JP2006067881A - 新規乳酸菌と乳酸菌製剤 - Google Patents

新規乳酸菌と乳酸菌製剤 Download PDF

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Abstract

【課題】 人(動物)の免疫機能を向上させることと、アレルギー症状を改善(治癒)することを課題とする。
【解決手段】 麹菌を用いて大豆を発酵させた培養物中にエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)菌株に属する乳酸菌、即ち、エンテロコッカス・フェシウムIS−1菌株により達成される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、乳酸菌、特にエンテロコッカス(Enterococcus)属の乳酸菌およびそれを用いた乳酸菌製剤に関する。
乳酸菌は、発酵産業でよく利用されている菌体である。例えば、我が国の伝統的大豆発酵製品として味噌があるが、味噌と乳酸菌とは非常に密接な関係があるとされている。具体的には、麦味噌または豆味噌において、麹の添加または各仕込みの段階に、乳酸球菌であるエンテロコッカスまたはペディオコッカス(Pediococcus)は自然発酵促進剤またはスターターとして添加され、味噌の風味等に重要な役割を果たすことが報告されている。また、乳酸菌は、人(動物)の腸内細菌として存在し、整腸作用および過剰摂取されたコレステロールの体外排出等、体内調整物質としてよく知られている。
近年、人(動物)は生活環境の変化等によるストレスが原因で腸管粘膜免疫が低下し、アレルギー性疾患等が非常に増加しているとの報告がなされている(非特許文献1)。アレルギー性疾患患者はヘルパーT細胞の1型ヘルパーT細胞(以下、「Th1」という)と2型ヘルパーT細胞(以下、「Th2」という)の存在バランスが崩れTh2が優位な状態となっているのではないかとと云われている。
このようなアレルギー性疾患に対処するために種々の乳酸菌製剤が開発されているが、これら乳酸菌の殆どが桿菌であるラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する菌体がほとんどである。例えば、特許文献1によれば、抗アレルギー剤として、ラクトバチルス・アシドフィスCP1613株および同L92株、またはラクトバチル・ファーメンタムCP34株に属する乳酸菌を有効成分として含んでなる、抗アレルギー剤が開示されている。
また、植物性由来の乳酸菌製剤に関してはラクトバチラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)属に属する菌体がほとんどであり、植物性由来の乳酸菌(球菌)の単離およびそれを用いた乳酸菌製剤は未だ開発されていない。特に、味噌等の植物性食品(植物性発酵食品)由来の有用な乳酸球菌の選択と、このような乳酸球菌のプロバイオティクスとしての利用は十分になされていないのが現状である。
従って、現在、乳酸球菌、とりわけ植物性食品(特に植物性発酵食品)由来の新規有用な乳酸菌の選択と、それを用いた乳酸菌製剤の開発が要求されている。
特開2004−26729号 「粘膜免疫学の最前線」吉開泰信編;116〜129頁(医薬ジャーナル社発行)
本発明者等は、本発明時において、麹菌を用いて大豆を発酵させた培養物中に乳酸菌の一種であるエンテロコッカス・フェシウムIS−1株の菌体を見出し、その菌体が人(動物)の免疫機能を向上させることと、アレルギー症状を改善(治癒)するとの知見を得た。よって、本発明はかかる知見によるものである。従って、本発明は、新規乳酸菌であるエンテロコッカス・フェシウムIS−1株とその利用方法を提供し、人(動物)の免疫力の向上とアレルギー症状の治癒を高い次元で達成することを目的とするものである。
従って、本発明によれば、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)菌株に属する乳酸菌、即ち、エンテロコッカス・フェシウムIS−1菌株を提供することができる。
