JP4526333B2 - キャニスター用吸着材、その製造方法及び燃料蒸散防止用キャニスター - Google Patents

キャニスター用吸着材、その製造方法及び燃料蒸散防止用キャニスター Download PDF

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Description

本発明は、車両の燃料蒸散防止用キャニスター及びキャニスター用吸着材に関するものである。
一般に車両においては、公害対策の関係から、車両の停止時及び走行中に燃料タンクや気化器のフロート室等の燃料貯留室に生じる蒸発燃料をカーボンキャニスターに導いて、吸着材である活性炭に吸着させ、車両の走行時には大気をキャニスターに取り入れ、吸着燃料を脱離させて制御弁介在のもとにエンジンの吸気管に送り込む。
蒸発燃料に対する活性炭の吸着能は、一般に、活性炭温度が低くなるほど高くなり、一方脱離性能は活性炭温度が高くなるほど高くなる。ところが蒸発燃料が活性炭に吸着される現象は発熱反応であり、蒸発燃料の吸着に伴って活性炭温度が上昇するため、その活性炭の吸着能は低下する。一方、蒸発燃料が活性炭から脱離する現象は吸熱反応であるから、蒸発燃料の脱離に伴って活性炭温度が低下するため、その活性炭の脱離性能は低下する。
このような問題を解決しうるキャニスターとして、活性炭内にその活性炭よりも比熱の大きな粒状の材料を混入させたものが提案されている。このキャニスターにおいて、活性炭による蒸発燃料の吸着に起因して発生する熱を比熱の大きな材料の温度上昇のために消費させることにより活性炭の温度上昇を抑制し、一方、活性炭からの蒸発燃料の脱離に必要な熱を比熱の大きな材料より供給することにより活性炭の温度低下を抑制し、これにより吸着−脱離特性の向上を図るものである。
しかしながら、このような比熱の大きな材料は金属材料、セラミック等により構成されているが、吸脱着熱に比べてこれらの比熱は小さく、充分な効果を得ようとした場合、大量の材料を混入する必要がある。これらの材料自体はほとんど吸着性能を有していないため、温度の面では改善されてもトータルとしての吸着性能は大幅には改善されることはないという問題点があった。
そこで、この問題点を解決するキャニスター用吸着材として、特許文献1には、蒸散燃料を吸着する吸着材と温度に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材とを含むキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材が提案されている。このキャニスター用吸着材によれば、従来のものに比べ、蒸散燃料の吸着−脱離性能は格段に優れているため、小型で高性能なキャニスターを供給できるという利点がある。
国際公開第03/106833号パンフレット
しかし、特許文献1のキャニスター用吸着材を製造する過程で、マイクロカプセル型蓄熱材と吸着材とを混合し成型を行った場合、マイクロカプセルが硬度の高い吸着材との接触により破壊され、その内包物が吸着材の細孔に吸着されてしまい、得られたキャニスター用吸着材の吸着性能の低下を引き起こす場合があった。
本発明は、成型時において、マイクロカプセルの破壊がなく吸着性能の低下がないキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材、及びその製造方法を提供することを目的とする。また、該キャニスター用潜熱蓄熱型吸着材を用いた燃料蒸散防止用キャニスターを提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、一旦、マイクロカプセル型蓄熱材とバインダーAとからなる成型蓄熱材を製造し、その成型蓄熱材を吸着材とバインダーBを用いて成型することにより、マイクロカプセルの破壊がなく吸着性能の高い潜熱蓄熱型成型吸着材を製造できることを見出した。かかる知見に基づき、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、次のキャニスター用潜熱蓄熱型成型吸着材及びその製造方法を提供する。
項1.温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材を、バインダーAを用いて成型して成型蓄熱材とし、該成型蓄熱材と吸着材とを、バインダーBを用いて成型して得られるキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材。
項2.前記成型蓄熱材のJIS硬度(JIS K 1474)が、吸着材のJIS硬度(JIS K 1474)より大きい項1に記載のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材。
項3.前記成型蓄熱材のJIS硬度(JIS K 1474)が90%以上である項1に記載のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材。
項4.バインダーAが耐溶剤性を有する熱硬化性樹脂である項1〜3のいずれかに記載のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材。
