JP2006079904A - 高分子電解質型燃料電池およびその製造方法 - Google Patents

高分子電解質型燃料電池およびその製造方法 Download PDF

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安男 武部
Makoto Uchida
誠 内田
Yasuhiro Kamiyama
康博 上山
Yoshihiro Hori
堀  喜博
Mikiko Yoshimura
美貴子 吉村
Yoichiro Tsuji
庸一郎 辻
Yasuhiro Seki
安宏 関
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Abstract

【課題】 高分子電解質膜を通してカソードとアノード間でガスのクロスオーバーが発生することにより、過酸化水素を生成し、それがラジカル化して高分子電解質膜を分解していた。
【解決手段】 水素イオン伝導性の高分子電解質膜11と、高分子電解質膜11を挟むように配置された、一対のアノード及びカソード触媒層13、14と、前記一対の触媒層を挟むように配置された、一対のアノード及びカソードガス拡散層16、17とを備えた、高分子電解質型燃料電池の製造方法であって、過酸化物の分解反応を促進するための触媒微粒子がコロイド状に分散されたコロイド液を調整するコロイド液調整工程と、前記調整されたコロイド液を用いて、アノードガス拡散層17とカソードガス拡散層16の間に過酸化物分解層12を形成する過酸化物分解層形成工程とを備えた、高分子電解質型燃料電池の製造方法。
【選択図】 図1

Description

高分子電解質型燃料電池に関し、特に燃料電池中で発生するラジカルを分解して耐久性を向上させる技術に関する。
高分子電解質型燃料電池はアノードに燃料として水素やメタノールを供給し、カソードに酸化剤として酸素を含む空気などを供給して発電するものである。
高分子電解質型燃料電池において、高分子電解質膜のイオン伝導抵抗を十分に低減して十分な電池特性を得ることを意図して、高分子電解質膜を設定(膜圧を薄くする等)する場合には、高分子電解質膜中を通じて還元剤となる反応ガス(水素ガス、メタノールなど)及び酸化剤となる反応ガス(酸素ガスなど)のクロスオーバーが起こりやすくなる。
このクロスオーバーが起こると、電極での過酸化物やそのラジカルの発生による高分子電解質膜の劣化の進行の問題が生じる。
特に、高分子電解質膜の劣化が進行すると十分な電池寿命を得ることが困難となる。そのため、上記クロスオーバーに起因する高分子電解質膜の劣化の進行を防止することを意図した様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1には、クロスオーバーする水素ガス及び酸素ガスを反応させて水に変換するための白金等の触媒(電極反応用の電極触媒とは別の触媒)を用いることにより、ラジカルの生成を防止することを意図した技術が提案されている。ここでは、触媒層を形成する方法として、高分子電解質膜の表面にスパッタリングにより上記触媒を担持する方法により高分子電解質膜の表面に上記触媒からなる触媒層を形成した態様と、電極を白金アンミン塩を含む液中に浸漬させ、次いで還元処理する方法により電極触媒層中に上記触媒を電子導電的に絶縁された状態で含有させた態様が提案されている。
また、例えば特許文献2には、クロスオーバーにより電極で発生する過酸化物の分解を促進する過酸化物分解触媒(Ru、MnO等)を、アノード及びカソードのうちの少なくとも一方の触媒層に含有させることにより、高分子電解質膜の劣化の防止を意図した技術が提案されている。
更に、例えば特許文献3には、水素と酸素との反応を促進して水を生成する触媒を有する触媒層を、高分子電解質膜とアノード電極触媒層との間、及び、高分子電解質膜とカソード電極触媒層との間のうちの少なくとも一方に配置することで高分子電解質膜の劣化の防止を意図した技術が提案されている。この場合、触媒層は高分子でコーティングした触媒粒子と溶媒とを含む混合液により形成されている。
また、上記の触媒をアノード及びカソードのうち少なくとも一方の電極触媒層に含有させることにより高分子電解質膜の劣化の防止を意図した技術も提案されている。この場合、電極触媒層は、高分子でコーティングした触媒粒子と、電極触媒と、溶媒とを含む混合液により形成されている。
特開平6−103992号公報 特開2003−123777号公報 特開2003−109602号公報
しかしながら、上記特許文献1によるスパッタリングによる触媒金属の担持方法では、スパッタリング中に真空状態を維持する大掛かりな装置が必要になりコスト高の原因になっていた。また真空状態に減圧してからスパッタリングするために製造に時間がかかっていた。また、スパッタリング時の高エネルギー粒子の衝突により電解質膜が化学的分解などのダメージを受ける可能性があり、更に、スパッタ時に真空状態におかれることにより高分子電解質膜が変成する可能性があった。
また、白金アンミン塩等の金属錯体を還元する方法では、還元処理後にリガンドのイオンや対イオンなどの不要成分を除去する必要があり、製造工程が煩雑になっていた。また、不要成分を十分に除去しないと発電性能の低下を招き、更に、還元剤により電解質膜が化学的分解などのダメージを受ける可能性があった。
また、スパッタリングや金属錯体の還元によって触媒金属粒子を作る方法では、粒子径の制御は難しく、粒径の分布も幅広いものになってしまう。触媒金属の粒径が大きすぎると触媒の比表面積が小さくなり、多量の触媒金属を担持せねばならず、製造コストが高くなっていた。一方、触媒粒子の粒径が小さすぎると、過酸化物分解反応に対する触媒活性が低下する可能性もあった。
上記従来の課題を考慮して、本発明の目的は、製造工程をより簡易にし、より低コスト化し、高分子電解質膜に与える化学分解等のダメージをより軽減し、発電性能の低下をより防止し、又は、粒子径をより制御することが可能な高分子電解質型燃料電池の製造方法及びそれを用いた高分子電解質型燃料電池を提供することである。
上記目的を達成するために、第1の本発明は、
水素イオン伝導性の高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜を挟むように配置された、一対のアノード及びカソード触媒層と、前記一対の触媒層を挟むように配置された、一対のアノード及びカソードガス拡散層とを備えた、高分子電解質型燃料電池の製造方法であって、
過酸化物の分解反応を促進するための触媒微粒子がコロイド状に分散されたコロイド液を調整するコロイド液調整工程と、
前記調整されたコロイド液を用いて、前記アノードガス拡散層と前記カソードガス拡散層の間に過酸化物分解層を形成する過酸化物分解層形成工程とを備えた、高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第2の本発明は、
前記過酸化物分解層形成工程は、前記アノード触媒層と前記高分子電解質膜との間、及び/又は前記カソード触媒層と前記高分子電解質膜との間に形成する工程である、第1の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第3の本発明は、
前記過酸化物分解層形成工程は、前記過酸化物分解層を前記高分子電解質膜の内部に形成する工程である、第1又は2の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第4の本発明は、
前記過酸化物分解層を、前記アノード及びカソードに対して電子導電的に絶縁するための絶縁処理工程を更に備えた第1の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第5の本発明は、
前記絶縁処理工程は、
水素イオン伝導性の高分子を含む液を前記過酸化物分解層上に塗布又は噴霧する塗布又は噴霧工程と、前記塗布又は噴霧した前記液を乾燥する乾燥工程とを有する、第4の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第6の本発明は、
前記過酸化物分解層を、前記アノード及びカソードに対して電子導電的に絶縁するための絶縁処理工程を更に備え、
前記絶縁処理工程は、