本発明による新規乳酸菌によれば、この新規乳酸菌またはそれを処理した製剤物を医薬として投与または食品に添加することにより、人(動物)のNK細胞活性を高め、腸管パイエル板のインターフェロンガンマ(以下、「IFN−γ」という)とイムノグロブリンA(以下、「IgA」という)の生成を増進させて、免疫力を高い次元で向上させる効果がある。また、この新規乳酸菌またはそれを処理した製剤物が医薬物として投与されると、IFN−γの生成を増進させTh1を有意に増強し、Th2の抑制しアレルギー疾患を高い次元で改善し治癒することを可能とする。
微生物
本発明による新規微生物はエンテロコッカス・フェシウムIS−1であり、この菌体は、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)属に属する乳酸菌である。
微生物の寄
エンテロコッカス・フェシウムIS−1は、国際寄託機関ATCC(American Type Culture Collection (ATCC):Manassas,VA 20110−2209 USA)に寄託されている。この寄託の寄託者は本出願人と同じ株式会社ニチモウである。また、この寄託の原寄託は平成16年6月28日付け行われ、受託番号はPTA-6112である。
菌学的性質および同定
菌学的性質
本発明によるエンテロコッカス・フェシウムIS−1は発酵大豆(商品名「イムソイ」)より分離された微生物である。また、特定の糖類(ラフィノース、グリセロール、ソルビトール)に対する質化性が典型的なエンテロコッカス・フェシウム(“Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology” Vol.2 (1986) Williams & Wilkins.参照)と相違し、さらにそれらのうちラフィノースとソルビトールがエンテロコッカス・フェシウムJCM 5804基準株と相違する。本発明によるエンテロコッカス・フェシウムIS−1は下記表1の糖類に対して次のような資化性(+は陽性、−は陰性)を示す。
Figure 2006067881
エンテロコッカス・フェシウムIS−1と前記エンテロコッカス・フェシウムJCM 5804基準株および典型的なエンテロコッカス・フェシウムとの菌学的性質とを比較すると表2の通りになる。
Figure 2006067881
1)表2中、IS−1株およびJCM 5804標準菌株について標記された「(+)」は陽性を、「(−)」は陰性を示す。
2)表2中、典型的なエンテロコッカス・フェシウムについて標記された「+」は90%以上が陽性を、「(+)」は80-89%が陽性を、「d」は21-79%が陽性を、「(−)」は11-20%が陽性を、「−」は90%以上陰性を示す。
3)表2中は、Bergey’s Manual of Determinative Bacteriology (1994), Williams & Wilkinsおよび一部は食品衛生検査指針を参考にした。
菌学的同定
上記した菌学的性質および16s rRNA遺伝子の5’末端の塩基から1462番目の塩基までについてシーケンスした結果エンテロコッカス・フェシウム標準菌株と99.66%の相同性があり、本発明の菌株はエンテロコッカス・フェシウムと同定された。
エンテロコッカス・フェシウムIS−1菌株は、下記の16s rRNA遺伝子の5’末端の塩基から1462番目の塩基までにおける塩基配列:
TTAAAGTTTGATCCTGGCTCAGGATGAACGCTGGCGGCGTGCCTAATACATGCAAGTCGTACGCTTCTTTTTCCACCGG
AGCTTGCTCCACCGGAAAAAGAGGAGTGGCGAACGGGTGAGTAACACGTGGGTAACCTGCCCATCAGAAGGGGATAAC
ACTTGGAAACAGGTGCTAATACCGTATAACAATCGAAACCGCATGGTTTTGATTTGAAAGGCGCTTTCGGGTGTCGCTG
ATGGATGGACCCGCGGTGCATTAGCTAGTTGGTGAGGTAACGGCTCACCAAGGCCACGATGCATAGCCGACCTGAGAG
GGTGATCGGCCACATTGGGACTGAGACACGGCCCAAACTCCTACGGGAGGCAGCAGTAGGGAATCTTCGGCAATGGAC
