変形例4を示している。
この変形例4は、MTJ素子のフリー層11とヨーク材20aとの間に引き出し線18を設け、かつ、MTJ素子のピン層12とヨーク材20bとの間に引き出し線19を設けた点にある。
そして、読み出し時に、例えば、引き出し線18,19の間に一定電圧を印加し、このときにMTJ素子に流れる電流(I又はI+ΔI)を検出することにより、MTJ素子に記憶されたデータを読み出すことができる。
また、これに代えて、読み出し時に、例えば、MTJ素子に一定電流を供給し、このときに引き出し線18,19の間に生じる電圧(V又はV+ΔV)を検出することにより、MTJ素子に記憶されたデータを読み出すこともできる。
(5) その他
図43は、MTJ素子の書き込み線からの距離と発生磁界との関係について示している。
MTJ素子としては、垂直磁化タイプを対象とする。この場合、
HI × Iw > 4πN・M
を満たすように構成すれば、垂直磁化タイプMTJ素子に対して書き込みが可能になる。
ここで、HIは、単位電流(1mA)により発生する磁場の大きさを示し、Iwは、書き込み電流の大きさを示している。また、Nは、反磁界係数を示し、Mは、フリー層の飽和磁化を示している。
この関係によれば、Nの値を小さくすればするほど、また、書き込み線とMTJ素子との距離を短くすればするほど、小さな書き込み電流Iwでも書き込みを行えることが容易に分かる。
10. 適用例
最後に、本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリの適用例について説明する。
磁気ランダムアクセスメモリは、高集積化に適し、かつ、高速で、半永久的に書き換えが可能である、という特徴を持つ理想的なメモリである。従って、磁気ランダムアクセスメモリは、様々なシステムへの適用が検討されている。以下では、そのうちの代表的なものについて示すことにする。
(1) 適用例1
図44は、DSL(Digital Subscriber line)モデムの例を示している。
このDSLモデム100は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)101、アナログ−デジタルコンバータ(A/D)・デジタル−アナログコンバータ(D/A)102、及び、アナログフロントエンド(AFE)103を含んでいる。
発振器(OSC)104により、このDSLモデム100の動作タイミングを制御するクロック信号CLKが生成される。
不揮発性メモリ(EEPROM)105は、例えば、回線コードプログラムなどの種々の制御プログラムを記憶する。この制御プログラムに基づいて、DSLモデム100の基本動作が決定される。
ここで、一般的なDSLモデム100では、データを一時的に記憶するためのメモリとしてRAM、即ち、SRAM、又は、DRAMを使用する。
しかし、適用例1では、このような従来のRAMに代えて、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)106を使用する。磁気ランダムアクセスメモリ106の構成例としては、図46に示すようになる。
本発明の例によれば、大きなメモリ容量(例えば、256メガビット)を持つ低消費電力(書き込み電流が小さい)の磁気ランダムアクセスメモリ106を提供することができる。しかも、磁気ランダムアクセスメモリ106は、DRAMやSRAMと同程度の高速書き込み/高速読み出しが可能で、かつ、半永久的に書き換えが可能である。
つまり、このようなDSLモデム100に使用するRAMとして、本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリ106を、従来のSRAM又はDRAMに置き換えて適用することができる。
尚、適用例1では、制御プログラムを記憶するメモリとして不揮発性メモリ(EEPROM)105を使用しているが、この不揮発性メモリ105についても、本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)に置き換えることもできる。
言い換えると、DSLモデム100内で使用されるメモリに関して、これらの全てを、本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリに置き換えることも可能である。
(2) 適用例2
図45は、携帯電話の例を示している。
携帯電話200の通信機能を実現する部分は、送受信アンテナ201、送受信のための共用部202、受信部203、ベースバンド処理部204、音声コーデックとして用いられるデジタルシグナルプロセッサ(DSP)205、音声スピーカ206、マイクロホン207、送信部208、及び、周波数シンセサイザ209を含んでいる。
携帯電話200の制御機能を実現する部分は、音声データ再生処理部211、LCDコントローラ213、CPU221、ROM222、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)223、及び、フラッシュメモリ224を含んでいる。
これら通信機能を実現する部分と制御機能を実現する部分とは、バス225を介して互いに接続されている。
ROM222は、例えば、制御プログラムや、表示フォントなどの予め用意しておかなければならないデータを記憶する。CPU221は、この制御プログラムに基づいて、携帯電話200の基本動作を決定する。
フラッシュメモリ224は、例えば、携帯電話200の電源がオフ状態にされた場合に、設定条件などのデータを不揮発に記憶しておくためのメモリである。携帯電話200の電源がオン状態になると、フラッシュメモリ224からデータが読み出され、初期設定が行われる。
ここで、一般的な携帯電話200では、データを一時的に記憶するためのメモリとして、高速動作に適しているRAM、即ち、SRAM、又は、DRAMを使用する。
しかし、適用例2では、このような従来のRAMに代えて、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)223を使用する。磁気ランダムアクセスメモリ223の構成例としては、図46に示すようになる。
本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリ223よれば、大きなメモリ容量(例えば、256メガビット)と低消費電力(書き込み電流が小さい)とを同時に実現できる。しかも、磁気ランダムアクセスメモリ223は、DRAMやSRAMと同程度の高速書き込み/高速読み出しが可能で、かつ、半永久的に書き換えが可能である。
