JP2009255785A - 電動アクティブダンパ - Google Patents

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Abstract

【課題】高周波領域での慣性抵抗を低減し、乗り心地を悪化させることなく、運動性能を向上させ、省エネルギを図り、さらにエネルギ回生をすることも可能な電動アクティブダンパを提供する。
【解決手段】車体と車輪の間に設けられる電動アクティブダンパは、内部空間に流体を収容するシリンダ10と、ピストン20と、電動ポンプ30と、リリーフバルブ40とからなる。ピストン20は、シリンダ内に移動可能に収容され、シリンダの内部空間を2つの流体室10a、10bに分割する。電動ポンプ30は、2つの流体室間に設けられ、2つの流体室の圧力をそれぞれ正逆関係で調整可能なものである。リリーフバルブ40は、2つの流体室間に設けられ、2つの流体室の何れかの圧力が設定圧力以上になると圧力の高い流体室から圧力の低い流体室に流体を逃すものである。
【選択図】図2

Description

本発明はアクティブダンパに関し、特に、慣性抵抗が小さく、エネルギ消費の少ない電動アクティブダンパに関する。
近来、車両の運動性能の向上等を目的として、アクティブサスペンションが実用化されている。アクティブサスペンションには、ボールネジ方式等の電動式(例えば非特許文献1)や油圧式(例えば特許文献1)等、種々の方式がある。ボールネジ方式のアクチュエータでは、走行時の振動エネルギを回生することで省エネルギを図ることが可能となるものである。
また、非特許文献2に開示のアクチュエータは、電動式と油圧式のハイブリッドなものが示されている。図1に非特許文献2に開示のアクチュエータを示す。ハイブリッド式アクチュエータは、図示の通り、電動機1と2方向吐出液圧ポンプ2を直結し、電動機1の回転方向、回転速度、回転トルクを制御することにより、圧油の吐出方向、吐出油量、吐出圧を自由にコントロールできるものであり、その圧油により液圧シリンダ3を制御するものである。シリンダ3はピストン4で2つの部屋に分割されており、電動機1の回転エネルギを液圧シリンダ3に伝達して動作するアクチュエータである。
また、特許文献2には、長い油圧配管を無くし、必要に応じて間欠的に制御力の調整が可能なアクティブサスペンションの制御装置が開示されている。特許文献2に開示のシリンダも、ピストンにより2つの部屋に分けられており、モータ及び油圧ポンプにて油圧シリンダに圧力を加えることでシリンダの伸縮を制御するものである。シリンダの伸縮制御を行うための信号は、路面状況等を検出するセンサを用いて生成される。即ち、路面の段差等を通過するような大きい衝撃入力に対しては、これをセンサにて検知し、コントローラの指令により電磁比例圧力制御弁と油圧ポンプを作動させ、油圧シリンダの伸縮をアクティブに制御している。また、油圧シリンダが縮むことによりシリンダから排出される油は、チェック弁により油圧ポンプ側への逆流が防止され、電磁比例圧力制御弁を介してタンクへ排出される。
特開平4―362408号公報 特開2000−264034号公報 林隆三、須田義大、「電磁デバイスの加速度特性の制御に関する研究」、日本機械学会 No.06−7 Dynamics and Design Conference 2006 CD−ROM論文集、2006年8月6日 佐藤寛、"電動か−液動か"、[online]、2005年、第一電気株式会社、[2008年2月1日検索]、インターネット〈URL:http://www.daiichi−denki.co.jp/colum1.htm〉
