JP2006063859A - 蒸散燃料ガス吸着材及び蒸散燃料ガス捕集装置 - Google Patents

蒸散燃料ガス吸着材及び蒸散燃料ガス捕集装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 蒸散燃料ガスの吸脱着に伴って発生する熱による温度上昇及び温度降下を確実に防止して吸脱着性能を向上させることができ、装置の小型化が可能で製造が容易な蒸散燃料ガス吸着材とそれを用いた蒸散燃料ガス捕集装置を提供すること。
【解決手段】 相変化により熱の吸収及び放出を生じる物質を柔軟性を有するフィルムで構成された容器に封入した潜熱蓄熱材と吸着材からなる蒸散燃料ガスとそれを用いた蒸散燃料ガス捕集装置により上記課題を達成することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は蒸散燃料ガス吸着材及び蒸散燃料ガス捕集装置に関する。さらに詳しくは、相変化により熱の吸収及び放出を生じる物質を柔軟性を有するフィルムで構成された容器に封入した潜熱蓄熱材と吸着材からなる蒸散燃料ガス吸着材とそれを用いた蒸散燃料ガス捕集装置に関する。
地球環境保護の観点から車輌の運行に関しても各種の公害防止対策が運用されている。かかる対策の一環として、一般の車輌には車輌の停止時及び走行中に燃料タンクや気化器のフロート室等の燃料貯留室から生じる蒸散燃料ガスを活性炭に吸着させ、車輌の走行時に吸入される外気によって、吸着された蒸散燃料ガスを脱着させエンジンの吸気管に送り込み燃焼処理するキャニスターが搭載されている。
しかしながら、活性炭を吸着材に用いたキャニスターにおいては次のような本質的な問題がある。すなわち、蒸散燃料ガスに対する活性炭の吸着能力は活性炭の温度が低くなるほど向上し、蒸散燃料ガスの活性炭からの脱着能力は活性炭の温度が高くなる程上昇する。ところで蒸散燃料ガスの活性炭への吸着は発熱であるので、蒸散燃料ガスの吸着に伴って活性炭の温度は上昇し吸着性能は低下傾向となる。一方、蒸散燃料ガスの活性炭からの脱着は吸熱であるため、蒸散燃料ガスの脱着に伴って活性炭の温度は低下し脱着性能は低下傾向となる。このように、活性炭をそのまま蒸散燃料ガスの吸着材として使用すると、活性炭の吸脱着性能が充分発揮されず、非効率的である。
このような問題を解決する一つの方法として、外部から水等の媒体を流すことにより温度をコントロールする方法がある。しかしながら、外部に水等の媒体を流した場合、媒体の近傍は温度コントロールが容易であるが、吸着材の熱伝導率は低いため吸着材の内部まで温度をコントロールするには時間を要する。また、媒体を流すための設備及び運転のためのユーティリティーも必要である。
また、活性炭内に活性炭よりも比熱の大きい固体蓄熱材を分散して混入させた蒸発燃料捕集装置が知られており、固体蓄熱材として金属材料や各種セラミック、ガラス、無機材料が使用されている(特許文献1)。しかしながら、ここに記載の蒸発燃料捕集装置は顕熱を利用するものである。したがって、吸脱着を改善するために要する熱量に比べて熱的に不利となるので、効果を上げるためには多量の固体蓄熱材を混入させる必要がある。その結果、相対的に活性炭の比率が低下し、吸脱着時の温度の問題は解決してもトータルとしての吸着量は改善されないという問題がある。
特開昭64−36962号公報
また、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材と吸着材からなる潜熱蓄熱型吸着材も知られており、この吸着材をキャニスターに使用することが記載されている(特許文献2)。この吸着材は吸脱着に伴う熱の出入りによる性能低下、すなわち吸着時の発熱による温度上昇及び脱着時の吸熱による温度降下を防止することができ、吸脱着に伴い熱の出入りを生じるキャニスターの性能向上に有用であることが想定される。
国際公開 WO 03/106833 A1公報
特許文献2に記載されたマイクロカプセルを用いた吸着材は、温度に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質を蓄熱材として使用しているため少量の蓄熱材を混入させることにより効果を発現することが期待される。しかしながら、マイクロカプセルを分散させた液と吸着材とを均一に混合し乾燥させただけでは使用時に吸着材の細孔が閉塞され、吸着性能が減少したり、振動等により蓄熱材を封入したマイクロカプセルと吸着材が分離し本来の吸発熱能力を発揮できなくなるなど実用上の問題がある。
