JP2004275189A - 複数微生物の共培養方法、微生物由来製剤の製法および微生物由来製剤 - Google Patents

複数微生物の共培養方法、微生物由来製剤の製法および微生物由来製剤 Download PDF

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Abstract

【課題】 乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方と麹菌等を含む糸状菌とを効率よく共培養することができ、乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物が保有するプロバイオティックスや免疫賦活等の哺乳動物、鳥類、魚類の健康維持を促進する機能を培養方法によってさらに高めて、従来にはない人間等の哺乳動物、鳥類、魚類の健康に寄与できる乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方を含有している微生物由来製剤を効率よく製造することのできる複数微生物の共培養方法、微生物由来製剤の製法および微生物由来製剤を提供すること。
【解決手段】 乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方と糸状菌とを別々に液体培養し、その後各液体培養物を液状のまま若しくは乾燥後に混合して共培養することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、有用な微生物である麹菌等の糸状菌と乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方からなる複数微生物の共培養方法、微生物由来製剤の製法および微生物由来製剤に係り、乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方と糸状菌とを効率よく共培養したり、人間等の哺乳動物、鳥類、魚類の健康維持を促進する機能例えばプロバイオティックスや免疫賦活の機能性をより高めた微生物由来製剤を製造する製法および微生物由来製剤に関する。
本発明における有用な微生物の一方は糸状菌であり、好ましくは麹菌である。その麹菌は、日本において古くから日本酒や味噌等の製造に利用されているアスペルギルス属に属する麹菌等ことをいう。他方の有用な微生物は乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方であり、プロバイオティックスな機能性を持つものをいう。この乳酸菌は、プロバイオティックスな機能性を持つラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属およびエンテロコッカス属等の乳酸を産生する乳酸菌のことをいう。
本発明者は、すでに大豆に対して糸状菌の一種である麹菌を用いて麹菌発酵し、その後加水し、麹菌の酵素による分解工程で乳酸菌であるエンテロコッカス・フェシウムを培養する方法とその培養物の機能に関して提案している(特許文献1参照)。
再表00/45830号公報(特願2000−596949号)
本発明者は、この特許文献1に基づく培養物に従来にはない人間等の哺乳動物、鳥類、魚類の健康維持に対する機能をより高める働きを有していることを見つけた。すなわち、全身免疫である脾臓のNK(ナチュラルキラー)細胞活性や腸管免疫系である腸管パイエル板のIFN−γ(インターフェロンガンマ)およびIL−2(インターロイキン2)、IL−5(インターロイキン5)を高め、IgA(イムノグロブリンA)の産生を高める免疫賦活作用があることを見つけ、感染症やストレスによる健康への悪影響を予防する働きがあることを動物試験で確認した。この免疫賦活の機能性については現在のところ、乳酸球菌であるエンテロコッカス・フェシウムの腸内における作用機序は明確ではないが、明らかなことは腸内細菌が活発に増殖され、有用なラクトバチルス属の乳酸桿菌が優位に増殖することが確認されている。従って、有用な腸内細菌を活発化、すなわち、増殖促進させることで免疫機能が高められた可能性を示唆することができる。
前記特許文献1に基づく培養物について腸内細菌叢の変化を試験により調べたところ下記の通りであった。