非特許文献1に開示の機械式のアクティブサスペンションでは、慣性抵抗の増大という問題に対して講じている「慣性抵抗のキャンセル」を実現するためには以下のような問題点が新たに生じる。即ち、慣性抵抗が周波数に比例して大きくなるので、路面の段差等を通過するような大きい衝撃入力である高周波領域での非常に大きい慣性抵抗を打ち消す為には、駆動力を発生させる電動機が大きくならざるを得ない。また、このような電動機の作動に消費されるエネルギも大きくなる。さらに、駆動力の発生に遅れが生じると更に乗り心地が悪化することになる。高周波領域でのアクティブな制御は、応答速度等を考慮すると困難であった。例えば、高速走行時に例えば50Hz程度の衝撃入力があると、1/50×1/20=1/1000秒以下の応答速度が要求され、実用性に欠けていた。なお、1/20は、機械式アクティブサスペンションに十分な制御性能を持たせるための乗数である。
また、特許文献1に開示の油圧式のものでは、常にポンプを駆動しながらバルブ制御により作動するものであるため、消費エネルギが高く、また油圧がエンジンルームより各輪に配管されるため動力損失を伴う長い油圧配管が必要となることから、燃料消費が増加していた。さらに、上述のような高周波領域の衝撃入力に対応できるものでもなかった。また、このような油圧式アクティブサスペンションでは、構造上、エネルギ回生を行うことは難しかった。
また、非特許文献2に開示されるハイブリッド式のものについても、高周波領域の衝撃入力に対しては特に対策はなされておらず、ポンプ部分の慣性抵抗が問題となり得るものであった。
さらに、特許文献2に開示のアクティブサスペンションにおいても、伸縮制御は電磁比例圧力制御弁と油圧ポンプにて直接行っているため、高速走行時に高周波領域の衝撃入力があった場合には対応することができず、却って乗り心地が悪化する場合もあった。
本発明は、斯かる実情に鑑み、高周波領域での慣性抵抗を低減し、乗り心地を悪化させることなく、運動性能を向上させ、省エネルギを図り、さらにエネルギ回生をすることも可能な電動アクティブダンパを提供しようとするものである。
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による電動アクティブダンパは、内部空間に流体を収容するシリンダと、シリンダ内に移動可能に収容され、シリンダの内部空間を2つの流体室に分割するピストンと、2つの流体室間に設けられ、2つの流体室の圧力をそれぞれ正逆関係で調整可能な電動ポンプと、2つの流体室間に設けられ、2つの流体室の何れかの圧力が設定圧力以上になると圧力の高い流体室から圧力の低い流体室に流体を逃すリリーフバルブと、を具備するものである。
ここで、電動ポンプ及び/又はリリーフバルブは、2つの流体室間を接続する流路に設けられれば良い。
また、電動ポンプ及び/又はリリーフバルブは、ピストンに設けられても良い。
また、リリーフバルブは、電動ポンプをバイパスする位置に設けられれば良い。
また、リリーフバルブは、設定圧力を調整可能な電磁弁からなるものであれば良い。
また、リリーフバルブは、一方の流体室から他方の流体室に流体を逃す第1リリーフバルブと、他方の流体室から一方の流体室に流体を逃す第2リリーフバルブと、からなるものであれば良い。
また、電動ポンプは、可逆性を有し、2つの流体室間の圧力差により可逆動作するものであっても良い。
また、電動ポンプは、トロコイド式ポンプ又はベーン式ポンプからなるものであれば良い。
さらに、流体を補充するリザーバタンクを具備しても良い。
本発明の電動アクティブダンパには、高周波領域での慣性抵抗を低減できるという利点がある。したがって、路面の段差等を高速で通過するような大きい衝撃入力があった場合であっても対応可能であり乗り心地が悪いという問題点を解消しつつ、車両の運動性能の向上、省エネルギ、振動エネルギの回生といった利点もある。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図示例と共に説明する。図2は、本発明の電動アクティブダンパの構成及び動作原理を説明するための概略図である。図示の通り、本発明の電動アクティブダンパは、シリンダ10とピストン20と電動ポンプ30とリリーフバルブ40とから主に構成されている。
シリンダ10は、その内部空間に流体を収容可能なものである。なお、流体としては作動油が一般的であり、油圧で作動するダンパを意図するが、本発明はこれに限定されず、流体をエネルギの伝達媒体とすることが可能なものであればいかなる流体であっても構わない。
