JP6345663B2 - 燃料電池用電極及びその製造方法、並びに膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池 - Google Patents

燃料電池用電極及びその製造方法、並びに膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、固体高分子形燃料電池の電極として好適に用いられる燃料電池用電極及びその製造方法、並びに膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池に関する。
燃料電池は、水素の持つ化学エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換できるため、燃料電池を利用した発電システムの普及が期待されている。燃料電池の中でも、特に電解質に固体高分子膜を使用した固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell、以下、「PEFC」と記載する場合がある。)は、作動温度が80℃付近と比較的低温であるため、例えば、車載用電源、家庭用等の小規模な固定電源として導入されている。固体高分子形燃料電池では、以下の電気化学反応によって電力を取り出すことができる。
アノ−ド反応:2H2 → 4H++4e- (反応1)
カソ−ド反応:O2+4H++4e-→2H2O (反応2)
全反応 :2H2+O2→2H2
PEFCは、一般的に、固体高分子電解質膜の両面に一対の電極を配置させた膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly、以下、「MEA」と記載する場合がある。)を、ガス流路が形成されたセパレータで挟持した構造を有する。
燃料電池用電極(特にはPEFC用電極)は、一般に、電極触媒活性を有する電極材料及び高分子電解質からなる電極触媒層と、ガス通気性と電子伝導性を兼ね備えたガス拡散層とから構成される。PEFCの電極材料として、粒子状や繊維状の炭素系材料からなる担体の表面に貴金属粒子を分散させて担持した材料が広く用いられている(例えば、特許文献1,2)。
ところで、PEFCの電解質膜は酸性(pH=0〜3)であるため、PEFCの電極材料は酸性雰囲気下で使用されることになる。また、通常運転しているときのセル電圧は0.4〜1.0Vであるが、起動停止時にはセル電圧が1.5Vまで上昇することが知られている。このようなPEFCの運転条件でのカソード及びアノードの状態は、カソードにおいては担体である炭素系材料が二酸化炭素(CO2)として分解する領域である。そのため、カソードでは、担体として使用されている炭素系材料が電気化学的に酸化されてCO2に分解する反応が起こる(非特許文献1参照)。
また、カソードだけでなく、アノードにおいても起動時などに燃料ガスが不足すると、その部分での電圧低下、あるいは濃度分極が生じて局部的に通常と反対の電位となり、炭素の電気化学的酸化分解反応が起こることがある。
電極触媒粒子の担体として用いられている炭素系材料は、上述のように電気化学的に酸化腐食し、PEFCの起動停止時や長時間運転しているときに特に問題となる。炭素系材料の酸化に対する耐久性を向上させるため、高温で熱処理して結晶化を高める方法があるが、それでも酸化に対する耐久性は不十分である。そのため、PEFCの運転条件で安定な、非炭素系材料を使用した燃料電池用電極の開発が望まれている。
このような要望に対し、本願発明者らは、特許文献3において、炭素系材料の代わりに酸化スズ担体に貴金属粒子を分散させた電極触媒材料およびその製造を開示している。この電極触媒材料はPEFCの運転条件で熱力学的に安定であるため、酸化腐食されることなく長期の運転が可能である。
特開2005−87993号公報 特許第368364号公報 国際公開第2009/060582号パンフレット
エル エム ロウエン(L.M.Roen)、他2名、"エレクトロキャタリティック コロウジョン オブ カーボン サポート イン ピーイーエムエフシー カソーズ((Electrocatalytic Corrosion of Carbon Support in PEMFC Cathodes)"、「エレクトロケミカル アンド ソリッドステイト レターズ(Electrochemical and Solid−State letters)」、2004年、Vol.7(1)、A19−A22
特許文献3の酸化物担体を用いた電極触媒材料の製造方法では、従来の炭素系担体の場合と同様に湿式法が採用されている。湿式法では、例えば、酸化物担体を共沈法等で調製し、その上にコロイド法などの方法で酸化物担体に貴金属粒子を担持し、スプレー印刷法等の方法で固体高分子電解質膜の上に塗布して電極触媒層を製膜する。
しかしながら、湿式法で製造した電極触媒層を有する燃料電池用電極は、炭素系担体を用いた場合では十分なセル性能を発揮できるが、酸化物担体を用いた場合には、必ずしも再現性良く、十分なセル性能を発揮できるとはいえなかった。
このような状況下、本発明は、電気化学的酸化への耐久性に優れ、かつ、優れた出力特性を有す電子伝導性酸化物を使用した燃料電池用電極およびその製造方法を提供することを目的とする。さらには、当該燃料電池用電極を有する膜電極複合体及び固体高分子形燃料電池を提供することを目的とする。
本発明者は、湿式法によって形成される電子伝導性酸化物担体粒子は、平均粒径が10〜500nm程度の一次粒子が凝集した二次粒子であり、このような電子伝導性酸化物担体粒子を用いて電極触媒層を形成すると、高温で焼成するプロセスがないために担体粒子同士の接触が不十分となりやすいため、粒界における電気抵抗が大きくなり、電極全体の電子伝導性が不十分になると考えた。そして、鋭意研究を重ねた結果、下記発明がこのような課題を解決することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 電子伝導性を有するガス拡散層と、前記ガス拡散層の表面又は内部に形成された電極触媒層とを有する燃料電池用電極であって、
前記電極触媒層が、物理蒸着により形成されたガス拡散性を有する電子伝導性酸化物層と、前記電子伝導性酸化物層に担持された電極触媒粒子とを含む燃料電池用電極。
<2> 前記ガス拡散層が、基材層及び前記基材層の片面に形成されたマイクロポーラス層を有するガス拡散層であって、前記電極触媒層が前記マイクロポーラス層の表面又は内部に形成されてなる前記<1>に記載の燃料電池用電極。
<3> 前記電子伝導性酸化物層が、酸化スズを主体とする酸化物からなる前記<1>または<2>に記載の燃料電池用電極。