項5.前記成型蓄熱材の平均粒子径が、前記キャニスター用潜熱蓄熱型成型吸着材の平均粒子径より小さい項1〜3のいずれかに記載のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材。
項6.前記成型蓄熱材の平均粒子径が0.1mm以上4mm未満である項1〜5のいずれかに記載のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材。
項7.前記成型蓄熱材の混合量が、該成型蓄熱材と吸着材とバインダーの合計量に対し、4.5〜50重量%程度である項1〜6のいずれかに記載のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材。
項8.温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材とバインダーAの硬化物とからなる成型蓄熱材、吸着材、及びバインダーBの硬化物からなるキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材。
項9.項1〜8のいずれかに記載のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材が充填された燃料蒸散防止用キャニスター。
項10.キャニスター用潜熱蓄熱型吸着材の製造方法であって、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材を、バインダーAを用いて成型して成型蓄熱材を得る工程、及び該成型蓄熱材と吸着材とを、バインダーBを用いて成型してキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材を得る工程を含むことを特徴とする製造方法。
以下、本発明について詳細に説明する。
I.キャニスター用潜熱蓄熱型吸着材
本発明のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材は、温度に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化を伴う物質(以下「相変化物質」と呼ぶ)をマイクロカプセルに封入した蓄熱材を、バインダーAを用いて成型して成型蓄熱材とし、該成型蓄熱材と蒸散燃料を吸着する吸着材(以下、単に「吸着材」とも呼ぶ)とを、バインダーBを用いて成型して製造される。即ち、本発明のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材は、相変化物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材とバインダーAの硬化物とからなる成型蓄熱材、吸着材、及びバインダーBの硬化物から構成される。ここで、相変化物質を含む蓄熱材は、吸着材における蒸散燃料の吸着−脱離を促進する熱制御材として機能している。
本発明のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材が適用される蒸散燃料としては、例えば、自動車用ガソリン等が挙げられる。
吸着材
本発明に使用される蒸散燃料を吸着する吸着材としては、一般的に使用されているキャニスター用の吸着材であればよく、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト、有機金属錯体、シリカ多孔体等、又はそれらの混合物が例示される。好適には活性炭、活性アルミナ、又はそれらの混合物が使用できる。とりわけ活性炭が好ましい。活性炭は、石炭系、ヤシガラ系、木質系、リグニン系等の種々の原料から得られるものを使用でき、水蒸気賦活品;炭酸ガス賦活品;リン酸、塩化亜鉛、アルカリ金属等による薬品賦活品等の活性炭の賦活品を使用できる。
また本発明に適用される吸着材は、蒸散燃料の吸着能を上げるため細孔を有する粒子状又は粉末状のものが好ましい。吸着材の平均粒径は、例えば1μm〜10mm程度であればよい。比表面積は、通常500〜2500m2/g程度、好ましくは800〜2300m2/g程度であればよい。細孔径としては10〜50Å程度、好ましくは10〜35Å程度であればよい。
蓄熱材(マイクロカプセル)
本発明に使用される蓄熱材は、相変化物質を封入した粉末のマイクロカプセルからなる。
蓄熱材に封入される相変化物質としては、相変化に伴って潜熱の吸収及び放出を生じうる化合物であれば特に限定はない。相変化としては、例えば、固体−液体間の相変化等を例示することができる。相変化物質が相変化を生じうる温度(例えば、融点、凝固点等)はキャニスターの用途に応じて適宜選択することができるが、通常0〜50℃程度であればよい。
