JPH06319464A - 魚粉発酵飼料の製造方法 - Google Patents

魚粉発酵飼料の製造方法

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JPH06319464A
JPH06319464A JP3093724A JP9372491A JPH06319464A JP H06319464 A JPH06319464 A JP H06319464A JP 3093724 A JP3093724 A JP 3093724A JP 9372491 A JP9372491 A JP 9372491A JP H06319464 A JPH06319464 A JP H06319464A
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JP
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fish meal
feed
fermented
fish
raw
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JP3093724A
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English (en)
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Kiyoshi Hayakawa
潔 早川
Sunao Kikushima
直 菊島
Minoru Takebe
実 武部
Yoshio Ando
嘉生 安藤
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HISHIROKU KK
KYOTO PREF GOV
Nichimo Co Ltd
Original Assignee
HISHIROKU KK
KYOTO PREF GOV
Nichimo Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 魚粉を原料とし、雑菌汚染による腐敗などを
起こすことなく魚粉に目的微生物を優先繁殖させて、養
殖魚等の飼育に適した低過酸化物価、低ヒスタミン、低
トリメチルアミンで、プロテアーゼ等の有用な酵素を多
く含有する飼料を得る。 【構成】 原料魚粉にアスペルギルス・グラウカス(As
pergillus glaucus)等の乾燥に強い麹菌を接種し、そ
れを水分含有量20〜30%の低水分に調整し、約30
℃の温度で発酵を行なう。その発酵過程では、麹菌の繁
殖に必要かつ十分な量の酸素が供給される程度の僅かな
通風だけを行なう。麹菌の繁殖が終わると、発酵魚粉を
45℃以下の温度で通風乾燥させるようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、魚粉を原料とし、微
生物の発酵作用を利用してその魚粉を改質することによ
り、養殖魚類や家畜等の飼育に適した低過酸化物価、低
ヒスタミン、低トリメチルアミンで、プロテアーゼ、リ
パーゼ等の酵素を高濃度に含有する魚粉発酵飼料を製造
する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、魚粉(フィッシュミール)は、養
殖魚用の飼料として国内で年間数十万トンの量が消費さ
れている。ところが、魚粉には、トリメチルアミン等の
ように悪臭の強い成分や、過酸化脂質、ヒスタミン等の
ように魚類の成長を阻害する物質が含まれているものが
多く、これをそのまま魚類に与えて養殖した場合、養殖
魚への影響が懸念されている。
【0003】そこで、近年、例えば特公昭59−502
99号公報や特公昭62−25018号公報等に開示さ
れているように、原料となる魚粉に微生物を繁殖させ、
微生物の発酵作用を利用して魚粉の品質を改善する試み
がなされている。それらの公報に記載されている発酵法
による魚粉飼料の製造方法では、原料となる魚粉に水を
加えて水分を30〜60%に調整し、アスペルギルス・
ニガー(Aspergillusniger)、アスペルギルス・カンデ
ィダス(Aspergillus condidus)等の糸状菌、サッカロ
マイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisia
e)、サッカロマイセス・シエバリエリ(Saccharomyces