水素イオン伝導性の高分子を持った絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層を、前記過酸化物分解層、前記アノード触媒層、又は前記カソード触媒層に接合する接合工程とを有する、第2の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第7の本発明は、
前記過酸化物分解層形成工程は、
支持体上に、前記コロイド液を塗布又は噴霧する塗布又は噴霧工程と、
前記塗布又は噴霧した前記コロイド液を乾燥する乾燥工程とを有し、
前記支持体上とは、前記高分子電解質膜に対向する、前記アノード若しくはカソード触媒層上、又は前記高分子電解質膜上、又は前記絶縁層上である、第2又は6の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第8の本発明は、
前記過酸化物分解層形成工程は、
支持体上に、前記コロイド液を塗布又は噴霧する塗布又は噴霧工程と、
前記塗布又は噴霧した前記コロイド液を乾燥する乾燥工程と、
前記支持体上に形成した前記過酸化物分解層を、前記高分子電解質上、前記高分子電解質膜に対向する、前記アノード及びカソード触媒層上、及び前記絶縁層上のうちの少なくとも1つに転写する転写工程とを有し、
前記支持体は、前記コロイド液に溶解しない、合成樹脂を有するシート、セラミクスを有するシート、及び金属を有するシートの何れかである、第2又は6の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第9の本発明は、
前記過酸化物分解層形成工程は、
支持体上に、前記コロイド液を塗布又は噴霧する塗布又は噴霧工程と、
前記塗布又は噴霧した前記コロイド液を乾燥する乾燥工程とを有し、
前記支持体上とは、前記高分子電解質膜の素材膜上である、第3の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第10の本発明は、
前記過酸化物分解層形成工程は、
支持体上に、前記コロイド液を塗布又は噴霧する塗布又は噴霧工程と、
前記塗布又は噴霧した前記コロイド液を乾燥する乾燥工程と、
前記支持体上に形成した前記過酸化物分解層を、前記高分子電解質膜の素材膜上に転写する転写工程とを有し、
前記支持体は、前記コロイド液に溶解しない、合成樹脂を有するシート、セラミクスを有するシート、及び金属を有するシートの何れかである、第3の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第11の本発明は、
前記過酸化物分解層を、前記アノード及びカソードに対して電子導電的に絶縁するための絶縁処理工程を更に備え、
前記絶縁処理工程は、前記高分子電解質膜の素材膜上に形成された前記過酸化物分解層上に、他の高分子電解質膜の素材膜を接合する接合工程を有する、第9又は10の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第12の本発明は、
前記絶縁処理工程とは、前記触媒微粒子の表面を高分子電解質によってコーティングする工程である、第4の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第13の本発明は、
前記過酸化物分解層は、前記アノード触媒層及び/又は前記カソード触媒層と兼ねられている、第1の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第14の本発明は、
前記触媒微粒子は、金属を有しており、
前記コロイド液調整工程は、
前記触媒微粒子をコロイド状に分散するための溶媒と、前記金属の塩との混合液を調整する混合液調整工程と、
前記金属塩を還元するための還元剤を、前記混合液に添加する還元剤添加工程とを有する、第1の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第15の本発明は、
前記触媒微粒子は、金属を有しており、
前記コロイド液調整工程は、
前記触媒微粒子をコロイド状に分散するための溶媒と、前記金属塩との混合液を調整する混合液調整工程と、
前記金属塩を酸化するための酸化剤を、前記混合液に添加する酸化剤添加工程とを有する、第1の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第16の本発明は、
前記コロイド液調整工程は、
前記還元剤又は酸化剤添加工程後に、前記混合液をイオン交換体を用いてイオン交換処理を行うイオン交換処理工程を更に有する、第14又は15の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第17の本発明は、
前記触媒微粒子は、白金、ルテニウム、ロジウム、及びパラジウムから選択される少なくとも1種類の金属、前記金属の酸化物、前記金属の合金、又は前記合金の酸化物の微粒子である、第1の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第18の本発明は、
前記溶媒は、水と、炭素数1〜4の何れかのアルコールから選択される少なくとも1種類とを含む、第14又は15の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第19の本発明は、
前記過酸化物分解層に含まれる前記触媒微粒子の50%以上が、1nm以上、10nm以下の粒径である、第1の本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法である。
又、第20の本発明は、
水素イオン伝導性高分子電解質膜と、
前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を挟むように配置された、一対のアノード及びカソード触媒層と、
前記一対の触媒層を挟むように配置された、一対のアノード及びカソードガス拡散層と、
前記アノード触媒層と前記高分子電解質膜の間、前記カソード触媒層と前記高分子電解質膜の間、及び前記高分子電解質膜の内部に配置されている、過酸化物の分解反応を促進するための触媒微粒子を有する過酸化物分解層とを備えた、高分子電解質型燃料電池である。
又、第21の本発明は、
水素イオン伝導性の高分子電解質膜と、
前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を挟むように配置された、一対のアノード及びカソード触媒層と、
前記一対の触媒層を挟むように配置された、一対のアノード及びカソードガス拡散層と、
前記アノードガス拡散層と前記カソードガス拡散層の間に配置された、過酸化物の分解反応を促進するための触媒微粒子を有する過酸化物分解層とを備え、
前記過酸化物分解層に含まれる前記触媒微粒子の50%以上が、1nm以上、10nm以下の径である、高分子電解質型燃料電池である。
又、第22の本発明は、
前記過酸化物分解層は、前記アノード触媒層と前記高分子電解質膜の間、及び/又は前記カソード触媒層と前記高分子電解質膜の間に配置されている、第21の本発明の高分子電解質型燃料電池である。
又、第23の本発明は、
前記過酸化物分解層は、前記高分子電解質膜の内部に配置されている、第21の本発明の高分子電解質型燃料電池である。
又、第24の本発明は、
前記過酸化物分解層は、前記アノード触媒層及び/又は前記カソード触媒層と兼ねられている、第21の本発明の高分子電解質型燃料電池である。
又、第25の本発明は、
前記過酸化物分解層と、前記アノード触媒層及び/又は前記カソード触媒層の間に、水素イオン伝導性の高分子を有する絶縁層を更に備えた、第20又は22の本発明の高分子解質型燃料電池である。
又、第26の本発明は、
前記触媒微粒子の表面が水素イオン伝導性の高分子によってコーティングされている、第20又は21の本発明の高分子電解質型燃料電池である。
又、第27の本発明は、
前記触媒微粒子は、白金、ルテニウム、ロジウム、及びパラジウムから選択される少なくとも1種類の金属、前記金属の酸化物、前記金属の合金、又は前記合金の酸化物の微粒子である、第20又は21の本発明の高分子電解質型燃料電池である。