ピストン20は、シリンダ10内に移動可能に収容されるものである。そして、シリンダ10の内部空間を2つの流体室10a及び流体室10bに分割している。なお、ピストン20にはその中心軸にロッド23が固定されており、ロッド23の一端が車輪又は車体の一方側に接続され、シリンダ10が車輪又は車体の他方側に接続される。また、ロッド23と同軸状にスプリング25が設けられており、スプリング25が通常走行時の緩衝機能や車輪の位置決め等の機能を担う。なお、図示例ではロッド23がシリンダ10を貫通しているものを示したが、本発明はこれに限定されず、ピストン20とロッド23が一体的に作動する構造であれば、ロッド23はシリンダ10を貫通している必要はない。さらには、ロッドはピストンの一部分であっても良い。
電動ポンプ30は、シリンダ10の流体室10aと流体室10bの間に設けられており、2つの流体室の圧力をそれぞれ正逆関係で調整可能なものである。即ち、電動ポンプ30による油圧により直接ピストン20を移動させることで、ダンパを伸縮させている。図示例では、電動ポンプ30と、シリンダ10の流体室10a及び流体室10b間は、それぞれ流路50a及び流路50bで接続されている。電動ポンプ30は、油圧ポンプ31及びモータ32から構成されている。油圧ポンプ31は2方向吐出可能なものであり、これにモータ32が直結されている。そして、モータ32の回転方向、回転速度、回転トルクを制御することにより、流体の吐出方向、吐出液量、吐出圧力を制御可能である。また、電動ポンプ30は、慣性抵抗や摩擦抵抗がなるべく小さいものが好ましい。さらに、電動ポンプ30は、エネルギ回生を可能とするためには、可逆性を有するものが好ましい。即ち、油圧ポンプ31の2つの吐出ポート間の圧力差によって可逆動作し、モータ32が圧力差によって回転させられ、発電機として機能するようにも構成される。電動ポンプ30の具体例としては、トロコイド式ポンプやベーン式ポンプが挙げられる。しかしながら本発明はこれに限定されず、2つの流体室の圧力をそれぞれ正逆関係で調整可能なポンプであれば、如何なるポンプであっても適用可能である。
リリーフバルブ40は、シリンダ10の流体室10aと流体室10bの間に設けられており、2つの流体室の何れかの圧力が設定圧力以上になると圧力の高い流体室から圧力の低い流体室に流体を逃すものである。図示例のリリーフバルブ40は、シリンダ10の流体室10a及び流体室10b間を接続している流路50a及び流路50bの間に設けられている。
図示例のリリーフバルブ40は、第1リリーフバルブ41及び第2リリーフバルブ42から構成されている。第1リリーフバルブ41は、流体室10aから流体室10bへ流体を逃すバルブであり、流路50a及び流路50b間を結ぶ流路51に設けられている。また、第2リリーフバルブ42は、流体室10bから流体室10aへ流体を逃すバルブであり、流路50a及び流路50b間を結ぶ流路52に設けられている。
リリーフバルブ40は、ダンパの油圧制御を担うものではなく、所定の設定圧力以上になると弁を開放する単純な構造のものである。なお、リリーフバルブの設定圧力は調整可能であることが好ましいため、リリーフバルブ40としては、例えば電磁弁等が適用可能である。電磁弁はソレノイドとバネ等からなるものであり、制御信号に対する応答性が良い。リリーフバルブ40は電動ポンプ30をバイパスする位置に設けられており、流体室の圧力が所定圧(リリーフ圧)以上になると、流体が電動ポンプ30を介さずに、流体室10a及び流体室10b間を直接行き来できるように構成されている。