chevalieri)等の酵母及び細菌バチルス・ズブチリス
(Bacillus subtilis)の発酵微生物を、米又は麦のヌ
カ及びフスマの一方又は両方と共に混在させ、30℃で
通気撹拌培養した後40℃で再び通気撹拌培養を行な
い、生成する培養物を60〜80℃の温風で通気加熱乾
燥するようにして、過酸化物価及びTBA価が低く、栄
養価が高くて消化吸収が良く、毒性が無い魚粉飼料を得
ようとしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た従来の方法では、微生物の繁殖を促進させるべく原料
魚粉を30〜60%といった比較的高水分に調整して培
養が行なわれるため、目的とする微生物の優先培養が難
しく、その培養過程で同時に雑菌類が増殖してしまい、
雑菌汚染による腐敗を起こし、また製品品質が大きくば
らつくことになる。また、従来の方法では、上記したよ
うに生成した培養物を乾燥させるのに60〜80℃の温
風で通気加熱するため、微生物の培養時に折角生成した
有用な酵素類が高温加熱によって失活してしまい、最終
的に得られた魚粉飼料中に酵素類が存在しなくなる。さ
らに、発酵の制御面での難しさ等からコスト高になるな
ど、実用化に際しての多くの難題を抱えており、未だ実
用化の段階には至っていない。
【0005】この発明は、以上のような事情に鑑みてな
されたものであり、原料魚粉に目的微生物を優先繁殖さ
せ、雑菌汚染による腐敗や製品品質のばらつきを生じる
ことがなく、また、酵素を活性のまま含有した飼料が得
られるような魚粉発酵飼料の製造方法を提供することを
技術的課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明では、原料魚粉
を水分含有量20〜30%の低水分に調整して発酵を行
なうようにした。それに伴い、発酵作用を行なう微生物
として、乾燥に強いアスペルギルス属の菌株を用い、そ
の菌株を低水分の原料魚粉に約30℃の温度で繁殖させ
るようにした。また、この発明に係る方法では、従来の
発酵魚粉飼料の製造方法におけるように高水分の条件下
での発酵ではなく、低水分の条件下で発酵を行なうた
め、発酵速度が幾分抑制され気味であり、従って、発酵
物からの時間当りの発熱量が少なく、発酵に伴う温度上
昇も殆ど起こらない。このため、冷却のための発酵物へ
の通風は殆ど必要でなく、一方、原料魚粉は元々低水分
に調整されているので、過剰量の通風による急激な水分
の減少は、麹菌繁殖のためには却ってマイナス要因とな
る。従って、この発明の方法では、発酵過程において、
麹菌の繁殖に必要かつ十分な量の酸素が供給される程度
の僅かな通風だけが行なわれるようにする。そして、麹
菌の繁殖が終わると、発酵魚粉を45℃以下の温度で通
風乾燥させるようにする。
【0007】この発明に係る魚粉発酵飼料の製造方法で
は、上記したように乾燥に強い麹菌を使用して低水分の
条件下で発酵が行なわれるので、魚粉の腐敗を起こさな
い程度に雑菌類の繁殖を抑えつつ、麹菌を原料魚粉に繁
殖させることができ、その麹菌の発酵作用により、低過
酸化物価、低ヒスタミン、低トリメチルアミンで、プロ
テアーゼ、リパーゼ等の酵素を高濃度に含有する魚粉発
酵飼料が得られる。また、麹菌の繁殖が終わった発酵魚
粉は低水分であるので、45℃以下という比較的低い温
度で通風乾燥を行なうことができるため、乾燥に要する
熱エネルギーが少なくて済むとともに、麹菌の発酵作用
によって生成された多量のプロテアーゼが失活すること
なくそのまま魚粉発酵飼料中に含有されることになる。
【0008】また、上記した魚粉発酵飼料の製造方法に
おいて、魚粉に、炭水化物、脂質、植物性蛋白質、ビタ
ミン及びミネラルのうちの1種又はそれらを組み合わせ
たものを添加して原料魚粉とし、或いは、それらが添加
された市販の配合飼料物を原料魚粉とするようにすると
よい。この場合には、魚粉に殆ど含まれていない炭水化
物が補給されることになり、また、ビタミン、ミネラル
が強化されることになって、麹菌の繁殖が増進される。
また、炭水化物や植物性蛋白質の添加により、原料魚粉
に適度な通気性が付与され、麹菌の繁殖のための物理的
環境が改善されて、麹菌の増殖が促進されることにな
る。
【0009】
【実施例】以下、この発明の好適な実施例について説明
する。
【0010】この発明に係る魚粉発酵飼料の製造方法で
は、鰯等の魚介類を脱脂し、乾燥させて粉砕した魚粉が
原料として使用される。この原料魚粉に、乾燥に強い鰹