本発明によれば、製造工程をより簡易にし、より低コスト化し、高分子電解質膜に与える化学分解等のダメージをより軽減し、発電性能の低下をより防止し、又、粒子径をより制御することが可能な高分子電解質型燃料電池及びそれを用いた高分子電解質型燃料電池を提供することが出来る。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1における高分子電解質型燃料電池の電極電解質膜接合体(以下、MEAと呼ぶ)の断面図であり、図2は、本実施の形態1における高分子電解質型燃料電池の単セルの断面図である。
図2に示す様に、本実施の形態1における高分子電解質型燃料電池は、MEA21と、MEA21を挟むように配設された一対のセパレータ22と、MEA21とセパレータ22の間にガス漏れを防止するために配設されたガスケット24とを備えている。又、セパレータ22には、酸化剤ガスや燃料ガスをMEA21へ供給するためにガス流路23が形成されている。
図1に示す様に、MEA21は、水素イオン伝導性の高分子電解質膜11を有している。この高分子電解質膜11の片面には、カソード側触媒層13が配設されており、他方の面には、過酸化物を分解するための微粒子を有する過酸化物分解層12が配設されている。この過酸化物分解層12の高分子電解質膜11の反対側には高分子電解質層15が配設されており、この高分子電解質層15の過酸化物分解層12の反対側には、アノード側触媒層14が配設されている。このアノード側触媒層14とカソード側触媒層13を挟むようにアノード側ガス拡散層17とカソード側ガス拡散層16が配設されている。このように、本実施の形態1において、過酸化物分解層12は高分子電解質膜11とアノード側触媒層14の間に形成されている。
又、過酸化物分解層12は、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウムから選ばれる金属もしくは合金、またはそれらの酸化物からなる微粒子から構成される層である。又、本実施の形態1では、過酸化物分解層12の微粒子と電極との間は、本発明の絶縁層の一例である高分子電解質層15によって電子導電的に絶縁されている。これは微粒子が電子導電的に電極とつながっていると、微粒子の電位が電極の電位と等しくなり、絶縁されている状態よりも電位が低くなる可能性がある。その場合には、過酸化水素を生成する反応が微粒子上で起こる場合がある。
以下に、本実施の形態1における高分子電解質型燃料電池の製造方法について説明する。図3は、本実施の形態1における高分子電解質型燃料電池の製造方法を示す概略図である。尚、始めに概略を説明し、続いて、過酸化物分解層12及び高分子電解質層15の製造についての詳細な説明を行う。
はじめに、図3に示す様に、ステップ1Sにて、過酸化物分解層12を形成するための溶液である、白金、ルテニウム、パラジウムから選ばれる金属のコロイドを含む溶液を調整した。このコロイドの形成方法としては、塩化白金酸等の金属錯体を水溶液中で酸化または還元し、イオン交換樹脂を通すことでコロイドを作製した。尚、詳細については後述する。
次に、ステップ2Sにて高分子電解質膜11上にマスクを取り付け、マスクを付けた面を上にして、調整した金属コロイド溶液をスプレーガンで塗布し、乾燥させた。これにより、高分子電解質膜11上に過酸化物分解層12が形成された。
次に、ステップ3Sにて過酸化物分解層12上にマスクを取り付け、高分子電解質溶液をスプレーガンで塗布した。これにより、過酸化物分解層12上を絶縁するための高分子電解質層15が形成された。
次に、アノード側の触媒ペースト及びカソード側の触媒ペーストを作成し、これらのペーストをシートの表面に塗布し、乾燥させることによりアノード側触媒層14、及びカソード側触媒層13を作成した。
作成したアノード側触媒層14を高分子電解質層15側に、カソード側触媒層13を高分子電解質膜11側に接合した(ステップ4S参照。)。
次に、撥水性を与えたカーボン不織布の一方の面に、導電性カーボン粉末とPTFE微粉末を分散させた水溶液を混合したインクを塗布することで撥水層を形成した。この撥水層を触媒層の側に接するように、アノード側及びカソード側に接合した(ステップ5S参照。)。これにより、図1に示すMEA21が作製された。
以下に、本発明のコロイド液調整工程の一例に相当するステップ1Sについて詳細に説明する。
上述した金属塩化物が溶解した溶液に還元剤を添加し、金属イオンを還元することで金属微粒子を生成する方法について、白金コロイドを例に挙げて具体的に以下に説明するが、これに限定されるものではない。
白金コロイドの調整にはコンデンサー付きの2Lの丸底フラスコを用い、これに蒸留水960mLを入れ、マントルヒーターを用いて十分沸騰させる。これに塩化白金酸水溶液(1g−Pt/L)60mLを加え(本発明の混合液調整工程の一例に相当する。)、再び沸騰するのを待って、クエン酸ナトリウム水溶液(1wt%)120mLを添加し沸騰を続ける(本発明の還元剤添加工程の一例に相当する。)。
なお、ここではコロイドの溶液として水の場合を例示したが、炭素数が1〜4のアルコール、すなわちメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールを用いてもよい。
溶液は、はじめ塩化白金酸のため淡黄色であるが、除々に黒みを帯び、クエン酸ナトリウム添加30分後には茶褐色となる。さらに還流を続けると、1時間後には黒色に変化し、その後は色の変化は認められない。反応を停止するには、反応溶液を氷水浴中に浸すことにより行う。このようにして得られた白金コロイドは非常に安定であり、冷蔵庫に保存すれば、数ヶ月は凝集が認められない。
本調整方法は非常に簡単であるが、調整にあたっては次の3点に注意する必要がある。1)容器の洗浄は注意深く行い、あらかじめ一昼夜王水に浸してから使用する。2)使用する水は特に注意を払う必要があり、イオン交換水を2回蒸留して使用する。3)反応中は常に加熱を行い、はげしく反応している状態に保つことである。これだけの注意を払えば、再現性よく、白金コロイドを調整することが出来る。
反応中はげしく沸騰させておくのは、空気中の酸素が本反応を阻害するからである。溶存酸素を除いた状態で調整することが必要であり、はげしく沸騰していない状態で調整すると、合成に長時間費やしたり、凝集が起こってしまうなどして再現性のよい結果は得られない。窒素ガスなどの不活性気体を吹き込み、溶存酸素を除去した状態では、70℃付近の低温でも調整できる。
未反応の塩化白金酸やクエン酸ナトリウムは、イオン交換樹脂アンバーライドMB−1を詰めたカラムを通すことにより除去することが出来る(本発明のイオン交換工程の一例に相当する。)。除去の程度は溶液の電気伝導度を測定することにより判断できるが、100mLのコロイド溶液ではイオン交換樹脂6mLで十分である。この際、イオン交換樹脂に吸着される白金コロイドの量はごくわずかである。
又、上記の手段において、反応溶液の還流時間(反応時間)が長くなるに従って白金コロイドの平均粒径が大きくなり、反応時間が約5時間になると、平均粒径は約32Åに達し、その後は一定になる。尚、白金が触媒活性を著しく示すようになるのは、粒径が16Åを超えたあたりからである。
尚、塩化白金酸等の金属錯体を出発原料とすると、それに含まれる錯イオンやコロイド製造工程で添加した薬品由来のイオンや塩が不純物としてコロイド溶液に含まれ、過酸化物分解層12形成後に高分子電解質上に残存する。これらの不純物は高分子電解質膜11のイオン伝導性を阻害したり、電極触媒を被毒して発電性能を損なうためにあらかじめ除去することが望ましい。
この不純物の除去方法は、上述した様にイオン交換樹脂を用いることによりコロイド溶液中の不純物を予め溶液外に出す方法もあるが、最も簡便な方法としては、微粒子形成後に高分子電解質膜を純水に浸して洗い出すのが最も簡便である。もちろんコロイド形成の方法によっては、発電を阻害する塩やイオンを含まない方法もあり、その場合には不純物の除去工程は必要ない。尚、コロイド溶液には、電池特性を低下させない範囲であれば分散安定化剤が入っていてもよい。
以下に、本発明の過酸化物分解層形成工程の一例に相当するステップ2Sについて詳細に説明する。
過酸化物を分解する微粒子としては様々なものが考えられるが、単に過酸化物を分解する触媒作用を有するだけでなく、高分子電解質中の強酸性雰囲気でも溶解しないことが必要であり、このような能力を有するものとして白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウムが挙げられる。これらの金属を単独で用いても良いが、他の金属との合金にしても良い。またこれらの金属の酸化物も良好な過酸化物分解性を示す。