<4> 前記電子伝導性酸化物層が、ニオブを0.1〜20mol%ドープしたニオブドープ酸化スズからなる前記<1>から<3>のいずれかに記載の燃料電池用電極。
<5> 前記電極触媒層が、さらにプロトン導電性材料を含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の燃料電池用電極。
<6> 電子伝導性を有するガス拡散層と、前記ガス拡散層の表面又は内部に形成された電極触媒層とを有する燃料電池用電極の製造方法であって、
電子伝導性酸化物からなる蒸着源を使用し、物理蒸着法によってガス拡散層の表面又は内部に、ガス拡散性を有する電子伝導性酸化物層を形成する工程と、
前記電子伝導性酸化物層に対し、電極触媒粒子を担持する工程と、
を含む燃料電池用電極の製造方法。
<7> 前記ガス拡散層が、基材層及び前記基材層の片面に形成されたマイクロポーラス層を有するガス拡散層であって、前記電極触媒層が前記マイクロポーラス層の表面に形成されてなる前記<6>に記載の燃料電池用電極の製造方法。
<8> 前記蒸着源が、酸化スズを主体とする酸化物からなる前記<6>または<7>に記載の燃料電池用電極の製造方法。
<9> 前記蒸着源が、ニオブを0.1〜20mol%ドープしたニオブドープ酸化スズからなる前記<6>から<8>のいずれかに記載の燃料電池用電極の製造方法。
<10> 前記電子伝導性酸化物層を形成する工程における物理蒸着法が、パルスレーザー蒸着法(PLD)である前記<6>から<9>のいずれかに記載の燃料電池用電極の製造方法。
<11> 前記電極触媒粒子を担持する工程における担持方法が、物理蒸着法または化学蒸着法である前記<6>から<10>のいずれかに記載の燃料電池用電極の製造方法。
<12> 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体であって、
前記カソードとアノードの少なくとも一方が、前記<1>から<5>のいずれかに記載の燃料電池用電極であることを特徴とする膜電極接合体。
<13> 前記<12>に記載の膜電極接合体を備えてなる固体高分子形燃料電池。
<14> 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体の製造方法であって、前記<11>に記載の燃料電池用電極の製造方法によって、カソードとアノードのそれぞれの燃料電池用電極を製造する工程と、製造されたカソードとアノードに固体高分子電解質膜を挟み込んで圧着する工程と、を含む膜電極接合体の製造方法。
本発明によれば、高い発電性能と耐久性の両立した燃料電池用電極が提供される。該燃料電池用電極を使用した膜電極接合体を備えてなる固体高分子形燃料電池はサイクル耐久性が高く、長期間発電することができる。
本発明の燃料電池用電極の断面模式図である。 本発明の膜電極接合体の断面模式図である。 本発明の固体高分子形燃料電池の代表的な構成を示す概念図である。 比較例1(PLD:5分)の燃料電池用電極の断面SEM像である。 比較例1(PLD:5分)の燃料電池用電極の断面SEM像(拡大図)である。 実施例1(PLD:1分)の燃料電池用電極の断面SEM像である。 実施例1及び比較例1の燃料電池用電極の電流-電圧(IV)特性の評価結果である。 実施例1及び比較例2の燃料電池用電極の電流-電圧(IV)特性の評価結果である。 起動停止模擬電位サイクルの説明図である。 実施例1(PLD:1分)、比較例2(湿式法)及び参考例1(Pt/C)の燃料電池用電極のサイクル耐久試験の結果(200mA/cm2での初期電圧保持率)である。 (a)はCole−Coleプロットの説明図であり、(b)は想定する等価回路を示す図である。 実施例1(PLD:1分)、比較例2(湿式法)及び参考例1(Pt/C)の膜電極接合体のオーミック抵抗の測定結果である。
1 燃料電池用電極
2 ガス拡散層
2a 基材層
2b マイクロポーラス層
3 電極触媒層
3a 電子伝導性酸化物層
4 カソード
5 アノード
5a 電極触媒層
5b ガス拡散層
6 固体高分子電解質膜
10 膜電極接合体(MEA)
20 固体高分子形燃料電池
21 外部回路
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
<1.燃料電池用電極>
本発明の燃料電池用電極は、電子伝導性を有するガス拡散層と、前記ガス拡散層の表面及び/又は内部に形成された電極触媒層とを有する燃料電池用電極であって、
前記電極触媒層が、物理蒸着により形成されたガス拡散性を有する電子伝導性酸化物層と、前記電子伝導性酸化物層に担持された電極触媒粒子とを含むことを特徴とする。
燃料電池用電極の電極触媒層には、水素や酸素などのガス拡散及び水(蒸気)の排出がスムーズに行える程度の空隙と共に、十分な電子伝導性が必要となる。しかしながら、従来の湿式法で形成した電子伝導性酸化物担体粒子を用いて電極触媒層を形成した場合には、粒界での電気抵抗が大きくなり、電極触媒層の電子伝導性が不十分となる。その結果、ひいては該電極触媒層とガス拡散層とで構成される電極全体の電子伝導性が不十分となる。
これに対し、本発明の燃料電池用電極は、電極触媒層における導電性担体として機能する電子伝導性酸化物層が、物理蒸着法により形成されている。物理蒸着法では形成される電子伝導性酸化物粒子が複数個連結した連結粒子としてガス拡散層の表面や内部に堆積する。連結粒子内では、複数個の電子伝導性酸化物粒子が連続しているため、粒界に起因する電気抵抗が小さくなる。
そのため、従来の湿式法で形成した電子伝導性酸化物担体粒子を用いて電極触媒層を形成した場合と比較して、本発明の燃料電池用電極は、ガス拡散性を有する程度の空隙がある状態でも、電極触媒層が優れた電子伝導性を有すため、該電極触媒層とガス拡散層とで構成される電極全体の電子伝導性に優れる。
なお、本発明の燃料電池用電極は、前記ガス拡散層が、基材層及び前記基材層の片面に形成されたマイクロポーラス層を有するガス拡散層であって、前記電極触媒層が前記マイクロポーラス層の表面に形成されてなるガス拡散層であることが好ましい。
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態は本発明の好適な一例であり、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
図1に本実施形態の燃料電池用電極の断面模式図を示す。燃料電池用電極1は、基材層2a及び前記基材層の片面に形成されたマイクロポーラス層2bを有するガス拡散層2と、ガス拡散層2におけるマイクロポーラス層2bの表面上に形成された電極触媒層3とを有する。
(ガス拡散層)