図3を用いてリリーフバルブの動作を説明する。図3は、本発明の電動アクティブダンパの時間に対する流体室間の圧力差の変化量の一例を示すグラフである。路面の状況や車両の加速度等に応じて流体室間の圧力差の変化量(時間に対する変化の差)ΔPが変化する。路面の凸部等により高周波領域の衝撃入力があると、変化量ΔPは一気に上昇することが分かる。本発明の電動アクティブダンパでは、この高周波入力に対応する領域Hを開放するためにリリーフバルブが用いられる。即ち、流体室間が所定の圧力差以上となるとリリーフバルブを開放し、圧力の高い方から低い方へ流体を逃す。なお、リリーフ圧は車体加速度等に対応して設定すれば良い。車体加速度を測定する加速度センサは操安制御等に用いられるものであり、車体加速度に応じて電動アクティブサスにより車両姿勢をアクティブ制御しているので、流体室間の圧力差は車体加速度に応じて変化する。路面からの衝撃を吸収するためには、この圧力差をバイアス分として考慮すれば良い。したがって、リリーフバルブのリリーフ圧は、例えば車体加速度に比例するように設定する。リリーフバルブに用いられ得る電磁弁は、ソレノイドを用いたものであり、リリーフ圧はソレノイド電流に比例する。したがって、このソレノイド電流を車体加速度に比例するように設定すれば良い。
なお、通常、車輪が車体に近づく方向への動きのほうが、車輪が車体から遠ざかる方向への動きよりも加速度が高い。したがって、例えば電動アクティブダンパのシリンダを車体側に、ロッドを車輪側に設置した場合、第1リリーフバルブ41よりも第2リリーフバルブ42の方のリリーフ圧を高く設定すれば良い。
また、油圧式のアクティブダンパでは、ロッドの部分等から微少量の油が漏れ出る。したがって、このような油漏れによりシリンダ内の圧液の量が減らないように補充するためのリザーバタンクを設けても良い。なお、リザーバタンクは電動ポンプの位置等に適宜接続されれば良い。
上述のように構成された本発明の電動アクティブダンパを用いて、車両の姿勢制御等のアクティブ制御を行う場合には、電動アクティブダンパが設置される車両等に設けられる車両の姿勢センサ等からの情報に基づき、電動ポンプ30を作動させることでダンパを伸縮させる。具体的には、モータ32により油圧ポンプ31を作動させ、2つの流体室に圧力差を加える。例えば、ダンパを伸張させる場合には、流体室10bの圧力を上げると共に、流体室10aの圧力を下げる。これによりピストン20が流体室10aの容量を小さくする方向に移動するため、ダンパが伸張する。一方、ダンパを短縮させる場合には、逆方向に電動ポンプ30を作動させ、流体室10aの圧力を上げると共に、流体室10bの圧力を下げる。これによりピストン20が流体室10bの容量を小さくする方向に移動するため、ダンパが短縮する。
例えば、路面が平坦か緩やかな凹凸程度の場合、即ち低周波領域の入力の場合には、車両の姿勢センサ等からの情報を基に、電動ポンプ30により電動アクティブダンパを伸縮制御することで、車両の姿勢制御を行えば良い。なお、電動アクティブダンパを用いてどのようにアクティブ制御を行うかに関しては、従来の又は今後開発されるべきあらゆる制御手法を適用することが可能である。
一方、エネルギ回生の観点から見ると、走行時の振動がダンパに伝わると、ピストン20が移動させられることにより、電動ポンプ30が動かされる。本発明の電動アクティブダンパでは、シリンダの2つの流体室10a及び流体室10bが、電動ポンプ30を介して直結している。したがって、ダンパの伸縮動作に伴い、ピストン20が移動させられると、一方の流体室の容量が小さくなって液圧が上がり流体が吐出される。そして、一方の流体室から吐出された流体は、電動ポンプ30の油圧ポンプ31を通って他方の流体室に流れ込む。なお、他方の流体室では、ピストン20の移動によって容量が大きくなり液圧が下がり流体が流れ込むことになる。このとき、油圧ポンプ31を流体が通るため、このエネルギによりモータが回転させられる。したがって、電気エネルギを生成することになるため、エネルギ回生が可能となる。
次に、本発明の電動アクティブダンパが高周波領域の衝撃入力を受けた場合の動作について説明する。高周波領域の衝撃入力をダンパが受けると、ピストン20が瞬時に移動しようとする。2つの流体室間は電動ポンプ30を介して接続されているため、ピストン20は電動ポンプ30における慣性抵抗や摩擦抵抗の影響を受ける。したがって、このままでは衝撃入力に連動した移動とはならない。しかしながら、本発明の電動アクティブダンパには、電動ポンプ30をバイパスする経路が設けられており、流体はそこを通るため、ピストン20は瞬時に移動することが可能となる。即ち、流体室10a及び流体室10b間を接続している流路50a及び流路50bの間に設けられているリリーフバルブ40が設定圧力以上になると、圧力の高い流体室から圧力の低い流体室に流体を逃すよう作用する。このリリーフ動作により、流体は電動ポンプ30を通らなくなるため、ピストン20は電動ポンプ30における慣性抵抗や摩擦抵抗の影響は受けずに、瞬時に移動が可能となる。
