JP2006056499A - 車両用サスペンションシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】セントラルシリンダと4つの懸架シリンダとを備えた車両用サスペンションシステムにおいて、セントラルシリンダを制御可能とする。
【解決手段】車両の4つの懸架シリンダたるショックアブソーバ10〜16をセントラルシリンダ38に接続する。電磁方向切換弁68の第1位置においてピッチングが許容され、第2位置においてローリングが許容される。また、外力付与装置100によってセントラルピストン49に加えられる外力が制御される。ローリングが生じた場合に第2位置として外力を制御すれば、ローリング抑制の程度を制御することができ、ピッチングが生じた場合に第1位置として外力を制御すれば、ピッチング抑制の程度を制御することができる。ショックアブソーバの代わりに複動の液圧シリンダ設けることや、懸架シリンダのピストンの両側の液圧室をセントラルシリンダに接続することも可能である。
【選択図】図1

Description

本発明は、セントラルシリンダを備えた車両用サスペンションシステムに関するものである。
セントラルシリンダを備えた車両用サスペンションシステムの一例が下記特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載の車両用サスペンションシステムは、(a)車両の車輪毎に設けられ、負荷に応じた弾性力を発生する4つの弾性力発生装置と、(b)それら4つの弾性力発生装置に接続され、(i)ハウジングと、(ii)ハウジングの内部を仕切る仕切部材と、(iii)そのハウジングに摺動可能に嵌合された第1,第2の2つのピストンと、(iv)それら2つのピストンを、仕切部材を液密に貫通して連結する連結ロッドとを備えたセントラルシリンダとを含む。
このセントラルシリンダにおいては、第1ピストン、第2ピストンの外側が、それぞれ、左後輪、右後輪の弾性力発生装置の液圧を受ける受圧面とされ、第1ピストン、第2ピストンの内側が、それぞれ、左前輪、右前輪の弾性力発生装置の液圧を受ける受圧面とされる。定常状態において、第1、第2のピストンの各受圧面に受ける力は釣り合っている。第1、第2のピストンおよび連結部材から成るセントラルピストンは移動することはない。
例えば、車両にピッチングが生じ、車両の左前輪と右前輪との弾性力発生装置の圧力が高くなり、左後輪と右後輪との弾性力発生装置の圧力が低くなった場合には、セントラルピストンについて釣り合いの状態は変わらないため、セントラルピストンが移動することはない。4つの弾性力発生装置が互いに独立となり、車両のピッチングが抑制される。
それに対し、互いに対角位置にある車輪が同相で上下方向に移動した場合、例えば、右前輪の弾性力発生装置の圧力と左後輪の弾性力発生装置の圧力とが高くなり、左前輪、右後輪の弾性力発生装置の圧力が低くなった場合には、セントラルピストンは移動させられる。右前輪、左後輪の弾性力発生装置から作動液が流出し、左前輪、右後輪の弾性力発生装置に作動液が流入する。これらは連通させられたのと同じ状態になる。それによって、各車輪について、車輪側部材と車体側部材との間の相対移動が許容され、対角車輪の同相移動が許容される。
また、下記特許文献2には、前後左右の車輪に対応する4つの複動シリンダのうちの、車体の対角位置に位置する2つずつの複動シリンダの各ヘッド側室が他方の複動シリンダのロッド側室にそれぞれ接続通路により接続され、それら合計4本の接続通路の各々がセントラルシリンダの4つの液圧室の各々に接続された車両用サスペンションシステムが記載されている。特許文献2にはさらに、上記4本の接続通路の間に方向切換弁装置が設けられるとともに、セントラルシリンダと一体的に駆動シリンダが設けられ、その駆動シリンダと液圧源との間にも方向切換弁が設けられた車両用サスペンションシステムも記載されている。液圧源からの液圧により駆動シリンダが作動させられることにより、セントラルシリンダのセントラルピストンが駆動されるとともに、方向切換弁の切換えによって、上記4つの複動シリンダの任意のもののヘッド側室あるいはロッド側室に作動液が供給され、あるいはそれらからの作動液の流出が許容され、車体の前後左右の各部の高さが任意に制御される。
米国特許第3024037号明細書 特表平6−509997号公報 特表2001−502635号公報 特表2000−505755号公報 特表2002−541014号公報 特表2002−541015号公報
本発明は、上記セントラルシリンダを備えた車両用サスペンションシステムをさらに改良することを課題として為されたものである。
この課題は、車両用サスペンションシステムを、(1)車両の前後左右の車輪と車体の各対応部分との間に配設される4つの懸架シリンダと、(2)少なくとも2つの互いに一体的に作動する作動体と、それら2つの作動体をそれぞれ収容し、各作動体と共同して各作動体の両側にそれぞれ液圧室を形成するとともに互いに相対移動不能な少なくとも2つのハウジングとを備えたセントラルシリンダと、(3)そのセントラルシリンダの4つの前記液圧室と前記4つの懸架シリンダとを接続する接続装置と、(4)前記車両の走行状態を検出する走行状態検出装置と、(5)その走行状態検出装置により検出された走行状態に応じて、前記セントラルシリンダの作動状態を制御するセントラルシリンダ制御装置とを含むものとすることによって解決される。
セントラルシリンダは本来、作動を制御しなくても車両の対角位置にある2組の車輪の各々の軽快な同相移動が許容される一方、ピッチングあるいはローリングが良好に抑制されることを特長とするものである。したがって、従来は、車両の走行状態に応じてセントラルシリンダの作動を制御することは行われていなかったのであるが、車両の走行状態に応じて付加的な制御を行えば、セントラルシリンダの利点はそのまま享受しつつ、さらにきめ細かい制御を行うことができる車両用サスペンションシステムが得られる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(5)項が請求項4に、(8)項が請求項5に、(9)項が請求項6に、(10)項が請求項7に、(15)項が請求項8に、(16)項が請求項9に、(19)項が請求項10に、(20)項が請求項11に、(21)項が請求項12に、(28)項が請求項13に、(38)項が請求項14に、(39)項が請求項15に、(45)項が請求項16に、(46)項が請求項17に、(47)項が請求項18に、(50)項が請求項19に、(51)項が請求項20に、(59)項が請求項21にそれぞれ相当する。
(1)車両の前後左右の車輪と車体の各対応部分との間に配設される4つの懸架シリンダと、
少なくとも2つの互いに一体的に作動する作動体と、それら2つの作動体をそれぞれ収容し、各作動体と共同して各作動体の両側にそれぞれ液圧室を形成するとともに互いに相対移動不能な少なくとも2つのハウジングとを備えたセントラルシリンダと、
そのセントラルシリンダの4つの前記液圧室と前記4つの懸架シリンダとを接続する接続装置と、
前記車両の走行状態を検出する走行状態検出装置と、
その走行状態検出装置により検出された走行状態に応じて、前記セントラルシリンダの作動状態を制御するセントラルシリンダ制御装置と
を含むことを特徴とする車両用サスペンションシステム。
(2)前記走行状態検出装置が、前記車体に前後方向の回転モーメントと横方向の回転モーメントとの少なくとも一方が、少なくとも一定以上の大きさで作用することを検知するモーメント作用検知装置を含む(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
車体に前後方向の回転モーメントが作用することが検知できれば、セントラルシリンダをピッチングの制御に適した状態とすることができ、横方向の回転モーメントが検知できれば、ローリングの制御に適した状態とすることができる。
(3)前記セントラルシリンダ制御装置が、前記モーメント作用検知装置による前記少なくとも一方の回転モーメントの作用検知に応じて、前記セントラルシリンダの4つの前記液圧室の各々と前記4つの懸架シリンダの各々との接続状態を変更する接続状態変更装置を含む(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本車両用サスペンションシステムにおいては、車体に前後方向の回転モーメントと横方向の回転モーメントとの少なくとも一方が、少なくとも一定以上の大きさで作用することがモーメント作用検知装置により検知される。「作用することが検知される」には、「実際に作用していることが検知される」と、「ごく近い将来作用するはずであることが検知される」とが含まれる。例えば、モーメント作用検知装置が後述の前後加速度センサである場合には、前後方向の回転モーメントが実際に作用していることが検知されるに等しいこととなり、ブレーキペダルが原位置にないことを検知するブレーキスイッチ(後述のブレーキ作動検知装置の一種)である場合には、前後方向の回転モーメントがごく近い将来作用するはずであることが検知されることとなる。横方向の回転モーメントについては、横加速度センサとステアリングホイール等の操舵部材が中立位置にないことを検知する操舵スイッチとがそれぞれ上記前後加速度センサとブレーキスイッチとに対応する。
このように、モーメント作用検知装置による車体の前後方向の回転モーメントあるいは横方向の回転モーメントの検出に応じて、接続状態変更装置により4つの懸架シリンダの少なくとも2つと、セントラルシリンダとの接続状態が変更されれば、同じセントラルシリンダが4つの懸架シリンダに対して為す作用が変わり、車体のピッチングとローリングとの少なくとも一方の制御が適切に行われることとなる。例えば、セントラルシリンダが、ピッチングを抑制する状態とローリングを抑制する状態とに切り換えられたり、ピッチングを抑制する状態とピッチングを許容する状態とに切り換えられたりするのである。前者の実益は、必要に応じてピッチングとローリングとの両方が抑制され得ることであり、後者の実益は、例えば、左右前輪あるいは左右後輪が同時に段差に乗り上げ、あるいは段差から降りる場合には、それらと車体との間の距離の変動が良好に許容される一方、車両の加速時あるいは減速時に車体のピッチングが良好に抑制されることである。
(4)前記接続状態変更装置が、前記接続状態を、(a)ローリングを抑制する状態と、(b)ピッチングを抑制する状態と、(c)対角同相移動を許容する状態とのうちの少なくとも2つの状態の間で変更可能なものである(3)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項の特徴と共に、あるいは本項の特徴の代わりに、接続状態変更装置を、前記接続状態を、(a)ピッチングを許容する状態と、(b)ローリングを許容する状態と、(c)対角同相移動を許容する状態とのうちの少なくとも2つの状態の間で変更可能なものとすることも可能である。
(5)前記接続状態変更装置が、前記接続状態を、(a)ピッチングを許容する状態と、(b)ピッチングを抑制する状態と、(c)ローリングを許容する状態と、(d)ローリングを抑制する状態と、(e)対角同相移動を許容する状態と、(f)対角同相移動を抑制する状態とのうちの少なくとも2つの状態の間で変更可能なものである(3)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(6)前記接続状態変更装置が、前記接続状態を、前記セントラルシリンダにおいて、(a)前側の左右輪に対応する懸架シリンダの液圧と後側の左右輪に対応する懸架シリンダの液圧とが対向して作用する第1状態と、(b)右側の前後輪に対応する懸架シリンダの液圧と左側の前後輪に対応する懸架シリンダの液圧とが互いに対向して作用する第2状態と、(c)互いに対角位置にある2対の車輪の一方の対に対応する懸架シリンダの液圧と、他方の対に対応する懸架シリンダの液圧とが互いに対向して作用する第3状態とのうちの少なくとも2つの間で変更可能なものである(3)項に記載の車両用サスペンションシステム。
第1状態において、ピッチングが生じた場合に2つ以上の作動体は移動させられ、複数の懸架シリンダが実質的に連通させられる。それによって、ピッチングが許容される。また、ローリングが生じた場合は2つ以上の作動体は移動することはない。複数の懸架シリンダは別個独立した状態となり、ローリングが抑制される。
第2状態において、ローリングが生じた場合に2つ以上の作動体が移動させられ、ピッチングが生じた場合は移動させられることはない。それによって、ローリングが許容され、ピッチングが抑制される。
第3状態において、互いに対角位置にある車輪が同相で上下方向に移動した場合(以下、対角同相移動と略称する)に、2つ以上の作動体が移動させられるが、ピッチングが生じた場合、ローリングが生じた場合には、移動することがない。それによって、対角同相移動が許容されて、ローリング、ピッチングが抑制される。
接続状態変更装置は、接続状態を、第1状態と第2状態とで変更可能なものであっても、第2状態と第3状態とで変更可能なものであっても、第1状態と第3状態とで変更可能なものであっても、第1状態、第2状態および第3状態の間で変更可能なものであってもよい。
(7)前記走行状態検出装置が、前記車体に作用する前後方向の加速度に対応する前後加速度対応量および横方向の加速度に対応する横加速度対応量をそれぞれ取得する前後加速度対応量取得装置および横加速度対応量取得装置を含み、前記接続状態変更装置が、少なくとも、ピッチングよりはローリングを抑制するローリング抑制状態と、ローリングよりはピッチングを抑制するピッチング抑制状態とに切換えが可能なものである(3)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本態様の車両用サスペンションシステムは、ローリングとピッチングとのいずれかを重点的に抑制するものであるが、両方が同時に発生する場合には、横加速度対応量と前後加速度対応量との大きさと変化速度との少なくとも一方に基づいて、抑制することがより望ましい方が選択されて抑制される。
(8)前記接続状態変更装置が、前記ローリング抑制状態と前記ピッチング抑制状態との間の切換えを前記前記前後加速度対応量と横加速度対応量との少なくとも一方に応じて変更する切換変更部を含む (7)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(9)前記切換変更部が、前記ローリング抑制状態と前記ピッチング抑制状態との少なくとも一方から他方への切換えの時間を、前記前後加速度対応量と横加速度対応量との少なくとも一方が大きい場合に小さい場合より長くする切換時間変更部を含む(8)項に記載の車両用サスペンションシステム。
ローリング抑制状態とピッチング抑制状態との間の切換え(移行)を瞬時に行うと、車体姿勢が急変する場合があって好ましくないため、横加速度対応量や前後加速度対応量が大きいほど切換時間を長くして、ローリング抑制状態とピッチング抑制状態との間の移行が緩やかに行われるようにする。具体的には、例えば、切換えのためにリニヤ弁を使用し、あるいは開閉弁のデューティ制御によることができる。
(10)前記切換変更部が、前記ローリング抑制状態から前記ピッチング抑制状態への切換えのしきい値を、前記横加速度対応量が大きい場合に小さい場合より大きくする横加速度対応しきい値変更部を含む(8)項または(9)項に記載の車両用サスペンションシステム。
例えば、通常はローリング抑制状態にされており、前後加速度対応量が大きい場合にピッチング抑制状態に切り換えられるようにすることができるが、ピッチングを抑制したくても、横加速度対応量が大きく、ローリングを抑制した方がよい場合には、ピッチング抑制状態には切り換えられないようにすることが望ましい。したがって、ピッチング抑制状態への切換えのしきい値を横加速度対応量が大きいほど大きくするのである。
(11)前記切換変更部が、前記ローリング抑制状態から前記ピッチング抑制状態への切換えと、前記ピッチング抑制状態から前記ローリング抑制状態への切換えとで、切換えのしきい値を変える切換方向対応しきい値変更部を含む(8)項ないし(10)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
ローリング抑制状態からピッチング抑制状態への切換えのピッチング抑制移行しきい値と、ピッチング抑制状態からローリング抑制状態への変更のローリング抑制移行しきい値とを互いに異ならせ、切換えの頻発を回避することが望ましい。例えば、ピッチング抑制移行しきい値をローリング抑制移行しきい値より大きくして、ピッチング抑制状態になりにくく、ローリング抑制状態に復帰しにくくするのである。
(12)前記接続装置が、前記セントラルシリンダの4つの前記液圧室の各々と前記4つの懸架シリンダの各々とを接続する4つの接続通路を含み、かつ、前記接続状態変更装置が、
それら4つの接続通路のうちの少なくとも2つに対して設けられ、それら少なくとも2つの接続通路による前記4つの懸架シリンダのうちの少なくとも2つと前記セントラルシリンダの4つの液圧室のうちの少なくとも2つとの接続状態を逆転させる方向切換弁装置と、
前記モーメント作用検知装置による前記少なくとも一方の回転モーメントの少なくとも一定以上での作用検知に応じて、前記方向切換弁装置を、その少なくとも一方の回転モーメントによる前記車体の回動を前記セントラルシリンダに抑制させる状態に切り換える弁制御装置と
を含む(3)項ないし(11)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
方向切換弁装置は、例えば、実施例におけるように1つの方向切換弁によって構成したり、複数の弁、例えば2つの開閉弁によって構成したりすることができる。
弁制御装置は、モーメント作用検知装置による回転モーメントの作用検知に応じて方向切換弁装置をその回転モーメントによる車体の回動をセントラルシリンダに抑制させる状態に切り換える。それによって、前後方向の回転モーメントと横方向の回転モーメントとのうち、作用することが検知されたものに基づく車体の回動が抑制される。また、例えば、前後方向の回転モーメントに基づくピッチングが抑制されない状態では、左右の前輪が同時に段差部に乗り上げた場合に、セントラルシリンダによって、左右の前輪の上昇、すなわち車体への接近が容易にされるため、段差取上げの衝撃が車体に伝達されることが良好に抑制される。
なお、通常は、方向切換弁装置を、セントラルシリンダにより、横方向の回転モーメントに基づくローリングが抑制される一方、ピッチングが許容される状態にしておき、前後方向の回転モーメントの作用が検知された場合に、ピッチングが抑制される状態に切り換えられるようにすることも可能である。
方向切換弁装置が電磁方向切換弁等の電磁弁を含むものである場合には、モーメント作用検知装置が電気信号を発するものとされ、弁制御装置が電磁弁への電流の供給を制御するものとされることが望ましい。ただし、これらは不可欠ではない。例えば、方向切換弁装置を、ブレーキ液圧をパイロット圧として作動するパイロット式方向切換弁を含むものとすることができる。この場合には、ブレーキシステム自体がモーメント作用検知装置を兼ね、ブレーキ液圧をパイロット式方向切換弁へ導くパイロット通路が弁制御装置として機能することとなる。
(13)前記方向切換弁装置が、前記4つの接続通路のうちの2つに対して設けられ、それら2つの接続通路による前記4つの懸架シリンダのうちの2つと前記セントラルシリンダの前記2つの作動体の1つの両側の前記液圧室との接続状態を逆転させるものである (12)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(14)前記方向切換弁装置が、電流が供給されないノーマル状態では前記セントラルシリンダに前記車体の前記前後方向の回転モーメントによる回動を抑制させない状態であるピッチング非抑制状態にあり、前記前後回転モーメント作用検知装置による前後方向の回転モーメント検知に応じて電流が供給されることにより、前記セントラルシリンダに前記車体の前後方向の回転モーメントによる回動を抑制させる状態であるピッチング抑制状態に切り換えられる電磁方向切換弁である(12)項または(13)項に記載の車両用サスペンションシステム。