GAAAGTCTGACCGAGCAACGCCGCGTGAGTGAAGAAGGTTTTCGGATCGTAAAACTCTGTTGTTAGAGAAGAACAAGG
ATGAGAGTAACTGTTCATCCCTTGACGGTATCTAACCAGAAAGCCACGGCTAACTACGTGCCAGCAGCCGCGGTAATA
CGTAGGTGGCAAGCGTTGTCCGGATTTATTGGGCGTAAAGCGAGCGCAGGCGGTTTCTTAAGTCTGATGTGAAAGCCCC
CGGCTCAACCGGGGAGGGTCATTGGAAACTGGGAGACTTGAGTGCAGAAGAGGAGAGTGGAATTCCATGTGTAGCGGT
GAAATGCGTAGATATATGGAGGAACACCAGTGGCGAAGGCGGCTCTCTGGTCTGTAACTGACGCTGAGGCTCGAAAGC
GTGGGGAGCAAACAGGATTAGATACCCTGGTAGTCCACGCCGTAAACGATGAGTGCTAAGTGTTGGAGGGTTTCCGCC
CTTCAGTGCTGCAGCTAACGCATTAAGCACTCCGCCTGGGGAGTACGACCGCAAGGTTGAAACTCAAAGGAATTGACG
GGGGCCCGCACAAGCGGTGGAGCATGTGGTTTAATTCGAAGCAACGCGAAGAACCTTACCAGGTCTTGACATCCTTTG
ACCACTCTAGAGATAGAGCTTCCCCTTCGGGGGCAAAGTGACAGGTGGTGCATGGTTGTCGTCAGCTCGTGTCGTGAGA
TGTTGGGTTAAGTCCCGCAACG AGCGCAACCCTTATTGTTAGTTGCCATCATTCAGTTGGGCACTCTAGCAAGACTGCC
GGTGACAAACCGGAGGAAGGTGGGGATGACGTCAAATCATCATGCCCCTTATGACCTGGGCTACACACGTGCTACAAT
GGGAAGTACAACGAGTTGCGAAGTCGCGAGGCTAAGCTAATCTCTTAAAGCTTCTCTCAGTTCGGATTGCAGGCTGCAA
CTCGCCTGCATGAAGCCGGAATCGCTAGTAATCGCGGATCAGCACGCCGCGGTGAATACGTTCCCGGGCCTTGTACAC
ACCGCCCGTCACACCACGAGAGTTTGTAACACCCGAAGTCGGTGAGGTAACC(1462塩基)を有する。
培養/単離
採取
本発明によるエンテロコッカス・フェシウムIS−1菌株は、好ましくは植物性食品から採取されるものが好ましい。植物性食品としては、大豆・小豆・及びその他の穀類などの豆科植物が好ましい。原料としては、豆科植物自体のみならず、加工された豆科植物であってもよく、これらの混合物であってもよい。
豆科植物の中でも好ましいのは大豆である。大豆は、その種類を問わず、また加工された大豆、大豆を原料とした食品、およびその他の物品製造過程で生じた主産物、副産物のいずれのものであってもよい。具体的には、大豆(種類、粒色を問わない)、脱皮大豆、抽出大豆、分離大豆、脱脂大豆、大豆タンパク質、醤油油、醤油粕、たまり粕、味噌、豆味噌、納豆、発酵大豆(麹菌などの、微生物を用いて発酵された大豆も含んでなる)、大豆絞り粕、大豆蒸煮液、およびこれらの混合物が挙げられる。
培地
本発明によるエンテロコッカス・フェシウムIS−1菌株は、天然培地、合成培地、半合成培地などの培地に培養することができる。培地としては、窒素源および炭素源を含有するものが用いられる。窒素源の具体例としては、肉エキス、ペプトン、大豆粉、大豆加水分解物、グルテン、カゼイン、酵母エキス、アミノ酸等が挙げられ、炭素源の具体例としては、グルコース、フラクトース、ラクトース、ソルビトール、イノシトール、水飴、麹汁、澱粉、バカス、フスマ、糖蜜、等が挙げられる。このほか、無機質として、例えば硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム、食塩、炭酸カルシウム、鉄、マンガン、モリブデン更に各種ビタミン類その他を添加することができる。
培養温度は10〜50℃、更に好ましくは25〜45℃であり、培養時間は6〜36時間程度であり、通気振盪、通気撹拌してもよい、培地のpHは3〜10好ましくは5〜7である。