これらの金属の使用量を低減して、有効な過酸化物分解性を発揮させるために、微粒子の粒径を小さくして表面積を増やすことが必要である。これを実現するために微粒子を形成する金属がコロイド状に溶液に分散した、上記ステップ1Sにて作成したコロイド溶液を用いて、高分子電解質膜11上に微粒子を形成した。微粒子の形成方法は、(I)コロイド溶液を高分子電解質膜11上に噴霧して溶媒を蒸発させる、(II)コロイド溶液を高分子電解質膜11上に塗布して溶媒を蒸発させる、(III)コロイド溶液に高分子電解質膜11を浸漬して微粒子を高分子膜に吸着させる、方法がある。
このうち(I)の噴霧する方法は、スプレーガン等を用いるものであり、最も均一な過酸化物分解層の形成ができる。(II)の塗布する方法は、ドクターブレード法、スクリーン印刷、コーター塗工、カーテン塗工等の各種印刷、刷毛等を用いた塗装を用いる方法であり、製造装置が簡便になる。この(I)又は(II)が、本発明の過酸化物分解層形成工程中の、支持体上に、前記コロイド液を塗布又は噴霧する塗布又は噴霧工程の一例に相当する。又、塗布又は噴霧したコロイド溶液を蒸発させることが、本発明の過酸化物分解層形成工程中の前記コロイド液を乾燥する乾燥工程の一例に相当する。
微粒子の粒径が小さすぎると過酸化物分解能が低下する。一般には微粒子の粒径が1nm未満になると微粒子を形成する金属原子の多くが微粒子最外面に存在し、微粒子全体の電子構造が変わるためと考えられる。これを補うために多量の微粒子を高分子電解質膜1上に形成すると、過酸化物分解層を通過する水素イオン伝導性が低下する。
このため、過酸化物分解層を形成する微粒子の粒径は、1nm以上で、できるだけ小さいことが望ましい。より好ましくは、1nm以上10nm以下の触媒微粒子の個数が過酸化物分解層12中の微粒子全体の個数の50%以上である。
又、本実施の形態1ではステップ2Sで、高分子電解質膜11上に過酸化物分解層12を形成しているが、高分子電解質膜11上に限らなくても良い。
例えば、図4に示す様に、始めにアノード側触媒層14を形成後、アノード側触媒層14上に、ステップ3Sにて高分子電解質層15を形成し、高分子電解質層15上に過酸化物分解層12を形成する。続いて、ステップ4Sにて過酸化物分解層12上に高分子電解質膜11を接合し、ステップ5Sにて過酸化物分解層12が形成されていない高分子電解質膜11上にカソード側触媒層13を形成する。最後に、ステップ6Sにてアノード側ガス拡散層17及びカソード側ガス拡散層16を各々の触媒層に接合する。このような手順でMEA21を作製してもよい。
又、過酸化物分解層12を他の支持体上に作成してから、高分子電解質膜11上、本発明の絶縁層の一例である高分子電解質層15上等に転写しても良い(本発明の転写工程の一例に相当する。)。要するに高分子電解質膜11とアノード側ガス拡散層17の間に過酸化物分解層12が配置されれば良い。尚、下記に示しているように高分子電解質層15を設けない場合には、アノード側触媒層14上に、支持体上で作成した過酸化物分解層12を転写しても良い。又、この場合に用いる支持体としては、作成したコロイド液に溶解しないものであれば良く、例として合成樹脂、セラミクス、金属等を有するシートが挙げられる。
次に、本発明の絶縁処理工程の一例に相当するステップ3Sについて詳細を説明する。
上述したステップ3Sでは、高分子電解質溶液をスプレーガンで過酸化物分解層12上に塗布することで絶縁処理を行っている(下記1)に相当する)が、この方法に限らなくても良く、例えば下記2)の方法にて絶縁処理を行っても良い。
過酸化物を捕捉する微粒子を電子導電的に絶縁する方法としては、1)高分子電解質膜上に微粒子を形成した後、高分子電解質を含む溶液を塗布又は噴霧し、微粒子を高分子電解質膜で覆い、乾燥する。2)高分子電解質膜上に微粒子を形成した後、別の高分子電解質膜を接合して、微粒子を高分子電解質膜で挟む、方法がある。
このうち、1)の高分子電解質を含む溶液を噴霧または塗布する方法においては、前記溶液は高分子電解質と溶媒のみからなる溶液でもいいし、アノード触媒層を構成する触媒を含んでもよい。すなわち高分子電解質膜11上に電極を形成するプロセスで微粒子の絶縁工程を兼ねることができる。この場合には一部の微粒子が電極を構成する導電性粒子と電子導電的に導通し、電極触媒として働くため過酸化物分解能は無くなるが、大部分の微粒子は電極と電子導電的に絶縁されるため、過酸化物分解層12を構成することができる。
前述のようにアノード触媒層を構成する触媒を含んだ溶液を塗布又は噴霧して微粒子を高分子電解質で覆う方法においては、前記溶液は通常の触媒層形成溶液よりも高分子電解質/触媒の比が高い方が、より多くの微粒子を絶縁化出来るために有効である。この場合に作成されるMEA50の構造を図5に示す。この場合、アノード側触媒層12に含まれる高分子電解質によって絶縁効果が兼ねられていることになり、高分子電解質層15は必要なくなる。又、本発明の高分子電解質でコーティングされた触媒微粒子は、例えば上記1)の方法によって絶縁処理がなされた微粒子に相当する。
尚、1)の高分子電解質を含む溶液を塗布又は噴霧することが、本発明の絶縁処理工程中の水素イオン伝導性の高分子を含む液を過酸化物分解層上に塗布又は噴霧する塗布又は噴霧工程の一例に相当する。又、1)の乾燥することが、本発明の絶縁処理工程中の前記塗布又は噴霧した液を乾燥する乾燥工程の一例に相当する。
また、2)では、高分子電解質膜11上に微粒子を形成した後、本発明の絶縁層の一例に相当する別の高分子電解質膜を形成する(本発明の絶縁層形成工程の一例に相当する。)。続いて、別の高分子電解質膜を高分子電解質膜11に接合する(本発明の接合工程の一例に相当する。)。接合する方法は、高分子膜を重ね合わせてホットプレスやホットローラ等で加熱しながら圧着させる方法が有効である。ホットプレスの温度は通常100℃から160℃程度で行う。
尚、上記MEA50では、アノード側触媒層14と高分子電解質膜11の間に過酸化物分解層12を設けたが、アノード側触媒層14中に、過酸化物の分解を促進する触媒微粒子を混合しても良い。尚、本発明の過酸化物分解層が、アノード触媒と兼ねられているとは、例えば、この過酸化物の分解を促進する触媒微粒子を有するアノード触媒層に相当する。
このような触媒層を構成するためには、アノード触媒と高分子電解質を混合したものにコロイド溶液を加えてペーストとし、高分子電解質上に塗布して触媒層を形成すればよい。またアノード触媒と高分子電解質からなる触媒層を形成した後にコロイド溶液を触媒層に噴霧また浸透させることにより、触媒層中に過酸化物の分解を促進する触媒粒子を混合することもできる。
又、本実施の形態1では、上述した様に高分子電解質膜11のアノード側に過酸化物分解層12を設ける方法、構成及びそれらの変形について説明したが、カソード側に設けても良く、更にアノード側とカソード側の双方に設けても良い。又、これらの変形例を適宜組み合わせても良い。一例を挙げると、上述したMEA50ではアノード側触媒層14と高分子電解質膜11の間に過酸化物分解層12が設けられているが、図6のMEA60に示す様に、カソード側触媒層13と高分子電解質膜11の間にも更に過酸化物分解層12を設けた構成であっても良い。又、言うまでも無いがMEA60のアノード及びカソードの過酸化物分解層12と触媒層の間に絶縁のための高分子電解質層を設けても良い。
上述した様に、本発明では、過酸化物分解層を設けることにより、アノードにおいては、高分子電解質膜をクロスリークしてきた酸素ガスを水素ガスと反応させて過酸化水素の生成を抑制することが出来る。これにより、過酸化水素などの過酸化物及びそのラジカルによる高分子電解質膜の分解が防止される。
また、カソードにおいて副生した過酸化水素又はアノードで副生した過酸化物が効果的に分解され、高分子電解質膜中に過酸化水素が進入することが十分に防止される。この観点からも過酸化水素などの過酸化物及びそのラジカルによる高分子電解質膜の分解が防止される。
また、本発明では、過酸化物分解層を、微小な粒子径を有する触媒粒子を安定化させることの出来るコロイド溶液を用いて形成するため優れた高分子電解質膜の分解防止効果を得ることが出来る。
