JP2006066141A - 二次電池 - Google Patents

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健一 森垣
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Abstract

【課題】 短絡不良電池排出による高品質維持のために、高温下でのエージングを行った後も、高い利用率を維持しつつ、かつ低温特性を向上させたリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】複合リチウム酸化物からなる正極と、負極と、非水溶媒からなる電解液とを備えたリチウムイオン二次電池に対し、電解液の溶媒としてプロピレンカーボネイトを含んだ上で、負極の表面に微粒子フィラーを主材とする多孔膜層を一体形成させる。
【選択図】 なし

Description

本発明はリチウムイオン二次電池に関し、特に低温特性の向上を目的とした電解液組成の改良と、電極の表面に一体形成された多孔膜との相互作用に関する。
リチウムイオン二次電池は、複合リチウム酸化物からなる正極と、負極と、非水溶媒からなる電解液と、セパレータとを主構成要素とした、エネルギー密度の高い二次電池である。
リチウムイオン二次電池の用途が拡大する中で、主に寒冷地での使用を鑑み、低温特性の向上が要求されている。そこで電解液の溶媒の一部を、融点の低いプロピレンカーボネイト(以下、PCと略記)と置換する技術が提案されている。PCの添加により電解液溶媒の凝固点を下げ、低温においてもイオン伝導性を確保することにより、低温特性を向上させるというものである。
ただしPCは負極側で分解してガス発生を伴い、充放電反応を阻害する傾向がある。そこでこの不具合を回避するために、溶質の溶解性や低温における電解液粘度に留意しつつ、非環状炭酸エステルとPCなどの環状エステルとの比率を適正化する方法が提案されている(例えば特許文献1)。
特開平6−84542号公報
通常、リチウムイオン二次電池では、電極への電解液の浸透促進と内部短絡不良の検出を兼ねて、概ね45℃〜60℃で3〜10日間の保管(以下エージングと称す)を行う。ここで特許文献1のように、一定量以上のPCを添加した電解液を用いた場合、エージング期間中にPCの分解物が活物質の表面で不動態性の皮膜として蓄積されることにより、充電容量に対する放電容量の比(以下、利用率と略記)が顕著に低下する傾向が見られた。
本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、PCを有効活用しつつ、電池の利用率維持と低温特性とを両立することを目的とする。
本発明のリチウムイオン二次電池は、複合リチウム酸化物からなる正極と、負極と、非水溶媒からなる電解液とを備え、電解液の溶媒としてプロピレンカーボネイトを含んだ上で、負極の表面に微粒子フィラーを主材とする多孔膜層が一体形成されていることを特徴とするものである。
負極の表面に一体形成された多孔膜層が保護層として働き、エージングにおけるPCの分解による負極活物質表面での不動態性皮膜の形成を抑制する効果があることを利用したものである。
負極の表面に一体形成された多孔膜層は、多孔構造ゆえにイオン伝導性を保ちつつ、PC分解物が負極表面で多量に不動態性皮膜を形成させる隙間を与えない。さらには多孔膜層自体はセパレータと同じく負極の電位とは無関係なため、PC分解物が多孔膜層の表面に蓄積されることもない。
以上のように本発明によれば、イオン伝導性を阻害することのない保護膜が負極上に形成されるため、PCの活用により低温特性を向上しつつ、利用率の低下という課題を解決し得る、高いパフォーマンスを示すリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明の好ましい実施の形態を以下に示す。
本発明の請求項1に記載の発明は、複合リチウム酸化物からなる正極と、負極と、非水溶媒からなる電解液とを備えたリチウムイオン二次電池において、電解液の溶媒としてプロピレンカーボネイトを含み、負極の表面に微粒子フィラーを主材とする多孔膜層が一体形成されていることを特徴とする。
負極の表面に一体形成された多孔膜層の隙間が、負極に十分なイオン伝導姓を与える一方、多孔膜層を形成する微粒子フィラーが、エージングにおけるPCの分解自体を抑制するため、利用率低下の主因であるPC分解物の負極表面への蓄積を影響のないレベルまで低減することができる。