単離精製
培養終了後、菌胆を採取し蒸留水もしくは生理食塩水を加え、遠心分離などの手段により上清を除き、必要によりこの操作を繰り返し、遠心分離または濾過等により菌体を採取する。
用途
免疫力向上/アレルギー性疾患の治療
本発明による乳酸菌(乳酸菌製剤)は、人を含む動物の免疫機能を向上させ、またはアレルギー性疾患を予防し、改善(治癒)する効果を示す。よって、本発明の好ましい態様によれば、本発明による乳酸菌は、ナチュラルキラー細胞を活性化させるのに用いられる。また、インターフェロンガンマまたはイムノグロブリンAの生成を増進させるのに用いられる。そして、本発明による乳酸菌は、インターフェロンガンマの生成を増進させることにより、アレルギー症状を緩和または治癒するのに用いられ、より好ましくは、インターフェロンガンマの生成を増進し1型ヘルパーT細胞を増加させることによりアレルギー症状を緩和または治癒するのに用いられる。また、好ましくはインターフェロンガンマの生成を増進し1型ヘルパーT細胞を増加させて2型ヘルパーT細胞の生成を抑制することにより、アレルギー症状を緩和または治癒するのに用いられる。
乳酸菌製剤
本発明による乳酸菌は、免疫機能向上剤または抗アレルギー剤として利用することができ、健康食品、または医療用免疫機能向上剤または抗アレルギー剤の有効成分として利用される。
本発明による単離した菌体は、その生菌をそのまま使用し、または乳製品、果実類、穀物またはこれらの加工物(食品)にこの生菌を付与し乳酸発酵させた状態の発酵物(処理物)として利用することができる。本発明による乳酸菌製剤は、このような生菌または発酵物としての利用形態をも含むものである。
また、本発明による乳酸菌製剤は、単離した菌体を、加熱、紫外線照射、ホルマリン処理等により不活性化して投与に適した剤形にすることもできる。分離された生菌体、死菌体はさらに摩砕、破砕処理し、得られた処理物を必要により加熱滅菌、無菌濾過した後に、その濾液を凍結乾燥して製剤とすることもできる。菌体の処理物は、例えば、上記摩砕物、破砕物、それらからの抽出液、凍結乾燥品等の形態が挙げられる。
本発明の乳酸菌製剤は単体でも使用することができるが、他の乳酸菌製剤、ビフィズス菌製剤、真菌製剤等の微生物製剤と混合して使用することもできる。乳酸菌製剤の具体例としては、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属等が挙げられる。ビフィズス菌製剤の具体例としてはビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属のビフィズス菌製剤があげられる。真菌製剤の具体例としては糸状菌であるアスペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicilium)属、リゾプス(Rhizopus)属、酵母、および担子菌の真菌製剤が挙げられる。
また、本発明による乳酸菌製剤は、乳酸菌製剤同士の混合のみならず、本発明による乳酸菌と他の微生物とを共培養した形態のものをも包含する。さらに、本発明による乳酸菌製剤は、本発明による乳酸菌と他の免疫力を高める物質とを混合して免疫力を相乗的に高めた製剤をも包含する。
本発明による乳酸菌製剤は、経口および非経口(例えば、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で、人を含む動物に投与することができる。
本発明による乳酸菌製剤は、投与経路に応じた適切な剤形として提供されることが好ましい。例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、細粒剤、トローチ錠等の経口剤、直腸投与剤等の種々に調製することが好ましい。
乳酸菌製剤としての効果をより確実なものとするために、例えば、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤等、の薬学上許容される担体または添加剤を適宜選択し、組み合わせることによって製造することが望ましい。使用可能な無毒性の上記添加剤は、例えば乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、シロップワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明による乳酸菌製剤の投与量は、症状や年齢、性別等を考慮し、個々の場合に応じて適宜決定することが好ましい。