つまり、このような携帯電話200に使用するRAMとして、本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリ223を、従来のSRAM又はDRAMに置き換えて適用することができる。
尚、適用例2では、制御プログラムを記憶するメモリとしてROM222を使用しているが、このROM222についても、本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)に置き換えることもできる。
また、電源オフ時に、設定データなどのデータを記憶しておくためにフラッシュメモリ224を使用しているが、このフラッシュメモリ224についても、本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)に置き換えることもできる。
言い換えると、携帯電話200内で使用されるメモリに関して、これらの全てを、本発明の例に関わる磁気ランダムアクセスメモリに置き換えることも可能である。
尚、図45において、212及び236は、外部端子、214は、LCD、215は、リンガ、231、233及び235は、インターフェース(I/F)部、232は、外部メモリスロット、240は、メモリカードなどの外部メモリ、234は、キー操作部である。
(3) 適用例3
図47は、メモリカードの例を示している。
磁気ランダムアクセスメモリ(チップ)401は、メモリカード400内に搭載される。メモリカード400は、例えば、外部磁場を遮蔽する機能を持つセラミック材から構成される。
メモリカード400には、開口部402が設けられており、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)401は、その開口部402に配置されている。また、開口部402は、シャッター403により閉じることができる。シャッター403も、例えば、外部磁場を遮蔽する機能を持つセラミック材から構成される。
メモリカード400が単独で存在するとき、例えば、図45の携帯電話200から外部メモリ(メモリカード)240を取り出したときには、メモリカード400のシャッター403は、閉じた状態となる。これにより、外部磁場から磁気ランダムアクセスメモリが保護される。
メモリカード400が携帯電子機器などの電子機器に搭載されたとき、例えば、図45の携帯電話200の外部メモリスロット232に外部メモリ(メモリカード)240が挿入されたときには、メモリカード400のシャッター403は、開いた状態となる。これにより、磁気ランダムアクセスメモリに対するデータの書き込み/消去が行われる。
外部端子404は、例えば、メモリカード400の一面側において、メモリカード400の一辺に沿った形で配置される。
(4) 適用例4
図48及び図49は、データ転写装置の第1例を示している。
このデータ転写装置は、メモリカードをスロット内に挿入する挿入タイプデータ転写装置に関する。
メモリカード400は、適用例3で説明したメモリカードである。メモリカード400は、データ転写装置500のスロット501内に挿入され、固定装置503により固定される。
メモリカード400は、スロット501内で固定された状態で、データ転写装置500内に取り付けられたメモリカード505と対向する。
書き換え制御部504は、データを生成し、このデータは、予め、リード線502を経由してメモリカード505に記憶される。そして、メモリカード400がスロット501内に挿入されると、メモリカード505のデータがメモリカード400に転写される。
(5) 適用例5
図50は、データ転写装置の第2例を示している。
このデータ転写装置は、メモリカードを凹部に嵌め込む嵌め込みタイプデータ転写装置に関する。
メモリカード400は、適用例3で説明したメモリカードである。メモリカード400は、データ転写装置500の凹部に嵌め込まれ、固定装置503により固定される。
メモリカード400は、凹部で固定された状態において、データ転写装置500内に取り付けられたメモリカード505と対向する。
書き換え制御部504は、データを生成し、このデータは、予め、リード線502を経由してメモリカード505に記憶される。そして、メモリカード400が凹部に嵌め込まれると、メモリカード505のデータがメモリカード400に転写される。
(6) 適用例6
図51は、データ転写装置の第3例を示している。
このデータ転写装置は、メモリカードを、内部からスライドして出てくる受け皿に配置するスライドタイプデータ転写装置に関する。
メモリカード400は、適用例3で説明したメモリカードである。まず、スイッチボタン506を押すと、データ転写装置500の内部から受け皿507がスライドして飛び出してくる。この受け皿507上にメモリカード400を搭載した後、受け皿507をデータ転写装置500内に押し込む。
メモリカード400を搭載した受け皿507がデータ転写装置500内に押し込まれると、メモリカード400が固定装置503により固定される。
メモリカード400は、データ転写装置500内で固定された状態でメモリカード505と対向する。
書き換え制御部504は、データを生成し、このデータは、予め、リード線502を経由してメモリカード505に記憶される。そして、メモリカード400がデータ転写装置500内で固定されると、メモリカード505のデータがメモリカード400に転写される。
11. その他
本発明の例は、上述の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、構成要素を変形して具体化できる。また、上述の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
11,12: 強磁性層、 13: トンネルバリア(非磁性層)、 14,15: 下地バッファ層、 16: 金属層、 17: ヨークティップ、 18,19: 引き出し線、 20,20a,20b: ヨーク材、 31A,31B: 書き込みワード線ドライバ/シンカー・デコーダ、 32,32’: 選択スイッチ、 32A: 書き込みビット線ドライバ/シンカー・デコーダ、 32B: 書き込みビット線ドライバ/シンカー・デコーダ・セレクタ、 33: 電流発生回路、 34: 読み出し回路、 35: 読み出しワード線ドライバ、 41,41A,41B: 読み出し線、 42,42A,42B,43: 書き込み線、 MTJ: MTJ素子、 Is1,Is2: 電流源、 SW1,SW2,SW3: スイッチ、 CSW: カラム選択スイッチ、 RSW: 読み出し選択スイッチ。