節麹菌アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glau
cus)を接種する。或いは、魚粉に、炭水化物、脂質、
植物性蛋白質、ビタミン及びミネラルのうちの1種又は
それらを適当に組み合わせた混合物を添加したものを原
料魚粉として、その原料魚粉に前記麹菌を接種する。ま
た、原料魚粉に接種する麹菌としては、アスペルギルス
・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・
ソーヤ(Aspergillus soyae)等のアスペルギルス属の
乾燥に強い菌株を使用することができる。そして、原料
魚粉に水を加え、水分含有量20〜30%の低水分に調
整する。このように水分量を調整した原料魚粉を10〜
25cmの厚さに盛り込み、30℃前後の温度に1〜3日
間保って発酵させ、途中で必要に応じて手入れと加水と
を行なう。この場合、低水分の条件下で発酵が行なわれ
るので、その発酵速度が抑制され気味となり、このた
め、発酵物からの時間当りの発熱量が少なく、発酵に伴
う温度上昇も殆ど起こらず、発酵物への通風による冷却
は殆ど不要であり、原料魚粉には20〜30%の水分し
か含まれていないので、過剰量の通風による急激な水分
の減少は、麹菌の繁殖を却って阻害することになる。こ
のため、発酵過程での通風は、それによって麹菌繁殖に
必要な量の酸素が供給されれば十分であり、僅かな量で
よい。
【0011】以上のような条件及び工程で発酵処理を行
なうことにより、麹菌が優先繁殖してその菌糸が魚粉に
蔓延し、雑菌汚染による腐敗及び品質のばらつきを生じ
ない発酵魚粉を得ることができる。図1は、原料魚粉の
水分含有量を種々に変化させたときの水分含有量とプロ
テアーゼ活性及び雑菌数との関係を示したグラフ図であ
る。図において、折線(I)が水分含有量(%)−プロ
テアーゼ活性(U/g)の関係を示し、折線(II)が水
分含有量(%)−雑菌数(cells/g)の関係を示す。
ここで、プロテアーゼは、飼料を魚が食べた際にその消
化性を良くする働きをするものであり、プロテアーゼ活
性は、原料魚粉が麹菌に発酵作用を受けてその品質改善
がなされた度合いを知る尺度となるものである。また、
プロテアーゼ活性1Uとは、60分間にチロシン1μg
相当量の生成物を与えるものをいう。従って、このプロ
テアーゼ活性の数値が大きい程、麹菌の増殖が盛んに行
なわれて、発酵作用による魚粉の品質改善がより進んだ
ことになる。また、図1に示した結果は、魚粉に10重
量%の割合で小麦を添加し、その原料魚粉に種々の割合
で水を加えてそれぞれ水分含有量を調整した後、種麹を
接種し、30℃で72時間培養した場合におけるもので
ある。
【0012】図1から、水分含有量が20%以上であれ
ば、養殖魚用飼料として利用可能な程度のプロテアーゼ
活性を有する発酵魚粉が得られるが、一方、水分含有量
が30%を越えると、雑菌汚染による腐敗を起こす程度
に雑菌数が多くなることが分かる。以上の結果より、原
料魚粉の水分含有量は20〜30%に調整すれば良い。
【0013】麹菌の繁殖が終わった後の発酵魚粉は、4
5℃以下の温度、例えば約30〜40℃の乾燥空気を送
り込むことにより、飼料としての品質が安定に保たれる
水分含有量である約10%以下の水分に通風乾させる。
この場合、麹菌の繁殖が終わった発酵魚粉は、水分含有
量15〜18%程度の低水分であるため、比較的低い温
度で十分に通風乾燥させることができる。従って、熱エ
ネルギーの節減を図ることができるとともに、従来のよ
うに60〜80℃といった高温で発酵魚粉を乾燥させた
りしないので、麹菌による発酵作用で生成した多量のプ
ロテアーゼやリパーゼは失活せずにそのまま魚粉発酵飼
料中に含有されることになる。
【0014】以上のような操作工程を経て最終的に得ら
れる魚粉発酵飼料は、プロテアーゼやリパーゼ等の酵素
を多く含み(酵素活性が高く)、その酵素作用により、
魚が摂取した際の消化吸収に優れた水溶性蛋白の含有割
合が高くなっている。また、魚粉発酵飼料は、原料魚粉
の悪臭成分であるトリメチルアミンの含有量、成長阻害
物質ないしは毒素である過酸化脂質やヒスタミンの含有
量が少なくなっており、養殖魚や家畜の飼料として適し
たものである。
【0015】表1に、未発酵の魚粉飼料と、その魚粉を
原料として製造された魚粉発酵飼料との成分分析比較表
を示す。表1に示した魚粉発酵飼料は、以下のような方
法によって製造された。すなわち、魚粉10kgに水2.