供試動物:
27週齢の雄のC3H/HeNマウス、
投与期間:
各5匹を2群に分け、コントロール群は普通の餌、特許文献1に基づく培養物の投与群は普通の餌に0.4重量%の特許文献1に基づく培養物を添加した餌を12週間与えた。
糞便内細菌叢の検索:
糞便サンプルを秤量し、直ちに9mlの嫌気性希釈液を含む中試験管に移し、酸素不含、炭酸ガス通気下でよく混和した。その1mlに新しい希釈液9mlを加え、前記の炭酸ガスを吹き込みながら、同様に10−8倍まで希釈し、順次希釈液の0.05mlを9種類の嫌気性菌用寒天平板と7種類の好気性菌用(LBSを含む)寒天平板に一様に塗抹した。
前記嫌気性用平板は還元スチールウールと共にジャーに入れ、容器内を炭酸ガスで2回置換して37℃で24時間培養し、TATAC,PEES,P,およびNAC培地は37℃で72時間好気培養した。LBS培地については、ジャーに入れ、還元スチールウールを入れずに容器内を炭酸ガスで1回置換して37℃で72時間微好気培養した。
培養終了後、各培地に発育した集落の形成およびその数を記録し、それぞれグラム染色を行った。集落の形成、グラム染色性、菌の形態によって菌群を決定し、集計した。その結果を図1に示す。
この図1より、普通の餌を摂取したマウスより特許文献1に基づく培養物を含有した餌を摂取したマウスの方が、明らかに有用なラクトバチルス属やバクテロイドセア属の乳酸桿菌が優位に増殖することが確認できた。
しかしながら、この培養物はコストを掛けずに生産できるメリットはあったが、健康維持に対する機能について調べた所、乳酸菌のプロバイオティックス機能に基因しているため、より有効性を高めるには乳酸菌だけを分離培養させた乳酸菌製剤が望まれる所であった。すなわち、上記の方法においては乳酸菌製剤を作ることは容易ではなかった。何故なら、この方法は大豆を使った固体培養方法であり、培養物には麹菌発酵分解された大豆と乳酸菌とが混在しており、有効な機能を持つ乳酸菌だけを分離することはきわめて困難であった。
一方、乳酸菌については液体培養方法で乳酸菌のみを培養することは一般的であった。麹菌に関しては液体培養方法も行なわれているが、そのほとんどは伝統的な固体培養法であった。
乳酸菌のプロバイオティックスや免疫賦活の機能を高める目的で乳酸菌と麹菌を一緒に培養することで乳酸菌の機能を高めようとする方法がなかった。
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方と麹菌等を含む糸状菌とを効率よく共培養することができ、乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物が保有するプロバイオティックスや免疫賦活等の哺乳動物、鳥類、魚類の健康維持を促進する機能を培養方法によってさらに高めて、従来にはない人間等の哺乳動物、鳥類、魚類の健康に寄与できる乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方を含有している微生物由来製剤を効率よく製造することのできる複数微生物の共培養方法、微生物由来製剤の製法および微生物由来製剤を提供することを目的とする。
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究し、プロバイオティックスの機能をより高めた乳酸菌製剤の製造方法として乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方と麹菌等を含む糸状菌とを共培養する方法を見出して本発明を完成させたものである。ここで共培養とは、麹菌等を含む糸状菌が異種の菌と共生する共生関係を利用して培養することをいう。
すなわち、すでに本発明者は前記特許文献1において大豆を麹菌発酵し、その後加水し、麹菌の酵素による分解工程で乳酸菌であるエンテロコッカス・フェシウムを培養する方法とその培養物に関して提案しているが、この提案の基本的な培養の考え方を取り入れた液体培養方法を検討した。