ガス拡散層2は、基材層2aと基材層2aの片面に形成されたマイクロポーラス層2bとからなる。ガス拡散層2には、電極触媒層3に燃料ガスや空気を提供するためのガス拡散性(ガス透過性)や、発電により生成する水に対する撥水性、発生した電流をセパレータに集電させるための導電性を有する。
基材層2aとしては、ガス拡散性と電子伝導性を有するシート状部材を用いることができる。具体的には、従来PEFCのガス拡散層として使用されている、100nm〜90μm程度の細孔径分布を有する導電性の炭素系シート状部材が挙げられ、好適には撥水処理が施されたカーボンクロス、カーボンペーパー、カーボン不織布等を用いることができる。また、基材層2aは、ステンレススチール等の炭素系材料以外のシート状部材でもよい。基材層2aの厚みは特に制限はないが、通常、50μm〜1mm程度である。
マイクロポーラス層2bは、基材層2aの片面に設けられた、平均粒径10〜100nm程度の炭素微粒子の集合体及び撥水剤からなる層である。炭素微粒子は撥水処理されていてもよい。マイクロポーラス層2bは、基材層2aよりも平均細孔径が小さく(、高密度で表面平坦性に優れる。マイクロポーラス層2bは、好適には1nm〜900nmの細孔径分布を有する。そのため、マイクロポーラス層2bは、後述するように物理蒸着によって、その表面に電子伝導性酸化物層の形成することに適している。マイクロポーラス層2bは、例えば、炭素微粒子と撥水性のフッ素樹脂を含む塗工液を基材層2aに塗工・乾燥して基材層2aと密着化させることで製造できる。
なお、本実施形態では、ガス拡散層として、マイクロポーラス層を有するガス拡散層を使用しているがこれに限定されない。ガス拡散層として従来PEFCに使用されている基材層のみのガス拡散層を使用してもよいが、電子伝導性酸化物層を表面に形成させることが困難であり、内部に電子伝導性酸化物層が不連続に形成されるおそれがあるため、電子伝導性酸化物層をガス拡散層の表面に形成するにはマイクロポーラス層を有するガス拡散層がより好ましい。
ガス拡散層2としては、公知のマイクロポーラス層付のガス拡散層を使用してもよい。好適な市販品としては、例えば、SIGRACT Gas Diffusion Media社製、GDL25シリーズを挙げることができる。
(電極触媒層)
電極触媒層3は、電子伝導性酸化物層3aと、電子伝導性酸化物層3aに担持された電極触媒粒子(図示せず)とを含み、マイクロポーラス層2bの表面に形成されている。
電極触媒層3の厚み(電子伝導性酸化物層3aの厚み)は、ガス透過性を有し、かつ、燃料電池して十分な電極触媒作用が得られる範囲であればよく、電極触媒層3を構成する電子伝導性酸化物層3aの多孔性等を考慮して適宜決定され、通常、0.1〜50μm程度である。
電子伝導性酸化物層3aは、マイクロポーラス層2bの表面(及び一部内部)に物理蒸着法で形成され、電子伝導性を有する共に、電極触媒層3の電極反応が損なわれない程度のガス拡散性を有する。電子伝導性酸化物層3aを形成する際には、電子伝導性とガス拡散性とが両立するような条件で、物理蒸着の条件を適宜選択される。
なお、物理蒸着法の詳細については、後述する本発明の燃料電池用電極の製造方法にて説明する。
電極触媒層3は、電子伝導性酸化物層及び電極触媒粒子のみから構成されていてもよいが、より電極性能を高めることができる点で、プロトン導電性材料を含んでいることが好ましい。プロトン導電性材料としては、電解質膜と同様の材料が用いられ、ポリマー骨格の全部または一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質材料と、ポリマー骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質材料に大別され、この両者を電解質材料として使用することができる。
フッ素系電解質材料としては、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会
社製)などが好適例として挙げられる。
炭化水素系電解質材料としては、具体的には、ポリスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸などが好適一例として挙げられる。
電子伝導性酸化物層3aを構成する電子伝導性酸化物としては、燃料電池(特には固体高分子形燃料電池)の運転条件において、十分な耐久性と電子伝導性を併せ持つ材料であればよい。具体的には、酸化スズ、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン及び酸化タングステンから選択される1種を主体とする電子伝導性酸化物が挙げられる。ここで、本発明において「主体とする電子伝導性酸化物」とは、(A)母体酸化物のみからなるもの、及び(B)他元素をドープされた酸化物であって、母体酸化物が80mol%以上含まれるもの、を意味する。
ドープされる元素として、具体的には、Sn,Ti,Sb,Nb,Ta,W,In,V,Cr,Mn,Moなどが挙げられる(但し、母体酸化物と異なる元素である。)。ドープされる元素は、母体酸化物より価数が高い元素であり、例えば、母体酸化物が酸化チタンの場合で例示すると、上記ドープ種元素のうち、Ti以外の元素(例えば、Nb)が選択される。
この中でも、電子伝導性酸化物層3aが、酸化チタン、酸化タングステン又は酸化スズを主体とする酸化物からなることが好ましく、特に酸化スズを主体とする酸化物が好ましい。ここで、「主体とする酸化物」とは、対象となる酸化物を50モル%以上含む酸化物をいう。
電子伝導性酸化物が、酸化スズを主体とする酸化物である場合には、本発明の燃料電池用電極をカソードとして使用することが好ましい。
元素としてスズ(Sn)は、PEFCのカソード条件で、酸化物であるSnO2が熱力学的に安定であり酸化分解が起こらない。また、酸化スズは、十分な電子伝導性を有し、電極触媒粒子(特には貴金属粒子)を高分散で担持が可能な担体となる。
酸化スズを主体とする酸化物の中でも、より優れた電極性能を有する燃料電池用電極が形成できる点で、ニオブ(Nb)を0.1〜20mol%ドープしたニオブドープ酸化スズが特に好ましい。
また、PEFCのアノードとして用いる場合には、アノード条件において熱力学的に安定な酸化チタンを主体とする酸化物が好適な一例である。
なお、PEFCのカソード条件とは、PEFCの通常運転時のカソードにおける条件であり、温度が室温〜150℃程度、空気等の酸素を含むガスが供給される条件(酸化雰囲気)を意味し、アノード条件とは、PEFCの通常運転時のアノードにおける条件であり、温度が室温〜150℃程度、水素を含む燃料ガスが供給される条件(還元雰囲気)を意味する。