通常は方向切換弁装置がピッチング非抑制状態にあり、前後方向の回転モーメントが検知された場合にピッチング抑制状態に切り換えられるようにすることは、一般的に望ましいことであり、ノーマル状態においてピッチング非抑制状態にあるようにすれば、電流供給時間を短縮することができ、電磁方向切換弁の過熱防止とエネルギ節減との効果が得られる。
(15)前記接続装置が、前記セントラルシリンダの4つの液圧室の各々と前記4つの懸架シリンダの各々とを接続する4つの接続通路を含み、かつ、前記接続状態変更装置が、
それら4つの接続通路のうちの少なくとも3つに対して設けられ、それら少なくとも3つの接続通路による前記4つの懸架シリンダのうちの少なくとも3つと前記セントラルシリンダの4つの液圧室のうちの少なくとも3つとの接続状態を切り換える方向切換弁装置と、
前記モーメント作用検知装置による前記少なくとも一方の回転モーメントの作用検知に応じて、前記方向切換弁装置を、その少なくとも一方の回転モーメントによる前記車体の回動を前記セントラルシリンダに抑制させる状態に切り換える弁制御装置と
を含む(3)項ないし(12)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
(16)前記モーメント作用検知装置が、前記車体に前後方向の回転モーメントが作用することを検知する前後回転モーメント作用検知装置を含む(3)項ないし(15)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
(17)前記前後回転モーメント作用検知装置が、前記車両に設けられたブレーキの作動状態を検知するブレーキ作動状態検知装置を含む(16)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(18)前記前後回転モーメント作用検知装置が、前記車体の前後方向の加速度を検知する前後加速度センサを含む(16)項または(17)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(19)前記4つの懸架シリンダが、ほぼ上下方向に延びるシリンダハウジングと、そのシリンダハウジング内に配設されたピストンと、そのピストンの片側へ軸方向に延び出て前記ハウジング外へ突出するピストンロッドとを備え、前記ピストンの両側にヘッド側室とロッド側室とが形成された複動の直線的シリンダであり、それら4つの直線的シリンダのうちの、前記車体の対角位置に位置する2つの直線的シリンダの一方の各ヘッド側室が他方の直線的シリンダのロッド側室にそれぞれ接続通路により接続され、それら合計4本の接続通路の各々が前記セントラルシリンダの前記4つの液圧室の各々に接続された(3)項ないし(18)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項の構成によれば、4つの車輪と車体との距離が独立に変化した場合でも4つの車輪の接地荷重の変動を小さく抑えることができる。あるいは、4つの車輪の一つが路面の突部に乗り上げたり、くほみに落ち込んだりした場合に、その影響が車体に及ぶことを良好に回避することができる。なお、直線的シリンダはショックアブソーバでも、複動液圧シリンダでもよい。また、(3)ないし(18)項の発明においては、懸架シリンダを、ピストンが一直線に沿って移動する直線的なシリンダとすることは不可欠ではなく、例えば、作動体が一軸線まわりに回動するロータリシリンダ等を採用することも可能である。ただし、この場合には、車輪と車体とのほぼ上下方向の相対移動を回動運動に変換してロータリシリンダに伝達する運動変換装置が必要になる。
(20)前記4つの懸架シリンダが、ほぼ上下方向に延びるシリンダハウジングと、そのシリンダハウジング内に配設されたピストンと、そのピストンの片側へ軸方向に延び出て前記ハウジング外へ突出するピストンロッドとを備え、前記ピストンの両側にヘッド側室とロッド側室とが形成された複動の直線的シリンダであり、それら4つの直線的シリンダの前記ヘッド側室とロッド側室との一方が、それぞれ接続通路により前記セントラルシリンダの前記4つの液圧室の各々に接続された(3)項ないし(18)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項の構成によれば、前項の構成による場合に比較して、配管の合計長さを短くすることができ、装置コストを低減し得る。
(21)前記4つの懸架シリンダの各々が、(a)ハウジングと、(b)そのハウジング内に設けられ、そのハウジング内の空間を仕切って両側にそれぞれ液圧室を形成する作動体と、(c)その作動体に設けられ、その作動体の両側の液圧室間の作動液の流通を許容するとともにその流通に抵抗を付与する流通抵抗付与装置とを備えたショックアブソーバである(3)項ないし(20)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
流通抵抗付与装置は、絞りや減圧弁により構成することができる。
(22)前記4つの懸架シリンダがそれぞれ少なくとも1つの液圧室を備え、その少なくとも1つの液圧室の少なくとも1つに対して、少なくとも1つのアキュムレータが接続された(1)項ないし(21)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
アキュムレータを設ければ、設けない場合に比較して懸架シリンダの作動が容易となり、路面の凹凸により車輪に加えられる衝撃が車体に伝達されることを回避することが容易となる。
(23)前記4つの懸架シリンダの各々に対して、作動液の流れに対して流速が大きいほど大きい抵抗を付与する流通抵抗付与装置が設けられた(1)項ないし(22)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
(24)前記セントラルシリンダの前記2つのハウジングが、それぞれ直線的なシリンダハウジングであり、それら2つのシリンダハウジングに前記2つの作動体としてのピストンがそれぞれ直線的に往復動可能に嵌合されるとともに、一体的に移動する状態に互いに結合された(1)項ないし(23)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
(25)前記2つの直線的なシリンダハウジングが互いに同心に配置され、前記2つのピストンが1本の連結ロッドにより互いに連結された(24)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(26)前記2つのシリンダハウジングが互いに一体的に形成され、内部が仕切壁により2つの空間に仕切られ、前記連結ロッドがその仕切壁を貫通して、前記2つの空間の各々に配設された2つのピストンを連結している(25)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(27)前記2つの直線的なシリンダハウジングがそれぞれ大径部と小径部とを備えるとともに大径部側が開放されたものであり、それぞれの大径部において互いに一体化されて両端部が小径部、中央部が大径部である一体の段付シリンダハウジングとされ、前記2つのピストンがそれぞれ小径部に嵌合される一方、大径部にはそれら2つのピストンより大径のピストンが嵌合され、それら3つのピストンが連結ロッドにより互いに連結された(25)項に記載の車両用サスペンションシステム。
中央の大径のピストンとそれの両側のピストンとの間にそれぞれ1つずつの液圧室が形成され、両側の2つの小径のピストンの大径のピストンとは反対側にそれぞれ1つずつ液圧室が形成される。
(28)前記セントラルシリンダ制御装置が、前記走行状態検出装置により検出された走行状態に応じて前記セントラルシリンダの作動体に外力を加える外力付与装置を含む(1)項ないし(27)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
(29)車両の複数の車輪の各々に対してそれぞれ設けられた複数の懸架シリンダと、
それら複数の懸架シリンダと接続され、それら複数の懸架シリンダの各々の液圧をそれぞれ受ける複数の受圧面を備えた1つ以上の作動体を備えたセントラルシリンダと、
そのセントラルシリンダにおける前記複数の懸架シリンダの接続状態を変更する接続状態変更装置と、
前記セントラルシリンダの作動体に外力を加える外力付与装置と
を含むことを特徴とする車両用サスペンションシステム。
本項の車両用サスペンションシステムによれば、接続状態変更装置と外力付与装置との共同により、それらのいずれか一方のみによる場合に比較して、より理想に近いローリングおよびピッチングの制御を実現することができる。
(30)前記外力付与装置が、(i)前記駆動力を発生させる駆動力発生装置と、(ii)その駆動力発生装置によって発生させられた駆動力を前記1つ以上の作動体に伝達する駆動力伝達装置と、(iii)前記1つ以上の作動体に加えられる駆動力を制御する駆動力制御装置とを含む(22)項または(29)項に記載の車両用サスペンションシステム。
外力付与装置は、電気的な駆動力を付与するものであっても、液圧による駆動力を付与するものであってもよい。
(31)前記駆動力発生装置が、電力の供給により駆動力を出力する電動モータを含み、
前記駆動力制御装置が、前記電動モータの出力を制御することによって、前記セントラルシリンダの作動体に加えられる駆動力を制御するモータ制御部を含む(30)項に記載の車両用サスペンションシステム。
前記駆動力伝達装置は、電動モータの回転を作動体に伝達する回転伝達装置を含むものとすることも、電動モータの回転を直線運動に変換してセントラルシリンダの作動体に伝達する運動変換装置を含むものとすることも可能である。
(32)前記駆動力発生装置が、高圧の液圧を発させるポンプ装置を含み、前記駆動力伝達装置が、ハウジングと、そのハウジングに液密かつ相対移動可能に嵌合され、前記ポンプ装置の吐出圧に応じた液圧を受ける作動体と、その作動体と前記セントラルシリンダの作動体とを力を伝達可能な状態で連携させる連携部とを備えた外力付与用液圧シリンダを含み、前記駆動力制御装置が、前記外力付与用液圧シリンダに加えられる液圧を制御することによって、前記セントラルシリンダの作動体に加えられる駆動力を制御する液圧制御部を含む(30)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(33)前記液圧制御部が、
(i)前記ポンプ装置を制御することによって吐出圧を制御するポンプモータ制御部と、
(ii)(a)前記ポンプ装置と前記外力付与用液圧シリンダとの間に設けられた1つ以上の電磁制御弁と、(b)それら1つ以上の電磁制御弁への供給電流を制御することにより、前記外力付与用液圧シリンダに加えられる液圧を制御する電流制御部とを含む制御弁依拠制御部との少なくとも一方を含む(32)項に記載の車両用サスペンションシステム。
ポンプ装置がポンプおよびポンプモータを含む場合には、ポンプモータの制御によりポンプの吐出圧が制御され、それによって、外力付与用液圧シリンダに加えられる液圧が制御され、セントラルシリンダの作動体に加えられる力が制御されるようにすることができる。
また、ポンプ装置と外力付与用液圧シリンダとの間に1つ以上の電磁制御弁が設けられ、その1つ以上の電磁制御弁の制御により外力付与用液圧シリンダに加えられる液圧が制御されるようにすることもできる。電磁制御弁は、供給電流の大きさに応じて連続的に液圧を制御可能な液圧制御弁としたり、高圧源と低圧源との間に設けられた電磁開閉弁としたりすることができる。
(34)前記外力付与装置が、前記外力の向きと大きさとの少なくとも一方を制御する外力制御部を含む(28)項ないし(33)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。(35)前記外力付与装置が前記セントラルシリンダの1つ以上の作動体に付与する外力を、車両の走行状態と路面の状態との少なくとも一方に基づいて制御する外力制御部を含む(28)項ないし(34)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
例えば、走行状態が、ピッチングを抑制する要求が強い状態である場合にピッチングの抑制の程度を高くし、ピッチングを許容する要求が強い場合に抑制の程度を低くすることができる。
走行状態は、横加速度、ヨーレイト、操舵角および車速、ローリングレイト、ローリング角等で表したり、前後加速度、ピッチングレイト、ピッチング角等で表したりすることができる。ローリングの程度、ローリングする可能性が高いほどローリングを抑制する要求が強く、ピッチングの程度、ピッチングする可能性が高いほどピッチングを抑制する要求が強いとすることができる。
また、路面の状態がピッチングを許容する要求が強い状態である場合にピッチングが許容され、ピッチングやローリングを抑制する要求が強い状態である場合にピッチングやローリングが抑制されるようにすることができる。具体的には、路面の凹凸が大きい場合は小さい場合よりピッチングを許容することが望ましい状態にあり、摩擦係数が高い場合は低い場合よりピッチングやローリングを抑制することが望ましい状態にある。路面の状態は路面センサによって検出することができるが、凹凸の程度は、ばね下あるいはばね上の上下加速度、上下ストローク等に基づいて取得することができ、摩擦係数は、例えば、制動スリップ,駆動スリップが生じた場合の制動力,駆動力に基づいて取得することができる。
(36)前記外力付与装置が、前記外力を、運転者の意図に応じて制御する運転者対応制御部を含む(28)項ないし(35)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
車両の姿勢変化の抑制の程度が運転者によって入力可能とされている場合には、その入力された姿勢変化の抑制の程度に応じて外力が制御されるようにすることができる。姿勢変化の抑制の程度が強い場合は硬い乗り心地となり、抑制の程度が弱い場合は柔らかい乗り心地となる。
(37)前記外力付与装置が、(i)前記接続状態変更装置によって車両のピッチングを許容する接続状態とされた場合に、前記外力を制御することによってピッチングの抑制の程度を制御するピッチング抑制制御部と、(ii)前記接続状態変更装置によって車両のローリングを許容する接続状態とされた場合に、前記外力を制御することによって前記ローリングの抑制の程度を制御するローリング抑制制御部との少なくとも一方を含む(28)項ないし(36)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
(38)前記外力付与装置が、
前記セントラルシリンダの作動体に、その作動体の作動量に応じて変化する弾性力を加える弾性力付与装置と、
その弾性力付与装置の弾性力を制御する弾性力制御装置と
を含む(28)項または(29)項に記載の車両用サスペンションシステム。
セントラルシリンダの作動体に加えられる弾性力を制御すれば、セントラルシリンダの作動し易さを制御することができ、車両用サスペンションシステムの懸架特性を制御することができる。
本項が(29)項に従属する場合には、弾性力制御装置が、前記走行状態検出装置により検出された走行状態に応じて弾性力付与装置の弾性力を制御するものであることは不可欠ではない。例えば、前述のように、車両の姿勢変化の抑制の程度が運転者によって入力可能とされるようにしてもよいのでる。
(39)前記弾性力付与装置が、
前記セントラルシリンダの前記少なくとも2つの作動体の作動につれて容積が変化する少なくとも1つの外力付与シリンダと、
その外力付与シリンダに互いに並列に接続された複数のアキュムレータと、それら複数のアキュムレータの一部のものと前記外力付与シリンダとの間に設けられ、それらを連通させる状態と遮断する状態とに切換え可能なばね定数制御弁装置とを含む可変ばね装置と
を含み、前記弾性力制御装置が、前記ばね定数制御弁装置を制御することにより、前記セントラルシリンダの前記少なくとも2つの作動体の作動に抗するばね力を制御するばね力制御部を含む(38)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項の態様によれば、セントラルシリンダの作動体に加えられる弾性力を容易に制御することができる。
(40)前記車体に作用する前後方向の加速度に対応する前後加速度対応量を取得する前後加速度対応量取得装置を含み、前記ばね力制御部が、その前後加速度対応量取得装置により取得された前後加速度対応量に基づいて前記ばね定数制御弁装置を制御することにより、前記セントラルシリンダの前記2つの作動体の作動に抗するばね力を制御するものである(39)項に記載の車両用サスペンションシステム。
例えば、セントラルシリンダが懸架シリンダに、ローリングを抑制し、ピッチングを許容する状態に接続され、前後加速度対応量取得装置により取得された前後加速度対応量が大きい場合には、ばね力制御部がばね定数制御弁装置を制御して、可変ばね装置のばね定数が大きくされるようにすれば、セントラルシリンダが作動しにくくなり、ピッチング(ノーズダイブとノーズリフトとの少なくとも一方)の抑制を強くすることができる。並列に接続されている複数のアキュムレータの数を減少させれば、可変ばね装置のバネ定数を大きくすることができる。
(41)前記複数のアキュムレータが、前記外力付与シリンダに互いに並列に接続された低ばね定数アキュムレータおよび高ばね定数アキュムレータを含み、前記ばね定数制御弁装置が、外力付与シリンダと低ばね定数アキュムレータとの間に設けられ、両者を連通させる状態と遮断する状態とに切換え可能な連通制御弁を含む(40)項に記載の車両用サスペンションシステム。
低ばね定数アキュムレータが外力付与シリンダから遮断されれば、可変ばね装置のばね定数が高くなる。
(42)前記外力付与シリンダと前記可変ばね装置とが2組設けられ、前記前後加速度対応量の絶対値が大きい場合に、ノーズダイブとノーズリフトとの両方の抑制が強くされる(40)項または(41)項に記載の車両用サスペンションシステム。
セントラルシリンダが4つの懸架シリンダに、ローリングを抑制し、ピッチングを許容する状態に接続されている場合は、2組の外力付与シリンダおよび可変ばね装置の各組により、セントラルシリンダの一方向の作動が抑制されればノーズダイブが抑制され、他方向の作動が抑制されればノーズリフトが抑制される。
なお、セントラルシリンダが4つの懸架シリンダに、ピッチングを抑制し、ローリングを許容する状態に接続されている場合は、2組の外力付与シリンダおよび可変ばね装置の各組により、右へのローリングと左へのローリングとがそれぞれ抑制される。
(43)前記セントラルシリンダが前記4つの懸架シリンダに、ローリングを抑制し、ピッチングを許容する状態に接続され、前記可変ばね装置の前記ばね定数制御弁装置がパイロット圧により制御されるパイロット式制御弁を含み、前記前後加速度対応量取得装置が、前記4つの懸架シリンダのうちの少なくとも1つの液圧室の液圧を前記パイロット圧として前記パイロット式制御弁に導くパイロット圧導入部を含む(40)項ないし(42)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項によれば、前後加速度対応量取得装置を電子的に前後加速度対応量を取得するものとし、ばね定数制御弁装置を電磁制御弁とそれを電子的に制御する電子制御装置とを含むものとする場合に比較して、製造コストを低減し、あるいは信頼性を高めることができる。
本項の発明は、セントラルシリンダが4つの懸架シリンダに、ピッチングを抑制し、ローリングを許容する状態に接続されている場合にも同様に適用することができる。
(44)前記ばね定数制御弁装置が、前記外力付与シリンダと前記低ばね定数アキュムレータとの間に、互いに並列に接続された4つのパイロット式制御弁を含み、前記パイロット圧導入部が、前記4つの懸架シリンダのうち左右前輪に対応する2つの懸架シリンダの前輪荷重増大時に液圧が増大する液圧室の各々と、左右後輪に対応する2つの懸架シリンダの後輪荷重減少時に液圧が増大する液圧室の各々との液圧をそれぞれ前記4つのパイロット式制御弁を閉じる向きに導くものである(43)項に記載の車両用サスペンションシステム。
ノーズダイブが生じようとする際に、4つのパイロット式制御弁がすべて閉状態となり、セントラルシリンダが作動しにくくなって、ノーズダイブが抑制される。