この培養の検討により、従来にはない人間等の哺乳動物、鳥類、魚類の健康維持を促進する機能をより高める働きがあることを確認するとともに、その機能を高めるのが乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方であることも確認した。さらに詳しくは、乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方と麹菌等を含む糸状菌との組み合せ培養をすることにより、乳酸菌やビフィドバクテリウム属の微生物の持つプロバイオティックスや免疫賦活の機能がより一層高められることを確認した。とりわけ、麹菌等を含む糸状菌と乳酸球菌との共培養で得られた乳酸菌製剤においては、有用な乳酸桿菌がその腸内における増殖を促進させる機能を有していることを確認した。
そこで、本発明者は液体培養方法により微生物由来製剤を製造することで、乳酸菌やビフィドバクテリウム属の微生物の健康を維持する機能性がより高められることを検討し、麹菌等を含む糸状菌と乳酸菌やビフィドバクテリウム属の微生物とを別々に液体培養した後に両者を液状のまま若しくは乾燥後に混合し、共培養することによって、乳酸菌やビフィドバクテリウム属の微生物を単独で液体培養した場合よりも従来の培養法に比べて機能性に優れた微生物由来製剤を製造できることを見出した。
一方、最近では現代人は生活環境の変化等によるストレス等が原因で腸管粘膜免疫は低下しており、アレルギー疾患等も非常に増えており(例えば、「粘膜免疫学の最前線」(医薬ジャーナル社発行)吉開泰信編の 116-129頁参照)、プロバイオティックスの応用が期待されるようになった。プロバイオティックスとは宿主の腸内フローラ(菌叢)の制御を通して宿主に有益な影響をもたらす生菌といわれており(Fuller R:J Appl Bacteriol, 66, 365-378, 1989)、例えば、腸内フローラを改善することによりアレルギー疾患や炎症性腸疾患の治癒効果が期待できるので、その働きを目的とする乳酸菌製剤やヨーグルトのような発酵乳製品が近年国内外で販売されるようになった。
また、近年、我国において元来ごく稀にしかみられなかった病気が増加している。例えば、潰瘍性大腸炎もその1つである。この病気は1980年代から急激に増加しており、1973年に国が特定疾患治療研究対象(難病)に指定しているが、発症原因や治療方法はまだ分っていない。我国での食事内容が欧米化したことにより増加しているのではないかという説もある。何故なら、腸管粘膜免疫系に対しては食事内容の影響が絶大だからである。潰瘍性大腸炎の患者では正常なヒトに比べて腸管免疫の制御が異常である。すなわち、腸管ではきわめて多くのリンパ球が存在し、食事由来の微生物性抗原や食餌性抗原と常時接しているが、これらの抗原に対する免疫反応を抗原特異的・非特異的に制御するシステムがあり、免疫寛容を成立させて、生体恒常性維持機能(ホメオスタシス)が得られる。しかしながら、潰瘍性大腸炎の患者では腸内微生物性抗原に対してTh1型の免疫反応の抑制が解除された状態になっていることから自ら腸炎を引き起こしてしまう。
このような潰瘍性大腸炎に対して乳酸菌製剤が腸内細菌のバランスを整え、病原性大腸菌の増殖を抑制する働きから補助的に使われている。しかしながら、本発明のような日本において古くから日本酒や味噌等の製造に利用されている麹菌や乳酸菌などの有効性は高いと思われるが、検討されなかった。
例えば、池永ら(Milk Science, Vol.51, No.1, 27-32,2002)はキムチ等、主に植物を原料とする発酵食品から高頻度に検出される乳酸菌のラクトバチルス・プランターラムを市販牛乳に接種して作った発酵乳における免疫賦活を確認しているが、発酵乳等ヨーグルト製品にすることで商品化することが多かった。すなわち、乳酸菌に関しては昔からヨーグルトのような乳製品を作る目的で使われており、プロバイオティックスな機能性を持った乳酸菌を選別し、その乳酸菌を利用した食品が近年販売されているが、そのほとんどがヨーグルト等の乳製品であった。また、乳酸菌製剤に関しても乳酸菌のみを液体培養したものであった。しかも乳酸菌製剤はヨーグルト等の乳製品中の乳酸菌に比べて、増殖速度が遅いといわれていた。このように従来においては、乳酸菌の培養方法についてその機能性を高める検討はほとんどされていなかった。