電極触媒粒子は、酸素の還元(及び水素の酸化)に対する電気化学的触媒活性を有するものであり、かつ、電子伝導性酸化物層に担持できるものであればよい。電極触媒粒子は、貴金属系触媒、非貴金属系触媒のいずれでもよいが、好適には、Pt,Ru,Ir,Pd,Rh,Os,Au,Ag等の貴金属、及びこれらの貴金属を含む合金から選択される。なお、「貴金属を含む合金」とは「上記の貴金属のみからなる合金」と、「上記の貴金属とそれ以外の金属からなる合金で上記の貴金属を10質量%以上含む合金」を含む。貴金属と合金化させる上記「それ以外の金属」は、特に限定されないが、Co,Ni,W,Ta,Nb,Snを好適な例として挙げることができ、これらを1種類あるいは2種類以上を使用してもよい。また、分相した状態で2種類以上の上記貴金属及び貴金属を含む合金を使用してもよい。
電極触媒粒子の担持方法は湿式法でも乾式法でもよい。但し、電子伝導性酸化物層の製造と併せて、電極触媒粒子の担持方法を乾式法とすることにより、電極触媒層全体を乾式法で製造できるという利点がある。
上記電極触媒の中でも、Pt及びPtを含む合金は、固体高分子形燃料電池の作動温度である80℃付近の温度域において、酸素の還元(及び水素の酸化)に対する電気化学的触媒活性が高いことに加え、乾式法である蒸着によって容易に電子伝導性酸化物層に担持することができるため、特に好適に使用することができる。
電極触媒粒子の担持量は、触媒の種類、担体である電子伝導性酸化物層3aの厚み等の条件を考慮して適宜決定される。触媒担持量が少なすぎると電極性能が不十分となり、多すぎると触媒粒子が凝集して性能が低下する場合がある。触媒粒子がPt粒子の場合は、例えば、0.01〜5.0mg/cm2である。
(燃料電池用電極の用途)
本発明の燃料電池用電極は、カソードとしても、アノードとしても用いることができる。特に上記(反応2)で示される酸素の還元電気化学的触媒活性に優れ、燃料電池の運転条件(カソード条件)で、電子伝導性酸化物層の電気化学的酸化分解が起こらない点で、カソードとして用いることが好ましい。
なお、本発明の燃料電池用電極は、PEFCの電極として好適である。また、PEFC以外にもアルカリ型燃料電池、リン酸型燃料電池などの各種燃料電池における電極として用いることができる。また、水の電解装置用の電極としても好適に使用することができる。水の電解装置としては、本発明の燃料電池用電極とPEFCと同様な固体高分子電解質膜を使用した水の電解装置が好適な一例として挙げられる。
<2.燃料電池用電極の製造方法>
上述した本発明の燃料電池用電極は、以下に説明する製造方法(以下、「本発明の製造方法」と称す。)によって製造することが好適である。
すなわち、本発明の燃料電池用電極の製造方法は、電子伝導性を有するガス拡散層と、前記ガス拡散層の表面及び/又は内部に形成された電極触媒層とを有する燃料電池用電極の製造方法であって、電子伝導性酸化物からなる蒸着源を使用し、物理蒸着法によってガス拡散層の表面及び/又は内部に、ガス拡散性を有する電子伝導性酸化物層を形成する工程と、前記電子伝導性酸化物層に対し、電極触媒粒子を担持する工程と、を含む。
また、以下、上記ガス拡散性を有する電子伝導性酸化物層を形成する工程を「工程(1)」、電極触媒粒子を担持する工程を「工程(2)」と記載する場合がある。
本発明の製造方法の特徴は、工程(1)において、ガス拡散性を有する電子伝導性酸化物層を物理蒸着により形成することにある。
物理蒸着法では形成される電子伝導性酸化物粒子が複数個連結した連結粒子としてガス拡散層の表面または内部に堆積する。連結粒子内では複数個の電子伝導性酸化物粒子が連続しているため、粒界に起因する電気抵抗が小さくなり、電子伝導性酸化物層全体の電気抵抗が小さくなる。そのため、従来の湿式法で形成した電子伝導性酸化物担体粒子を用いて電子伝導性酸化物層を形成した場合と比較して、本発明の製造方法では、より電子伝導性に優れた電極を得ることができる。
なお、従来の燃料電池用電極の電極触媒層の導電性担体として広く使用されている炭素系材料は、蒸着法で製造すると結晶化度が低くなり、酸化腐食への耐久性が低下するため、本発明の燃料電池用電極の製造方法には適用できない。
本発明の製造方法において、ガス拡散層として、基材層及び前記基材層の片面に形成されたマイクロポーラス層を有するガス拡散層を使用すると、電子伝導性酸化物層をマイクロポーラス層の表面に形成することができる。そして、マイクロポーラス層の表面に形成された電子伝導性酸化物層に電極触媒粒子を担持することにより、燃料電池用電極の表面に電極触媒層を形成できる。
工程(2)において、電極触媒粒子の担持方法は湿式法でも乾式法でもよいが、工程(1)で形成した電子伝導性酸化物層に対し、電極触媒粒子を蒸着法により担持すれば、電子伝導性酸化物層の形成、電極触媒粒子の担持をすべて乾式法(ドライプロセス)で行うことができる。
本発明の燃料電池用電極において、電極触媒粒子の担持を湿式法で行うと、原料を含む液状物の調製、担体への電極触媒粒子の担持、ガス拡散層への塗布等の工程におけるそれぞれについて条件調整が難しく、製造される燃料電池用電極の性能が安定しない傾向にある、これに対し、電子伝導性酸化物層の形成、電極触媒粒子の担持をすべて乾式法(ドライプロセス)で行うと、湿式法における原料液状物を調整したり、塗布後に熱処理を行ったりする複雑なプロセスが不要となり、製造される燃料電池用電極の歩留まりが高くなるという利点がある。
そして、乾式法における蒸着の製造条件の制御は、湿式条件に比べて容易であるため、蒸着の製造条件のみを制御することで、燃料電池用電極の性能、ひいては該燃料電池用電極を用いた膜電極接合体の性能を制御することができる。
以下、本発明の燃料電池用電極の製造方法における各工程について詳細に説明する。
まず、工程(1)では、電子伝導性酸化物からなる蒸着源を使用し、物理蒸着法によってガス拡散層の上に、ガス拡散性を有する電子伝導性酸化物層を形成する。
ガス拡散層は、基材層と基材層上に形成されたマイクロポーラス層とからなる。ガス拡散層は、<1.本発明の燃料電池用電極>で上述した通りであり、ここでは詳しい説明を省略する。
本発明の燃料電池用電極の製造方法では、表面にマイクロポーラス層を有するガス拡散層を使用していることに特徴のひとつがある。ガス拡散層表面に電子伝導性酸化物層を物理蒸着で形成する場合、マイクロポーラス層を有さないガス拡散層(基材層のみ)では、蒸着種である気体状の電子伝導性酸化物がガス拡散層内部にまで拡散し、ガス拡散層表面に電子伝導性酸化物層を形成することができないが、基材層と比較して高密度で、表面平坦性に優れるマイクロポーラス層を有するガス拡散層では、マイクロポーラス層へ気体状の電子伝導性酸化物が拡散しづらいため、実質的にマイクロポーラス層の表面上に電子伝導性酸化物層を形成することができる。なお、マイクロポーラス層の厚みは、好適には1〜100μmである。