パイロット圧導入部を、前記4つの懸架シリンダのうち左右前輪に対応する2つの懸架シリンダの前輪荷重減少時に液圧が増大する液圧室の各々と、左右後輪に対応する2つの懸架シリンダの後輪荷重増大時に液圧が増大する液圧室の各々との液圧をそれぞれ前記4つのパイロット式制御弁を閉じる向きに導くものとすれば、ノーズリフトを抑制することができる。4つのパイロット式制御弁を2組設けて、ノーズダイブとノーズリフトとの両方が抑制されるようにすることも可能である。
(45)前記外力付与装置が、車両の走行状態とその車両が走行している路面の状態である路面状態との少なくとも一方に応じて前記セントラルシリンダの作動体に加える外力を制御する外力制御装置を含む(28)項または(29)項に記載の車両用サスペンションシステム。
車両の走行状態や路面状態に応じて外力を制御すれば、車両用サスペンションシステムの懸架特性を走行状態や路面状態に一層適したものとすることができる。
(46)前記走行状態を表す量が、前記車体に作用する前後方向の加速度に対応する前後加速度対応量と横方向の加速度に対応する横加速度対応量との少なくとも一方を含み、前記外力制御装置が、その少なくとも一方がしきい値を超えた場合に前記外力付与装置が付与する外力を増加させる外力増加部を含む(45)項に記載の車両用サスペンションシステム。
外力増加部は外力を0から増加させるものでもよく、その場合は、外力付与開始部と称することもできる。
例えば、セントラルシリンダが4つの懸架シリンダに、車体のローリングを抑制し、ピッチングを許容する状態に接続されており、前後加速度対応量がしきい値を超えた場合に外力付与装置が付与する外力が増加させられれば、ピッチングの抑制が強められる。ローリングの抑制についても同様のことが可能である。
(47)前記外力増加部が外力を増加させるしきい値を、前記車両の車速,車両の前後加速度,横加速度,ヨーレイト,前記懸架シリンダの作動ストローク,その作動ストロークの変化勾配,ばね上またはばね下の上下方向加速度の少なくとも1つに応じて変更する外力増加しきい値変更部を含む(46)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本態様によれば、車体のローリングやピッチングを車両の走行状態や路面状態に応じて、適切に抑制することができる。
(48)前記外力付与装置が、
前記セントラルシリンダの前記少なくとも2つの作動体の作動につれて容積が変化する少なくとも1つの外力付与シリンダと、
その外力付与シリンダに互いに並列に接続された複数のアキュムレータと、それら複数のアキュムレータの一部のものと前記外力付与シリンダとの間に設けられ、それらを連通させる状態と遮断する状態とに切換え可能なばね定数制御弁装置とを含む可変ばね装置と
を含み、前記外力制御装置が、前記可変ばね装置のばね定数制御弁装置を遮断状態に切り換えるしきい値を、前記路面状態としての悪路度合いが大きい場合に小さい場合に比較して大きくすることと、前記走行状態としての車速が高い場合に低い場合に比較して小さくすることとの少なくとも一方を行う高ばね移行しきい値変更部を含む(45)項に記載の車両用サスペンションシステム。
悪路度合いは、車両が走行中の路面が悪路である程度を表す量であれば何でもよく、例えば、加速度センサによりばね下の上下加速度を検出したり、車高センサにより検出される車高の変動状態(振幅や振動数等)を検出したり、他の装置から悪路度合いの情報を受け取ったりすることにより取得できる。悪路度合いが大きい場合には、ばね下の振動がばね上に伝達されることを回避することが重要であり、ノーズダイブの抑制をある程度犠牲にすることもやむを得ない。また、車速が大きいほど車体姿勢の変化を抑制する要求が強い。
(49)前記4つの懸架シリンダのうち車両の対角位置の車輪にそれぞれ対応する2組の懸架シリンダが、それら対角位置の車輪の同相移動が前記少なくとも2つの作動体の作動により許容される状態で前記セントラルシリンダの4つの液圧室に接続され、かつ、前記外力付与装置が、前記少なくとも2つの作動体を少なくとも一方向に移動させる駆動力を付与するものとされた(28)項または(29)項に記載の車両用サスペンションシステム。
4つの懸架シリンダとセントラルシリンダとの接続状態を工夫するとともに、外力付与装置をセントラルシリンダの作動体を積極的に移動させる駆動力を付与するものとすれば、セントラルシリンダに受動的な機能に加えて能動的な機能も果たさせることができる。
(50)前記外力付与装置が、前記車両のステア特性に基づいてその外力付与装置の付与する前記駆動力の制御を行うステア特性対応制御部を含む(49)項に記載の車両用サスペンションシステム。
ステア特性対応制御部は、例えば操舵角と車速とに対して予め定められているモード等で駆動力の制御を行うものでも、ステア特性検出装置により検出された実ステア特性に基づいて駆動力の制御を行うものでもよい。いずれにしても車両のステア特性を改善することができる。
(51)車両の実ステア特性を検出するステア特性検出装置を含み、前記ステア特性対応制御部が、そのステア特性検出装置により検出された実ステア特性が、設計上のステア特性である基準ステア特性よりオーバステア側にある場合には、前記外力付与装置に、前記セントラルシリンダが前輪側のロール剛性を増大させる一方、後輪側のロール剛性を減少させる向きの駆動力を付与させ、基準ステア特性よりアンダステア側にある場合には、前記セントラルシリンダが前輪側のロール剛性を減少させる一方、後輪側のロール剛性を増大させる向きの駆動力を付与させるものである(50)項に記載の車両用サスペンションシステム。
旋回時に前輪側と後輪側との一方のロール剛性を他方のそれに比較して小さくすれば、その小さくされた側の車輪の横方向のスリップが減少する。車輪のコーナリングフォースは、その車輪の荷重の増大につれて大きくなるが、増大勾配は荷重の増大に伴って減少する。したがって、前輪側と後輪側とのうち、旋回外側の車輪への荷重移動が小さい側の方が荷重移動が大きい側に比較して左右の車輪のコーナリングフォースの和が大きくなる。そのため、実ステア特性がオーバステア傾向にある場合には後輪側のロール剛性を減少させ、アンダステア傾向にある場合には前輪側のロール剛性を減少させればよいのである。
(52)車両の右旋回または左旋回の情報を取得する旋回情報取得部と、
(a)旋回情報取得部により旋回情報が取得された場合に、前記外力付与装置に、前記セントラルシリンダが前輪側のロール剛性を減少させ、後輪側のロール剛性を増大させる向きの駆動力を付与させる前輪側ロール剛性減少部と、(b)旋回情報取得部により旋回情報が取得された場合に、前記外力付与装置に、前記セントラルシリンダが前輪側のロール剛性を増大させ、後輪側のロール剛性を減少させる向きの駆動力を付与させる後輪側ロール剛性減少部との少なくとも一方を含むロール剛性制御部と
を含む(49)項に記載の車両用サスペンションシステム。
上記のように、前輪側と後輪側とのうち旋回外側の車輪への荷重移動が小さい側の方が荷重移動が大きい側に比較して左右の車輪のコーナリングフォースの和が大きくなる。よって、前輪側ロール剛性減少部を作動させれば車両のステア特性がオーバステア側へ変化し、後輪側ロール剛性減少部を作動させればアンダステア側へ変化する。本項の車両用サスペンションシステムにおいては、外力付与装置の制御により車両のステア特性を制御することができるのである。
(53)前記4つの懸架シリンダのうち左右前輪に対応する2つの懸架シリンダの液圧室が、前記セントラルシリンダの4つの液圧室の2つに、前記少なくとも2つの作動体を第一の向きに移動させる状態で接続され、左右後輪に対応する2つの懸架シリンダの液圧室が、前記セントラルシリンダの残る2つの液圧室に前記少なくとも2つの作動体を前記第一の向きとは逆の第二の向きに移動させる状態で接続され、かつ、前記外力付与装置が、前記少なくとも2つの作動体を前記第一、第二の向きの少なくとも一方とは逆向きの駆動力を付与するものとされた(28)項または(29)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本車両用サスペンションシステムにおいては、外力付与装置によりセントラルシリンダの作動体に加えられる駆動力の制御により、車両のピッチングの制御を行うことができる。その一例が次項の車両用サスペンションシステムである。
(54)車両の加速と制動との少なくとも一方の情報を取得する加減速情報取得部と、
(a)加減速情報取得部により制動情報が取得された場合に、前記外力付与装置に、前記セントラルシリンダがノーズダイブを抑制する向きの駆動力を付与させるノーズダイブ抑制部と、(b)加減速情報取得部により加速情報が取得された場合に、前記外力付与装置に、前記セントラルシリンダがノーズリフトを抑制する向きの駆動力を付与させるノーズリフト抑制部との少なくとも一方を含むピッチング抑制部と
を含む(53)項に記載の車両用サスペンションシステム。
ノーズダイブ抑制部の制御に応じて、外力付与装置が、左右前輪に対応する2つの懸架シリンダである前輪側懸架シリンダの液圧室の液圧とは逆向きの駆動力をセントラルシリンダの作動体に加えれば、前輪側懸架シリンダが収縮しにくくなり、ノーズダイブが抑制される。ノーズリフト抑制部の制御に応じて外力付与装置が逆向きの駆動力を加えれば、後輪側懸架シリンダが収縮しにくくなり、ノーズリフトが抑制される。
(55)前記外力付与装置が、前記セントラルシリンダの作動体を正,逆両方向に移動させる駆動力を付与するものである(49)項ないし(54)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
互いに逆向きの駆動力(例えば、互いに逆向きの押し力のみ)を作動体に付与する2つの外力付与装置を設けても同様の目的を達し得るが、1つで正逆両方向の駆動力を付与するものとする方が、構成を単純化し得る場合が多い。
(56)前記外力付与装置が、(i)駆動力を発生させる駆動力発生装置と、(ii)その駆動力発生装置によって発生させられた駆動力を前記セントラルシリンダの作動体に伝達する駆動力伝達装置と、(iii)前記少なくとも2つの作動体に加えられる駆動力を制御する駆動力制御装置とを含む(49)項ないし(55)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
(57)駆動力発生装置が電流の供給により駆動力を発生する電動モータを含み、前記駆動力制御装置が、前記電動モータの出力を制御することによって、前記セントラルシリンダの作動体に加えられる駆動力を制御するモータ制御部を含む(56)項に記載の車両用サスペンションシステム。
駆動力発生装置を液圧揺動モータや液圧シリンダとすることも可能である。しかし、電動モータを駆動力発生装置とすれば、駆動力の制御が容易となる。
(58)前記駆動力伝達装置が、前記セントラルシリンダの作動体からの力により前記駆動力発生装置を駆動し得る構成を有する(56)項または(57)項に記載の車両用サスペンションシステム。
駆動力伝達装置を、駆動力発生装置側からセントラルシリンダの作動体を駆動し得るのみならず、セントラルシリンダ側から駆動力発生装置を駆動することも可能なものとすれば、セントラルシリンダの機能を向上させることができる。例えば、電動モータの制御によっては追従できないような急激な路面入力変化に対して、電動モータを自由に回転させれば、急激な路面入力をサスペンションシステムに吸収させることが可能となる。
(59)前記セントラルシリンダ制御装置が、
前記走行状態検出装置により検出された走行状態に応じて、前記セントラルシリンダの4つの液圧室の各々と前記4つの懸架シリンダの各々との接続状態を変更する接続状態変更装置と、
前記走行状態検出装置により検出された走行状態に応じて前記セントラルシリンダの作動体に外力を加える外力付与装置と
の少なくとも一方を含み、かつ、当該車両用サスペンションシステムが、
前記走行状態検出装置によっピッチングが生じたことが検出された場合に、前記接続状態変更装置に、前記セントラルシリンダにおける接続状態をピッチングを許容する状態とさせるとともに、前記外力付与装置に、前記作動体に、ピッチングに起因する移動を抑制する外力を付与させるピッチング抑制制御部と、
前記走行状態検出装置によってローリングが生じたことが検出された場合に、前記接続状態変更装置に、前記セントラルシリンダにおける接続状態をローリングを許容する状態とさせるとともに、前記外力付与装置に、前記作動体に、ローリングに起因する移動を抑制する外力を付与させるローリング抑制制御部と
の少なくとも一方を含む(1)項または(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
ピッチング抑制制御、ローリング抑制制御は、設定状態以上のピッチングやローリングが生じた場合に行われるようにすることができる。
(60)車両の複数の車輪の各々に対してそれぞれ設けられた複数の懸架シリンダと、
それら複数の懸架シリンダと接続され、それら複数の懸架シリンダの各々の液圧をそれぞれ受ける複数の受圧面を備えた1つ以上の作動体を備えたセントラルシリンダと、
そのセントラルシリンダにおける前記複数の懸架シリンダの接続状態を変更する接続状態変更装置と
を含むことを特徴とする車両用サスペンションシステム。
本車両用サスペンションシステムにおいては、セントラルシリンダに複数の懸架シリンダが接続され、セントラルシリンダの作動体が複数の懸架シリンダの液圧により作動させられる。このセントラルシリンダにおいて複数の懸架シリンダの接続状態、すなわち、1つ以上の作動体の複数の受圧面のうちの少なくとも2つが受ける懸架シリンダの液圧が変更される。例えば、第1の受圧面が右前輪の懸架シリンダの液圧を受け、第2の受圧面が左後輪の懸架シリンダの液圧を受ける状態と、第1の受圧面が左後輪の懸架シリンダの液圧を受け、第2の受圧面が右前輪の懸架シリンダの液圧を受ける状態との間で変更されるのである。その結果、同じ姿勢変化が生じた場合に、セントラルピストンが移動させられる状態と、移動しない状態とに変えることができるのであり、その姿勢変化を許容する状態と、抑制する状態とに変えることができるのである。
例えば、車両のローリングを抑制してピッチングを許容する接続状態(セントラルシリンダの作動体がローリングが生じた場合に移動しないでピッチングが生じた場合に移動させられる状態)と、ピッチングを抑制してローリングを許容する接続状態(セントラルシリンダの作動体がピッチングが生じた場合に移動しないでローリングが生じた場合に移動させられる状態)とに変更されるようにすることができる。
懸架シリンダは、車輪側部材と車体側部材との間に設けられ、車輪側部材と車体側部材との間の上下方向の相対移動速度に応じた減衰力を発生するショックアブソーバとしたり、車輪側部材と車体側部材との間の上下方向の相対距離に応じた弾性力を発生するものとしたり、車輪側部材と車体側部材との間の距離を調整可能な車高調整用の液圧シリンダとしたりすることができる。
セントラルシリンダには、前後左右の4つの懸架シリンダのうちの、少なくとも2つが接続されればよく、3つが接続されても、4つすべてが接続されてもよい。
なお、前記(1)項ないし(59)項の各特徴は本項以下の各項にも適用可能である。
(61)前記接続状態変更装置が、(a)前記セントラルシリンダに設けられた複数の接続ポートと、前記複数の懸架シリンダの少なくとも2つとの間に設けられ、これらの接続状態を変更可能な1つ以上の電磁方向切換弁と、(b)その1つ以上の電磁方向切換弁への供給電流を制御することにより、前記接続状態を変更する電磁弁制御部とを含む(60)項に記載の車両用サスペンションシステム。
電磁方向切換弁は、1つのセントラルシリンダに対して1つ設けても、2つ以上設けてもよい。また、2つ以上のセントラルシリンダに対して1つ設けても、2つ以上設けてもよい。
(62)前記電磁弁制御部が、前記電磁方向切換弁を、車両の走行状態と路面の状態との少なくとも一方に基づいて制御する走行状態対応制御部を含む(61)項に記載の車両用サスペンションシステム。
例えば、電磁方向切換弁を、第1位置と第2位置とに切り換えることによって、セントラルシリンダを、ピッチングを許容してローリングを抑制可能な状態とローリングを許容してピッチングを抑制可能な状態とに切り換え可能である場合において、車両の走行状態がローリングを抑制することが望ましい状態である場合に、電磁方向切換弁を第1位置とし、ピッチングを抑制することが望ましい状態である場合に第2位置とすることができる。
また、路面状態がピッチングを許容することが望ましい状態である場合に電磁方向切換弁を第1位置とすることができる。
さらに、車両の走行状態がピッチングを抑制することが望ましい状態である場合に第2位置とし、路面状態がピッチングを許容することが望ましい状態である場合に第1位置とすることができる。
車両の走行状態は、ローリングを抑制することが望ましい状態であるか否か、ピッチングを抑制することが望ましい状態であるか否か等を表す状態である。ローリングを抑制することが望ましい状態は、例えば、ローリング姿勢が大きい状態、ローリング姿勢が大きくなる可能性が高い状態であり、横加速度やヨーレイトがそれぞれ設定値以上の場合、旋回半径が設定値以下の場合、ローリングレイト、ローリング角度等の車両の前後方向に延びる軸線回りの回動角速度や回動角度が設定値以上の場合等がある。ピッチングを抑制することが望ましい状態は、ピッチング姿勢が大きい状態、ピッチング姿勢が大きくなる可能性が高い状態であり、前後加速度の絶対値、制動装置による制動力、駆動装置による駆動力がそれぞれ設定値以上である場合、ピッチングレイト、ピッチング角度等の車両の幅方向に延びる軸線回りの回動角速度、回動角度が設定値以上である場合等がある。
ピッチングを許容することが望ましい路面状態としては、例えば、左右前輪が同時に段差を通過する状態、一輪が段差を通過する状態等がある。この状態は、上下加速度センサによって検出される上下加速度に基づいて取得したり、路面センサによって検出される路面状態に基づいて取得したりすることができる。左右前輪の上下加速度が後輪側の上下加速度に対して設定比率以上大きい場合、一輪の上下加速度が他の車輪のそれに対して設定比率以上大きい場合には、その車輪が段差に乗り上げたとすることができ、ピッチングを許容することが望ましい状態であるとすることができる。
(63)前記セントラルシリンダが、車体のローリングとピッチングとの少なくとも一方を抑制するものである(60)項ないし(62)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
セントラルシリンダは、ローリングとピッチングとの少なくとも一方を許容するものとすることもでき、外力付与装置と組み合わせて設ける場合に有効である。
(64)前記懸架シリンダが、複数の車輪のそれぞれに対応し、車輪側部材と車体側部材との間に設けられたショックアブソーバであり、前記セントラルシリンダが、前記複数のショックアブソーバにおいて、大きな減衰力が発生する状態と小さい減衰力が発生する状態とを生じさせ得るものである(60)項ないし(63)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項の車両用サスペンションシステムにおいては、セントラルシリンダに複数のショックアブソーバが接続され、セントラルシリンダの作動体は複数のショックアブソーバの液圧により作動させられる。作動体が移動しない状態においては、複数のショックアブソーバはセントラルシリンダに接続されていないに等しい状態(別個独立であるに等しい状態)となり、ショックアブソーバ各々において、発生する減衰力が大きい状態となる。複数のショックアブソーバの液圧によりセントラルシリンダの作動体が移動させられる状態においては、複数のショックアブソーバは実質的に互いに連通させられた状態となり、ショックアブソーバ各々においては発生する減衰力が小さい状態となる。
複数のショックアブソーバの各々が別個独立である場合に、ショックアブソーバの各々において、車輪側部材と車体側部材との間に力が加えられると、上室と下室との間に液圧差が生じる。上室と下室とのうち液圧が高い方から低い方に向かって、アブソーバピストンに設けられた絞り機能を有する連通路を経て作動液が流れ、アブソーバピストンがハウジングに対して相対移動させられる。絞りが同じである場合には、車体側部材と車輪側部材との間に、連通路を流れる作動液の流速に応じた減衰力が発生させられる。作動液の流速は、上室と下室との間の液圧差が大きい場合は小さい場合より大きくなる。この状態が、ショックアブソーバにおいて発生する減衰力が大きい状態である。