好ましい化合物としては、例えば、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ドコサン等の直鎖の脂肪族炭化水素;天然ワックス;石油ワックス;LiNO3・3H2O、Na2SO4・10H2O、Na2HPO4・12H2O等の無機化合物の水和物;カプリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸;炭素数が12〜15の高級アルコール;パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル等のエステル化合物等が挙げられる。相変化物質は、融点を調整するために上記から選ばれる2種類以上の化合物を併用してもよい。2種以上の相変化物質を併用する場合、各相変化物質の相変化を生じる温度の差が、0〜15℃程度となるような組み合わせが好ましい。
また、相変化物質の過冷却現象を防止する為に、必要に応じ、その相変化物質の融点より高融点の化合物を添加しても良い。高融点化合物の具体例としては、脂肪族炭化水素化合物、芳香族化合物、エステル類、カルボン酸類、アルコール類、アマイド類等が挙げられる。高融点化合物は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。例えば、ヒマシ油などの混合物でもよい。
芳香族化合物としては、ハロゲン置換ベンゼン、ナフタレン等を例示できる。ハロゲン置換ベンゼンとしては、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン等のジハロゲン化ベンゼンを例示できる。
エステル類としては、メチルエイコサン酸等のモノアルコールの脂肪酸エステル;リノール酸グリセリド等のグリセリンの脂肪酸エステルを例示できる。
カルボン酸類としては、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、エイコサン酸、ヘンイコサン酸、ベヘン酸等の脂肪族カルボン酸;安息香酸等の芳香族カルボン酸等を例示できる。
アルコール類としては、セチルアルコール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、ノナデカノール、エイコサノール等のモノアルコールを例示できる。
アマイド類としては、エイコサン酸アマイド、ノナデシル酸アマイド、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド等の脂肪酸アマイドを例示できる。
高融点化合物の含有濃度は、通常、相変化物質に対して0.5重量%〜30重量%程度であり、好ましくは1重量%〜15重量%程度であればよい。
マイクロカプセルの材料としては、公知の材料を用いることができ、例えば、樹脂等の高分子化合物を例示できる。高分子化合物としては、ホルムアルデヒド−メラミン樹脂、メラミン樹脂、ホルムアルデヒド−尿素樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルムアルデヒド−ポリアクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリブチルメタクリレート、ゼラチン等を例示できる。
マイクロカプセルの材料と相変化物質の重量比は特に限定はないが、通常30:70〜10:90程度であればよい。高融点化合物と相変化物質とを併用する場合には、マイクロカプセルの材料と、高融点化合物と相変化物質をあわせたものとの重量比が、上記範囲内となるように設定することができる。
本発明に使用される相変化物質をマイクロカプセル化する方法は、コアセルベーション法、界面重合法、in-situ法、酵母菌を用いた手法等の公知の方法を用いることが可能であり、いずれの方法においても本発明の効果を達成することができる。
例えば、相変化物質(及び必要に応じて高融点化合物)を液状媒体中で乳化剤等を用いて乳化し、これに所望の樹脂に対応する初期縮合物(プレポリマー)を添加した後、昇温し、重合反応を進めることにより、樹脂壁を有し相変化物質(及び必要に応じて高融点化合物)を含有するマイクロカプセル分散液(スラリー)を調製することができる。
液状媒体としては、水が特に好ましいが、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール、アセトン等の水混和性の溶媒が使用できる。上記溶媒を混合して用いてもよい。
マイクロカプセルの形状は、通常球形の粒子(粉末状又は顆粒状)であり、該粒子の粒径のコントロールは、カプセル化する際の乳化剤の種類と濃度、乳化時の温度および時間、乳化方法等の因子により変動するため、実験により最適な条件が設定される。マイクロカプセルの平均粒子径は、具体的には、0.1〜500μm程度であればよく、好ましくは、0.5〜200μm程度である。
成型蓄熱材
成型蓄熱材は、相変化物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材、バインダーA及び溶剤を混合してスラリーとし、これを攪拌造粒機、圧縮造粒機、押出し造粒機等の一般的な造粒機を用い成型して得ることができる。
バインダーAとしては、一般的なものが使用でき特に限定はなく、例えば、フェノール系、アクリル系、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、ウレタン系、アミドエステル系等の熱硬化性樹脂が使用できる。そのうち、成型蓄熱材のJIS硬度(JIS K 1474)が90%以上となり得る熱硬化性樹脂が好ましい。さらに、該熱硬化性樹脂は、成型後において耐溶剤性(耐水性、耐有機溶剤性等)の高い樹脂が好ましい。