例えば、電動アクティブダンパが路面の凸部に応じて短縮するように車輪と車両の間に設置された場合の動作について、より具体的に説明する。路面の凸部により高周波領域の衝撃入力(縮み側)を受けると、ピストン20は瞬時に流体室10b側に移動する。すると、流体室10bの容量が急激に小さくなって液圧が一気に上がり、流体が一気に吐出される。このとき、吐出された流体は、流路50bを通って電動ポンプ30に圧力を加えると共に、流路52を通って第2リリーフバルブ42にも圧力を加えることになる。そして、この圧力が所定の圧力以上になると、第2リリーフバルブ42が開放し、流体は流路50aを通って流体室10aに流入する。これにより、縮み側の高周波領域の衝撃入力があっても、圧力の高い流体室から低い流体室に流体が逃されるため、ピストン20が瞬時に移動し、衝撃を吸収する動作が可能となる。
また、逆に路面の凹部により高周波領域の衝撃入力(伸び側)を受けると、ピストン20は瞬時に流体室10a側に移動する。すると、流体室10aの容量が急激に小さくなって液圧が一気に上がり、流体が一気に吐出される。このとき、吐出された流体は、流路50aを通って電動ポンプ30に圧力を加えると共に、流路51を通って第1リリーフバルブ41にも圧力を加えることになる。そして、この圧力が所定の圧力以上になると、第1リリーフバルブ41が開放し、流体は流路50bを通って流体室10bに流入する。これにより、伸び側の高周波領域の衝撃入力があっても、圧力の高い流体室から低い流体室に流体が逃されるため、ピストン20が瞬時に移動し、衝撃を吸収する動作が可能となる。
電動ポンプ30がエネルギ回生動作中であれば、電動ポンプ30の慣性抵抗や摩擦抵抗を小さくすることで、ピストン20の移動をある程度軽くすることは可能であるが、電動ポンプ30がアクティブ制御動作中の場合には、例えば電動ポンプ30側ではダンパを伸張する制御を行っているにも関わらず、高周波領域の衝撃入力を受けるとダンパは逆に急激に短縮しようとする動きをする。したがって、電動ポンプ30は高抵抗となっているため、ここを介して逆方向に流体が流れるのは困難である。しかしながら、本発明の電動アクティブダンパでは、リリーフバルブ40のルートが設けられているため、電動ポンプ30をバイパスして直接圧力の高い流体室10bから圧力の低い流体室10aに流体を逃すことが可能となる。
図4に本発明の電動アクティブダンパの効果を説明するためのグラフを示す。図4は、本発明の電動アクティブダンパの衝撃入力周波数に対する慣性抵抗と減衰力の変化を表すグラフである。図中、実線で表された変化が本発明の電動アクティブダンパの慣性抵抗の変化を表している。比較例として、従来のボールネジ方式のアクティブダンパの慣性抵抗の変化を破線で示すと共に、通常の非アクティブ方式のダンパの減衰力の変化を一点鎖線で示す。同図から分かる通り、ボールネジ方式の場合には、周波数の上昇に伴い急峻に慣性抵抗が上昇している。一方、本発明の電動アクティブダンパでは、電動ポンプを用いたことによる慣性抵抗の低減効果により、周波数が上昇しても慣性抵抗は微増するのみである。さらには、リリーフバルブの効果により、例えば図中の灰色線のように、高周波領域の慣性抵抗を低減できる。なお、非アクティブ方式のダンパは周波数依存性がないため、一定となっている。
このように、本発明の電動アクティブダンパによれば、電動ポンプの応答速度に関わらず、ピストンが移動させられるように構成しているため、特に高周波領域での慣性抵抗を大きく低減することが可能となり、乗り心地を悪化させることなく、運動性能を向上させることが可能となる。また、電動ポンプはピストンの動作、即ちアクチュエータ動作を制御するためだけに用いられるものであるため、従来の油圧式のような、常に圧を加えるために駆動され続けているポンプに比べて消費エネルギも低い。さらに、走行時の振動エネルギを回生することも可能な構造であるため、より省エネルギを図ることが可能となる。