このような状況下において、本発明者はプロバイオティックスな機能性を持った乳酸菌やビフィドバクテリウム属の微生物の機能を高める培養方法を見出して本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の複数微生物の共培養方法は、乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方と糸状菌とを別々に液体培養し、その後各液体培養物を液状のまま若しくは乾燥後に混合して共培養することを特徴とする。
また、本発明の微生物由来製剤の製法は、乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方と糸状菌とを別々に液体培養し、その後各液体培養物を液状のまま若しくは乾燥後に混合して共培養することにより哺乳動物、鳥類、魚類の健康維持を促進する機能性に優れた乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方を含有する製剤を製造することを特徴とする。
また、本発明の微生物由来製剤は、乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方と糸状菌とを別々に液体培養し、その後各液体培養物を液状のまま若しくは乾燥後に混合して共培養することにより哺乳動物、鳥類、魚類の健康維持を促進する機能性に優れた乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方を含有していることを特徴とする。
このように形成されている本発明によれば、乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方と糸状菌とを効率よく共培養することができ、しかもこの共培養の環境は哺乳動物、鳥類、魚類の消化器系内の消化酵素(例えば、プロテアーゼ、カルボヒドロラーゼ、リパーゼ、リポヌクレアーゼ等)や腸内細菌が放出される酵素が存在する状態と同様になるために、乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物は消化器系内と同等の環境下で事前に培養されてその機能を優位に発揮することとなり、腸内で乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物が保有するプロバイオティックスや免疫賦活等の哺乳動物、鳥類、魚類の健康維持を促進する機能を培養方法によってさらに高めて、従来にはない人間等の哺乳動物、鳥類、魚類の健康に寄与できる乳酸菌製剤を効率よく製造することができる。
このように本発明は構成され作用するものであるから、乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方と麹菌等を含む糸状菌とを効率よく共培養することができ、乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物が保有するプロバイオティックスや免疫賦活等の哺乳動物、鳥類、魚類の健康維持を促進する機能を培養方法によってさらに高めて、従来にはない人間等の哺乳動物、鳥類、魚類の健康に寄与できる乳酸菌製剤等の微生物製剤を効率よく製造することができるという優れた効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態を実施例とともに説明する。実施例としては、糸状菌の1種として麹菌を用いている。
1 麹菌の前培養
表1に示すモルト寒天培地上に麹菌胞子を懸濁した生理食塩水に接種した後30℃で麹菌が胞子を作るまで培養させる。ここで使用する麹菌はアスペルギルス属に属する麹菌が好ましい。例えば、味噌用に使われているアスペルギルス・オリーゼを使用することができる。その後、寒天培地上に5mlの生理食塩水を加えて育成されたアスペルギルス・オリーゼの胞子を回収したものを200mlの三角フラスコに入った100mlのモルト寒天培地に加え、37℃で24時間振とう培養(1000rpm)して、麹菌の前培養物を作る。
2 乳酸菌の前培養