8Lと種麹とを加えて混合し、自動製麹装置を使用して
30℃の温度で72時間培養した。麹菌の繁殖は、培養
開始後約16時間経過した時点から始まり、48時間後
には菌糸が蔓延し、72時間後には終了した。麹中の水
分は、培養初期に26.5%であり、24時間後に2
3.8%、48時間後に20.4%、72時間後には1
6.2%まで減少した。生成された発酵魚粉の保存性を
良くするために、約40℃の温度で通風乾燥させ、水分
含有量を約12%にした。
【0016】
【表1】
【0017】表1から分かるように、上記のような方法
で得られた魚粉発酵飼料では、原料魚粉に比べ、有害物
質である過酸化物、ヒスタミン及びトリメチルアミンが
何れも減少し、蛋白分解酵素が高濃度に生成している。
このように、この発明の方法を実施することにより極め
て良好な飼料が得られた。
【0018】また、魚粉に各種栄養剤を添加して調製さ
れた市販の配合飼料を原料魚粉とし、この発明の方法で
培養を行なうことにより、市販の配合飼料の品質を改善
することができる。表2及び表3に、養殖平目用及び養
殖鯛用の各市販配合飼料とこの発明の方法によりそれぞ
れを品質改善した各魚粉発酵飼料との成分分析比較表を
示す。表2及び表3に示した発酵飼料は、以下の操作工
程で得られた。すなわち、魚粉に各種栄養剤等を添加し
て市販されている微粉末状の養殖平目用及び養殖鯛用の
各配合飼料10kgにそれぞれ、水2.8Lと種麹とを加
えて混合し、自動製麹装置を使用して30℃の温度で7
2時間培養した。麹菌の繁殖は、培養を開始して約24
時間後から始まり、48時間後には菌糸が蔓延し、72
時間後には終了した。
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】表2及び表3から分かるように、上記のよ
うにして得られた発酵飼料では、市販配合飼料に比べ、
有害物質であるヒスタミン及び過酸化物が減少し、酵素
活性が増大しており、この発明の方法を実施することに
より、市販配合飼料の品質改善がなされることが分か
る。
【0022】また、養殖魚の胃袋内における魚粉発酵飼
料中の蛋白分解酵素の働きをみるために、ビーカー内に
おいて魚の胃袋内の擬似環境をつくり、水溶性蛋白質の
増加を指標としてシミュレートした結果を図2に示す。
図2の(B)は、(A)に示した魚粉発酵飼料(この発
明に係る方法により製造されたもの)及び未発酵魚粉を
それぞれ生鰯に1:1の重量比で加えたものについての
結果を示す。魚粉発酵飼料としては、蛋白分解酵素が約
3,000U/g含有されたものを使用した。
【0023】図2の(A)より、未発酵魚粉では水溶性
蛋白質区分の変化が殆んどみられないのに対し、魚粉発
酵飼料では、蛋白分解酵素の作用により時間の経過に伴
って蛋白質が水溶性蛋白質に徐々に変化し、6時間経過
時において40%、18時間経過時において60%、そ
れぞれ水溶性蛋白質区分の割合が増加した。また、図2
の(B)より、生鰯に未発酵魚粉を加えたものでは水溶
性蛋白質区分の変化が殆んどみられないのに対し、生鰯
に魚粉発酵飼料を加えたものでは、発酵飼料の蛋白質の
他、生鰯の蛋白質も発酵飼料中の蛋白分解酵素の作用を
受け、水溶性蛋白質区分の割合が、6時間経過時におい
て30%、18時間経過時において40%、それぞれ高
くなった。
【0024】また、魚粉に、魚の成長に必要な各種栄養
成分を添加し、2〜20mmのペレット状に成形したもの
を原料魚粉とした場合にも、麹菌はそのペレット状原料
魚粉に良く繁殖し、発酵作用によってペレット状魚粉の
品質改善がなされる。表4及び表5は、市販されている
ペレット状配合飼料とそのペレット状配合飼料に麹菌を
繁殖させて得られたペレット状配合飼料との成分分析比