蒸着源に使用される電子伝導性酸化物は、酸化スズ、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン及び酸化タングステンから選択される1種を主体とする電子伝導性酸化物からなる。なお、工程(1)で使用される電子伝導性酸化物の詳細は、<1.本発明の燃料電池用電極>で上述した通りであり、ここでは詳しい説明を省略する。
この中でも、蒸着源が酸化スズを主体とする酸化物からなることが好ましく、特にニオブ(Nb)を0.1〜20mol%ドープしたニオブドープ酸化スズが特に好ましい。
蒸着源は、上記電子伝導性酸化物を製造したのちに後述する物理蒸着方法に適した形状(例えば、ペレット状)に加工して使用される。
物理蒸着法としては、パルスレーザー蒸着法(Pulsed Laser Deposition(PLD法))、スパッタリング蒸着法、電子線蒸着法、熱加熱蒸着法などが挙げられる。
電子伝導性酸化物層は、燃料電池用電極の電極触媒層の骨格となるため、ガス拡散性を有することが必要であり、上記物理蒸着法において、多孔構造でガス拡散性を有する電子伝導性酸化物が形成される条件を適宜選択する。電子伝導性酸化物層の厚さは、物理蒸着法の諸条件(特に製膜時間)を制御することで調製することができる。
本発明の製造方法において好ましい物理蒸着方法として、生産性の面ではスパッタリング蒸着法が好適である。スパッタリング蒸着法は、加速されたイオンを蒸着源(ターゲット)に照射して、ターゲットの表面の原子または分子を空間内に放出して薄膜を形成する方法である。
本発明の製造方法における蒸着源である電子伝導性酸化物は、高融点である酸化物が多く、熱加熱蒸着法が困難な場合があるが、スパッタリング蒸着法では高融点である酸化物にも適用できる利点もある。
スパッタリング蒸着方法は、2極法、マグネトロン法のいずれもでもよい。また、ターゲットが電子伝導性を有すため、ターゲットに印加する電源は、DC(直流)電源、RF(高周波)電源のいずれでもよい。
スパッタリング条件は、ターゲットである電子伝導性酸化物の種類や、スパッタリング方式、スパッタリング装置によって異なり、燃料電池用電極に要求されるガス拡散性(多孔構造)が得られる範囲で適宜選択される。
また、本発明の製造方法において好ましい物理蒸着方法として、PLD法が挙げられる。PLD法は、真空チャンバー内の蒸着源にパルスレーザーを断続的に照射することにより、蒸着源(ターゲット)をアブレーションして、放出されるフラグメント(イオン、クラスタ、分子、原子)を、所定の基板(本発明ではガス拡散層)上に堆積させる方法である。
PLD法は、スパッタリング蒸着法と同様に、蒸着源が高融点の酸化物である場合にも適用できる。さらに均一な組成の酸化物膜を製膜するのに適した方法であり、特に蒸着源がニオブドープ酸化スズなど他元素をドープした電子伝導性酸化物の場合には、蒸着源と同等の組成を有する電子伝導性酸化物層が形成される点で好ましい。
PLD法で用いられるレーザーの種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、エキシマレーザー、YAGレーザーを挙げることができる。
レーザーの出力条件は、レーザーの種類、形成対象となる電子伝導性酸化物層の多孔性、厚み等の諸条件を考慮して、適宜決定される。
また、蒸着温度は、燃料電池用電極に要求されるガス拡散性が得られる多孔構造が形成される範囲で決定され、通常、常温〜200℃程度であり、好ましくは15〜40℃である。蒸着温度が高すぎると、緻密な薄膜が形成されて、燃料電池用電極に要求される多孔構造を得ることができない場合がある。
製膜時における真空チャンバーの雰囲気は、例えば酸素(O2)等を挙げることができる。さらに、製膜時における真空チャンバーの圧力は、例えば30Pa以下にすることが好ましい。
工程(2)では、工程(1)で形成した電子伝導性酸化物層に対し、電極触媒粒子を担持する。工程(1)で形成した電子伝導性酸化物層は、多孔構造であるため、電子伝導性酸化物層の表面のみならず内部まで、電極触媒粒子を担持することができる。
以下、蒸着により電子伝導性酸化物層に電極触媒粒子を担持する場合について説明するが、上述のように担持方法は蒸着に限定されるものではない。
蒸着される電極触媒粒子としては、酸素の還元(及び水素の酸化)に対する電気化学的触媒活性を有するものであり、蒸着によって電子伝導性酸化物層に担持できるものであればよい。なお、工程(2)で使用される電極触媒粒子の詳細は、<1.本発明の燃料電池用電極>で上述した通りであり、ここでは詳しい説明を省略する。
電極触媒粒子として、Pt及びPtを含む合金は、酸素の還元(及び水素の酸化)に対する電気化学的触媒活性を有する蒸着によって容易に担持することができる点で好ましい。
電極触媒粒子の蒸着方法としては、物理蒸着法、化学蒸着法のいずれでもよい。
物理蒸着法としては、工程(1)で説明したスパッタリング蒸着法等が挙げられる。物理蒸着法の蒸着源として、目的とする電極触媒材料が使用され、電極触媒がPtの場合には例えば、Pt板を用いればよい。
化学蒸着法の場合、一般に、蒸気圧が高く、かつ、分解温度が低い原料を蒸着源として用いればよい。例えば、Pt触媒の場合、シクロペンタジエニルトリメチル白金(IV))錯体等のPt化合物が挙げられる。
電極触媒粒子の担持量や粒径は、電極触媒粒子の種類、目的とする性能を考慮して、蒸着条件を制御して適宜調節することができる。電極触媒粒子の担持量は、例えば、0.01〜5.0mg/cm2である。
<3.膜電極接合体(MEA)>
本発明の膜電極接合体は、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体であって、前記カソードとアノードの少なくとも一方が、上記本発明の燃料電池用電極であることを特徴とする。上述のように、本発明の燃料電池用電極は、カソード条件での電極性能、耐久性が高いため、少なくともカソードに本発明の燃料電池用電極を使用することが好ましい。
本発明の好適な実施形態として、カソードに本発明の燃料電池用電極をカソードに使用した膜電極接合体について説明する。
図2は本発明の実施形態に係る膜電極接合体の断面構造を模式的に示したものである。図2に示すように膜電極接合体10は、カソード4及びアノード5が固体高分子電解質膜6に対面して配置された構造を有する。
本実施形態において、カソード4は、本発明の燃料電池用電極1を用いているため、詳細な説明は省略する。より電極性能を高めるため、例えば、プロトン導電性材料を含む溶液を滴下する等の方法で、カソード4の電極触媒層にプロトン導電性材料を付与してもよい。なお、アノード5として本発明の燃料電池用電極を使用した場合には、カソード4としてその他の公知のカソードも使用できる。