ここで微粒子フィラーとして、複数個の一次粒子からなる連結粒子フィラーを選択することにより、イオン伝導をつかさどるサブミクロンレベル径の空孔が十分に確保できるため、電池のハイレート特性が向上する。なお微粒子フィラーとしては、一次粒子あるいは連結粒子を問わず、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシアなどの無機酸化物を用いることができる。その粒子径は特に限定されないが、0.05〜5μmであることが好ましい。また十分な空孔を確保するという観点から、微粒子フィラーどうしあるいは微粒子フィラーと負極とを接着するバインダーには、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと略記)、変性アクリルゴムなどが好ましい例として挙げられるが、特に限定するものではない。
電解液の溶媒としてはPCが必須であり、さらにはPCが全溶媒に対して25〜60重量%、より詳しくはPC、エチレンカーボネイト(以下、ECと略記)およびジメチルカーボネイト(以下、DMCと略記)の重量比が1:0.3〜0.8:0.5〜2の範囲で混合されていることが、低温特性向上の観点から好ましい。PCが所定量より少ない場合は、PC添加による低温特性向上の効果が低くなる。またPCが所定量より多い場合は、エージングにおけるPCの分解が若干ながら顕在化し、利用率の僅かな低下が見られるようになる。
さらには電解液の溶媒として低融点溶媒であるプロピオン酸メチル(以下、MPと略記)を添加することにより、PCの働きを補助し低温特性が向上するので、より好ましい。
この他、電解液の溶媒としては、EC以外にもビニレンカーボネイトなどの環状炭酸エステル、DMC以外にもジエチルカーボネイト、エチルメチルカーボネイトなどの非環状炭酸エステルなどを用いることができる。さらには過充電時の安全性を高める観点から、これら炭酸エステルの他にシクロヘキシルベンゼンなどの添加物を加えることも可能である。なお電解液中に溶質として添加する塩には、LiPF、LiBF、LiN(SOなどのリチウム塩を用いることができる。
上述した本発明の骨子をなす構成要素の他に、以下に示す材料を適宜用いることができる。
正極は活物質に複合リチウム酸化物を用いることができる。具体的には組成式LiMOあるいはLiMで示され、MとしてはCo、Mn、Ni、Feをはじめとした遷移金属を少なくとも1種選択することができる。また上述した遷移金属の一部を、Al、Mgなどの典型金属に置換することも可能である。
上述した正極活物質は、導電剤およびバインダーと混練され、正極ペーストとして正極芯材に塗布乾燥され、所定厚に圧延された後、所定寸法に切断されて正極となる。ここで導電剤としては、アセチレンブラック(以下、ABと略記)などのカーボンブラックや、黒鉛材料、正極電位下において安定な金属微粉末を用いることができる。またバインダーとしては、正極電位下において安定な材料、例えばPVDFや変性アクリルゴム、ポリテトラフルオロエチレンなどを用いることができる。さらにはペーストを安定化させる増粘剤として、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCと略記)などのセルロース樹脂を用いても良い。さらに正極芯材としては、正極電位下において安定な材料、一般的にはアルミニウム箔が用いられるが、これには限らない。
負極は活物質にリチウムを吸蔵できる材料を用いることができる。具体的には黒鉛、シリサイド、チタン合金材料などから少なくとも1種を選択することができる。
上述した負極活物質はバインダーと混練され、負極ペーストとして負極芯材に塗布乾燥され、所定厚に圧延された後、所定寸法に切断されて負極となる。ここでバインダーとしては、負極電位下において安定な材料、例えばPVDFやスチレン−ブタジエンゴム共重合体(以下、SBRと略記)などを用いることができる。さらにはペーストを安定化させる増粘剤として、CMCなどのセルロース樹脂を用いても良い。さらに負極芯材としては、負極電位下において安定な材料、一般的には銅箔が用いられるが、これには限らない。
セパレータは電解液の保持力が高く、正負極いずれの電位下においても安定な微多孔性フィルムを用いるのが一般的である。具体的にはポリプロピレン(以下、PPと略記)、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドなどを用いることができる。なおここに挙げるセパレータは本発明の多孔膜と併用するのが一般的であるが、多孔膜を十分な厚みで形成する場合は、セパレータを用いなくてもよい。