バインダーAの添加量は、相変化物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材に対して1〜10重量%程度、好ましくは2〜6重量%程度であればよい。バインダーAの添加量が少なすぎると、蓄熱材の結合力が低下し、JIS硬度の低下及び耐溶剤性の低下を招くためにマイクロカプセルが破壊されやすくなり、また、バインダーAの添加量が多いと、成型蓄熱材よりなる潜熱蓄熱型蓄熱材の吸着性能が低下する場合がある。
溶剤としては、一般的なものが使用でき、好ましくは水、アルコール、これらの混合液等である。溶剤の添加量は、相変化物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材に対して、10〜50重量%程度、好ましくは15〜40重量%程度であればよい。
上記の混合物(スラリー)を攪拌造粒機、圧縮造粒機、押出し造粒機等の造粒機を用いて成型して成型蓄熱材を得、これを加熱処理(温度50〜160℃程度)して、硬化した成型蓄熱材を得ることができる。
硬化後の成型蓄熱材のJIS硬度は、例えば、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。成型蓄熱材のJIS硬度は、吸着材のJIS硬度よりも大きいことが好ましい。かかる硬度であると、吸着材と成型蓄熱材の成型時に、成型蓄熱材の吸着材との接触による割れ及びそれによる粉末化が抑制される。
上述のように、硬化後の成型蓄熱材が、耐溶剤性(耐水性、耐有機溶剤性等)が高い、好適なバインダーAを使用することが好ましい。例えば、耐水性については、硬化後の成型蓄熱材を50℃の水に24時間浸漬しても水が濁らないものが好ましく、さらに70℃の水に24時間浸漬してもが濁らないものがより好ましい。また、耐有機溶剤性については、硬化後の成型蓄熱材を30℃の有機溶剤(例えば、ヘキサン、ガソリン)に24時間浸漬後、有機溶剤中への相変化物質の染み出し量が、成型蓄熱材中の相変化物質の全量に対し10重量%以下のものが好ましく、5重量%以下のものがより好ましい。特に、アクリル系、メラミン系、アミドエステル系等の耐水性を有するバインダーAが好ましい。
このような耐溶剤性の高いバインダーAを使用することにより、硬化後の成型蓄熱材と吸着材との成型時に使用する溶剤によるマイクロカプセルの分散及び膨潤を防止し、成型蓄熱材の硬度を維持できる。また、成型蓄熱材の硬度が高くなるため、成型時の成型蓄熱材の粉化がなくなるとともに、吸着材(例えば、活性炭)による粉末状のマイクロカプセルの破壊を抑制することができる。
成型蓄熱材の形状は、特に限定はなく、ペレット(円柱状、球状)、ディスク、ブロック、ハニカム等の任意の形状に成型される。また、そのサイズ(平均粒子径)は、通常、0.1以上4mm未満、好ましくは0.3〜3.5mm程度、より好ましくは0.5〜2.5mm程度から適宜選択することができ、本発明の潜熱蓄熱型吸着材の平均粒子径より小さくすることが必須である。大きい場合、成型機のダイス等の穴を通る際に成型蓄熱材が破砕され、その際に発生する粉末状のマイクロカプセルが割れ、性能低下を招く恐れがあるからである。
例えば、本発明の潜熱蓄熱型吸着材の平均粒子径が2〜3mmの場合、成型蓄熱材の平均粒子径は0.5mm以上2mm未満であることが好ましい。
潜熱蓄熱型吸着材
本発明の潜熱蓄熱型吸着材は、上記の成型蓄熱材、吸着剤、バインダーB及び溶剤を混合してスラリーとし、これを攪拌造粒機、圧縮造粒機、押出し造粒機等の一般的な造粒機を用い成型して得ることができる。
バインダーBとしては、一般的に活性炭等の吸着材の成型に使用されている熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のバインダーを使用することができる。例えば、
メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等のセルロース;フェノール樹脂;ポリビニルアルコール;酢酸ビニル等の一般に使用されているものを制限なく使用できる。
バインダーBの添加量は、通常、成型蓄熱材、吸着剤及びバインダーBの合計量に対し、0.5〜10重量%程度、好ましくは1〜7重量%程度であればよい。
成型蓄熱材の混合量は、潜熱蓄熱型吸着材において吸着させるガス乃至蒸気にあわせて適宜設定することができる。成型蓄熱材の混合量としては、成型蓄熱材、吸着剤及びバインダーBの合計量に対し、4.5〜50重量%程度、好ましくは9〜40重量%程度であればよい。成型蓄熱材を多くすると、温度変化は大幅に改善されるが、それ自体吸着性能を有していないため不利になる。また蓄熱材を少なくすると温度変化量が大きくなり性能低下を招く場合がある。
吸着材としては、上述したもの、特に、一般的な吸着材である木質系活性炭、石炭系活性炭、やし殻活性炭等が使用でき、粉末、粒状、破砕炭等の形態で使用が可能である。吸着材の混合量は、通常、成型蓄熱材、吸着剤及びバインダーBの合計量に対し、50〜95重量%程度、好ましくは65〜90%程度であればよい。