アノード5は、電極触媒層5aとガス拡散層5bで構成される。アノード5としては、本発明の燃料電池用電極のほか、その他の公知のアノードも同様に使用できる。例えば、グラファイト、カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、グラッシーカーボンなどの炭素系材料からなる導電性担体の表面上に、触媒である貴金属粒子を担持した電極材料と、燃料電池の電解質材料との分散液を塗布・乾燥して製造された電極触媒層5aを、ガス拡散層5b上に形成した電極が挙げられる。アノード5のガス拡散層5bは、本発明の燃料電池用電極で説明したガス拡散層と同様のものが使用できる。
固体高分子電解質膜6としては、プロトン導電性を有し、化学的安定性及び熱的安定性を有するものであれば公知のPEFC用電解質膜を用いればよい。なお、図2では厚みを強調して図示しているが、電気抵抗を小さくするため固体高分子電解質膜6の厚みは通常0.05mm程度である。
固体高分子電解質膜6を構成する電解質材料としては、フッ素系電解質材料、炭化水素系電解質材料が挙げられる。特にフッ素系電解質材料で形成されている電解質膜が、耐熱性、化学的安定性などに優れているため好ましい。具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などが好適例として挙げられる。
炭化水素系高分子電解質材料としては、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテル、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン等が挙げられる。また、電解質膜として、無機系プロトン導電体であるリン酸塩、硫酸塩などからなる電解質膜を使用することもできる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
例えば、上記実施の形態ではカソードのみに本発明の燃料電池用電極を採用しているが、アノードにも本発明の燃料電池用電極を用いてもよい。
ここで、カソードとアノードの両方に本発明の燃料電池用電極を使用し、これらに固体高分子電解質膜を挟み込んで圧着する膜電極接合体の製造方法であると、膜電極接合体の製造プロセスをすべて乾式にすることができるという利点がある。
膜電極接合体の製造工程が、物理蒸着による燃料電池用電極の製造と、燃料電池用電極と固体高分子電解質膜との圧着のみとなるので、全行程を連続して乾式とすることができる。その結果、膜電極接合体の製造コストの大幅な低減に寄与する。なお、燃料電池用電極にプロトン導電性材料を塗布した後に圧着工程に供すれば、全行程をほぼすべて乾式とすることが可能となる。
また、このような乾式一貫製法であると、実質的には燃料電池用電極を製造する際の蒸着条件のみを制御することで、膜電極接合体の性能を制御できるという利点がある。
なお、炭素担体を燃料電池用電極に用いる場合、上述のように蒸着法では、酸化腐食の耐久性が著しく劣る結晶性の低い炭素担体しか製造できないので、燃料電池用電極の電極触媒層に、蒸着法で製造できる上述の電子伝導性酸化物を用いて初めて、膜電極接合体の乾式一貫製法が可能になる。
<4.固体高分子形燃料電池>
本発明の固体高分子形燃料電池(単セル)は、本発明の膜電極接合体を備えてなり、通常、膜電極接合体をガス流路が形成されたセパレータで挟持した構造を有する。
図3は本発明の固体高分子形燃料電池の代表的な構成を示す概念図である。図3に示すように、固体高分子形燃料電池20においてアノード5には水素が供給され、上述した(反応1)2H2 → 4H++4e-によって、生成したプロトン(H+)は固体高分子電解質膜6を介してカソード4に供給され、また、生成した電子は外部回路21を介してカソードへ供給され、(反応2)O2+4H++4e-→2H2Oによって、酸素と反応して水を生成する。このアノードとカソードの電気化学反応によって両電極間に電位差を発生させる。本発明の固体高分子形燃料電池において、本発明の膜電極接合体以外の構成要素は、公知の固体高分子形燃料電池と同様であるため、詳細な説明を省略する。
実際には、本発明の固体高分子形燃料電池(単セル)が発電性能に応じた基数だけ積層された燃料電池スタックが形成され、ガス供給装置、冷却装置などその他付随する装置を組み立てることにより使用される。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
1.燃料電池用電極の製造
下記工程(1)、(2)により、ガス拡散層の一方面に電極触媒層形成された実施例1の燃料電池用電極を製造した。

工程(1):
ガス拡散層としてマイクロポーラス層(MPL)付きのカーボンペーパー(SIGRACT Gas Diffusion Media社製、型番:GDL25BC)を用い、蒸着源(ターゲット)として4mol%ニオブドープ酸化スズを用いて、PLD装置(パスカル社製、型番:STD−PLD−11301)により、下記条件でガス拡散層上に、電子伝導性酸化物層を製膜した。

(PLD製膜条件)
・ターゲット:Sn0.96Nb0.042 (20mmφペレット)
・レーザー:エキシマレーザー(Coherent社製、型番:COMPeXPro50、波長193nm、出力100mJ、電圧22V、周波数10Hz)
・雰囲気:O2、2Pa
・製膜温度:25℃
・製膜時間:1分
工程(2):
スパッタリング装置として、日立ハイテクノロジーズ社製、スパッタリング装置(型番E−1010)を使用し、蒸着源(ターゲット)としてPt板を使用した。スパッタリング条件を電流値15mA、真空度10Paとし、電子伝導性酸化物層へのPt担持量が0.5mg/cm2となるようにスパッタリング時間を設定して、電子伝導性酸化物層にPt粒子を担持させて電極触媒層として実施例1の燃料電池用電極を得た。
2.膜電極接合体(MEA)の製造
カソードとして、実施例1の燃料電池用電極を使用した膜電極接合体(MEA)を以下の手順で作製した。
まず、電解質膜として、ナフィオン膜(厚み:50μm)に、46wt%Pt/C(田中貴金属工業株式会社、TEC10E50E)を、ナフィオン溶液を含む所定の有機溶媒に分散させて、アノード形成用の分散溶液を調合した。得られた分散溶液をナフィオン膜上にスプレー印刷して、所定の厚みのアノード(電極触媒層)をナフィオン膜上に作製した。アノード(電極触媒層)の上には、ガス拡散層として撥水性カーボンペーパー(東レ社製,型番:EC−TP1−060T)を配置した。なお、アノードの形成において、Pt量が0.2mg/cm2になるように調整した。