更に、本発明では過酸化物の分解反応の促進に適した微小な粒子径を有しかつその粒子径の比較的揃った触媒粒子を含む過酸化物分解層を高分子電解質膜にダメージを与えることなく形成できる。
また、コロイド溶液(液体)を原料にするため、現行の電極触媒層形成プロセス(スプレー塗工や印刷)を過酸化物分解層の形成に利用することができ、シンプルな製造工程で容易に製造することが出来る。
以上により触媒粒子がコロイド状に分散されたコロイド溶液を用いて形成された過酸化物分解層を設けることにより、反応ガスのクロスオーバーが生じる場合であっても、高分子電解質膜の劣化の進行が十分に防止され、十分な電池特性を長期にわたり安定して得ることの出来る優れた耐久性及び信頼性を有する高分子電解質型燃料電池を容易かつ確実に得ることが出来る。
(実施の形態2)
図7は本実施の形態2における高分子電解質型燃料電池のMEAの断面構成図を示している。本実施の形態2におけるMEA70は、実施の形態1と比較して過酸化物分解層72が高分子電解質膜71内に配置されている点が異なる。そのため、本実施の形態1に対する相違点を中心に説明する。尚、実施の形態1と同一の構成要素には、同一の符号を付している。
以下、本実施の形態2における高分子電解質型燃料電池の製造方法について説明する。
高分子電解質膜の素材膜71a上にマスクを取り付け、マスクを付けた面を上にして、調整した金属コロイド溶液を、実施の形態1で示したように調整したコロイド液を塗布又は噴霧し、乾燥することにより過酸化物分解層72を形成した。
次に、過酸化物分解層72を絶縁するために、他の高分子電解質膜の素材膜71bを過酸化物分解層72側に接合する。これにより、過酸化物分解層72を内部に有する高分子電解質膜71が作製される。
続いて、アノード側触媒層14及びカソード側触媒層13を高分子電解質膜71に接合し、更にアノード側ガス拡散層17及びカソード側ガス拡散層16を接合することにより、図7に示す、本実施の形態2におけるMEA70が作製される。
尚、本実施の形態2と実施の形態1の構造を適宜組み合わせても良く、例えば、図8に示すMEA80のように、高分子電解質膜71内に過酸化物分解層72を、カソード側触媒層13と高分子電解質膜71の間と、アノード側触媒層14と高分子電解質膜71の間に過酸化物分解層12を備えた構成であってもよい。
次に本発明について実施例を用いて、より具体的に説明する。
(実施例1)
本実施例1では、実施の形態1において説明した高分子電解質型燃料電池のMEA21を作製した。尚、実施の形態1では、金属イオンを還元することにより金属微粒子を作成する方法について、例を挙げて詳細に説明したが、本実施例1では金属イオンを酸化することにより金属微粒子を作成する方法を用いた。
まず白金コロイドを含む溶液を調製した。塩化白金酸溶液(田中貴金属工業製 15.217wt%)7gを水160mlに溶かした(本発明の混合液調整工程の一例に相当する。)。これに亜硫酸水素ナトリウム15gを加えて攪拌した。さらに水740mlを加えて攪拌し、5%水酸化ナトリウム水溶液を約30mlを加えてpHを5にした。さらに30%過酸化水素水130mlを滴下し(本発明の酸化剤添加工程の一例に相当する。)、さらに5%水酸化ナトリウム水溶液を約80mlを加えてpHを5に保った。これにより粒径約1nmの白金コロイドを含む溶液を得た。
次に、外寸が13cm×13cmの高分子電解質膜11(デュポン社製ナフィオン112)の片面に、内寸が6cm×6cmの穴が開いたマスクを取り付け、60℃のホットプレート上にマスクを付けた面を上にして置き、白金コロイド溶液10mlをスプレーガンで塗布した。
水を蒸発させた後、マスクを取り外し、純水に高分子電解質膜11を浸して白金コロイド溶液中に含まれていた塩素やナトリウムを除去した後、高分子電解質膜を取り出して乾燥させ、片面に白金微粒子の付いた高分子電解質膜を得た。
白金微粒子の付着量は0.1mg/cmだった。また透過型電子顕微鏡による観察により、微粒子の粒径は粒子数の80%が1nmから5nmであり、残りの20%が5nmから10nmであった。またXPSによる分析の結果、微粒子中の白金は酸化物(PtO)の状態で存在していた。
次に、白金微粒子を絶縁するために高分子電解質溶液でのコーティングを行った。高分子電解質溶液は10重量%濃度のパーフルオロカーボンスルホン酸(デュポン社製SE10072)を純水で10倍に薄めたものを用いた。高分子電解質膜11の白金微粒子を形成した面に内寸が6cm×6cmの穴が開いたマスクを取り付け、60℃のホットプレート上にマスクを付けた面を上にして置き、高分子電解質溶液4mlをスプレーガンで塗布した。これにより白金微粒子上に約10μmの厚さの高分子電解質層15が形成された。
電極を構成する触媒層を形成するペーストは次のように作製した。導電性カーボン粒子に、白金粒子を50重量%担持した触媒(田中貴金属工業製TEC10E50E)に10重量%濃度のパーフルオロカーボンスルホン酸(デュポン社製SE10072)を加えて1時間超音波を加えながら撹拌したものをカソード側の触媒層ペーストとした。カーボン担体に対する水素イオン伝導性高分子電解質の構成重量比は0.8とした。
同様にアノード側の触媒層ペーストを次のようにして作製した。導電性カーボン粒子に、白金とルテニウムの合金を担持した触媒(田中貴金属工業製TEC61E54、Pt濃度30wt%、Ru濃度24wt%)に10重量%濃度のパーフルオロカーボンスルホン酸(デュポン社製SE10072)を加えて1時間超音波を加えながら撹拌したものをアノード側の触媒層ペーストとした。カーボン担体に対する水素イオン伝導性高分子電解質の構成重量比は0.8とした。
これらのペーストを、ポリプロピレンシートの表面にバーコーダで塗布し乾燥させることで、それぞれの電極触媒層とした。カソード側電極中に含まれる白金量は、0.5mg/cmとなるよう調製し、アノード側電極中に含まれる白金量は、0.35mg/cmとなるよう調製した。
このポリプロピレンシートを6cm×6cmに切り抜き、触媒が形成されている面を内側にして白金微粒子層を形成した高分子電解質膜11の両側に接合し、135℃で10分間ホットプレスした後、ポリプロピレンシートを剥がし、高分子電解質膜11の両側に電極触媒層13、14を形成した。
過酸化物分解層12を形成した側にアノード側触媒層14を転写したものを実施例MEA1−1、カソード側触媒層13を転写したものを実施例MEA1−2とする。すなわち、実施例MEA1−1は、アノード側触媒層14と高分子電解質膜11の間に過酸化物分解層12が配置された構成であり、実施例MEA1−2はカソード側触媒層13と高分子電解質膜11の間に過酸化物分解層12が配置された構成である。
次にガス拡散層を以下のようにして作製した。厚さ360μmのカーボン不織布(東レ製、TGP―H―120)を、フッ素樹脂含有の水性ディスパージョン(ダイキン工業製、ネオフロンND1)に含浸した後、これを乾燥し、400℃で30分加熱することで、撥水性を与えた。さらに、このカーボン不織布の一方の面に、導電性カーボン粉末とPTFE微粉末を分散させた水溶液とを混合したインクを、スクリーン印刷法を用いて塗布することで撥水層を形成した。このとき、撥水層の一部を、カーボン不織布の中に埋め込んだ。
つぎに、触媒層が形成された高分子電解質膜11に、前述のカーボンペーパーを撥水層の塗布した面が触媒層の側に接するようにホットプレスで接合することにより、電極電解質膜接合体(MEA21)が作製された。
前記のMEA21を用い、図2に示すような燃料電池特性測定用セル(単セル)を組み立て、試験を行った。
単セルの温度を70℃に設定し、アノード側には水素ガスを露点70℃で加湿し、利用率80%となるように供給し、カソード側には空気を露点70℃で加湿し、利用率40%となるように供給し、電流密度200mA/cmの電流を流しながら放電試験を行った。
その結果を図9に示す。図9の丸を含んでいるグラフがフッ素イオン析出量の時間経過を示し、丸を含んでいないグラフがセル電圧の時間経過のグラフを示している。図9に示す様に、長時間運転してもセルの電圧はほとんど低下しなかった。
又、放電試験中にセルから生成する水を採取して分析したところ、グラフに示されているようにフッ化物イオンはほとんど検出されず、高分子電解質の分解が抑制されたことがわかる。又、過酸化物分解層をカソード側とアノード側に形成した場合では、アノード側に形成したほう(実施例MEA1−1)が、カソード側に形成した(実施例MEA1−2)よりも大きい効果が得られた。これは、本実施例の運転条件においては、アノード側での過酸化水素の生成が劣化の主要因であるためである。