較表をそれぞれ示す。表4に示したペレット状発酵飼料
は、魚粉に各種栄養剤等を添加して2mmφの円柱状に固
めた市販ペレット状配合飼料を使用し、表5に示したペ
レット状発酵飼料は、同じく10mmφの円柱状に固めた
養殖鯛用市販ペレット状配合飼料を使用して、それぞれ
以下のような方法で培養を行なうことにより得られた。
すなわち、ペレット状配合飼料10kgに水2.8Lと種
麹とを加えて混合し、自動製麹装置を使用して30℃の
温度で72時間培養した。麹菌の繁殖は、培養を開始し
て約16時間後から始まり、48時間後にはペレット外
部に菌糸が蔓延し、72時間後には終了した。
【0025】
【表4】
【0026】
【表5】
【0027】表4及び表5より、ペレット状発酵飼料で
は、市販ペレット状配合飼料に比べ、有害物質であるヒ
スタミンが減少し、蛋白分解酵素が著しく高濃度に生成
して、市販ペレット状配合飼料の品質改善がなされたこ
とが分かる。
【0028】上記のように原料魚粉としてペレット状魚
粉を用いたときは、粉末状魚粉を用いた場合に比べ、以
下のような利点がある。すなわち、第1に、水分含有量
20〜30%の低水分の状態では、ペレットの形状を維
持したまま麹菌を繁殖させることができるため、そのま
ま何ら手を加えずに最終製品とすることができる。第2
に、ペレット状魚粉を充填した層においては、ペレット
間に比較的大きな空隙が形成されて、麹菌の繁殖に伴っ
て発生する熱が除去され易く、また、酸素補給性にも優
れているため、麹菌の繁殖が一層盛んに行なわれること
になって、粉末状魚粉を原料魚粉として得られる発酵飼
料に比べてプロテアーゼ生成量が約2倍になる。第3
に、麹菌を繁殖させたペレット状発酵飼料を魚への給餌
のために水中に投入した場合、水がペレット内部へ浸透
してもペレット形状は崩壊せずに長時間その形状を保持
することができ、飼料としての寿命を飛躍的に延長させ
ることができるとともに、水質汚濁防止にも役立つこと
となる。これは、麹菌の菌糸がペレットを包み込んでそ
れの水中での崩壊を防ぐためである。
【0029】また、培養過程において、麹菌を接種した
原料魚粉の層中に、プラスチック板、ガラス板、木製の
板、紙製の板、或いはこれらに類する板状体を仕切り板
として垂直に差し入れ、麹の層を、例えば約10cmの間
隔で区切るようにしてもよい。この状態で麹菌を培養す
ると、麹菌の菌糸が仕切り板に沿って盛んに伸長し、肉
眼によっても菌糸の塊で魚粉が白色を呈し、麹菌による
発酵作用によって生成されるプロテアーゼの量も2〜5
倍に増大する。これは、仕切り板の表面付近が幾分高水
分となり、また好気的な状態に保たれるため、麹菌の繁
殖にとって適した環境となること、及び、麹菌の菌糸が
仕切り板のような固形物に沿って伸びる性質を有してい
ることによるものと考えられる。表6に、仕切り板によ
る効果について示した。表6において、実験1は、原料
魚粉を25%の水分含有量に調整し、それに麹菌を接種
した後、30℃の温度で72時間培養したとき、実験2
は、原料魚粉を30%の水分含有量に調整し、それに麹
菌を接種した後、30℃の温度で72時間培養したと
き、実験3は、魚粉にそれと同量のデンプンを混合した
ものを原料魚粉とし、その原料魚粉を30%の水分含有
量に調整し、それに麹菌を接種した後、30℃の温度で
72時間培養したときの、それぞれの結果を示す。実験
1〜3の何れの場合も、仕切り板の表面付近の麹の方
が、仕切り板から離れた場所の麹より、蛋白分解酵素の
量が多くなっている。
【0030】
【表6】
【0031】また、魚油を10〜30%含有したペレッ
ト状魚粉に麹菌を繁殖させた場合、長期保存時における
魚油の酸化を防止することができる。表7は、市販され
ている養殖平目用ペレット状配合飼料(過酸化物価8.