以下、本発明の実施例について詳述する。
(実施例1)
人造黒鉛100重量部に対し、SBRを固形分で1重量部、CMCを固形分で1重量部加え、適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極ペーストを作製した。このペーストを10μm厚の銅箔に塗布乾燥し、総厚が180μm、活物質層密度1.4g/cmとなるように圧延した後、幅55mm、長さ620mmに切断して負極を作製した。
この負極の上に多孔膜を一体形成した。多孔膜は、平均粒子径0.5μmのアルミナの一次粒子100重量部に対し4重量部のPVDFを加え、適量のN−メチルピロリドン(以下、NMPと略記)とともに双腕式練合機にて攪拌した後、直径0.2mmのジルコニアビーズを用いてビーズミル分散したペーストを負極上に塗布して得た。
一方、コバルト酸リチウム100重量部に対し、PVDFを4重量部、ABを1重量部加え、適量のNMPとともに双腕式練合機にて攪拌し、正極ペーストを作製した。このペーストを15μm厚のアルミニウム箔に塗布乾燥し、総厚が160μm、活物質層密度が3.3g/cmとなるように圧延した後、幅53mm、長さ550mm切断して正極を作製した。
この正極と、前述した負極−多孔膜複合物とを、セパレータ(PP製微多孔性フィルム、23μm厚)を介して捲回することにより電極群を得た。
この電極群を直径18mm、高さ65mmの円筒型有底金属缶に挿入し、PC:EC:DMC=15:30:55(重量%)の溶媒にLiPFを1モル/リットル溶解させた電解液を加えた後、金属缶の開口部を封口し、公称容量2Ahのリチウムイオン二次電池を作製した。これを実施例1の電池とする。
(実施例2)
電解液の溶媒をPC:EC:DMC=25:20:55(重量%)とした以外は、実施例1と同様に作製した電池を、実施例2の電池とする。
(実施例3)
多孔膜の微粒子フィラーを、平均粒子径0.1μmのアルミナの一次粒子からなる原料粉末を1100℃にて20分間焼結して作製した連結粒子フィラーとした以外は、実施例1と同様に作製した電池を、実施例3の電池とする。
(実施例4)
電解液の溶媒をPC:EC:DMC=25:20:55(重量%)とした以外は、実施例3と同様に作製した電池を、実施例4の電池とする。
(実施例5)
電解液の溶媒をPC:EC:DMC=35:20:45(重量%)とした以外は、実施例3と同様に作製した電池を、実施例5の電池とする。
(実施例6)
電解液の溶媒をPC:DMC:MP=60:35:5(重量%)とした以外は、実施例3と同様に作製した電池を、実施例6の電池とする。
(実施例7)
電解液の溶媒をPC:EC:DMC:MP=30:15:35:20(重量%)とした以外は、実施例3と同様に作製した電池を、実施例7の電池とする。
(実施例8)
電解液の溶媒をPC:EC:DMC=70:10:20(重量%)とした以外は、実施例3と同様に作製した電池を、実施例8の電池とする。
(比較例1)
多孔膜を負極上に一体形成せず、電解液の溶媒をEC:DMC=50:50(重量%)とした以外は、実施例1と同様に作製した電池を、比較例1の電池とする。
(比較例2)
多孔膜を負極上に一体形成しなかったこと以外は、実施例2と同様に作製した電池を、比較例2の電池とする。
(比較例3)
実施例1と同様の多孔膜を負極上に一体形成したこと以外は、比較例1と同様に作製した電池を、比較例3の電池とする。
(比較例4)
実施例3と同様の多孔膜を負極上に一体形成したこと以外は、比較例1と同様に作製した電池を、比較例4の電池とする。
上述した実施例および比較例の多孔膜や電池に対し、以下の評価を行った。
(多孔膜の多孔度測定)
多孔膜の前駆体であるペーストを銅箔上にドクターブレードによって約20μmになるように塗布し多孔膜の試験片を作製した。この試験片の体積から多孔膜の実体積Aを求める一方、用いた微粒子フィラーとバインダーの真密度、およびそれぞれの添加比率から多孔膜の理論体積Bを求め、以下に示す式1から多孔膜の多孔度を求めた。
多孔度(%)=(A−B)/A×100 ・・(式1)
(低温特性)
各電池に対し、以下の充放電を行った。
充電:各サイクルとも20℃環境下、200mA定電流で4.2Vまで
放電1〜3サイクル目:20℃環境下、2000mA定電流で3.0Vまで
放電4サイクル目:−10℃環境下、2000mA定電流で3.0Vまで
この時の3サイクル目放電容量に対する4サイクル目放電容量の比率を、低温特性として表1に示した。
(利用率測定)