さらに、電動ポンプのモータの必要トルクに関する効果について、図5を用いて説明する。図5は、本発明の電動アクティブダンパの電動ポンプのモータに必要なトルクと、従来のボールネジ方式のダンパの制御モータに必要なトルクを比較したグラフである。図示の通り、操安制御に必要なトルクについては、例えばモータの減速比によってはボールネジ方式の方が本発明のものに比べて小さい場合もある。しかしながら、路面の凹凸等に対する慣性抵抗の消去(イナーシャキャンセル)に必要なトルクについては、ボールネジ方式がかなり大きなトルクを必要としている一方、本発明では、モータでイナーシャキャンセルの制御を行っていないため、トルクは必要なく、減衰制御のみとなる。よって、全体としてみると、本発明の電動アクティブダンパのモータのほうが必要トルクは大幅に低減できている。したがって、ボールネジ方式のものと比較して、本発明の電動アクティブダンパにおける電動ポンプのモータは小さいもので足り、消費エネルギも低く抑えることが可能となる。また、上述のように、小さいモータを採用することにより、モータの慣性抵抗もより低減できることになる。
次に、本発明の電動アクティブダンパの他の例について説明する。図6は、本発明の電動アクティブダンパのリリーフバルブの他の構成例を説明するための概略図である。図中、図2と同一の符号を付した部分は概ね同一物を表しており、重複説明は省略する。
図示例の電動アクティブダンパは、電動ポンプをバイパスする経路が図2の電動アクティブダンパと異なっている。即ち、図6に示されるリリーフバルブ45は、経路50aと経路50b間に接続される1本の経路55の間に設けられている。そして、リリーフバルブ45内部が第1リリーフバルブ41と第2リリーフバルブ42とで構成されており、図2に示される電動アクティブダンパと同様の機能を担うように構成されている。より具体的には、経路55がリリーフバルブ45のところで2股に分かれており、一方のルートに第1リリーフバルブ41を設置し、他方のルートに第2リリーフバルブ42を設置している。なお、図示例では、リリーフバルブ45が第1リリーフバルブ41と第2リリーフバルブ42から構成される例を示したが、本発明はこれに限定されず、2方向に対して設定圧力以上になると圧力の高い流体室から圧力の低い流体室に流体を逃すことが可能なものであれば、1つのバルブを用いたものであっても良い。
このような構成であっても、図2に示される電動アクティブダンパと同様に、高周波領域での慣性抵抗を大きく低減することが可能となり、乗り心地を悪化させることなく、運動性能を向上させることが可能となる。また、消費エネルギも同様に低く、さらに走行時の振動エネルギを回生することも可能な構造である。
また、本発明の電動アクティブダンパのさらに他の例について説明する。図7は、本発明の電動アクティブダンパの他の構成例を説明するための概略図である。図中、図2と同一の符号を付した部分は概ね同一物を表しており、重複説明は省略する。
図示例の電動アクティブダンパは、リリーフバルブの設置位置がピストン20である点が上述の例と異なるところである。即ち、まずピストン20に経路51及び経路52が設けられ、これにより流体室10aと流体室10bが接続されている。そして、経路51の途中に第1リリーフバルブ41が設けられ、経路52の途中に第2リリーフバルブ42が設けられている。
このような構成とすることで、リリーフバルブ用のバイパス経路を短くすることが可能となり、エネルギ伝達経路が短くなることから高周波帯域の衝撃入力に対するリリーフ反応等がより俊敏になる。他の構成や機能、作用等については上述の例と同様であるため、重複説明は省略する。
さらに、図8に示されるように、電動ポンプもピストンに設けても良い。図8は、本発明の電動アクティブダンパのさらに他の構成例を説明するための概略図である。図中、図7と同一の符号を付した部分は概ね同一物を表しており、重複説明は省略する。