8meq/kg)に水を加えて25%の水分含有量に調整
し、それに麹菌を接種した後、30℃の温度で72時間
培養した後、通風乾燥させて得られたペレット状発酵飼
料と、原料魚粉とした市販のペレット状配合飼料との、
それぞれの脂質酸化防止作用を比較した表である。表7
より、培養直後のペレット状発酵飼料の過酸化物価は
3.5meq/kgに低下しており、しかも、ペレット状発
酵飼料は、保存期間が長くなっても過酸化物価がそれほ
ど変化しないことが分かる。これは、麹菌の菌糸がペレ
ットを包み込み、その内部の油の酸化を防止しているた
めであると考えられる。
【0032】
【表7】
【0033】この発明に係る方法によって製造された魚
粉発酵飼料を平目及び鯛の稚魚に与えて実際に養殖した
ところ、非発酵魚粉を飼料として与えた平目や鯛に比
べ、両方の魚種共成長が早く、成魚の歩留りも良好であ
った。表8に、市販されている養殖平目用ペレット状配
合飼料に水を加えて20〜27%の水分含有量(飼料に
対して13.5〜25%の加水量)に調整し、それに麹
菌を0.2%添加し、30℃の温度で72時間発酵させ
た後、40〜45℃の温度で通風乾燥させて得られたペ
レット状発酵飼料(表4に成分分析を示した発酵飼料)
を平目に与えた場合と、原料魚粉とした市販のペレット
状配合飼料(表4に成分分析を示した市販飼料)及び生
餌を平目にそれぞれ与えた場合とにおける平目の養殖実
験の結果を示す。尚、生餌としては市販の冷凍品を解凍
して用いた。
【0034】養殖実験は、平目の3つの群のそれぞれに
上記した3種類の餌のうちの1種だけを継続投与して行
なった。また、投餌は、餌が残存しないことを観察し確
認しながら行なった。実験は、12月10日から2月1
8日までの70日間にわたって行ない、その期間におけ
る水温は図3に示した通りであり、平目の飼育実験とし
ては、水温が低く、余り良い条件ではなかった。
【0035】
【表8】
【0036】表8より、ペレット状発酵飼料を投与した
平目の群では、市販飼料や生餌を投与した群に比べ、生
残率が高く、そのために増肉係数及び飼料転換効率が共
に良いことが分かる。尚、生餌を投与した平目の肝臓は
脂肪肝であり、斃死の原因は肝臓疾患によるものと考え
られる。
【0037】最後に、この発明に係る方法によって製造
された魚粉発酵飼料を与えて養殖した魚の耐寒性につい
て説明する。表9に、市販されている養殖鯛用のペレッ
ト状配合飼料に水を加えて水分含有量25%に調整した
ものに麹菌を0.2%添加し、30℃の温度で96時間
発酵させた後、40〜45℃の温度で通風乾燥させて得
られた発酵飼料に生鰯を1:1の重量比で混合した餌を
真鯛に与えた場合と、原料魚粉とした市販の配合飼料に
生鰯を1:1の重量比で混合した餌を真鯛に与えた場合
とにおける比較結果を示す。飼育は、それぞれの餌を1
2月10日から2月18日までの70日間にわたって真
鯛稚魚に投与して行なった。また、耐寒性テストは、7
0日間飼育した真鯛稚魚について、飼育水温を7℃から
4℃に降下させたときの状態を観察することによって行
なった。
【0038】
【表9】
【0039】実験の結果、表9に示すように、発酵飼料
を含んだ餌を投与した真鯛稚魚は、29尾が全て元気で
あったのに対し、市販飼料を含んだ餌を投与した真鯛稚
魚は、29尾全て斃死した。これは、発酵飼料を投与す
ることで、真鯛稚魚が正常な発育を遂げ、水温低下に対
する抵抗力を持ったためであると考えられる。このこと