それに対して、例えば、セントラルシリンダにおいて作動体が、対向する第1,第2の2つの受圧面を有し、第1のショックアブソーバが、第1の受圧面に第1のショックアブソーバの液圧を作用させる状態で接続され、第2のショックアブソーバが、第2の受圧面にそれの液圧を作用させる状態で配設されている場合には、車両の姿勢の変化により第1のショックアブソーバの液圧が高くなり、第2のショックアブソーバの液圧が低くなると(第1の受圧面が受ける液圧に応じた力が第2の受圧面が受ける液圧に応じた力より大きくなると)、作動体は移動させられる。セントラルシリンダにおいて、作動体の第1の受圧面に対向する第1の液圧室の容積が増加し、第2の受圧面に対向する第2の液圧室の容積が減少するのである。その結果、第1のショックアブソーバの液圧室から作動液が流出し、第2のショックアブソーバに作動液が流入することになり、セントラルシリンダを介して、実質的に第1のショックアブソーバと第2のショックアブソーバとが連通させられ、これらの間で作動液の授受が行われることになる。第1のショックアブソーバの液圧室の液圧の増加が抑制され、第2のショックアブソーバの液圧室の液圧の減少が抑制されることになり、第1、第2のショックアブソーバにおいては、ショックアブソーバが別個独立である場合に比較して、姿勢変化の原因(車輪の上下動、前後加速度、横加速度等)が同じ場合の、上室と下室との間の液圧差が小さくなり、発生する減衰力が小さくなる。
また、本項の車両用サスペンションシステムにおいては、セントラルシリンダの1つ以上の作動体に外力付与装置によって外力が付与される。
車両に姿勢の変化が生じ、作動体が移動させられる場合において、その移動の向きと逆向きの外力を加えれば、作動体の移動を抑制したり、阻止したりすることができる。それによって、ショックアブソーバ各々において発生する減衰力を、外力を加えない場合に比較して大きい状態とすることができ、姿勢の変化を抑制することができる。
また、セントラルシリンダの作動体を逆向きに移動させれば、ショックアブソーバが独立にある場合より大きな減衰力を発生させる状態とすることができ、姿勢の変化をさらに抑制することができる。この場合は、車輪側部材と車体側部材との間に、姿勢の変化に応じて作用する力とは逆向きの力を加えることができる。
逆に、前述のセントラルシリンダの作動体の姿勢の変化に起因する移動を助勢する外力を加えれば、その姿勢の変化を助長することができる。
さらに、外力の大きさを制御すれば、同じ姿勢変化の原因に対して、発生する減衰力の大きさを段階的または連続的に制御することが可能となり、その姿勢変化の抑制の程度(許容の程度を含む場合がある)を段階的または連続的に制御することが可能となる。
また、車両の定常状態(複数のショックアブソーバの非作動状態)において、セントラルシリンダの作動体に外力を付与し、移動させることも可能である。ショックアブソーバの液圧室について、作動液を流入させたり、流出させたりすることができ、車高を調整することができる。ショックアブソーバに収容される作動液が多い場合は少ない場合より車高は高くなる。
本項の車両用サスペンションシステムによれば、複数のショックアブソーバの各々に減衰力制御装置を設けなくても、セントラルシリンダの作動により、発生する減衰力を制御することができる。
(65)前記複数のショックアブソーバが、それぞれ、ハウジングと、そのハウジングに摺動可能に嵌合されたアブソーバピストンとを含み、前記ハウジングが前記車輪側部材と前記車体側部材とのいずれか一方に上下方向に相対移動不能、かつ、相対回動可能に取り付けられ、前記アブソーバピストンのピストンロッドがいずれか他方に上下方向に相対移動不能、かつ、相対回動可能に取り付けられたものであり、前記アブソーバピストンによって仕切られた2つの液圧室のうち、前記車輪側部材と前記車体側部材との間の間隔が大きくなった場合に液圧が高くなる液圧室がそれぞれ前記セントラルシリンダに接続された(64)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(66)前記懸架シリンダに接続された複数の個別通路と、
それら複数の個別通路にそれぞれ設けられた流路抵抗調整装置と
を含む(60)項ないし(65)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
(67)前記セントラルシリンダが、第1,第2の2つのハウジングと、それら第1,第2の2つのハウジングにそれぞれ液密かつ摺動可能に嵌合された前記作動体としての第1,第2の2つのピストンと、それら2つのピストンを連結して一体的なセントラルピストンとする連結ロッドと、前記2つのピストンにそれぞれ設けられ、2つのピストン各々によって仕切られた2つの液圧室同士を互いに連通させる連通路と、前記第1,第2のハウジングと前記第1、第2のピストンとの間にそれぞれ設けられた第1,第2のスプリングとを含む(60)項ないし(66)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
以下、請求可能発明の実施例を図を参照しつつ説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
図1に示すように、車両の前後左右それぞれの車輪に対応して、懸架シリンダとしてのショックアブソーバ10〜16が、ばね下の一部である車輪側部材17とばね上の一部である車体側部材18との間に設けられる。図示は省略するが、車輪側部材17と車体側部材18との間には、ショックアブソーバ10〜16と並列にサスペンションスプリングが設けられる。
ショックアブソーバ10〜16は、それぞれ、ハウジング20と、それに液密かつ摺動可能に嵌合されたアブソーバピストン22とを含む。本実施例においては、ハウジング20が車輪側部材17に取り付けられ、アブソーバピストン22と同軸に延び、ハウジング20外へ突出したピストンロッドが車体側部材18に取り付けられる。
アブソーバピストン22には、そのアブソーバピストン22で仕切られた2つの液圧室24,25を連通させる連通路が設けられるとともに、その連通路に流通抵抗付与装置の一種である絞り26が設けられる。絞り26により、アブソーバピストン22のハウジング20に対する相対移動速度(絞り26を流れる作動液の流速)に応じた減衰力が発生させられる。また、ハウジング20にはフリーピストン27aが気密かつ摺動可能に嵌合され、容積変化室としてのガス室27bと液圧室25とを仕切っている。
ショックアブソーバ10〜16は、接続装置28によりセントラルシリンダ38を介して互いに接続されている。接続装置28は、ショックアブソーバ10〜16とセントラルシリンダ38とをそれぞれ接続する個別通路30〜36を備えている。
セントラルシリンダ38は、第1,第2の2つのシリンダ39a,bを備えたものであり、第1,第2の2つのハウジング40,42と、これら2つのハウジング40,42にそれぞれ液密かつ摺動可能に嵌合された作動体としての第1,第2の2つのピストン44,46と、2つのピストン44,46を連結する連結ロッド48とを含む。連結ロッド48によって連結された第1,第2のピストン44,46は一体的に移動させられるため、これをセントラルピストン49と称する。
また、第1ピストン44の外側を第1外側受圧面50と称し、内側を第1内側受圧面52と称するとともに、第2ピストン46の外側を第2外側受圧面54と称し、内側を第2内側受圧面56と称する。
そして、第1シリンダ39aの第1ピストン44において、第1外側受圧面50に対向する液圧室が液圧室60であり、個別通路30により左前輪のショックアブソーバ10の液圧室24が接続され、第1内側受圧面52に対向する液圧室が液圧室62であり、個別通路36により右後輪のショックアブソーバ16の液圧室24が接続される。第2シリンダ39bの第2ピストン46において、第2外側受圧面54に対向する液圧室64、第2内側受圧面56に対向する液圧室66には、右前輪のショックアブソーバ12の液圧室24、左後輪のショックアブソーバ14の液圧室24が電磁方向切換弁68を介して接続される。電磁方向切換弁68は、個別通路32,34の間に設けられるのである。
また、第1、第2のハウジング40、42が直列かつ同軸に連結され、これらの連結部に設けられた仕切壁部69が第1ピストン44,第2ピストン46の間に位置する。
前述の連結ロッド48は、第1ピストン44,第2ピストン46の両側に突出し、ハウジング40,42および仕切壁部69を液密かつ摺動可能に貫通して設けられている。本実施例においては、受圧面50,52,54,56の面積は同じ大きさとされている。
本実施例においては、個別通路30〜36によってショックアブソーバ10〜16の液圧室24がセントラルシリンダ38に接続される。液圧室24は、車輪側部材17と車体側部材18との間の間隔が大きくなった場合に液圧が高くなる液圧室である。車両においては、通常、基準位置より車輪側部材17と車体側部材18との間の間隔が大きくなる場合に間隔が小さくなる場合より減衰力の変化幅が大きくなるように設計されるのが普通である。そのため、液圧室24にセントラルシリンダ38が接続される方が液圧室25が接続される場合に比較して、減衰力の制御範囲を大きくすることができ、有効である。
第1,第2ピストン44,46には、それぞれ連通路70,72が設けられる。連通路70によって2つの液圧室60,62が連通させられ、連通路72によって2つの液圧室64,66が連通させられる。連通路73は、仕切壁部69にも設けられる。連通路73は、2つの液圧室62,66を連通させるものである。連通路70,72,73は、横断面積の非常に小さいものであり、セントラルピストン49の静止中は第1,第2ピストン44,46両側および仕切壁部69の両側の液圧室の液圧を互いに等しくする機能を果たすが、セントラルピストン49の作動時には作動液の流通を許容しないに等しいと見なし得るものである。
第1ピストン44,第2ピストン46と第1ハウジング40,第2ハウジング42との間には、それぞれ、スプリング76,78が設けられている。スプリング76,78は、第1ピストン44,第2ピストン46を中立位置に戻すものである。本実施例においては、スプリング76,78が第1ピストン44,第2ピストン46の内側に配設される。第1ピストン44,第2ピストン46と第1ハウジング40,第2ハウジング42との間には、シール部材が設けられるが、シール部材の劣化に起因して液漏れが生じることがある。また、セントラルピストン49の第1,第2ハウジング40,42に対する相対移動の際の摩擦力を小さくするために、シール部材としてシール性の悪いものを用いることがあり、この場合においても、シール部材を通って液漏れが生じる。そのため、スプリング76,78等の中立位置復帰部材により、第1、第2ピストン44,46が中立位置に戻された場合に、液圧室60,62の間、液圧室64,66の間に液圧差が生じることがある。それに対して、連通路70,72が設けられれば、連通路70,72を経て作動液が流れ、液圧室60,62の間、液圧室64,66の間の液圧差をなくすことができる。また、連通路73によって、液圧室62,66の間の液圧差をなくすことができる。
個別通路30〜36には、それぞれ、流路抵抗調整装置としての絞り80〜86が設けられる。絞り80〜86は、固定絞りであって可変絞りであってもよい。
絞り80〜86によれば、各ショックアブソーバ10〜16における液圧変化のセントラルシリンダ38への伝達を遅らせることができる。そのため、ショックアブソーバ10〜16の液圧変化に対するセントラルシリンダ38の作動の応答性を低くすることができ、セントラルシリンダ38がショックアブソーバ10〜16の僅かな液圧変化によって不必要に作動させられることを回避することができる。
また、ショックアブソーバ10〜16における液圧の高周波の変化を吸収できるという利点もある。
さらに、個別通路30〜36の長さに応じて絞り80〜86の形状(流路面積や長さ等)が決定されれば、各ショックアブソーバ10〜16における液圧変化のセントラルシリンダ38への伝達ばらつきを小さくすることができる。
電磁方向切換弁68は、第2シリンダ39bに対応して設けられたものであり、ソレノイドへの供給電流の制御により第1位置と第2位置とに切り換え可能なものである。第1位置が、ショックアブソーバ12,14をそれぞれ液圧室66,64に連通させる位置であり、第2位置が、ショックアブソーバ12,14をそれぞれ液圧室64,66に連通させる位置である。
セントラルピストン49には、外力付与装置100によって外力が加えられる。外力付与装置100は、駆動源としての電動モータ102、減速機104、駆動力伝達装置としての運動変換装置106等を含む。減速機104は、複数のギヤを含むものであり、電動モータ102の出力軸の回転数を減速して出力する。電動モータ102は、正逆両方向に回転可能なものである。運動変換装置106は、回転運動を直線運動に変換するものであり、例えばボールねじ機構を備えたものとすることができる。運動変換装置106の図示しない出力軸には連結ロッド48が、互いに力を伝達可能な状態で連携させられている。電動モータ102の非作動状態においては、ショックアブソーバ10〜16の液圧によってセントラルピストン49が移動可能とされている。
電動モータ102,電磁方向切換弁68等はコンピュータを主体とするサスペンションECU(電気制御ユニット)130によって制御される。サスペンションECU130は、記憶部132,実行部134等を含むものであり、車両の走行状態を検出する走行状態検出装置136,路面状態検出装置138,乗り心地入力装置140等が接続されるとともに、電磁方向切換弁68のソレノイド,電動モータ102等が図示しない駆動回路を介して接続される。電磁方向切換弁68,電動モータ102は車両の走行状態,路面状態,運転者の意図に応じて制御される。
走行状態検出装置136は、本実施例においては、車両の横加速度(横Gと略称する)を検出する横加速度センサ(横Gセンサと略称する)142、前後加速度(前後Gと略称する)を検出する前後加速度センサ(前後Gセンサと略称する)144等を含むものである。一般的に、横Gが設定値以上の場合にローリング状態にあるとすることができ、その横Gが大きい場合は小さい場合より遠心力が大きく、ローリング角が大きいとすることができる。前後Gの絶対値が設定値以上である場合にピッチング状態にあるとすることができ、前後Gの絶対値が大きい場合は小さい場合よりピッチング角が大きいとすることができる。
路面状態検出装置138は、前後左右の各輪毎に設けられ、車輪側部材17または車体側部材18の上下加速度(上下Gと略称する)を検出する上下加速度センサ(上下Gセンサと略称する)139等を含む。各輪毎の上下Gに基づけば路面の凹凸の状態がわかる。
乗り心地入力装置140は、運転者によって操作可能な操作部を含む。本実施例においては、乗り心地が「最も硬い」、「硬い」、「やや柔らかい」、「柔らかい」の4段階に切り換え可能とされている。乗り心地が硬い場合は柔らかい場合より、ショックアブソーバ10〜16において発生する減衰力が大きい状態とされ、姿勢変化の抑制の程度が強くなる。
以上のように構成された車両用サスペンションシステムにおける作動について説明する。本サスペンションシステムの作動について図2に示す。セントラルピストン49には、左前輪のショックアブソーバ10の液圧に応じた力(液圧に第1外側受圧面50の受圧面積を掛けた大きさ、以下同じ)および右前輪のショックアブソーバ12の液圧に応じた力、左後輪のショックアブソーバ14の液圧に応じた力および右後輪のショックアブソーバ16の液圧に応じた力、スプリング76,78の弾性力が作用し、静止状態においては、これらが釣り合っている。
理解を容易にするために、まず、外力付与装置100がセントラルシリンダ38に対して何らの影響も与えない状態における作動を説明する。
本実例においては、通常は電磁方向切換弁68に電流が供給されず、電磁方向切換弁68は図1に示すノーマル位置(第1位置)にある。この状態において、走行路面に段差部が存在し、左右の前輪が同時に段差部に乗り上げたとすれば、図3に太い実線の矢印で示すように、左右前輪に対応するショックアブソーバ10,12のハウジング20が突き上げられ、それらの液圧室24の液圧が低下する。その結果、液圧室25から絞り26を経て作動液が液圧室24に流入するが、同時に、セントラルシリンダ38の液圧室60,66の液圧も低下してセントラルピストン49における力の釣合いがくずれ、セントラルピストン49が太い実線の矢印で示すように左方へ移動しようとする。そして、この移動は、左右後輪側のショックアブソーバ14,16において、太い破線の矢印で示すように、液圧室24から作動液が流出し、アブソーバピストン22が上昇してピストンロッドが伸長することにより許容される。そのため、セントラルシリンダ38からショックアブソーバ10,12の液圧室24に太い実線の矢印で示すように作動液が流入し、左右前輪のショックアブソーバ10,12の収縮を容易にする。ショックアブソーバ10,12の減衰力が小さくなるのであり、左右前輪は容易に段差部に乗り上げることができる。
また、例えば車両が右に旋回し、車体に左回転の回転モーメントが作用すれば、車両の右側において車輪側部材17と車体側部材18との間の間隔が左側におけるより相対的に大きくなるローリングが生じようとする。このローリングは、図4に太い実線と太い破線との矢印で示す作動液の流れが生じ得れば容易に生じ得るのであるが、電磁方向切換弁68が図4の第1位置にある状態では、容易には生じない。その理由は以下の通りである。左回転の回転モーメントの作用により、左前輪のショックアブソーバ10の液圧室24の液圧と左後輪のショックアブソーバ14の液圧室24の液圧とが低くなり、右前輪のショックアブソーバ12の液圧室24の液圧と右後輪のショックアブソーバ16の液圧室24の液圧とが高くなる。その結果、第1ピストン44の受圧面50の液圧と、第2ピストン46の受圧面54の液圧とが低くなり、第1ピストン44の受圧面52の液圧と、第2ピストン46の受圧面56の液圧とが高くなる。つまり、セントラルピストン49において力の釣合い状態は変わらないのであり、セントラルピストン49は動くことがない。各ショックアブソーバ10〜16は、それぞれ、別個独立となり、車輪側部材17と車体側部材18との相対移動に伴って(アブソーバピストン22の移動に伴って)、ショックアブソーバ10〜16の各々において本来の減衰力が発生させられるのであり、ローリングが抑制されることになる。
さらに、電磁方向切換弁68が第1位置にある状態で、車両が加速され、あるいは制動されることにより、車体に前後方向の回転モーメントが作用すれば、車体に容易にピッチングが生じるのであるが、このピッチングの抑制は、後述するように、外力付与装置100の作動により行われる。
そして、上記前後方向の回転モーメントが設定値を超えれば、それに応じて、電磁方向切換弁68が図5に示す(理解を容易にするために、実際に移動させられたかのように示す)第2位置へ移動させられれば、ピッチングの発生がセントラルシリンダ38により抑制される。例えば、車両が強く制動されれば、左右前輪の車輪側部材17と車体側部材18との間の間隔が太い実線で示すように小さくなり、左右後輪の車輪側部材17と車体側部材18との間の間隔が太い破線で示すように大きくなるピッチングが生じようとする。その際、作動液がセントラルシリンダ38と各ショックアブソーバ10〜16との間で、それぞれ太い実線と太い破線とで示すように流れることが許容されれば、ピッチングが容易に生じ得るのであるが、実際は容易には生じ得ない。図から明らかなように、セントラルシリンダ38において、セントラルピストン49の第1外側受圧面50への作用力の減少は、逆向きの第2外側受圧面への作用力の減少によって打ち消され、第1内側受圧面52への作用力の増大は、逆向きの第2内側受圧面56への作用力の増大によって打ち消され、結局、セントラルピストン49における力の釣合い状態はくずれないため、、セントラルシリンダ38はないに等しいこととなり、ショックアブソーバ10〜16はそれぞれ別個独立に作動することとなり、大きな減衰力が発生させられて、ピッチングが抑制されるのである。
この電磁方向切換弁68が第2位置にある状態では、セントラルシリンダ38自体はローリングを抑制する機能を有しないのであるが、外力付与装置100の作動により抑制される。この点については後述する。