電流密度を0.5mA/cmまで増加した場合は、カソード側に過酸化物分解層を設けたもの(実施例MEA1−2)の方が効果が大きくなった。これは高電流密度になることにより、カソードの電位が低下し、過酸化水素の生成が増加したためである。
このように、過酸化物分解層12をどちらの電極側に設けるかは、その燃料電池の運転条件に応じて適宜選択されるが、低電流密度、低酸素利用率の条件においてはアノード側、高電流密度、高酸素利用率の場合にはカソード側に設置することが望ましい。もちろん、両側に設置すればなお優れた効果が得られる。
また試験後の白金微粒子のXPS分析の結果、微粒子中の白金は金属(Pt)の状態で存在していた。
(比較例1)
過酸化物分解層12をスパッタリングで形成した以外は、すべて実施例1を同じ構成のMEAを作成した。スパッタリングは白金をターゲットに用い、付着量が0.1mg/cmとなるように行った。脱水による膜の収縮を抑制するため比較的高い圧力でスパッタを行ったため、付着した白金の粒径は5nmから50nmの間で分布していた。
上記の方法で作成したMEAを比較MEA1とする。
また、粒径と分布を小さくするため高真空中で行った場合には、粒径は1〜5nmの範囲で狭い範囲の小粒径が得られたものの、膜の含水率の減少に伴う収縮が5%程度発生し、膜にそりやしわが発生した。そのため、電極面積を制御することが困難であり、測定に供することができなかった。
(比較例2)
過酸化物分解層を化学メッキで形成した以外はすべて実施例1と同じ構成でMEAを作成した。化学メッキは、高分子電解質膜の片面を塩化白金酸の溶液に浸漬し、他方の面を還元剤であるヒドラジン溶液に浸漬することで行った。還元剤であるヒドラジンが膜を通じて反対側に拡散し、膜表面で白金イオンを還元することによりメッキを行った。メッキ量は0.1mg/cmとなるように白金イオンの量を調節した。メッキされた白金の粒径は100〜200nm程度であり、粒径が大きく、分布も広いものとなった。
このMEAを比較MEA2とする。
(比較例3)
過酸化物分解層12を形成する工程を除いた以外は、すべて実施例1と同じ構成のMEAを作成した。このMEAを比較MEA3とする。
これらの比較MEA1〜3を用いて、燃料電池特性測定用セル(単セル)を組み立て、実施例1の実施例MEA1−1、実施例MEA1−2、とともに発電試験を行った。
図9に放電電圧の経時変化と、排水中に検出されるFイオンの濃度変化を示す。
比較例として示したMEAはいずれも電圧低下が大きく、さらにFイオン溶出量が大きいことから、高分子電解質膜の分解が進行していることが示唆された。
又、スパッタリングを行った比較MEA1については、過酸化物分解層の性質が粒径の増大により低下すること、真空保持時あるいはスパッタリングによって、膜の劣化が起こり、耐分解性が低下したことにより、膜の分解が起こったと考えられる。
また、化学メッキを行った比較MEA2については過酸化物分解層自体の性質が、粒径が大きいことにより低いこと、さらに還元剤に用いるヒドラジンによる膜へのダメージ、白金イオンに含まれる塩素イオンの影響のため、分解が促進したと考えられる。
不純物の影響がコロイドを用いた場合に小さく、化学メッキの場合に大きいのは、コロイドの場合不純物は白金層内にしか存在しないため、容易に洗浄できるのに対し、化学メッキの場合は溶液中に膜を浸漬するため、膜中にまで不純物が進入し、容易に洗浄されないためである。
(実施例2)
本実施例2では、実施の形態2で説明したMEA70を作成した。
まず白金−ルテニウムコロイドを含む溶液を調製した。塩化白金酸溶液(田中貴金属工業製 15.217wt%)7gを水160mLに溶かした。これに塩化ルテニウム水溶液(田中貴金属工業製 8.3wt%)12.6gを加えた。
これに亜硫酸水素ナトリウム15gを加えて攪拌した。さらに水740mLを加えて攪拌し、5%水酸化ナトリウム水溶液を約30mlを加えてpHを5にした。さらに30%過酸化水素水130mLを滴下し、さらに5%水酸化ナトリウム水溶液を約80mLを加えてpHを5に保った。これにより粒径約2nmの白金−ルテニウムコロイドを含む溶液を得た。
次に、外寸が13cm×13cmの、本発明の高分子電解質膜の素材膜の一例に相当する高分子電解質膜71a(デュポン社製ナフィオン111)の片面に、スクリーン印刷で6cm×6cmに白金−ルテニウムコロイド溶液10mLを塗布した。
水を蒸発させた後、純水に高分子電解質膜71aを浸して白金−ルテニウムコロイド溶液中に含まれていた塩素やナトリウムを除去した後、高分子電解質膜71aを取り出して乾燥させ、片面に白金−ルテニウム微粒子の付いた高分子電解質膜を得た。
微粒子中の白金の付着量は0.1mg/cmであった。また透過型電子顕微鏡による観察により、微粒子の粒径は粒子数の50%が2nmから10nmであり、残りの50%が10nm以上であった。またXPSによる分析の結果、微粒子中には白金は酸化物(PtO)とルテニウムの酸化物(Ru)と白金−ルテニウム合金の酸化物の状態で存在していた。
次に白金−ルテニウム微粒子を絶縁するために、本発明の他の高分子電解質膜の素材膜の一例に相当する別の高分子電解質膜71b(デュポン社製ナフィオン111)を白金−ルテニウム微粒子側に接着し、135℃で10分間ホットプレスした。これにより、過酸化物分解層72を内部に有する高分子電解質膜71が作成された。
実施例1と同様に電極を作製し、図7に示されるMEA70が作成された。
このMEA70を用い、実施例1と同様に放電試験を行ったところ、長時間運転してもセルの電圧はほとんど低下しなかった。図10にセルの電圧の経時変化を示した。放電試験中にセルから生成する水を採取して分析したところ、フッ化物イオンはほとんど検出されず、高分子電解質の分解が抑制されたことがわかる。
なお、本実施例では、塩化ルテニウムを用いて白金−ルテニウム合金としたが、塩化ルテニウムの代わりに塩化ロジウムや塩化パラジウムを用いて白金−ロジウム合金や白金−パラジウム合金としても同様の結果が得られた。
(実施例3)
本実施例3では、実施の形態2の変形例である図8に記載のMEA80を作成した。
実施例2と同様に過酸化物分解層72を内部に有する高分子電解質膜71を作成した。この高分子電解質膜71の両面に、実施例1と同様の方法で過酸化物分解層12を形成し、更に、過酸化物分解層12を絶縁するための高分子電解質層15を形成した。この高分子電解質層15の両側にアノード側触媒層14及びカソード側触媒層13を形成し、更にアノード側ガス拡散層17及びカソード側ガス拡散層16を形成し、MEA80を作成した。
このMEA80を実施例1と同様の条件で放電試験を行った。又、放電試験中にセルから生成される水を採取して、フッ素イオン量の分析を行った。
その結果を図10に、実施例MEA1−1及び実施例MEA1−2、実施例2で作成したMEA70とともに示す。
図10のグラフから、長時間運転してもセル電圧の低下はほとんどなく、又、フッ化物イオンはほとんど検出されていないため、高分子電解質の分解が抑制されたことが分かる。
更に、電池特性の序列は、MEA1−1、MEA1−2、MEA70(実施例2)、MEA80(実施例3)の順である。
(実施例4)
本実施例4では、過酸化物分解層12を絶縁するための高分子電解質層15を配置していない、実施の形態1の変形例として説明したMEA50を作成した。
実施例1と同様に白金コロイドを含む溶液を調製し、高分子電解質膜11の片面に白金微粒子の付いた高分子電解質膜を得た。この白金微粒子を絶縁することなく、電極触媒層を接合し、電極電解質膜接合体(MEA)とした。すなわち、本実施例4のMEA50は実施例1と異なり、過酸化物分解層12を絶縁するための高分子電解質層15を有していない構造となっている。その構造を図5に示した。
前記のMEA50を用い、実施例1と同様に放電試験を行ったところ、長時間運転してもセルの電圧はほとんど低下しなかった。図11にセルの電圧の経時変化を示した。放電試験中にセルから生成する水を採取して分析したところ、フッ化物イオンは検出されず、高分子電解質が分解した形跡は検出されなかった。
(実施例5)