本発明の内容を、以下の実施例を用いて説明するが、本発明はこれらの内容に限定して解釈されるものではない。
実施例1
エンテロコッカス・フェシウムIS−1乾燥菌体(生菌)の製造
エンテロコッカス・フェシウムIS−1を5mLの小培養用培地(表2参照)に接種し、37℃で24時間静置培養した。その乳酸菌培養物の全量を200mLの三角フラスコに入った100mLのMRS培地(表3参照)に加えて37℃で24時間振盪培養(150rpm)して、乳酸菌の前培養物を作った。その全量を2Lの三角フラスコに入った1LのMRS培地に加えて30℃で24時間振盪培養(150rpm)した。培養後、6500rpmで25分間遠心分離した。そして、上清を除き、菌体を集めた。さらに、集めた菌体ペーストを生理食塩水に良く懸濁させ、6500rpmで25分間遠心分離したのち、上清を集め菌体を集めた。これをさらに1回行った。これを凍結乾燥し、乾燥菌体を0.83g得た。
Figure 2006067881
Figure 2006067881
試験例1
本試験例では、実施例1で得たエンテロコッカス・フェシウムIS−1菌体を用いて、マウスの脾臓NK細胞活性、腸管パイエル板IFN−γおよび腸管パイエル板IgAの増加を検証した。試験群は下記の3群で比較した
(1)コントロール群 (コントロール)
(2)エンテロコッカス・フェシウム乾燥菌体(生菌)群(LA)
(3)エンテロコッカス・フェシウム乾燥菌体(死菌・熱殺菌)群(LAD)
(2)および(3)は乳酸菌数をそれぞれ同じ数に調製し、餌に0.5%重量%含有するように粉末飼料CE−2に混和し、固形ペレット状に成形して飼料とした。添加した各製剤100gにおける乳酸菌数および賦形剤の添加量は表4の様に調製した。
Figure 2006067881
マウスは6週齢のC3H/Heマウス(日本クレア株式会社製)を用い、次の環境で飼育した。
(1)設定温湿度:23±2℃、55±10%
(2)空調方式:換気(15回/時間)
(3)照明時間:8:00a.m.〜6:00p.m.
(4)飼育設備:プラスチックケージ
(5)給水:井水(3ppm塩素添加)の自由摂取
7日間の予備飼育後、本発明のエンテロコッカス・フェシウム乾燥菌体を用いた試験群等は表4に示すように乾燥菌体をデキストリンで希釈した物を餌に0.5%添加し、粉末飼料CE−2と良く混和し固形ペレット状に成形した飼料として28日間連続投与した。
投与開始日と、その後1週間ごとに全マウスの体重と接餌量を測定し、餌の投与終了後から12時間の絶食を行い、翌日全マウスにネンプタール麻酔を施して解剖した。
マウスから脾臓を摘出後、スライドグラスを用いて押しつぶして細胞を回収し、培養液で洗浄した後ステンレスメッシュで濾過し、細胞浮遊液として用いた。この液を1600rpm(5℃)で2時間遠心後、さらに10%FCS加RPMI―1640培地中に浮遊させ、脾臓NK細胞活性を51Cr遊離法により測定した。
パイエル板は小腸より摘出した後、スライドグラスで押しつぶして細胞を回収し、培養液で洗浄した後にステンレスメッシュで濾過した。これを遠心分離し、沈殿物をバーコールを用いた比重遠心を行い、界面に残った細胞を回収し、さらに培養液で洗浄して5×10cells/mLの濃度に調製した。調製した細胞を10%FCS加RPMI−1640培地に調製し、24穴プレートに2×10cells/mL/wellとなるように分注した後、ConA50μg/mLを最終濃度になるように100μL加えて、37℃で5%CO2インキュベータ内において24時間培養した。培養後、各wellの細胞浮遊液を0.45μmシリンジフィルターで濾過し、濾過液を測定用とした。IFN−γおよびIgAの測定は市販キットを用いて測定した。
体重の測定結果は表6、接餌量の測定結果は表7に示すとおりとなり、本発明の乳酸菌製剤に対するマウスの体重および接餌量は他の群と有意差がないことが分かった。
Figure 2006067881