図示の通り、電動アクティブダンパのピストン20には、流体室10aと流体室10b間に設けられる経路50aと経路50bが設けられており、これらの間に電動ポンプ30が接続されている。また、図7の例と同様に、経路51と経路52、及びそれらの途中にそれぞれ設けられた第1リリーフバルブ41と第2リリーフバルブ42も、ピストン20に設けられている。
このような構成とすることで、電動ポンプによりピストンを駆動するための経路を短くすることが可能となり、エネルギ伝達経路が短くなることから高効率にダンパをアクティブ制御可能である。他の構成や機能、作用等については上述の例と同様であるため、重複説明は省略する。
これまでの説明では、電動アクティブダンパの構成を概念的に説明したが、実際の車両に適用する場合におけるユニット型の電動アクティブダンパの具体的な構成例について説明する。図9は、本発明の電動アクティブダンパをユニット型に構成した例を説明するための概略斜視図である。図中、図2と同一の符号を付した部分は概ね同一物を表しており、重複説明は省略する。図示のように、本発明の電動アクティブダンパは、車両に組み込むときには電動アクティブダンパユニットとして一体的に形成して用いることが可能である。即ち、本発明の電動アクティブダンパの各構成要素を積層してユニット化し、車両への設置を容易としている。電動ポンプ30はシリンダ10やピストン20、ロッド23と同軸状に配置し、リリーフバルブ40を電動ポンプ30とシリンダ10の間に配置する。また、経路50aや経路50bは適宜シリンダの周辺に設けられれば良い。
さて、上述のような本発明の電動アクティブダンパを車両に適用して電動アクティブサスペンションシステムとした場合について説明する。図10は、本発明の電動アクティブダンパを用いた電動アクティブサスペンションシステムの概略を説明するためのブロック図である。図中、図2と同一の符号を付した部分は概ね同一物を表しており、重複説明は省略する。
図示の通り、車輪60と車体61の間に本発明の電動アクティブダンパが設置される。なお、図示例ではロッド23を車輪60側に、シリンダ10を車体61側に接続しているが、本発明はこれに限定されず、上下逆に接続されても良い。電動ポンプ30やリリーフバルブ40は制御部63に接続されている。制御部63には、車体61に設けられた各種センサ65が接続されている。センサ65は、例えば加速度センサやダンパのストロークセンサ、車高センサ等が挙げられる。制御部63は、これら各種センサ65からの信号に基づき、電動ポンプ30をアクティブ制御する。即ち、例えば加速度センサからの信号に基づき横方向等の車体加速度に応じて車体61の傾き等を調整する。なお、図示例の電動ポンプ30は交流モータを用いたものであり、インバータ67により駆動制御されている。また、制御部63は、リリーフバルブ40のリリーフ圧も調整可能に構成され、センサ65からの信号、例えば加速度センサからの信号を用いてリリーフ圧の調整も行う。
本発明の電動アクティブダンパでは、路面状況に基づく制御が間に合わないような、路面の凹凸からの高周波領域の入力があっても、リリーフバルブ40の効果により衝撃が吸収されるため、乗り心地に悪影響を与えない。また、通常走行時には、路面からの振動により電動ポンプ30が回転させられ、これにより電動ポンプ30が発電機として動作し、振動エネルギが電力に変換される。そして、インバータ67を介して回生回路68で充電を行う。
本発明の電動アクティブダンパによれば、上述のように、高周波領域での慣性抵抗を低減できるため、路面の段差等を高速で通過するような大きい衝撃入力があった場合であっても乗り心地が悪くならず、さらに、エネルギ回生も可能となる。
なお、本発明の電動アクティブダンパは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
