JP2006078215A - 電解コンデンサの劣化予測方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 基準となる時点および前記基準となる時点からN年経過後に測定した電解コンデンサ17の等価直列抵抗17bの値ESRoおよびESRnと、前記基準となる時点および前記基準となる時点からN年経過後の電解コンデンサ17の電解液量VoおよびVnとの関係式 ESRn/ESRo=(Vo/Vn)2 から、前記基準となる時点からN年経過後の電解コンデンサ17の電解液の残存率νn=Vn/Voを算出し、1年当たりの前記電解液の減少率δ=(1−νn)/Nを算出し、ESRnとESRoとの平均値Rを求め、前記電解液の減少の加速因子K=ESRn/Rを定義し、前記基準となる時点からN+1年経過後の電解液の残存率νn+1=νn−δKを予測し、予測したνn+1に対応する等価直列抵抗17bの値ESRn+1を予測する。
【選択図】 図1
Description
電解コンデンサの寿命を予測する方法として、電解コンデンサの電解液の減少率の二乗に反比例して電解コンデンサの等価直列抵抗が増加するという関係を利用する方法がある(たとえば非特許文献1参照)。
具体的には、まず上記関係から20℃における電解コンデンサの等価直列抵抗ESRを算出する(ステップ101)。つぎに、この等価直列抵抗は温度依存性があるので、予め実験的に温度と等価直列抵抗との関係式を求める。そして、この関係式により電解コンデンサの使用による発熱により電解コンデンサの温度が上昇したときの等価直列抵抗ESRhotを算出し(ステップ102)、算出した等価直列抵抗ESRhotとこの等価直列抵抗ESRhotを流れる電流による発熱量と電解コンデンサの熱抵抗とから電解コンデンサの温度上昇分ΔTを算出する(ステップ103)。つぎに、算出した温度上昇分ΔTと周囲温度とから電解コンデンサの内部温度Tを算出する(ステップ104)。つぎに、算出した内部温度Tを使用して電解コンデンサの電解液の蒸気圧P(前記内部温度Tの関数である。)を算出し(ステップ105)、算出した蒸気圧Pを使用して一定期間(たとえば100時間)における電解液の損失量Vl(蒸気圧Pの関数である。)を算出する(ステップ106)。
つぎに、算出した電解液の損失量Vlを使用して電解コンデンサの電解液の残量Vを算出する。つぎに、前記電解コンデンサの電解液の減少率の二乗に反比例して電解コンデンサの等価直列抵抗が増加するという関係により決まる電解コンデンサの電解液の残量Vに相当する電解コンデンサの等価直列抵抗ESRが一定の限度(初めの値の3倍の値)を超えているときには(ステップ107)、電解コンデンサの寿命がつきているので、この寿命予測を終了し、超えていないときには、超えるまで前記ステップ101からステップ107までを繰り返す。このようにして、前記電解コンデンサの劣化を予測する。
アルミ電解コンデンサの寿命予測モデル マイケル・ガスペリ ロックウェル先端技術研究所 1996 IAS Conf.Rec.Vol3.pp1347−1351
そこで、本発明が解決しようとする課題は、簡便で実用的な手順で電源回路の出力電圧の平滑用の電解コンデンサの等価直列抵抗を予測してこの電解コンデンサの劣化を予測できるようにすることである。
ESRn/ESRo=(Vo/Vn)2 (1)
から、前記基準となる時点からN単位時間経過後の電解コンデンサの電解液の残存率νn
νn=Vn/Vo
を算出し、さらに、前記単位時間当たりの前記電解コンデンサの電解液の減少率δを
δ=(1−νn)/N (2)
として算出し、前記ESRnとESRoとの平均値Rを求め、さらに、前記電解液の減少の加速因子Kとして
K=ESRn/R (3)
を定義し、このKを用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の前記電解液の残存率νn+1を
νn+1=νn−δK (4)
として予測し、予測したνn+1を用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の前記電解コンデンサの等価直列抵抗ESRn+1を
ESRn+1=ESRo(1/νn+1)2 (5)
として求め、該ESRn+1に基づいて電解コンデンサの劣化を予測することを特徴とする電解コンデンサの劣化予測方法である。
これにより、前記電解液の減少の加速因子Kとして