Figure 2006067881
脾臓NK細胞活性、腸管パイエル板IFN−γ産生能、腸管パイエル板IgA産生能の測定結果は表8に示すとおりとなった。すなわち、脾臓NK細胞活性はコントロール群と比較してLA群は有意に高くなり(P<0.05)、LAD群は有意ではないものの高くなった。腸管パイエル板IFN−γの産生能についてもコントロール群と比較してLA群は有意に高くなり(P<0.01)、LAD群は有意ではないものの高くなった。IFN−γはTh1によって分泌されるサイトカインで、この上昇はTh2が減少しTh1が増加する事を意味し、本発明の乳酸菌製剤を摂取することによってアレルギー症状を緩和する事ができる。パイエル板IgA産生能に関してはコントロール群と比較してLA群、LAD群ともに有意に高くなった(P<0.01)。
Figure 2006067881
エンテロコッカス・フェシウムIS−1株のDNAシーケンスデータ
(16s rRNA遺伝子の5’末端の配列)
TTAAAGTTTGATCCTGGCTCAGGATGAACGCTGGCGGCGTGCCTAATACATGCAAGTCGTACGCTTCTTTTTCCACCGG
AGCTTGCTCCACCGGAAAAAGAGGAGTGGCGAACGGGTGAGTAACACGTGGGTAACCTGCCCATCAGAAGGGGATAAC
ACTTGGAAACAGGTGCTAATACCGTATAACAATCGAAACCGCATGGTTTTGATTTGAAAGGCGCTTTCGGGTGTCGCTG
ATGGATGGACCCGCGGTGCATTAGCTAGTTGGTGAGGTAACGGCTCACCAAGGCCACGATGCATAGCCGACCTGAGAG
GGTGATCGGCCACATTGGGACTGAGACACGGCCCAAACTCCTACGGGAGGCAGCAGTAGGGAATCTTCGGCAATGGAC
GAAAGTCTGACCGAGCAACGCCGCGTGAGTGAAGAAGGTTTTCGGATCGTAAAACTCTGTTGTTAGAGAAGAACAAGG
ATGAGAGTAACTGTTCATCCCTTGACGGTATCTAACCAGAAAGCCACGGCTAACTACGTGCCAGCAGCCGCGGTAATA
CGTAGGTGGCAAGCGTTGTCCGGATTTATTGGGCGTAAAGCGAGCGCAGGCGGTTTCTTAAGTCTGATGTGAAAGCCCC
CGGCTCAACCGGGGAGGGTCATTGGAAACTGGGAGACTTGAGTGCAGAAGAGGAGAGTGGAATTCCATGTGTAGCGGT
GAAATGCGTAGATATATGGAGGAACACCAGTGGCGAAGGCGGCTCTCTGGTCTGTAACTGACGCTGAGGCTCGAAAGC
GTGGGGAGCAAACAGGATTAGATACCCTGGTAGTCCACGCCGTAAACGATGAGTGCTAAGTGTTGGAGGGTTTCCGCC
CTTCAGTGCTGCAGCTAACGCATTAAGCACTCCGCCTGGGGAGTACGACCGCAAGGTTGAAACTCAAAGGAATTGACG
GGGGCCCGCACAAGCGGTGGAGCATGTGGTTTAATTCGAAGCAACGCGAAGAACCTTACCAGGTCTTGACATCCTTTG
ACCACTCTAGAGATAGAGCTTCCCCTTCGGGGGCAAAGTGACAGGTGGTGCATGGTTGTCGTCAGCTCGTGTCGTGAGA
TGTTGGGTTAAGTCCCGCAACG AGCGCAACCCTTATTGTTAGTTGCCATCATTCAGTTGGGCACTCTAGCAAGACTGCC
GGTGACAAACCGGAGGAAGGTGGGGATGACGTCAAATCATCATGCCCCTTATGACCTGGGCTACACACGTGCTACAAT
GGGAAGTACAACGAGTTGCGAAGTCGCGAGGCTAAGCTAATCTCTTAAAGCTTCTCTCAGTTCGGATTGCAGGCTGCAA
CTCGCCTGCATGAAGCCGGAATCGCTAGTAATCGCGGATCAGCACGCCGCGGTGAATACGTTCCCGGGCCTTGTACAC