本実施例5では、高分子電解質層15を配置しておらず、過酸化物分解層12をアノード側及びカソード側に備えている、実施の形態1の変形例として説明したMEA60を作成した。又、本実施例5のMEA60は、過酸化物分解層中の粒子数の80%の粒径が1nm以上、3nm以下の間と、実施例4と比較すると粒径の分布が小さくなっている。
以下に、本実施例5のMEA60の作成方法について示す。
蒸留水85mLと攪拌子とを150mLフラスコに投入し、還流コンデンサーをフラスコ上部に設置して、これを100℃まで加熱・昇温した。水中の溶存酸素を取り除くため、そのまま1時間煮沸を行った。
一方、20mL三角フラスコに、テトラクロロ白金酸6水和物0.1328g(白金として50mg)を秤量して投入し、そこに蒸留水を加えて5mLとした。また、50mL三角フラスコに、クエン酸ナトリウム2gを秤量して投入し、蒸留水を加えて10mLとした。
続いて、純水の溶存酸素を取り除いた後、150mLフラスコに20mL三角フラスコからテトラクロロ白金酸水溶液を投入し、再度100℃まで加熱・昇温した。さらに、溶存酸素を除去するため、30分間煮沸を行った。つづいて、50mLフラスコからクエン酸ナトリウム水溶液を煮沸状態が維持されるように除々に添加した。
クエン酸ナトリウム水溶液を150mLフラスコに全て添加した後、沸騰状態で還元反応を継続させ、反応開始から120分後に反応をとめて、その反応液を室温まで急冷した。
次に、冷却した反応溶液をイオン交換樹脂アンバーライトMB−1(オルガノ株式会社製)を詰めたカラムに通し、反応溶液中に残存する金属イオンおよび還元剤を取り除いて安定なコロイド溶液を得た。
このコロイド溶液について、プラズマ発光分光分析法によりコロイド粒子の濃度を測定したところ、白金濃度は、400mg/Lであった。さらに透過型電子顕微鏡を用いて、白金コロイド粒子の平均粒径を測定した。その結果、コロイド粒子の平均粒径は1.6nmであった。
次に、外寸が13cm×13cmの高分子電解質膜11(デュポン社製ナフィオン112)の片面に、内寸が6cm×6cmの穴が開いたマスクを取り付け、60℃のホットプレート上にマスクを付けた面を上にして置き、白金コロイド溶液10mLをスプレーガンで塗布した。
水を蒸発させた後、高分子電解質膜11を乾燥させ、片面に白金微粒子の付いた高分子電解質膜を得た。微粒子中の白金の付着量は0.1mg/cmだった。また、透過型電子顕微鏡による観察により、微粒子の粒径は粒子数の80%が1nmから3nmであり、残りの20%が3nm以上であった。また、XPSによる分析の結果、微粒子中には白金は金属(Pt)の状態で存在していた。
白金微粒子が付いている面の反対側に内寸が6cm×6cmの穴が開いたマスクを取り付け、上記と同様の方法で白金コロイド溶液を塗布し、両側に白金微粒子の付いた高分子電解質膜を得た。
実施例1と同様に電極触媒層を前記高分子電解質膜に転写し、MEA60を構成した。その構造を図6に示した。前記のMEA60を用い、実施例1と同様に放電試験を行ったところ、長時間運転してもセルの電圧はほとんど低下しなかった。図11にセルの電圧の経時変化を示した。放電試験中にセルから生成する水を採取して分析したところ、フッ化物イオンは検出されず、高分子電解質が分解した形跡は検出されなかった。
(実施例6)
本実施例6では、実施例1の実施例MEA1−1の過酸化物分解層中に含まれる触媒微粒子の粒径の大きさと、過酸化物分解層中に含まれる全ての触媒微粒子中の前記粒径の触媒微粒子の割合を下記の(表1)のように変化させたものを作成した。
Figure 2006079904
又、実施例MEA1−2についても同様に変化させたものを作成した。
Figure 2006079904
又、実施例2のMEA70についても同様に変化させたものを作成した。
Figure 2006079904
上記表1〜3に初期電圧と、連続運転を行った1000時間後の電圧値およびフッ化物イオン溶出量も記載した。尚、1000時間後の判定閾値は、フッ化物イオン溶出量が0.3μg/day/cmとした。これはフッ化物イオン溶出量が前記閾値を超えると、電解質膜の劣化が著しく、MEAに致命的な損傷が起こる可能性が高いことが経験的に分かっているからである。
上記結果より、過酸化物触媒層中に含まれる全ての触媒微粒子のうち、1nm以上、10nm以下の粒子径を有する触媒微粒子の割合が50%以上である方がより好ましいことが分かる。
本発明の高分子電解質型燃料電池およびその製造方法は、製造工程をより簡易にし、より低コスト化し、高分子電解質膜の与える化学分解等のダメージをより軽減し、発電性能の低下をより防止し、又、粒子径をより制御することが可能な効果を有し、家庭用コージェネレーションや自動車に用いる燃料電池等として有用である。
本発明にかかる実施例1における高分子電解質型燃料電池のMEA21の構造を示した図 本発明にかかる実施例1における高分子電解質型燃料電池の単セルの構造を示した図 本発明にかかる実施の形態1における高分子電解質型燃料電池のMEAの製造方法を示した図 本発明にかかる実施の形態1における高分子電解質型燃料電池のMEAの製造方法の変形例を示した図 本発明にかかる実施例4における高分子電解質型燃料電池のMEA50の構造を示した図 本発明にかかる実施例5におかる高分子電解質型燃料電池のMEA60の構造を示した図 本発明にかかる実施例2における高分子電解質型燃料電池のMEA70の構造を示した図 本発明にかかる実施例3における高分子電解質型燃料電池のMEA80の構造を示した図 本発明にかかる実施例1と比較例1〜3の高分子電解質型燃料電池のセル電圧及びフッ素イオン溶出量の時間経過のグラフを示した図 本発明にかかる実施例1〜3の高分子電解質型燃料電池のセル電圧及びフッ素イオン溶出量の時間経過のグラフを示した図 本発明にかかる実施例4、5の高分子電解質型燃料電池のセル電圧及びフッ素イオン溶出量の時間経過のグラフを示した図
符号の説明
11 高分子電解質膜
12 過酸化物分解層
13 カソード
14 アノード
15 高分子電解質層
21 MEA
22 セパレーター
23 ガス流路
24 ガスケット

Claims (27)

  1. 水素イオン伝導性の高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜を挟むように配置された、一対のアノード及びカソード触媒層と、前記一対の触媒層を挟むように配置された、一対のアノード及びカソードガス拡散層とを備えた、高分子電解質型燃料電池の製造方法であって、
    過酸化物の分解反応を促進するための触媒微粒子がコロイド状に分散されたコロイド液を調整するコロイド液調整工程と、
    前記調整されたコロイド液を用いて、前記アノードガス拡散層と前記カソードガス拡散層の間に過酸化物分解層を形成する過酸化物分解層形成工程とを備えた、高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  2. 前記過酸化物分解層形成工程は、前記過酸化物分解層を前記アノード触媒層と前記高分子電解質膜との間、及び/又は前記カソード触媒層と前記高分子電解質膜との間に形成する工程である、請求項1記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  3. 前記過酸化物分解層形成工程は、前記過酸化物分解層を前記高分子電解質膜の内部に形成する工程である、請求項1又は2記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  4. 前記過酸化物分解層を、前記アノード及びカソードに対して電子導電的に絶縁するための絶縁処理工程を更に備えた請求項1に記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  5. 前記絶縁処理工程は、
    水素イオン伝導性の高分子を含む液を前記過酸化物分解層上に塗布又は噴霧する塗布又は噴霧工程と、前記塗布又は噴霧した前記液を乾燥する乾燥工程とを有する、請求項4記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  6. 前記過酸化物分解層を、前記アノード及びカソードに対して電子導電的に絶縁するための絶縁処理工程を更に備え、
    前記絶縁処理工程は、