より、魚粉発酵飼料を含んだ餌で養殖した魚は、未発酵
魚粉を含んだ餌を与えて養殖した魚に比べ、極めて著し
い耐寒性を有することが分かり、この発明の方法で製造
した魚粉発酵飼料は、養殖魚の低温輸送の面でも大きな
貢献をなし得るものであると考えられる。
【0040】
【発明の効果】この発明は以上説明したように構成され
かつ作用するので、この発明に係る方法により、魚粉を
原料として発酵飼料を製造するようにしたときは雑菌汚
染による腐敗などを起こすことなく麹菌が優先繁殖し、
その麹菌による発酵作用により魚粉が品質改善されて、
低過酸化物価、低ヒスタミン、低トリメチルアミンでプ
ロテアーゼやリパーゼを多量に含有する、すなわち、悪
臭成分や成長阻害物質、毒素などを含まず、消化吸収が
良くて飼料効率の高い魚粉発酵飼料が得られる。また、
この発明に係る方法によると、従来の、発酵法による魚
粉飼料の製造方法に比べ、熱エネルギーの使用量が少な
くて済むとともに、発酵魚粉の乾燥には比較的低い温度
の温風が得られればよいので、製造設備も簡単で済む。
さらに、この発明に係る方法は、従来方法に比べて操作
工程も簡単である。
【0041】この発明は、以上のように種々の利点を有
し現実的に有用な魚粉発酵飼料の製造方法を提供し得た
ものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】原料魚粉の水分含有量を種々に変化させて麹菌
を繁殖させたときの水分含有量とプロテアーゼ活性及び
雑菌数との関係を示すグラフ図である。
【図2】この発明に係る方法により製造された魚粉発酵
飼料中の蛋白質分解酵素の働きを、水溶性蛋白質の増加
を指標としてシミュレートした結果を示すグラフ図であ
る。
【図3】この発明に係る方法により製造された魚粉発酵
飼料等を魚に投与して行なった養殖実験における水温条
件を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 早川 潔 滋賀県大津市竜が丘26番8号 (72)発明者 菊島 直 京都市東山区松原通大和大路東入2丁目 株式会社菱六内 (72)発明者 武部 実 東京都千代田区大手町二丁目6番2号 ニ チモウ株式会社内 (72)発明者 安藤 嘉生 東京都千代田区大手町二丁目6番2号 ニ チモウ株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原料魚粉にアスペルギルス属の乾燥に強
    い菌株を接種し、原料魚粉を水分含有量20〜30%の
    低水分に調整し、約30℃の温度において、麹菌の繁殖
    に必要かつ十分な酸素が供給される程度の僅かな通風を
    行ないながら発酵させ、麹菌の繁殖が終わった後、その
    発酵魚粉を45℃以下の温度で通風乾燥させるようにす
    る魚粉発酵飼料の製造方法。
  2. 【請求項2】 魚粉に炭水化物、脂質、植物性蛋白質、
    ビタミン及びミネラルのうちの何れか1種もしくは複数
    種を添加したものを原料魚粉とする請求項1記載の魚粉
    発酵飼料の製造方法。
  3. 【請求項3】 炭水化物、脂質、植物性蛋白質、ビタミ
    ン及びミネラルのうちの何れか1種もしくは複数種が添
    加された市販の配合飼料を原料魚粉とする請求項1記載
    の魚粉発酵飼料の製造方法。
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