特許文献2には粉末状の蓄熱材を封入したマイクロカプセルと吸着材を混合して圧縮成形する方法も提案されており、この方法によれば蓄熱材と吸着材が密着することにより伝熱効率の観点から有効であると思われる。しかながら、圧縮成形するという煩雑な工程が必要であるうえ、圧縮成形時にマイクロカプセルが破壊され相変化物質が漏れ出す恐れがあり、そのためマイクロカプセルを破壊しないように成形するためには成形圧力を低下させる必要があり、結果として吸脱着時の温度の問題は解決しても単位体積あたりの活性炭量が減少するためトータルとしての吸着量は依然として増加しない。
したがって、本発明の目的は、蒸散燃料ガスの吸脱着に伴って発生する熱による温度上昇及び温度降下を確実に防止して吸脱着性能を向上させることができ、装置の小型化が可能で製造が容易な蒸散燃料ガス吸着材とそれを用いた蒸散燃料ガス捕集装置を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成すべく、相変化により熱の吸収及び放出を生じる物質(以下、潜熱蓄熱体と略記する)と活性炭とを接触効率が良好な状態で高密度で装置内へ装填することができれば、吸脱着熱の出入りによる吸着材上の温度変化を抑制することができるのではないかとの観点から鋭意検討を重ね、意外にも潜熱蓄熱体を柔軟性を有するフィルムで構成された容器に封入した潜熱蓄熱材を吸着材と併用するという簡単かつ安価な構成で本発明に到達した。すなわち本発明は、潜熱蓄熱体を柔軟性を有するフィルムで構成された容器に封入した潜熱蓄熱材と吸着材からなる蒸散燃料ガス吸着材である。また、本発明のもう一つの発明は、このような吸着材を有する蒸散燃料ガス捕集装置である。
本発明の蒸散燃料ガス吸着材によれば、潜熱型蓄熱体が柔軟性を有するフィルムから構成された容器に封入して使用されるので容器全体が塑性変形可能であり、蒸散燃料ガスの吸脱着に関与する吸着材と効率的に接触することができるので吸脱着に関わる熱の制御を有効に実施することができる。また、潜熱型蓄熱体は容器中に固体または液体の状態で高密度に充填できるので、限られた容積を有効に活用することができ装置の小型化が可能となる。
本発明の蒸散燃料ガス吸着材は、潜熱蓄熱体を容器に封入した潜熱蓄熱材と吸着材から構成される。このような潜熱型蓄熱体としてはエネルギー効率の点から−10℃〜100℃、より好ましくは20℃〜70℃で相変化する有機化合物を使用するのが好ましい。このような有機化合物としては、デカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、エイコサン、パラフィンなどの炭化水素化合物、ラウリルアルコ−ル、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコサノール、セリルアルコール、ミリシルアルコールなどの高級アルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸などの高級脂肪酸やこのグリセリド、プロピオンアミドなどのアミド類、ポリエチレングリコール(PEG)400、PEG600、PEG1000、PEG2000、PEG4000、PEG6000などのポリエチレングリコール、フェノール、クレゾールなどのフェノール類;エチレンジアミンなどのアミン類などの有機化合物、塩化カルシウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩及びその水和物、カルボン酸塩などの塩、これらの混合物などを挙げることができる。
潜熱蓄熱体としては、キャニスターにおける温度、熱安定性、熱容量などを考慮すると、炭化水素化合物、高級アルコール及び高級脂肪酸が特に好ましい。炭化水素化合物としては、ヘキサデカン、オクタデカン、エイコサン、パラフィンなどを、高級アルコールとしてはラウリルアルコ−ル、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコールなどを、また高級脂肪酸としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などを例示することができる。実用上充分な熱量を吸収、放出する必要性から、潜熱蓄熱体の潜熱は20mJ/mg以上のものが好ましく、50mJ/mg以上のものがさらに好ましい。