    水素イオン伝導性の高分子を持った絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
    前記絶縁層を、前記過酸化物分解層、前記アノード触媒層、又は前記カソード触媒層に接合する接合工程とを有する、請求項2記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  7. 前記過酸化物分解層形成工程は、
    支持体上に、前記コロイド液を塗布又は噴霧する塗布又は噴霧工程と、
    前記塗布又は噴霧した前記コロイド液を乾燥する乾燥工程とを有し、
    前記支持体上とは、前記高分子電解質膜に対向する、前記アノード若しくはカソード触媒層上、又は前記高分子電解質膜上、又は前記絶縁層上である、請求項2又は6記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  8. 前記過酸化物分解層形成工程は、
    支持体上に、前記コロイド液を塗布又は噴霧する塗布又は噴霧工程と、
    前記塗布又は噴霧した前記コロイド液を乾燥する乾燥工程と、
    前記支持体上に形成した前記過酸化物分解層を、前記高分子電解質上、前記高分子電解質膜に対向する、前記アノード及びカソード触媒層上、及び前記絶縁層上のうちの少なくとも1つに転写する転写工程とを有し、
    前記支持体は、前記コロイド液に溶解しない、合成樹脂を有するシート、セラミクスを有するシート、及び金属を有するシートの何れかである、請求項2又は6記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  9. 前記過酸化物分解層形成工程は、
    支持体上に、前記コロイド液を塗布又は噴霧する塗布又は噴霧工程と、
    前記塗布又は噴霧した前記コロイド液を乾燥する乾燥工程とを有し、
    前記支持体上とは、前記高分子電解質膜の素材膜上である請求項3記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  10. 前記過酸化物分解層形成工程は、
    支持体上に、前記コロイド液を塗布又は噴霧する塗布又は噴霧工程と、
    前記塗布又は噴霧した前記コロイド液を乾燥する乾燥工程と、
    前記支持体上に形成した前記過酸化物分解層を、前記高分子電解質膜の素材膜上に転写する転写工程とを有し、
    前記支持体は、前記コロイド液に溶解しない、合成樹脂を有するシート、セラミクスを有するシート、及び金属を有するシートの何れかである、請求項3記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  11. 前記過酸化物分解層を、前記アノード及びカソードに対して電子導電的に絶縁するための絶縁処理工程を更に備え、
    前記絶縁処理工程は、前記高分子電解質膜の素材膜上に形成された前記過酸化物分解層上に、他の高分子電解質膜の素材膜を接合する接合工程を有する、請求項9又は10記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  12. 前記絶縁処理工程とは、前記触媒微粒子の表面を高分子電解質によってコーティングする工程である、請求項4記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  13. 前記過酸化物分解層は、前記アノード触媒層及び/又は前記カソード触媒層と兼ねられている、請求項1記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  14. 前記触媒微粒子は、金属を有しており、
    前記コロイド液調整工程は、
    前記触媒微粒子をコロイド状に分散するための溶媒と、前記金属の塩との混合液を調整する混合液調整工程と、
    前記金属塩を還元するための還元剤を、前記混合液に添加する還元剤添加工程とを有する、請求項1記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  15. 前記触媒微粒子は、金属を有しており、
    前記コロイド液調整工程は、
    前記触媒微粒子をコロイド状に分散するための溶媒と、前記金属塩との混合液を調整する混合液調整工程と、
    前記金属塩を酸化するための酸化剤を、前記混合液に添加する酸化剤添加工程とを有する、請求項1記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  16. 前記コロイド液調整工程は、
    前記還元剤又は酸化剤添加工程後に、前記混合液をイオン交換体を用いてイオン交換処理を行うイオン交換処理工程を更に有する、請求項14又は15記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  17. 前記触媒微粒子は、白金、ルテニウム、ロジウム、及びパラジウムから選択される少なくとも1種類の金属、前記金属の酸化物、前記金属の合金、又は前記合金の酸化物の微粒子である、請求項1記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  18. 前記溶媒は、水と、炭素数1〜4の何れかのアルコールから選択される少なくとも1種類とを含む、請求項14又は15記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  19. 前記過酸化物分解層に含まれる前記触媒微粒子の50%以上が、1nm以上、10nm以下の粒径である、請求項1記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
  20. 水素イオン伝導性高分子電解質膜と、
    前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を挟むように配置された、一対のアノード及びカソード触媒層と、
    前記一対の触媒層を挟むように配置された、一対のアノード及びカソードガス拡散層と、
    前記アノード触媒層と前記高分子電解質膜の間、前記カソード触媒層と前記高分子電解質膜の間、及び前記高分子電解質膜の内部に配置されている、過酸化物の分解反応を促進するための触媒微粒子を有する過酸化物分解層とを備えた、高分子電解質型燃料電池。
  21. 水素イオン伝導性の高分子電解質膜と、
    前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を挟むように配置された、一対のアノード及びカソード触媒層と、
    前記一対の触媒層を挟むように配置された、一対のアノード及びカソードガス拡散層と、
    前記アノードガス拡散層と前記カソードガス拡散層の間に配置された、過酸化物の分解反応を促進するための触媒微粒子を有する過酸化物分解層とを備え、
    前記過酸化物分解層に含まれる前記触媒微粒子の50%以上が、1nm以上、10nm以下の径である、高分子電解質型燃料電池。
  22. 前記過酸化物分解層は、前記アノード触媒層と前記高分子電解質膜の間、及び/又は前記カソード触媒層と前記高分子電解質膜の間に配置されている、請求項21記載の高分子電解質型燃料電池。
  23. 前記過酸化物分解層は、前記高分子電解質膜の内部に配置されている、請求項21記載の高分子電解質型燃料電池。
  24. 前記過酸化物分解層は、前記アノード触媒層及び/又は前記カソード触媒層と兼ねられている、請求項21記載の高分子電解質型燃料電池。
  25. 前記過酸化物分解層と、前記アノード触媒層及び/又は前記カソード触媒層の間に、水素イオン伝導性の高分子を有する絶縁層を更に備えた、請求項20又は22記載の高分子解質型燃料電池。
  26. 前記触媒微粒子の表面が水素イオン伝導性の高分子によってコーティングされている、請求項20又は21記載の高分子電解質型燃料電池。
  27. 前記触媒微粒子は、白金、ルテニウム、ロジウム、及びパラジウムから選択される少なくとも1種類の金属、前記金属の酸化物、前記金属の合金、又は前記合金の酸化物の微粒子である、請求項20又は21記載の高分子電解質型燃料電池。
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