以上説明したように、本車両用サスペンションシステムは、電磁方向切換弁68の第1位置と第2位置とへの切換えにより、ピッチングが許容される一方、ローリングが抑制される状態(厳密にはショックアブソーバ10〜16の減衰力がそのように変化させられる)と、ローリングが許容される一方、ピッチングが抑制される状態とに切り換えられるのであるが、1つの車輪が路面の突部に乗り上げた場合のショックアブソーバ10〜16の収縮、およびその後の伸長は、電磁方向切換弁68が第1位置にあっても第2位置にあっても許容される。
例えば、左前輪が突部に乗り上げ、ショックアブソーバ10の液圧室24の液圧が低くなった場合には、第1外側受圧面50に対する液圧が低くなり、セントラルピストン49は図1において左方へ移動する。このセントラルピストン49の左方への移動により、ショックアブソーバ10において、液圧室24の液圧の低下が抑制されて、液圧室24と液圧室25との間の液圧差が小さくなり、ショックアブソーバ10において絞り26を流れる作動液の速度が小さくなる。ピストン22はフリーピストン27aの移動に伴いガス室27bの容積を減少させつつ移動する。車輪が乗り上げた突部が同じである場合に、発生する減衰力が小さくなるのであり、左前輪の軽快な上昇が許容される。この事情は、電磁方向切換弁68の位置、ならびにどの車輪が突部に乗り上げるかで変わるものではなく、1つの車輪が路面の突部を乗り越える場合のショックアブソーバ10〜16の伸縮が、セントラルシリンダ38がない場合に比較して、常に容易なのである。
以上は、外力付与装置100がセントラルシリンダ38に対して何らの影響も与えない状態における作動の説明であり、換言すれば、外力付与装置100を備えない車両用サスペンションシステムの作動の説明である。この外力付与装置を備えないシステムも請求項1,3等に係る発明の一実施例である。
しかし、本実施例は請求項1,13等に係る発明の実施例であり、外力付与装置100を備えている。以下、外力付与装置100の作動について説明する。
図2に示すように、電磁方向切換弁68の第1位置において、車両の加速に伴うピッチングが生じた場合に、セントラルピストン49は図の右方へ移動させられるのであるが、この場合において、外力付与装置100によって図の左向きの力が加えられれば、セントラルピストン49の右方への移動(ピッチングに起因する移動)を抑制したり、移動を阻止したりすることができる。
移動を阻止すれば、各ショックアブソーバ10〜16は別個独立の状態となるため、発生する減衰力が大きい状態となる。それに対して、移動を抑制すれば、各ショックアブソーバ10〜16において発生する減衰力は、移動を阻止する場合より小さく、移動を許容する場合より大きくなる。
また、セントラルピストン49を左方へ移動させれば、ピッチングによって加えられる車輪側部材17と車体側部材18との間に作用する力とは逆向きの力を加えることが可能となる。例えば、前輪側において後輪側より車輪側部材17と車体側部材18との間隔が大きくなるピッチングが生じた場合に、左前輪のショックアブソーバ10については、車輪側部材17と車体側部材18とを離間させる向きの力が加えられ、液圧室24の容積が減少し、液圧が高くなるが、セントラルピストン49を左方へ移動させて、液圧室24に作動液を供給すれば、車体側部材18を車輪側部材17に接近させる向きの力が加えられることになる。その結果、外力を加えない場合より強くピッチングを抑制することができる。なお、この場合は、ショックアブソーバ10〜16において、液圧室24,25の液圧差がさらに大きくなるため、セントラルピストン49の移動を阻止する場合より大きな減衰力が発生する状態であると考えることができる。
逆に、セントラルピストン49に右向きの外力を加えれば(右方への移動を助長する力を加えれば)、減衰力をさらに小さくすることができ、例えば、左右前輪の段差部への乗上げを一層容易にすることができる。
運転者によって「最も硬い」が選択されている場合には、外力付与装置100によって、セントラルピストン49に、ショックアブソーバ10〜16の液圧による移動(姿勢変化による移動)の向きとは逆向きに移動させる外力が付与され、「硬い」が選択されている場合には、姿勢変化による移動を阻止する外力が付与され、「やや柔らかい」が選択されている場合には、姿勢変化による移動を抑制する外力が付与され、「柔らかい」が選択されている場合には、姿勢変化による移動を助長する外力が付与される。
セントラルピストン49に姿勢変化に起因して加えられる移動力、移動の向きは、車両に加えられる前後Gに基づいて取得することができる。前後Gが正の値(駆動中)の場合には右方へ移動し、負の値(制動中)の場合には左方へ移動する。また、移動力は、前後Gの絶対値が大きい場合は小さい場合より大きくなる。
本実施例においては、前後Gから推定された移動力Fpの大きさおよび向きと運転者によって選択された乗り心地とから、加える外力の大きさおよび向きが決定される。
例えば、「硬い」が選択されている場合には、姿勢変化に起因してセントラルピストン49に加えられると推定される移動力Fpと逆向きで大きさが同じ外力が加えられ、「最も硬い」が選択されている場合には、移動力Fpと逆向きでそれより大きい力(γ>1とした場合のFp・γである。γは、例えば、1.5、1.2、1.1等とすることができる)が加えられ、「やや柔らい」が選択されている場合には、移動力Fpと逆向きでそれより小さい力(γ<1とした場合のFp・γの大きさの力である。γは、例えば、0.5、0.7、0.8等とすることができる)が加えられ、「柔らかい」が選択されている場合には、移動力と同じ向きでそれより小さい力(γは、例えば、0.5、0.2、0.1等とすることができる)が加えられるようにすることができる。それによって、ショックアブソーバ10〜16の減衰特性を制御することができるのであり、ショックアブソーバ10〜16の各々に減衰特性制御装置を設けなくても減衰力を細かに制御することが可能となる。
このように、「乗り心地」はショックアブソーバ10〜16の減衰特性に対応するものであると考えることができ、乗り心地入力装置140は減衰特性入力装置であると考えることができる。
外力は、運転者によって入力された「乗り心地」によらないで、走行状態と路面の状態とに基づいて制御することもできる。
例えば、車両の前後Gが設定値以上である場合には、ピッチングを抑制する要求が強いとして、セントラルピストン49の移動を阻止したり、逆方向に移動させたりすることができる。あるいは、前輪または後輪のいずれか一方の上下Gが他方に対して非常に大きく、前輪または後輪が同時に段差部に乗り上げた場合には、ピッチングを許容する要求が強いとして、セントラルピストン49の移動を助長することができる。このようにすれば、前後Gに起因するピッチングを抑制し、路面入力に起因するピッチングを許容することができる。
また、前後Gが大きい場合は小さい場合より、移動力Fpと逆向きに加えられる外力の大きさを大きくしたり、上下Gが大きい場合は小さい場合より大きな助長力が加えられるようにしたりすることもできる。
電磁方向切換弁68の第2位置において、車両のローリングが生じた場合も同様である。ローリングが生じた場合に、車体の姿勢変化に起因してセントラルピストン49に加えられると推定される移動力Fpの大きさおよび向きは、横Gの大きさ、正負(横加速度センサの設定の状態で決まる)に基づいて取得することができる。横Gが大きいほど移動力が大きいとすることができる。
また、ローリングが生じた場合には、セントラルピストン49の移動を助長する必要性は低いため、「柔らかい」、「やや柔らかい」が選択された場合に、移動が抑制されるとともに、その抑制の程度が、「やや柔らかい」が選択された場合の方を強くし、「硬い」が選択された場合に移動を阻止し、「最も硬い」が選択された場合に逆方向に移動させるようにすることもできる。
電磁方向切換弁68および外力付与装置100の制御プログラムの一例を、図6のフローチャートに基づいて説明する。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする),S2においてピッチング状態にあるかどうか(前後Gの絶対値が設定値以上であるかどうか)、ローリング状態にあるかどうか(横Gの絶対値が設定値以上であるかどうか)が検出される。いずれでもない場合には、電磁方向切換弁68は原位置(第1位置)に保たれ、外力付与装置100の制御が行われることはない。
前後Gの絶対値が設定値以上である場合には、S3において、電磁方向切換弁68が第1位置にされ、S4において外力の制御が行われる。本実施例においては、前後Gに基づいてセントラルピストン49に加えられる移動力Fpの大きさおよび向きが推定される。また、運転者によって入力された乗り心地のレベルが読み込まれる。それらから、目標外力(大きさおよび向き)が決定され、その外力が出力されるように電動モータ102への供給電流が駆動回路を介して制御されるのである。
ローリング状態にある場合には、S5において、電磁方向切換弁68が第2位置にされて、S6において外力の制御が行われる。
このように、本実施例においては、電磁方向切換弁68が第1位置に切り換えられて、ピッチングの抑制状態が制御され、第2位置に切り換えられて、ローリングの抑制状態が制御されるのであり、ピッチングの抑制状態もローリングの抑制状態も制御することができるのである。
また、制御プログラムを、前述のように外力(外力付与装置100)が車両の走行状態や路面状態に基づいて制御されるようにすることもできる。
さらに、制御プログラムを、外力付与装置100の制御により車高の調整が行われるようにすることもできる。定常状態において、ショックアブソーバ10〜16において、液圧室24に作動液を流入させることによって、ショックアブソーバ10〜16に収容される作動液の体積が大きくなると、ピストンロッドのハウジング10内に占める体積が小さくなるため、車高が高くなる。ショックアブソーバ10〜16に収容される作動液の体積が小さくなると、ピストンロッドの体積が大きくなるため、車高が低くなる。したがって、液圧室24における作動液の流入量・流出量を制御することによって、車輪毎に定常的な車高を制御することができる。
例えば、積載荷重が大きいこと等に起因して後輪の車高が前輪の車高に対して低くなった場合には、電磁方向切換弁68を第1位置とし、後輪の実際の車高が目標車高に近づくように、セントラルピストン49を右方へ移動させて、後輪のショックアブソーバ14,16の液圧室24に作動液を流入させることができる。この場合には、各車輪毎に車高センサを設け、車高センサによる検出値が目標値に達するまで作動液を流入させたり、流出させたりすることが望ましい。
なお、上記実施例においては、電磁方向切換弁68と外力付与装置100との両方が設けられていたが、いずれか一方のみとすることも可能である。
外力付与装置100が設けられていない場合には、電磁方向切換弁68の制御によって、ローリング、ピッチングが抑制されるようにすることができる。例えば、ローリングを抑制する要求がある場合に電磁方向切換弁68を第1位置とし、ピッチングを抑制する要求する場合に第2位置とすれば、ローリングもピッチングも抑制することができる。また、ピッチングが路面入力に起因して生じた場合には第1位置とし、前後Gに起因して生じた場合に第2位置とすることもできる。通常は、第1位置とし、前後Gの絶対値が設定値以上の場合に第2位置とすれば、路面入力に起因する上下移動を許容しつつ、車両の制動または駆動に起因して生じるピッチングを抑制することができる。第1位置を原位置(ソレノイドに電流が供給されない位置)としたのは、原位置においてローリングが抑制されることが望ましいからである。
図7のフローチャートにおいては、S21,S22において、車両の走行状態に基づいてローリング状態にあるかどうか、ピッチング状態にあるかどうかが判定される。いずれでもない場合には、S23において、第1位置にされる。
ローリング状態であると検出された場合には、S24において、第1位置とされ、ピッチングであると検出された場合には、S25において、第2位置とされる。
本実施例によれば、電磁方向切換弁68の制御により、ローリングを抑制することができるとともに、前後Gに起因するピッチングを抑制し、路面入力に起因するピッチングを許容することができる。
また、電磁方向切換弁68が設けられていない場合であっても、外力付与装置100の制御により、ローリングやピッチングを抑制することができる。
例えば、セントラルシリンダ38が電磁方向切換弁68の第1位置に対応する状態でショックアブソーバ10〜16が接続されている場合には、図2に示すように、ローリング状態となった場合には、セントラルピストン49は移動することがないため、ローリングが抑制される。ピッチング状態となった場合には、外力付与装置100によって外力が付与されることによってピッチングが抑制されたり、その抑制の程度が制御されたりするようにすることができる。また、セントラルシリンダ38が電磁方向切換弁68の第2位置に対応する接続状態にある場合には、ピッチングが生じた場合には、セントラルピストン48は移動することがないため、ピッチングが抑制される。ローリングが生じた場合には、外力付与装置100によって外力が付与されることによって、ローリングが抑制されるようにすることができる。このように、接続状態が第1位置にあっても、第2位置にあっても(第1位置と第2位置とに切り換えることができなくても、すなわち、電磁方向切換弁68が設けられておらず、セントラルシリンダ38が電磁方向切換弁68の第1位置あるいは第2位置に対応する状態に固定的に接続されていても)、外力付与装置100の制御により、ローリングまたはピッチングのいずれか一方を抑制しつつ、他方の抑制の程度を制御することができる。
さらに、運転者によって「硬い」が選択された場合には、外力付与装置100の制御が行われないで、図7の電磁方向切換弁制御プログラムの実行によって電磁方向切換弁68の制御のみが行われ、それ以外の特性が選択された場合に、図6のプログラムの実行によって外力付与装置100の制御も行われるようにすることができる。「硬い」が選択された場合には、セントラルピストン49の移動が阻止されるため、ローリング状態において第1位置とし、ピッチング状態において第2位置とすることと同じことになる。
また、上記実施例においては、第2シリンダ39bに電磁方向切換弁68が設けられたが、第1シリンダ39aに設けることもできる。この場合には、液圧室60,62とショックアブソーバ10,16との間に設けられることになる。
さらに、電磁方向切換弁を2つ設けることもできる。その一例を図8に示す。本実施例においては、電磁方向切換弁68に加えて、液圧室62,66と電磁方向切換弁68およびショックアブソーバ16との間に電磁方向切換弁150が設けられている。
電磁方向切換弁68,150による切換えを図9に基づいて説明する。電磁方向切換弁68,150の第1位置において、液圧室60に左前輪のショックアブソーバ10が接続され、液圧室62に右前輪のショックアブソーバ12が接続され、液圧室64に左後輪のショックアブソーバ14が接続され、液圧室66に右後輪のショックアブソーバ16が接続される。セントラルピストン49に対して、互いに対角位置にある車輪のショックアブソーバの液圧が、それぞれ、互いに同じ向きに作用するとともに、前輪側と後輪側とにおける左右のショックアブソーバの液圧が互いに反対向きに、右側と左側との前後のショックアブソーバの液圧が互いに反対向きに作用する。そのため、ピッチング、ローリングが抑制されるとともに、対角位置にある車輪の同相移動が許容される。
電磁方向切換弁68の第2位置、電磁方向切換弁150の第1位置において、液圧室60に左前輪のショックアブソーバ10が接続され、液圧室62に左後輪のショックアブソーバ14が接続され、液圧室66に右後輪のショックアブソーバ16が接続され、液圧室64に右前輪のショックアブソーバ12が接続される。上述の場合と同様に、ピッチングとローリングとが抑制されるとともに、対角位置にある車輪の同相移動が許容される。
電磁方向切換弁68の第1位置、電磁方向切換弁150の第2位置においては、上記実施例における電磁方向切換弁68の第1位置と同じである。この位置においては、ピッチングが許容されて、ローリングが抑制される。
電磁方向切換弁68および電磁方向切換弁150が共に第2位置の場合は、電磁方向切換弁68の第2位置と同じであり、ピッチングが抑制され、ローリングが許容される。
このように、本実施例においては、電磁方向切換弁68,150の制御により、対角位置にある車輪の同相移動を許容する状態(以下、対角同相移動許容状態と称する)と、ローリングを許容する状態(ローリング許容状態と称する)と、ピッチングを許容する状態(ピッチング許容状態と称する)とに切り換えることができる。
例えば、通常は、対角同相移動許容状態(電磁方向切換弁68,150の両方を第1位置とするか、あるいは、電磁方向切換弁68を第2位置とし、電磁方向切換弁150を第1位置とする)とし、ローリングが生じた場合に、ローリング許容状態(電磁方向切換弁68、150の両方を第2位置)に切り換え、その状態において外力付与装置100により減衰力の制御が行われるようにする一方、ピッチングが生じた場合に、ピッチング許容状態(電磁方向切換弁68を第1位置、電磁方向切換弁150を第2位置とする)に切り換えて、外力付与装置100によって減衰力の制御が行われるようにすることもできる。
また、通常は、対角同相移動許容状態とし、ローリングが生じた場合にローリング抑制状態(電磁方向切換弁68を第1位置、電磁方向切換弁150を第2位置とする)とし、ピッチングが生じた場合にピッチング抑制状態(電磁方向切換弁68,150の両方を第2位置とする)とすることもできる。
さらに、電磁方向切換弁を、第1、第2シリンダ39a,bに跨って設けることができる。
その一例を図10に示す。本実施例においては、液圧室60,64にそれぞれ左前輪のショックアブソーバ10,右前輪のショックアブソーバ12が接続され、液圧室62,66にそれぞれ左後輪のショックアブソーバ14,右後輪のショックアブソーバ16が、電磁方向切換弁152を介して接続される。
電磁方向切換弁152の第1位置において、液圧室62に左後輪のショックアブソーバ14が連通させられるとともに、液圧室66に右後輪のショックアブソーバ16が連通させられ、電磁方向切換弁152の第2位置において、液圧室62に右後輪のショックアブソーバ16が連通させられ、液圧室66に左後輪のショックアブソーバ14が連通させられる。
電磁方向切換弁152の第1位置において、ローリングとピッチングとが抑制されるとともに対角同相移動が許容され、第2位置において、ピッチングが抑制されてローリングが許容される。
常には、電磁方向切換弁152を第1位置に保ち、ローリングが生じた場合に、第2位置に切り換えるとともに、外力が制御されるようにすることができる。本実施例においては、ピッチングを抑制するとともに、ローリングの抑制状態を制御することが可能である。
さらに、電磁方向切換弁は、図11に示す位置に設けることができる。本実施例においては、液圧室60,64にそれぞれ左前輪のショックアブソーバ10,左後輪のショックアブソーバ14が接続され、液圧室62,66にそれぞれ右後輪のショックアブソーバ16,右前輪のショックアブソーバ12が、電磁方向切換弁154を介して接続される。
電磁方向切換弁154の第1位置において、液圧室62に右後輪のショックアブソーバ16が連通させられるとともに、液圧室66に右前輪のショックアブソーバ12が連通させられ、電磁方向切換弁154の第2位置において、液圧室62に右前輪のショックアブソーバ12が連通させられ、液圧室66に右後輪のショックアブソーバ16が連通させられる。
電磁方向切換弁154の第1位置において、ローリングが抑制されてピッチングが許容され、第2位置において、ピッチング、ローリングが抑制されて対角同相移動が許容される。
常には、電磁方向切換弁154を第1位置に保ち、ピッチングが生じた場合に、第2位置に切り換えるとともに外力が制御されるようにすることができる。本実施例においては、ローリングを抑制し、かつ、ピッチングの抑制状態を制御することができる。
その他、いちいち説明しないが、電磁方向切換弁を設ける位置、ショックアブソーバのセントラルシリンダへの接続位置や接続状態を変更すれば、種々の状態で切り換えることができる。