潜熱蓄熱体の過冷却現象を防止するため、その蓄熱体の融点よりも高い融点を有する化合物を蓄熱体に含有させてもよい。このような高融点化合物の含有割合は、相変化する蓄熱体に対して0.5〜30重量%とするのが好ましく、1〜15重量%とするのがさらに好ましい。高融点化合物としては、例えば脂肪族炭化水素化合物、芳香族化合物、エステル類、カルボン酸類、アルコール類、アミド類などを挙げることができる。
さらに潜熱蓄熱体と高融点化合物との組み合わせの具体例を示すと、例えば潜熱蓄熱体としてオクタデカンを用いた場合、高融点化合物としてパルミチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコサノール、ミリスチン酸、ベヘン酸、ステアリル酸アミド、エチレンビスオレイン酸を含有させるとよい。これらの高融点化合物は2種類以上組み合わせて使用しても構わない。
潜熱蓄熱体の過冷却現象を防止するために加えてもよい上記以外の物質としては、タルク、シリカ、二酸化チタン、珪酸カルシウム、三酸化アンチモン等の無機化合物の微粒子、ステアリン酸マグネシウムや安息香酸ナトリウム等の有機酸塩の微粒子等を例示することができる。
本発明の蒸散燃料ガス吸着材における最大の特徴は潜熱蓄熱体を柔軟性を有するフィルムで構成された容器に封入した潜熱蓄熱材を使用することにある。本発明でいう柔軟性を有するフィルムとは、弱い外力でも容易に塑性変形を起こすフィルムであり、例えば紙類、有機高分子材料、金属材料、高分子材料/金属材料の複合材などを素材とするフィルムである。強度の点で有機高分子材料、金属材料、高分子材料/金属材料の複合材が好ましい。
有機高分子材料の例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)
等のポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−12などのポリアミド、PET、PBTなどのポリエステル、ビニロン、エバ−ルなどのポリビニルアルコ−ル、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)などを挙げることができる。金属材料の例としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス鋼、鉛、マグネシウム、(アルミナ)などを挙げることができる。
高分子材料/金属材料の複合材の例としては、上記した有機高分子材料と金属材料との複合材を挙げることができるが、なかでも、柔軟性、熱伝導性、耐熱性、ガスバリア性、耐候性、耐寒性、更には工業的生産性の観点からアルミニウムフィルム(Al)を含むラミネート構造のフィルムが好ましい。このようなフィルムの具体例としてはAlを最内層とし、中間層をPE、最外層をPETとした5層構造ラミネートフィルム、またアルミニウムを蒸着したPET層、PE層、ナイロン層から成るラミネートフィルム等を例示することができる。これらは封止性にも優れている。
本発明において、潜熱蓄熱体を封入する容器はこのようなフィルムで袋状、直方体状、螺旋状など各種形状に構成されるが、封入容器の表面積を大きくできる点で扁平な板状又は表面に凹凸を設けたフィン状に構成するのが好ましい。従来、潜熱蓄熱体を袋に充填したものとして、アルミニウム等の金属箔やガスバリア性を有する樹脂(塩化ビニリデン、セロハン、ポリカーボネート、ナイロン、無可塑塩化ビニール等)から成るフィルム内に潜熱蓄熱体を封入して蓄熱床暖房装置に適用することが知られているが、ここで使用される袋状物は減圧密閉して形成されたものであるため剛直で柔軟性がない。すなわち、この袋状物は本発明のように蒸散燃料防止用吸着材の性能向上を目的として活性炭などの吸着材との密着性を考慮してなされたものではないから本発明のポイントである容器の柔軟性については全く考慮されていない。