次いで、アノードを形成したナフィオン膜の反対面に実施例1の燃料電池用電極を配置し、これらを所定の条件(0.3kN、130℃)で190秒間圧着して、実施例1のMEAを得た。
(比較例1)
1.燃料電池用電極の製造
工程(1)におけるPLD製膜条件のうち、製膜時間を5分に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の燃料電池用電極を得た。
2.MEAの製造
カソードとして、実施例1の燃料電池用電極に代えて、比較例1の燃料電池用電極を使用した以外は、実施例1のMEAの製造方法と同様にして、比較例1のMEAを得た。
(比較例2)
1.比較例2の燃料電池用電極材料
比較例2として、湿式法によるPt担持ニオブドープ酸化スズ粒子を、上記特許文献3で開示された方法に準じる方法で製造した。
まず、Sn:Nb=96:4(mol比)の割合となるように塩化スズ水和物(SnCl2・2H2O)及び塩化ニオブ(NbCl5)を純水に溶解させ、アンモニア共沈法でニオブドープ酸化スズ粒子を作製し、次いで、ニオブドープ酸化スズ粒子に、白金アセチルアセトナート法によりPt担持した。Pt前駆体(Pt(C5722)の量は、Ptが20wt%になるようにし、ジクロロメタン(CH2Cl2)中で担持した。
得られたスラリーを乾燥後、N2雰囲気下で、210℃で3時間、240℃で3時間還元処理を施すことで、比較例2の燃料電池用電極材料を得た。
2.MEAの製造
比較例2の燃料電池用電極材料から形成されるカソードを使用してMEAを作製した。まず、実施例1のMEAの製造方法と同様の方法で、ナフィオン膜上にアノードを形成した。次いで、アノードと同様の方法でカソード形成用の分散溶液を調合し、得られた分散液をナフィオン膜上にスプレー印刷して、ナフィオン膜上に所定の厚みのカソード(電極触媒層)を作製した。アノード、カソードそれぞれの上にカーボンペーパーを配置して、所定の条件(0.3kN、130℃)で圧着して、比較例2のMEAを得た。なお、比較例3のMEAのカソードにおけるPt量は0.5mg/cm2である。アノードのPt量は0.2mg/cm2である。
(参考例1)
市販の46wt%Pt/C(田中貴金属工業株式会社、TEC10E50E)を、参考例1の燃料電池用電極材料として使用し、該燃料電池用電極材料を使用した以外は、比較例2と同様の方法にて、参考例1のMEAを得た。なお、参考例1のMEAのカソードにおけるPt量は0.5mg/cm2である。アノードは0.2mg/cm2である。
[評価1:微細構造観察]
比較例1の燃料電池用電極の断面SEM像を図4に示す。図4に示すようにガス拡散層は基材層であるカーボンペーパー上に20μm程度のマイクロポーラス層(MPL)が形成されており、MPLの表面に電子伝導性酸化物層であるニオブドープ酸化スズ層が形成されていることが分かる。10箇所でニオブドープ酸化スズ層の膜厚を評価したところ、54.3(±13.4)μmであった。図5に示す高倍率の断面SEM像からわかるように比較例1の燃料電池用電極のニオブドープ酸化スズ層は緻密な構造をしていた。
実施例1の燃料電池用電極の断面SEM像を図6に示す。図6に示すようにMPLの表面に電子伝導性酸化物層であるニオブドープ酸化スズ層が形成されていることが分かる。10箇所でニオブドープ酸化スズ層の膜厚を評価したところ、15.8(±6.2)μmであった。また、ニオブドープ酸化スズ層に担持されたPt粒子の大きさを評価したところ、粒径30nm程度であり、ニオブドープ酸化スズ層の表面のみならず内部にも分布していることが確認された。
[評価2:電気化学的評価]
実施例1、比較例1,2及び参考例1の燃料電池用電極を有するMEAを用いて、IV特性とサイクル耐久性の評価を行った。
[評価2−1]
実施例1、比較例1のMEAを組み込んだ単セル発電評価用治具(自作)を80℃に設定した恒温槽内に設置し、以下の条件でIV特性の評価を行った。その際、燃料電池評価装置(東陽テクニカ社製、型番:PE−8900K)およびポテンショ/ガルバノスタット(Solatron社製、型番:SI1287)を用いた。図7に結果を示す。
(アノード条件)
電極面積:0.5cm2
供給ガス種 :100% H2
ガス供給速度 :100mL/min
供給ガス加湿温度 :79℃
(カソード条件)
電極面積:0.5cm2
供給ガス種 :Air
ガス供給速度 :100mL/min
供給ガス加湿温度 :60℃
図7に示すように、実施例1の燃料電池用電極(製膜時間1分)をカソードとして用いたMEAでは、電流密度600mA/cm2まで出力可能であった。このことから、実施例1の燃料電池用電極では、ガス拡散性の高い電子伝導性酸化物層が形成され、優れた出力特性を示すことが確認された。
一方、比較例1の燃料電池用電極(製膜時間5分)をカソードとして用いたMEAでは、実施例1と比較して著しく性能が低下している。これは製膜時間が長すぎて、電子伝導性酸化物層が緻密化、あるいは膜厚が大きくなりすぎて、電極触媒層としてのガス拡散性が不十分になったことに起因する。
[評価2−2]
また、比較例2のMEAを用いて、[評価2−1]と同様の装置、条件にて、IV特性の評価を行い、実施例1の結果と比較した。なお、比較例2のMEAは、従来の湿式法で製造した電極触媒層を有する燃料電池電極をカソードとして用いている。
図8に示すように、実施例1では、比較例2と比較して低電流密度ではセル電圧が低かったが、200mA/cm2を超えると逆転し、実施例1の方がより高いセル電圧を示した。このことから、乾式法(物理蒸着法)で製造した電極触媒層を有する実施例1の燃料電池用電極の方が高電流密度において優れた特性を示すことが分かった。
[評価3]サイクル耐久性試験
[評価3−1] 初期圧保持率の評価
実施例1、比較例2および参考例1の燃料電池用電極をカソードとして用いたMEAを用いて、燃料電池実用化推進審議会「固体高分子形燃料電池の目標・研究開発課題と評価方法の提案(平成23年度改訂版)」における「III−3−3 試験名:電位サイクル試験法1/2」(起動停止模擬電位サイクル)に準じる方法でサイクル耐久性試験評価を行った。図9に起動停止模擬電位サイクルの説明図を示す。
まず、実施例1、比較例2および参考例のMEAを使用して、上記評価2と同じ装置を使用して、初期IV特性を測定した。次いで、起動停止模擬電位サイクルとして、電位を1.0Vから1.5Vまで0.5V/secで走査させて、三角波で加速試験を行い、所定回数サイクル後、IV測定を行う。この操作を繰り返し、燃料電池自動車(FCV)で10年間の使用に相当する60,000サイクルまで実施した。結果を図10に結果を示す。