K=ESRn/R
を定義し、前記基準となる時点からN単位時間経過後の電解コンデンサの電解液の残存率νn、前記単位時間当たりの前記電解コンデンサの電解液の減少率δおよび前記Kを用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の前記電解液の残存率νn+1を
νn+1=νn−δK
として予測し、予測した電解液の残存率νn+1に対応する等価直列抵抗の値ESRn+1を予測しているので、簡便で実用的な手順により前記等価直列抵抗の値ESRn+1を予測することができる。そして、前記N単位時間経過時を現時点とすれば、現時点から1単位時間経過後の前記等価直列抵抗の値を予測することができる。ここで、等価直列抵抗の値は電解液の減少割合に従って増加するので、等価直列抵抗の値を予測することにより電解コンデンサの劣化を予測することができる。
これにより、請求項1記載の電解コンデンサのESRn+1の算出方法を使用して、請求項1記載の前記基準となる時点からN+M単位時間経過後の電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRn+mを求め、該ESRn+mに基づいて電解コンデンサの劣化を予測することができる。そして、前記N単位時間経過時を現時点とすれば、現時点からM単位時間経過後の電解コンデンサの劣化を予測することができる。
これにより、前記等価直列抵抗の値ESRn+1またはESRn+mの前記等価直列抵抗ESRoに対する比が3以上になる時点においては電解コンデンサの寿命が尽きていると判断できる。
さらに、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果とともに、簡便で実用的な手順により、現時点からM単位時間経過後の前記電解コンデンサの劣化の程度を予測することができる。
さらに、請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果とともに、前記電解コンデンサの劣化による交換時期の予測が容易になる。
図1は、電解コンデンサを組み込んだスイッチングレギュレータを示し、図2は前記電解コンデンサの劣化予測方法を説明し、図3は本発明による予測データと実測データとの比較を示し、図4は本発明の応用例のフローチャートを示す。
出力端子18a、18b間には電子計測制御装置等の一定の負荷20が接続されている。なお、一定の負荷20の電力消費量は通常経年により変化しないので、電解コンデンサ17の充放電電流の平均実効値も一定である。
また、コイル16のインダクタンスはたとえば100μHであるので、このときは2πfLは約63Ωになる。このため、コイル16のインピーダンスはESRより著しく大きくなる。さらに、コイル16のインピーダンスと一定の負荷20のインピーダンスを並列に接続したインピーダンスの値は、約0.5Ωとなる。
このため、前記周波数fでは、電解コンデンサ17のインピーダンスはほぼESRに等しくなり、かつ、電解コンデンサ17に並列に接続されている一定の負荷20およびコイル16のインピーダンスの合成値は電解コンデンサ17のインピーダンスより著しく大きくなる。
スイッチングレギュレータ10により一定の負荷20に電力を供給した場合に、図2に示すように、基準となる時点に測定した電解コンデンサ17の等価直列抵抗17bの値ESRoと、前記基準となる時点からN単位時間(たとえばN年、N月等)経過後に測定した等価直列抵抗17bの値ESRnとを測定し、前記測定したESRoおよびESRnと、前記基準となる時点での電解コンデンサ17の電解液量Voおよび前記基準となる時点からN単位時間経過後の電解コンデンサ17の電解液量Vnとの関係式
ESRn/ESRo=(Vo/Vn)2 (1)
によって、前記基準となる時点からN単位時間経過後の電解コンデンサ17の電解液の残存率をνnとして
νn=Vn/Vo
を算出し、さらに、前記単位時間当たりの電解コンデンサ17の電解液の減少率δを
δ=(1−νn)/N (2)
として算出し、さらに、上述のように等価直列抵抗17bの値ESRよりも等価直列抵抗17bに直列に接続されているコイル16のインピーダンスが著しく大きいので、等価直列抵抗17bの値ESRの増加による等価直列抵抗17bを流れる電流値の減少が僅かであるため、等価直列抵抗17bの値ESRの増加により、等価直列抵抗17bによる発熱量が増加し、前記電解液の減少が加速される。このため、前記電解液の減少の加速因子Kとして