乳酸菌を5mlのMRS培地(表2参照)に接種し、37℃で24時間静置培養する。ここで使用する乳酸菌はラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属の乳酸を産生する乳酸菌が好ましい。例えば、日本の味噌によく棲息しているエンテロコッカス・フェシウムを使用することができる。その乳酸菌培養物の全量を200mlの三角フラスコに入った100mlのMRS培地に加えて37℃で24時間振とう培養(1000rpm)して、乳酸菌の前培養物を作る。
3 共培養I(麹菌の培養)
2リットルの三角フラスコにモルト寒天培地1リットルを入れ、前培養した麹菌の100mlを添加し、30℃で48時間振とう培養(1000rpm)する。
4 共培養II(乳酸菌の添加)
共培養Iの麹菌の培養液にMRS培地で前培養した乳酸菌100mlを加え、さらに30℃で24時間振とう培養(1000rpm)し、目的の乳酸菌を培養する。この共培養IIの環境は哺乳動物、鳥類、魚類の消化器系内の消化酵素(例えば、プロテアーゼ、カルボヒドロラーゼ、リパーゼ、リポヌクレアーゼ等)や腸内細菌が放出される酵素が存在する状態と同様になるために、乳酸菌は消化器系内と同等の環境下で事前に効率よく培養される。
5 菌体の回収
遠心分離により沈殿物(麹菌と乳酸菌の菌体)を回収した。菌体は必要に応じて凍結乾燥した。凍結乾燥した菌体中の乳酸菌生菌数は8×1011CFU/gであり、この菌体を乳酸菌製剤として使用することができる。
ビフィドバクテリウム属の微生物についても乳酸菌と同様にして麹菌と共培養するとよい。更に、ビフィドバクテリウム属の微生物と乳酸菌と麹菌とを一緒に共培養してもよい。このビフィドバクテリウム属の微生物としては、Bifidobacterium breve 、Bifidobacterium bifrdum 、Bifidobacterium longum 、Bifidobacterium infantis 、Bifidobacterium adolescentis等から選択するとよい。
また、前記の一方の麹菌の前培養によって培養された麹菌を乾燥させ、他方の乳酸菌の前培養によって培養された乳酸菌を乾燥させ、その後乾燥状態の両麹菌および乳酸菌を混合させて共培養させるようにしてもよい。この場合、乳酸菌に代えて若しくは共にビフィドバクテリウム属の微生物を用いてもよい。
乳酸菌であるエンテロコッカス・フェシウムに関して従来の液体培養方法、本発明者が提案している前記特許文献1の固体培養方法および本発明の培養方法で培養し、それぞれの機能性を比較した。機能性に関しては、体重、摂餌量、脾臓のNK(ナチュラルキラー)細胞活性、腸管パイエル板のIFN−γ(インターフェロンガンマ)、IgA(イムノグロブリンA)産生量を測定した。
すなわち、下記の6群(各群6匹)の餌を調整し比較した。
1) コントロール群(Control)
2) 従来の液体培養方法の群(LA=単一培養群)
3) 2)において培養した乳酸菌を死滅させた群(LAD)
4) 本発明の培養方法の群(LA−ASP=本発明)
5) 4)で培養した乳酸菌を死滅させた群(LAD−ASP)
6) 固体培養方法の群(ImmuSoy=固体培養群)
ここで、2)〜6)は乳酸菌数をそれぞれ同じ数に調整し、餌に0.5重量%含有するように粉末飼料CE−2に混和し、固形ペレット状に成形して飼料とした。すなわち、固体培養群はそのまま餌に0.5重量%になるように添加したが、各液体培養群は表3に示す通り本発明群等は液体培養した乳酸菌をデキストリンで希釈したものを餌に0.5重量%添加して供試した。
供試動物:
6週齢の雌性C3H/Heマウス(日本クレア株式会社製)を用いた。
飼育環境:
1) 設定温湿度:23±2℃、55±10%
2) 空調方式:換気(15回/時間)
3) 照明時間:8:00a.m.〜6:00p.m.
4) 飼育設備:プラスチックケージ
5) 給水:井水(3ppm塩素添加)の自由摂取
7日間の予備飼育後、各群については固体培養群はそのまま餌に0.5重量%になるように添加したが、各液体培養群は表3に示すように本発明群等は液体培養した乳酸菌をデキストリンで希釈したものを餌に0.5重量%添加した。各群の餌は粉末飼料CE−2とよく混和し、固形ペレット状に成形した飼料を28日間連続投与した。
体重の測定方法:
全マウスの体重を、投与開始日と、その後週1回測定した。
摂餌量の測定方法:
全マウスの摂餌量を、投与開始日と、その後週1回測定した。
脾臓NK細胞活性、腸管パイエル板IFN−γ、腸管パイエル板IgAの測定方法:
餌の投与終了日から12時間の絶食を行ない、翌日全マウスにネンブタール麻酔を施して、解剖した。
脾臓NK細胞活性の測定:
マウスから脾臓を摘出後、スライドグラスを用いて押しつぶし、細胞を回収し、培養液で洗浄した後ステンレスメッシュで濾過し、細胞浮遊液として用いた。この液を1600rpm(5℃)で2時間遠心後、さらに10%FCS加RPMI−1640培地中に浮遊させ、NK活性を51Cr遊離法により測定した。
腸管パイエル板IFN−γ、IgAの測定:
パイエル板は小腸より摘出した後、スライドグラスで押しつぶし、細胞を回収し、培養液で洗浄した後にステンレスメッシュで濾過した。これを遠心分離し、沈殿物をバーコールを用いた比重遠心を行い、界面に残った細胞を回収し、さらに培養液で洗浄して5×10Cells/mlの濃度に調製した。調製した細胞を10%FCS加RPMI−1640培地に調製し、24穴プレートに2×10個/ml/wellになるように分注した後、ConA50μg/mlを最終濃度になるように100μl加えて、37℃で5%COインキュベーター内において24時間培養した。培養後、各wellの細胞浮遊液を0.45μmシリンジフィルターで濾過し、濾過液を測定用とした。IFN−γ、IgAの測定は市販キットを用いて測定した。
[試験結果]
1)体重の測定結果は表4に示す通りである。
2)摂餌量の測定結果は表5に示す通りである。
3)脾臓NK細胞活性、腸管パイエル板IFN−γ、腸管パイエル板IgAの測定結果は表6に示す通りである。
表4に示す体重の変化および表5に示す摂餌量の変化に示すように、本発明の乳酸菌製剤に対するマウスの体重および摂餌量は他の群と有意差はないことがわかった。
LA−ASP(本発明)群とLA(単一培養)群および ImmuSoy(固体培養)群に関して比較すると、腸管パイエル板のIFN−γの産生能においてはLA−ASP(本発明)群はLA(単一培養)群および ImmuSoy(固体培養)群に比べて有意に高かった(p<0.01)。さらに、腸管パイエル板IgA産生能に関してもLA−ASP(本発明)群がLA(単一培養)群に比べて有意に高かった(p<0.01)。脾臓のNK活性についてはLA−ASP(本発明)群、LA(単一培養)群、 ImmuSoy(固体培養)群はコントロール群に比べて有意に高かったが、三者間では有意差はなかった。腸管パイエル板IgA産生能においてはLA−ASP(本発明)群と ImmuSoy(固体培養)群の間には有意差は生じなかったが、本発明群に比べて ImmuSoy(固体培養)群の餌への添加量は約83倍も多いことから、本発明群と ImmuSoy(固体培養)群が同じレベルの免疫賦活作用があったとして本発明群の方が優れていると判定できる。
以上のことから、LA−ASP(本発明)群がマウスの免疫賦活作用がLA(単一培養)群や ImmuSoy(固体培養)群に比べて優れていることが証明できた。
なお、乳酸菌を加熱し、死滅させたものについても同様の比較試験も行った。その結果は生菌に比べて劣っていたが、LAD−ASP(本発明の死菌)群がLA(単一培養の死菌)よりも優れていた。
一方近年、国内で海面での養殖トラフグの飼育量が増加しているが、寄生虫(粘液胞子虫:Myxidium sp.あるいはLeptotheca fugu)の感染により増肉せず痩せこけて斃死するヤセ病が蔓延している。この寄生虫の感染予防方法は今の所ないために、養殖業者は感染予防の目的でホルマリンによる薬浴を行ったりしていた。しかしながら、ホルマリンが発癌物質であるため、食品の安全性の面からホルマリンの残留が問題となり、発癌物質のホルマリン使用ということで消費者の養殖魚に対する不信感が募り、社会的な問題にもなった。このような状況の中でより安全な寄生虫感染予防方法が望まれるため本実施例2を検討した。
実施例2の具体的内容
本実施例2においては養殖トラフグに対して本発明の培養方法で得られたエンテロコッカス・フェシウムの乳酸菌製剤を用いた。コントロール群は乳酸菌製剤を無添加にした。それ以外は同じに条件で実施・比較した。
1) コントロール群(乳酸菌製剤無添加)
2) 本発明群(本発明培養方法による乳酸菌製剤(10cfu/gレベルの調製)を餌の0.5重量%添加)