図10に示すように、電極触媒層における担体が炭素である参考例1では、2000サイクル程度で著しく電圧が低下した。この劣化要因として、カソード条件下における炭素担体の腐食と、炭素担体の腐食によるPt触媒粒子の脱離が示唆される。
一方、電極触媒層における担体が電子伝導性酸化物層である実施例1および比較例2では、初期性能は参考例1に劣るものの、60,000サイクル後も初期性能からそれほど劣化せずに発電性能を維持していることがわかる。このことから、電子伝導性酸化物の担体は、カソード条件下で熱力学的に安定であるため、炭素担体のように腐食されず、Pt触媒粒子の脱離が生じないため、性能劣化が起こりづらいと考えられる。そして、その作製方法(実施例1(物理蒸着法)、比較例2(湿式法))に起因するものではないことがわかった。
[評価3−2] 交流インピーダンス測定
実施例1、比較例2及び参考例1の燃料電池用電極をカソードとして用いたMEAを用いて、交流インピーダンス法により、それぞれの燃料電池用電極のオーミック抵抗の評価を行った。
[評価2−1]で記載した評価装置、及びFrequency response analyzer (Solartron社製)を用い、周波数100kHzから0.1Hzの範囲で変化させ、Cole−Coleプロットを得た。なお、アノード条件およびカソード条件は、[評価2−1]と同様である。図11(a)にCole−Coleプロットの説明図、図11(b)は想定する等価回路を示す図を示す。図11(b)において、Rsがオーミック抵抗,Rpが非オーミック抵抗,Cが電気二重層容量となり、オーミック抵抗及び非オーミック抵抗を分離して評価できる。
図12に実施例1、比較例2及び参考例1の燃料電池用電極をカソードに使用したMEAのオーミック抵抗のサイクル数に対する変化を示す。なお、実施例1、比較例2及び参考例1のMEAは、カソード以外の構成が同じである。そのため、図12に示すオーミック抵抗の変化は主にカソードに起因すると判断した。
カソードの担体に炭素を使用した参考例1では、サイクル数に伴ってオーミック抵抗が急激に増大しており、炭素担体が電位サイクルに伴い著しく劣化していると考えられる。これに対し、カソードの担体に電子伝導性酸化物である実施例1および比較例2では、物理蒸着法(実施例1)、湿式法(比較例2)にかかわらず、電位サイクルに対してオーミック抵抗がほとんど変化しておらず、担体である電子伝導性酸化物が安定であると考えられる。一方、オーミック抵抗の値は、物理蒸着法で製造した実施例1の方が、湿式法で製造した比較例2より小さいことがわかる。
このことから、物理蒸着法により電子伝導性酸化物粒子が複数個連結した連結粒子により電子伝導性酸化物層が形成されている実施例1の燃料電池用電極は、従来の湿式法で形成した電子伝導性酸化物担体粒子を用いた比較例2の燃料電池用電極と比較して、電極全体の電気抵抗(オーミック抵抗)が小さいことが示された。
以上の結果より、本発明の燃料電池用電極(実施例1)は、従来の湿式法で製造した電子伝導性酸化物を担体とした燃料電池用電極と比較して、同等以上の発電性能を有し、かつ、電気抵抗(オーミック抵抗)が小さく、カソード条件下において優れたサイクル耐久性を有していることがわかった。
本発明によれば、十分な電子伝導性と、優れた耐久性を有する非炭素系の電子伝導性酸化物を電極触媒層に使用した燃料電池用電極が提供される。当該燃料電池用電極は、特に起動停止を伴う長期運転が必要である固体高分子形燃料電池用の電極に好適である。

Claims (12)

  1. 基材層及び前記基材層の片面に形成されたマイクロポーラス層を備える電子伝導性ガス拡散層と、前記マイクロポーラス層の表面に形成された電極触媒層とを有する燃料電池用電極であって、
    前記電極触媒層が、物理蒸着により形成されたガス拡散性を有する電子伝導性酸化物層と、前記電子伝導性酸化物層に担持された電極触媒粒子とを含むことを特徴とする燃料電池用電極。
  2. 前記電子伝導性酸化物層が、酸化スズを主体とする酸化物からなる請求項1に記載の燃料電池用電極。
  3. 前記電子伝導性酸化物層が、ニオブを0.1〜20mol%ドープしたニオブドープ酸化スズからなる請求項1または2に記載の燃料電池用電極。
  4. 前記電極触媒層が、さらにプロトン導電性材料を含有する請求項1からのいずれかに記載の燃料電池用電極。
  5. 基材層及び前記基材層の片面に形成されたマイクロポーラス層を備える電子伝導性ガス拡散層と、前記マイクロポーラス層の表面に形成された電極触媒層とを有する燃料電池用電極の製造方法であって、
    電子伝導性酸化物からなる蒸着源を使用し、物理蒸着法によって前記マイクロポーラス層の表面に、ガス拡散性を有する電子伝導性酸化物層を形成する工程と、
    前記電子伝導性酸化物層に対し、電極触媒粒子を担持する工程と、
    を含むことを特徴とする燃料電池用電極の製造方法。
  6. 前記蒸着源が、酸化スズを主体とする酸化物からなる請求項5に記載の燃料電池用電極の製造方法。
  7. 前記蒸着源が、ニオブを0.1〜20mol%ドープしたニオブドープ酸化スズからなる請求項5または6に記載の燃料電池用電極の製造方法。
  8. 前記電子伝導性酸化物層を形成する工程における物理蒸着法が、パルスレーザー蒸着法(PLD)である請求項からのいずれかに記載の燃料電池用電極の製造方法。
  9. 前記電極触媒粒子を担持する工程における担持方法が、物理蒸着法または化学蒸着法である請求項からのいずれかに記載の燃料電池用電極の製造方法。
  10. 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体であって、
    前記カソードとアノードの少なくとも一方が、請求項1からのいずれかに記載の燃料電池用電極であることを特徴とする膜電極接合体。
  11. 請求項10に記載の膜電極接合体を備えてなることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
  12. 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体の製造方法であって、
    請求項に記載の燃料電池用電極の製造方法によって、カソードとアノードのそれぞれの燃料電池用電極を製造する工程と、
    製造されたカソードとアノードに固体高分子電解質膜を挟み込んで圧着する工程と、を含むことを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
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