K=ESRn/R (3)
を定義する。なお、Rは前記ESRnとESRoとの平均値であり、前記ESRnはESRoより大きいので、Kは1より大きい。そして、このKを用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の前記電解液の残存率νn+1を
νn+1=νn−δK (4)
として予測する。そして、予測したνn+1を用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の等価直列抵抗17bの値ESRn+1を
ESRn+1=ESRo(1/νn+1)2 (5)
として予測する。
なお、上記加速因子Kを導入したことにより、図2において、前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の電解コンデンサの電解液の量Vn+1は、V0とVnとを結ぶ直線より下側の点線で示す直線上に位置する。
K=ESRn/R
を定義し、このKを用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の前記電解液の残存率νn+1を簡単な代数式である式(4)により
νn+1=νn−δK (4)
として予測し、予測した電解液の残存率νn+1に対応する等価直列抵抗17bの値ESRn+1を予測しているので、簡便で実用的な手順により等価直列抵抗17bの値ESRn+1を予測することができる。これにより、ESRn+1の値が劣化判定レベル(例えば図3に示すように未使用時の等価直列抵抗の3倍)を超えるか否かにより電解コンデンサの劣化を予測することができる。
これにより、上述の電解コンデンサ17の劣化予測方法を使用して、前記基準となる時点からN+M単位時間経過後の等価直列抵抗17bの値ESRn+mを予測することができる。そして、前記N単位時間経過時を現時点とすれば、現時点からM単位時間経過後の等価直列抵抗17bの値ESRn+mを予測することができる。
図3において、横軸の経年では5年目の時点を基準時とし、12年目をN年とし、前記基準時のESR0および前記12年目のESRnにより等価直列抵抗17bの値ESRを予測した場合が示されている。このようにして予測した等価直列抵抗17bの値ESRは、経年により増加している。なお、前記ESRの予測データはESRの実測データとよく近似している。
ここで、経験的に電解液が未使用時の状態から約40%低下するときが電解コンデンサの寿命と言われており、これを前述の式(1)に当てはめると等価直列抵抗の比がほぼ3となることから、等価直列抵抗17bの値ESRn+1またはESRn+mの等価直列抵抗17bの値ESRoに対する比が3以上になる時点を予測することにより、電解コンデンサ17の交換時期を計画することができる。
図4に示すフローチャートにおいて、まず、スイッチングレギュレータ10の設置時に電解コンデンサ17の初期ESR0を測定する(ステップS1)。つぎに、6年目の定期点検にてESR6を測定する(ステップS2)。つぎに、12年目の定期点検にてESR12を測定する(ステップS3)。
つぎに、測定したESR6およびESR12を用いて上述の劣化予測プログラムを実行する(ステップS4)。
なお、図3に示すように、電解コンデンサ17の未使用時の等価直列抵抗17bの値と電解コンデンサ17を5年間使用した時点の電解コンデンサ17の使用直前の時点の等価直列抵抗17bの値との差が僅かであるので、経年5年および経年12年のデータを使用した劣化予測結果にて、電解コンデンサ17の寿命の予測が可能であることが判明した。また、通常定期点検の周期が6年・12年であることから、6年目および12年目のデータを使用することにする。ここで、劣化予測プログラムは、請求項1に対応する計算プログラムであるので、上記式(1)から式(5)までの計算をして18年目のESR18を予測することになる。
つぎに、予測したESR18が初期値ESR0の3倍を超えている場合には(ステップS5)、15年目のESR15を測定する(ステップS6)。一方、予測したESR18が初期値ESR0の3倍を超えていない場合には、18年目のESR18を測定する(ステップS7)。そして、測定したESR15またはESR18がESR0の3倍を超えているときは(ステップS8)、スイッチングレギュレータ10の修理、即ち電解コンデンサ17の交換を計画する(ステップS9)。