なお、上記実施例においては、走行状態検出装置136が、横Gセンサ142と前後Gセンサ144とを含むものであったが、それに限らない。旋回状態は、ヨーレイト、操舵角と車速等に基づいて取得することができるのであり、ヨーレイトセンサを含むものとしたり、操舵角センサ、車速センサを含むものとしたりすることができる。また、前後方向の回転モーメントは、制動装置による制動力、駆動装置による駆動力が大きい場合は小さい場合より大きいため、制動力検出装置、駆動力検出装置を含むものとすることができる。
また、外力付与装置100の制御態様は上記実施例におけるそれに限らない。例えば、ローリングまたはピッチングが生じた場合に、それによる移動力とは逆向きで、移動力より大きい力が加えられるようにすることができる。このようにすれば、車輪毎に、姿勢変化を抑制する力を付与することができ、強く姿勢の変化を抑制することができる。また、乗り心地入力装置140によって入力された乗り心地の程度に基づいて外力が制御されるようにすることも不可欠ではない。走行状態と路面状態との少なくとも一方に基づいて制御されるようにすることができる。
さらに、上記実施例においては、個別通路30〜36に絞り80〜86が設けられたが、絞り80〜86を設けることは不可欠ではない。
また、スプリング76,78を設けること、連通路70,72,73すべてを設けること等も不可欠ではない(例えば、連通路73を設けない構造、連通路70,72を設けない構造、連通路70,72,73を設けない構造等とすることができる)。さらに、スプリングは、ピストン44,46の内側ではなく、外側に設けることができる。スプリングを、ピストン44の第1外側受圧面50とハウジング40との間、ピストン46の第2外側受圧面54とハウジング42との間にそれぞれ設けることができるのである。
さらに、上記実施例においては、ショックアブソーバ10〜16の液圧室24にセントラルシリンダ38が接続されるようにされていたが、液圧室25にセントラルシリンダ38が接続されるようにすることができる。
また、第1シリンダ、第2シリンダ39a,bを分離して設けることもできる。例えば、分離した第1シリンダ、第2シリンダ39a,bのピストンロッドを自在継手やボールジョイントで連結されば、両シリンダの作動を円滑にすることができる。
また、上記各実施例においては、4つの懸架シリンダとしてのショックアブソーバ10〜16の液圧室24,25の一方のみがセントラルシリンダ38が接続されるようにされていたが、各懸架シリンダのピストンの両側の液圧室がセントラルシリンダが接続されるようにすることができる。
その一例を、図12に示す。この実施例においては、前後左右の車輪に対応する4つの懸架シリンダが複動シリンダ160,162,164,166とされている。各複動シリンダは、ハウジング170とピストン172とにより形成された2つの液圧室であるヘッド側室174とロッド側室175とを備えており、ピストン172から同軸に延びてハウジング170外に突出したピストンロッドが車輪側部材17に、ハウジング170が車体側部材18にそれぞれ連結されている。そして、車体の対角位置にある2対の複動シリンダのヘッド側室174とロッド側室175とがそれぞれ個別液通路180,182,184,186により接続されると共に、それら合計4本の個別液通路がぞれぞれ接続通路190,191,192,193により、セントラルシリンダ49の4つの液圧室62,64,66,60に接続されている。これら接続通路190〜193のセントラルシリンダ49への接続端部に絞り194,195,196,197が設けられている。また、接続通路191,192に跨って電磁方向切換弁198が設けられており、個別液通路182,184と液圧室64,66との連通状態が逆転させられるようになっている。セントラルシリンダ38の構成は前記図1の実施例と同じであるため、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。
上記個別液通路180〜186にはそれぞれアキュムレータ200,202,204,206が接続されている。これらアキュムレータは可及的に複動シリンダ160〜166に近い位置に設けられることが望ましい。アキュムレータ200〜206と複動シリンダ160〜166との間に存在する作動液の質量を小さくして、複動シリンダ160〜166の比較的高い周波数の振動の吸収機能を高めるためである。また、個別液通路180〜186のヘッド側室174およびロッド側室175への接続端の近傍に、絞り210,212,214,216,220,222,224,226が設けられ、アキュムレータ200〜206と個別液通路180〜186との接続通路に絞り230,232,234,236が設けられている。
前記電磁方向切換弁198は、前記図1の実施例におけると同様に、実行部134および記憶部132を備えたコンピュータを主体とするサスペンションECU130により制御される。このサスペンションECU130には、回転モーメント検出装置240および回転モーメント予知装置242が接続されている。回転モーメント検出装置240は横Gセンサ142および前後Gセンサ144を備え、回転モーメント予知装置242はブレーキ操作部材としてのブレーキペダルが原位置にないことを検出するブレーキスイッチ252と、操舵部材としてのステアリングホイールが中立位置にないことを検出する操舵スイッチ254とを備えている。
本車両用サスペンションシステムにおいては、複動シリンダ160〜166の各々とそれらに対応するアキュムレータ200〜206とが共同して4つの弾性力発生装置を構成するとともに、複動シリンダ160〜166,絞り194〜197,アキュムレータ200〜206,絞り210〜216、絞り220〜226および絞り230〜236が共同してショックアブソーバを構成している。なお、アキュムレータ200〜206に対して設けられている絞り230〜236は、セントラルシリンダ38に対して設けられている絞り194〜197に比較して絞り効果の大きいものとされており、セントラルシリンダ38への作動液の流れが多い場合(アキュムレータ200〜206への作動液の流れが少なくなる)には、セントラルシリンダ38への作動液の流れが少ない場合(アキュムレータ200〜206への作動液の流れが多くなる)に比較して、上記ショックアブソーバの減衰力が小さくなる。また、車体の対角位置にある2対の複動シリンダのヘッド側室174とロッド側室175とがそれぞれ個別液通路180,182,184,186により接続されているため、前後左右の4つの車輪の車体に対する相対高さ、すなわち車輪側部材17と車体側部材18との距離のいかんを問わず、4つの車輪の接地荷重が平地における接地荷重とほぼ等しい大きさに保たれる。
サスペンションECU130の記憶部132には、図15のフローチャートで表される電磁方向切換弁制御プログラムが記憶されている。S31,S33において、ぞれぞれブレーキスイッチ252あるいは操舵スイッチ254がONの状態にあるか否かが判定される。ブレーキペダルが原位置、ステアリングホイールが中立位置にあれば、いずれの判定もNOとなってS40,S42で前後G,横Gが0とされるが、YESであれば、S32あるいはS34において前後Gセンサ144,横Gセンサ142から前後Gあるいは横Gが読み込まれる。そして、S35において横Gが設定値以上であるか否かが判定され、YESであれば、S36において電磁方向切換弁198が図12,図13に示す第1位置とされる。また、S35の判定がNOであれば、S37において前後Gが設定値以上であるか否かが判定され、YESであればS38において電磁方向切換弁198が図14に示す第2位置とされる。また、S37の判定がNOであれば、電磁方向切換弁198が第1位置とされる。以上の説明から明らかなように、本車両用サスペンションシステムにおいても、通常は電磁方向切換弁198が図12に示すノーマル位置(第1位置)に保たれ、ブレーキペダルが原位置から踏み込まれ、あるいはステアリングホイールが中立位置から操作されれば、前後方向あるいは横方向の回転モーメントが設定値以上になる可能性があるとして、前後Gセンサ144,横Gセンサ142の検出値の読込みが開始される。そして、前後Gが設定値を超えれば、電磁方向切換弁198が第2位置とされるが、横Gが設定値以上となれば第1位置へ戻される。すなわち、比較的大きなローリングはピッチングに優先して抑制されるのである。
このように、本実施例においては、通常、電磁方向切換弁198が第1位置にあるため、前側あるいは後側の左右車輪が同時に段差部を乗り越える場合には、車輪の軽快な昇降(車体に対する接近・離間)が許容される。例えば、左右前輪が同時に段差部に乗り上げる場合には、図12に太い実線で示すように、複動シリンダ160,162のピストンロッドおよびピストン172が突き上げられ、ヘッド側室174の容積が減少する一方、ロッド側室175の容積が増大する。その結果、個別液通路180〜186には太い実線の矢印で示す作動液の流れが生じようとする。具体的には、複動シリンダ160,162のヘッド側室174から作動液が流出し、この流出作動液がセントラルシリンダ38の液圧室62,64および複動シリンダ164,166のロッド側室175へ流入するように作動液が流れようとするのである。この作動液の流れに伴い、セントラルシリンダ38のセントラルピストン49および複動シリンダ164,166のピストン172が太い実線の矢印の方向(セントラルピストン49が左方向、複動シリンダ164,166のピストンロッドは収縮方向)に移動しようとし、これによりセントラルシリンダ38の液圧室60,66および複動シリンダ164,166のヘッド側室174から作動液が流出し、この流出作動液が複動シリンダ160,162のロッド側室175へ流入しようとするのである。この作動液の流れおよびセントラルピストン49,複動シリンダ160〜166の作動は実際に許容されるため、アキュムレータ200〜206への作動液の流れが殆ど生じず、セントラルシリンダ38,複動シリンダ160〜166,絞り194〜197,アキュムレータ200〜206,絞り210〜216,絞り220〜226および絞り230〜236等により構成される車両用サスペンションシステムに発生する弾性力(剛性)および減衰力が小さくなり、路面入力による左右前輪の軽快な上昇およびそれに続く下降が許容される。
それに対し、ローリングは抑制される。例えば、図13に示すように、車両が右旋回して車両左側の車輪側部材17と車体側部材18との間の間隔が車両右側の車輪側部材17と車体側部材18との間の間隔に対し小さくなるローリングが生じようとする場合、複動シリンダ160,164の作動液が太い実線の矢印で示す向きに流れようとするが、この作動液の流れの向きは、太い破線の矢印で示す右側の複動シリンダ162,166の作動液が流れようとする向きと逆であり、また、セントラルピストン49の力の釣合いもくずれない。したがって、実際には作動液の上記流れが生じることはなく、セントラルシリンダ38はないに等しいこととなって、4つの複動シリンダ160〜166は互いに独立した状態となり、セントラルシリンダ38への作動液の流れが許容される場合に比較してアキュムレータ200〜206への作動液の流入が多くなるため、複動シリンダ160〜166,アキュムレータ200〜206および絞り230〜236により構成される車両用サスペンションシステムに発生する弾性力(剛性)および減衰力が大きくなり、ローリングが抑制されるのである。
また、電磁方向切換弁198が第2位置とされればピッチングが抑制される。例えば、図14に示すように、制動が行われて、左右前輪に対応する車輪側部材17と車体側部材18との間の間隔が左右後輪に対応する車輪側部材17と車体側部材18との間隔に対して小さくなる向きのピッチングが生じようとする場合、複動シリンダ160,162の作動液が太い実線の矢印で示す向きに流れようとするが、この作動液の流れの向きは、後側の複動シリンダ164,166の作動液が流れようとする向きと逆であり、また、セントラルピストン49の力の釣合いもくずれない。したがって、実際には作動液の上記流れが生じることはなく、セントラルシリンダ38はないに等しいこととなって、4つの複動シリンダ160〜166は互いに独立した状態となり、セントラルシリンダ38への作動液の流れが許容される場合に比較してアキュムレータ200〜206への作動液の流入が多くなるため、複動シリンダ160〜166,アキュムレータ200〜206および絞り230〜236により構成される車両用サスペンションシステムに発生する弾性力(剛性)および減衰力が大きくなり、ピッチングが抑制されるのである。
1車輪が路面の突部を乗り越える場合に、電磁方向切換弁198の位置いかんを問わずその1輪の軽快な昇降が許容されることは、前記図1の実施例におけると同様である。
なお、本実施例においても、外力付与装置100と類似の外力付与装置を設けることや、電磁方向切換弁198の制御を前記図1の実施例に関連して記載したのと同様に行うことができる。
本実施例におけるセントラルシリンダ38は、ピッチングを抑制する状態ではローリングは抑制し得ず、ローリングを抑制する状態ではピッチングを抑制し得ないものであるので、モーメント作用検知装置たる前後Gセンサと横方Gセンサとが共に設定値以上の前後Gと横Gとを検知した場合には、ローリングの抑制が優先されるようになっているが、前後G,前後方向回転モーメント,ピッチングレイト,ピッチング角等と、横G,横方向回転モーメント,ローリングレイト,ローリング角等との大きさに基づいて、ピッチングとローリングとのうちのいずれを抑制すべきかを決定する決定部を設けることも可能である。
また、本実施例においては、回転モーメント予知装置242としてのブレーキスイッチ252および操舵スイッチ254が前後方向あるいは横方向の回転モーメント発生を予知した場合にのみ、回転モーメント検出装置240としての前後Gセンサ144および横Gセンサ142の検出値が読み込まれ、予知しない場合には、実際の前後Gおよび横Gは読み込まれず、常に0とされるようになっている。しかし、ブレーキスイッチ252が原位置にないことが検出された場合に、前後Gセンサ144が作動状態にされ、ステアリングホイールが中立位置にない(厳密には中立位置を中心とする設定角度範囲内にない)ことが検出された場合に、横Gセンサ144が作動状態にされ、それ以外の場合には、前後Gセンサ144や横Gセンサ142への電源電圧の印加が停止されるようにすることも可能である。また、図1の実施例におけるように、外力付与装置を有する車両用サスペンションシステムにおいて、電磁方向切換弁の制御は回転モーメント予知装置242からの情報に基づいて行われ、外力付与装置の制御は回転モーメント検出装置240から情報に基づいて行われるようにすることも可能である。さらに、通常は、前後Gセンサ144および横Gセンサ142とブレーキスイッチ252および操舵スイッチ254との一方の情報に基づいて電磁方向切換弁や外力付与装置の制御が行われ、その一方が故障した場合に他方からの情報に基づいて制御が行われるようにすることも可能である。後者の場合には、他方がフェールセーフ装置として機能することとなる。ブレーキスイッチ252と前後Gセンサ144とのいずれか一方と、操舵スイッチ254と横Gセンサ142とのいずれか一方を省略することも可能である。
また、方向切換弁を電磁方向切換弁とすることも不可欠ではない。例えば、図16に示すように、電磁方向切換弁198をパイロット式方向切換弁270に変え、それにブレーキシステム272の液圧、例えば、マスタシリンダ,ホイールシリンダあるいはそれらを接続する液圧通路の液圧をパイロット圧として作用させることができる。このようにすれば、ブレーキ液圧が設定液圧以上になった場合に、パイロット式方向切換弁270が図16に示す第1位置から、逆の第2位置に切り換えられ、セントラルシリンダ38がピッチングを抑制する状態とされる。また、図17に示すように、電磁方向切換弁198をパイロット式方向切換弁280に変え、それに、複動シリンダ160、162のヘッド側室174およびロッド側室175の液圧をパイロット圧として作用させる。すると、パイロット式方向切換弁280は、複動シリンダ160,162のヘッド側室174とロッド側室175との液圧差で切り換えられることとなる。例えば、制動が行われて複動シリンダ160,162のヘッド側室174の液圧がロッド側室175の液圧より設定液圧差(図示を省略するリターンスプリングの設定荷重で決まる)以上大きくなれば、図17に示す第1位置から、逆の第2位置へ切り換えられ、セントラルシリンダ38がピッチングを抑制する状態とされる。これらの実施例においては、方向切換弁を制御する電気制御装置が不要となり、その上、図17の実施例においてはさらに、パイロット圧も車両用サスペンションシステム自体において確保することができ、完全な自己完結システムとなる。
以上説明した実施例の車両用サスペンションシステムの多くは、ローリングとピッチングとのいずれかを重点的に抑制するものである。しかし、実際には車両の旋回と、制動あるいは加速とが同時に行われることもあり、その場合は、ローリングとピッチングとが同時に発生する。その場合の制御の一例を図18〜21に示す。本実施例の車両要サスペンションシステムのハード構成は、図1のものでも図12のものでもよい。ただし、本実施例においては、電磁方向切換弁68(198)が瞬間的に切り換えられるものではなく、励磁電流の増加につれて図1あるいは図12のノーマル位置から反対側の作動位置へ徐々に移動させられるリニア弁とされている。電磁方向切換弁68(198)の代わりに2つの電磁開閉弁を用いることも可能であり、リニア弁とする代わりに、デューティ制御により切換速度が制御されるようにしてもよい。
本実施例においては、通常はローリング抑制状態にあり、前後加速度対応量がしきい値より大きくなった場合にピッチング抑制状態に切り換えられる。ローリングとピッチングとが同時に発生した場合は、横加速度対応量と前後加速度対応量との大きさに基づいて、抑制することがより望ましい方が自動で選択されて抑制される。横加速度対応量および前後加速度対応量としては、前記実施例におけると同様に、横Gセンサ142および前後Gセンサ144によりそれぞれ検出される横Gおよび前後Gが使用される。
上記検出された横Gおよび前後GはサスペンションECU130に供給される。サスペンションECU130の記憶部132には、図19のフローチャートで表される制御プログラムを記憶している制御プログラムメモリ302と、図20,21で表される抑制選択マップ304および切換時間マップ306とが設けられている。抑制選択マップ304は、前後Gの絶対値が、横Gの絶対値との関係で決まるしきい値を超えた場合にピッチング抑制状態が選択されるように作成されている。しきい値は、横G絶対値が設定値より小さい領域では一定値とされており、設定値より大きい領域では横G絶対値が大きいほど大きくされている。また、実線で示すローリング抑制状態からピッチング抑制状態への切換えのしきい値は、破線で示すピッチング抑制状態からローリング抑制状態への復帰のしきい値より大きくされている。
切換時間マップ306は、図21に示すように、ローリング抑制状態からピッチング抑制状態への切換時における横G絶対値、およびピッチング抑制状態からローリング抑制状態への復帰時における前後G絶対値が設定値より小さい領域では、切換時間が一定値とされているが、設定値より大きい領域では、横G絶対値または前後G絶対値が大きいほど大きい値に決定される。本実施例においては、ローリング抑制状態からピッチング抑制状態への切換時間は横G絶対値に基づいて決定され、ピッチング抑制状態からローリング抑制状態への復帰時間は前後G絶対値に基づいて決定されるのである。その理由は次の通りである。例えば、ローリング抑制状態からピッチング抑制状態への切換時に、横Gが大きい場合は小さい場合に比較して切換時の急激な車体姿勢変化が生じる。そのため、横Gが大きいほど切換時間を長くして切換えが緩やかに行われるようにされるのである。逆に、ピッチング抑制状態からローリング抑制状態への切換時に、前後Gが大きい場合は小さい場合に比較して切換時の急激な車体姿勢変化が生じる。そのため、前後Gが大きいほど切換時間を長くして切換えが緩やかに行われるようにされる。