ACCGCCCGTCACACCACGAGAGTTTGTAACACCCGAAGTCGGTGAGGTAACC (1462 bases)

Claims (25)

  1. エンテロコッカス・フェシウムIS−1菌株である、乳酸菌。
  2. 16s rRNA遺伝子の5’末端の塩基から1462番目の塩基までの塩基配列が下記:
    TTAAAGTTTGATCCTGGCTCAGGATGAACGCTGGCGGCGTGCCTAATACATGCAAGTCGTACGCTTCTTTTTCCACCGG
    AGCTTGCTCCACCGGAAAAAGAGGAGTGGCGAACGGGTGAGTAACACGTGGGTAACCTGCCCATCAGAAGGGGATAAC
    ACTTGGAAACAGGTGCTAATACCGTATAACAATCGAAACCGCATGGTTTTGATTTGAAAGGCGCTTTCGGGTGTCGCTG
    ATGGATGGACCCGCGGTGCATTAGCTAGTTGGTGAGGTAACGGCTCACCAAGGCCACGATGCATAGCCGACCTGAGAG
    GGTGATCGGCCACATTGGGACTGAGACACGGCCCAAACTCCTACGGGAGGCAGCAGTAGGGAATCTTCGGCAATGGAC
    GAAAGTCTGACCGAGCAACGCCGCGTGAGTGAAGAAGGTTTTCGGATCGTAAAACTCTGTTGTTAGAGAAGAACAAGG
    ATGAGAGTAACTGTTCATCCCTTGACGGTATCTAACCAGAAAGCCACGGCTAACTACGTGCCAGCAGCCGCGGTAATA
    CGTAGGTGGCAAGCGTTGTCCGGATTTATTGGGCGTAAAGCGAGCGCAGGCGGTTTCTTAAGTCTGATGTGAAAGCCCC
    CGGCTCAACCGGGGAGGGTCATTGGAAACTGGGAGACTTGAGTGCAGAAGAGGAGAGTGGAATTCCATGTGTAGCGGT
    GAAATGCGTAGATATATGGAGGAACACCAGTGGCGAAGGCGGCTCTCTGGTCTGTAACTGACGCTGAGGCTCGAAAGC
    GTGGGGAGCAAACAGGATTAGATACCCTGGTAGTCCACGCCGTAAACGATGAGTGCTAAGTGTTGGAGGGTTTCCGCC
    CTTCAGTGCTGCAGCTAACGCATTAAGCACTCCGCCTGGGGAGTACGACCGCAAGGTTGAAACTCAAAGGAATTGACG
    GGGGCCCGCACAAGCGGTGGAGCATGTGGTTTAATTCGAAGCAACGCGAAGAACCTTACCAGGTCTTGACATCCTTTG
    ACCACTCTAGAGATAGAGCTTCCCCTTCGGGGGCAAAGTGACAGGTGGTGCATGGTTGTCGTCAGCTCGTGTCGTGAGA
    TGTTGGGTTAAGTCCCGCAACGAGCGCAACCCTTATTGTTAGTTGCCATCATTCAGTTGGGCACTCTAGCAAGACTGCC
    GGTGACAAACCGGAGGAAGGTGGGGATGACGTCAAATCATCATGCCCCTTATGACCTGGGCTACACACGTGCTACAAT
    GGGAAGTACAACGAGTTGCGAAGTCGCGAGGCTAAGCTAATCTCTTAAAGCTTCTCTCAGTTCGGATTGCAGGCTGCAA
    CTCGCCTGCATGAAGCCGGAATCGCTAGTAATCGCGGATCAGCACGCCGCGGTGAATACGTTCCCGGGCCTTGTACAC
    ACCGCCCGTCACACCACGAGAGTTTGTAACACCCGAAGTCGGTGAGGTAACC (1462塩基)
    で表されるものである、請求項1に記載の乳酸菌。
  3. 植物性食品から得られる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の乳酸菌。