一方、ESR15またはESR18の測定値がESR0の3倍を超えていないときは、劣化判定プログラムを実行する(ステップS10)。このときの条件は、基準となる時点の等価直列抵抗17bの値をESR6とし、N単位時間経過後の等価直列抵抗17bの値をESR15またはESR18の測定値とするものである。そして、ESR0の3倍を超える時点を予測する。
最後に、予測した等価直列抵抗17bの値がESR0の3倍を超える時点の前年に、スイッチングレギュレータ10の修理、即ち電解コンデンサ17の交換をするように計画する(ステップS11)。
このため、スイッチングレギュレータ10を電源とする電子計測制御装置の稼動の信頼度の向上が期待でき、前記電子計測制御装置を含むプラントシステム全体の稼動の信頼度を向上させることができる。
17 電解コンデンサ
17a キャパシタンス
17b 等価直列抵抗
20 一定の負荷
30 ESR測定器
Claims (3)
- 電解コンデンサの劣化予測方法であって、基準となる時点に測定した前記電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRoと、前記基準となる時点からN年等のN単位時間経過後に測定した前記電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRnとを測定し、
前記測定したESRoおよびESRnと、前記基準となる時点での前記電解コンデンサの電解液量Voおよび前記基準となる時点からN単位時間経過後の電解コンデンサの電解液量Vnとの関係式
ESRn/ESRo=(Vo/Vn)2
から、前記基準となる時点からN単位時間経過後の電解コンデンサの電解液の残存率νn
νn=Vn/Vo
を算出し、さらに、前記単位時間当たりの前記電解コンデンサの電解液の減少率δを
δ=(1−νn)/N
として算出し、前記ESRnとESRoとの平均値Rを求め、さらに、前記電解液の減少の加速因子Kとして
K=ESRn/R
を定義し、このKを用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の前記電解液の残存率νn+1を
νn+1=νn−δK
として予測し、予測したνn+1を用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の前記電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRn+1を
ESRn+1=ESRo(1/νn+1)2
として求め、該ESRn+1に基づいて電解コンデンサの劣化を予測することを特徴とする電解コンデンサの劣化予測方法。 - 請求項1記載のESRn+1の算出方法を少なくとも2回繰り返して、Mを2以上の整数として、請求項1記載の前記基準となる時点からN+M単位時間経過後の電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRn+mを求め、該ESRn+mに基づいて電解コンデンサの劣化を予測する電解コンデンサの劣化予測方法であって、
1単位時間毎の等価直列抵抗の値を順次予測し、その際、先に予測した等価直列抵抗の値と前記基準となる時点の等価直列抵抗の値を使用して先に等価直列抵抗の値を予測した時点から1単位時間経過した時点の等価直列抵抗の値を予測することにより、請求項1記載の前記基準となる時点からN+M単位時間経過後の電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRn+mを求め、該ESRn+mに基づいて電解コンデンサの劣化を予測することを特徴とする電解コンデンサの劣化予測方法。 - 請求項1または2記載の電解コンデンサの劣化予測方法において、
さらに、前記等価直列抵抗の値ESRoが未使用時の電解コンデンサの等価直列抵抗の値であるとき、前記等価直列抵抗の値ESRn+1またはESRn+mの前記等価直列抵抗の値ESRoに対する比が3以上になる時点を予測し、この予測を基に前記電解コンデンサの交換時期を計画することを特徴とする電解コンデンサの劣化予測方法。
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