餌はモイストペレットに調製した。すなわち、魚肉などの生餌に乾燥魚粉と栄養剤を混合し、ぺレッターで押し出し成形し、餌とした。各群の投与量は魚体重の10%とし、毎日1回投与した。各群は天草地域の海面にて1年魚で魚体重約300gのトラフグを300尾ずつ各々5m×5m×5mの生簀に分けて、2003年6月〜11月までの6ヶ月間飼育し、生残率を比較した。
本発明群では順調に飼育し、300gでスタートした魚体重は平均700gに増加し、生残率は94.5%であったが、コントロール群では飼育1ヶ月目からヤセ病が発生し、飼育3ヶ月目では生残率が50%を割った時点で飼育を中止した。
中止に当ってコントロール群および本発明群のトラフグ腸粘膜性状を肉眼および顕微鏡により観察した。
その結果はコントロール群のヤセ病になったトラフグの腸粘膜では壊死性炎がひどく認められ、粘液胞子虫の寄生が確認できた。すなわち、シストに変化した粘液胞子虫が腸粘膜で多数観察できた。
しかしながら、本発明群ではヤセ病の発症はなく。腸粘膜上皮は正常であった。また、粘液胞子虫の腸粘膜への寄生は確認できなかった。
以上のことから両群では寄生虫感染状況が異なることが明かであり、本発明培養方法での乳酸菌が魚類の寄生虫感染予防には有効であることから安全性の高いトラフグの寄生虫感染防止剤になり得るといえた。
魚類における免疫系の作用に関してはまだ充分な研究がなされていないということもあり、実施例1のように免疫の情報伝達物質であるサイトカイン産生量などを測定しなかったが、実施例2での結果は明らかに本発明培養方法での乳酸菌が魚類であるトラフグの腸管粘膜免疫系を賦活し、寄生虫である粘液胞子虫の腸粘膜からの感染を防止させたためにヤセ病が発生しなかったことが示唆できた。これらのことから魚類であればヒラメ、ブリ、カンパチ、マダイ、ウナギなどにも効果が期待できるものと考えられる。
更に、本発明は本実施例2の結果に基づき、他の養殖魚、例えば、鰻、鮃、ぶり、ハマチ、鯛、銀鮭、ます等にも同様に適用して効果があるものである。
また、他の種となるブロイラーに対しても、深刻なコクシジウム症原因原虫(Eimeria属)の感染予防を本発明品により有効に施すこともできる。
また、本発明品を利用する場合には、飼料や餌等への添加量を対象となる動物等の種に応じて適宜に調整するとよい。
なお、本発明は前記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、必要に応じて変更することができる。例えば、本発明の乳酸菌製剤に関しては、生菌を用いることがが望ましいが、実施例1のように乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物を殺菌した製剤を用いても効果があり、さらには糸状菌のみ、もしくはすべての菌を殺菌した製剤あっても効果はある程度期待できる。
腸内各種細菌数の変化示す特性図

Claims (3)

  1. 乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方と糸状菌とを別々に液体培養し、その後各液体培養物を液状のまま若しくは乾燥後に混合して共培養することを特徴とする複数微生物の共培養方法。
  2. 乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方と糸状菌とを別々に液体培養し、その後各液体培養物を液状のまま若しくは乾燥後に混合して共培養することにより哺乳動物、鳥類、魚類の健康維持を促進する機能性に優れた乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方を含有する微生物由来製剤を製造することを特徴とする微生物由来製剤の製法。
  3. 乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方と糸状菌とを別々に液体培養し、その後各液体培養物を液状のまま若しくは乾燥後に混合して共培養することにより哺乳動物、鳥類、魚類の健康維持を促進する機能性に優れた乳酸菌およびビフィドバクテリウム属の微生物の少なくとも一方を含有していることを特徴とする微生物由来製剤。
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