  4. 前記植物性食品が豆科植物またはこれを発酵させたものである、請求項3に記載の乳酸菌。
  5. 前記植物性食品が大豆または発酵させた大豆である、請求項4に記載の乳酸菌。
  6. ナチュラルキラー細胞を活性化させるのに用いられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳酸菌。
  7. インターフェロンガンマまたはイムノグロブリンAの生成を増進させるのに用いられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳酸菌。
  8. インターフェロンガンマの生成を増進させることにより、アレルギー症状を緩和または治癒するのに用いられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳酸菌。
  9. インターフェロンガンマの生成を増進し1型ヘルパーT細胞を増加させることによりアレルギー症状を緩和または治癒するのに用いられる、請求項8に記載の乳酸菌。
  10. インターフェロンガンマの生成を増進し1型ヘルパーT細胞を増加させて2型ヘルパーT細胞の生成を抑制することにより、アレルギー症状を緩和または治癒するのに用いられる、請求項9に記載の乳酸菌。
  11. ナチュラルキラー細胞を活性化させるのに用いられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳酸菌の使用。
  12. インターフェロンガンマまたはイムノグロブリンAの生成を増進させるのに用いられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳酸菌の使用。
  13. インターフェロンガンマの生成を増進させることにより、アレルギー症状を緩和または治癒するのに用いられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳酸菌の使用。
  14. インターフェロンガンマの生成を増進し1型ヘルパーT細胞を増加させることによりアレルギー症状を緩和または治癒するのに用いられる、請求項13に記載の乳酸菌の使用。
  15. インターフェロンガンマの生成を増進し1型ヘルパーT細胞を増加させて2型ヘルパーT細胞の発現を抑制することにより、アレルギー症状を緩和または治癒するのに用いられる、請求項14に記載の乳酸菌の使用。
  16. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳酸菌を用いることを含んでなる、人を含む動物の免疫機能を向上させる方法。
  17. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳酸菌を用いることを含んでなる、人を含む動物のアレルギー症状を治療する方法。
  18. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳酸菌またはその処方物を、人を含む動物に投与することによる、人を含む動物の免疫機能を向上させる方法。
  19. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳酸菌またはその処方物を、人を含む動物に投与することによる、アレルギー症状の治療方法。
  20. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳酸菌を含んでなる、乳酸菌製剤。
  21. 他の乳酸菌、他の乳酸菌製剤、ビフィズス菌、ビフィズス菌製剤をさらに含んでなる、請求項20に記載の乳酸菌製剤。
  22. 請求項20または21に記載の乳酸菌製剤を含んでなる、免疫機能向上剤。
  23. 請求項20または21に記載の乳酸菌製剤と、薬学上許容される担体または添加剤とを含んでなる、免疫機能向上剤。
  24. 請求項20または21に記載の乳酸菌製剤を含んでなる、抗アレルギー剤。
  25. 請求項20または21に記載の乳酸菌製剤と、薬学上許容される担体または添加剤とを含んでなる、抗アレルギー剤。
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