図1は、従来のハイブリッド型アクチュエータを説明するための概略図である。 図2は、本発明の電動アクティブダンパの構成及び動作原理を説明するための概略図である。 図3は、本発明の電動アクティブダンパの時間に対する流体室間の圧力差の変化の一例を示すグラフである。 図4は、本発明の電動アクティブダンパの衝撃入力周波数に対する慣性抵抗の変化を表すグラフである。 図5は、本発明の電動アクティブダンパの電動ポンプのモータに必要なトルクと、従来のボールネジ方式のダンパの制御モータに必要なトルクを比較したグラフである。 図6は、本発明の電動アクティブダンパのリリーフバルブの他の構成例を説明するための概略図である。 図7は、本発明の電動アクティブダンパの他の構成例を説明するための概略図である。 図8は、本発明の電動アクティブダンパのさらに他の構成例を説明するための概略図である。 図9は、本発明の電動アクティブダンパをユニット型に構成した例を説明するための概略斜視図である。 図10は、本発明の電動アクティブダンパを用いた電動アクティブサスペンションシステムの概略を説明するためのブロック図である。
符号の説明
10 シリンダ
10a、10b 流体室
20 ピストン
23 ロッド
25 スプリング
30 電動ポンプ
31 油圧ポンプ
32 モータ
40、45 リリーフバルブ
41 第1リリーフバルブ
42 第2リリーフバルブ
50a、50b、51、52、55 経路
60 車輪
61 車体
63 制御部
65 センサ
67 インバータ
68 回生回路

Claims (9)

  1. 車体と車輪の間に設けられる電動アクティブダンパであって、該電動アクティブダンパは、
    内部空間に流体を収容するシリンダと、
    前記シリンダ内に移動可能に収容され、シリンダの内部空間を2つの流体室に分割するピストンと、
    前記2つの流体室間に設けられ、前記2つの流体室の圧力をそれぞれ正逆関係で調整可能な電動ポンプと、
    前記2つの流体室間に設けられ、前記2つの流体室の何れかの圧力が設定圧力以上になると圧力の高い流体室から圧力の低い流体室に流体を逃すリリーフバルブと、
    を具備することを特徴とする電動アクティブダンパ。
  2. 請求項1に記載の電動アクティブダンパにおいて、前記電動ポンプ及び/又はリリーフバルブは、前記2つの流体室間を接続する流路に設けられることを特徴とする電動アクティブダンパ。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の電動アクティブダンパにおいて、前記電動ポンプ及び/又はリリーフバルブは、前記ピストンに設けられることを特徴とする電動アクティブダンパ。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電動アクティブダンパにおいて、前記リリーフバルブは、前記電動ポンプをバイパスする位置に設けられることを特徴とする電動アクティブダンパ。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電動アクティブダンパにおいて、前記リリーフバルブは、設定圧力を調整可能な電磁弁からなることを特徴とする電動アクティブダンパ。
  6. 請求項1乃至請求項5の何れかに記載の電動アクティブダンパにおいて、前記リリーフバルブは、一方の流体室から他方の流体室に流体を逃す第1リリーフバルブと、他方の流体室から一方の流体室に流体を逃す第2リリーフバルブと、からなることを特徴とする電動アクティブダンパ。
  7. 請求項1乃至請求項6の何れかに記載の電動アクティブダンパにおいて、前記電動ポンプは、可逆性を有し、前記2つの流体室間の圧力差により可逆動作することを特徴とする電動アクティブダンパ。
  8. 請求項1乃至請求項7の何れかに記載の電動アクティブダンパにおいて、前記電動ポンプは、トロコイド式ポンプ又はベーン式ポンプからなることを特徴とする電動アクティブダンパ。
  9. 請求項1乃至請求項8の何れかに記載の電動アクティブダンパであって、さらに、前記流体を補充するリザーバタンクを具備することを特徴とする電動アクティブダンパ。
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