溶剤としては、一般的なものが使用でき、好ましくは水、アルコール、これらの混合液等である。溶剤の添加量は、吸着材に対して、100〜200重量%程度、好ましくは130〜170重量%程度であればよい。
上記の混合物(スラリー)を攪拌造粒機、圧縮造粒機、押出し造粒機等の造粒機を用いて成型して成型蓄熱材を得、これを加熱処理(温度50〜160℃程度)して、硬化した成型蓄熱材を得ることができる。
本発明の潜熱蓄熱型吸着材は、成型体であり、その形状は特に限定はなく、例えば、ペレット(円柱状、球状)、ディスク、ブロック、ハニカム等の形状が例示される。また、そのサイズ(平均粒子径)は、通気抵抗の点から、その平均粒子径が0.5〜4mm程度、好ましくは0.5〜3.6mm程度、より好ましくは1〜3mm程度である。
本発明の潜熱蓄熱型吸着材では、マイクロカプセルに相変化物質を封入した蓄熱材がバインダーで成型された成型蓄熱材を形成しているため、マイクロカプセルそのものと吸着材との直接的な接触が成型蓄熱材の表面に限定される。そのため、マイクロカプセルの破壊を抑制することができ、ひいてはキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材の本来の吸着性能を高度に維持することができる。
さらに、本発明の潜熱蓄熱型吸着材は、成型体であるために、キャニスターからエンジン内への吸着材の飛散を抑えることができるというメリットも有している。
II.燃料蒸散防止用キャニスター
かくして得られる本発明の潜熱蓄熱型吸着材は、特にキャニスター等の蒸散ガス(主にブタン)のような吸着時の発生熱が高い吸着材に適している。本発明の吸着材は、キャニスターの容器に充填し、該容器に燃料タンクからの蒸散燃料ガスを導入することでガスを効率的に吸着させることができ、また、空気を導入することによりガスを効率的に脱離させることができる。
本発明の潜熱蓄熱型吸着材を充填したキャパシターにおける、ブタンワーキングキャパシティーは、1Lの容器に対し60〜75g/L程度と極めて大きい。
なお、蒸散燃料ガスないし容器の温度は、相変化物質の相変化温度(通常は融点)以下であるのが好ましい。
本発明のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材は、マイクロカプセルの破壊がないため、吸着性能を高度に維持することができる。
次に、本発明を、実施例を用いてより詳細説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
メラミン粉末5gに37%ホルムアルデヒド水溶液6.5gと水10gを加え、pHを8に調整した後、約70℃まで加熱しメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を得た。
pHを4.5に調整したスチレン無水酸共重合体のナトリウム塩水溶液100g中に、相変化を伴う化合物としてエイコサン70gを溶解し、液を上記水溶液に激しく撹拌しながら添加し、粒径が約10μmになるまで乳化を行った。
上記乳化液に、上記メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合水溶液全量を添加し、70℃で2時間撹拌を行った後、pHを9に調整しカプセル化を行った。反応終了後、カプセルを吸引ろ過し乾燥することにより、約4μmの粒径を有するカプセル(蓄熱材)を得た。
このカプセルに対して4重量%の熱硬化型アクリル系バインダー、及びカプセルに対して20重量%の水を加えてスラリーとして、これをディスクペレットタイプの押出し機で成型することにより、1mmの粒径を有する成型蓄熱材を製造した。その成型蓄熱材を100℃で10分間乾燥させ、バインダーが硬化した1mmの粒径を有する成型蓄熱材(ペレット)を得た。
この成型蓄熱材25重量部、キャニスター用粉末系活性炭(1480 m2/g、細孔容積0.94 ml/g、平均細孔径13Å)75重量部、カルボキシメチルセルロースバインダー3重量部、及び水120重量部を均一に混合してスラリーとして、ディスクペレットタイプの押出し機により2mmの潜熱蓄熱型吸着材の成型体を製造した。その潜熱蓄熱型吸着材を100℃で10分間乾燥させ、2mmの粒径を有する潜熱蓄熱型吸着材を得た。上記製造工程の模式図を図1に示す。
蓄熱型吸着材の成型体のSEM写真を測定した結果、カプセルの破壊はほとんどないことが明らかであった(図3)。
実施例2
実施例1により製造された潜熱蓄熱型吸着材に対して、以下の方法でブタンワーキングキャパシティを測定した。上記の潜熱蓄熱型吸着材を500mlの金属製キャニスターに充填し、25℃で99%のn-ブタンを0.5L/minでダウンフローにて吸着させ、出口のブタン濃度が5000ppmに達した時停止した。次に、室温で空気を7.5L/minで20分間キャニスターにアップフローで流し、n-ブタンを脱着させた。
この吸脱着を繰り返し行ない、その内の第4,5および6回目の吸着量および脱着の値の平均値によって、ブタンワーキングキャパシティを求めた。
その結果、ブタンワーキングキャパシティは1Lのキャニスター容器に対して60.5g/Lであった。また6回目のヒール量は(脱着後の細孔内に残存しているブタン量)は16.8g/Lであった。