潜熱型蓄熱体を封入した容器は、柔軟性の向上、吸着材との密着性の増大、熱伝導性の向上という観点から厚みは薄くする方が好ましく、10mm以下とするのが好ましい。5mm以下とするのがさらに好ましい。
熱伝導性を向上させ蒸散燃料ガスの吸脱着時の熱移動を効果的に実施するため
には潜熱蓄熱体を封入した容器間の間隔も重要な要因である。用いる吸着材の粒径等の形状にもよるが、容器間の間隔は活性炭を充填できる限り極力低減することが好ましく、本発明においては、容器間の距離を25mm以下とするのが好ましい。20mm以下とするのがより好ましく、10mm以下とするのがさらに好ましい。
潜熱蓄熱体を容器に封入する際、あまり容量を小さくすると容器の製作が煩雑となり、また容量があまり大きいと潜熱型蓄熱体の溶融状態での対流による熱効率の低下を招くので、潜熱蓄熱体は0.1〜200ミリリットル(mL)の単位で容器に封入するのが好ましい。0.3〜50mLがより好ましく、0.5〜20mLがさらに好ましい。潜熱蓄熱体は上記の単位でカプセルとして吸着材に混在させて使用してもよい。容器に封入された潜熱型蓄熱体は使用条件下で溶融と凝固を繰り返し熱の吸収及び放出を行うが、溶融状態での容器への充填率は95容量%以下とするのが好ましい。
本発明で使用する吸着材は蒸散燃料を吸脱着できるものであればとくに制限されるものではなく、例えば活性炭、アルミナ、シリカアルミナなどを使用することができる。なかでも吸脱着性能に優れる点で活性炭が好ましい。
活性炭の原料となる炭素質材料としては、賦活することによって活性炭を形成するものであればとくに制限はなく、植物系、鉱物系、天然素材及び合成素材などから広く選択することができる。具体的には、植物系の炭素質材料として、木材、木炭、ヤシ殻などの果実殻、鉱物系の炭素質材料として、石油系及び/又は石炭系ピッチ、コークス、天然素材として、木綿、麻などの天然繊維、レーヨン、ビスコースレーヨンなどの再生繊維、アセテート、トリアセテートなどの半合成繊維、合成素材として、ナイロンなどのポリアミド系、ビニロンなどのポリビニルアルコール系、アクリルなどのポリアクリロニトリル系、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリウレタン、フェノール系樹脂、塩化ビニル系樹脂などを例示することができる。なかでも、マクロ孔を原料段階で多く有する点で植物系の炭素質材料を使用するのが好ましい。
炭素質材料及び該炭素質材料を賦活して得られる活性炭の形状はとくに限定されるものではなく、粒状、粉状、繊維状、シート状など種々の形状のものを使用することができる。繊維状又はシート状の炭素質材料としては、木綿などの天然セルロース繊維、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨンなどの再生セルロース繊維、パルプ繊維、ポリビニルアルコール繊維、エチレンビニルアルコール繊維、フェノール繊維などの合成繊維などの織布又は不織布、フィルム、フェルト、シート状物を例示することができる。
炭素質材料は炭化、賦活されて活性炭となるが、炭化条件としては、例えば回分式ロータリーキルンに少量の不活性ガスを流しながら300℃以上で処理するなどの条件を採用することができる。賦活方法としては、ガス賦活、薬剤賦活など如何なる賦活方法を使用しても構わない。ガス賦活による方法において使用するガスとしては、水蒸気、炭酸ガス、酸素、LPG燃焼排ガス、又はこれらの混合ガスなどを挙げることができる。これらの賦活温度は、通常300℃〜1200℃、好ましくは900℃まで昇温することによって実施される。
薬剤賦活による方法において使用される薬剤としては、硫酸、燐酸、硝酸などの酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、塩化カルシウム、塩化亜鉛などの金属塩化物などを挙げることができる。これらの賦活温度としては、使用する薬剤にもよるが、通常、300℃〜800℃の範囲で実施される。