図19の制御プログラムは、車両のキースイッチがONである間、微小時間毎に繰り返し実行される。S51において前後G絶対値および横G絶対値が読み込まれ、S52において図20のマップによりピッチング抑制状態とローリング抑制状態との間の切換えを行うべきか否かが判定される。判定の結果がNOであった場合にはそのまま1回の実行が終了するが、YESであった場合には、S53において図21のマップによって切換時間が決定され、S54においてその決定された時間でリニア弁の切換えが行われる。切換時における前後G絶対値または横G絶対値が大きい場合ほど長い時間かけて切換えが緩やかに行われるのであり、急激な車体姿勢の変化が回避される。
一旦ピッチング抑制状態への切換えが行われた後、S52が実行される際には、前後G絶対値が破線で示すしきい値より小さくならなければ判定はYESとならないため、前後G絶対値が多少減少してもローリング抑制状態への復帰は行われない。前後G絶対値が破線で示すしきい値以下となれば、S52の判定がYESとなり、S53において切換時間が決定され、S54においてその切換時間でローリング状態への復帰が行われる。これにより、ピッチング抑制状態への移行と、ローリング抑制状態への復帰とが頻繁に繰り返されることが回避される。
以上の説明から明らかなように、本実施例においては、前後Gセンサ144および横Gセンサ142によって前後加速度対応量取得装置および横加速度対応量取得装置が構成されている。抑制選択マップ304と、サスペンションECU130のS52を実行する部分とによって、横加速度対応しきい値変更部および切換方向対応しきい値変更部が構成され、切換時間マップ306と、サスペンションECU130のS53を実行する部分とによって切換時間変更部が構成されており、これら横加速度対応しきい値変更部,切換方向対応しきい値変更部および切換時間変更部によって、ローリング抑制状態とピッチング抑制状態との間の切換えを車両の走行状態に応じて変更する切換変更部が構成されている。
なお、図20,21のしきい値は、横G絶対値等、横軸の値が設定値以下の領域では一定値とされ、設定値より大きい領域では横軸の値が大きいほど大きくなるようにされているが、全領域において横軸の値が大きいほど大きくなるようにすることも可能であり、横軸の値が小さい領域では小さい値、横軸の値が大きい領域では大きい値というように2段階あるいは3段階以上に段階的に大きくなるようにすることも可能である。請求項や実施態様項における「Aを、Bが大きい場合に小さい場合より大きくする(長くする)」との表現はこれらすべての場合を含むものとする。
前記図1の実施例においては、接続状態変更装置と外力付与装置との両方が設けられ、図12の実施例においては接続状態変更装置のみが設けられていたが、図22に例示するように、外力付与装置のみを設けることも可能である。図22の車両用サスペンションシステムは、図12の実施例において電磁方向切換弁198がノーマル状態にある場合と同じであり、セントラルシリンダ38はローリングを抑制し、ピッチングを許容する状態にある。例えば、車両の制動が行われて、左右前輪の荷重が増大する一方、左右後輪の荷重が減少したとすれば、セントラルピストン49が太い実線の矢印で示す向きに移動し、前輪側の複動シリンダ160,162が収縮し、後輪側の複動シリンダ164,166が伸長することを許容するのである。
しかし、本実施例においては、セントラルシリンダ38の両側に外力付与シリンダ312,314が設けられている。これら外力付与シリンダ312,314は、セントラルシリンダ38のハウジング40,42と一体的に構成されたハウジング316,318と、連結ロッド48のハウジング316,318内へ突入した端部で構成されるラム320,322とにより構成されている。ラム320,322のハウジング316,318内への突入量の増大,減少に伴って、外力付与シリンダ312,314の内容積が減少,増大するようにされているのである。
外力付与シリンダ312,314には複数のアキュムレータが互いに並列に接続されている。図示の例では、ばね定数の小さい低ばね定数アキュムレータ326とばね定数の大きい高ばね定数アキュムレータ328との2つが接続されており、各低ばね定数アキュムレータ326と外力付与シリンダ312,314との間には、電磁開閉弁330,332が設けられている。電磁開閉弁330,332は常開弁であり、常には低ばね定数アキュムレータ326と高ばね定数アキュムレータ328との両方が外力付与シリンダ312,314に連通しており、セントラルピストン49の移動に抗する弾性力は緩やかに増大する。それに対し、電磁開閉弁330,332が閉じた状態では高ばね定数アキュムレータ328のみが外力付与シリンダ312,314と連通する状態となり、セントラルピストン49の移動に抗する弾性力が急激に大きくなる。本実施例においては、低ばね定数アキュムレータ326,高ばね定数アキュムレータ328および電磁開閉弁330(332)によって可変ばね装置334が構成されているのである。
上記電磁開閉弁330,332は、図23の制御装置により制御される。制御装置が走行状態検出装置136,路面状態検出装置138およびサスペンションECU130を含むことは前記図1の実施例と同様であるが、本実施例の走行状態検出装置136は横Gセンサ142の変わりに車速検出装置340を備えている。また、路面状態検出装置138は、悪路度合い検出装置としての上下Gセンサ139を備えている。サスペンションECU130の記憶部132には、図24のフローチャートで表される制御プログラムを記憶している制御プログラムメモリ302と、図25に示す切換しきい値マップ342とが設けられている。このマップ342は、横軸に悪路度合いをとり、縦軸に電磁開閉弁330,332を閉状態に切り換える前後Gの値であるしきい値がとられている。しきい値は、悪路度合いが大きいほど大きくされ、車速が大きいほど小さくされている。しきい値が悪路度合いが大きいほど大きくされるのは、悪路においてはばね下(車輪側部材17)の振動がばね上(車体側部材18)へ伝達されることを回避する要求が高いため、ピッチングの抑制を犠牲にしてもセントラルピストン49の作動を容易にしておくことが望ましいからであり、車速が大きいほどしきい値が小さくされるのは、車速が大きいほど車体姿勢維持(ピッチング抑制)の要求が高いからである。本切換しきい値マップ342についても、一部領域において一定値とすることや、段階的に変化させることができることは、図20,21のマップにおけると同様である。ただし、しきい値は悪路度合いが設定値以下の領域において悪路度合いが大きいほど大きくされ、悪路度合いが設定値より大きい領域で一定値とされることになる。
図24のフローチャートで表される制御プログラムは、車両のキースイッチがONである間、微小時間毎に繰り返し実行される。S61で車速,前後Gおよび上下Gの値が取り込まれ、S62において、取り込まれた上下Gの絶対値,前後Gおよび車速と、図25の切換しきい値マップ342とに基づいて、高ばね定数状態から低ばね定数状態への移行をすべきか、低ばね定数状態から高ばね定数状態への移行をすべきか、すなわち、電磁開閉弁330または332(前後Gの値が正であるか負であるかにより選定される)を閉状態に切り換えるべきか、開状態に切り換えるべきかが判定される。判定の結果が高ばね定数への切換えであれば、S63で電磁開閉弁330または332が閉状態に切り換えられ、判定の結果がNOであれば、低ばね定数への切換えであれば、S64で電流供給が停止され、電磁開閉弁330または332が開状態に復帰させられる。
例えば前記図1,12等に図示された実施例におけるように、ローリング抑制状態とピッチング抑制状態とが切り換えられる場合には、切換時に複動シリンダ160〜166とセントラルシリンダ38との高圧の液圧室と低圧の液圧室とが連通させられることによって、車体の姿勢が急変し勝ちなのであるが、本実施例におけるように、セントラルシリンダ38は常にローリング抑制状態にあるようにし、ピッチングの抑制制御は、外力付与シリンダ312,314と可変ばね装置334とから成る外力付与装置により行われるようにすれば、ローリング抑制状態とピッチング抑制状態との切換時における車体姿勢急変の問題を良好に回避することができる。
以上の説明から明らかなように、本実施例においては、外力付与シリンダ312,314と可変ばね装置334とが弾性力付与装置を構成し、サスペンションECU130の上記制御プログラムを実行する部分が可変ばね装置334のばね力を制御するばね力制御部を構成している。そして、ばね力制御部が弾性力制御装置を構成し、その弾性力制御装置が上記弾性力付与装置と共同して外力付与装置を構成している。また、サスペンションECU130の上記制御プログラムを実行する部分が、走行状態検出装置136,路面状態検出装置138および切換しきい値マップ342と共同して、車両の走行状態としての前後Gおよび車速と、路面状態としての悪路度合いとの両方に応じてセントラルシリンダ38の作動体たるセントラルピストン49に加えられる外力を制御する外力制御装置を構成していると考えることもできる。
また、サスペンションECU130のS62およびS63を実行する部分が、前後加速度対応量としての前後Gの絶対値がしきい値を超えた場合に外力付与装置が付与する外力を増加させる外力増加部を構成し、切換しきい値マップ342において、可変ばね装置334のばね定数を増大させて外力を増加させるか否かを決定するしきい値(前後Gのしきい値)が、悪路度合いを表す量の一例としての上下Gの増大につれて増大させられている構成が、外力増加しきい値変更部を構成している。また、切換しきい値マップ342において、しきい値が悪路度合いが大きい場合に小さい場合に比較して大きくされるとともに、車速が高い場合に低い場合に比較して小さくされている構成が、高ばね移行しきい値変更部を構成している。
上記実施例においては、接続状態変更装置が設けられていないため、電磁開閉弁の切換えによって行われるのはピッチング抑制特性の切換えであるが、前記図1や図12の実施例等と同様に接続状態変更装置を併用すれば、ローリング抑制特性の切換えも可能となる。接続状態変更装置を設ける代わりに、接続通路の接続状態を恒久的に変えれば、ローリング抑制特性の切換えのみが可能な車両用サスペンションシステムが得られる。
また、上記実施例においては、電磁開閉弁の切換えが車両の走行状態と路面の状態とに応じて自動で行われるようにされていたが、いずれか一方のみに応じて切換えが行われるようにすることも、逆にさらに多くの情報に応じて切換えが行われるようにすることも可能である。さらに、切換えが自動で行われるようにすることも不可欠ではなく、運転者による手動操作部材の操作に応じて切換えが行われるようにすることも可能である。そうすれば、運転者の好みに合わせてピッチングやローリングの抑制特性を変更することができる。
さらに付言すれば、ピッチング抑制特性やローリング抑制特性の自動切換えに電子制御装置を用いることも不可欠ではない。その一例を図26に示す。本実施例においては、ピッチングの抑制特性の切換えがパイロット式制御弁によって行われる。
本実施例は、電磁開閉弁332の代わりにパイロット式制御弁装置350を設けたものである。本実施例のパイロット式制御弁装置350は、4つのパイロット式開閉弁352を並列に備えたものである。パイロット式開閉弁352はいずれも常開弁とされており、前輪側の懸架シリンダたる複動シリンダ160,162のヘッド側室の液圧と、後輪側の懸架シリンダたる複動シリンダ164,166のロッド側室の液圧とが、パイロット通路354により、パイロット式開閉弁352を閉じる向きのパイロット圧として導入されてている。本実施例においては、4本のパイロット通路354がパイロット圧導入部を構成しているのである。
車両の制動が行われ、前輪側の複動シリンダ160,162に対する荷重が増大し、後輪側の複動シリンダ164,166に対する荷重が減少すれば、パイロット通路354のパイロット圧が増大するが、それらパイロット圧がすべてパイロット式開閉弁352の閉弁圧を超えれば、すべてのパイロット式開閉弁352が閉じられ、パイロット式制御弁装置350が外力付与シリンダ312と低ばね定数アキュムレータ326とを遮断する。その結果、外力付与シリンダ312は高ばね定数アキュムレータ328にのみ連通した状態となるため、可変ばね装置334のばね定数が増大し、セントラルシリンダ38の剛性が増大する。セントラルピストン49の単位移動距離当たりの抗力の増大勾配が大きくなるのであり、その分、車体のピッチング角度(ノーズダイブ)が小さく抑えられることとなる。
なお、図26において、セントラルシリンダ38の右側に示されているばね装置は、低ばね定数アキュムレータ326のみを備えた固定ばね装置とされているが、左側と同様に可変ばね装置とすることも可能であり、そうすれば加速時におけるピッチング、すなわちノーズリフトの抑制特性を可変とすることができる。
図27にさらに別の実施例を示す。本実施例は、(1)セントラルシリンダ370と、(2)外力付与装置372と、(3)セントラルシリンダ370と4つの懸架シリンダたる複動シリンダ160,162,164,166とを接続する接続装置374との構成に特徴を有している。
セントラルシリンダ370は、大径部382およびその大径部382の両側の2つの小径部384,386を一体的に有する段付シリンダハウジング388と、大径ピストン392および小径ピストン394,396が連結ロッド397によって一体的に連結されたセントラルピストン398とを含むものである。セントラルピストン398が段付シリンダハウジング388に液密かつ摺動可能に嵌合されることにより、大径ピストン392と2つの小径ピストン394,396との間に2つの液圧室400,402が形成され、小径ピストン394,396の大径ピストン392側とは反対側にそれぞれ液圧室404,406が形成されている。連結ロッド397の両端部は、段付シリンダハウジング388の両端の端壁を液密に貫通して外部に突出している。また、大径ピストン392の液圧室400,402に対する有効受圧面積が互いに等しくされ、小径ピストン394,396の液圧室404,406に対する有効受圧面積も互いに等しくされている。
外力付与装置372は、減速機付きの電動モータ410および運動変換装置412を含んでいる。運動変換装置412は、ボールねじ414を主体として構成され、電動モータ410の正方向と逆方向との両方の回転運動を正逆両方向の直線運動に変換してセントラルピストン398に伝達することも、セントラルピストン398の正逆両方向の直線運動を正逆両方向の回転運動に変換して電動モータに伝達することも可能なものである。すなわち、電動モータ410はセントラルピストン398を正逆両方向に駆動することが可能であり、セントラルピストン398も電動モータを正逆両方向に駆動するが可能なのである。なお、電動モータ410がボールねじ414を右回転させ、セントラルピストン398を右方へ移動させる向きを、電動モータ410の回転の正方向とする。また、電動モータ410および運動変換装置412は、ブラケット416により段付シリンダハウジング388に取り付けられている。
前記接続装置374は、4本の液通路420,422,424,426により構成されているが、これら液通路は以下の状態に複動シリンダ160,162,164,166とセントラルシリンダ370とを接続している。左右前輪に対応する2つの複動シリンダ160,162の液圧室であるヘッド側室174が、液通路420,422により、セントラルシリンダ370の4つの液圧室の2つ、すなわち液圧室404,406に接続されている。複動シリンダ160,162のヘッド側室174の液圧が、セントラルピストン398の小径ピストン394,396を互いに逆向きに移動させる状態で接続されているのである。また、左右後輪に対応する2つの複動シリンダ164,166の液圧室であるヘッド側室174が、液通路424,426により、セントラルシリンダ370の4つの液圧室の2つ、すなわち液圧室400,402に接続されている。複動シリンダ164,166のヘッド側室174の液圧が、セントラルピストン398の大径ピストン392を互いに逆向きに移動させる状態で接続されているのである。その結果、4つの複動シリンダ160,162,164,166のうち車両の対角位置の車輪にそれぞれ対応する2組、すなわち複動シリンダ160,166の組と、複動シリンダ162,164の組とが、それら対角位置の車輪の同相移動がセントラルシリンダ370の作動により許容される状態でセントラルシリンダ370の4つの液圧室400,402,404,406に接続された状態となっている。
電動モータ410は図28のモータ制御装置430によって制御される。モータ制御装置430は、基準ステア特性取得装置432と、ステア特性検出装置434と、サスペンションECU130とを備えている。基準ステア特性取得装置432は、操舵角センサ436により検出される操舵角と、車速検出装置340により検出される車速とに基づいて設計上予定されているステア特性としての基準ヨーレイトを演算により取得するものであり、ステア特性検出装置434はヨーレイトセンサ438により実際に生じている実ヨーレイトを検出するものである。サスペンションECU130の記憶部132に設けられた制御プログラムメモリ302には、図29のフローチャートで表される制御プログラムが記憶されており、この制御プログラムが実行部134により実行されることにより、電動モータ410が制御される。
S71で基準ヨーレイトが、S72で実ヨーレイトがそれぞれ取り込まれ、S73において、車両を上方から視て右方向に回転する向き(右旋回時)のヨーレイトを正とした場合に、実ヨーレイトが基準ヨーレイト(厳密には、基準ヨーレイトから正の小さい値αを引いた値)より小さいか否か、すなわち右旋回中にアンダステア気味である(実ヨーレイトの絶対値が基準ヨーレイトの絶対値より小さい)か、あるいは左旋回中にオーバステア気味である(実ヨーレイトの絶対値が基準ヨーレイトの絶対値より大きい)か否かが判定され、判定の結果がYESであれば、S74において電動モータ410の正方向駆動力(セントラルピストン398を図において右方へ移動させる駆動力)が予め定められている一定量増大させられる。すると、右旋回中であれば、前輪側のロール剛性が減少させられる一方、後輪側のロール剛性が増大させられ、それによってステア特性がオーバステア側へ変化させられる。左旋回中であれば、前輪側のロール剛性が増大させられる一方、後輪側のロール剛性が減少させられ、それによってステア特性がアンダステア側へ変化させられる。
S73の判定結果がNOであれば、S75において、実ヨーレイトが基準ヨーレイト(厳密には、基準ヨーレイトに正の小さい値βを加えた値)より大きいか否か、すなわち右旋回中にオーバステア気味である(実ヨーレイトの絶対値が基準ヨーレイトの絶対値より大きい)か、あるいは左旋回中にアンダステア気味である(実ヨーレイトの絶対値が基準ヨーレイトの絶対値より小さい)か否かが判定され、判定の結果がYESであれば、S76において電動モータ410の逆方向駆動力が予め定められている一定量増大させられる。それにより、セントラルピストン398が左方へ駆動され、右旋回中に前輪側のロール剛性が増大させられる一方、後輪側のロール剛性が減少させられ、それによってステア特性がアンダステア側へ変化させられる。左旋回中であれば、ステア特性がオーバステア側へ変化させられる。
S73およびS75の判定結果が共にNOであれば、電動モータの駆動力が維持され、ステア特性の変化は生じさせられない。
このように、本実施例の車両用サスペンションシステムによれば、電動モータ410の制御によりセントラルピストン398に対する正逆両方向の駆動力が制御され、前輪側と後輪側とのロール剛性が互いに逆の向きに変化させられ、実際のステア特性が設計上予定された基準ステア特性とほぼ等しくなるように制御される。
また、電動モータ410に電流を供給することなく、自由な回転を許容する状態にしておけば、例えば左右前輪が同時に路面の突部(段差部)に乗り上げた場合に、それら左右前輪に対応する複動シリンダ160,162の収縮と、左右後輪に対応する複動シリンダ164,166の伸長とがセントラルピストン398の軽快な移動によって許容されるため、上記乗上げの衝撃が車体に伝達されることが良好に防止される。左右前輪が共に段差部を降りる場合、左右後輪が同時に段差部に乗り上げ、あるいは段差部を降りる場合にも同様の効果が得られる。
以上の説明から明らかなように、モータ制御装置430が、車両の実際のステア特性に基づいて外力付与装置の付与する駆動力の制御を行うステア特性対応制御部の一例である。