比較例1
成型蓄熱材を形成することなく、蓄熱材の粉末、吸着材及びカルボキシメチルセルロースバインダーを混合し押出し成型した以外は、実施例1と同様にして潜熱蓄熱型吸着材を製造した。上記製造工程の模式図を図2に示す。得られた潜熱蓄熱型吸着材について、実施例2と同様にしてブタンワーキングキャパシティを測定した。
その結果、ブタンワーキングキャパシティは1Lのキャニスター容器に対して47.0g/Lであった。また、6回目のヒール量は(脱着後の細孔内に残存しているブタン量)8.8はg/Lであった。
また、蓄熱型吸着材のSEM写真を測定した結果、多くのカプセルにおいて破壊が観察された(図4)。
比較例2
実施例1に従い、2mmの平均粒径を有する成型蓄熱材を製造し、これを用いて2mmの粒径を有する潜熱蓄熱型吸着材を得た。得られた潜熱蓄熱型吸着材について、実施例2と同様にしてブタンワーキングキャパシティを測定した。
その結果、ブタンワーキングキャパシティは1Lのキャニスター容器に対して50.6g/Lであった。また、6回目のヒール量は(脱着後の細孔内に残存しているブタン量)は14.4g/Lであった。
また、蓄熱型吸着材のSEM写真を測定した結果、多くのカプセルにおいて破壊が観察された。これは、成型蓄熱材の粒子径が大きいと、成型機のダイス等の穴を通る際に成型蓄熱材が破砕されるため、粉末状のマイクロカプセルが割れてしまったためと考えられる。
比較例3
活性炭のみの吸着材について、実施例2と同様にしてブタンワーキングキャパシティの測定を行なった。その結果、ブタンワーキングキャパシティは1Lのキャニスター容器に対して56.5g//Lであった。また、6回目のヒール量は(脱着後の細孔内に残存しているブタン量)は50.8g/Lであった。
以上の結果から明らかなように、一旦、マイクロカプセルからなる蓄熱材を成型してから吸着材と再度成型することにより、マイクロカプセルの破壊を防止でき、より高いブタンワーキングキャパシティ及びパージ量が得られることが分かった。
比較例のヒール量が実施例より小さいのは、成型時にカプセルが破壊され相変化物質が吸着材の細孔に吸着されており、そのため見かけ上ヒール量が低くなっているためである。従って、比較例の場合、パージ後の細孔内に残存している吸着質の量は実施例より多くなり、好ましくない。
実施例1における潜熱蓄熱型吸着材の製造工程の模式図である。 比較例1における潜熱蓄熱型吸着材の製造工程の模式図である。 実施例1で得られる潜熱蓄熱型吸着材のSEM写真である。 比較例1で得られる潜熱蓄熱型吸着材のSEM写真である。

Claims (7)

  1. 温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材を、耐溶剤性を有する熱硬化性樹脂からなるバインダーAを用いて成型し、硬化してなる成型蓄熱材とし、該成型蓄熱材と吸着材とを、バインダーBを用いて成型して得られるキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材であって、
    前記成型蓄熱材の平均粒子径が0.1mm以上4mm未満であり、
    前記成型蓄熱材の混合量が、該成型蓄熱材と吸着材とバインダーの合計量に対し、4.5〜50重量%であるキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材
  2. バインダーBが、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のバインダーからなる請求項1に記載のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材。
  3. 相変化物質の相変化を生じうる温度が、0〜50℃である請求項1又は2に記載のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材。
  4. バインダーAの添加量が、相変化物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材に対して1〜10重量%である請求項1〜3のいずれかに記載のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材。
  5. 前記成型蓄熱材の平均粒子径が、前記キャニスター用潜熱蓄熱型成型吸着材の平均粒子径より小さい請求項1〜のいずれかに記載のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材が充填された燃料蒸散防止用キャニスター。
  7. キャニスター用潜熱蓄熱型吸着材の製造方法であって、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材を、バインダーAを用いて成型し、硬化してなる成型蓄熱材を得る工程、及び該成型蓄熱材と吸着材とを、バインダーBを用いて成型してキャニスター用潜熱蓄熱型吸着材を得る工程を含むことを特徴とする製造方法。
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