本発明の蒸散燃料ガス吸着材は、前述した潜熱蓄熱体を封入した各種形状の容器を活性炭などの吸着材中に配置することによって得ることができる。潜熱蓄熱体を封入した容器は柔軟性を有するので、活性炭などの吸着材との密着性が向上し蒸散燃料ガスの吸着性能を大幅に向上させることができる。蒸散燃料ガス吸着材に占める潜熱蓄熱材の割合は、あまり少ないと蓄熱能力が充分でなく、またあまり多いと相対的に吸着材が少なくなって吸脱着効果が低減するので、2重量%〜40重量%で実施するのが好ましい。5重量%〜30重量%が更に好ましい。
各種形状の容器を適用して蒸散燃料ガス捕集装置とした例を図1及び図2に示す。図1は扁平な板状に形成した潜熱蓄熱材と吸着材とを組み合わせた蒸散燃料ガス捕集装置の模式図(正面立面図)であり、図2は側面図である。図1及び図2において、1は本発明の燃料蒸散ガス吸着材を使用した蒸散燃料ガス捕集装置、2はパージ用空気口、3は分散板、4は潜熱蓄熱材、5は吸着材、6はBWCを測定するために使用したn−ブタン供給口である。
図3は渦巻き状に形成した潜熱蓄熱材と吸着材とを組み合わせた蒸散燃料ガス捕集装置の模式図(パージ用空気口側から見た平面図)であり、7は本発明の燃料蒸散ガス吸着材を使用した蒸散燃料ガス捕集装置、8は潜熱蓄熱材、9は吸着材である。
図4は内側に3枚の潜熱蓄熱材を1段に配し、外側に2枚の潜熱蓄熱材を3段で合計9枚の潜熱蓄熱材を使用した別の蒸散燃料ガス捕集装置の模式図(正面立面図)であり、図5は側面図である。図4及び図5において、10は本発明の燃料蒸散ガス吸着材を使用した蒸散燃料ガス捕集装置、11はパージ用空気口、12は分散板、13及び14は潜熱蓄熱材、15は吸着材、16はBWCを測定するために使用したn−ブタン供給口である。図1〜図5は潜熱蓄熱材を扁平な板状及び渦巻き状に構成した例であるがこの他にも種々な形状に構成可能なことは勿論である。以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
PET/PE/Al/PE/PETからなる5層構造で厚さ80μmのラミネート構造のフィルムを用いて構成した厚さ2.6mm×縦45mm×横60mmの袋状の容器に花王株式会社製ミリスチルアルコールを溶融状態で6.4mL注入しヒートシールした後平板上に放置し、厚みが均等になるように凝固させた。該容器を図1に示すような63mm角、高さ300mm(有効充填高さ252mm)、充填容積1000mLの塩化ビニール製キャニスターの底面に垂直に10mmの等間隔で5枚配置し、周囲に吸着材としてクラレケミカル株式会社製クラレコール3GXを容器と同じ高さまで充填した。この操作を順次繰り返し合計5段積みとし総充填容積を1000mLとした。
キャニスターを25℃のインキュベータに入れ内部温度が安定するまで放置し初期重量(1a)を測定した。次に純度99%以上のn−ブタンを1L/分の流量で上向きに流しn−ブタンを吸着させ、出口濃度が3000ppmに達した時点でn−ブタンの供給を止めてキャニスターの重量(W)を測定し初期重量(1a)からの増量(W−1a)を吸着量とした。
キャニスターを再度25℃のインキュベータに入れ5分間放置後下向流で空気を15L/分で20分間、合計300Lを流してn−ブタンをパージした。パージ後の重量(1b)を測定し吸着後の重量(W)との差を脱着量(W−1b)とした。この吸着・パージの操作を6回繰り返し最後の5、6回の吸着量と脱着量の平均値をn−ブタンワーキングキャパシティー(BWC)として次式によりBWCを求めたところ79g/Lであった。なお、活性炭3GXのみを充填したキャニスターによるBWCは56.5g/Lであり、これと比較して40%向上していることがわかる。
BWC=((W−5a)+(W−5b)+(W−6a)+(W−6b))/4
実施例2〜7及び比較例1〜2
実施例1において、容器を構成するフィルムの厚さを80μmとし、潜熱蓄熱体、容器素材、容器間隔及び潜熱蓄熱材の配置を表1に示す条件で実施した。パラフィンは片山化学工業株式会社製(融点40〜42℃)のパラフィンを使用し、パルミチルアルコールは花王株式会社製のパルミチルアルコールを使用した。潜熱蓄熱体の溶融状態での充填率は全て90容量%とした。結果を表1に示す。
比較例3
柔軟性のないPP製の肉厚1.5mm、外径19.0mm、高さ45mm、内容積8.4mLの円柱状容器に実施例1と同じ溶融状態のミリスチルアルコール7.6mLを注入し、冷却後PP製の蓋をして接着剤で密閉した。このようにして作製した潜熱蓄熱体の入った円柱状容器4本を実施例1と同様のキャニスターに12.5mmの等間隔で垂直に立てて配置し周囲に実施例1と同じ活性炭を充填した。実施例1と同様の方法によりBWCを測定したところ62.0g/Lであった。