各電池を200mAで4.1Vに達するまで充電した後、45℃環境下で7日間エージングを行い、エージング後の電池を200mAで放電した後、20℃環境下で、以下の充放電を行った。
充電:200mA定電流で4.2Vまで
放電:200mA定電流で3.0Vまで
この時の充電容量に対する放電容量の比率を、利用率として表1に示した。
(ハイレート特性)
各電池に対し、20℃環境下で、以下の充放電を行った。
充電:200mA定電流で4.2Vまで
放電1〜3サイクル目:400mA定電流で3.0Vまで
放電4サイクル目:4000mA定電流で3.0Vまで
この時の3サイクル目放電容量に対する4サイクル目放電容量の比率を、ハイレート特性として表1に示した。
Figure 2006066141
表1に示す結果についての詳細な考察を、以下に示す。
まず多孔膜を負極に一体形成しなかった比較例1および2について記す。電解液にPCを添加しなかった比較例1は低温特性が著しく低い。これは前述したように、融点の高いECやDMCのみで溶媒が構成されて入るため、低温下で電解液のイオン伝導性が著しく低下したためと考えられる。一方PCを添加した比較例2は、低温特性は改善されているものの、エージング後の利用率が大幅に低下している。これは前述したように、エージング時にPCが負極の充電電位下で分解し、その分解物が活物質の表面で不動態性の皮膜として蓄積されたことによると考えられる。
これら比較例に対し、一次粒子からなる微粉末フィラー多孔膜を負極上に一体形成させた実施例1は、イオン伝導性を阻害しない多孔体がPC分解物の蓄積も抑制しているため、低温特性のみならずエージング後の利用率も高い水準を維持している。またPCの比率を高めた実施例2は、低温特性が実施例1よりもさらに向上している。
さらに上述した実施例1および2に対し、微粉末フィラーを二次粒子とした実施例3および4は、ハイレート特性が比較例1と同レベルまで回復している。この理由として、表1からも明らかなように、二次粒子からなる微粉末フィラーを用いることにより、イオン伝導をつかさどる空孔が十分に確保できている(多孔度が高い)ことが挙げられる。
実施例3〜8の比較から、PCが全溶媒に対して25〜60重量%、より詳しくはPC、ECおよびDMCの重量比が1:0.3〜0.8:0.5〜2の範囲で混合されることにより、特性バランスが向上していることがわかる。PCが所定量より少ない実施例3の場合、PC添加による低温特性向上の効果が若干低くなっている。またPCが所定量より多い実施例8の場合、エージングにおけるPCの分解の顕在化により、利用率の僅かな低下が見られている。以上の結果から、特性バランス(詳しくは低温特性と利用率との両立)を考えた場合、上述した範囲でPCを添加することが好ましいことがわかる。なお全くPCを添加しなかった比較例3および4は、低温特性の著しい降下が見られた。
最後に、電解液の溶媒として低融点溶媒のMPを添加した実施例7および8は、低温特性のさらなる向上が見られた。この理由として、MP自体が低融点であるため、PCの働きを補助したものと考えられる。
本発明の二次電池は、高品質化のため不可欠なエージングを経てもなお、低温特性に優れたポータブル用電源等として有用である。

Claims (5)

  1. 複合リチウム酸化物からなる正極と、負極と、非水溶媒からなる電解液とを備えたリチウムイオン二次電池において、
    前記電解液の溶媒としてプロピレンカーボネイトが含まれており、
    前記負極の表面に、微粒子フィラーを主材とする多孔膜層が一体形成されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  2. 前記微粒子フィラーが、複数個の一次粒子からなる連結粒子フィラーである請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記電解液の溶媒として、プロピレンカーボネイトが全溶媒に対して25〜60重量%の範囲で混合されている請求項1〜2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記電解液の溶媒として、プロピレンカーボネイト、エチレンカーボネイトおよびジメチルカーボネイトの重量比が、1:0.3〜0.8:0.5〜2の範囲で混合されている請求項3に記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 前記電解液の溶媒としてプロピオン酸メチルが含まれている請求項3に記載のリチウムイオン二次電池。
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