本実施例における操舵角センサ436が車両の右旋回または左旋回の情報を取得する旋回情報取得部を構成しており、サスペンションECU130が、前輪側ロール剛性減少部および後輪側ロール剛性減少部の両方を備えたロール剛性制御部を構成している。
図30にさらに別の実施例を示す。本実施例も、(1)セントラルシリンダ370と、(2)外力付与装置372と、(3)セントラルシリンダ370と4つの懸架シリンダたる複動シリンダ160,162,164,166とを接続する接続装置450とを含んでいるが、接続装置450が上記図27の実施例の接続装置374と異なっている。4つの複動シリンダ160〜166のうち左右前輪に対応する2つの複動シリンダ160,162のヘッド側室174が、液通路452,454により、セントラルシリンダ370の4つの液圧室の2つに、セントラルピストン398を第一の向き(図において右方)に移動させる状態で接続され、左右後輪に対応する2つの複動シリンダ164,166のヘッド側室174液圧室が、液通路456,458により、セントラルピストン398を第一の向きとは逆の第二の向き(図において左方)に移動させる状態で接続されているのである。また、大径ピストン392の液圧室400,402に対する有効受圧面積および小径ピストン394,396の液圧室404,406に対する有効受圧面積がすべて互いに等しくされている。
セントラルピストン398に外力付与装置372が連結されている。外力付与装置372およびそれを制御するサスペンションECU130のハード構成は図27に示したものと同様のものであるが、それの駆動力発生装置としての電動モータ410の制御プログラムが異なっている。また、図31に示すように、サスペンションECU130には、制動情報を取得するためのブレーキ液圧センサ470と、加速情報を取得するためのエンジントルクセンサ472とが接続されている。ブレーキ液圧センサ470およびエンジントルクセンサ472が加減速情報取得部474を構成しているのであるが、例えば、前後Gセンサ等別のセンサにより加減速情報取得部を構成することも可能である。
制御プログラムメモリ302に記憶されている制御プログラムは図32のフローチャートにより表される。S81においてブレーキ液圧およびエンジントルクが取り込まれ、S82において、設定値以上のブレーキ液圧が発生させられているか否かにより制動が行われているか否かが判定され、判定結果がYESであれば、S83においてブレーキ液圧に見合った電流で電動モータ410が逆方向駆動され、セントラルピストン398に図において左向きの駆動力が加えられ、前輪側の複動シリンダ160、162の収縮、後輪側の複動シリンダ164,166の伸長が抑制されて、ノーズダイブが抑制される。
S82の判定結果がNOであれば、S84において設定値以上のエンジントルクが発生させられているか否かにより、加速が行われているか否かが判定され、判定の結果がYESであれば、S85において、エンジントルクに見合った電流で電動モータ410が正方向駆動され、セントラルピストン398に図において右向きの駆動力が加えられ、後輪側の複動シリンダ164,166の収縮、前輪側の複動シリンダ160、162の伸長が抑制されて、ノーズリフトが抑制される。
本実施例においては、(a)加減速情報取得部により制動情報が取得された場合に、外力付与装置に、セントラルシリンダがノーズダイブを抑制する向きの駆動力を付与させるノーズダイブ抑制部と、(b)加減速情報取得部により加速情報が取得された場合に、外力付与装置に、セントラルシリンダがノーズリフトを抑制する向きの駆動力を付与させるノーズリフト抑制部との両方が設けられていることになる。
以上説明した複数の実施例のうちの任意の2つの構成の一部を置換し、あるいは一の実施例の構成を別の実施例に付加し、あるいは一の実施例の構成の一部を削除する等、種々の変更を施した態様で請求可能発明を実施することができる。特に、例えば、図27の実施例に電磁方向切換弁を付加して、図30の実施例と同様な接続状態にも切り換え可能とすれば、図27の実施例と図30の実施例との両方の機能を果たし得る車両用サスペンションシステムが得られるというように、接続状態変更装置と外力付与装置の一方のみが設けられている実施例において、他方を付加することにより優れた車両用サスペンションシステムが得られる。
請求可能発明の一実施例である車両用サスペンションシステムを概念的に示す図である。 上記車両用サスペンションシステムのセントラルシリンダおよび外力付与装置の作動を説明するための図である。 上記車両用サスペンションシステムのセントラルシリンダの一作動状態を示す図である。 上記車両用サスペンションシステムのセントラルシリンダの別の作動状態を示す図である。 上記車両用サスペンションシステムのセントラルシリンダのさらに別の作動状態を示す図である。 上記車両用サスペンションシステムのサスペンションECUの記憶部に記憶された電磁方向切換弁・外力制御プログラムを表すフローチャートである。 上記記憶部に記憶された別の電磁方向切換弁制御プログラムを表すフローチャートである。 別の実施例である車両用サスペンションシステムのセントラルシリンダを概念的に示す図である。 上記車両用サスペンションシステムのセントラルシリンダの作動を説明するための図である。 さらに別の実施例である車両用サスペンションシステムのセントラルシリンダの周辺を示す図である。 さらに別の実施例である車両用サスペンションシステムのセントラルシリンダの周辺を示す図である。 さらに別の実施例である車両用サスペンションシステムを概念的に示すとともに、それの一作動状態を示す図である。 上記車両用サスペンションシステムの別の作動状態を示す図である。 上記車両用サスペンションシステムのさらに別の作動状態を示す図である。 上記車両用サスペンションシステムの記憶部に記憶された電磁方向切換弁制御プログラムを表すフローチャートである。 さらに別の実施例である車両用サスペンションシステムを概念的に示す図である。 さらに別の実施例である車両用サスペンションシステムを概念的に示す図である。 さらに別の実施例である車両用サスペンションシステムの制御装置を示すブロック図である。 上記制御装置の制御プログラムを表すフローチャートである。 上記制御装置において使用されるマップを示す図である。 上記制御装置において使用される別のマップを示す図である。 さらに別の実施例である車両用サスペンションシステムを概念的に示す図である。 上記車両用サスペンションシステムの制御装置を示すブロック図である。 上記制御装置の制御プログラムを表すフローチャートである。 上記制御装置において使用されるマップを示す図である。 さらに別の実施例である車両用サスペンションシステムを概念的に示す図である。 さらに別の実施例である車両用サスペンションシステムを概念的に示す図である。 上記車両用サスペンションシステムの制御装置を示すブロック図である。 上記制御装置の制御プログラムを表すフローチャートである。 さらに別の実施例である車両用サスペンションシステムを概念的に示す図である。 上記車両用サスペンションシステムの制御装置を示すブロック図である。 上記制御装置の制御プログラムを表すフローチャートである。
符号の説明
10〜16:ショックアブソーバ 28:接続装置 38:セントラルシリンダ 49:セントラルピストン 68:電磁方向切換弁 100:外力付与装置 130:サスペンションECU 136:走行状態検出装置 138:路面状態検出装置 140:乗り心地入力装置 150,152,154:電磁方向切換弁 198:電磁方向切換弁 200,202,204,206:アキュムレータ 210,212,214,216,220,222,224,226,230,232,234,236:絞り 240:回転モーメント検出装置 242:回転モーメント予知装置 252:ブレーキスイッチ 254:操舵スイッチ 270,280:パイロット式方向切換弁 302:制御プログラムメモリ 304:抑制選択マップ 306:切換時間マップ 312,314:外力付与シリンダ 316,318:ハウジング 320,322:ラム 326:低ばね定数アキュムレータ 328:高ばね定数アキュムレータ 330,332:電磁開閉弁 334:可変ばね装置 340:車速検出装置 342:切換しきい値マップ 350:パイロット式制御弁装置 352:パイロット式開閉弁 354:パイロット通路 370:セントラルシリンダ 372:外力付与装置 374:接続装置 382:大径部 384,386:小径部 388:段付シリンダハウジング 392:大径ピストン 394,396:小径ピストン 397:連結ロッド 398:セントラルピストン 400,402,404,406:液圧室 410:電動モータ 412:運動変換装置 414:ボールねじ 420,422,424,426:液通路 430:モータ制御装置 432:基準ステア特性取得装置 434:ステア特性検出装置 436:操舵角センサ 438:ヨーレイトセンサ 450:接続装置 452,454,456,458:液通路 470:ブレーキ液圧センサ 472:エンジントルクセンサ

Claims (21)

  1. 車両の前後左右の車輪と車体の各対応部分との間に配設される4つの懸架シリンダと、
    少なくとも2つの互いに一体的に作動する作動体と、それら2つの作動体をそれぞれ収容し、各作動体と共同して各作動体の両側にそれぞれ液圧室を形成するとともに互いに相対移動不能な少なくとも2つのハウジングとを備えたセントラルシリンダと、
    そのセントラルシリンダの4つの前記液圧室の各々と前記4つの懸架シリンダの各々とを接続する接続装置と、
    前記車両の走行状態を検出する走行状態検出装置と、
    その走行状態検出装置により検出された走行状態に応じて、前記セントラルシリンダの作動状態を制御するセントラルシリンダ制御装置と
    を含むことを特徴とする車両用サスペンションシステム。
  2. 前記走行状態検出装置が、前記車体に前後方向の回転モーメントと横方向の回転モーメントとの少なくとも一方が、少なくとも一定以上の大きさで作用することを検知するモーメント作用検知装置を含む請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
  3. 前記セントラルシリンダ制御装置が、前記モーメント作用検知装置による前記少なくとも一方の回転モーメントの作用検知に応じて、前記セントラルシリンダの4つの前記液圧室の各々と前記4つの懸架シリンダの各々との接続状態を変更する接続状態変更装置を含む請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
  4. 前記接続状態変更装置が、前記接続状態を、(a)ピッチングを許容する状態と、(b)ピッチングを抑制する状態と、(c)ローリングを許容する状態と、(d)ローリングを抑制する状態と、(e)対角同相移動を許容する状態と、(f)対角同相移動を抑制する状態とのうちの少なくとも2つの状態の間で変更可能なものである請求項3に記載の車両用サスペンションシステム。
  5. 前記走行状態検出装置が、前記車体に作用する前後方向の加速度に対応する前後加速度対応量および横方向の加速度に対応する横加速度対応量をそれぞれ取得する前後加速度対応量取得装置および横加速度対応量取得装置とを含み、前記接続状態変更装置が、少なくとも、ピッチングよりはローリングを抑制するローリング抑制状態と、ローリングよりはピッチングを抑制するピッチング抑制状態とに切換えが可能なものであるとともに、それらローリング抑制状態とピッチング抑制状態との間の切換えを前記前記前後加速度対応量と横加速度対応量との少なくとも一方に応じて変更する切換変更部を含む請求項3に記載の車両用サスペンションシステム。
  6. 前記切換変更部が、前記ローリング抑制状態と前記ピッチング抑制状態との少なくとも一方から他方への切換えの時間を、前記前後加速度対応量と前記横加速度対応量との少なくとも一方が大きい場合に小さい場合より長くする切換時間変更部を含む請求項5に記載の車両用サスペンションシステム。
  7. 前記切換変更部が、前記ローリング抑制状態から前記ピッチング抑制状態への切換えのしきい値を、前記横加速度対応量が大きい場合に小さい場合より大きくする横加速度対応しきい値変更部を含む請求項5または6に記載の車両用サスペンションシステム。
  8. 前記接続装置が、前記セントラルシリンダの4つの液圧室の各々と前記4つの懸架シリンダの各々とを接続する4つの接続通路を含み、かつ、前記接続状態変更装置が、
    それら4つの接続通路のうちの少なくとも2つに対して設けられ、それら少なくとも2つの接続通路による前記4つの懸架シリンダのうちの少なくとも2つと前記セントラルシリンダの4つの液圧室のうちの少なくとも2つとの接続状態を逆転させる方向切換弁装置と、
    前記モーメント作用検知装置による前記少なくとも一方の回転モーメントの少なくとも一定以上での作用検知に応じて、前記方向切換弁装置を、その少なくとも一方の回転モーメントによる前記車体の回動を前記セントラルシリンダに抑制させる状態に切り換える弁制御装置と
    を含む請求項3ないし7のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
  9. 前記モーメント作用検知装置が、前記車体に前後方向の回転モーメントが作用することを検知する前後回転モーメント作用検知装置を含む請求項3ないし8のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
  10. 前記4つの懸架シリンダが、ほぼ上下方向に延びるシリンダハウジングと、そのシリンダハウジング内に配設されたピストンと、そのピストンの片側へ軸方向に延び出て前記ハウジング外へ突出するピストンロッドとを備え、前記ピストンの両側にヘッド側室とロッド側室とが形成された複動の直線的シリンダであり、それら4つの直線的シリンダのうちの、前記車体の対角位置に位置する2つの直線的シリンダの各ヘッド側室が他方の直線的シリンダのロッド側室にそれぞれ接続通路により接続され、それら合計4本の接続通路の各々が前記セントラルシリンダの前記4つの液圧室の各々に接続された請求項3ないし9のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
  11. 前記4つの懸架シリンダが、ほぼ上下方向に延びるシリンダハウジングと、そのシリンダハウジング内に配設されたピストンと、そのピストンの片側へ軸方向に延び出て前記ハウジング外へ突出するピストンロッドとを備え、前記ピストンの両側にヘッド側室とロッド側室とが形成された複動の直線的シリンダであり、それら4つの直線的シリンダの前記ヘッド側室とロッド側室との一方が、それぞれ接続通路により前記セントラルシリンダの前記4つの液圧室の各々に接続された請求項3ないし9のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
  12. 前記4つの懸架シリンダの各々が、(a)ハウジングと、(b)そのハウジング内に設けられ、そのハウジング内の空間を仕切って両側にそれぞれ液圧室を形成する作動体と、(c)その作動体に設けられ、その作動体の両側の液圧室間の作動液の流通を許容するとともにその流通に抵抗を付与する流通抵抗付与装置とを備えたショックアブソーバである請求項3ないし9のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
  13. 前記セントラルシリンダ制御装置が、前記走行状態検出装置により検出された走行状態に応じて前記セントラルシリンダの作動体に外力を加える外力付与装置を含む請求項1ないし12のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
  14. 前記外力付与装置が、
    前記セントラルシリンダの作動体に、その作動体の作動量に応じて変化する弾性力を加える弾性力付与装置と、
    その弾性力付与装置の弾性力を前記走行状態検出装置により検出された走行状態に応じて制御する弾性力制御装置と
    を含む請求項13に記載の車両用サスペンションシステム。
  15. 前記弾性力付与装置が、
    前記セントラルシリンダの前記少なくとも2つの作動体の作動につれて容積が変化する少なくとも1つの外力付与シリンダと、
    その外力付与シリンダに互いに並列に接続された複数のアキュムレータと、それら複数のアキュムレータの一部のものと前記外力付与シリンダとの間に設けられ、それらを連通させる状態と遮断する状態とに切換え可能なばね定数制御弁装置とを含む可変ばね装置と
    を含み、前記弾性力制御装置が、前記ばね定数制御弁装置を制御することにより、前記セントラルシリンダの前記少なくとも2つの作動体の作動に抗するばね力を制御するばね力制御部を含む請求項14に記載の車両用サスペンションシステム。
  16. 前記外力付与装置が、車両の走行状態とその車両が走行している路面の状態である路面状態との少なくとも一方に応じて前記セントラルシリンダの作動体に加える外力を制御する外力制御装置を含む請求項13に記載の車両用サスペンションシステム。
  17. 前記走行状態を表す量が、前記車体に作用する前後方向の加速度に対応する前後加速度対応量と横方向の加速度に対応する横加速度対応量との少なくとも一方を含み、前記外力制御装置が、その少なくとも一方がしきい値を超えた場合に前記外力付与装置が付与する外力を増加させる外力増加部を含む請求項16に記載の車両用サスペンションシステム。
  18. 前記外力増加部が外力を増加させるしきい値を、前記車両の車速,前記車体の前後加速度,横加速度,ヨーレイト,前記懸架シリンダの作動ストローク,その作動ストロークの変化勾配,変化頻度,ばね上またはばね下の上下方向加速度の少なくとも1つに応じて変更する外力増加しきい値変更部を含む請求項17に記載の車両用サスペンションシステム。
  19. 前記4つの懸架シリンダのうち車両の対角位置の車輪にそれぞれ対応する2組の懸架シリンダが、それら対角位置の車輪の同相移動が前記少なくとも2つの作動体の作動により許容される状態で前記セントラルシリンダの4つの液圧室に接続され、かつ、前記外力付与装置が、前記少なくとも2つの作動体を少なくとも一方向に移動させる駆動力を付与するものとされ、かつ、前記車両のステア特性に基づいて前記外力付与装置の付与する前記駆動力の制御を行うステア特性対応制御部を含むものとされた請求項13に記載の車両用サスペンションシステム。
  20. 車両の実ステア特性を検出するステア特性検出装置を含み、前記ステア特性対応制御部が、そのステア特性検出装置により検出された実ステア特性が、設計上のステア特性である基準ステア特性よりオーバステア側にある場合には、前記外力付与装置に、前記セントラルシリンダが前輪側のロール剛性を増大させる一方、後輪側のロール剛性を減少させる向きの駆動力を付与させ、基準ステア特性よりアンダステア側にある場合には、前記セントラルシリンダが前輪側のロール剛性を減少させる一方、後輪側のロール剛性を増大させる向きの駆動力を付与させるものである請求項19に記載の車両用サスペンションシステム。
  21. 前記セントラルシリンダ制御装置が、
    前記走行状態検出装置により検出された走行状態に応じて、前記セントラルシリンダの4つの液圧室の各々と前記4つの懸架シリンダの各々との接続状態を変更する接続状態変更装置と、
    前記走行状態検出装置により検出された走行状態に応じて前記セントラルシリンダの作動体に外力を加える外力付与装置と
    の少なくとも一方を含み、かつ、当該車両用サスペンションシステムが、
    前記走行状態検出装置によってピッチングが生じたことが検出された場合に、前記接続状態変更装置に、前記セントラルシリンダにおける接続状態をピッチングを許容する状態とさせるとともに、前記外力付与装置に、前記作動体に、ピッチングに起因する移動を抑制する外力を付与させるピッチング抑制制御部と、
    前記走行状態検出装置によってローリングが生じたことが検出された場合に、前記接続状態変更装置に、前記セントラルシリンダにおける接続状態をローリングを許容する状態とさせるとともに、前記外力付与装置に、前記作動体に、ローリングに起因する移動を抑制する外力を付与させるローリング抑制制御部と
    の少なくとも一方を含む請求項1または2に記載の車両用サスペンションシステム。
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