比較例4
柔軟性のないPVC製の肉厚1.5mm、厚さ11.0mm、幅60mm、高さ45mm、内容積19.2mLの直方体容器に溶融状態の融点40〜42℃のパラフィン17.3mLを注入し、冷却後PVC製の蓋をして接着剤で密閉した。このようにして作製した潜熱蓄熱体の入った直方体状容器2本を実施例1と同様のキャニスターに20.5mmの等間隔で垂直に立てて配置し周囲に実施例1と同じ活性炭を充填した。実施例1と同様の方法によりBWCを測定したところ59.2g/Lであった。
実施例8
厚さ80μmのPEフィルムを用いて構成した厚さ3.3mm×縦75mm×横50mmの袋状の容器に花王株式会社製パルミチルアルコールを溶融状態で11.1mL注入しヒートシールした後平板上に放置し、厚みが均等になるように凝固させた(図4及び図5における13)。これと同様の方法で厚さ3.3mm×縦240mm×横30mmの容器に同じパルミチルアルコールを溶融状態で23.8mL注入し同様にして厚みが均等になるように凝固させた(図4及び図5における14)。これらの容器を実施例1と同様の充填容積1000mLのキャニスターに図4及び図5に示すように、蓄熱材13と14の間隔は6mm、14同士の間隔は15mmとなるように配置し、周囲に吸着材としてクラレケミカル株式会社製クラレコール3GXを容器と同じ高さまで充填した。実施例1と同様の方法によりBWC測定した結果を表1に示す。
Figure 2006063859
本発明の蒸散燃料ガス吸着材によれば、潜熱型蓄熱体が柔軟性を有するフィルムから構成された容器に封入して使用されるので容器全体が塑性変形可能であり、蒸散燃料ガスの吸脱着に関与する吸着材と効率的に接触することができるので吸脱着に関わる熱の制御を有効に実施することができ、小型化も可能であるのでキャニスターなどの蒸散燃料捕集装置として好ましく使用することができる。
扁平な板状に形成した潜熱蓄熱材と吸着材とを組み合わせた蒸散燃料ガス捕集装置の模式図(正面立面図)である。 図1の蒸散燃料ガス捕集装置の模式図(側面図)である。 渦巻き状に形成した潜熱蓄熱材と吸着材とを組み合わせた蒸散燃料ガス捕集装置をパージ用空気口側から見た場合の模式図(平面図)である。 別の蒸散燃料ガス捕集装置の模式図(正面立面図)である。 図4の蒸散燃料ガス捕集装置の模式図(側面図)である。
符号の説明
1 蒸散燃料ガス捕集装置
2 パージ空気口
3 分散板
4 潜熱蓄熱材
5 吸着材
6 n−ブタン供給口
7 蒸散燃料ガス捕集装置
8 潜熱蓄熱材
9 吸着材
10 蒸散燃料ガス捕集装置
11 パージ空気口
12 分散板
13 潜熱蓄熱材
14 潜熱蓄熱材
15 吸着材
16 n−ブタン供給口

Claims (9)

  1. 相変化により熱の吸収及び放出を生じる物質を柔軟性を有するフィルムで構成された容器に封入した潜熱蓄熱材と吸着材からなる蒸散燃料ガス吸着材。
  2. 該相変化により熱の吸収及び放出を生じる物質が−10℃〜100℃で相変化する物質である請求項1記載の蒸散燃料ガス吸着材。
  3. 該相変化により熱の吸収及び放出を生じる物質の潜熱が20mJ/mg以上である請求項1又は2記載の蒸散燃料ガス吸着材。
  4. 該容器がアルミニウムフィルムを含むラミネート構造のフィルムから構成されている請求項1〜3いずれかに記載の蒸散燃料ガス吸着材。
  5. 該容器の厚みが10mm以下である請求項1〜4いずれかに記載の蒸散燃料吸着材。
  6. 該容器間の距離が25mm以下である請求項1〜5いずれかに記載の蒸散燃料ガス吸着材。
  7. 該吸着材が活性炭である請求項1〜6いずれかに記載の蒸散燃料ガス吸着材。
  8. 該蒸散燃料ガス吸着材における潜熱蓄熱材の割合が2重量%〜40重量%である請求項1〜7いずれかに記載の蒸散燃料ガス吸着材。
  9. 請求項1〜8いずれかに記載の蒸散燃料ガス吸着材を有する蒸散燃料ガス捕集装置。
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